説明

放射線治療システム及び画像表示方法

【課題】放射線治療において、患者の呼吸に同期した高精細画像を提供し、治療の安全性、確実性、効率を向上させること。
【解決手段】CTコンソール6のモニタ画像生成部64が、4次元CT画像データからKV−XR画像と同方向のDRR画像を再構成する。そして、モニタ画像生成部64は、再構成したDRR画像の中で目印座標が最も近い、すなわち呼吸時相が最も一致するDRR画像でリアルタイムKV−XR画像を置き換えたモニタ画像、あるいは、両画像を並列表示するモニタ画像を生成する。そして、生成されたモニタ画像をRTコンソール2が表示装置に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線治療において精度良く患部に放射線を照射するためのモニタ画像表示に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療では、術前のCT画像により放射線治療計画・線量分布計算を行い、CTシミュレータやX線シミュレータ上で、計画時の患者位置と照射時の位置とをDRR(Digital Reconstructed Radiography)画像等の比較により照合し、患者のポジショニングを行った上で放射線の照射が行われる。
【0003】
しかし、肺や肝臓他の胸部・腹部臓器への照射では、患部の呼吸性の動きがあるため、患部以外の正常部位に放射線照射を行ってしまう恐れがある。このため、呼吸動のある臓器への放射線治療においては、呼吸同期照射が行われることが多い。呼吸同期照射では、呼吸を腹壁の動き等によりモニタし、例えば1呼吸サイクルの中でも比較的長時間臓器の動きが停止し、しかも、位置再現性の高い呼気終末期に合わせて、放射線照射を行う(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、最近では、MV−XR、KV−XR、MV−CT、KV−CTなど放射線治療直前の画像を表示して、画像を確認しながら放射線治療を行うことを可能とする画像支援化放射線治療(IGRT:Image-Guided Radiation Therapy)が注目されている。
【0005】
MV−XR(Mega Voltage X-Ray)は、治療用放射線源からの高エネルギーX線の対向する位置に検出器を設けて、治療源の視点からのMV(メガボルト)のX線による画像を表示する。KV−XR(Kilo Voltage X-Ray)は、治療用放射線源の照射軸と垂直に1対のKV(キロボルト)X線管及びFPD(Flat Panel Detector)を配置して、治療アイソセンターを含むKV−XR画像を表示する(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
MV−CT(Mega Voltage CT)及びKV−CT(Kilo Voltage CT)は、それぞれ治療用放射線源及びKV−XRと同様の線源を患者の周りで200°程度回転させて、コーンビームCTを撮影して表示する。
【0007】
【特許文献1】特開2006−51199号公報
【特許文献2】特開平8−206103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、MV−XRやMV−CTは、X線管電圧が大きすぎるため、軟部腫瘍組織の画像化には適さず、骨や肺の一部構造がかろうじて分かる程度である。従って、極端に照射野が外れた場合等のモニタは可能であるが、軟部がん組織の細かな位置ズレ等は画像化、フィードバックすることは難しい。また、KV−XRやKV−CTでは、画質がMV−XR/MV−CTよりは良いが、十分であるとは言い難い、という未解決な課題を有している。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による課題を解消するためになされたものであり、高精細度のモニタ画像を提供し、治療の安全性及び確実性を向上することができる放射線治療システム及び画像表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、放射線治療を受ける患者の1呼吸周期分のボリューム画像データを収集するボリューム画像データ収集手段と、前記ボリューム画像データ収集手段により収集されたボリューム画像データから各呼吸時相の画像を再構成する再構成手段と、前記患者を2軸以上の異なる方向からX線撮影を行うX線撮影手段と、前記再構成