説明

放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー、遺伝子マーカー、DNAオリゴマーセット、および副作用発症予測方法

【課題】 オーダーメイド放射線治療を具現化するために、がん患者の放射線治療における副作用を発症する危険率の程度を予め予測することのできる放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー、遺伝子マーカー、DNAオリゴマーセット(PCR用プライマーセット)とDNAオリゴマー(伸長用プライマー)、および放射線治療における副作用発症予測方法を提供する。
【解決手段】 本発明の放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーは、DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、がんの放射線治療において副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、特定のDNA塩基配列について、特定の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子の一塩基多型を判定の指標とした放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー、当該放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーを用いた副作用発症予測用遺伝子マーカー、当該放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーを得てSNPの判定を行うためのDNAオリゴマーセット(PCR用プライマー)とDNAオリゴマー(伸長プライマー)、当該放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーを用いた副作用発症予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
年間約50万人が罹患すると言われているがんは、日本人の死亡原因の1位であり、その克服は国民の悲願である。
放射線治療は、がんに対する有効な局所療法の一つであるが、外科手術と異なり、病巣部を切除せずに治療することが可能であるため、身体機能や形態の温存の観点から優れた治療方法であるということができる。すなわち、外科手術のように身体にメスを入れないことから、患者の精神的な負担も軽く、手術後の社会復帰も容易であるので、患者のQOL(Quality of Life)を高めることができるという利点もあって、今後、大いに発展が望まれる治療方法である。
【0003】
また、放射線治療は患者への負担も軽く、合併症を有する患者や高齢者にも適応することができる利点もある。さらに、近年では、CTやMRIなどの画像情報をもとに病巣の位置・形状・大きさを3次元座標上で正確に決定し、病巣へ線量を集中できる定位(的)放射線治療の技術も確立されている。
【0004】
このように、放射線治療はがんの治療において非常に有用な治療方法であるが、照射した放射線により皮膚に潰瘍が生じたり、腸穿孔や肺炎を合併するなどの重篤な副作用を伴ったり、場合によっては放射線治療を中断しなければならない放射線感受性の高いがん患者がいる。
【0005】
このような放射線に対する感受性の違いは、それぞれのがん患者が有するDNA塩基配列の相違に関連していると考えられる。このようなDNA塩基配列の相違は一般には多型(ポリモルフィズム)と呼ばれ、以下のように分類することができる。すなわち、(1)1から数十塩基が欠失や挿入をしている多型(挿入/欠失多型)、(2)2塩基から数十塩基を1単位とする配列が繰り返されている多型(VNTRやマイクロサテライト多型)、そして、(3)1個の塩基が他の塩基に置き換わっている多型(一塩基多型)、である。
【0006】
これらの中でも(3)の一塩基多型(SNP;single nucleotide polymorphism)は、数百塩基対から1000塩基対に1箇所の割合で存在していると推測され、ヒトの全ゲノム中には300万〜1000万のSNPがあると考えられている。そして、このSNPが各人の顔立ちや性格、医薬品に対する応答性などの、いわゆる“個性”に強い影響を及ぼしていると考えられている(非特許文献1参照)。
【非特許文献1】監修・松原謙一、榊佳之、編集・中村祐輔「ポストシークエンスのゲノム科学(1) SNP遺伝子多型の戦略」、中山書店、2頁および3頁、2000年6月出版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
放射線に対する感受性も、SNPをはじめとする遺伝子のDNA塩基配列の相違が大きく影響していると考えられる。これはすなわち、放射線治療前にDNA塩基配列を調べることにより、がん患者の放射線に対する感受性の程度を予め知ることができれば、オーダーメイド放射線治療を実現することが可能になると考えられる。
しかしながら、どのような遺伝子が放射線の感受性に関与し、また、どのSNPが放射線の感受性に影響を与えているのかということに関しては、ほとんど研究が進んでいない状況であった。そのため、オーダーメイド放射線治療を具現するための指標を設定することができなかった。
【0008】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、オーダーメイド放射線治療を具現化するために、がん患者の放射線に対する感受性の程度を予め予測することのできる放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー、遺伝子マーカー、DNAオリゴマーセット(PCR用プライマーセット)とDNAオリゴマー(伸長用プライマー)、および、放射線治療における副作用発症予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、cSNP(coding SNP)やrSNP(regulatory SNP)、iSNP(intron SNP)を中心にSNPタイピングを行えば、前記課題が解決でき、オーダーメイド放射線治療の実現を図ることができると考え、鋭意研究に励んだ。その結果、放射線治療後、副作用を発症した患者(以下、発症群という)と副作用を発症しなかった、あるいは軽微な発症であった患者(以下、非発症群という)の遺伝子のDNA塩基配列の決定を行った結果、発症群のアレル(allele;対立遺伝子)の出現頻度と、非発症群のアレルの出現頻度との間に統計学的に有意な差を見出すことができ、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、〔1〕DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、がんの放射線治療において副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、配列表の配列番号1から配列番号173のうちのいずれかに示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーや、〔2〕DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、乳がんの放射線治療において副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、配列表の配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号26、配列番号27、配列番号30、配列番号32、配列番号44、配列番号45、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号53、配列番号54、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号73、配列番号74、配列番号77、配列番号78、配列番号82、配列番号85、配列番号88、配列番号90、配列番号91、配列番号94、配列番号97、配列番号98、配列番号106、配列番号108、配列番号112、配列番号113、配列番号116、配列番号117、配列番号126、配列番号127、配列番号132、配列番号133、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号143、配列番号145、配列番号147、配列番号148、配列番号151、配列番号157、配列番号159、配列番号160、配列番号162、配列番号163、配列番号165、配列番号167、配列番号170、配列番号172、または配列番号173に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーや、〔3〕DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、子宮頸がんの放射線治療において副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、配列表の配列番号2、配列番号6、配列番号22、配列番号23、配列番号29、配列番号31、配列番号34、配列番号36、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号52、配列番号56、配列番号60、配列番号64、配列番号65、配列番号68、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号75、配列番号76、配列番号80、配列番号83、配列番号86、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号98、配列番号105、配列番号110、配列番号114、配列番号118、配列番号119、配列番号121、配列番号129、配列番号134、配列番号139、配列番号141、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号149、配列番号150、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号155、配列番号157、配列番号161、または配列番号171に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーや、〔4〕DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、前立腺がんの放射線治療において副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、配列表の配列番号3、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号19、配列番号21、配列番号24、配列番号25、配列番号28、配列番号33、配列番号35、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号45、配列番号47、配列番号48、配列番号55、配列番号57、配列番号66、配列番号69、配列番号73、配列番号79、配列番号81、配列番号84、配列番号87、配列番号92、配列番号95、配列番号96、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号115、配列番号116、配列番号120、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号131、配列番号135、配列番号151、配列番号156、配列番号158、配列番号160、配列番号164、配列番号166、配列番号168、または配列番号169に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーや、〔5〕DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、がんの放射線治療開始から早期のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、配列表の配列番号2、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号36、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号48、配列番号52、配列番号56、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号75、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号81、配列番号86、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号99、配列番号102、配列番号103、配列番号105、配列番号106、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号117、配列番号118、配列番号120、配列番号121、配列番号126、配列番号127、配列番号129、配列番号132、配列番号134、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号141、配列番号143、配列番号144、配列番号146、配列番号147、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号157、配列番号158、配列番号160、配列番号162、配列番号163、配列番号165、配列番号167、配列番号168、配列番号169、または配列番号171に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーや、〔6〕DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、がんの放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、配列表の配列番号5、配列番号8、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号33、配列番号45、配列番号48、配列番号49、配列番号53、配列番号55、配列番号58、配列番号69、配列番号77、配列番号87、配列番号100、配列番号101、配列番号104、配列番号108、配列番号109、配列番号111、配列番号115、配列番号116、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号128、配列番号133、配列番号136、配列番号145、配列番号148、配列番号151、配列番号156、配列番号159、配列番号160、配列番号162、または配列番号170に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーや、〔7〕DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、配列表の配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号19、配列番号30、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号46、配列番号47、配列番号50、配列番号51、配列番号54、配列番号57、配列番号60、配列番号62、配列番号63、配列番号67、配列番号68、配列番号73、配列番号74、配列番号79、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号88、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号102、配列番号107、配列番号110、配列番号119、配列番号130、配列番号131、配列番号135、配列番号139、配列番号142、配列番号155、配列番号161、配列番号164、配列番号166、配列番号172、または配列番号173に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーや、〔8〕DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、乳がんの放射線治療開始から早期のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、配列表の配列番号7、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号26、配列番号27、配列番号32、配列番号44、配列番号45、配列番号59、配列番号61、配列番号65、配列番号73、配列番号78、配列番号90、配列番号91、配列番号94、配列番号98、配列番号106、配列番号112、配列番号113、配列番号117、配列番号127、配列番号132、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号143、配列番号147、配列番号157、配列番号160、配列番号162、配列番号163、配列番号165、または配列番号167に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーや、〔9〕DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、乳がんの放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、配列表の配列番号48、配列番号49、配列番号53、配列番号58、配列番号77、配列番号108、配列番号116、配列番号126、配列番号133、配列番号136、配列番号145、配列番号148、配列番号151、配列番号159、配列番号162、または配列番号170に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーや、〔10〕DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、乳がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステ
ージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、配列表の配列番号1、配列番号4、配列番号30、配列番号50、配列番号51、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号63、配列番号67、配列番号74、配列番号82、配列番号85、配列番号88、配列番号97、配列番号172、または配列番号173に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーや、〔11〕DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、子宮頸がんの放射線治療開始から早期のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、配列表の配列番号2、配列番号22、配列番号23、配列番号29、配列番号31、配列番号34、配列番号36、配列番号43、配列番号44、配列番号52、配列番号56、配列番号60、配列番号64、配列番号65、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号75、配列番号76、配列番号80、配列番号86、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号98、配列番号105、配列番号114、配列番号118、配列番号121、配列番号129、配列番号134、配列番号141、配列番号144、配列番号146、配列番号149、配列番号150、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号157、または配列番号171に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーや、〔12〕DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、子宮頸がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、配列表の配列番号6、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号42、配列番号46、配列番号68、配列番号83、配列番号110、配列番号119、配列番号139、配列番号142、配列番号155、または配列番号161に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーや、〔13〕DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、前立腺がんの放射線治療開始から早期のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、配列表の配列番号5、配列番号8、配列番号24、配列番号25、配列番号28、配列番号33、配列番号48、配列番号66、配列番号81、配列番号92、配列番号96、配列番号99、配列番号102、配列番号103、配列番号120、配列番号126、配列番号151、配列番号158、配列番号168、または配列番号169に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーや、〔14〕DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、前立腺がんの放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、配列表の配列番号5、配列番号8、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号33、配列番号45、配列番号48、配列番号55、配列番号69、配列番号87、配列番号100、配列番号101、配列番号104、配列番号109、配列番号111、配列番号115、配列番号116、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号128、配列番号156、または配列番号160に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーや、〔15〕DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、前立腺がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、配列表の配列番号3、配列番号5、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号19、配列番号35、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号47、配列番号57、配列番号73、配列番号79、配列番号84、配列番号95、配列番号96、配列番号102、配列番号107、配列番号130、配列番号131、配列番号135、配列番号164、または配列番号166に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーや、〔16〕前記〔1〕から〔15〕に記載の副作用発症予測用DNAオリゴマーにおいて、121番目の塩基以外の塩基が1個若しくは数個欠失、置換若しくは付加しているDNAオリゴマー、または、これらの相補的なDNA塩基配列を有するDNAオリゴマーであることを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー、を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、〔17〕前記〔1〕から〔16〕のうちいずれか一つに記載の副作用発症予測用DNAオリゴマー、または、この副作用発症予測用DNAオリゴマーとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAオリゴマーであることを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用遺伝子マーカーや、〔18〕配列表の配列番号174から配列番号519に示すDNA塩基配列を有するDNAオリゴマーのうち、配列番号174から順次2つのDNAオリゴマーを1セットとして用いることを特徴とするDNAオリゴマーセットや、〔19〕配列表の配列番号174から配列番号519に示すDNA塩基配列を有するDNAオリゴマー、または、当該DNAオリゴマーのうち、1個若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加したことを特徴とする〔11〕に記載のDNAオリゴマーセットや、〔20〕配列表の配列番号520から配列番号692に示すDNA塩基配列を有するDNAオリゴマー、または、当該DNAオリゴマーのうち、1個若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加したことを特徴とするDNAオリゴマー、を提供するものである。
【0012】
さらに、本発明は、〔21〕配列表の配列番号1から配列番号173のいずれかに示すDNAオリゴマーを用いて判定を行う、下記(a)〜(g)の工程を含むことを特徴とする放射線治療における副作用発症予測方法、(a)放射線治療が施行される予定のがん患者から採取した試料をもとにDNA試料を調製する工程、(b)前記(a)の工程で調製した前記DNA試料をもとにDNAを増幅してDNA産物を得る工程、(c)前記(b)の工程で増幅したDNA産物を鋳型として伸長反応を行い、伸長産物であるDNAオリゴマーを得る工程、(d)前記(c)の工程で得られたDNAオリゴマーのDNA塩基配列を解析する工程、(e)前記(d)の工程で解析されたDNAオリゴマーのDNA塩基配列のうち121番目の位置に相当する塩基と、配列表の配列番号1から配列番号173のいずれかに示すDNA塩基配列の121番目の塩基とを照合する工程、(f)前記(e)の工程で照合された塩基を有するアレルがリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定する工程、(g)前記(f)の工程で判定した結果から、前記放射線治療が施行される予定のがん患者における放射線による副作用の発症危険率を予測する工程、〔22〕前記(e)の工程で照合する配列表の配列番号1から配列番号173のいずれかに示すDNA塩基配列は、乳がんの放射線治療における副作用の発症予測については、配列表の配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号26、配列番号27、配列番号30、配列番号32、配列番号44、配列番号45、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号53、配列番号54、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号73、配列番号74、配列番号77、配列番号78、配列番号82、配列番号85、配列番号88、配列番号90、配列番号91、配列番号94、配列番号97、配列番号98、配列番号106、配列番号108、配列番号112、配列番号113、配列番号116、配列番号117、配列番号126、配列番号127、配列番号132、配列番号133、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号143、配列番号145、配列番号147、配列番号148、配列番号151、配列番号157、配列番号159、配列番号160、配列番号162、配列番号163、配列番号165、配列番号167、配列番号170、配列番号172、または配列番号173に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、子宮頸がんの放射線治療における副作用の発症予測については、配列表の配列番号2、配列番号6、配列番号22、配列番号23、配列番号29、配列番号31、配列番号34、配列番号36、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号52、配列番号56、配列番号60、配列番号64、配列番号65、配列番号68、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号75、配列番号76、配列番号80、配列番号83、配列番号86、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号98、配列番号105、配列番号110、配列番号114、配列番号118、配列番号119、配列番号121、配列番号129、配列番号134、配列番号139、配列番号141、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号149、配列番号150、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号155、配列番号157、配列番号161、または配列番号171に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、前立腺がんの放射線治療における副作用の発症予測については、配列表の配列番号3、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号19、配列番号21、配列番号24、配列番号25、配列番号28、配列番号33、配列番号35、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号45、配列番号47、配列番号48、配列番号55、配列番号57、配列番号66、配列番号69、配列番号73、配列番号79、配列番号81、配列番号84、配列番号87、配列番号92、配列番号95、配列番号96、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号115、配列番号116、配列番号120、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号131、配列番号135、配列番号151、配列番号156、配列番号158、配列番号160、配列番号164、配列番号166、配列番号168、または配列番号169に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、がんの放射線治療開始から早期のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号2、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号36、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号48、配列番号52、配列番号56、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号75、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号81、配列番号86、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号99、配列番号102、配列番号103、配列番号105、配列番号106、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号117、配列番号118、配列番号120、配列番号121、配列番号126、配列番号127、配列番号129、配列番号132、配列番号134、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号141、配列番号143、配列番号144、配列番号146、配列番号147、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号157、配列番号158、配列番号160、配列番号162、配列番号163、配列番号165、配列番号167、配列番号168、配列番号169、または配列番号171に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、がんの放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号5、配列番号8、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号33、配列番号45、配列番号48、配列番号49、配列番号53、配列番号55、配列番号58、配列番号69、配列番号77、配列番号87、配列番号100、配列番号101、配列番号104、配列番号108、配列番号109、配列番号111、配列番号115、配列番号116、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号128、配列番号133、配列番号136、配列番号145、配列番号148、配列番号151、配列番号156、配列番号159、配列番号160、配列番号162、または配列番号170に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号19、配列番号30、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号46、配列番号47、配列番号50、配列番号51、配列番号54、配列番号57、配列番号60、配列番号62、配列番号63、配列番号67、配列番号68、配列番号73、配列番号74、配列番号79、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号88、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号102、配列番号107、配列番号110、配列番号119、配列番号130、配列番号131、配列番号135、配列番号139、配列番号142、配列番号155、配列番号161、配列番号164、配列番号166、配列番号172、または配列番号173に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、乳がんの放射線治療開始から早期のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号7、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号26、配列番号27、配列番号32、配列番号44、配列番号45、配列番号59、配列番号61、配列番号65、配列番号73、配列番号78、配列番号90、配列番号91、配列番号94、配列番号98、配列番号106、配列番号112、配列番号113、配列番号117、配列番号127、配列番号132、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号143、配列番号147、配列番号157、配列番号160、配列番号162、配列番号163、配列番号165、または配列番号167に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、乳がんの放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号48、配列番号49、配列番号53、配列番号58、配列番号77、配列番号108、配列番号116、配列番号126、配列番号133、配列番号136、配列番号145、配列番号148、配列番号151、配列番号159、配列番号162、または配列番号170に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、乳がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号1、配列番号4、配列番号30、配列番号50、配列番号51、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号63、配列番号67、配列番号74、配列番号82、配列番号85、配列番号88、配列番号97、配列番号172、または配列番号173に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、子宮頸がんの放射線治療開始から早期のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号2、配列番号22、配列番号23、配列番号29、配列番号31、配列番号34、配列番号36、配列番号43、配列番号44、配列番号52、配列番号56、配列番号60、配列番号64、配列番号65、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号75、配列番号76、配列番号80、配列番号86、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号98、配列番号105、配列番号114、配列番号118、配列番号121、配列番号129、配列番号134、配列番号141、配列番号144、配列番号146、配列番号149、配列番号150、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号157、または配列番号171に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、子宮頸がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号6、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号42、配列番号46、配列番号68、配列番号83、配列番号110、配列番号119、配列番号139、配列番号142、配列番号155、または配列番号161に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、前立腺がんの放射線治療開始から早期のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号5、配列番号8、配列番号24、配列番号25、配列番号28、配列番号33、配列番号48、配列番号66、配列番号81、配列番号92、配列番号
96、配列番号99、配列番号102、配列番号103、配列番号120、配列番号126、配列番号151、配列番号158、配列番号168、または配列番号169に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、前立腺がんの放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号5、配列番号8、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号33、配列番号45、配列番号48、配列番号55、配列番号69、配列番号87、配列番号100、配列番号101、配列番号104、配列番号109、配列番号111、配列番号115、配列番号116、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号128、配列番号156、または配列番号160に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、前立腺がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号3、配列番号5、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号19、配列番号35、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号47、配列番号57、配列番号73、配列番号79、配列番号84、配列番号95、配列番号96、配列番号102、配列番号107、配列番号130、配列番号131、配列番号135、配列番号164、または配列番号166に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用いる、ことを特徴とする〔21〕に記載の放射線治療における副作用発症予測方法、を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーや副作用発症予測用遺伝子マーカーを用いて、遺伝子のDNA塩基配列のうちの、特定の一塩基多型(SNP)を検出することで、放射線治療による副作用を発症する危険率を予測することができる。したがって、本発明によれば、オーダーメイド放射線治療の実現に資することとなる。
【0014】
また、本発明のDNAオリゴマーセット(PCR用プライマー)を用いれば、がん患者等の被験者から調製したDNA試料をもとに特定の一塩基多型(SNP)を含むDNAの増幅を容易に行うことができる。さらに、本発明のDNAオリゴマー(伸長プライマー)を用いれば、容易にその特定のSNPサイトの塩基種を判定することが可能となる。したがって、放射線治療による副作用を発症する危険率を予測する方法を容易化することができる。
【0015】
本発明の副作用発症予測方法によれば、放射線治療を施行する予定であるがん患者から採取したDNA試料に含まれるSNP情報から、放射線による副作用を発症する危険率を予測することができる。すなわち、オーダーメイド放射線治療を行うことが可能となる。
