説明

放射線治療システム

【課題】呼吸同期照射に必要な呼吸位相でのみX線透視画像の撮影を行うことにより、高精度な呼吸同期照射を少ないX線被曝量で実現する放射線治療システムを提供することにある。
【解決手段】外部呼吸モニタ300は、被検体の体外から呼吸位相を観測する。内部呼吸観測手段であるX線管210及び検出器210は、被検体をX線透視画像で撮影し、撮影したX線透視画像から体内構造の位置を用いて呼吸位相を観測する。透視画像撮影ゲート制御装置310は、外部呼吸モニタによって得られた呼吸位相を用いて、呼吸位相が予め指定された範囲内のタイミングでX線透視画像を撮影する。治療ビームゲート制御装置410は、ゲート撮影制御装置310によりゲート撮影された画像から計測した内部呼吸位相を用いて治療ビームの出射をゲート制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に治療ビームを照射する放射線治療システムに係り、特に、患者の呼吸に同期して治療ビームを照射するに好適な放射線治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
体外からX線,粒子線などの放射線を照射して治療を行う放射線治療において、標的を治療計画通りに高精度に位置決めすることは治療効果向上のために重要である。高精度な位置決めは、位置決めの不確実性を補償する照射領域マージンの縮小を可能とし、標的周辺の健康臓器への被曝量低減を可能とするためである。
【0003】
標的が呼吸性移動を伴う場合には、呼吸性移動マージンが必要となる。マージンを縮小するため、呼吸の特定の位相のみ治療ビームを照射する呼吸同期照射が行われている。制限された位相範囲内では、呼吸性移動量も制限されるため、必要なマージンが縮小する。呼吸位相の計測には、体表の動きや呼吸器流量など体外から観測可能な指標を用いる外部計測と、標的位置や骨格、横隔膜など体の内部構造の位置を指標とする内部計測がある。内部構造の位置は、X線透視画像を撮影することで取得する。内部計測を利用した呼吸同期照射法は、例えば、特許文献1,特許文献2,特許文献3に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3053389号公報
【特許文献2】特開2008−154861号公報
【特許文献3】特開2004−283513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、内部計測は、直接的な計測となるため高い精度が実現可能だが、X線透視による被曝が生じる。このX線透視による被曝はなるべく少ないことが望ましい。
【0006】
本発明の目的は、呼吸同期照射に必要な呼吸位相でのみX線透視画像の撮影を行うことにより、高精度な呼吸同期照射を少ないX線被曝量で実現する放射線治療システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、被検体の体外から呼吸位相を観測する外部呼吸観測手段と、前記被検体をX線透視画像で撮影し、撮影した前記X線透視画像から体内構造の位置を用いて呼吸位相を観測する内部呼吸観測手段と、前記外部呼吸観測手段によって得られた呼吸位相を用いて、前記呼吸位相が予め指定された範囲内のタイミングでX線透視画像を撮影するゲート撮影制御手段と、該ゲート撮影制御手段によりゲート撮影された画像から計測した内部呼吸位相を用いて治療ビームの出射をゲート制御する治療ビームゲート制御手段を備えるようにしたものである。
かかる構成により、呼吸同期照射に必要な呼吸位相でのみX線透視画像の撮影を行うことにより、高精度な呼吸同期照射を少ないX線被曝量で実現し得るものとなる。
【0008】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記内部呼吸観測手段は、前記治療ビームゲート制御手段が生成する治療ビーム出射許可ゲート信号がオフになると、X線透視画像の撮影を停止するX線透視画像撮影制御手段を備えるようにしたものである。
【0009】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記内部呼吸観測手段は、治療ビームが出射可能な期間にX線透視画像の撮影を許可して、X線透視画像を撮影するX線透視画像撮影制御手段を備えるようにしたものである。
【0010】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記内部呼吸観測手段は、治療ビームが出射可能な期間に先行して、X線透視画像の撮影を許可し、X線透視画像を撮影するX線透視画像撮影制御手段を備えるようにしたものである。