手段により再構成された画像の中から前記X線撮影手段により撮影された画像と呼吸時相が最も一致する画像を選定する一致画像選定手段と、前記一致画像選定手段により選定された画像を患者の呼吸に同期して表示する画像表示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項6記載の本発明は、放射線治療を受ける患者の1呼吸周期分のボリューム画像データを収集するボリューム画像データ収集ステップと、前記ボリューム画像データ収集ステップにより収集されたボリューム画像データから各呼吸時相の画像を再構成する再構成ステップと、前記患者を2軸以上の異なる方向からX線撮影を行うX線撮影ステップと、前記再構成ステップにより再構成された画像の中から前記X線撮影ステップにより撮影された画像と呼吸時相が最も一致する画像を選定する一致画像選定ステップと、前記一致画像選定ステップにより選定された画像を患者の呼吸に同期して表示する画像表示ステップと、を含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1または6記載の本発明によれば、高精細度のモニタ画像を提供することによって、治療の安全性及び確実性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る放射線治療システム及び画像表示方法の好適な実施例を詳細に説明する。なお、本実施例では、呼吸同期照射を行う場合を中心に説明する。
【実施例】
【0014】
まず、本実施例に係る放射線治療システムの構成について説明する。図1は、本実施例に係る放射線治療システムの構成を示す図である。同図に示すように、この放射線治療システム100は、放射線治療装置1と、RTコンソール2と、治療計画装置3と、呼吸同期装置4と、CTスキャナ5と、CTコンソール6とを有する。
【0015】
放射線治療装置1は、放射線治療寝台とライナックより構成される。患者は放射線治療寝台に寝かせられ、3軸から5軸の寝台移動による患者の位置決め後、放射線照射が行われる。ライナック(リニアアクセラレータ:直線加速器)は一般的にMV級のX線もしくは電子線を発生させることができるが、その発生口部分にコリメータが設置され、治療計画に基づく照射形状及び線量分布を実現する。近年は、コリメータとして複数の可動リーフにより複雑な腫瘍の形状に対応した線量分布を形成することができるマルチリーフコリメータ(MLC)が多く用いられる。
【0016】
この放射線治療装置1は、KV−X線源11及びFPD12の対を2組有する。KV−X線源11及びFPD12の対は、治療用放射線源の照射軸と垂直に配置される。KV−X線源11は、KV−XR画像を得るためのX線を照射するX線源であり、FPD12は、患者を透過したX線を検出する検出器である。この2対の画像の中心点を放射線治療のアイソセンターに一致させることで、画像上の何らかの目印(LANDMARK)がアイソセンターからどちらの方向にどれだけずれているかを計算することができる。
【0017】
RTコンソール2は、治療計画装置3によって作成された治療計画に基づいて放射線治療装置1を制御するコンソールである。RTコンソール2は、モニタ用の表示装置を備え、モニタ画像を表示する。ただし、このRTコンソール2は、モニタ画像として単にKV−XR画像を表示するのではなく、KV−XR画像に対応するCT画像をKV−XR画像と置き換えて表示する。あるいは、このRTコンソール2は、KV−XR画像に対応するCT画像をKV−XR画像と並べて表示する。なお、RTコンソール2が表示するモニタ画像の詳細については後述する。
【0018】
治療計画装置3は、放射線治療の計画を作成する装置である。具体的には、この治療計画装置3は、CTコンソール6から転送された画像データを用いて腫瘍のセグメンテーションを行い、腫瘍中心すなわち治療アイソセンターの設定及びセグメンテーションされた腫瘍全体に最適な放射線量分布を実現するための線量分布計算・治療計画を行う。治療計画装置3によって計画された放射線治療計画はRTコンソール2にDICOM−RT規格で転送され、その治療計画に基づいて放射線照射が行われる。
【0019】
呼吸同期装置4は、呼吸同期での放射線治療を行うために、患者の呼吸状態をモニタリングし、特定の呼吸状態でトリガを発生する装置である。ここでは、呼吸同期装置4は、呼吸周期の中でも比較的長い時間臓器が停止する呼気終末期にトリガを発生する。
【0020】
