説明

放射線検出装置、その放射線検出装置を動作させるプログラム、及び、そのプログラムを記録する記録媒体

【課題】被検体とガンマ線検出器との間の相対的な位置関係を変化させて撮影を繰り返す構成を採りながらも高品質なPET画像を生成できるPET装置を提供すること。
【解決手段】被検体P内の放射性同位元素が発するガンマ線を半導体検出器3で検出し放射性同位元素の被検体P内における分布情報を撮影するPET装置100は、複数の撮影範囲を順番に撮影するために被検体Pと半導体検出器3との間の相対的な位置関係を変化させる相対位置変更手段12と、各撮影範囲の撮影で検出する各放射性同位元素が発するガンマ線のカウント数を制御するためにその放射性同位元素の半減期に基づいて各撮影範囲の撮影時間を決定する撮影時間決定手段11とを備え、相対位置変更手段12は、撮影時間決定手段11が決定した各撮影範囲の撮影時間に従って被検体Pと半導体検出器3との間の相対的な位置関係を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内の放射性同位元素が発するガンマ線を検出しそれら放射性同位元素の被検体内における分布情報を取得する放射線検出装置、その放射線検出装置を動作させるプログラム、及び、そのプログラムを記録する記録媒体に関し、特に、そのガンマ線を半導体検出器で検出しながら高い空間分解能を実現する半導体PET(Positron Emission Tomography)装置、その半導体PET装置を動作させるプログラム、及び、そのプログラムを記録する記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PET装置を用いた診断方法は、まず、放射性同位元素であるポジトロン(陽電子)核種で標識された検査用薬剤を、注射や吸入等により被検体の体内に導入する。体内に導入された検査用薬剤は、その検査用薬剤に応じた機能を有する特定の部位に蓄積される。例えば、糖類の検査用薬剤を用いた場合、ガン細胞等の新陳代謝の盛んな部位に選択的に蓄積される。このとき、その検査用薬剤のポジトロン核種から陽電子が放出され、放出された陽電子と周囲の電子とが結合して消滅する際に2つのガンマ線が互いに約180度の方向に放出される。そこで、この2つのガンマ線を被検体の周りに配置したガンマ線検出器により同時検出してコンピュータ等で処理することにより、その被検体内におけるポジトロン核種の分布画像(PET画像)を取得する。精密診断装置として用いられるCTスキャン(コンピュータ断層撮影)装置が体内の病変等の構造情報が得られるのに対し、PET装置は、被検体の体内の機能情報が得られるため、様々な難病の病理解明が可能となる。
【0003】
また、PET装置は、被検体を載置する可動式ベッドと、ガンマ線検出器を搭載するリング状の固定式ガントリとを備え、被検体を載せた可動式ベッドが固定式ガントリのリング内を通過するよう可動式ベッドを移動させながら被検体内の広い範囲にわたって分布するポジトロン核種が発するガンマ線を検出する。
【0004】
このようなPET装置の中には、被検体を移動させながらPET画像を撮影する場合に、撮影する画像のS/N比が撮影位置毎に変動しないよう撮影部位に応じて可動式ベッドの移動速度を変化させるPET装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
なお、本書において「撮影」とは、放射線検出装置がガンマ線検出器の出力に基づいて被検体内におけるポジトロン核種の分布情報を取得し、取得した分布情報に基づいてPET画像を生成する行為を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−184152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のPET装置は、固定式ガントリのリング内を通過するよう被検体を載せた可動式ベッドを移動させながらその被検体内の広い範囲にわたって分布するポジトロン核種が発するガンマ線を検出するので、被検体を静止させた状態でガンマ線を検出する場合に比べポジトロン核種の位置決め精度が劣り、高い空間分解能を必要とするPET画像を撮影するには不向きである。
【0008】