【0016】
本発明によれば、乳がん、子宮頸がん、および前立腺がんについて、放射線治療の開始から早期(3ヶ月未満)、晩期3ヶ月、晩期6ヶ月の各ステージにおける副作用の発症する危険率を予め予測することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明の内容は以下に説明する内容に限定されるものではない。
〔1.DNAオリゴマー(1)および遺伝子マーカー〕
本発明における「放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー」とは、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173に示されているDNA塩基配列のうち、121番目の塩基を含んでなる、少なくとも10〜241塩基のオリゴヌクレオチド(DNAオリゴマー)をいう。
ただし、本発明においては121番目の塩基を含む10〜241の連続したDNA塩基配列を有していればよく、DNA塩基配列の長短について特に限定されるものではない。すなわち、前記したように、10塩基以上241塩基以下のDNAオリゴマーであってもよく、また、241塩基を超えるものであっても構わない。例えば、染色体上にかかるDNA塩基配列が存在していれば、これよりもさらに長いDNAオリゴマー(例えば、121番目の塩基を含む、連続した250塩基のDNAオリゴマーや、500塩基のDNAオリゴマー、あるいは、さらに長いDNAオリゴマー)であっても本発明の配列表の配列番号1から配列番号173に示すDNAオリゴマーに該当することはいうまでもない。
【0018】
本発明においては、121番目に示す塩基がリスクアレルとなる。「リスクアレル」とは、特定のSNPサイトにおいて、放射線治療行った後に副作用(障害)の発症しやすい者の有するアレル(allele;対立遺伝子)中の塩基と、副作用の発症しにくい者の有するアレル中の塩基と、が異なる塩基であって、当該副作用の発症しやすいものが有するアレルをいう。したがって、SNPタイピングを行ってこのリスクアレルを認識することができれば、放射線治療による副作用の発症の危険率を予測することが可能となる。
なお、本発明で指定する121番目の塩基であることを認識することができれば、DNAオリゴマーにおける位置は限定されない。すなわち、当該リスクアレルとなるSNPサイトはDNA塩基配列中の中ほどに位置するようにすることができるほか、5′末端や3′末端に位置するようにすることも可能である。
これに対し、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173のいずれかと同一または実質的に同一であるDNA塩基配列を含む遺伝子または染色体DNAにおいて、前記のリスクアレルに相当するSNPサイトに存在するリスクアレルとは異なる塩基であるアレルを本発明では「非リスクアレル」と呼ぶこととする。
【0019】
配列表の配列番号1から配列番号173に示すDNAオリゴマー(またはそのDNA塩基配列の情報)は、DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、がんの放射線治療において副作用が発症する虞があることを予測するために用いることができる。特に、下記の(1)から(14)に記載する態様で好適に用いることができる。
【0020】
(1)乳がんの放射線治療における副作用の発症予測については、配列表の配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号26、配列番号27、配列番号30、配列番号32、配列番号44、配列番号45、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号53、配列番号54、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号73、配列番号74、配列番号77、配列番号78、配列番号82、配列番号85、配列番号88、配列番号90、配列番号91、配列番号94、配列番号97、配列番号98、配列番号106、配列番号108、配列番号112、配列番号113、配列番号116、配列番号117、配列番号126、配列番号127、配列番号132、配列番号133、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号143、配列番号145、配列番号147、配列番号148、配列番号151、配列番号157、配列番号159、配列番号160、配列番号162、配列番号163、配列番号165、配列番号167、配列番号170、配列番号172、または/および、配列番号173に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を好適に用いることができる。
【0021】
(2)子宮頸がんの放射線治療における副作用の発症予測については、配列表の配列番号2、配列番号6、配列番号22、配列番号23、配列番号29、配列番号31、配列番号34、配列番号36、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号52、配列番号56、配列番号60、配列番号64、配列番号65、配列番号68、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号75、配列番号76、配列番号80、配列番号83、配列番号86、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号98、配列番号105、配列番号110、配列番号114、配列番号118、配列番号119、配列番号121、配列番号129、配列番号134、配列番号139、配列番号141、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号149、配列番号150、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号155、配列番号157、配列番号161、または/および、配列番号171に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を好適に用いることができる。
【0022】
(3)前立腺がんの放射線治療における副作用の発症予測については、配列表の配列番号3、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号19、配列番号21、配列番号24、配列番号25、配列番号28、配列番号33、配列番号35、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号45、配列番号47、配列番号48、配列番号55、配列番号57、配列番号66、配列番号69、配列番号73、配列番号79、配列番号81、配列番号84、配列番号87、配列番号92、配列番号95、配列番号96、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号115、配列番号116、配列番号120、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号131、配列番号135、配列番号151、配列番号156、配列番号158、配列番号160、配列番号164、配列番号166、配列番号168、または/および、配列番号169に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を好適に用いることができる。
【0023】
(4)がんの放射線治療開始から早期のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号2、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号36、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号48、配列番号52、配列番号56、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号75、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号81、配列番号86、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号99、配列番号102、配列番号103、配列番号105、配列番号106、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号117、配列番号118、配列番号120、配列番号121、配列番号126、配列番号127、配列番号129、配列番号132、配列番号134、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号141、配列番号143、配列番号144、配列番号146、配列番号147、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号157、配列番号158、配列番号160、配列番号162、配列番号163、配列番号165、配列番号167、配列番号168、配列番号169、または/および、配列番号171に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を好適に用いることができる。
【0024】
(5)がんの放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号5、配列番号8、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号33、配列番号45、配列番号48、配列番号49、配列番号53、配列番号55、配列番号58、配列番号69、配列番号77、配列番号87、配列番号100、配列番号101、配列番号104、配列番号108、配列番号109、配列番号111、配列番号115、配列番号116、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号128、配列番号133、配列番号136、配列番号145、配列番号148、配列番号151、配列番号156、配列番号159、配列番号160、配列番号162、または/および、配列番号170に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を好適に用いることができる。
【0025】
(6)がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号19、配列番号30、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号46、配列番号47、配列番号50、配列番号51、配列番号54、配列番号57、配列番号60、配列番号62、配列番号63、配列番号67、配列番号68、配列番号73、配列番号74、配列番号79、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号88、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号102、配列番号107、配列番号110、配列番号119、配列番号130、配列番号131、配列番号135、配列番号139、配列番号142、配列番号155、配列番号161、配列番号164、配列番号166、配列番号172、または/および、配列番号173に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を好適に用いることができる。
【0026】
(7)乳がんの放射線治療開始から早期のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号7、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号26、配列番号27、配列番号32、配列番号44、配列番号45、配列番号59、配列番号61、配列番号65、配列番号73、配列番号78、配列番号90、配列番号91、配列番号94、配列番号98、配列番号106、配列番号112、配列番号113、配列番号117、配列番号127、配列番号132、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号143、配列番号147、配列番号157、配列番号160、配列番号162、配列番号163、配列番号165、または/および、配列番号167に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を好適に用いることができる。
【0027】
(8)乳がんの放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号48、配列番号49、配列番号53、配列番号58、配列番号77、配列番号108、配列番号116、配列番号126、配列番号133、配列番号136、配列番号145、配列番号148、配列番号151、配列番号159、配列番号162、または/および、配列番号170に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を好適に用いることができる。
【0028】
(9)乳がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号1、配列番号4、配列番号30、配列番号50、配列番号51、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号63、配列番号67、配列番号74、配列番号82、配列番号85、配列番号88、配列番号97、配列番号172、または/および、配列番号173に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を好適に用いることができる。
【0029】
(10)子宮頸がんの放射線治療開始から早期のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号2、配列番号22、配列番号23、配列番号29、配列番号31、配列番号34、配列番号36、配列番号43、配列番号44、配列番号52、配列番号56、配列番号60、配列番号64、配列番号65、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号75、配列番号76、配列番号80、配列番号86、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号98、配列番号105、配列番号114、配列番号118、配列番号121、配列番号129、配列番号134、配列番号141、配列番号144、配列番号146、配列番号149、配列番号150、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号157、または/および、配列番号171に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列好適に用いることができる。
【0030】
(11)子宮頸がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号6、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号42、配列番号46、配列番号68、配列番号83、配列番号110、配列番号119、配列番号139、配列番号142、配列番号155、または/および、配列番号161に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を好適に用いることができる。
【0031】
(12)前立腺がんの放射線治療開始から早期のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号5、配列番号8、配列番号24、配列番号25、配列番号28、配列番号33、配列番号48、配列番号66、配列番号81、配列番号92、配列番号96、配列番号99、配列番号102、配列番号103、配列番号120、配列番号126、配列番号151、配列番号158、配列番号168、または/および、配列番号169に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を好適に用いることができる。
【0032】
(13)前立腺がんの放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号5、配列番号8、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号33、配列番号45、配列番号48、配列番号55、配列番号69、配列番号87、配列番号100、配列番号101、配列番号104、配列番号109、配列番号111、配列番号115、配列番号116、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号128、配列番号156、または/および、配列番号160に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を好適に用いることができる。
【0033】
(14)前立腺がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号3、配列番号5、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号19、配列番号35、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号47、配列番号57、配列番号73、配列番号79、配列番号84、配列番号95、配列番号96、配列番号102、配列番号107、配列番号130、配列番号131、配列番号135、配列番号164、または/および、配列番号166に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を好適に用いることができる。
【0034】
本発明で用いるリスクアレルを含んだDNAオリゴマーは、121番目の塩基(リスクアレル)を含んだ10〜241塩基の連続したDNAオリゴマーとして、適宜適切な長さを設定して用いることができる。
例えば、かかるDNAオリゴマーを標識プローブなどの遺伝子マーカーとして用いる場合は、例えば、20〜200塩基の長さとするのが好ましいが、30〜150塩基の長さとすることや、35〜100塩基の長さとすることもできるし、また200塩基以上であってもよい。適切な長さを選択すれば、特異的なハイブリダイズを行うことができるほか、例えば電気泳動の泳動度の差異を容易に認識することができ、適切にSNPタイピングを行うことができる。一方、塩基数が少なすぎると非特異的なハイブリダイズが生じる虞があり、塩基数が多すぎると泳動度に差異が生じにくくなるので不適である。
【0035】
本発明は、前記で説明したDNAオリゴマーを解析/検出することで、放射線治療における副作用の発症のしやすさに影響する遺伝的素因を有するか否かを解析し、その結果から放射線による副作用を発症する危険性を予測するためになされたものである。
したがって、解析したDNA塩基配列と、配列表の配列番号1から配列番号173のうちのいずれかのDNA塩基配列とを対比し、本発明で特定されているリスクアレルと合致するか、あるいは、非リスクアレルに該当するかを確認することで、放射線に対して副作用を発症しやすい型の塩基配列(発症群)であるか、副作用を発症しにくい型の塩基配列(非発症群)であるかを判定することができる。すなわち、リスクアレルを有する者は、非リスクアレルを有する者よりも放射線治療における副作用を発症しやすい遺伝的素因を有している、と判断することができる。
【0036】
ここで、本発明に係るDNAオリゴマーは、当該121番目の塩基以外の塩基が、1個または複数個欠失、置換若しくは付加していてもよく、また、その相補鎖であっても構わない。すなわち、本発明の特許請求の範囲と配列表で特定するSNPサイトを含むものであれば、それ以外の箇所に塩基の置換、欠失、挿入等が起こっていても、実質的に同一またはこれと相補的なDNA塩基配列を有しているDNAオリゴマーであれば本発明のDNAオリゴマーと同等のものである。
【0037】
さらに、このようなDNAオリゴマーは、DNAポリメラーゼ、特に耐熱性ポリメラーゼ(例えばTaqポリメラーゼ)などの種々のポリメラーゼによって複製あるいは増幅されたDNA産物を好適に用いることができる。
そして、本発明のDNAオリゴマーは、それが有するDNA塩基配列を直接解析するために好適に用いることができる。このDNAオリゴマーのDNA塩基配列の直接的な解析には、従来公知のDNAシーケンサーや質量分析機などを好適に用いることができる。