CTスキャナ5は、X線で患者をスキャンすることによって、ボリュームCT画像を生成するためのデータを収集する装置である。治療計画時、CTスキャナ5の寝台に治療時と同一の体位で患者が寝かされ、呼吸同期装置4による呼気終末期のトリガ信号を基準に1呼吸分の撮影が行われる。
【0021】
CTコンソール6は、CTスキャナ5の制御、画像再構成などを行う装置である。CTコンソール6によって再構成されたボリュームCT画像はDICOM規格の画像データとして治療計画装置3に転送され、治療計画装置3で作成された治療計画に基づいて放射線照射が行われる。
【0022】
具体的には、同期CT撮影を行ったものと同じ呼吸同期装置4にて放射線治療寝台に寝かせた患者の呼吸がモニタされ、同期CT撮影と同様の呼気終末期のトリガが生成される。ここで患者は、放射線治療装置のアイソセンター位置に、治療計画での患者患部ターゲットの中心を一致させる様に放射線治療寝台に固定される。患者の呼気終末期トリガ信号はRTコンソール2に送られ、RTコンソール2が、呼気終末期トリガ信号が来たときに放射線治療装置1のライナックからX線もしくは電子線が発生されるように照射を制御することで、呼吸同期放射線照射が実現される。
【0023】
また、CTコンソール6は、RTコンソール2からKV−XR画像を受け取り、RTコンソール2の表示装置に表示するモニタ画像を生成する。
【0024】
次に、CTコンソール6の機能構成について説明する。図2は、CTコンソール6の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、このCTコンソール6は、撮影制御部61と、画像再構成部62と、画像データ記憶部63と、モニタ画像生成部64と、通信部65と、制御部66とを有する。
【0025】
撮影制御部61は、CTスキャナ5を制御して呼吸同期CT画像用のデータを収集する制御部であり、収集したデータを画像データ記憶部63に格納する。画像再構成部62は、撮影制御部61により収集されたデータを再構成し、CT画像を生成する処理部であり、再構成したCT画像を画像記憶部63に格納する。画像データ記憶部63は、撮影制御部61により収集されたデータ、画像再構成部62により再構成されたCT画像などを記憶する記憶部である。
【0026】
モニタ画像生成部64は、KV−X線源11及びFPD12の対を用いて作成されたKV−XR画像をRTコンソール2から受け取り、RTコンソール2の表示装置に表示するモニタ画像をCT画像データを用いて生成する処理部である。このモニタ画像生成部64が、RTコンソール2の表示装置に表示するモニタ画像をCT画像データを用いて生成することによって、放射線治療システム100は高精細度のモニタ表示を提供することができる。
【0027】
通信部65は、RTコンソール2、治療計画装置3などとネットワークを介して通信する処理部であり、KV−XR画像の受信、CT画像、モニタ画像の送信などを行う。制御部66は、CTコンソール6全体の制御を行う処理部であり、具体的には、機能部間の制御の移動や機能部と記憶部の間のデータの受け渡しなどを行うことによって、CTコンソール6を一つの装置として機能させる。
【0028】
次に、モニタ画像生成部64の詳細について説明する。図3は、モニタ画像生成部64の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、このモニタ画像生成部64は、CT画像目印抽出部641と、目印基準位置決定部642と、DRR画像生成部643と、KV−XR画像受信部644と、KV−XR画像目印抽出部645と、対応画像選定部646と、モニタ画像送信部647とを有する。
【0029】
CT画像目印抽出部641は、ボリュームCT画像セット(ボリュームCT画像×時間)から患部の中心と利用者に指定された目印を抽出する処理部である。ここで、目印は、呼吸移動に伴い移動する部分であれば何でも良く、例えば血管の分岐や、嚢胞、患部腫瘍を目印とすることができる。ただし、目印は、できるだけ患部と近い動きを示し、患部から極端に離れた位置にはないことが望ましい。また、目印は、その都度設定可能であるが、できるだけ毎回同じ目印でモニタできることが望ましい。当然、腫瘍やその近傍に外からコイル等を埋め込んでそれを目印とすることもできる。
【0030】
目印基準位置決定部642は、目印の基準位置を決定する処理部であり、具体的には、呼気終末期トリガ時相のボリュームCT画像の患部中心を放射線治療座標系のアイソセンターと一致させ、その時の目印座標を基準位置とする。
