説明

放射線治療装置制御装置、その処理方法、及びプログラム

【課題】画質のよいCT画像の生成を短時間で行うことのできる放射線治療装置制御装置を提供する。
【解決手段】線源とセンサアレイとを結ぶ直線上の生体を示す画素を、更新対象のCT画像において特定し、当該特定した画素の輝度値の、更新対象のCT画像に関連する関連CT画像の対応する画素の輝度値からの変化量の総和に対する、直線上の生体を示す画素についての変化量の割合に基づいて、差分情報を直線上の生体を示す画素それぞれに配分した輝度更新量候補値を当該特定した画素それぞれについて算出する。そして、複数の回転角度について算出した当該特定した画素それぞれの輝度更新量候補値を用いて、当該特定した画素それぞれの輝度更新量を算出し、特定した画素それぞれの輝度更新量を用いて、更新対象のCT画像の対応する各画素の輝度値を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に照射した放射線に基づいてCT画像を生成するとともに、生体内の患部の位置を追尾する放射線治療装置制御装置及びその処理方法とプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療装置制御装置では、CT画像(コンピュータトモグラフィ画像)に表示された患部(腫瘍)の位置に基づいて生体内の放射線照射位置を特定し、放射線を照射する。生体内の腫瘍などの患部は、呼吸等の影響により変動する。このため、時間の経過に伴って逐次生成されていくCT画像のそれぞれにおいて、異なる位置に変動する患部を特定し、該患部の位置に基づいて放射線照射位置を特定していく必要がある。
【0003】
ここで、放射線の照射位置の特定精度を高めるためには、CT画像を用いた生体内の患部の特定を精度良く行うことが必要である。CT画像の画質が向上すれば、精度良く患部の位置を特定し、その特定した患部を追尾することで精度の良く放射線の照射位置を特定することが可能となる。CT画像の生成方法としてFBP法(Filtered Back Projection法)が存在する。
【0004】
当該FBP法は、一般のCT画像の生成に用いられるアルゴリズムであり、高速フーリエ変換によりX線の投影データを逆投影し画像の再構成を行う技術である。しかしながら、FBP法によるCT画像の生成は計算時間が短いという利点があるものの、特に、再構成に用いる投影データの数が少ない場合に、画像中にアーチファクトが発生するなど、画質の劣化が問題となっている。ここで、画質の劣化の問題を解消したCT画像の生成技術として逐次近似法(Iterative Reconstruction法)が存在する。逐次近似法の技術を開示したものとして特許文献1および特許文献2が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3708434号公報
【特許文献2】特開昭60−17568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した逐次近似法の技術は、放射線投影画像と同じ方向にCT画像を投影した仮想投影画像を生成し、当該仮想投影画像の投影方向と同じ方向に放射線を照射することにより生成した放射線投影画像との誤差を算出する。そして、当該逐次近似法の技術は、この誤差をCT画像に反映して、当該誤差が最小となるように、仮想投影画像の生成と、当該仮想投影画像と放射線投影画像との誤差の算出の繰り返しの計算を行うことにより、当該誤差の小さいCT画像を生成する技術である。しかしながら、逐次近似法の技術で生成されたCT画像の画質は、FBP法で生成されたCT画像に比べて改善するものの、全ての画素誤差について放射線投影画像と仮想投影画像との誤差を最小にするよう、誤差をCT画像に反映する処理を繰り返し行うため、逐次近似法によるCT画像の生成には計算時間がかかってしまう問題があった。
【0007】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる放射線治療装置制御装置、その処理方法、及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、線源とセンサアレイとの間に配置された生体に前記線源から放射線を照射して前記生体の患部を治療する放射線治療装置を制御し、前記センサアレイで検出された情報に基づいてコンピュータトモグラフィ画像(CT画像)を生成する放射線治療装置制御装置であって、体動位相ごとに予め生成されたCT画像データ群の中から、設定された体動位相のCT画像データを更新対象のCT画像データとして選択するCT画像選択部と、を備えることを特徴とする放射線治療装置制御装置である。
【0009】
また本発明は、上述の放射線治療装置制御装置において、前記線源及び前記センサアレイを回転させて複数の回転角度それぞれに応じた放射線投影画像を生成し、当該放射線投影画像とこの放射線投影画像の生成時に前記線源及び前記センサアレイを回転させた際の回転角度と前記放射線投影画像の生成時の体動位相とを対応付けて記録する放射線投影画像生成部と、前記放射線投影画像の生成時の前記回転角度を検出する回転角度検出部と、前記更新対象のCT画像データを、前記検出した回転角度で前記線源側から前記センサアレイ側に投影した場合の再構成画像を生成する再構成画像生成部と、前記放射線投影画像の各画素と前記生成した再構成画像の各画素とを比較して、それら各画素についての輝度差を示す差分情報を生成する差分情報生成部と、前記線源と前記センサアレイの検出素子とを結ぶ直線上の画素を、前記更新対象のCT画像データにおいて特定し、当該特定した画素の輝度値における変化のしやすさと前記差分情報に基づいて、輝度更新量候補値を当該特定した画素それぞれについて算出するとともに、対象とする体動位相に対応する複数の前記回転角度について算出した当該特定した画素それぞれの前記輝度更新量候補値を用いて、当該特定した画素それぞれの輝度更新量を算出する輝度更新量算出部と、前記特定した画素それぞれの輝度更新量を用いて、前記更新対象のCT画像データの対応する各画素の輝度値を更新する更新部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上述の放射線治療装置制御装置において、前記初期設定CT画像及び前記更新部が更新を行なう範囲は、複数の回転角度の放射線投影画像に基づいて生成されるCT画像の範囲よりも大きい範囲のCT画像であることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上述の放射線治療装置制御装置において