また、本発明のDNAオリゴマーは、いわゆるプローブなどの遺伝子マーカーとして好適に用いることができる。
【0038】
本発明のDNAオリゴマーを遺伝子マーカーとして用いる場合は、DNA塩基配列の末端、または、DNA塩基配列中のいずれかの塩基を蛍光色素や放射性同位元素などで標識化した遺伝子マーカー(標識プローブ)とするのがより好ましい。標識遺伝子マーカーとすれば、蛍光強度や放射線量を測定することによって容易に検出可能となるほか、例えば、X線フィルムを蛍光で感光させる、あるいは、放射線で感光させるなどして、容易に検出することも可能となる。なお、放射線量や蛍光強度の測定は、従来公知の放射線検出装置や蛍光測定装置などを好適に用いることができる。また、このように蛍光色素を標識化しておけば、DNAシーケンサーによって適切に解析することができる。
【0039】
標識化するために用いる放射性同位元素としては、例えば、32Pや35Sなどの通常用いられる放射性同位元素を挙げることができる。また、標識化するために用いる蛍光色素としては、例えば、FAMTM、Yakima YellowTM、VICTM、TAMRATM、ROXTM、Cy3TM、Cy5TM、HEXTM、TETTM、FITCなどの通常用いられる蛍光色素を挙げることができる。
【0040】
以上説明したように、本発明の放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーは、そのDNA塩基配列を直接解析することや、当該DNAオリゴマーを遺伝子マーカーとして用いることにより、好適に一塩基多型の検出、すなわちSNPタイピングを好適に行うことができる。なお、一般的に「多型」とは、人口中1%以上の頻度で存在している塩基の変化と定義されているが、本発明における「多型」は、この定義に限定されず、1%未満の塩基の変化も「多型」に含めることとする。
【0041】
〔2.DNAオリゴマーセット〕
配列表の配列番号174から配列番号519に示すDNAオリゴマーは、配列番号174から順次2つのDNAオリゴマーを1セットとするDNAオリゴマーセット、として用いるのが好ましい。
かかるDNAオリゴマーセットの中から適宜適切な1セットのDNAオリゴマーセットを選択してDNAの増幅に用いれば、配列表の配列番号1から配列番号173に示す任意のDNAオリゴマーを特異的に増幅することができる。なお、このDNAオリゴマーセットのうち、配列番号の小さいDNAオリゴマーがフォワードプライマーであり、配列番号の大きいDNAオリゴマーがリバースプライマーに該当する。これら2種類のプライマーに対応する配列に挟まれた部分がPCR増幅反応によって増幅される対象となる。
【0042】
このように、配列表の配列番号174から配列番号519に示すDNAオリゴマーセットは、特にPCR(Polymerase Chain Reaction)を行う際に好適に用いることができることから、本発明のDNAオリゴマーセットは、PCR増幅用のプライマーセットとして用いることが好ましい。したがって、このPCR増幅用のプライマーセットを用いれば、特定のDNA塩基配列を有するDNAオリゴマー、すなわち、配列表の配列番号1から配列番号157に示す、特定のSNPサイト(本発明においては121番目の塩基が特定のSNPサイトである。)を含むDNAオリゴマーを確実、簡便かつ特異的に増幅することができる。
なお、このDNAオリゴマーセットを構成するそれぞれのDNAオリゴマーは、それが有するDNA塩基配列のうち、1個若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加したものであってもよい。また、配列番号174から配列番号519に示すDNAオリゴマーには、必要に応じて適宜の制限酵素認識配列(例えば「5'-ACGTTGGATG-3'」(配列番号693)のような10塩基程度のDNAオリゴマー)を、DNAオリゴマーの5′上流側に付加して用いてもよい。このように付加した配列は、PCRによる増幅反応を安定化させる効果を有する。なお、付加する塩基配列はこれに限られることはなく、同様の効果を奏するものであればどのような配列でも用いることができる。
【0043】
〔3.DNAオリゴマー(2)〕
また、配列表の配列番号520から配列番号692に示すDNAオリゴマーは、その3′末端が、配列表の配列番号1から配列番号174に示すDNAオリゴマーのうち、特定のSNPサイトである塩基に隣接するように設計している。したがって、かかるDNAオリゴマーを用いて酵素的に1から数塩基伸長すれば、生じたDNAオリゴマーは多型に応じて長さが異なったものとなる。また、このDNAオリゴマーも、当該DNAオリゴマーのうち、1個若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加したものとすることが可能である。
【0044】
そして、配列表の配列番号520から配列番号692に示すDNAオリゴマーは、3′側がリスクアレルに隣接する10〜24塩基の長さとするのが好ましく、15〜24塩基の長さとするのがより好ましく、17〜24塩基の長さとするのがさらに好ましい。かかる長さはDNAオリゴマーの有するGC含量やハイブリダイズさせる条件等によって適宜変更することが可能である。
【0045】
なお、酵素的に1から数塩基付加するには、例えば、DNA合成酵素であるDNAポリメラーゼと、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)のアナログであるジデオキシヌクレオシド三リン酸(ddNTP)を用いることによって、1塩基のみ伸長したDNAオリゴマーを得ることができる(1塩基プライマー伸長法)。したがって、かかるDNAオリゴマーは、リスクアレルである塩基を解析するSNPタイピングに好適に用いることができる。
このようにすると、例えば、一方のアレルは1塩基伸長させ、他方のアレルは3塩基伸長させるなどすることにより、DNA産物の長さの違いを正確に質量分析計で検出できるようにすることができる(MassEXTENDTM法、SEQUENOM社)。なお、何塩基伸長させるかは、各SNPサイトの多型部位の前後の配列から、最も効率よく長さが違うように、SNPサイト毎にデザインするのが好ましい。
【0046】
〔4.SNPタイピング〕
SNPタイピングを行う手法としては、プライマー伸長に基づく手法、ハイブリダイゼーションに基づく手法、DNAの切断に基づく手法、ライゲーションに基づく手法などがある。
【0047】
(4−1.SNPタイピングの手法〜その1)
プライマーエクステンションに基づく手法としては、例えば、前記した1塩基プライマー伸長法(Syvanen, A.C. et al., Genomics, 8, 684-692(1990))や、これを用いたMALDI−TOF/MS法(Ross, P., et al. Nat Biotechnol, 16, 1347-1351(1998);Buetow, K.H. et al., Proc Natl Acad Sci USA, 98, 581-584(2001);SNP遺伝子多型の戦略、松原謙一・榊佳之、中山書店、106〜117頁)のほか、アレル特異的プライマーエクステンション法(Uggozzoli, L. et al., Genet Anal Tech Appl, 9, 107-112(1992))、APEX(in the arrayed primer extension)法(Shumaker, J.M. et al., Hum Mutat, 7, 346-354(1996))などを挙げることができる。これらの中でも、MALDI−TOF/MS法を用いれば、簡易かつ大量のサンプルのSNPタイピングを同時に行うことが可能であるので特に好適である。
【0048】
このMALDI−TOF/MS(matrix assisted laser desorption ionization time-of-flight/mass spectrometry)法は、DNA試料から得られたDNA産物のDNA塩基配列を直接決定して比較することができる、非常に効率的な手法である。
MALDI−TOF/MS法は、前記したように大量のサンプルを高速度で処理するジェノタイピング法の一つである。この方法は、以前から生物学・化学の分野で使用されてきた質量分析機をSNPタイピングに適用したものである。質量分析機による方法であるので、多型による差異を何らかの形で分子の違いに対応させ、その分子の質量の差を検出することで塩基の配列を決定することを基本原理としている。すなわち、MALDI−TOF/MS法は、質量分析機とプライマー伸長法とを組み合わせ、SNPサイトにおける塩基の違いを判定する。
【0049】
具体的には、まず、放射線治療を行う予定のがん患者からDNA試料を抽出する。この際、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173で示されるSNPサイトに相当する部位の塩基を含むDNAを、PCRなどを使用して増幅することで調製する。次いで、PCR産物を鋳型として、ジェノタイピングプライマー(配列表の配列番号1から配列番号173で示されるSNPサイトに相当する部位における塩基の1塩基3′側の塩基から3′側の塩基配列に相補的な配列を有するプライマー、または、配列表の配列番号1から配列番号173の相補鎖の場合は、その相補鎖と相補的な配列を有するプライマー)のddNTPプライマー伸長反応を行い、1個から数個の塩基を伸長する。なお、この反応に用いるPCR産物は、PCR増幅用のプライマーを除去するための精製が行われていることが好ましく、ジェノタイピングプライマー(伸長プライマー(配列表の配列番号520から配列番号692に示す))は、通常、15bp以上の長さを有するのが好ましい。また、プライマー伸長反応においては、通常、PCR産物に対して10倍以上の過剰のジェノタイピングプライマーを加えるが、これに制限されるものではない。PCRを行うためのサーマルサイクルの条件は適宜選択しうるが、ジェノタイピングプライマーのうち30〜60%程度が伸長する条件が好適である。例えば、94℃と37℃の2温度間で25回程度行うことで適当な伸長効率を得ることができる。次いで、プライマー伸長反応産物のMALDIプレートへのスポットを行い、次いで、質量測定を行って、マススペクトログラムを作成する。そして、作成されたマススペクトログラムを解析することでDNA塩基配列を判定し、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173で示されるSNPサイトに相当する部位の塩基が放射線に対して副作用を発症しやすい型の塩基配列(発症群)である場合と、副作用を発症しにくい型の塩基配列(非発症群)である場合を1回の反応で判別することが可能である。
【0050】
このように、MALDI−TOF/MS法では質量分析機を用いてDNA塩基配列を直接判定し、大量かつ高速でSNPタイピングを実現することができるが、本発明におけるDNA塩基配列を決定する手段としてはこれに限定されない。DNA試料を用いてDNAの塩基配列の決定を行う手段として、例えば、スラブゲルあるいはマルチキャピラリーを用いたDNAシーケンサー等によってもSNPタイピングを行うことができる。
【0051】
(4−2.SNPタイピングの手法〜その2)
ハイブリダイゼーションに基づく手法としては、例えば、TaqMan PCR法(Livak, K.J. et al., PCR Methods Appl., 4, 357-362(1995);SNP遺伝子多型の戦略、松原謙一・榊佳之、中山書店、94-105頁)を好適に挙げることができる。
【0052】
具体的には、まず、放射線治療を行う予定のがん患者からDNA試料を抽出する。そして、予め選定した本発明の配列表の配列番号1から配列番号173で示されるSNPサイトに相当する部位の塩基を含むDNAにハイブリダイズするためのDNAオリゴマー(プローブ)(配列表の配列番号1から配列番号173のうちの任意のDNAオリゴマーまたはその相補鎖)の5′末端にレポーター蛍光を標識する。本発明において、レポーター蛍光物質としては、前記したFAMやVICなどが例示できるが、これらに限定されない。さらに、前記プローブの3′末端にクエンチャー物質を標識する。本発明において、クエンチャー物質としては、レポーター蛍光を消光できる物質であれば特に制限されない。例えば、Dabcyl、BHQ1、BHQ2、EclipseTM Dark Quencher、ElleQuencherTMなどを挙げることができる。
次いで、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173で示されるSNPサイトに相当する部位の塩基を含むDNAにハイブリダイズするための、レポーター蛍光およびクエンチャー物質が標識されたプローブを、放射線治療を行う予定のがん患者から調製したDNAにハイブリダイズさせる。次いで、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173で示されるSNPサイトに相当する部位の塩基を含むDNAを、5′→3′エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを用いて増幅する。その結果、レポーター蛍光とクエンチャー物質を標識したヌクレオチドプローブのレポーター蛍光標識部分が切断され、レポーター蛍光が遊離する。本発明において、5′→3′エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼとしては、TaqDNAポリメラーゼを好適に例示することができるが、これに限定されるものではない。この方法においては、次いで、遊離したレポーター蛍光を検出し、さらに、当該レポーター蛍光の発光を対照と比較する。なお、当該方法においては、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173で示されるSNPサイトに相当する部位の塩基が放射線に対して副作用を発症しやすい型の塩基配列(発症群)である場合と、副作用を発症しにくい型の塩基配列(非発症群)である場合で異なるレポーター蛍光を標識した2種類のヌクレオチドプローブを用いることで、1回の反応でSNPタイピングを行うことが可能である。
【0053】
(4−3.SNPタイピングの手法〜その3)
ハイブリダイゼーションに基づく他の手法としては、例えば、アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO:Allele Specific Oligonucleotide)ハイブリダイゼーション法(Baner, J. et al., Nucleic Acids Res, 26, 5073-5078(1998))を挙げることができる。
すなわち、特定位置の変異のみを検出するために、変異が存在すると考えられる塩基配列を含むDNAオリゴマー(遺伝子マーカー)を予め作製し、これとDNA試料のDNAとでハイブリダイゼーションを行わせる。その結果、変異が存在するとハイブリッド形成の効率が低下するので、それをサザンブロット法や、特殊な蛍光試薬がハイブリッドのギャップにインターカレーションすることにより消光する性質を利用した方法等によりSNPを検出することができ、さらに、検出された塩基配列をDNAシーケンサー等に供することによって直接SNPに係る塩基の種類を判定することができる。次いで、判定された塩基種を比較することで、放射線による副作用を発症しやすい型の塩基配列(発症群)を有しているか、副作用を発症しにくい型の塩基配列(非発症群)を有しているかのSNPタイピングを行うことができる。
【0054】
また、DNAの切断に基づく手法としては、例えば、Invader法を挙げることができる(Lyamichev, V. et al., Nat Biotechnol, 17,292-296(1999);SNP遺伝子多型の戦略、松原謙一・榊佳之、中山書店、94〜105頁)。
【0055】
具体的には、まず、放射線治療を行う予定のがん患者からDNA試料を抽出する。そして、予め選定した本発明の配列表の配列番号1から配列番号173で示されるSNPサイトに相当する部位の塩基から5′側の塩基配列と相補的な塩基配列、および当該塩基の1塩基3′側の塩基から3′側の塩基配列とはハイブリダイズしないが、後記のインベーダープローブの一部の塩基配列と相補的な塩基配列(フラップ)、を有するアレルプローブを合成する。
また、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173で示されるSNPサイトに対応する塩基(任意の塩基)を3′末端とし、当該SNPサイトに相当する部位の塩基の1塩基3′側の塩基から3′側の塩基配列と相補的な配列を有するインベーダープローブを合成する。
次いで、これらアレルプローブおよびインベーダープローブをDNA試料中の鋳型DNAにハイブリダイズさせる。この際、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173で示されるDNA塩基配列のSNPサイトに相当する部位の塩基に対応するインベーダープローブの塩基(任意の塩基)が鋳型DNAとアレルプローブとの間に侵入する。この侵入部位を認識して、該部位に対応するアレルプローブの塩基と該塩基の1塩基3′側の塩基の間を切断するエンドヌクレアーゼ作用を有する酵素であるCleavase(登録商標)を用いて、アレルプローブのフラップ部分を切断し、遊離させる。次いで、遊離したフラップを、これと相補的な配列を有し、かつ、レポーター蛍光とクエンチャー物質とが標識されているFRET(fluorescence resonance energy transfer)プローブをハイブリダイズさせる。当該FRETプローブの5′側には、自身で相補的に結合できる塩基配列を有している。そして、3′側には、前記したようにフラップと相補的な配列を有している。また、自身で相補的に結合できる5′側において、5′末端にはレポーター蛍光が標識され、当該5′末端の3′側にはクエンチャー物質が標識されている。遊離したフラップの3′末端の塩基が、FRETプローブにハイブリダイズする結果、当該プローブのレポーター蛍光が標識された相補結合部位に侵入することで、Cleavase(登録商標)が認識する構造が生成される。したがって、当該方法においては、Cleavase(登録商標)によるレポーター蛍光標識部分の切断によって遊離したレポーター蛍光を測定し、測定した蛍光の強度を比較することで、放射線による副作用を発症しやすい型の塩基配列(発症群)を有しているか、副作用を発症しにくい型の塩基配列(非発症群)を有しているかのSNPタイピングを行うことができる。
【0056】
(4−4.SNPタイピングの手法〜その4)
そして、ライゲーションに基づく手法としては、例えば、RCA(rolling circle amplification)法を挙げることができる(Lizardi, P.M et al., Nat Genet, 19, 225-232(1998);Magnus J., TECHNOLOGY DEVELOPMENT FOR GENOME AND POLYMORPHISM ANALYSIS, 23-24(2003), Karolinska University Press, Stockholm, Sweden;SNP遺伝子多型の戦略、松原謙一・榊佳之、中山書店、118〜127頁)。
RCA法は、特定の条件下で5′→3′エキソヌクレアーゼ活性を有しないDNAポリメラーゼが環状の一本鎖DNAを鋳型として、その上を移動しながら何周にもわたってDNAを合成し続けることで、長い相補鎖DNAを合成するものである。
したがって、RCA法ではアレルの識別をRCA法によるDNAの増幅の有無を判定することで行う。すなわち、DNAポリメラーゼによる合成の鋳型になるDNAオリゴマーを直鎖にしておき、ゲノムDNAをライゲーション反応の鋳型とする、当該直鎖のDNAオリゴマーの3′末端と、5′末端に設定したSNP部位でライゲーション反応を行う。このとき、ライゲーションが完成して環状の一本鎖DNAとなれば、RCA反応が進み、長い相補鎖DNAを得ることができる。一方、DNAオリゴマーがライゲーションしなければ、環状の一本鎖DNAとはならず、RCA反応は進まない。このようなRCA反応を行うためには、ゲノムDNAとアニールし、かつ、環状になりうる一本鎖プローブ(パドロックプローブ)を作製する必要がある。
【0057】
具体的には、まず、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173に示すSNPサイト(121番目の塩基)を中心として、前後が10〜20塩基の塩基からなるDNA塩基配列を予め選択しておく。そして、バックボーンとなる特殊な配列を有する一本鎖のプローブの3′末端に、SNPサイトの5′上流側の10〜20塩基のDNAオリゴマーの5′末端を結合する。そして、バックボーンとなる一本鎖のプローブの5′末端に、SNPサイトの3′下流側のDNAオリゴマーの3′末端を結合する。なお、このとき用いるSNPサイトの5′上流側のDNA塩基配列は、配列表の配列番号520から配列番号692に示すDNA塩基配列と一致する。なお、DNAの合成を行う際のDNAポリメラーゼの足場となるプライマーは、バックボーンとなるプローブと相補的なDNA塩基配列を有するRCAプライマーが担う。