上述の点に鑑み、本発明は、被検体と放射線検出器との間の相対的な位置関係を変化させて撮影を繰り返す構成を採りながらも高品質な放射線画像を生成できる放射線検出装置、その放射線検出装置を動作させるプログラム、及び、そのプログラムを記録する記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、第一の発明に係る放射線検出装置は、被検体内の放射性同位元素が発する放射線を半導体検出器で検出し前記放射性同位元素の被検体内における分布情報を撮影する放射線検出装置であって、複数の撮影範囲を順番に撮影するために前記被検体と前記半導体検出器との間の相対的な位置関係を変化させる相対位置変更手段と、各撮影範囲の撮影で検出する各放射性同位元素が発する放射線のカウント数を制御するために前記放射性同位元素の半減期に基づいて各撮影範囲の撮影時間を決定する撮影時間決定手段と、を備え、前記相対位置変更手段は、前記撮影時間決定手段が決定した各撮影範囲の撮影時間に従って前記被検体と前記半導体検出器との間の相対的な位置関係を変化させることを特徴とする。
【0010】
また、第二の発明は、第一の発明に係る放射線検出装置であって、前記撮影時間決定手段は、各撮影範囲の撮影で検出する各放射性同位元素が発する放射線のカウント数が均一となるよう各撮影範囲の撮影時間を決定することを特徴とする。
【0011】
また、第三の発明は、第一又は第二の発明に係る放射線検出装置であって、前記撮影時間決定手段は、総撮影時間を所与として、各撮影範囲の撮影時間を決定することを特徴とする。
【0012】
また、第四の発明は、第一又は第二の発明に係る放射線検出装置であって、前記撮影時間決定手段は、一の撮影範囲に対する撮影時間を所与として、他の各撮影範囲の撮影時間を決定することを特徴とする。
【0013】
また、第五の発明は、第三又は第四の発明に係る放射線検出装置であって、前記撮影時間決定手段は、全撮影範囲の大きさと一の撮影範囲の大きさとに基づいて撮影回数を算出し、各撮影範囲の撮影時間を決定することを特徴とする。
【0014】
また、第六の発明に係るプログラムは、被検体内の放射性同位元素が発する放射線を半導体検出器で検出する放射線検出装置が複数の撮影範囲を順番に撮影するために前記被検体と前記半導体検出器との間の相対的な位置関係を変化させて前記放射性同位元素の被検体内における分布情報を撮影するようにコンピュータを動作させるプログラムであり、各撮影範囲の撮影で検出する各放射性同位元素が発する放射線のカウント数を制御するために前記放射性同位元素の半減期に基づいて各撮影範囲の撮影時間を決定する撮影時間決定ステップ、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、第七の発明は、第六の発明に係るプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0016】
上述の手段により、本発明は、被検体と放射線検出器との間の相対的な位置関係を変化させて撮影を繰り返す構成を採りながらも高品質な放射線画像を生成できる放射線検出装置、その放射線検出装置を動作させるプログラム、及び、そのプログラムを記録する記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る放射線検出装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る放射線検出装置の構成例を示す概略図である。
【図3】可動式ベッドに載せられた被検体の上面視である。
【図4】表示部に表示される入力画面(その1)である。
【図5】撮影時間決定処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】表示部に表示される入力画面(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例】
【0019】
図1及び図2はそれぞれ、本発明に係る放射線検出装置の構成例を示すブロック図及び概略図であり、PET装置100は、被検体Pを載置する可動式ベッド50と、リング状の固定式ガントリ30とを備え、被検体Pを載せた可動式ベッド50が固定式ガントリ30のリング内を通過するよう可動式ベッド50を移動させながら被検体P内の広い範囲にわたって分布するポジトロン核種が発するガンマ線を検出する装置であり、制御部1、入力部2、半導体検出器3、表示部4、及び撮影範囲変更部5を主要部品として構成される。被検体Pは、例えば、実験用マウスである。
【0020】