【0011】
(5)上記(1)において、好ましくは、前記治療ビームゲート制御手段は、設定された治療ビーム出射条件を保持し、次回以降の治療時に使用可能とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、呼吸同期照射に必要な呼吸位相でのみX線透視画像の撮影を行うことにより、高精度な呼吸同期照射を少ないX線被曝量で実現するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1〜図4を用いて、本発明の第1の実施形態による放射線治療システムの構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による放射線治療システムの構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による放射線治療システムの構成を示すシステム構成図である。
【0014】
本実施形態の放射線治療システムでは、治療ビーム加速器100により生成した治療ビームをビーム照射装置110により整形し、ベッド120上の患者130に照射する。治療ビーム加速器100とビーム照射装置110は、治療ビーム出射制御装置140に制御され、ビームの出射を行う。治療ビーム出射制御装置140は、照射制御装置500からの指示により出射制御を行う。照射制御装置500は、操作者の指示に従い、治療記録管理データベース510からあらかじめ治療計画装置520で作成された治療計画情報を取得する。操作者が照射制御装置500に対して治療開始を指示すると、治療計画のビーム照射量・照射方法に従い、治療ビーム出射制御装置140にビーム照射の指示を出す。
【0015】
ここで、患者の呼吸に同期して治療ビームを照射するために、患者の呼吸状態を観測する装置として、本実施形態では、体の変形や呼吸気量など体外から計測可能な呼吸の信号を観測する外部観測装置と、治療標的や骨格や横隔膜位置や体内に埋め込んだマーカなど体内構造の位置情報を元に呼吸位相を観測する内部観測装置の2種類の観測装置を備える。外部観測装置としては、外部呼吸モニタ300を備えている。外部呼吸モニタ300にて観測した信号は透視画像撮影ゲート制御装置310に入力され、透視画像撮影ゲート制御装置310にて呼吸同期制御に用いられる。内部観測装置としては、X線発生源200及びX線検出器210を用いて患者のX線透視画像を撮影するX線透視画像撮影制御装置220を備えている。内部呼吸位相取得装置400は、X線透視画像撮影制御装置220により撮影された画像から呼吸指標を解析し、治療ビームゲート制御装置410にて呼吸同期制御に用いる。
【0016】
一般に、放射線治療装置は患者位置決め用X線透視装置を備えるので、X線発生源200,X線検出器210,X線透視画像撮影制御装置220からなるX線透視画像撮影装置は、患者位置決め用X線透視装置が兼ねることができる。患者位置決めは、標的と治療装置の位置関係を治療計画と一致させる手順であり、位置決めで体内の情報を参照可能とするためにX線透視画像を用いる。
【0017】
次に、図2〜図4を用いて、本実施形態による放射線治療システムの動作について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態による放射線治療システムの動作を示すフローチャートである。図3及び図4は、本発明の第1の実施形態による放射線治療システムの動作を示すタイミングチャートである。
【0018】
操作者が外部呼吸モニタ300を起動すると、ステップS100において、外部呼吸モニタ300は、体外から患者の外部呼吸指標の観測を開始する。
【0019】
外部呼吸指標の観測には、体表位置のレーザー距離計による計測や、体表に設置したマーカ位置の可視光または赤外線カメラによる計測や、体表に設置されたひずみゲージや、呼吸流量計による呼吸量計測などを用いる。ここでは、体表位置など呼吸により変化する値の観測値を外部呼吸指標と呼ぶ。外部呼吸指標の観測は治療中、常に行う。
【0020】
次に、ステップS200において、透視画像撮影ゲート制御装置310は、外部呼吸モニタ300により得られた外部呼吸指標に対し、X線撮影許可条件を設定する。外部呼吸指標は、透視画像撮影ゲート制御装置310に入力される。
【0021】
次に、ステップS210において、透視画像撮影ゲート装置310は、X線透視画像撮影制御装置220に、X線撮影許可ゲート信号を出力する。透視画像撮影ゲート装置310は、透視画像撮影ゲート制御装置310が設定した外部呼吸指標に対して、X線透視画像を撮影可能な条件を設定する手段を備えている。