【0031】
DRR画像生成部643は、各呼吸時相のボリュームCT画像データからKV−X線の軸と同じ方向から見たDRR画像を2つのKV−X線の軸それぞれについて生成する処理部である。これら生成したDRR画像を時間軸に並べて表示すれば、リアルタイムKV−X線と同じ視点からの高精細画像を観測することが可能となる。なお、2つのKV−X線の軸は、放射線治療計画の中の治療用放射線源の方向から算出することができる。
【0032】
KV−XR画像受信部644は、RTコンソール2から2軸のKV−XR画像をリアルタイムで受信する処理部である。RTコンソール2は、CTスキャン時と同じ体位で放射線治療寝台に固定された患者を2軸のKV−X線により撮影する。KV−XR画像目印抽出部645は、CT画像から抽出した目印と同じ目印をKV−XR画像から抽出する処理部である。
【0033】
対応画像選定部646は、KV−XR画像に対応するDRR画像を選定し、モニタ画像を生成する処理部である。具体的には、この対応画像選定部646は、2軸のKV−XR画像と、DRR画像生成部643がCT画像から再構成したDRR画像との間で目印の軌跡を呼気終末期トリガ時相を基準として位置合わせを行う。そして、リアルタイムのKV−XR画像からKV−XR画像目印抽出部645により抽出された目印の座標と、位置合わせされた状態で、最も近いDRR画像を選定し、KV−XR画像をDRR画像で置き換えたモニタ画像を生成する。あるいは、KV−XR画像とDRR画像を並べて表示するモニタ画像を生成する。図4に、KV−XR画像とDRR画像を2軸について並べて表示するモニタ画像の一例を示す。
【0034】
モニタ画像送信部647は、対応画像選定部646により生成されたモニタ画像をRTコンソール2に送信する。RTコンソール2は、受信したモニタ画面を表示装置に表示する。
【0035】
次に、本実施例に係る放射線治療システム100によるモニタ画像表示処理の処理手順について説明する。図5は、本実施例に係る放射線治療システム100によるモニタ画像表示処理の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、放射線治療システム100は、治療前の4DCT(リアルタイム・ボリュームCT)スキャンにより、全呼吸時相のボリューム画像を撮影する(ステップS1)。
【0036】
その際、1呼吸分のCT画像間の間隔は等時間間隔ではなく、目印がほぼ等間隔に呼吸軌跡上に並ぶ等距離間隔でのデータであることが望ましい。これは、KV−XR画像からの目印座標から最も近い座標位置のCT画像からの目印を抽出する際に有効となる。例えば、放射線照射での照射位置精度が2mm必要とすると、2mm間隔でのボリュームCT画像セットとして1呼吸分のデータを予め用意することが望ましい。
【0037】
そして、各呼吸時相のボリュームCT画像の患部中心と目印とを抽出する(ステップS2)。そして、各ボリュームCT画像のうち、呼吸同期装置のトリガ時相すなわち呼気終末期時相と一致するCT画像の患部中心を放射線治療座標系のアイソセンターとして、放射線治療の患者設定とCT画像の座標系を一致させる(ステップS3)。
【0038】
そして、放射線治療計画より、各KV−X線の軸を算出し、算出した方向から見たDRR画像を各呼吸時相のボリュームCT画像データから生成する(ステップS4)。そして、CT画像上で抽出した目印と同じ目印を放射線治療寝台上の患者の2軸KV−XR画像上で抽出する(ステップS5)。
【0039】
そして、リアルタイムの2軸KV−XR画像と、CT画像データより再構成した同一方向からのDRR画像の両者の目印の軌跡を呼気終末期トリガ時相での位置を基準として位置合わせを行う(ステップS6)。
【0040】
そして、KV−XR画像上での目印座標と最も目印の座標が近い時相のボリュームCT画像データから再構成したDRR画像を選定し、各KV−XR画像と置き換えてRTコンソール2の表示装置に表示する。あるいは、KV−XR画像と並べて表示する(ステップS7)。
【0041】
このように、各KV−XR画像を対応するDRR画像で置き換えて表示する、あるいは、両画像を並べて表示することによって、より優れたモニタ画像を提供することができる。
【0042】