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)、タイマ等を備えたコンピュータであって、例えば、後述する画像処理手段10、撮影時間決定手段11、及び相対位置変更手段12のそれぞれに対応するプログラムをROMに記憶しながら、各手段に対応する処理をCPUに実行させる。
【0021】
なお、これらのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で配布されてもよく、ネットワークを通じて配信されてもよい。また、これらのプログラムの全部又は一部の機能がハードウェアで実現されてもよい。
【0022】
入力部2は、制御部1に対して各種情報を入力するための装置であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、音声認識装置等である。
【0023】
半導体検出器3は、被検体Pから放出されるガンマ線を空間的及び時間的に検出するための装置であり、例えば、複数の検出素子からなる検出素子ブロックを有し、その検出素子ブロックは、リング状の固定式ガントリ30の円周に沿って被検体の周囲に配置される。なお、使用される半導体材料の例には、CdTe(テルル化カドニウム)、GaAs(ガリウム砒素)、TlBr(臭化タリウム)等がある。
【0024】
ポジトロン核種からの陽電子の消滅の際に同時に発生する2つのガンマ線は、互いに略180度の角度をなして放出され、被検体Pを挟んで対向するその検出素子ブロックにおける検出素子に入射する。それら二つのガンマ線が入射した2つの検出素子の各々は、ガンマ線の入射により生じる電気信号(検出信号)を発生させ、半導体検出器3は、その検出信号を制御部1に対して出力する。
【0025】
なお、半導体検出器3は、可動式ベッド50の移動方向に沿って約20mmの幅を有し、対面する約20mmの幅の被検体Pの体内に存在するポジトロン核種が発するガンマ線を検出する。
【0026】
図3は、可動式ベッド50に載せられた被検体Pの上面視であり、二つの破線で区切られた幅Rが半導体検出器3の幅に相当し、被検体Pの全身が半導体検出器3の約7倍の幅に相当することを示す。そのため、PET装置100は、7回の撮影を順番に繰り返すことで被検体Pの全長にわたるPET画像を生成することができる。
【0027】
表示部4は、制御部1が出力する各種情報を表示するための装置であり、例えば、CRTモニタ、液晶ディスプレイ、プロジェクタ等である。
【0028】
撮影範囲変更部5は、PET装置100の撮影範囲を変更するための機構であり、例えば、可動式ベッド50を図2及び図3の双方向矢印Dで示す方向に移動させるための電動モータである。
【0029】
また、撮影範囲変更部5は、被検体Pと半導体検出器3との間の相対的な位置関係を変更できる他の装置であってもよく、例えば、ベッドを固定しながらガントリを移動させる機構であってもよく、ベッド及びガントリの双方を同時に移動させる機構であってもよい。
【0030】
次に、制御部1が有する各種手段について説明する。
【0031】
画像処理手段10は、半導体検出器3が検出したデータに基づいてPET画像を生成するための手段であり、例えば、コインシデンス検出及び画像再生成アルゴリズムによりPET画像を生成する。コインシデンス検出は、ガンマ線入射時刻が略一致する2つ以上の検出データがある場合、それらの検出データを有効と判定し、コインシデンス情報とする。また、コインシデンス検出は、ガンマ線入射時刻が一致しない検出データを無効と判定し破棄する。
【0032】
画像処理手段10は、コインシデンス情報と、そのコインシデンス情報に関するガンマ線を検出した検出素子の位置情報とを用いて所定の画像再生成アルゴリズム(例えば、期待値最大化(Expectation Maximization)法である。)によりPET画像を生成し、生成したPET画像を表示部4に対して出力する。
【0033】
撮影時間決定手段11は、各撮影範囲の撮影時間を決定するための手段であり、例えば、各撮影範囲の撮影で検出する各ポジトロン核種が放射するガンマ線のカウント数を制御するために、各撮影範囲の撮影時間を決定する。
【0034】
そのために、撮影時間決定手段11は、被検体P内にあるポジトロン核種の半減期に基づいて任意の時刻に半導体検出器3が検出可能なガンマ線のカウント数を推定する。なお、半減期Tを有するポジトロン核種の壊変定数λは、
【0035】
【数1】

であり、そのポジトロン核種が放射するガンマ線の時刻tにおけるカウント数N(t)は、t=0のときのカウント数がN(0)であるとすると、
【0036】