【0022】
ここで、図3を用いて、外部呼吸曲線について、説明する。図3(A)に示すように、呼吸指標を時間に対してプロットしたものが呼吸曲線と呼ばれる。
【0023】
透視画像撮影ゲート装置310では呼吸曲線を表示する。透視画像撮影ゲート装置310は、操作者が表示された呼吸曲線を参照して入力した、呼吸指標に対してX線撮影を許可する値の範囲を用いて、呼吸曲線が撮影許可指定範囲に入っている間、図3(B)に示すように、X線透視画像撮影制御装置220に対し撮影許可ゲート信号を発信する。ここで、X線撮影許可位相は、呼吸曲線の変化率に対して設定してもよい。また、透視画像撮影ゲート装置310は、X線撮影許可範囲をメモリまたはデータベースに保持し、次回の治療時に初期値として用いてもよいものである。
【0024】
次に、ステップS300において、X線透視画像撮影制御装置220は、操作者の指示があると、透視画像の撮影を開始する。透視画像は、透視画像撮影ゲート制御装置220から撮影許可ゲート信号が発信されている間、間欠的に撮影される。図3(A)において、外部呼吸曲線の一周期は、個人差はあるものと、大体4s程度である。従って、図3(B)に示す撮影許可ゲート信号がオンとなる期間は、例えば、2s程度である。撮影された画像は内部呼吸位相取得装置400に入力される。
【0025】
次に、ステップS400において、内部呼吸位相取得装置400は、X線透視画像撮影制御装置220によって得られた画像を解析し、内部呼吸指標を求める。内部呼吸指標は、治療標的や骨格や横隔膜位置や体内に埋め込んだマーカの位置より求める。治療標的や骨格の位置の解析は、治療計画から該当領域の透視画像を生成し、最類似領域を探索することにより行う。または、あらかじめ作業者が領域を指示し、オプティカルフローなどの画像マッチング手法にて対応領域の運動を解析する。横隔膜位置の解析には、透視画像の横隔膜位置では輝度値が急峻に変化することを用いる。解析領域を指定し、領域内で変化率が設定値を超えた点を横隔膜位置とし、その位置変化を解析する。埋め込みマーカ位置は、高い輝度値、または特徴的な形状で画像に写るので、閾値処理やパターンマッチングにて位置を解析する。そして、得られた内部呼吸指標を治療ビームゲート制御装置410に送信する。
【0026】
なお、X線透視画像は不連続で撮影されるため、内部呼吸指標の解析において連続性を必要とする手法を用いる場合には、前回ゲート信号がONになった状態、あるいはOFFになった状態をメモリに保存し、保存された状態と現状を連続として解析を再開する機構を備えるようにする。
【0027】
次に、ステップS500において、操作者は、内部呼吸波形を参照し、内部呼吸指標に対して治療ビーム出射を許可する値の範囲を入力する。治療ビームゲート制御装置410は、透視画像撮影ゲート装置310と同様に、治療ビーム出射ゲート条件入力手段を備えている。
【0028】
ここで、図4を用いて、内部呼吸指標について説明する。図4(A)に示すように、内部呼吸指標を時間に対してプロットしたものが、内部呼吸波形(曲線)である。内部呼吸波形は、X線透視画像のゲート撮影のため不連続となる。
【0029】
なお、設定時のX線透視による被曝を低減するため、設定されたビーム出射許可条件をメモリに保持し、次回以降の治療で使用することが可能としてもよいものである。
【0030】
次に、ステップS510において、照射制御装置500は、治療ビームゲート制御装置410からの内部呼吸指標に基づいて、内部呼吸曲線が治療ビーム出射許可範囲に入っている間、図4(B)に示す治療ビーム出射許可ゲート信号を治療ビーム出射制御装置に出力する。
【0031】
以上で、内部呼吸指標に同期した治療ビーム出射ゲート信号が発信される状態になる。透視画像撮影ゲート信号がONになる時間は、治療ビームゲート信号がONになる時間よりも長くなる。ここで、X線撮影の被曝量を少なくするためには、治療ビーム出射を許可する位相範囲とX線撮影を許可する位相範囲が一致するようにX線撮影許可範囲を調整しなおすと良い。
【0032】
次に、ステップS600において、作業者は照射制御装置500に治療開始を指示する。
【0033】
そして、治療計画装置520により計画した線量を照射後、ステップS700において、照射制御装置500は、治療ビーム出射制御装置510にビーム停止を指示する。
【0034】