、前記輝度更新量算出部は、前記更新対象のCT画像データの体動位相に近い体動位相の初期設定CT画像と、当該初期設定CT画像の体動位相に近い他の体動位相の初期設定CT画像との差に基づいて前記輝度値の変化のしやすさを求めることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上述の放射線治療装置制御装置において、前記輝度更新量算出部は、前記更新対象のCT画像データの体動位相に近い体動位相の初期設定CT画像と、任意の体動位相に対応する放射線投影画像に基づいて生成された更新対象のCT画像データとの差に基づいて前記輝度値の変化のしやすさを求めることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上述の放射線治療装置制御装置において、前記生体の体動位相と前記生体内の患部の位置との相関を示す相関モデル式を用いて、実測した前記生体の体動位相に対応する前記患部の位置を算出し、患部の位置を追尾する患部位置追尾部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、線源とセンサアレイとの間に配置された生体に前記線源から放射線を照射して前記生体の患部を治療する放射線治療装置を制御し、前記センサアレイで検出された情報に基づいてコンピュータトモグラフィ画像(CT画像)を生成する放射線治療装置制御装置の処理方法であって、体動位相ごとに予め生成されたCT画像データ群の中から、設定された体動位相のCT画像データを更新対象のCT画像データとして選択し、前記線源及び前記センサアレイを回転させて複数の回転角度それぞれに応じた放射線投影画像を生成し、当該回転角度を別途取得する呼吸位相と対応付け、前記放射線投影画像の生成時の前記回転角度を検出し、前記更新対象のCT画像データを、前記検出した回転角度で前記線源側から前記センサアレイ側に投影した場合の再構成画像を生成し、前記特定した放射線投影画像の各画素と前記生成した再構成画像の各画素とを比較して、それら各画素についての輝度差を示す差分情報を生成し、前記線源と前記センサアレイとを結ぶ直線上の画素を、前記更新対象のCT画像データにおいて特定し、当該特定した画素の輝度値における変化のしやすさと前記差分情報に基づいて、輝度更新量候補値を当該特定した画素それぞれについて算出するとともに、対象とする体動位相に対応する複数の前記回転角度について算出した当該特定した画素それぞれの前記輝度更新量候補値を用いて、当該特定した画素それぞれの輝度更新量を算出し、前記特定した画素それぞれの輝度更新量を用いて、前記更新対象のCT画像データの対応する各画素の輝度値を更新することを特徴とする処理方法である。
【0015】
また本発明は、線源とセンサアレイとの間に配置された生体に前記線源から放射線を照射して前記生体の患部を治療する放射線治療装置を制御し、前記センサアレイで検出された情報に基づいてコンピュータトモグラフィ画像(CT画像)を生成する放射線治療装置制御装置のコンピュータを、体動位相ごとに予め生成されたCT画像データ群の中から、設定された体動位相のCT画像データを更新対象のCT画像データとして選択するCT画像選択手段、前記線源及び前記センサアレイを回転させて複数の回転角度それぞれに応じた放射線投影画像を生成し、当該回転角度を別途取得する呼吸位相と対応付ける放射線投影画像生成手段、前記放射線投影画像の生成時の前記回転角度を検出する回転角度検出手段、前記更新対象のCT画像データを、前記検出した回転角度で前記線源側から前記センサアレイ側に投影した場合の再構成画像を生成する再構成画像生成手段、前記放射線投影画像の各画素と前記生成した再構成画像の各画素とを比較して、それら各画素についての輝度差を示す差分情報を生成する差分情報生成手段、前記線源と前記センサアレイとを結ぶ直線上の画素を、前記更新対象のCT画像データにおいて特定し、当該特定した画素の輝度値における変化のしやすさと前記差分情報に基づいて、輝度更新量候補値を当該特定した画素それぞれについて算出するとともに、対象とする体動位相に対応する複数の前記回転角度について算出した当該特定した画素それぞれの前記輝度更新量候補値を用いて、当該特定した画素それぞれの輝度更新量を算出る輝度更新量算出手段、前記特定した画素それぞれの輝度更新量を用いて、前記更新対象のCT画像データの対応する各画素の輝度値を更新する更新手段、として機能させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、事前に作成され、データベースに記録されたCT画像データ群(初期設定CT画像データ群)を用いてデータを更新する処理を行っているため、新たに生成した放射線投影画像を用いて、更新処理を行うだけで、短時間で画質のよいCT画像を得ることができる。
また、輝度更新量候補値が算出された各画素についてのみ輝度更新量を算出し、当該輝度更新量によりCT画像の更新処理を行っており、輝度更新量候補値が算出されない画素については更新処理を行わないため、その分、更新処理を完了するまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】放射線治療装置の構成を示す図である。
【図2】放射線治療装置制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】放射線治療装置制御装置の処理フローを示す図である。
【図4】差分情報生成処理の概要を示す図である。
【図5】画素の変化量S(t)の算出処理の概要を示す図である。
【図6】輝度更新量の算出処理の概要を示す図である。
【図7】従来更新処理を行うことのできるCT画像の範囲との違いを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態による放射線治療装置制御装置、及び当該放射線治療装置制御装置によって制御される放射線治療装置について説明する。
本発明では、呼吸、心拍などの周期的な体動運動の体動位相毎にCT画像を作成することを前提としているが、簡易化のため、以下の説明では体動運動として呼吸位相のみを対象とした説明を行う。
本実施形態では、事前に呼吸位相毎に生成された初期設定CT画像データ群、及び、CT画像を生成すべき時点で生成された放射線投影画像に基づく呼吸位相毎の再構成CT画像データ群、を生成する方法を示す。
まず、制御対象である放射線治療装置の概要について説明する。図1は、放射線治療装置を示している。