【0058】
このような構成とすると、かかるパドロックプローブは、環状にしたときにSNPサイトが3′末端となるプローブとすることができる。すなわち、このSNPサイトの塩基がハイブリダイズする、放射線治療を行う予定のがん患者から調製したDNA試料(ゲノムDNA)と相補的である場合は、ライゲーション反応によって一本鎖の環状のDNAプローブとなるので、前記したようにDNAポリメラーゼが当該環状の一本鎖DNAを鋳型として長い相補鎖DNAを合成する。
これに対し、SNPサイトの塩基がハイブリダイズするゲノムDNAと相補的でないときはライゲーション反応が起こらず、環状の一本鎖DNAとはならないので、長い相補鎖DNAを合成することができない。したがって、長い相補鎖DNAが存在するか否かを電気泳動等で確認するだけで容易にSNPサイトと同じ塩基を有しているか否かを確認し得る点で利点がある。
なお、前記したDNA合成反応系に、当該DNAポリメラーゼによって合成された相補鎖DNAに対して相補的なDNA塩基配列、すなわち、前記環状の一本鎖DNAと同じDNA塩基配列、を有するプライマー(ブランチングプライマーという)も一緒に合成系に入れておくことによって、合成するDNAをより大きな分子量とすることができるのでDNAの合成の有無が確実となり、より好適である。
【0059】
(4−5.SNPタイピングの手法〜その5)
さらに、本発明に用いられる他のSNPタイピングの手法としては、例えば、PCR−SSCP(single-strand conformation polymorphism;一本鎖高次構造多型)法(Genomics, 12, 139-146(1992);Oncogene, 6, 1313-1318(1991);PCR Methods Appl, 4, 275-282(1995))が挙げられる。
この方法は操作が比較的簡便であり、また被検試料の量も少なくて済む等の利点を有するため、特に多数のDNA試料をスクリーニングするのに好適である。その原理は次の通りである。二本鎖DNA断片を一本鎖に解離すると、各鎖はその塩基配列に依存した独自の高次構造を形成する。この解離したDNA鎖を、変性剤を含まないポリアクリルアミドゲル中で電気泳動すると、それぞれの高次構造の差に応じて、相補的な同じ鎖長の一本鎖DNAが異なる位置に移動する。一塩基の置換によってもこの一本鎖DNAの高次構造は変化し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動において異なる移動度を示す。従って、SNPサイトの塩基が異なる場合における電気泳動による移動度が予め分かっていれば、その移動度の変化を検出することによって、一本鎖DNAについてのSNPタイピングを行うことができる。
【0060】
具体的には、まず、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173で示されるSNPサイトに相当する部位の塩基を含むDNAをPCR等によって増幅する。増幅される範囲としては、通常200〜400bp程度の長さが好ましい。PCRの反応条件は、例えば、熱変性を94℃で40秒間行い、アニールを50℃で1分間行い、伸長反応を72℃で2分間行うというサイクルを30回繰り返すことにより行うことができるがこれに限定されることはなく、適宜条件を変更して行うことが可能である。
また、PCRの際に、前記した各種の放射性同位元素、蛍光色素、またはビオチン等によって標識したプライマーを用いることにより、PCR産物を標識することができる。あるいは、PCR反応液に放射性同位元素、蛍光色素、またはビオチン等によって標識された基質塩基を加えてPCRを行うことにより、PCR産物を標識することも可能である。さらに、PCR反応後にクレノウ酵素等を用いて、放射性同位元素、蛍光色素、またはビオチン等によって標識された基質塩基を、PCR産物の断片に付加することによっても標識を行うことができる。なお、ここで用いるプライマーとしては、配列表の配列番号174から配列番号519に示すDNAオリゴマーからなるDNAオリゴマーセットを用いるのが好ましい。
こうして得られた標識化PCR産物の断片を、熱を加えるなどして変性させ、尿素などの変性剤を含まないポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動を行う。この際、ポリアクリルアミドゲルに適量(5〜10%程度)のグリセロールを添加することにより、PCR産物の断片の分離の条件を改善することができる。また、泳動条件は各標識化PCR産物の性質により変動するが、通常、室温(20〜25℃)で行い、好ましい分離が得られないときには4〜30℃までの温度で最適の移動度を与える温度の検討を行う。電気泳動後、標識化PCR産物の移動度を、X線フィルムを用いたオートラジオグラフィーや、蛍光を検出するスキャナー等でシグナルを検出し、解析を行う。標識化PCR産物の移動度に差があるバンドが検出された場合、このバンドを直接ゲルから切り出し、PCRによって再度増幅し、それを直接DNAシークエンシングすることにより、変異の存在と塩基の種類を確認することができる。また、SNPサイトの塩基種による標識化PCR産物の移動度の差が既知である場合は、これと対比することによって、容易にSNPタイピングを行うことができる。
【0061】
(4−6.SNPタイピングの手法〜その6)
さらに、本発明に用いられる他のSNPタイピングの手法としては、例えば、制限酵素断片長多型(RFLP:Restriction Fragment Length Polymorphism)を利用した方法やPCR−RFLP法が挙げられる。
【0062】
具体的には、まず、放射線治療を行う予定のがん患者からDNA試料を抽出する。ここで、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173で示されるSNPサイトに相当する部位において、SNPによる塩基の置換により制限酵素の認識部位に変化を生じた場合には、制限酵素切断断片の長さが変化する。したがって、生じるDNA断片の大きさを、発症群と非発症群とを比較することでSNPの判定を行うことができる。
すなわち、この変異を含むDNA試料をPCR法によって増幅し、それぞれの制限酵素で処理することによって、これらの変異を電気泳動後のバンドの移動度の差として検出することができる。
また、染色体DNAを制限酵素処理して電気泳動した後、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173で示すDNAオリゴマーを含んでなるプローブを用いてサザンブロッティングを行うことによっても、変異の有無を検出することができる。
なお、ここで用いる制限酵素は、それぞれの変異に応じて適宜選択することができる。また、この方法では、染色体DNA以外にも放射線治療を行う予定のがん患者から調製したRNAを逆転写酵素でcDNAにし、これをそのまま制限酵素で切断した後、サザンブロッティングを行うことによっても判定することが可能である。
このように、制限酵素の認識部位におけるSNPの有無を検出することで放射線による副作用を発症しやすい型の塩基配列(発症群)を有しているか、副作用を発症しにくい型の塩基配列(非発症群)を有しているかのSNPタイピングを行うことができる。
【0063】
(4−7.SNPタイピングの手法〜その7)
前述したように、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173に示すDNA塩基配列を有するDNAオリゴマーおよびそのDNA塩基配列の情報は、ゲノムDNAのDNA塩基配列を直接解読して判定することの他、DNA合成機等により合成してDNAチップ用のプローブ等として用いることもできる。そして、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173に示すDNAオリゴマーをDNAチップ用のプローブとして用いる態様の一つとして、放射線治療における副作用発症予測用DNAチップを好適に挙げることができる。
【0064】
ここで、本発明におけるDNAチップとは、検出対象となる、配列表の配列番号1から配列番号173に示すDNA塩基配列を有する、SNPサイトを含むDNAオリゴマー(DNAチップ用のプローブ)を基板上に整列(アレイ)化し、固定したものをいう。そして、その基板上で蛍光標識されたターゲットDNAまたはターゲットRNAとのハイブリダイゼージョンを行い、DNAプローブ上の蛍光シグナルを検出するものである。なお、DNAチップにおいては、一般的にガラス基板に固定したDNAオリゴマーがプローブとなり、溶液中のラベルしたDNAがターゲットとなる。したがって、ガラス基板に固定された前記DNAオリゴマーをDNAチップ用プローブとする。
DNAチップには大きく分けて2種類あり、DNAをガラス表面上で合成していくAffymetrix社方式と、cDNAをガラス表面上に載せていくスタンフォード方式がある。SNPタイピングにはAffymetrix社方式を用いるのが好ましいとされているが、本発明においてはこれに限定されず、スタンフォード方式を用いることもできる。
【0065】
以下、Affymetrix社方式のDNAチップを適用した場合の、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173に示すDNAオリゴマー(DNAチップ用プローブ)を用いたDNAチップについて説明する。
Affymetrix社方式では、フォトリソグラフィック技術と光照射化学合成を組み合わせて、ガラス基板上で、配列表の配列番号1から配列番号173に示すSNPサイトを有する20〜25bp程度のDNAオリゴマーを合成することで、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173に示すDNAオリゴマーを固定化したDNAチップを作製することができる。そして、サンプル由来のDNAから合成したcDNA、またはサンプル由来のRNAから逆転写によって合成したcDNAを鋳型としてin vitro transcriptionによって蛍光標識cRNAを合成し、本発明におけるDNAチップ用プローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションし、専用スキャナーによる蛍光イメージの測定を行うことで、容易に放射線による副作用を発症しやすい型の塩基配列(発症群)を有しているか、副作用を発症しにくい型の塩基配列(非発症群)を有しているかについてのSNPタイピングを行うことができる。
【0066】
なお、ガラス基板に固定するDNAチップ用プローブは、配列表の配列番号1から配列番号173で示されるSNPサイトに相当する部位におけるターゲットDNAの塩基の多型を検出することができるものであれば特に制限されない。すなわち、当該DNAチップ用プローブは、例えば、配列表の配列番号1から配列番号173で示されるSNPサイトに相当する部位の塩基を含むターゲットDNAにハイブリダイズするようなプローブであって、特異的なハイブリダイズが可能であれば、配列表の配列番号1から配列番号173で示されるSNPサイトに相当する部位の塩基を含むDNAに対し、完全に相補的である必要はなく、1個若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは挿入したものであってもよい。また、本発明において基板に結合させるDNAチップ用プローブの長さは、通常10〜100bpとするのが好ましく、10〜50bpとするのがより好ましく、15〜25bpとするのがさらに好ましい。
【0067】
当該DNAチップを用いたSNPタイピングにおける前記ハイブリダイゼーションの反応液および反応条件は、基板に固定するヌクレオチドプローブの長さ等の諸要因により変動し得るが、すなわち、複合体あるいはDNAチップ用プローブと結合するターゲットDNAの融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えば、ハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度のストリンジェントな条件を挙げることができる。DNAチップに固定されているDNAチップ用プローブとハイブリダイズする相補鎖は、かかる条件で洗浄しても対象とするターゲットDNAとハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいストリンジェントな条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいストリンジェントな条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。なお、この他にも適宜NaClやKClといった塩濃度や温度条件などを適宜変更することによってもハイブリダイズさせたDNAを洗浄することが可能である。例えば、塩濃度を3M以下、2.5M以下、2M以下、1.5M以下、より好適には、厳しいストリンジェントな条件である1M以下、0.75M以下、0.5M以下、さらには、0.25M以下、0.1M以下の塩濃度から適宜に選択することができる。また、温度条件としては、その温度条件を少なくとも約15℃、約20℃、約25℃、約30℃の中から適宜選択することができ、より好適には、厳しいストリンジェントな条件である35℃以上、40℃以上、45℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、場合によっては80℃以上の中から適宜選択することができる。
【0068】
以上述べたように、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173で示されるSNPサイトに相当する部位の塩基を含む少なくとも10bp有するDNAオリゴマーやこれと相補的なDNAオリゴマーは、SNPタイピングにおけるプローブ(当該プローブが固定化された基板を含む)やプライマーとして用いることができる。
【0069】
本発明の配列表の配列番号1から配列番号173に示すDNAオリゴマーをプライマーとして用いる場合、その長さは、通常10〜241bpであり、好ましくは15〜200bp、より好ましくは15〜100bp、さらに好ましくは17〜50bp、最も好ましくは20〜30bpである。そして、DNAオリゴマーをプライマーとして用いる場合は、配列番号174から配列番号519に示すDNAオリゴマーを、配列番号174から順次2つを1セットとして用いるDNAオリゴマーセットを用いることが好ましいが、これに限定されることはなく、リスクアレルであるSNPサイト(121番目の塩基)を含んで増幅することができるものであれば配列表の配列番号1から配列番号173に示すDNA塩基配列を参考に適宜作製して用いることも可能である。また、ヒト染色体上のこれら配列の外側にある配列を使ってDNAオリゴマーセットを作成することも可能である。
【0070】
また、配列表の配列番号1から配列番号173に示すDNAオリゴマーをプローブとして用いる場合、当該プローブは、本発明の配列表の配列番号1から配列番号173で示されるSNPサイト(121番目の塩基)に相当するサイトの塩基を含むDNAに特異的にハイブリダイズするものであれば、特に限定されることはない。当該プローブは、通常少なくとも15bp以上の長さを有するのが好ましい。
そして、本発明のDNAオリゴマーは、例えば、市販のDNA合成機により好適に作製することができるがこれに限定されることはなく、大腸菌等に形質転換導入した当該DNA塩基配列を有するベクターから制限酵素処理等することによって取得できる二本鎖DNA断片として作製してもよい。
【0071】
〔5.放射線治療に用いる放射線〕
本発明において、放射線治療に用いることのできる放射線としては、X線、γ線、重粒子線、電子線を好適に用いることができるが、これに限定されることはなく、陽子線、中性子線といった放射線も用いることができる。
【0072】
〔6.SNP情報〕
SNPタイピングを行うための情報は、NCBIのdbSNP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/)や種々の文献情報等に記載されている各遺伝子の情報、およびJSNP DB(http://snp.ims.u-tokyo.ac.jp/)に登録された情報からSNPに関する情報を得た。
【0073】
〔7.放射線治療における副作用発症予測方法〕
次に、図1を参照して、被験者(がん患者)から採取した試料から調整したDNA試料のDNA塩基配列を直接解析して、本発明の放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーのDNA塩基配列におけるSNPサイト(121番目の塩基)と合致するか否かを判定する放射線治療における副作用発症予測方法について説明する。図1は、本発明の放射線治療における副作用発症予測方法を説明するためのフローチャートである。
【0074】
本発明に係る放射線治療における副作用発症予測方法は、配列表の配列番号1から配列番号173に示すDNAオリゴマーを用いて判定を行う、下記(a)〜(g)の工程を含むものである。
(a)放射線治療が施行される予定のがん患者から採取した試料をもとにDNA試料を調製する工程(ステップS1)、
(b)前記(a)の工程で調製した前記DNA試料をもとにDNAを増幅してDNA産物を得る工程(ステップS2)、
(c)前記(b)の工程で増幅したDNA産物を鋳型として伸長反応を行い、伸長産物であるDNAオリゴマーを得る工程(ステップS3)、
(d)前記(c)の工程で得られたDNAオリゴマーのDNA塩基配列を解析する工程(ステップS4)、
(e)前記(d)の工程で解析されたDNAオリゴマーのDNA塩基配列のうち121番目の位置に相当する塩基と、配列表の配列番号1から配列番号173に示すDNA塩基配列の121番目の塩基とを照合する工程(ステップS5)、
(f)前記(e)の工程で照合された塩基を有するアレルがリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定する工程(ステップS6)、
(g)前記(f)の工程で判定した結果から、前記放射線治療が施行される予定のがん患者における放射線による副作用の発症危険率を予測する工程(ステップS7)。
【0075】
以下、本発明の放射線治療における副作用発症予測方法の各工程について詳細に説明する。
まず、(a)の工程では、放射線治療が施行される予定のがん患者から採取した試料をもとにDNA試料を調製する(ステップS1)。このとき、採取した試料としては、血液を用いるのが好ましいが、これに限定されず、例えば、皮膚、口腔粘膜、毛髪、手術等によって切除された組織など、DNAを含む試料であればどのようなものでも用いることができる。かかる試料を用いれば、染色体DNAなどのDNA試料を好適に抽出することができる。
この工程において、放射線治療が施行される予定のがん患者から採取した血液(試料)からDNA試料を抽出するには、血液から自動的にDNAを抽出する、自動DNA抽出装置を用いるのが好適である。大量のサンプルのDNAを抽出する時間を節約することができるうえに操作が簡便だからである。また、かかる自動DNA抽出装置を用いる場合は、装置に添付の標準のプロトコルによりDNAを抽出することが望ましいが、適宜プロトコルを改変して用いることも可能である。
【0076】
また、他の簡便にDNA試料を抽出する方法として、各社から販売されている簡易なシステムまたはキットを用いてDNA試料の抽出を行ってもよい。
さらに、他のDNA試料の抽出する方法としては、フェノール−クロロホルム処理とエタノール沈殿(BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY 2nd EDITION,Davis et al., P.16-21)を行うことでもDNA試料を抽出することが可能である。また、がん患者から採取した試料から、必要に応じてトータルRNAの精製(グアニジンイソチオシアネート−塩化セシウム超遠心分離法;BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY 2nd EDITION,Davis et al., P.322-328)や、ポリA+−RNAの単離(BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY 2nd EDITION,Davis et al., P.344-349頁)や、これらを基にしてcDNAの合成(First−Strand cDNAの合成;BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY 2nd EDITION,Davis et al., P.515-522;同著 P.136-137)を行ってもよい。さらに、これらの各操作を、各社から販売されている試薬やキット等を用いることも可能である。