最後に、ステップS800において、照射制御装置500は、X線透視画像撮影制御装置220にX線撮影の停止を指示する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態では、外部計測装置により計測した外部呼吸波形を用いて、呼吸指標に対してX線撮影許可指定範囲に入っている間、X線透視画像撮影制御装置に対し撮影許可ゲート信号を発信して、X線透視装置をゲート撮影することにより、治療ビームのゲート制御に必要な内部呼吸波形を少ない被曝で取得することが可能となる。
【0036】
次に、図5及び図6を用いて、本発明の第2の実施形態による放射線治療システムの構成及び動作について説明する。なお、本実施形態による放射線治療システムの構成は、図1に示したものと同様である。
【0037】
図5は、本発明の第2の実施形態による放射線治療システムの動作を示すフローチャートである。なお、図2と同一ステップ番号は、同一処理内容を示している。
【0038】
また、図6は、本発明の第2の実施形態による放射線治療システムの動作を示すタイミングチャートである。図6において、図6(A)は、図3(A)と同じ外部呼吸曲線を示している。図6(B)は、図4(A)と同じ内部呼吸曲線を示している。図6(C)は、図4(B)と同じ治療ビーム出射許可ゲート信号を示している。図6(D)は、本実施形態による撮影許可ゲート信号を示している。
【0039】
操作者が外部呼吸モニタ300を起動すると、ステップS100において、外部呼吸モニタ300は、体外から患者の外部呼吸指標の観測を開始する。
【0040】
次に、ステップS200において、透視画像撮影ゲート制御装置310は、外部呼吸モニタ300により得られた外部呼吸指標に対し、X線撮影許可条件を設定する。外部呼吸指標は、透視画像撮影ゲート制御装置310に入力される。透視画像撮影ゲート装置310は、外部呼吸指標に対してX線透視画像を撮影可能な条件を設定する手段を備えている。
【0041】
次に、ステップS210において、透視画像撮影ゲート装置310は、X線透視画像撮影制御装置220に、X線撮影許可ゲート信号を出力する。
【0042】
透視画像撮影ゲート装置310は、操作者が表示された呼吸曲線(図6(A))を参照して入力した、呼吸指標に対してX線撮影を許可する値の範囲を用いて、呼吸曲線が撮影許可指定範囲に入っている間、図3(B)に示したような、X線透視画像撮影制御装置220に対し撮影許可ゲート信号を発信する。
【0043】
次に、ステップS300Aにおいて、X線透視画像撮影制御装置220は、操作者の指示があると、通常モードにて、透視画像の撮影を開始する。通常モードとは、図2のステップS300にて説明したように、X線透視画像撮影制御装置220が、透視画像撮影ゲート制御装置220から撮影許可ゲート信号が発信されている間、透視画像を間欠的に撮影するものである。
【0044】
次に、ステップS400において、内部呼吸位相取得装置400は、X線透視画像撮影制御装置220によって得られた画像を解析し、内部呼吸指標を求める。内部呼吸指標は、治療標的や骨格や横隔膜位置や体内に埋め込んだマーカの位置より求める。そして、得られた内部呼吸指標を治療ビームゲート制御装置410に送信する。
【0045】
なお、X線透視画像は不連続で撮影されるため、内部呼吸指標の解析において連続性を必要とする手法を用いる場合には、前回ゲート信号がONになった状態、あるいはOFFになった状態をメモリに保存し、保存された状態と現状を連続として解析を再開する機構を備えるようにする。
【0046】
次に、ステップS500において、操作者は、内部呼吸波形を参照し、内部呼吸指標に対して治療ビーム出射を許可する値の範囲を入力する。治療ビームゲート制御装置410は、透視画像撮影ゲート装置310と同様に、治療ビーム出射ゲート条件入力手段を備えている。図6(B)は、内部呼吸指標を示している。内部呼吸波形は、X線透視画像のゲート撮影のため不連続となる。
【0047】
次に、ステップS510において、照射制御装置500は、治療ビームゲート制御装置410からの内部呼吸指標に基づいて、内部呼吸曲線が治療ビーム出射許可範囲に入っている間、図6(C)に示す治療ビーム出射許可ゲート信号を治療ビーム出射制御装置に出力する。
【0048】
また、ステップS520において、操作者は、X線透視画像撮影制御装置220を治療ビーム出射許可同期モードに切り替える。治療ビーム出射許可同期モードでは、図6(D)に示すように、図6(C)に示した治療ビーム出射許可ゲート信号と同期してオフ状態になる撮影許可ゲート信号により、撮影を許可するようにしている。
【0049】