この図で示すように放射線治療装置3は、旋回駆動装置11とOリング12と走行ガントリ14と首振り機構15と治療用放射線照射装置16とを備えている。旋回駆動装置11は、回転軸17を中心に回転可能にOリング12を土台に支持し、放射線治療装置制御装置1により制御されて回転軸17を中心にOリング12を回転させる。回転軸17は、鉛直方向に平行である。Oリング12は、回転軸18を中心とするリング状に形成され、回転軸18を中心に回転可能に走行ガントリ14を支持している。回転軸18は、鉛直方向に垂直であり、回転軸17に含まれるアイソセンタ19を通る。回転軸18は、さらに、Oリング12に対して固定され、すなわち、Oリング12とともに回転軸17を中心に回転する。走行ガントリ14は、回転軸18を中心とするリング状に形成され、Oリング12のリングと同心円になるように配置されている。放射線治療装置3は、さらに、図示されていない走行駆動装置を備えている。その走行駆動装置は、放射線治療装置制御装置1により制御されて回転軸18を中心に走行ガントリ14を回転させる。
【0019】
治療用放射線照射装置16は、走行ガントリ14の内側に配置されている。治療用放射線照射装置16は、放射線治療装置制御装置1により制御されて、治療用放射線23を照射する。
【0020】
首振り機構15は、走行ガントリ14のリングの内側に固定され、治療用放射線照射装置16を走行ガントリ14に支持している。首振り機構15は、パン軸21およびチルト軸22を有している。パン軸21は、走行ガントリ14に対して固定され、回転軸18に交差しないで回転軸18に平行である。チルト軸22は、走行ガントリ14に対して固定され、パン軸21に直交している。首振り機構15は、放射線治療装置制御装置1により制御されて、パン軸21を中心に治療用放射線照射装置16を回転させ、チルト軸22を中心に治療用放射線照射装置16を回転させる。
【0021】
治療用放射線23は、このように治療用放射線照射装置16が走行ガントリ14に支持されることにより、首振り機構15で治療用放射線照射装置16がアイソセンタ19に向かうように一旦調整されると、旋回駆動装置11によりOリング12が回転し、または、その走行駆動装置により走行ガントリ14が回転しても、常に概ねアイソセンタ19を通る。即ち、走行・旋回を行うことで任意方向からアイソセンタ19に向けて治療用放射線23の照射が可能になる。なお、治療用放射線照射装置16などは重量物であるため走行・旋回に応じてOリング自身に機械的変形を生じる場合がある。また、患部がアイソセンタに必ずしも一致しない場合もある。この場合、旋回・走行の設定に引き続き、再度首振り機構15により治療用放射線照射装置16がアイソセンタ19または患部に向かうように調整することも可能である。
【0022】
放射線治療装置3は、さらに、複数のイメージャシステムを備えている。すなわち、放射線治療装置3は、診断用X線源24、25とセンサアレイ32、33とを備えている。診断用X線源24は、走行ガントリ14に支持されている。診断用X線源24は、走行ガントリ14のリングの内側に配置され、アイソセンタ19から診断用X線源24を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置されている。診断用X線源24は、放射線治療装置制御装置1により制御されてアイソセンタ19に向けて診断用X線35を照射する。診断用X線35は、診断用X線源24が有する1点から放射され、その1点を頂点とする円錐状のコーンビームである。診断用X線源25は、走行ガントリ14に支持されている。診断用X線源25は、走行ガントリ14のリングの内側に配置され、アイソセンタ19から診断用X線源25を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置されている。診断用X線源25は、放射線治療装置制御装置1により制御されてアイソセンタ19に向けて診断用X線36を照射する。診断用X線36は、診断用X線源25が有する1点から放射され、その1点を頂点とする円錐状のコーンビームである。
【0023】
センサアレイ32は、走行ガントリ14に支持されている。センサアレイ32は、診断用X線源24により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した診断用X線35を受光して、その被写体の放射線投影画像を生成する。センサアレイ33は、走行ガントリ14に支持されている。センサアレイ33は、診断用X線源25により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した診断用X線36を受光して、その被写体の放射線投影画像を生成する。センサアレイ32、33としては、FPD(Flat Panel Detector)、X線II(Image Intensifier)が例示される。
このようなイメージャシステムによれば、センサアレイ32、33により得た画像信号に基づき、アイソセンタ19を中心とする放射線投影画像を生成することができる。
【0024】
放射線治療装置3は、さらに、センサアレイ31を備えている。センサアレイ31は、センサアレイ31と治療用放射線照射装置16とを結ぶ線分がアイソセンタ19を通るように配置されて、走行ガントリ14のリングの内側に固定されている。センサアレイ31は、治療用放射線照射装置16により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した治療用放射線23を受光して、その被写体の放射線投影画像を生成する。センサアレイ31としては、FPD(Flat Panel Detector)、X線II(Image Intensifier)が例示される。
診断用X線源24とセンサアレイ32、診断用X線源25とセンサアレイ33、及び治療用放射線照射装置16とセンサアレイ31は、それぞれ、走行ガントリ14をOリング12に沿って走行させると、互いの位置関係を保ちつつ、アイソセンタ19を通る回転軸18回りに回転させることができる。以下において、所定の位置を基準とした、走行ガントリ14、並びに、診断用X線源24、25、治療用放射線照射装置16及びセンサアレイ31〜33の回転軸18回りの回転角度を、単に回転角度と称する。
【0025】
放射線治療装置3は、さらに、カウチ41とカウチ駆動装置42とを備えている。カウチ41は、治療される患者43が横臥することに利用される。カウチ41は、図示されていない固定具を備えている。その固定具は、その患者が動かないように、その患者をカウチ41に固定する。カウチ駆動装置42は、カウチ41を土台に支持し、放射線治療装置制御装置1により制御されてカウチ41を移動させる。
【0026】