上述してきたように、本実施例では、CTコンソール6のモニタ画像生成部64が、4次元CT画像データからKV−XR画像と同方向のDRR画像を再構成する。そして、モニタ画像生成部64は、再構成したDRR画像の中で目印座標が最も近い、すなわち呼吸時相が最も一致するDRR画像でリアルタイムKV−XR画像を置き換えたモニタ画像、あるいは、両画像を並列表示するモニタ画像を生成する。そして、生成されたモニタ画像をRTコンソール2が表示装置に表示する。従って、高精細度のモニタ画像を提供することができる。このため、患部腫瘍を確認しながらの治療が可能となり、放射線治療の安全性、確実性、効率などを向上させることができる。
【0043】
なお、上記実施例では、CTコンソール6でモニタ画像生成部64が動作することとしたが、RTコンソール2など他の装置でモニタ画像生成部64を動作させるようにすることもできる。また、上記実施例では、モニタ画像生成部64が生成したモニタ画像をRTコンソール2の表示装置に表示することとしたが、CTコンソール6の表示装置など他の表示装置に表示するようにすることもできる。
【0044】
また、上記実施例では、リアルタイムにKV−XR画像からモニタ画像を生成して表示することとしたが、1呼吸分のKV−XR画像に対してモニタ画像をまとめて生成し、一定の時間遅れの下でモニタ画像を表示するようにすることもできる。
【0045】
また、呼吸は、当然毎回状態が異なり、最初に目印の軌跡の位置合わせを行っても、実際の目印の位置が最初に撮影した1呼吸分のボリュームCT画像セットの範囲から外れる場合がある。また、当然体動による軌跡自体のズレも予想される。一方、放射線照射の位置精度は、2〜3mm程度は必要とされる。
【0046】
従って、例えば、図6に示すように、予め表示許容範囲を目印の軌跡からのズレd(mm)として指定しておく。そして、例えばd=2mmよりも実際にリアルタイムでモニタしているKV−XR画像上での目印の座標が離れた場合には、目印の座標が近いボリュームCT画像データからの再構成画像はエラーを表示して表示しないようにすることもできる。
【0047】
また、最初に位置決めした目印軌跡を標準軌跡とすると、そこからのリアルタイムKV−XR画像上で目印が大幅にズレた場合には、何らかの原因で患者設定が大きくずれた恐れがある。このため、標準軌跡から外れた旨を警告表示したり、放射線照射を停止したりといった処理を行うようにすることもできる。
【0048】
また、一旦標準軌跡から外れても、呼気終末期トリガでの目印位置を基準として、CT画像セットからの呼気終末期目印座標と、KV−XR画像からの呼気終末期目印座標がd(mm)以内の初期設定範囲内に復帰すれば、一時的な位置ズレとして以降の表示や照射を継続するようにすることもできる。更にもし、呼気終末期トリガ時の各目印座標が大きくずれている場合には、再位置決めを促す表示を行うようにすることもできる。
【0049】
また、上記実施例では、2軸KV−XR画像を表示することとしたが、更に、同時相のボリュームCT画像データから治療用放射線源から見たDRR画像や、同方向から見た腫瘍アイソセンターを含むMPR画像などを再構成して表示するようにすることもできる。また、これらの表示上に、治療計画での線量分布図を重畳して、腫瘍との位置関係をリアルタイムで確認する様に表示するようにすることもできる。更に、治療用放射線源から見た表示方法だけではなく、CTの3次元情報の強みを活かして、ボリューム・レンダリングによる臓器、患部ターゲットを3次元表示するようにすることもできる。また、その3次元画像に3次元の放射線線量分布を重畳表示するようにすることもできる。
【0050】
また、呼吸は連続のため、予め用意したCT画像セットの隙間にくる場合も発生する。上述実施例では、高精細CT画像への置き換えに関して、画像補完等は行わないこととしたが、最も近い2つのボリュームCT画像データからの輝度線形補完画像を生成し、表示を行うようにすることもできる。
【0051】
また、本実施例では、KV−XR画像撮影用のX線管とFPDを2対装備することで、患部の目印の空間座標を計測できるように構成したが、1対のX線管とFPDを放射線治療のアイソセンターを中心に円弧状もしくは回転移動させて、3D断層撮影を行うようにすることもできる。
【0052】