ステップS300Aの通常モードにおける治療ビーム出射許可期間T1(図6(A))に対して、ステップS520における治療ビーム出射許可期間T2(図6(D))は短くなっている。
【0050】
以上で、内部呼吸指標に同期した治療ビーム出射ゲート信号が発信される状態になる。
【0051】
次に、ステップS600において、作業者は、照射制御装置500に治療開始を指示する。
【0052】
また、ステップS400Aにおいて、内部呼吸位相取得装置400は、治療ビーム出射許可同期モード中に、X線透視画像撮影制御装置220によって得られた画像を解析し、内部呼吸指標を求める。治療ビーム出射許可同期モードにおける呼吸曲線は図6(E)に示すように得られる。
【0053】
そして、治療計画装置520により計画した線量を照射後、ステップS700において、照射制御装置500は、治療ビーム出射制御装置510にビーム停止を指示する。
【0054】
最後に、ステップS800において、照射制御装置500は、X線透視画像撮影制御装置220にX線撮影の停止を指示する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態では、治療ビーム出射ゲート信号に同期して撮影終了するようにX線透視画像撮影制御装置に対し撮影許可ゲート信号を発信して、X線透視装置をゲート撮影することにより、治療ビームのゲート制御に必要な内部呼吸波形をさらに少ない被曝で取得することが可能となる。
【0056】
次に、図7及び図8を用いて、本発明の第3の実施形態による放射線治療システムの構成及び動作について説明する。なお、本実施形態による放射線治療システムの構成は、図1に示したものと同様である。
【0057】
図7は、本発明の第3の実施形態による放射線治療システムの動作を示すフローチャートである。なお、図2及び図5と同一ステップ番号は、同一処理内容を示している。
【0058】
また、図8は、本発明の第3の実施形態による放射線治療システムの動作を示すタイミングチャートである。図8において、図8(A)〜図8(C)は、図5(A)〜図5(C)と同様である。図8(D)は、治療ビーム出射可能信号を示している。図8(E)は、本実施形態による撮影許可ゲート信号を示している。図8(F)は本実施形態による内部呼吸曲線を示している。
【0059】
操作者が外部呼吸モニタ300を起動すると、ステップS100において、外部呼吸モニタ300は、体外から患者の外部呼吸指標の観測を開始する。
【0060】
次に、ステップS200において、透視画像撮影ゲート制御装置310は、外部呼吸モニタ300により得られた外部呼吸指標に対し、X線撮影許可条件を設定する。外部呼吸指標は、透視画像撮影ゲート制御装置310に入力される。透視画像撮影ゲート装置310は、外部呼吸指標に対してX線透視画像を撮影可能な条件を設定する手段を備えている。
【0061】
次に、ステップS210において、透視画像撮影ゲート装置310は、X線透視画像撮影制御装置220に、X線撮影許可ゲート信号を出力する。
【0062】
透視画像撮影ゲート装置310は、操作者が表示された呼吸曲線(図8(A))を参照して入力した、呼吸指標に対してX線撮影を許可する値の範囲を用いて、呼吸曲線が撮影許可指定範囲に入っている間、図3(B)に示したような、X線透視画像撮影制御装置220に対し撮影許可ゲート信号を発信する。
【0063】
次に、ステップS300Aにおいて、X線透視画像撮影制御装置220は、操作者の指示があると、加速器非同期モードにて、透視画像の撮影を開始する。加速器非同期モードとは、X線透視画像撮影制御装置220が、透視画像撮影ゲート制御装置220から撮影許可ゲート信号が発信されている間、透視画像を間欠的に撮影するものである。
【0064】
次に、ステップS400において、内部呼吸位相取得装置400は、X線透視画像撮影制御装置220によって得られた画像を解析し、内部呼吸指標を求める。内部呼吸指標は、治療標的や骨格や横隔膜位置や体内に埋め込んだマーカの位置より求める。そして、得られた内部呼吸指標を治療ビームゲート制御装置410に送信する。
【0065】
なお、X線透視画像は不連続で撮影されるため、内部呼吸指標の解析において連続性を必要とする手法を用いる場合には、前回ゲート信号がONになった状態、あるいはOFFになった状態をメモリに保存し、保存された状態と現状を連続として解析を再開する機構を備えるようにする。
【0066】
次に、ステップS500において、操作者は、内部呼吸波形を参照し、内部呼吸指標に対して治療ビーム出射を許可する値の範囲を入力する。治療ビームゲート制御装置410は、透視画像撮影ゲート装置310と同様に、治療ビーム出射ゲート条件入力手段を備えている。図8(B)は、内部呼吸指標を示している。内部呼吸波形は、X線透視画像のゲート撮影のため不連続となる。