また、放射線治療装置3は、図示しない赤外線カメラを備えており、赤外線カメラによって生体に取付けられた赤外線マーカの動きを検出する。赤外線マーカは、生体における呼吸の周期及び位相と対応する周期及び位相で周期的な動きをする。放射線治療装置3は、放射線治療装置制御装置1の制御によって生体に放射線を照射する際に、検出された赤外線マーカの動きから、当該赤外線マーカの周期的な動きにおける位相を抽出し、抽出した位相のデータを呼吸位相に係る情報として放射線治療装置制御装置1へ通知する。そして、放射線治療装置制御装置1は、初期設定CT画像データ群、異なる呼吸位相、複数の回転角度による放射線投影画像に基づいて、CT画像データを生成する。
【0027】
図2は同実施形態による放射線治療装置制御装置の構成を示すブロック図である。
図2において、符号1は、線源と当該線源に対向する位置に配されたセンサアレイとの間に配置された生体へ、線源から照射軸に沿って放射線を照射して生体の患部を治療する放射線治療装置3を制御する放射線治療装置制御装置である。ここで線源とは、診断用X線源または治療用放射線照射装置を意味する。図2に示すように、放射線治療装置制御装置1は、CT画像選択部102、放射線投影画像生成部103、回転角度検出部105、再構成画像生成部106、差分情報生成部107、輝度更新量算出部108、CT画像更新部109、及び患部位置追尾部110の各処理部と、各処理部を制御する制御部101と、各処理部での処理に利用される情報を記憶するデータベース111と、を備えている。
【0028】
データベース111には、放射線治療を行う人などの生体に放射線を照射することにより生成した初期設定CT画像データ群が、予め記憶されている。当該初期設定CT画像データ群は、生体の呼吸位相ごとに予め生成された生体の連続する断面の初期設定CT画像データの集合である。なお、当該初期設定CT画像データ群は、他の装置で予め生成されたものであってもよいし、放射線治療装置制御装置1で予め生成したものであってもよい。
【0029】
CT画像選択部102は、初期設定CT画像データ群の中から、設定された呼吸位相の初期設定CT画像データを選択する処理部である。
放射線投影画像生成部103は、複数の回転角度それぞれに応じた放射線投影画像を生成し、当該生成した放射線投影画像が示す回転角度を別途取得する呼吸位相と対応付ける処理部である。
【0030】
回転角度検出部105は、特定した放射線投影画像の生成時の回転角度を検出する処理部である。
再構成画像生成部106は、各回転角度において、初期設定CT画像データ、または初期設定CT画像データ内の画素の輝度値を更新した再構成CT画像データに基づいて、線源に対して対向するセンサアレイ側(図1参照)から得られると推定される再構成画像を生成する処理部である。
以下においては、放射線投影画像は、診断用X線源24がセンサアレイ32へ向けて照射した放射線により生成された放射線投影画像であるものとする。なお、本発明は、他の対向した線源とセンサアレイを用いた場合、または対向する線源とセンサアレイの組を複数用いる場合でも同様に成立する。
差分情報生成部107は、特定した放射線投影画像の各画素と生成した再構成画像の各画素とを比較して、それら各画素についての輝度差を示す差分情報を生成する処理部である。
輝度更新量算出部108は、診断用X線源24とセンサアレイ32の検出素子とを結ぶ直線上の画素を、再構成CT画像データにおいて特定し、当該特定した画素それぞれの輝度更新量を算出する処理部である。
またCT画像更新部109は、特定した画素それぞれの輝度更新量を用いて、再構成CT画像データの対応する各画素の輝度値を更新する処理部である。
【0031】
ここで、放射線治療装置制御装置1は、画素それぞれの輝度更新量を用いて、再構成CT画像データの対応する各画素の輝度値の更新後の再構成CT画像データと、再構成CT画像データの対応する各画素の輝度値の更新前の再構成CT画像データとを比較する。そして放射線治療装置制御装置1は、それらCT画像間の輝度差が所定の閾値以上である場合には、当該更新後の再構成CT画像データを用いて、再構成画像生成部106、差分情報生成部107、輝度更新量算出部108、CT画像更新部109の処理を繰り返す。前記閾値は、輝度値の統計的変動範囲などを考慮して設定される。
また、患部位置追尾部110は、生体の呼吸位相と再構成CT画像データ中で算出された患部の移動位置との相関を示す相関モデル式を用いて、実測した生体の呼吸位相に対応する患部の移動位置を算出し、患部の位置を追尾する処理部である。相関モデル式としては多項式モデル式やノンパラメトリックモデル式などがある。
【0032】
次に、放射線治療装置3を制御する放射線治療装置制御装置1の処理フローについて順を追って説明する。
本処理フローの事前に、体動運動で殆ど移動しない脊椎などの位置に基づいて、初期設定CT画像データと再構成CT画像データの座標を位置合わせしておく。
図3は放射線治療装置制御装置の処理フローを示す図である。
制御部101は、放射線治療装置3に対して患部位置を含む放射線投影画像の撮影を指示する。すると、診断用X線源24が生体へ放射線を照射し、放射線治療装置制御装置1は、センサアレイ32で検出した信号や、図示しない赤外線センサで取得した赤外線マーカの位置データを受信する。上記のとおり、赤外線マーカの周期的な動きの周期及び位相は、呼吸の周期及び位相と対応している。
【0033】
そして、放射線投影画像生成部103は、回転角度An(n=1…n)のうちの、1つ目の回転角度に応じた生体の患部位置を含む放射線投影画像を生成する。放射線投影画像生成部103は、当該生成した放射線投影画像について、回転角度と、放射線を照射した際に赤外線センサで取得された位相のデータから抽出される呼吸位相に係る情報とに対応付けて、データベース111に記録する(ステップS101)。
【0034】
本処理では、複数の呼吸位相において、再構成CT画像データを作成するが、以下においては、1つの呼吸位相(以下、呼吸位相p1と呼ぶ。)における処理を説明する。
制御部101は、CT画像選択部102へ処理の開始を指示する。CT画像選択部102は、設定された呼吸位相p1をメモリより読み取る。そして、CT画像選択部102は、データベース111に記録されている初期設定CT画像データ群の中から、設定された呼吸位相p1に最も近い呼吸位相p1’に対応付けられて記録されているCT画像データを選択する(ステップS103)。当該選択するCT画像データとしては、設定された呼吸位相p1に最も近い呼吸位相p1’に相当する初期設定CT画像データ(CT画像D1)が選択される。その後、データベース111に記録された(放射線投影画像、回転角度、呼吸位相)の組み合わせデータのうち、呼吸位相p1に対応付けられて記録されている放射線投影画像と回転角度(回転角度A1)を読み出す(ステップS104)。