【0077】
次に、(b)の工程では、前記の工程でDNA試料をもとにDNAを増幅してDNA産物を得る(ステップS2)。この工程でDNA試料のDNAを増幅する方法としては、PCR法を好適に用いることができる。PCRに用いるプライマーとしては、例えば、配列表の配列番号174から配列番号519に示すDNAオリゴマーのセットを配列番号174から順次1セットとしたPCR増幅用のプライマーセットを用いるのが好ましい。そして、PCRの反応条件としては、例えば、94℃で2分間の熱変性の後、94℃で40秒間の熱変性と、50℃で1分間のアニーリングと、72℃で2分間の伸長反応と、いうサイクルを30回繰り返した後、72℃で5分間の最終伸長反応を行うことを好適に示すことができるがこれに限定されることはなく、適宜に条件を変更することも可能である。また、PCR法に拠らないでもDNA産物を増幅できる場合には、DNAポリメラーゼ等を用いてDNAの増幅を行ってもよい。
【0078】
次に、(c)の工程では、前記の工程で増幅したDNA産物を鋳型として伸長反応を行い、伸長産物であるDNAオリゴマーを得る(ステップS3)。このとき用いるDNA塩基配列を解析するための伸長用のプライマーとしては、本発明の配列表の配列番号520から配列番号692に示すDNAオリゴマーを用いるのが好ましい。また、伸長反応の条件は、適宜に設定・変更することが可能であるが、各伸長用のキットで指定されている条件とするのが好ましい。
【0079】
次に、(d)の工程では、前記の工程で伸長反応を行ったDNAオリゴマーのDNA塩基配列を解析する(ステップS4)。
ここで、DNA産物のDNA塩基配列を解析する方法としては、前記で詳述したDNA塩基配列を直接解析する方法である、MALDI−TOF/MS法を好適に用いることができるが、これに限定されることはなく、前述した適宜の手法を用いてDNA塩基配列の解析、すなわち、SNPタイピングを行うことができる。
【0080】
次に、(e)の工程では、前記の工程で解析されたDNAオリゴマーのDNA塩基配列のうち121番目の位置に相当する塩基と、配列表の配列番号1から配列番号173に示すDNA塩基配列の121番目の塩基とを照合する(ステップS5)。
そして、次の(f)の工程では、前記の工程で照合された塩基を有するアレルがリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定する(ステップS6)。
【0081】
このようにして、配列表の配列番号1から配列番号173に示したDNA塩基配列の121番目の位置の塩基に相当するDNA産物の塩基が、リスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定した結果と、その他のSNPサイトにおけるアレル頻度等を総合的に勘案して、次の(g)の工程において、放射線治療が施行される予定のがん患者における放射線による副作用の発症危険率を予測する(ステップS7)。
【0082】
以上、本発明に係る副作用発症予測用DNAオリゴマー、遺伝子マーカー、DNAオリゴマーセット、および、放射線治療における副作用発症予測方法について詳細に説明してきたが本発明はこれらの内容に限定して解してはならず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で広く変更・改変して行うことができることはいうまでもない。
【0083】
例えば、(1)本発明の放射線治療における副作用発症予測用遺伝子マーカーに、蛍光色素、放射性同位元素、蛍光色素発光用酵素、または、特定の物質との結合能を有するタンパク質のうちの少なくとも一つを付加した構成とすることができる。
【0084】
例えば、(2)本発明の放射線治療における副作用発症予測用遺伝子マーカーは、リスクアレルと相補的なDNA塩基配列を有するDNAオリゴマーと、非リスクアレルと相補的なDNA塩基配列を有するDNAオリゴマーとを、異なる種類の蛍光色素、放射性同位元素、蛍光色素発光用酵素、または、特定の物質との結合能を有するタンパク質、を用いてそれぞれ付加した構成とすることができる。
【0085】
本発明の検出用DNAオリゴマーは、請求項1から請求項16または請求項20のうちいずれか一項に記載のDNAオリゴマー、または、請求項18または請求項19に記載のDNAオリゴマーセットのうち少なくとも一方のDNAオリゴマーに、蛍光色素、放射性同位元素、蛍光色素発光用酵素、または、特定の物質との結合能を有するタンパク質、を付加した構成とすることができる。
【0086】
例えば、(3)本発明の検出用DNAオリゴマーは、リスクアレルと相補的なDNA塩基配列を有するDNAオリゴマーと、非リスクアレルと相補的なDNA塩基配列を有するDNAオリゴマーとを、異なる種類の蛍光色素、放射性同位元素、蛍光色素発光用酵素、または、特定の物質との結合能を有するタンパク質、を用いてそれぞれ付加した構成とすることができる。
【0087】
例えば、(4)本発明の放射線治療における副作用発症予測方法は、配列表の配列番号520から配列番号692に示すDNAオリゴマーを用いて判定を行う、下記(a)〜(e)の工程を含むことを特徴とする、放射線治療における副作用発症予測方法としてもよい。(a)放射線治療が施行される予定のがん患者から採取した試料をもとにDNA試料を調製する工程、(b)前記(a)の工程で調製した前記DNA試料と、配列表の配列番号520から配列番号692のうちいずれかに示すDNA塩基配列を有するDNAオリゴマーと、をハイブリダイズさせる工程、(c)前記(b)の工程でハイブリダイズした前記DNAオリゴマーを、ddNTPを用いてアレル特異的に1塩基伸長する反応を行う工程、(d)前記(c)の工程でアレル特異的に1塩基伸長したDNAオリゴマーのddNTPの塩基を解析する工程、(e)前記(d)の工程で解析されたddNTPの塩基と、配列表の配列番号1から配列番号157のいずれかに示すDNAオリゴマーの121番目の塩基と、を照合する工程、(f)前記(e)の工程で照合された塩基を有するアレルがリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定する工程、(g)前記(f)の工程で判定した結果から、前記放射線治療が施行される予定のがん患者における放射線による副作用の発症危険率を予測する工程。
【0088】
そして(5)前記のddNTPが、蛍光色素、放射性同位元素、蛍光色素発光用酵素、または、特定の物質との結合能を有するタンパク質、を付加したものとすることができる。
【実施例】
【0089】
次に、本発明に係る副作用発症予測用DNAオリゴマー、遺伝子マーカー、DNAオリゴマーセット(PCR用プライマー)とDNAオリゴマー(伸長プライマー)、および、放射線治療における副作用発症予測方法を、実施例を参考にしてさらに具体的に説明する。
【0090】
副作用の発症危険率を予測するためのSNPの検討は、(1)ヒト培養細胞株における放射線感受性の遺伝子の解析と(2)マウス系統差における放射線感受性の遺伝子の解析を行い、(3)文献調査を行い、(4)放射線による副作用の発症に関連した遺伝統計学的解析を行った。
【0091】
まず、〔1〕ヒト培養細胞株における放射線感受性の遺伝子については、放射線感受性に関わる遺伝子についてこれまでにも多くの報告がある。それらは一部のDNA修復遺伝子など、特定の機能を持った遺伝子に焦点が当てられたものであった。本発明においては、これらの遺伝子についても検討を加えているが、ヒトゲノムの全DNA塩基配列が決定されたことを受けてそのDNA塩基配列情報の解析から遺伝子または遺伝子候補と考えた21,000種類を選択し、Agilent社(CA,USA)に委託してこれらの遺伝子特異的な60塩基のDNA塩基配列を持ったオリゴアレイを作製して、独自に放射線感受性の分類に有効な遺伝子の検索を行った。
まず60種類のヒト培養細胞株の線量−生存率曲線を求め、感受性の異なる32細胞株を選択してX線照射前後の遺伝子発現プロファイルを細胞間で比較し、D10、Dq、α/βなどの複数のモデルのパラメータ別に細胞株の分類に有効な遺伝子を同定し、放射線感受性遺伝子候補とした。この中には細胞増殖、細胞周期調節、レドックス、DNA損傷修復などに関わると考えられる遺伝子が含まれていた。
【0092】
次に、〔2〕マウス系統差の解析については、放射線感受性の異なるA/J,C3H/HeMs,C57BL6Jの3系統のマウスに関して、皮膚・肺・腸管等各種臓器における放射線照射後の損傷/修復過程を判定した(M. Iwakawa et al., Radiation Res., 44, 7-13 (2003))。また同時に、マイクロアレイを用いて対象臓器での放射線照射後の遺伝子発現プロファイルを比較し、系統差に関連すると考えられる遺伝子群を抽出した。そして、これら遺伝子のヒトホモログを感受性遺伝子候補とした。この中には、シグナルトランスダクション、アポトーシス、免疫関連の遺伝子が含まれていた。
【0093】
〔3〕放射線による副作用の発症に関連した遺伝統計学的解析では、候補遺伝子上の多型マーカー(SNPサイト)に関するDNA塩基配列情報は、UCSC Genome Bioinformatics(バージョン:UCSC Human April 2003(http://genome.ucsc.edu/))、JSNP DB(http://snp.ims.u-tokyo.ac.jp/)、dbSNP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/)から得た。我々が収集した健常人集団(非発症群のSNPアレルを有する集団)を用いてこれらのアレルの多型頻度を解析し、解析するアレルの選択を行った。
次に、放射線による副作用の発症の判定などによって分類した集団に対してSNPタイピングを行った。研究の対象は、2001年10月から2003年12月までに当該研究を行うことについてのインフォームド・コンセントを取得するとともに血液および診療情報の提供を受けた乳がん患者218人、子宮頸がん57人、前立腺がん71人についてまず診療データ解析を行い、多型頻度解析のために層別化を行った。放射線による副作用(障害)の発症は、乳がん患者は皮膚障害、子宮頸がん患者では腸管障害(下痢)、前立腺がん患者では膀胱・尿道障害(排尿障害)を対象とした。そして、各障害別に放射線治療開始から3ヶ月未満(早期のステージ)、3ヶ月(晩期3ヶ月のステージ)、6ヶ月(晩期6ヶ月のステージ)での判定結果により2群に分類した。
【0094】
表1から表18は、DNAを採取し、SNPタイピングを行うことについてインフォームド・コンセントを得た乳がん患者、子宮頸がん患者、前立腺がん患者について、それぞれ放射線治療開始から早期のステージ、晩期3ヶ月のステージ(子宮頸がんについては記載していない)、晩期6ヶ月のステージにおけるアレル頻度を統計学的に求めて示した表である。がん種、放射線治療による副作用(障害)を確認した時期、および調査対象部位を各表ごとに示す。
【0095】
すなわち、表1から表3は、乳がんの放射線治療開始から早期のステージにおける乳がん患者群のアレル頻度を、表4および表5は、放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおける乳がん患者群のアレル頻度を、表6および表7は、乳がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおける乳がん患者群のアレル頻度を、表8から表11は、子宮頸がんの放射線治療開始から早期のステージにおける子宮頸がん患者群のアレル頻度を、表12は、子宮頸がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおける子宮頸がん患者群のアレル頻度を、表13および表14は、前立腺がんの放射線治療開始から早期のステージにおける前立腺がん患者群のアレル頻度を、表15および表16は、前立腺がんの放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおける前立腺がん患者群のアレル頻度を、および、表17および表18は、前立腺がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおける前立腺がん患者群のアレル頻度をそれぞれ表す。
【0096】
そして、表1から表18のA欄からJ欄は、以下の内容を示す。
A欄:各SNPに割り当てられている公共データバンク(NCBIやJSNP(IMS−JST SNP))に登録されているSNP IDと遺伝子型、つまり、確認できたアレル頻度を示すものである。なお、乳がんについては皮膚障害、子宮頸がんについては腸管障害、前立腺がんについては尿道障害を調査対象とした。
ここで示される遺伝子型において上段のアレルがリスクアレルを示し、下段のアレルが非リスクアレルを示す。ここで、例えばC/CやG/Gは、対立遺伝子においてC(シトシン)とC(シトシン)のホモ接合体、G(グアニン)とG(グアニン)のホモ接合体であることを示し、C/Gは、C(シトシン)とG(グアニン)のヘテロ接合体であることを示す。
また、放射線治療による副作用を確認した時期について、早期とは、放射線治療後3ヶ月未満に障害が認められたことを示し、晩期3ヶ月とは、放射線治療後3ヶ月を経過した後6ヶ月以内に障害が認められたことを示し、晩期6ヶ月とは、放射線治療後6ヶ月を経過した後に障害が認められたことを示す。
【0097】
なお、注目する障害によっては、関係するリスクアレルが逆になる場合もある。例えば、表1に示すrs2561829のサイトでは、乳がんの放射線治療後早期のステージではC/Cのアレルがリスクアレルとなるが、表17に示す前立腺がんの放射線治療後晩期6ヶ月のステージでは、T/TのアレルとT/Cのアレルがリスクアレルとなる。現在のところ遺伝子の機能解析が完了していないことから、かかる現象が生じることについての説明は難しいが、統計的解析を行うとこのような結果となる。これは、リスクアレルと非リスクアレルの違いが、発現する遺伝子やタンパク質の機能、発症部位や時期によってベクトル(すなわち、遺伝子の転写・翻訳の方向)が逆方向になる可能性や、各アレルからの発現量のバランスなどが影響するものと考えられる。このようなSNPサイトとしては、前記のrs2561829の他に、rs4818(表3と表4参照)、rs791041(表2と表17参照)、rs704227(表12と表15参照)、rs2283264(表2と表17参照)、rs73234(表2と表9と表14参照)、rs518116(表3と表12参照)、rs1171097(表1と表15参照)、rs791040(表2と表17参照)、rs1145720(表3と表18参照)、rs1144153(表2と表17参照)、rs2267437(表1と表8と表13参照)、rs2270390(表12と表16参照)、rs2072817(表7と表8参照)が挙げられる。
【0098】
B欄:放射線治療を行った後に障害が認められた症例数(n)と、そのグレード(Grade1〜4)を示す。
C欄:障害が認められない(Grade0)か、障害が軽微であった(Grade1)症例数(n)を示す。
副作用の度合いは、Grade0,1,2,3,4と、数字が大きくなる程重症であることを示す。早期のステージにおける副作用に対する判定は、国際的な判定基準であるNCI/CTC(National Cancer Institute, Common Toxicity Criteria)に従った。また、放射線治療開始から3ヶ月と6ヶ月のステージにおける副作用(障害)に対する判定は、国際的な判定基準であるRTOG(Radiation Therapy Oncology Group)に従った。なお、取得した臨床情報から、がん種に応じて項目を選択し、例えば乳がんでは年齢、喫煙、飲酒、合併症、家族病歴、TNM分類、病理検査、化学療法、照射方法、再燃・転移等に関する38項目について解析し、標準化を行い、条件に合致しない症例は多型頻度解析から除外した。
【0099】
D欄:フィッシャー(Fisher)の正確確率検定(直接確率)によるP値を示す。生物学における統計学的にはP値が0.05以下である場合、それらには有意な差があるとして評価することができる。なお、本発明では、自由度は全て1としている。
E欄:相対危険度を表す。相対危険度は、リスク比または危険率ともいわれ、要因を有する場合(それぞれのリスクアレルあるいはこれらのリスクアレルの組み合わせによる判定から、放射線感受性である(すなわち、副作用を発症する危険がある)と判定されること)に副作用(障害)を発症するリスクを、要因を有さない場合(ほとんど副作用を発症せず、放射線非感受性である(すなわち、副作用を発症する危険がない)と判定されること)に副作用を発症するリスクで除算した値である。この相対危険度は、その値が高いほど副作用を発症する危険が高いアレルであることを示す。
F欄:95%信頼区間を示す。なお、各表には、サンプルの一部のアレル頻度が「0」であるために、相対危険度や95%信頼区間が求めることができないデータもある(表1から表18中において「−」で示す)。
【0100】
G欄:リスクアレルを有する、本発明の放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマーの配列番号を示す。
H欄:PCRに用いたDNAオリゴマー(フォワードプライマー)の配列番号を示す。
I欄:PCRに用いたDNAオリゴマー(リバースプライマー)の配列番号を示す。
なお、各SNPサイトにおいてH欄とI欄に示す配列番号の1セットからなるDNAオリゴマーのセットは、PCR増幅用のプライマーセットとして用いることができる。
【0101】
J欄:SNPタイピングを行った際に使用したDNAオリゴマー(伸長プライマー)の配列番号を示す。なお、本発明の伸長プライマーの中には、配列番号1から配列番号173に示すDNAオリゴマーと同じ向きのストランドのDNA塩基配列を有するものと、これと逆向きのストランドのDNA塩基配列を有するものがある。逆向きのストランドである伸長プライマーの場合は、これの3′下流側に付加される塩基と相補的な塩基が、配列番号1から配列番号173のいずれかに示す121番目の塩基(リスクアレル)に該当する。
【0102】
具体的に一例をもってその説明を行うと、例えば、表1の一番上に示すSNP ID:rs1171097は、放射線治療を開始してから早期のステージ(3ヶ月未満)における乳がん患者の皮膚に障害が確認されたものであって、その遺伝子型は、C/Cのホモ接合体(表1から表18のA欄では「遺伝子型」として表記する。以下同じ。)がリスクアレルであることを示している。なお、このSNPにおいては、G/Gのホモ接合体およびC/Gのヘテロ接合体は非リスクアレルである(A欄)。
【0103】
より詳細に見ていくと、放射線治療開始から早期に皮膚に障害が認められた(Grade1,2,3)乳がん患者の総計は135人(B欄)、皮膚に障害が認められなかった(Grade0)乳がん患者の総計は12人であった(C欄)。
ここで、皮膚に障害が認められた乳がん患者においてC/Cのホモ接合体を有していた人数は88人であるのに対し、皮膚に障害が認められなかった乳がん患者においてG/Gのホモ接合体かC/Gのヘテロ接合体のホモ接合体を有していた人数は47人である(B欄)。
一方、皮膚に障害が認められなかった乳がん患者においてC/Cのホモ接合体を有していた人数は3人であるのに対し、皮膚に障害が認められなかった乳がん患者においてG/Gのホモ接合体かC/Gのヘテロ接合体のホモ接合体を有していた人数は9人である(C欄)。
【0104】
これらの結果をフィッシャーの直接確率検定により統計学的に解析した結果、乳がん患者において、C/Cのホモ接合体を有する者とG/Gのホモ接合体かC/Gのヘテロ接合体のホモ接合体を有する者との間において有意差(P値=0.01041)を得ることができた(D欄)。また、かかるリスクアレルの相対危険度は1.15であり(E欄)、95%信頼区間は1.02〜1.30であった(F欄)。
【0105】
そして、かかるリスクアレルを有するDNAオリゴマーのDNA塩基配列が記載されている配列番号は、配列番号16であり(G欄)、かかるDNA塩基配列の増幅のために用いたPCR増幅用プライマーのうち、フォワードプライマーの配列番号は、配列番号188であり(H欄)、リバースプライマーの配列番号は、配列番号189である(I欄)。そして、かかるSNPサイト(リスクアレル)のDNA塩基を決定するために用いられた伸長プライマーの配列番号は、配列番号487である(J欄)。
以上、本発明で示した表について一例をもって説明を行ったが、これは、表1から表18で示すSNP全てに共通するものである。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
【表3】