ここで、ステップS500において、操作者が治療ビーム出射許可条件を設定すると、治療ビームゲート制御装置が指示を出し、X線透視画像撮影制御装置を加速器同期モードに切り替えてもよいものである。また、加速器同期モードでは、X線透視画像撮影制御装置は加速器が出射可能かつ外部呼吸信号が撮影許可指定範囲内の状態で撮影を行うが、加速器が出射可能になるタイミングが先行して決定する場合には、あらかじめ設定した時間だけ先行して撮影を開始してもよいものである。
【0067】
次に、ステップS510において、照射制御装置500は、治療ビームゲート制御装置410からの内部呼吸指標に基づいて、内部呼吸曲線が治療ビーム出射許可範囲に入っている間、図8(C)に示す治療ビーム出射許可ゲート信号を治療ビーム出射制御装置に出力する。
【0068】
また、ステップS550において、操作者は、X線透視画像撮影制御装置を加速器同期モードに切り替える。加速器同期モードでは、図8(E)に示すように、図8(A)に示した外部呼吸指標が撮影許可範囲内である期間中に、図8(D)に示すように、加速器が治療ビーム出射可能な期間に撮影許可ゲート信号がオンになり、撮影を許可するようにしている。治療ビーム出射の可否は照射制御装置500から発信される治療ビーム出射可能信号により判定する。
【0069】
ステップS300Aの通常モードにおける治療ビーム出射許可期間T1(図6(A))に対して、ステップS550における治療ビーム出射許可期間T3(図8(E))は短くなっている。
【0070】
以上で、内部呼吸指標に同期した治療ビーム出射ゲート信号が発信される状態になる。
【0071】
次に、ステップS600において、作業者は、照射制御装置500に治療開始を指示する。照射制御装置500は図8(D)に示す治療ビーム出射可能信号をX線透視画像撮影制御装置310に発信を開始する。加速器のビーム出射可否は治療ビーム出射制御装置140が発信する出射可能信号により判定する。治療ビーム出射制御装置140は加速器100及びビーム照射装置110の状態から出射の可否を判定し、出射可能信号を照射制御装置500に発信する。
【0072】
また、ステップS400Aにおいて、内部呼吸位相取得装置400は、治療ビーム出射許可同期モード中に、X線透視画像撮影制御装置220によって得られた画像を解析し、内部呼吸指標を求める。
【0073】
そして、治療計画装置520により計画した線量を照射後、ステップS700において、照射制御装置500は、治療ビーム出射制御装置510にビーム停止を指示する。
【0074】
最後に、ステップS800において、照射制御装置500は、X線透視画像撮影制御装置220にX線撮影の停止を指示する。
【0075】
以上説明したように、本実施形態では、治療ビーム出射可能信号に同期してX線透視画像撮影制御装置に対し撮影許可ゲート信号を発信して、X線透視装置をゲート撮影することにより、治療ビームのゲート制御に必要な内部呼吸波形をさらに少ない被曝で取得することが可能となる。
【0076】
次に、図9及び図10を用いて、本発明の第4の実施形態による放射線治療システムの構成及び動作について説明する。なお、本実施形態による放射線治療システムの構成は、図1に示したものと同様である。
【0077】
図9は、本発明の第4の実施形態による放射線治療システムの動作を示すフローチャートである。なお、図2及び図5及び図7と同一ステップ番号は、同一処理内容を示している。
【0078】
また、図10は、本発明の第4の実施形態による放射線治療システムの動作を示すタイミングチャートである。図10において、図10(A)〜図10(D)は、図8(A)〜図8(D)と同様である。図10(E)は、本実施形態による撮影許可ゲート信号を示している。図10(F)は、本実施形態による内部呼吸曲線を示している。
【0079】
操作者が外部呼吸モニタ300を起動すると、ステップS100において、外部呼吸モニタ300は、体外から患者の外部呼吸指標の観測を開始する。
【0080】
次に、ステップS200において、透視画像撮影ゲート制御装置310は、外部呼吸モニタ300により得られた外部呼吸指標に対し、X線撮影許可条件を設定する。外部呼吸指標は、透視画像撮影ゲート制御装置310に入力される。透視画像撮影ゲート装置310は、外部呼吸指標に対して、X線透視画像を撮影可能な条件を設定する手段を備えている。
【0081】
次に、ステップS210において、透視画像撮影ゲート装置310は、X線透視画像撮影制御装置220に、X線撮影許可ゲート信号を出力する。