【0035】
図4は差分情報生成処理の概要を示す図である。
図4において示す初期設定CT画像データは、初期設定CT画像データ群に含まれるCT画像データのうち1つの呼吸位相p1に対応付けられて記録されている初期設定CT画像データD1(初期設定CT画像データD1が更新された場合には再構成CT画像データD1)を表す。また、放射線投影画像Eは、呼吸位相p1のときに回転角度A1で生体を撮影した際に生成される放射線投影画像である。以下、放射線投影画像Eを、放射線投影画像(呼吸位相p1,回転角度A1)と記載する。
【0036】
次に再構成画像生成部106が、再構成CT画像データ(初回の更新処理時にはCT画像選択部102によって選択された初期設定CT画像データ)を用いて再構成画像を生成する(ステップS105)。このとき、再構成画像生成部106は、回転角度がA1である場合に、CT画像が示す生体に診断用X線源24から放射線を投影したと仮定した場合の再構成画像を生成する。
【0037】
当該再構成画像の生成概要を図4で示している。再構成画像は、例えばDRR(Digital Reconstructed Radiography)画像を示す。以下、再構成画像をDRR画像Fと呼ぶ。また、ステップS105によって生成したDRR画像Fを、DRR画像(呼吸位相p1,回転角度A1)と記載する。DRR画像Fの生成方法は公知の技術である。そして、DRR画像(呼吸位相p1,回転角度A1)が生成されると、差分情報生成部107が、呼吸位相p1,回転角度A1の放射線投影画像(呼吸位相p1,回転角度A1)と、生成されたDRR画像(呼吸位相p1,回転角度A1)の各画素を比較して、それら各画素についての輝度差を示す差分情報(呼吸位相p1,回転角度A1の場合の差分情報)を生成する(ステップS106)。
【0038】
より具体的には、差分情報Is(x,y)は、放射線投影画像(呼吸位相p1,回転角度A1)の輝度値をIk(x,y)とし、DRR画像の輝度値をId(x,y)とすると(x,yはそれぞれの画像の画素の原点からのx座標、y座標で示される位置を示す)、
Is(x,y)=Id(x,y)−Ik(x,y)
により表すことができる。つまり差分情報は、放射線投影画像(呼吸位相p1,回転角度A1)とDRR画像(呼吸位相p1,回転角度A1)の各画素の輝度値の差分を示す情報である。ここで、Is(x,y)≠0の場合には、当該座標(x,y)で示される画素に対応するセンサアレイ32の放射線検出素子と、診断用X線源24と、を結ぶ直線L上において、放射線投影画像(呼吸位相p1、回転角度A1)を生成する元となる実際の生体内の情報と、DRR画像(呼吸位相p1、回転角度A1)を生成する元となる再構成CT画像データとで異なっていることを示している。そして、差分情報生成部107は差分情報を生成するとデータベース111に当該差分情報(呼吸位相p1,回転角度A1)を登録する。
【0039】
差分情報(呼吸位相p1,回転角度A1)が生成されると、制御部101は、輝度更新量算出部108へ処理の開始を指示する。このとき輝度更新量算出部108は、更新対象の再構成CT画像データD1(CT画像のうちDRR画像の作成に利用したもの)を読み込む。また輝度更新量算出部108は、差分情報(呼吸位相p1,回転角度A1)を読み込んで、当該差分情報(呼吸位相p1,回転角度A1)においてIs(x,y)≠0である画素zを特定する。次に、輝度更新量算出部108は、更新対象の再構成CT画像データD1(CT画像のうちDRR画像の作成に利用したもの)において、当該画素zに対応するセンサアレイ32上の放射線検出素子と、診断用X線源24と、を結ぶ直線L上に位置すると推定される部分を表す各画素gを特定する(ステップS107)。また、輝度更新量算出部108は、呼吸位相p1’(前述の、初期設定CT画像データ群の中で、呼吸位相p1に最も近い呼吸位相)の初期設定CT画像D1’をデータベース111から読み取る。また輝度更新量算出部108は、当該特定した更新対象の再構成CT画像データD1が示す呼吸位相p1よりも小さい値となる範囲で最も近傍の位相p2’である初期設定CT画像D2’をデータベース111から読み取る。さらに輝度更新量算出部108は、更新対象のCT画像D1が示す呼吸位相p1よりも大きい値となる範囲で最も近傍の位相p3’である初期設定CT画像D3’をデータベース111から読み取る。上記のとおり、位相p2’、p3’は、位相p1’よりも大小それぞれの範囲における最も近傍の位相であるから、CT画像D2’,D1’,D3’は、初期設定CT画像データ群において連続する3つの呼吸位相に対応する初期設定CT画像である。
【0040】
図5は画素の変化量S(t)の算出処理の概要を示す図である。
図5で示すように、輝度更新量算出部108は、特定した初期設定CT画像D1’(呼吸位相p1’)の各画素gのうちの1つの画素g1と、初期設定CT画像D2’(呼吸位相p2’)における画素g1に対応する画素g1aとの輝度差の絶対値d1を算出する。また、輝度更新量算出部108は、初期設定CT画像D1’(呼吸位相p1’)の1つの画素g1と、初期設定CT画像D3’(呼吸位相p3’)における画素g1に対応する画素g1bの輝度差の絶対値d2を算出する。そして輝度更新量算出部108は、それら絶対値d1と絶対値d2のうち、大きい値を、当該画素g1の変化量S(t)として特定する(ステップS108)。
【0041】
ここで、直線Lを、L(t)=(Lx(t),Ly(t),Lz(t))とし、tを、0<t<1と定義する。
また、初期設定CT画像D1’(呼吸位相p1’)の画素g1の輝度値を、D1’(Lx(t),Ly(t),Lz(t))とする。
同様に、初期設定CT画像D2’(呼吸位相p2’)の画素g1aの輝度値を、D2’(Lx(t),Ly(t),Lz(t))とする。
同様に、初期設定CT画像D3’(呼吸位相p3’)の画素g1bの輝度値を、D3’(Lx(t),Ly(t),Lz(t))とする。
すると、変化量S(t)は、下記式(1)により表すことができる。ここで、maxは引数のうち、最大値をとる関数、absは引数の絶対値をとる関数である。このS(t)が再構成CT画像データ中の画素の輝度値の変化のしやすさであり、ここでは、呼吸位相が変化した際の輝度の変化量を輝度の変化のしやすさとみなしている。
【0042】
【数1】

【0043】