【数2】

で表され、そのカウント数N(t)は、時間と共に減少する。
【0037】
なお、「撮影時間」は、被検体Pと半導体検出器3との間の相対的な位置関係を固定した状態(被検体Pを静止させた状態)又はほぼ固定した状態(PET画像の高い空間分解能を維持できる程度の相対的な位置関係の変化を許容する意味である。)でPET装置100が各撮影範囲の撮影を行う時間を意味し、撮影範囲変更部5が被検体Pと半導体検出器3との間の相対的な位置関係を変化させているときの時間を含まないものとする。
【0038】
また、「撮影範囲」は、被検体Pと半導体検出器3との間の相対的な位置関係を固定した状態(被検体Pを静止させた状態)で画像処理手段10がPET画像を生成できる範囲を意味し、各撮影範囲は、好適には重複しないものとするが一部が重複するものであってもよい。また、各撮影範囲の位置関係は、被検体Pの移動方向に沿って隙間無く隣接する連続的な関係であってもよく、任意の間隔を空けて配置される断続的な関係であってもよい。更に、各撮影範囲の位置関係は、好適には、被検体Pの移動方向に沿って時間順に一方向に並ぶものであるが、順不同でランダムに並ぶものであってもよい。
【0039】
ここで、各撮影範囲の撮影で検出する各ポジトロン核種が放射するガンマ線のカウント数を均一にするために、撮影時間決定手段11が、各撮影範囲の撮影時間を決定する場合について説明する。
【0040】
一般的に、撮影時間Tm(時刻tm−1〜時刻tまでの時間であり、mは、ゼロを除く任意の自然数である。)の間にそのポジトロン核種が放射するガンマ線の総和Sは、
【0041】
【数3】

で表され、総撮影時間Ttotalの間に各ポジトロン核種が放射するガンマ線のカウント数をDとし撮影回数をMとすると、一回の撮影時間の間で検出すべきガンマ線のカウント数は、
【0042】
【数4】

で表される。
【0043】
また、総撮影時間Ttotal(時刻t〜時刻ttotalまでの時間であり、totalは、ゼロを除く任意の自然数である。)の間に各ポジトロン核種が放射するガンマ線のカウント数Dは、式(3)に準じて
【0044】
【数5】

としても表されるので、時刻tm−1と時刻tとの間の関係は、式(4)及び式(5)に基づいて、以下の(6)式〜(8)式を経て式(9)で表される。
【0045】
【数6】

【0046】
【数7】

【0047】
【数8】

【0048】
【数9】

更に、式(9)は、式(1)で示す半減期Tと壊変定数λとの間の関係を用いて、式(10)及び式(11)で表される。
【0049】
【数10】

このようにして、撮影時間決定手段11は、使用するポジトロン核種の半減期T、撮影回数M、及び総撮影時間Ttotalの入力を受け、一回目〜M回目までの各撮影範囲の撮影で検出するカウント数(各ポジトロン核種が放射するガンマ線のカウント数)を均一な値(D/M)にするために必要な各撮影範囲の撮影時間を決定することができる。
【0050】
なお、撮影時間決定手段11は、各撮影範囲の撮影で検出するカウント数を均一な値とするばかりでなく、各撮影範囲で異なる任意のカウント数又はカウント比率(基準カウント数に対する比率を意味する。)となるよう各撮影範囲の撮影時間を決定するようにしてもよい。
【0051】
更に、撮影時間決定手段11は、総撮影時間Ttotalの入力を受ける代わりに、一回目の撮影範囲に対する撮影時間T(時刻が早いほど各ポジトロン核種が放射するガンマ線のカウント数は多いので、各撮影範囲の撮影で検出するカウント数を均一な値とする場合、一回目の撮影範囲に対する撮影時間Tは、全体を通じて最小となる。)の入力を受け、二回目以降の各撮影範囲の撮影で検出するカウント数又はカウント比率を均一な値又は任意の値にするために必要な各撮影範囲の撮影時間を決定するようにしてもよい。
【0052】
或いは、撮影時間決定手段11は、最終回の撮影範囲に対する撮影時間T(時刻が遅いほど各ポジトロン核種が放射するガンマ線のカウント数は少ないので、各撮影範囲の撮影で検出するカウント数を均一な値とする場合、最終回の撮影範囲に対する撮影時間Tは、全体を通じて最大となる。)の入力を受け、最終回以外の各撮影範囲の撮影で検出するカウント数又はカウント比率を均一な値又は任意の値にするために必要な各撮影範囲の撮影時間を決定するようにしてもよい。
【0053】
なお、撮影時間決定手段11は、総撮影時間Ttotalの入力をユーザから受けない場合、各撮影範囲の撮影時間の合計である総撮影時間Ttotalを表示部4で表示するようにしてもよい。ユーザが総撮影時間Ttotalを確認できるようにするためである。