【0082】
透視画像撮影ゲート装置310は、操作者が表示された呼吸曲線(図10(A))を参照して入力した、呼吸指標に対してX線撮影を許可する値の範囲を用いて、呼吸曲線が撮影許可指定範囲に入っている間、図3(B)に示したような、X線透視画像撮影制御装置220に対し撮影許可ゲート信号を発信する。
【0083】
次に、ステップS300Aにおいて、X線透視画像撮影制御装置220は、操作者の指示があると、加速器非同期モードにて、透視画像の撮影を開始する。加速器非同期モードとは、図7のステップS300Aにて説明したように、X線透視画像撮影制御装置220が、透視画像撮影ゲート制御装置220から撮影許可ゲート信号が発信されている間、透視画像を間欠的に撮影するものである。
【0084】
次に、ステップS400において、内部呼吸位相取得装置400は、X線透視画像撮影制御装置220によって得られた画像を解析し、内部呼吸指標を求める。内部呼吸指標は、治療標的や骨格や横隔膜位置や体内に埋め込んだマーカの位置より求める。そして、得られた内部呼吸指標を治療ビームゲート制御装置410に送信する。
【0085】
なお、X線透視画像は不連続で撮影されるため、内部呼吸指標の解析において連続性を必要とする手法を用いる場合には、前回ゲート信号がONになった状態、あるいはOFFになった状態をメモリに保存し、保存された状態と現状を連続として解析を再開する機構を備えるようにする。
【0086】
次に、ステップS500において、操作者は、内部呼吸波形を参照し、内部呼吸指標に対して治療ビーム出射を許可する値の範囲を入力する。治療ビームゲート制御装置410は、透視画像撮影ゲート装置310と同様に、治療ビーム出射ゲート条件入力手段を備えている。図10(B)は、内部呼吸指標を示している。内部呼吸波形は、X線透視画像のゲート撮影のため不連続となる。
ここで、ステップS500において、操作者が治療ビーム出射許可条件を設定すると、治療ビームゲート制御装置が指示を出し、X線透視画像撮影制御装置を加速器同期モードに切り替えてもよいものである。また、加速器同期モードでは、X線透視画像撮影制御装置は加速器が出射可能かつ外部呼吸信号が撮影許可範囲内の状態で撮影を行うが、加速器が出射可能になるタイミングが先行して決定する場合には、あらかじめ設定した時間だけ先行して撮影を開始してもよいものである。
【0087】
次に、ステップS510において、照射制御装置500は、治療ビームゲート制御装置410からの内部呼吸指標に基づいて、内部呼吸曲線が治療ビーム出射許可範囲に入っている間、図10(C)に示す治療ビーム出射許可ゲート信号を治療ビーム出射制御装置に出力する。
【0088】
また、ステップS530において、操作者は、X線透視画像撮影制御装置を先行加速器同期モードに切り替える。先行加速器同期モードでは、図10(E)に示すように、図10(A)に示した外部呼吸指標が撮影許可指定範囲内である期間中に、図10(D)に示すように、加速器が治療ビーム出射可能となるタイミングに時間t1だけ先行してオンとなり、治療ビーム出射可能信号のオフタイミングでオフとなる撮影許可ゲート信号により、撮影を許可するようにしている。
【0089】
ステップS300の加速器非同期モードにおける撮影許可期間T1(図6(A))に対して、ステップS540における撮影許可ゲート期間(T4+t5)(図10(E))は短くなっている。また、図6(D)に示した治療ビーム出射許可期間T2よりも短くなっている。さらに、図8(E)に示した加速器同期モードにおける撮影許可期間T3よりは長くなるが、その分、内部呼吸曲線を取れる時間が長くできる。
【0090】
以上で、内部呼吸指標に同期した治療ビーム出射ゲート信号が発信される状態になる。
【0091】
次に、ステップS600において、作業者は、照射制御装置500に治療開始を指示する。照射制御装置500は図10(D)に示す治療ビーム出射可能信号をX線透視画像撮影制御装置310に発信を開始する。加速器のビーム出射可否は治療ビーム出射制御装置140が発信する出射可能信号により判定する。治療ビーム出射制御装置140は加速器100及びビーム照射装置110の状態から出射の可否を判定し、出射可能信号を照射制御装置500に発信する。
【0092】
また、ステップS400Aにおいて、内部呼吸位相取得装置400は、治療ビーム出射許可同期モード中に、X線透視画像撮影制御装置220によって得られた画像を解析し、内部呼吸指標を求める。
【0093】