以上の変化量S(t)の算出処理を第1の変化量S(t)の算出処理とする。そして、輝度更新量算出部108は、当該画素zに対応するセンサアレイ32上の放射線検出素子と、診断用X線源24と、を結ぶ直線L上に位置すると推定される部分を表すものとして特定される複数の画素gにおいて同様の算出処理を行う。なお、解像度を向上させるためには、本算出処理は全ての画素に対して行うことが望ましい。以下は全ての画素において同様の算出処理を行う場合を想定して示す。
以上の説明では、呼吸位相p2’及び呼吸位相p3’の両方を使用しているが、どちらか一方のみを使用しても良い。
ところで、輝度更新量算出部108は、第1の変化量S(t)の算出処理に代えて、以下の第2の変化量S(t)の算出処理、または第3の変化量S(t)の算出処理を用いることによって変化量S(t)を算出するようにしてもよい。
【0044】
(第2の変化量S(t)の算出処理)
当該第2の変化量S(t)の算出処理においては、輝度更新量算出部108は差分情報を読み込んで、当該差分情報においてIs(x,y)≠0である画素を特定する。そして、当該画素に対応するセンサアレイ32上の放射線検出素子と、診断用X線源24と、を結ぶ直線L上に位置すると推定される部分と対応する各画素g1を、更新対象の再構成CT画像データD1(CT画像のうちDRR画像の作成に利用したもの)において特定する。ここまでの処理は第1の変化量S(t)の算出処理と同じである。また、輝度更新量算出部108は、呼吸位相p1’の初期設定CT画像D1’をデータベース108から読み取る。また、輝度更新量算出部108は、呼吸位相がp1と異なる回転角度で生成された放射線投影画像も含め、複数の放射線投影画像をデータベース111から読み取る。そして、それら複数の回転角度の異なる放射線投影画像を利用して、CT画像D4を生成する。当該複数の回転角度の異なる放射線投影画像を利用したCT画像の生成処理は公知の技術である。
【0045】
そして、輝度更新量算出部108は、当該特定した初期設定CT画像D1’(呼吸位相p1’)の画素g1と、複数の回転角度の異なる放射線投影画像を利用して生成したCT画像D4において画素g1に対応する画素g1cとの輝度差の絶対値を、当該画素g1の変化量S(t)として特定する。そして、初期設定CT画像D1’(呼吸位相p1’)の画素g1の輝度値をD1’(Lx(t),Ly(t),Lz(t))、CT画像D4の画素g1cの輝度値をD4(Lx(t),Ly(t),Lz(t))とすると、変化量S(t)を、下記式(2)により算出することができる。
【0046】
【数2】

【0047】
(第3の変化量S(t)の算出処理)
当該第3の変化量S(t)の算出処理においては、まず、上記第1の変化量S(t)の算出処理、及び第2の変化量S(t)の算出処理を行う。そして、第1の変化量S(t)の算出処理の結果Sa(t)と、第2の変化量S(t)の算出処理の結果Sb(t)とを用いて、
S(t)=αSa(t)+βSb(t)
の式により画素g1の変化量S(t)を算出する。αおよびβは係数であり、例えばα=0.5、β=0.5として算出する。
【0048】
図6は輝度更新量の算出処理の概要を示す図である。
図6(a)に示すように、第1〜第3の何れかの変化量S(t)の算出処理を終了すると、輝度更新量算出部108は、全ての画素gについて算出した変化量S(t)の総和(ΣS(t))を算出する。さらに、輝度更新量算出部108は、その変化量S(t)の総和に対して、直線L上のある部分と対応する1つの画素g1について算出した変化量S(t)の割合(S(t)÷ΣS(t))を算出する。そして、輝度更新量算出部108は、当該S(t)の割合に、画素zについて算出された差分情報で示される輝度差Isを乗じる。このようにして、当該画素zについて算出された輝度差で示される差分の情報を、CT画像D1の直線L上であると推定された部分と対応する1つの画素g1に配分した値となる輝度更新量候補値を算出する。この輝度更新量候補値をR(x,y,z)とする。この処理を直線L上の全ての画素gについて行なう(ステップS109)。
【0049】
輝度更新量候補値の処理を終了すると、輝度更新量算出部108は、センサアレイ32上の全ての放射線検出素子(画素)について輝度更新量候補値を算出したかを判定し(ステップS110)、算出していない場合には、上記ステップS107〜ステップS109の処理を繰り返す。
【0050】
ステップS110においてYesの場合には、制御部101が、対象となる呼吸位相p1に対応付けられてデータベース111に記録されている全ての回転角度についての処理を行ったかを判定する(ステップS111)。制御部101が、対象となる呼吸位相p1に対応付けられてデータベース111に記録されている全ての回転角度についての処理を行っていない場合には、回転角度A1を変更して、次の回転角度A2を設定して、当該回転角度A2の放射線投影画像を用いた上述のステップS103〜ステップS110の処理の開始を指示し、回転角度Anまでこれを繰り返す。以上の処理により、呼吸位相p1,回転角度A1〜Anの複数の差分情報と、呼吸位相p1,回転角度A1〜Anの組合せごとの再構成CT画像データD1内の画素の輝度更新量候補値R(x,y,z)がデータベース111に記録されることとなる。
【0051】
次に、輝度更新量算出部108は、呼吸位相p1について、回転角度A1〜Anごとに算出した、再構成CT画像データD1内の各画素についての輝度更新量候補値を用いて、再構成CT画像データD1における、輝度更新量候補値が算出された各画素の輝度更新量を算出する(ステップS112)。
【0052】
より具体的には、図6(b)で示すように、輝度更新量算出部108は、呼吸位相p1の再構成CT画像データD1内の画素について、回転角度A1〜Anごとに算出された輝度更新量候補値R(x,y,z)の平均を、輝度更新量として算出する。
【0053】
または、輝度更新量算出部108は、ステップS111の判定に基づいて回転角度A1〜Anの繰り返しの処理ごとにステップS101で生成した放射線投影画像が異なる呼吸位相のタイミングで生成されている場合には、再構成CT画像データD1が示す呼吸位相に最も近い呼吸位相のタイミングで生成された放射線投影画像を用いてステップS102〜ステップS109の処理が行われた場合の輝度更新量候補値R(x,y,z)の重みが最も重くなるようにして重み付けを行って、輝度更新量を算出するようにしてもよい。例えば、再構成CT画像データD1が示す呼吸位相をp、回転角度Ai、呼吸位相がpiの放射線投影画像を利用して算出した輝度更新量候補値をRiとすると、再構成CT画像データD1内の輝度更新量候補値が算出された画素g(x,y,z)の輝度更新量Dを、
【0054】
【数3】

【0055】