【0054】
また、撮影時間決定手段11は、上述のように決定した各撮影範囲の撮影時間に関する情報を画像処理手段10及び後述の相対位置変更手段12に対して出力する。この場合、撮影時間決定手段11は、一回目の撮影を開始する時点で、各撮影範囲の撮影時間に関する情報を一括して画像処理手段10及び相対位置変更手段12に対して出力するようにしてもよく、画像処理手段10及び相対位置変更手段12がアクセスできるように各撮影範囲の撮影時間に関する情報を制御部1のRAMに記憶してもよく、或いは、制御部1のタイマを用いて経過時間を計測しながら各撮影範囲の撮影終了時刻に所定の制御信号を画像処理手段10及び相対位置変更手段12に対して出力するようにしてもよい。
【0055】
画像処理手段10は、撮影時間決定手段11が出力する各撮影範囲の撮影時間に関する情報に基づいて、各撮影時間の間に半導体検出器3が検出するガンマ線を特定しPET画像から除外するようにしてもよく、各撮影時間の間では半導体検出器3によるガンマ線の検出を中断させるようにしてもよい。
【0056】
相対位置変更手段12は、複数の撮影範囲を順番に撮影するために被検体Pと半導体検出器3との間の相対的な位置関係を変化させるための手段であり、例えば、撮影時間決定手段11が決定した各撮影範囲の撮影時間に関する情報に基づいて撮影範囲変更部5を駆動させる。
【0057】
相対位置変更手段12は、例えば、撮影開始前に撮影時間決定手段11が出力する各撮影範囲の撮影時間に関する情報を一括して受信し、受信した情報をRAMに記憶する。そして、相対位置変更手段12は、制御部1のタイマを用いて経過時間を計測しながら各撮影範囲の撮影終了時刻に所定の制御信号を撮影範囲変更部5に対して出力し、被検体Pと半導体検出器3との間の相対的な位置関係を変化させるべく、可動式ベッド50を所定距離(例えば、半導体検出器3の幅である。)だけ移動させる。なお、可動式ベッド50の移動距離は、撮影を開始する前に入力部2を介して入力されていてもよい。
【0058】
また、相対位置変更手段12は、各撮影範囲の撮影が終了した時点で撮影時間決定手段11が出力する所定の制御信号を受信し、その制御信号に応じて撮影範囲変更部5を駆動させるようにしてもよい。
【0059】
次に、図4を参照しながら、PET装置100に対する各種情報の入力について説明する。なお、図4は、表示部4に表示される入力画面の一例である。
【0060】
図4の入力画面Gは、PET装置100が起動されたときに制御部1が表示部4に表示させる画面であり、総撮影時間、移動回数、移動量、及びカウント比率を入力するための入力フォーム(白色領域)と、ポジトロン核種を選択するためのプルダウンと、半減期、相対位置、絶対位置、撮影時間、及び累計時間を表示するための表示フォーム(灰色領域)と、保存ボタン、開始ボタン、及び閉じるボタンとを含む。
【0061】
入力フォームは、適切な初期値を有し、不適切な値が入力されないよう、最大値、最小値、及び入力形式が定義されており、入力フォームの何れかに新たな値が入力されると、制御部1は、関連する表示フォームの値をリアルタイムに更新する。
【0062】
なお、制御部1は、更新ボタン(図示せず。)が押下された場合に限り、入力フォームに入力された値に基づいて表示フォームの値を更新するようにしてもよい。
【0063】
入力フォーム「総撮影時間」は、各撮影時間の合計を意味し、入力フォーム「総撮影時間」の値が変更されると、表示フォーム「撮影時間」及び「累計時間」の値が更新される。
【0064】
入力フォーム「移動回数」は、撮影範囲変更部5によって被検体Pと半導体検出器3との間の相対的な位置関係を変化させる回数を意味し、移動回数「2」は、三つの撮影領域が撮影されることを意味する。図4の入力画面Gは、移動回数が「2」であり「撮影1」、「撮影2」及び「撮影3」の三つの見出しの下に入力フォーム及び表示フォームの組み合わせから成るフォーム列を三列表示させているが、移動回数が変更されると、新たに入力された移動回数の値に応じてそのフォーム列が増減され、その上で表示フォームの全ての値が更新される。
【0065】
入力フォーム「移動量」は、撮影範囲間の移動距離を意味し、例えば、図4における見出し「撮影2」の下にある入力フォーム「移動量」の値「20.0」は、一回目の撮影が終了した後で二回目の撮影が開始する前に、可動式ベッド50が20.0mmだけ所定方向に移動させられることを意味する。なお、入力フォーム「移動量」の初期値は、半導体検出器3の幅に相当する「20.0」とし、各撮影範囲の間に隙間の無いPET画像を生成する場合、ユーザは入力フォーム「移動量」の値を変更する必要がない。