【0109】
【表4】

【0110】
【表5】

【0111】
【表6】

【0112】
【表7】

【0113】
【表8】

【0114】
【表9】

【0115】
【表10】

【0116】
【表11】

【0117】
【表12】

【0118】
【表13】

【0119】
【表14】

【0120】
【表15】

【0121】
【表16】

【0122】
【表17】

【0123】
【表18】

【0124】
次に、本発明において行ったSNPタイピングの方法について説明する。SNPタイピングは、DNAの抽出と、DNAの増幅と、質量分析によるDNAの塩基配列の決定とで行われる。以下に、SNPタイピングについて詳細に説明する。
(DNA試料の抽出)
まず、放射線治療を施行するがん患者および健常人からインフォームド・コンセントを取得した上で血液を採取し、DNAを抽出した。がん患者はがん種ごとに分類し、放射線治療の開始から3ヶ月未満(早期のステージ)、3ヶ月の時点(晩期3ヶ月のステージ)、6ヶ月の時点(晩期6ヶ月のステージ)での副作用発症の有無の観察を行って、その重症度を評価した(表1〜表18参照)。なお、一般的には、治療開始時から3ヶ月未満に発症する副作用による障害を早期障害といい、治療開始時から3ヶ月以降に発症する副作用による障害を晩期障害という。
そして、前記の各がん患者から採取した血液からのDNAの抽出は、クラボウ社製NA−3000を用いて、かかる装置に添付の標準プロトコルで行った。
【0125】
(プライマーの選択と作製)
SNPタイピングに用いた各フォワードプライマーおよびリバースプライマー、並びに伸長プライマーは、前記〔3〕で述べたSNPに関する情報をもとに、プライマー3.0(http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3_www.cgi)を用いて適宜適切な範囲を選択して作製した。各プライマーは、SIGMA GENOSYS社(シグマアルドリッチジャパン株式会社)またはPROLIGO社(プロリゴ・ジャパン株式会社)に委託して合成した。
【0126】
(SNPタイピング)
抽出したDNA試料を用いて、MALDI−TOF/MS法によりSNPタイピングを行った。なお、質量分析機はSEQUENOM社製のMassARRAY systemを用いた。MALDI−TOF/MS法によるSNPタイピングは、下記の(1)〜(3)の手順で行われる。
(1)DNAの増幅:
DNA試料を用いて目的とする塩基配列を増幅するため、配列表の配列番号174から配列番号519に示すフォワードプライマー(Forward primer)、および、リバースプライマー(Reverse primer)の中から適宜選択したDNAオリゴマーセットを用いてPCR反応を行った。
PCRの反応条件としては以下の通りである。0.5μlの10×HotStar Taq緩衝液と、0.2μlのMgCl2と、0.04μlの25mM dNTPと、1.0μlの各1μM PCR プライマーと、0.02μlのHotStar Taq溶液と、1.0μlのDNA溶液(2.5ng/μl)と、2.24μlの純水を加え、全量で5μlのPCR反応溶液を調製した。
このPCR反応溶液を384ウェルプレートに分注し、サーマルサイクラーにより以下のプログラムでPCR反応を行った。95℃で15分間のHotStar Taqポリメラーゼの活性化を行った後、(a)二本鎖DNAの熱変性条件:95℃で20秒間、(b)アニール条件:56℃で30秒間、(c)伸長条件:72℃で1分間という、(a)〜(c)の順に行う反応を55サイクル行い、最後に72℃で3分間の伸長反応を行う。
【0127】
(2)SAP反応:
DNAの脱リン酸化反応のために、SAP(Shrimp Alkaline Phosphatase)反応を行った。SAP反応溶液として、0.17μlのhME緩衝液と、0.3μlのSAP溶液と、1.53μlの純水を加えて全量2.0μlとしたSAP反応溶液を、先のPCR反応を行った後のPCR反応溶液に加え、37℃で20分間の反応を行った後、85℃で5分間の反応を行う。
【0128】
(3)伸長反応:
次いで、配列表の配列番号520から配列番号692に示す伸長プライマーを用いてPCR反応を行った。SNPとなるDNAの塩基種を決定するためである。反応溶液の組成としては、0.2μlのdNTP/ddNTPミックスと、0.054μlの100μM伸長プライマーと、0.018μlのTermo Sequenaseと、1.728μlの純水を加えて全量2.0μlとした伸長反応溶液を、先のPCR反応溶液とSAP反応溶液とを混合した反応溶液(7μl)に加え、以下のPCR反応条件でPCR反応を行うことでSNPを解析するためのPCR産物を得た。まず、サーマルサイクラーにより94℃で2分間の二本鎖DNAの熱変性を行った後、(a)二本鎖DNAの熱変性条件:94℃で5秒間、(b)アニール条件:52℃で5秒間、(c)伸長条件:72℃で5秒間という、(a)〜(c)の順に行う反応を55サイクル行った。
【0129】
(4)脱塩処理:
その後、反応溶液9mlあたり脱塩樹脂であるSpectroCREAN3mgと、純水16μlを加え、室温で10分間インキュベートして反応溶液を脱塩した。
【0130】
(5)質量分析:
こうして得られた全量25μlのSNPタイピング用の反応溶液の内、約0.01μlを質量分析用Spectro Chipにスポットし、質量分析を行い、配列表の配列番号1から配列番号173に示すDNAオリゴマーのリスクアレル(121番目の塩基)のSNPタイピングを行った。
【0131】
(臨床への応用)
本発明に係るDNAオリゴマー、遺伝子マーカー、DNAオリゴマーセット、および副作用発症予測方法の、臨床における応用は以下の如くである。
例えば、放射線治療をこれから受けようとするがん患者からDNA診断についてのインフォームド・コンセントを取得した後、患者から採取した血液等の試料からDNAを抽出し、DNAオリゴマーセットを用いて増幅、解析、SNPサイトにおける塩基を判定し、本発明に係るDNAオリゴマーのDNA塩基配列と照合させるか、または、蛍光標識等を行った遺伝子マーカーを用いてSNPのタイピングを行う。前述した該当するリスクアレル、あるいはリスクアレルの組み合わせをもとに、このがん患者の放射線治療後による副作用の発症の危険率を算出する。そして、当該がん患者の放射線治療担当医は、算出された危険率を指標として、そのがん患者に対する治療後の管理(care)計画に活かしてQOLを保持するなどの治療計画を適切に行うことができる。また、線量増加臨床研究において、副作用発症の危険率が高い患者は避ける、などの対策が可能になる。
【0132】
このように、本発明のDNAオリゴマー、遺伝子マーカー、DNAオリゴマーセット、および副作用発症予測方法を用いることによって、現在、何ら予測手段をもたない放射線による副作用の発症のリスクに対し、科学的根拠をもった予測を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明の放射線治療における副作用発症予測方法を説明するためのフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、がんの放射線治療において副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、
配列表の配列番号1から配列番号173のうちのいずれかに示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー。
【請求項2】
DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、乳がんの放射線治療において副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、
配列表の配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号26、配列番号27、配列番号30、配列番号32、配列番号44、配列番号45、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号53、配列番号54、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号73、配列番号74、配列番号77、配列番号78、配列番号82、配列番号85、配列番号88、配列番号90、配列番号91、配列番号94、配列番号97、配列番号98、配列番号106、配列番号108、配列番号112、配列番号113、配列番号116、配列番号117、配列番号126、配列番号127、配列番号132、配列番号133、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号143、配列番号145、配列番号147、配列番号148、配列番号151、配列番号157、配列番号159、配列番号160、配列番号162、配列番号163、配列番号165、配列番号167、配列番号170、配列番号172、または配列番号173に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー。
【請求項3】
DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、子宮頸がんの放射線治療において副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、
配列表の配列番号2、配列番号6、配列番号22、配列番号23、配列番号29、配列番号31、配列番号34、配列番号36、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号52、配列番号56、配列番号60、配列番号64、配列番号65、配列番号68、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号75、配列番号76、配列番号80、配列番号83、配列番号86、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号98、配列番号105、配列番号110、配列番号114、配列番号118、配列番号119、配列番号121、配列番号129、配列番号134、配列番号139、配列番号141、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号149、配列番号150、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号155、配列番号157、配列番号161、または配列番号171に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー。
【請求項4】
DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、前立腺がんの放射線治療において副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、
配列表の配列番号3、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号19、配列番号21、配列番号24、配列番号25、配列番号28、配列番号33、配列番号35、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号45、配列番号47、配列番号48、配列番号55、配列番号57、配列番号66、配列番号69、配列番号73、配列番号79、配列番号81、配列番号84、配列番号87、配列番号92、配列番号95、配列番号96、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号115、配列番号116、配列番号120、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号131、配列番号135、配列番号151、配列番号156、配列番号158、配列番号160、配列番号164、配列番号166、配列番号168、または配列番号169に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー。
【請求項5】
DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、がんの放射線治療開始から早期のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、
配列表の配列番号2、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号36、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号48、配列番号52、配列番号56、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号75、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号81、配列番号86、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号99、配列番号102、配列番号103、配列番号105、配列番号106、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号117、配列番号118、配列番号120、配列番号121、配列番号126、配列番号127、配列番号129、配列番号132、配列番号134、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号141、配列番号143、配列番号144、配列番号146、配列番号147、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号157、配列番号158、配列番号160、配列番号162、配列番号163、配列番号165、配列番号167、配列番号168、配列番号169、または配列番号171に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー。
【請求項6】
DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、がんの放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、
配列表の配列番号5、配列番号8、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号33、配列番号45、配列番号48、配列番号49、配列番号53、配列番号55、配列番号58、配列番号69、配列番号77、配列番号87、配列番号100、配列番号101、配列番号104、配列番号108、配列番号109、配列番号111、配列番号115、配列番号116、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号128、配列番号133、配列番号136、配列番号145、配列番号148、配列番号151、配列番号156、配列番号159、配列番号160、配列番号162、または配列番号170に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー。
【請求項7】
DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、
配列表の配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号19、配列番号30、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号46、配列番号47、配列番号50、配列番号51、配列番号54、配列番号57、配列番号60、配列番号62、配列番号63、配列番号67、配列番号68、配列番号73、配列番号74、配列番号79、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号88、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号102、配列番号107、配列番号110、配列番号119、配列番号130、配列番号131、配列番号135、配列番号139、配列番号142、配列番号155、配列番号161、配列番号164、配列番号166、配列番号172、または配列番号173に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー。
【請求項8】
DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、乳がんの放射線治療開始から早期のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、
配列表の配列番号7、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号26、配列番号27、配列番号32、配列番号44、配列番号45、配列番号59、配列番号61、配列番号65、配列番号73、配列番号78、配列番号90、配列番号91、配列番号94、配列番号98、配列番号106、配列番号112、配列番号113、配列番号117、配列番号127、配列番号132、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号143、配列番号147、配列番号157、配列番号160、配列番号162、配列番号163、配列番号165、または配列番号167に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー。
【請求項9】
DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、乳がんの放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、
配列表の配列番号48、配列番号49、配列番号53、配列番号58、配列番号77、配列番号108、配列番号116、配列番号126、配列番号133、配列番号136、配列番号145、配列番号148、配列番号151、配列番号159、配列番号162、または配列番号170に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー。
【請求項10】
DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、乳がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、
配列表の配列番号1、配列番号4、配列番号30、配列番号50、配列番号51、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号63、配列番号67、配列番号74、配列番号82、配列番号85、配列番号88、配列番号97、配列番号172、または配列番号173に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー。
【請求項11】
DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、子宮頸がんの放射線治療開始から早期のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、
配列表の配列番号2、配列番号22、配列番号23、配列番号29、配列番号31、配列番号34、配列番号36、配列番号43、配列番号44、配列番号52、配列番号56、配列番号60、配列番号64、配列番号65、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号75、配列番号76、配列番号80、配列番号86、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号98、配列番号105、配列番号114、配列番号118、配列番号121、配列番号129、配列番号134、配列番号141、配列番号144、配列番号146、配列番号149、配列番号150、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号157、または配列番号171に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー。
【請求項12】
DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、子宮頸がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、