により算出する。ここで式(3)におけるΩは、Ω=Σωiを示しており、たとえば、ωiは
【0056】
【数4】

【0057】
である。
CT画像更新部109は、再構成CT画像データD1内の輝度更新量候補値が算出された各画素について算出した輝度更新量Dを、対象となる呼吸位相p1の再構成CT画像データD1内の対応する画素の値に加算して、当該再構成CT画像データD1の各画素の値を更新する(ステップS113)。次に、制御部101は、更新処理後の再構成CT画像データD1と、更新前の再構成CT画像データD1’とを比較する。この比較処理においては、更新処理後の再構成CT画像データD1のある画素と、当該ある画素に対応する更新前の再構成CT画像データD1’の画素の輝度差を、全ての対応する画素について算出し、その総和が閾値未満かを判定する(ステップS114)。そして、閾値未満であれば、当該更新処理後の再構成CT画像データD1により処理終了と判定する。閾値以上である場合には、ステップS104からの処理を繰り返す。繰り返しの処理においては、更新処理後のCT画像が利用されることとなる。
【0058】
また、ステップS114において、閾値未満である場合には、ステップS102〜ステップS114の処理を再構成CT画像データ作成対象である全ての呼吸位相pm(m=1…m)について行ったかを判定し(ステップS115)、行っていない場合には、他の呼吸位相についてステップS101〜ステップS114の処理を行う。これにより、全ての呼吸位相pmについてのCT画像の更新処理が終了する。
【0059】
ここで、上述のCT画像の更新処理によれば、事前に作成され、データベース111に記録されたCT画像データ群(初期設定CT画像データ群)を用いてデータを更新する処理を行っているため、患部に放射線を照射する直前に既にデータベース111に記録されているCT画像データ群を利用すれば、新たに生成した放射線投影画像を用いて、上述の更新処理を行うだけで、短時間で画質のよいCT画像を得ることができる。そして、この画質のよいCT画像を用いて、患部の追尾処理を行うことによって、精度高く患部位置へ放射線を照射することができるようになる。
【0060】
また、上述の処理によれば、輝度更新量候補値が算出された各画素についてのみ輝度更新量を算出し、当該輝度更新量によりCT画像の更新処理を行っているため、輝度更新量候補値が算出されない画素については更新処理を行う必要がない。従って、更新処理を行わない画素分だけ、更新処理を完了するまでの時間を短縮することができる。
【0061】
図7は従来更新処理を行うことのできるCT画像の範囲との違いを示す図である。
従来のFBP法を利用した技術におけるCT画像の作成方法では、複数の放射線投影画像によって生成することのできる円形のCT画像の範囲を対象とするものである。本実施形態による画質の良いCT画像の更新処理においては、予め生成されたCT画像をユーザに選択させ、当該CT画像全体の更新処理を行うことができるため、従来に比べて範囲の広いCT画像の更新処理(画質のよいCT画像の作成)を行うことができる。
【0062】
そして、放射線治療装置制御装置1は、上述の更新処理後のCT画像を利用して、患部の追尾処理を行い、当該追尾した患部に対して放射線照射制御を行う。ここで、放射線治療装置制御装置1の患部位置追尾部110は、生体に取付けられた赤外線マーカの動きを赤外線カメラにより検出した放射線治療装置3から、当該赤外線マーカが示す生体の時間経過に応じた呼吸位相の情報を入力する。また患部位置追尾部110は、ユーザの操作に基づいて更新処理後の呼吸位相ごとのCT画像を、放射線治療装置制御装置1に接続されている表示部(モニタなど)に表示する。そしてユーザが、呼吸位相ごとの更新処理後のCT画像において患部位置を選択し、制御部101が、その情報を受け付ける。例えば患部の情報として呼吸位相ごとのCT画像中の患部位置の座標の指定を受け付ける。患部位置追尾部110は、呼吸位相ごとのCT画像中の患部位置の座標(移動位相)と、赤外線マーカの動きに基づく時間経過に応じた呼吸位相とに基づいて、呼吸位相と患部の移動位相との相関モデル式を生成する。そして、患部位置追尾部110は、生成した相関モデル式をデータベース111に登録しておく。
【0063】
追尾処理においては、放射線治療装置制御装置1の患部位置追尾部110は、生体に取付けられた赤外線マーカが示す時間経過に応じた呼吸位相の情報を放射線治療装置3から取得し、時間経過に応じた当該呼吸位相に対応する患部位置を、相関モデル式を用いて時間経過ごとに算出する。そして、患部位置追尾部110は、時間の経過に従って、順次、算出した患部位置を放射線治療装置3へ送信し、当該放射線治療装置3が受信した患部位置へ放射線を照射する。
以上の処理により、画質の良い更新処理後のCT画像を用いた患部位置の追尾を行うことにより、患部位置に精度の高く放射線を照射することができる。
【0064】
上記実施例では、放射線投影画像は放射線治療装置に具備した線源及びセンサアレイをもとに作成する場合を例に取り示した。しかし、放射線投影画像は、例えば放射線治療装置とは別に具備した診断装置(CT,MRI)により作成したものでも構わない。
なお、上述の放射線治療装置制御装置や放射線治療装置は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0065】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0066】
1・・・放射線治療装置制御装置
3・・・放射線治療装置
101・・・制御部
102・・・CT画像選択部
103・・・放射線投影画像生成部
105・・・回転角度検出部
106・・・再構成画像生成部
107・・・差分情報生成部
108・・・輝度更新量算出部
109・・・CT画像更新部
110・・・患部位置追尾部
111・・・データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線源とセンサアレイとの間に配置された生体に前記線源から放射線を照射して前記生体の患部を治療する放射線治療装置を制御し、前記センサアレイで検出された情報に基づいてコンピュータトモグラフィ画像(CT画像)を生成する放射線治療装置制御装置であって、
体動位相ごとに予め生成されたCT画像データ群の中から、設定された体動位相のCT画像データを更新対象のCT画像データとして選択するCT画像選択部と、
を備えることを特徴とする放射線治療装置制御装置。
【請求項2】