【0066】
入力フォーム「カウント比率」は、各撮影範囲で検出されるガンマ線のカウント数における基準カウント数に対する比率を意味し、入力フォーム「カウント比率」の値が変更されると、表示フォーム「撮影時間」及び「累計時間」の値が更新される。また、基準カウント数は、予め登録されたカウント数である。なお、入力フォーム「カウント比率」の初期値は、「1.0」とし、各撮影範囲でカウント比率を均一とする場合、ユーザは入力フォーム「カウント比率」の値を変更する必要がない。
【0067】
なお、入力画面Gは、カウント比率を入力するための入力フォームの代わりにカウント数を入力するための入力フォームを有していてもよく、カウント比率を入力するための入力フォームに加えてカウント数を表示するための表示フォームを有していてもよく、或いは、カウント数を入力するための入力フォーム及びカウント比率を表示するための入力フォームの双方を有していてもよい。
【0068】
プルダウン「核種」は、ポジトロン核種を選択するためのものであり、プルダウン「核種」の値が変更されると、それに連動して表示フォーム「半減期」の値が更新され、且つ、表示フォーム「撮影時間」及び「累計時間」の値が更新される。なお、プルダウン「核種」の初期値は、「18F(フッ素)」とし、使用されるポジトロン核種が頻繁に変更されることがないことから、ユーザは基本的にプルダウン「核種」の値を変更する必要がない。
【0069】
表示フォーム「相対位置」は、一回目の撮影における半導体検出器3の位置からの相対的な移動距離の値を示し、表示フォーム「絶対位置」は、半導体検出器3の所定の初期位置からの絶対的な移動距離の値を示す。
【0070】
また、表示フォーム「撮影時間」は、撮影時間決定手段11によって決定される各撮影範囲の撮影時間を示し、表示フォーム「累計時間」は、一回目の撮影を開始してから各撮影範囲の撮影を終了するまでに要する時間を示す。
【0071】
また、保存ボタンは、現在表示されている入力画面Gの入力値のそれぞれを保存するためのボタンであり、開始ボタンは、現在表示されている入力画面Gの内容で撮影を開始させるためのボタンであり、閉じるボタンは、撮影を開始させることなく現在表示されている入力画面Gを閉じるためのボタンである。
【0072】
なお、入力画面Gは、等カウント比率を採用するか否かを選択するためのチェックボックスを備え、そのチェックボックスをチェックした場合に、全てのフォーム列における入力フォーム「カウント比率」の値を「1.0」としながら変更を禁止するようにしてもよい。
【0073】
また、入力画面Gは、入力フォーム「移動回数」の代わりに或いはそれに加えて、被検体Pの体長を入力するための入力フォーム「体長」を用意し、その入力フォーム「体長」に入力された値を予め登録された撮影幅(例えば、半導体検出器3の幅20.0mmである。)で除算することで撮影時間決定手段11が被検体Pの全身を撮影するために必要な移動回数を算出できるようにしてもよい。
【0074】
次に、図5を参照しながら、PET装置100が各撮影範囲の撮影時間を決定する処理(以下、「撮影時間決定処理」とする。)について説明する。なお、図5は、撮影時間決定処理の流れを示すフローチャートであり、PET装置100は、電源が投入された場合等、PET装置100による被検体Pの撮影を開始する前にこの撮影時間決定処理を実行する。
【0075】
最初に、PET装置100の制御部1は、表示部4に入力画面Gを表示させ、総撮影時間、移動回数、核種、撮影範囲毎の移動量、及び撮影範囲毎のカウント比率の値(以下、「各種入力値」とする。)をユーザが入力できるようにして各種入力値を取得する(ステップS1)。なお、入力の順番は、順不同である。
【0076】
その後、制御部1は、撮影時間決定手段11により、取得した総撮影時間、移動回数、核種、及び撮影範囲毎のカウント比率の値に基づいて各撮影範囲の撮影時間を決定し、決定した各撮影範囲の撮影時間及びその累積時間を入力画面G上の表示フォーム「撮影時間」及び「累積時間」のところに表示する(ステップS2)。
【0077】
同様に、制御部1は、取得した撮影範囲毎の移動量に基づいて各撮影における半導体検出器3の相対位置及び絶対位置を算出し、算出した値を入力画面G上の表示フォーム「相対位置」及び「絶対位置」のところに表示し、また、選択された核種に対応する半減期を表示フォーム「半減期」のところに表示する。