また、本実施例では、リアルタイムボリュームスキャナとしてCTを使用したが、更に軟部組織のコントラスト分解能が良いMRIを用いても良い。また、本実施例では、リアルタイムでのKV−XR画像と同方向から観測した画像をCT画像より再構成し、置き換えあるいは並べて表示した。しかし、これに限らず、例えば透過度を変えて、両画像を重畳表示したり、高精細CT再構成DRR画像上に、リアルタイムKV−XR画像から抽出した目印をリアルタイムで重畳表示するようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明は、放射線治療を行う医療システムに適している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施例に係る放射線治療システムの構成を示す図である。
【図2】CTコンソールの機能構成を示すブロック図である。
【図3】モニタ画像生成部の機能構成を示すブロック図である。
【図4】KV−XR画像とDRR画像を2軸について並べて表示するモニタ画像の一例を示す図である。
【図5】本実施例に係る放射線治療システムによるモニタ画像表示処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】表示許容範囲を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 放射線治療装置
2 RTコンソール
3 治療計画装置
4 呼吸同期装置
5 CTスキャナ
6 CTコンソール
11 KV−X線源
12 FPD
61 撮影制御部
62 画像再構成部
63 画像データ記憶部
64 モニタ画像生成部
65 通信部
66 制御部
641 CT画像目印抽出部
642 目印基準位置決定部
643 DRR画像生成部
644 KV−XR画像受信部
645 KV−XR画像目印抽出部
646 対応画像選定部
647 モニタ画像送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療を受ける患者の1呼吸周期分のボリューム画像データを収集するボリューム画像データ収集手段と、
前記ボリューム画像データ収集手段により収集されたボリューム画像データから各呼吸時相の画像を再構成する再構成手段と、
前記患者を2軸以上の異なる方向からX線撮影を行うX線撮影手段と、
前記再構成手段により再構成された画像の中から前記X線撮影手段により撮影された画像と呼吸時相が最も一致する画像を選定する一致画像選定手段と、
前記一致画像選定手段により選定された画像を患者の呼吸に同期して表示する画像表示手段と、
を備えたことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項2】
前記一致画像選定手段は、前記再構成手段により再構成された画像の中から前記X線撮影手段により撮影された画像と目印の位置が最も一致する画像を選定することを特徴とする放射線治療システム。
【請求項3】
前記再構成手段は、前記X線撮影手段が撮影する軸方向からのDRR画像を前記ボリューム画像データ収集手段により収集されたボリューム画像データから再構成することを特徴とする請求項1または2に記載の放射線治療システム。
【請求項4】
前記画像表示手段は、前記X線撮影手段により撮影された画像を前記一致画像選定手段により選定された画像で置き換えて表示することを特徴とする請求項1、2または3に記載の放射線治療システム。
【請求項5】
前記画像表示手段は、前記X線撮影手段により撮影された画像と前記一致画像選定手段により選定された画像を並べて表示することを特徴とする請求項1、2または3に記載の放射線治療システム。
【請求項6】
放射線治療を受ける患者の1呼吸周期分のボリューム画像データを収集するボリューム画像データ収集ステップと、
前記ボリューム画像データ収集ステップにより収集されたボリューム画像データから各呼吸時相の画像を再構成する再構成ステップと、
前記患者を2軸以上の異なる方向からX線撮影を行うX線撮影ステップと、
前記再構成ステップにより再構成された画像の中から前記X線撮影ステップにより撮影された画像と呼吸時相が最も一致する画像を選定する一致画像選定ステップと、
前記一致画像選定ステップにより選定された画像を患者の呼吸に同期して表示する画像表示ステップと、
を含んだことを特徴とする画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−69086(P2010−69086A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241294(P2008−241294)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】