前記線源及び前記センサアレイを回転させて複数の回転角度それぞれに応じた放射線投影画像を生成し、当該放射線投影画像とこの放射線投影画像の生成時に前記線源及び前記センサアレイを回転させた際の回転角度と前記放射線投影画像の生成時の体動位相とを対応付けて記録する放射線投影画像生成部と、
前記放射線投影画像の生成時の前記回転角度を検出する回転角度検出部と、
前記更新対象のCT画像データを、前記検出した回転角度で前記線源側から前記センサアレイ側に投影した場合の再構成画像を生成する再構成画像生成部と、
前記放射線投影画像の各画素と前記生成した再構成画像の各画素とを比較して、それら各画素についての輝度差を示す差分情報を生成する差分情報生成部と、
前記線源と前記センサアレイの検出素子とを結ぶ直線上の画素を、前記更新対象のCT画像データにおいて特定し、当該特定した画素の輝度値における変化のしやすさと前記差分情報に基づいて、輝度更新量候補値を当該特定した画素それぞれについて算出するとともに、対象とする体動位相に対応する複数の前記回転角度について算出した当該特定した画素それぞれの前記輝度更新量候補値を用いて、当該特定した画素それぞれの輝度更新量を算出する輝度更新量算出部と、
前記特定した画素それぞれの輝度更新量を用いて、前記更新対象のCT画像データの対応する各画素の輝度値を更新する更新部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の放射線治療装置制御装置。
【請求項3】
前記初期設定CT画像及び前記更新部が更新を行なう範囲は、複数の回転角度の放射線投影画像に基づいて生成されるCT画像の範囲よりも大きい範囲のCT画像である
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線治療装置制御装置。
【請求項4】
前記輝度更新量算出部は、前記更新対象のCT画像データの体動位相に近い体動位相の初期設定CT画像と、当該初期設定CT画像の体動位相に近い他の体動位相の初期設定CT画像との差に基づいて前記輝度値の変化のしやすさを求める
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の放射線治療装置制御装置。
【請求項5】
前記輝度更新量算出部は、前記更新対象のCT画像データの体動位相に近い体動位相の初期設定CT画像と、任意の体動位相に対応する放射線投影画像に基づいて生成された更新対象のCT画像データとの差に基づいて前記輝度値の変化のしやすさを求める
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の放射線治療装置制御装置。
【請求項6】
前記生体の体動位相と前記生体内の患部の位置との相関を示す相関モデル式を用いて、実測した前記生体の体動位相に対応する前記患部の位置を算出し、患部の位置を追尾する患部位置追尾部と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の放射線治療装置制御装置。
【請求項7】
線源とセンサアレイとの間に配置された生体に前記線源から放射線を照射して前記生体の患部を治療する放射線治療装置を制御し、前記センサアレイで検出された情報に基づいてコンピュータトモグラフィ画像(CT画像)を生成する放射線治療装置制御装置の処理方法であって、
体動位相ごとに予め生成されたCT画像データ群の中から、設定された体動位相のCT画像データを更新対象のCT画像データとして選択し、
前記線源及び前記センサアレイを回転させて複数の回転角度それぞれに応じた放射線投影画像を生成し、当該回転角度を別途取得する呼吸位相と対応付け、
前記放射線投影画像の生成時の前記回転角度を検出し、
前記更新対象のCT画像データを、前記検出した回転角度で前記線源側から前記センサアレイ側に投影した場合の再構成画像を生成し、
前記特定した放射線投影画像の各画素と前記生成した再構成画像の各画素とを比較して、それら各画素についての輝度差を示す差分情報を生成し、
前記線源と前記センサアレイとを結ぶ直線上の画素を、前記更新対象のCT画像データにおいて特定し、当該特定した画素の輝度値における変化のしやすさと前記差分情報に基づいて、輝度更新量候補値を当該特定した画素それぞれについて算出するとともに、対象とする体動位相に対応する複数の前記回転角度について算出した当該特定した画素それぞれの前記輝度更新量候補値を用いて、当該特定した画素それぞれの輝度更新量を算出し、
前記特定した画素それぞれの輝度更新量を用いて、前記更新対象のCT画像データの対応する各画素の輝度値を更新する
ことを特徴とする処理方法。
【請求項8】
線源とセンサアレイとの間に配置された生体に前記線源から放射線を照射して前記生体の患部を治療する放射線治療装置を制御し、前記センサアレイで検出された情報に基づいてコンピュータトモグラフィ画像(CT画像)を生成する放射線治療装置制御装置のコンピュータを、
体動位相ごとに予め生成されたCT画像データ群の中から、設定された体動位相のCT画像データを更新対象のCT画像データとして選択するCT画像選択手段、
前記線源及び前記センサアレイを回転させて複数の回転角度それぞれに応じた放射線投影画像を生成し、当該回転角度を別途取得する呼吸位相と対応付ける放射線投影画像生成手段、
前記放射線投影画像の生成時の前記回転角度を検出する回転角度検出手段、
前記更新対象のCT画像データを、前記検出した回転角度で前記線源側から前記センサアレイ側に投影した場合の再構成画像を生成する再構成画像生成手段、
前記放射線投影画像の各画素と前記生成した再構成画像の各画素とを比較して、それら各画素についての輝度差を示す差分情報を生成する差分情報生成手段、
前記線源と前記センサアレイとを結ぶ直線上の画素を、前記更新対象のCT画像データにおいて特定し、当該特定した画素の輝度値における変化のしやすさと前記差分情報に基づいて、輝度更新量候補値を当該特定した画素それぞれについて算出するとともに、対象とする体動位相に対応する複数の前記回転角度について算出した当該特定した画素それぞれの前記輝度更新量候補値を用いて、当該特定した画素それぞれの輝度更新量を算出る輝度更新量算出手段、
前記特定した画素それぞれの輝度更新量を用いて、前記更新対象のCT画像データの対応する各画素の輝度値を更新する更新手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−196259(P2012−196259A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61021(P2011−61021)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】