【0078】
その後、制御部1は、保存ボタンが押下されたか否かを判定し(ステップS3)、保存ボタンが押下されたと判定した場合には(ステップS3のYES)、現在入力画面G上に表示されている各種入力値をRAM又はNVRAMに記憶し(ステップS4)、次のステップに移行する。各種入力値を再利用できるようにするためである。
【0079】
一方、保存ボタンが押下されていないと判定した場合には(ステップS3のNO)、制御部1は、各種入力値をRAM又はNVRAMに記憶することなく次のステップに移行し、閉じるボタンが押下されたか否かを判定する(ステップS5)。
【0080】
閉じるボタンが押下されたと判定した場合(ステップS5のYES)、制御部1は、撮影を開始させることなくこの撮影時間決定処理を終了する。
【0081】
閉じるボタンが押下されていないと判定した場合(ステップS5のNO)、制御部1は、開始ボタンが押下されたか否かを判定し(ステップS6)、開始ボタンが押下されていないと判定した場合には(ステップS6のNO)、ステップS1〜S5の処理を繰り返すようにする。
【0082】
一方、開始ボタンが押下されたと判定した場合には(ステップS6のYES)、制御部1は、半導体検出器3を起動して一回目の撮影を開始させ(ステップS7)、画像処理手段10によりその撮影範囲に対応するPET画像を生成する。このとき、制御部1は、生成したPET画像を表示部4に出力してPET画像を表示部4にリアルタイムで表示するようにしてもよい。
【0083】
その後、制御部1は、相対位置変更手段12により、タイマに基づいて各撮影範囲の撮影時間を計測しながら、各撮影範囲の撮影時間が終了する度に、設定された撮影範囲毎の移動量だけ可動式ベッド50を移動させ、順次撮影を繰り返すようにする。
【0084】
以上の構成により、PET装置100は、被検体の幅が半導体検出器3の幅よりも大きいために半導体検出器3を移動させて撮影を繰り返しながら被検体の全身を撮影する場合であっても、各撮影範囲の撮影時間で検出するガンマ線のカウント数を制御でき、各撮影範囲をつなぎ合わせたときにも画質(ガンマ線のカウント数)が均一となる高品質なPET画像を生成することができる。
【0085】
また、PET装置100は、各撮影範囲を撮影する間は被検体Pと半導体検出器3との間の相対位置を固定とするので、被検体Pと半導体検出器3との間の相対位置を変化させながら撮影する場合に比べPET画像におけるポジトロン核種の位置ずれが少なく、例えば1mm未満の高い空間分解能を必要とする撮影に特に適している。
【0086】
また、PET装置100は、基本的には、被検体Pに応じて総撮影時間及び移動回数を入力するだけで高品質のPET画像を生成することができるので、各撮影範囲の撮影時間を別途計算したりする手間を省くことができ、操作性を向上させることができる。
【0087】
次に、図6を参照しながら、表示部4に表示される入力画面の別の例について説明する。
【0088】
図6の入力画面G1は、入力フォーム「総撮影時間」を値の変更ができない表示フォーム「総撮影時間」とし、一回目の撮影に関する表示フォーム「撮影時間」を値の変更が可能な入力フォーム「撮影時間」とし、且つ、一回目の撮影に関する入力フォーム「カウント比率」を省略した点で、図4の入力画面Gと相違するが、その他の点で共通する。
【0089】
このように、入力画面G1は、総撮影時間を入力させる代わりに一回目の撮影時間を入力させることで、撮影時間決定手段11が二回目以降の撮影時間を決定できるようにする。
【0090】
なお、一回目の撮影に関する入力フォーム「カウント比率」は、一回目の撮影時間を入力することによって一回目の撮影で検出されるカウント数が一意に決定されるので、変更できない値として省略されている。
【0091】
この場合、二回目以降の撮影に関する入力フォーム「カウント比率」は、一回目の撮影で検出されるカウント数を基準カウント数としてもよい。
【0092】
更に、入力画面G1は、一回目以外(例えば、最終回)の撮影に関する表示フォーム「撮影時間」を入力フォーム「撮影時間」とし、特定の撮影範囲に対する撮影時間を入力できるようにすることで、撮影時間決定手段11が、撮影時間を入力した回以外の撮影の撮影時間を決定できるようにしてもよい。
【0093】