そして、治療計画装置520により計画した線量を照射後、ステップS700において、照射制御装置500は、治療ビーム出射制御装置510にビーム停止を指示する。
【0094】
最後に、ステップS800において、照射制御装置500は、X線透視画像撮影制御装置220にX線撮影の停止を指示する。
【0095】
以上説明したように、本実施形態では、治療ビーム出射可能信号に同期して、さらに、治療ビーム出射可能信号よりも先行して、X線透視画像撮影制御装置に対し撮影許可ゲート信号を発信して、X線透視装置をゲート撮影することにより、治療ビームのゲート制御に必要な内部呼吸波形をさらに少ない被曝で取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1の実施形態による放射線治療システムの構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による放射線治療システムの動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態による放射線治療システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の第1の実施形態による放射線治療システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態による放射線治療システムの構成を示すシステム構成図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による放射線治療システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態による放射線治療システムの構成を示すシステム構成図である。
【図8】本発明の第3の実施形態による放射線治療システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図9】本発明の第4の実施形態による放射線治療システムの構成を示すシステム構成図である。
【図10】本発明の第4の実施形態による放射線治療システムの動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0097】
100…治療ビーム加速器
110…ビーム照射装置
120…ベッド
130…患者
140…治療ビーム出射制御装置
200…X線管
210…X線検出器
220…X線透視画像撮影制御装置
300…外部呼吸モニタ
310…透視画像撮影ゲート制御装置
400…内部呼吸位相取得装置
410…治療ビームゲート制御装置
500…照射制御装置
510…治療記録管理データベース
520…治療計画装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の体外から呼吸位相を観測する外部呼吸観測手段と、
前記被検体をX線透視画像で撮影し、撮影した前記X線透視画像から体内構造の位置を用いて呼吸位相を観測する内部呼吸観測手段と、
前記外部呼吸観測手段によって得られた呼吸位相を用いて、前記呼吸位相が予め指定された範囲内のタイミングでX線透視画像を撮影するゲート撮影制御手段と、
該ゲート撮影制御手段によりゲート撮影された画像から計測した内部呼吸位相を用いて治療ビームの出射をゲート制御する治療ビームゲート制御手段を備えることを特徴とする放射線治療装置。
【請求項2】
請求項1記載の放射線治療装置において、
前記内部呼吸観測手段は、前記治療ビームゲート制御手段が生成する治療ビーム出射許可ゲート信号がオフになると、X線透視画像の撮影を停止するX線透視画像撮影制御手段を備えることを特徴とする放射線治療装置。
【請求項3】
請求項1記載の放射線治療装置において、
前記内部呼吸観測手段は、治療ビームが出射可能な期間にX線透視画像の撮影を許可し、X線透視画像を撮影するX線透視画像撮影制御手段を備えることを特徴とする放射線治療装置。
【請求項4】
請求項1記載の放射線治療装置において、
前記内部呼吸観測手段は、治療ビームが出射可能な期間に先行して、X線透視画像の撮影を許可し、X線透視画像を撮影するX線透視画像撮影制御手段を備えることを特徴とする放射線治療装置。
【請求項5】
請求項1記載の放射線治療装置において、
前記治療ビームゲート制御手段は、設定された治療ビーム出射条件を保持し、次回以降の治療時に使用可能とすることを特徴とする放射線治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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