配列表の配列番号6、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号42、配列番号46、配列番号68、配列番号83、配列番号110、配列番号119、配列番号139、配列番号142、配列番号155、または配列番号161に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー。
【請求項13】
DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、前立腺がんの放射線治療開始から早期のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、
配列表の配列番号5、配列番号8、配列番号24、配列番号25、配列番号28、配列番号33、配列番号48、配列番号66、配列番号81、配列番号92、配列番号96、配列番号99、配列番号102、配列番号103、配列番号120、配列番号126、配列番号151、配列番号158、配列番号168、または配列番号169に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー。
【請求項14】
DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、前立腺がんの放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、
配列表の配列番号5、配列番号8、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号33、配列番号45、配列番号48、配列番号55、配列番号69、配列番号87、配列番号100、配列番号101、配列番号104、配列番号109、配列番号111、配列番号115、配列番号116、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号128、配列番号156、または配列番号160に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー。
【請求項15】
DNA塩基配列中における特定の塩基がリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定することで、前立腺がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおいて副作用が発症する虞があることを予測するためのDNAオリゴマーであって、
配列表の配列番号3、配列番号5、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号19、配列番号35、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号47、配列番号57、配列番号73、配列番号79、配列番号84、配列番号95、配列番号96、配列番号102、配列番号107、配列番号130、配列番号131、配列番号135、配列番号164、または配列番号166に示されるDNA塩基配列について、121番目の塩基を含む、少なくとも10〜241の連続したDNA塩基配列を有することを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー。
【請求項16】
請求項1から請求項15に記載の副作用発症予測用DNAオリゴマーにおいて、121番目の塩基以外の塩基が1個若しくは数個欠失、置換若しくは付加しているDNAオリゴマー、または、これらの相補的なDNA塩基配列を有するDNAオリゴマーであることを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用DNAオリゴマー。
【請求項17】
請求項1から請求項16のうちいずれか一項に記載の副作用発症予測用DNAオリゴマー、または、この副作用発症予測用DNAオリゴマーとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAオリゴマーであることを特徴とする放射線治療における副作用発症予測用遺伝子マーカー。
【請求項18】
配列表の配列番号174から配列番号519に示すDNA塩基配列を有するDNAオリゴマーのうち、配列番号174から順次2つのDNAオリゴマーを1セットとして用いることを特徴とするDNAオリゴマーセット。
【請求項19】
配列表の配列番号174から配列番号519に示すDNA塩基配列を有するDNAオリゴマー、または、当該DNAオリゴマーのうち、1個若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加したことを特徴とする請求項11に記載のDNAオリゴマーセット。
【請求項20】
配列表の配列番号520から配列番号692に示すDNA塩基配列を有するDNAオリゴマー、または、当該DNAオリゴマーのうち、1個若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加したことを特徴とするDNAオリゴマー。
【請求項21】
配列表の配列番号1から配列番号173のいずれかに示すDNAオリゴマーを用いて判定を行う、下記(a)〜(g)の工程を含むことを特徴とする放射線治療における副作用発症予測方法。
(a)放射線治療が施行される予定のがん患者から採取した試料をもとにDNA試料を調製する工程
(b)前記(a)の工程で調製した前記DNA試料をもとにDNAを増幅してDNA産物を得る工程
(c)前記(b)の工程で増幅したDNA産物を鋳型として伸長反応を行い、伸長産物であるDNAオリゴマーを得る工程
(d)前記(c)の工程で得られたDNAオリゴマーのDNA塩基配列を解析する工程
(e)前記(d)の工程で解析されたDNAオリゴマーのDNA塩基配列のうち121番目の位置に相当する塩基と、配列表の配列番号1から配列番号173のいずれかに示すDNA塩基配列の121番目の塩基とを照合する工程
(f)前記(e)の工程で照合された塩基を有するアレルがリスクアレルであるか非リスクアレルであるかを判定する工程
(g)前記(f)の工程で判定した結果から、前記放射線治療が施行される予定のがん患者における放射線による副作用の発症危険率を予測する工程
【請求項22】
前記(e)の工程で照合する配列表の配列番号1から配列番号173のいずれかに示すDNA塩基配列は、
乳がんの放射線治療における副作用の発症予測については、配列表の配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号26、配列番号27、配列番号30、配列番号32、配列番号44、配列番号45、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号53、配列番号54、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号73、配列番号74、配列番号77、配列番号78、配列番号82、配列番号85、配列番号88、配列番号90、配列番号91、配列番号94、配列番号97、配列番号98、配列番号106、配列番号108、配列番号112、配列番号113、配列番号116、配列番号117、配列番号126、配列番号127、配列番号132、配列番号133、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号143、配列番号145、配列番号147、配列番号148、配列番号151、配列番号157、配列番号159、配列番号160、配列番号162、配列番号163、配列番号165、配列番号167、配列番号170、配列番号172、または配列番号173に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、
子宮頸がんの放射線治療における副作用の発症予測については、配列表の配列番号2、配列番号6、配列番号22、配列番号23、配列番号29、配列番号31、配列番号34、配列番号36、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号52、配列番号56、配列番号60、配列番号64、配列番号65、配列番号68、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号75、配列番号76、配列番号80、配列番号83、配列番号86、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号98、配列番号105、配列番号110、配列番号114、配列番号118、配列番号119、配列番号121、配列番号129、配列番号134、配列番号139、配列番号141、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号149、配列番号150、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号155、配列番号157、配列番号161、または配列番号171に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、
前立腺がんの放射線治療における副作用の発症予測については、配列表の配列番号3、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号19、配列番号21、配列番号24、配列番号25、配列番号28、配列番号33、配列番号35、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号45、配列番号47、配列番号48、配列番号55、配列番号57、配列番号66、配列番号69、配列番号73、配列番号79、配列番号81、配列番号84、配列番号87、配列番号92、配列番号95、配列番号96、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号115、配列番号116、配列番号120、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号131、配列番号135、配列番号151、配列番号156、配列番号158、配列番号160、配列番号164、配列番号166、配列番号168、または配列番号169に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、
がんの放射線治療開始から早期のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号2、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号36、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号48、配列番号52、配列番号56、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号75、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号81、配列番号86、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号99、配列番号102、配列番号103、配列番号105、配列番号106、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号117、配列番号118、配列番号120、配列番号121、配列番号126、配列番号127、配列番号129、配列番号132、配列番号134、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号141、配列番号143、配列番号144、配列番号146、配列番号147、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号157、配列番号158、配列番号160、配列番号162、配列番号163、配列番号165、配列番号167、配列番号168、配列番号169、または配列番号171に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、
がんの放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号5、配列番号8、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号33、配列番号45、配列番号48、配列番号49、配列番号53、配列番号55、配列番号58、配列番号69、配列番号77、配列番号87、配列番号100、配列番号101、配列番号104、配列番号108、配列番号109、配列番号111、配列番号115、配列番号116、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号128、配列番号133、配列番号136、配列番号145、配列番号148、配列番号151、配列番号156、配列番号159、配列番号160、配列番号162、または配列番号170に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、
がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号19、配列番号30、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号46、配列番号47、配列番号50、配列番号51、配列番号54、配列番号57、配列番号60、配列番号62、配列番号63、配列番号67、配列番号68、配列番号73、配列番号74、配列番号79、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号88、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号102、配列番号107、配列番号110、配列番号119、配列番号130、配列番号131、配列番号135、配列番号139、配列番号142、配列番号155、配列番号161、配列番号164、配列番号166、配列番号172、または配列番号173に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、
乳がんの放射線治療開始から早期のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号7、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号26、配列番号27、配列番号32、配列番号44、配列番号45、配列番号59、配列番号61、配列番号65、配列番号73、配列番号78、配列番号90、配列番号91、配列番号94、配列番号98、配列番号106、配列番号112、配列番号113、配列番号117、配列番号127、配列番号132、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号143、配列番号147、配列番号157、配列番号160、配列番号162、配列番号163、配列番号165、または配列番号167に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、
乳がんの放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号48、配列番号49、配列番号53、配列番号58、配列番号77、配列番号108、配列番号116、配列番号126、配列番号133、配列番号136、配列番号145、配列番号148、配列番号151、配列番号159、配列番号162、または配列番号170に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、
乳がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号1、配列番号4、配列番号30、配列番号50、配列番号51、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号63、配列番号67、配列番号74、配列番号82、配列番号85、配列番号88、配列番号97、配列番号172、または配列番号173に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、
子宮頸がんの放射線治療開始から早期のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号2、配列番号22、配列番号23、配列番号29、配列番号31、配列番号34、配列番号36、配列番号43、配列番号44、配列番号52、配列番号56、配列番号60、配列番号64、配列番号65、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号75、配列番号76、配列番号80、配列番号86、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号98、配列番号105、配列番号114、配列番号118、配列番号121、配列番号129、配列番号134、配列番号141、配列番号144、配列番号146、配列番号149、配列番号150、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号157、または配列番号171に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、
子宮頸がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号6、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号42、配列番号46、配列番号68、配列番号83、配列番号110、配列番号119、配列番号139、配列番号142、配列番号155、または配列番号161に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、
前立腺がんの放射線治療開始から早期のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号5、配列番号8、配列番号24、配列番号25、配列番号28、配列番号33、配列番号48、配列番号66、配列番号81、配列番号92、配列番号96、配列番号99、配列番号102、配列番号103、配列番号120、配列番号126、配列番号151、配列番号158、配列番号168、または配列番号169に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、
前立腺がんの放射線治療開始から晩期3ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号5、配列番号8、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号18、配列番号21、配列番号33、配列番号45、配列番号48、配列番号55、配列番号69、配列番号87、配列番号100、配列番号101、配列番号104、配列番号109、配列番号111、配列番号115、配列番号116、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号128、配列番号156、または配列番号160に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用い、
前立腺がんの放射線治療開始から晩期6ヶ月のステージにおける副作用の発症予測については、配列表の配列番号3、配列番号5、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号19、配列番号35、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号47、配列番号57、配列番号73、配列番号79、配列番号84、配列番号95、配列番号96、配列番号102、配列番号107、配列番号130、配列番号131、配列番号135、配列番号164、または配列番号166に示すDNAオリゴマーのDNA塩基配列を用いる、
ことを特徴とする請求項21に記載の放射線治療における副作用発症予測方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−87375(P2006−87375A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278246(P2004−278246)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(301032942)独立行政法人放射線医学総合研究所 (149)
【Fターム(参考)】