この場合、撮影時間を入力した回の撮影に関する入力フォーム「カウント比率」が省略され、撮影時間を入力した回以外の撮影に関する入力フォーム「カウント比率」は、撮影時間を入力した回の撮影で検出されるカウント数を基準カウント数としてもよい。
【0094】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0095】
例えば、上述の実施例において、PET装置100は、総撮影時間、又は、特定の撮影範囲に対する撮影時間の入力を受けて各撮影範囲の撮影時間を決定するが、一回の撮影で検出する各ポジトロン核種が発するガンマ線のカウント数又はカウント比率の入力を受けて各撮影範囲の撮影時間を決定するようにしてもよい。
【0096】
また、PET装置100は、被検体の長さを測定する画像センサを備え、その画像センサが測定した被検体の長さ又は被検体の主要部(例えば、頭部及び胴体である。)の長さに基づいて撮影回数を自動的に決定するようにしてもよい。
【0097】
この場合、一回の撮影で検出する各ポジトロン核種が発するガンマ線のカウント数又はカウント比率が頻繁に変更されるものでなければ、PET装置100は、そのカウント数又はカウント比率における所定の初期値を採用することによって、ユーザによる何れの入力をも受けることなく各撮影範囲の撮影時間を自動的に決定して撮影を開始し、各撮影範囲におけるカウント数にバラツキがない高品質なPET画像を生成することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 制御部
2 入力部
3 半導体検出器
4 表示部
5 撮影範囲変更部
10 画像処理手段
11 撮影時間決定手段
12 相対位置変更手段
30 固定式ガントリ
50 可動式ベッド
100 PET装置
G、G1 入力画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内の放射性同位元素が発する放射線を半導体検出器で検出し前記放射性同位元素の被検体内における分布情報を撮影する放射線検出装置であって、
複数の撮影範囲を順番に撮影するために前記被検体と前記半導体検出器との間の相対的な位置関係を変化させる相対位置変更手段と、
各撮影範囲の撮影で検出する各放射性同位元素が発する放射線のカウント数を制御するために前記放射性同位元素の半減期に基づいて各撮影範囲の撮影時間を決定する撮影時間決定手段と、を備え、
前記相対位置変更手段は、前記撮影時間決定手段が決定した各撮影範囲の撮影時間に従って前記被検体と前記半導体検出器との間の相対的な位置関係を変化させる、
ことを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
前記撮影時間決定手段は、各撮影範囲の撮影で検出する各放射性同位元素が発する放射線のカウント数が均一となるよう各撮影範囲の撮影時間を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記撮影時間決定手段は、総撮影時間を所与として、各撮影範囲の撮影時間を決定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記撮影時間決定手段は、一の撮影範囲に対する撮影時間を所与として、他の各撮影範囲の撮影時間を決定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検出装置。
【請求項5】
前記撮影時間決定手段は、全撮影範囲の大きさと一の撮影範囲の大きさとに基づいて撮影回数を算出し、各撮影範囲の撮影時間を決定する、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の放射線検出装置。
【請求項6】
被検体内の放射性同位元素が発する放射線を半導体検出器で検出する放射線検出装置が複数の撮影範囲を順番に撮影するために前記被検体と前記半導体検出器との間の相対的な位置関係を変化させて前記放射性同位元素の被検体内における分布情報を撮影するようにコンピュータを動作させるプログラムであり、
各撮影範囲の撮影で検出する各放射性同位元素が発する放射線のカウント数を制御するために前記放射性同位元素の半減期に基づいて各撮影範囲の撮影時間を決定する撮影時間決定ステップ、
を備えることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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