説明

放射線治療装置用ベッド装置

【課題】
構造の簡素化および設置スペースの小型化を実現する放射線治療装置用ベッド装置を提供することにある。
【解決手段】
患者をのせる天板4と、天板4を互いに直交した3軸方向に移動させる平行移動装置と、天板4を回転させる回転移動装置8と、平行移動装置及び回転移動装置8を制御するベッド制御装置36を備え、回転移動装置8は、天板4を支持する複数の回転アーム9,10を有し、ベッド制御装置36は、回転アーム9,10の長手方向と、天板4の長手方向を平行に保って、回転アーム9を、床面と平行な平面内で上下方向であるZ軸と平行な軸のまわりに回転させることによって、上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用粒子線照射システムに係り、特に、放射線治療装置に対して好適な放射線治療装置用ベッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線による癌治療において、近年、粒子線である陽子線や炭素線等の荷電粒子ビームを患者の患部に照射する粒子線照射システムが注目されている。
【0003】
粒子線照射システムは、荷電粒子ビーム発生装置,ビーム輸送装置及び照射ノズルを備える。荷電粒子ビーム発生装置は、周回軌道に沿って周回する荷電粒子ビームを所望のエネルギーまで加速させる。目標のエネルギーまで加速された荷電粒子ビームは、ビーム輸送装置を経て照射ノズルに輸送され、照射ノズルから出射される。
【0004】
粒子線照射システムにおいて、照射ノズルから出射された荷電粒子ビームは、治療室内に設置された治療用ベッドに横たわる患者に照射される。荷電粒子ビームは、荷電粒子ビームが停止するに至ったときにエネルギーの大部分を放出する(ブラックピークを形成する)という物理的特性を有する。患者の体内でブラックピークが形成される位置は、荷電粒子ビームのエネルギーに依存する。照射ノズルから出射する荷電粒子ビームのエネルギーを制御することによって、患者体内での荷電粒子ビームの照射位置(体表面からの深さ方向の照射位置)を調整することができる。粒子線照射システムを用いることで、患者の正常組織への影響を最小限に抑えて、患部に対して集中的に荷電粒子ビームを照射する治療が可能となる。
【0005】
照射対象である患部に対して荷電粒子ビームを正確に照射するには、患者をのせる放射線治療用ベッド装置(以下、ベッド装置)を精度良く位置決めすることが必要となる。特許文献1は、患者を固定するベッド装置の位置決めシステムを開示している。特許文献1の位置決めシステムは、ベッド装置及び位置決め装置を有する。このベッド装置は、図10及び図11に示すように、天板4a,平行移動機構(X軸駆動手段,Y軸駆動手段,Z軸駆動手段),回転移動機構及び移動床を有している。粒子線治療システムは、患者を固定するベッド装置の周りに、照射ノズルを回転可能に配置するための回転ガントリを有している。アイソセンタと呼ばれるビーム照射のための基準点が、回転ガントリの中心軸上で、照射ノズル20aの正面に位置している。平行移動装置は、このアイソセンタ3が患者の患部の位置に設置されるように、ベッド装置を移動させる。ここで、X軸駆動手段は、治療室の床に掘られたピットの底面37に固定されており、ピットの上面にはベルト状の移動床(アクセスフロア)31が設けられる。このX軸駆動手段を用いてベッド装置をX軸方向に移動させる場合、治療室の移動床31も同時に移動して、患者やオペレータのアクセスが容易となるように構成される。
【0006】
【特許文献1】特開平11−313900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、回転駆動機構が、水平面内(XY平面内)にベッド装置を回転駆動(アイソセントリック回転)させる。回転駆動軸(θ軸)は、Z軸に平行な軸であり、アイソセンタ3から離れた位置にある。このため、ベッド装置をアイソセントリック回転させる場合、図11に示すように、さらにX軸及びY軸方向にベッド装置を移動させて、患者の患部がアイソセンタに一致するように制御することが必要となる。このため、ストローク範囲が、治療に必要なストローク範囲よりも大きくなってしまい、ベッド装置は大きなサイズのものとなる。また、移動後の床の開口部に治療スタッフが落下することを防止のために、床開口部に対しては移動床31などを適切に設置することが必要であった。また、アイソセントリック回転する際にアイソセンタ3の一点のまわりに回転させるため、θ回転と同時に、X軸及びY軸も連動して駆動させることが必要となり、3つのモータを同時に連動して動かすための複雑な制御ソフトウェアが必要であった。
【0008】
本発明の目的は、構造が簡素な放射線治療用ベッド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、患者をのせる天板と、天板を互いに直交した3軸方向に移動させる平行移動装置と、床面と平行な平面内で上下方向であるZ軸と平行な軸の周りに天板を回転させる回転移動装置と、天板を所定の位置に配置するために、平行移動装置及び回転移動装置を制御するベッド制御装置を備え、回転移動装置は天板を支持する複数の回転アームを有し、ベッド制御装置は回転アームの長手方向と天板の長手方向を平行に保って、回転アームを床面と平行な平面内で前記Z軸と平行な軸の周りに回転させることにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、平行移動装置及び回転移動装置のストローク範囲は治療に必要なストローク範囲だけにすることができ、放射線治療装置用ベッド装置を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
(実施形態1)
本発明の好適な一実施形態である粒子線照射システムを、図1を用いて説明する。
【0013】
本実施形態の粒子線照射システム40は、図1に示すように、荷電粒子ビーム発生装置41,ビーム輸送装置42,照射ノズル(照射装置)20及び放射線治療用ベッド装置(以下、ベッド装置)2を備える。ビーム輸送装置42が、荷電粒子ビーム発生装置41と照射ノズル20を接続する。治療室52内にベッド装置2が配置される。なお、ベッド装置2はベッド制御装置37を備える。荷電粒子ビーム発生装置41は、イオン源(図示せず),前段加速装置43及びシンクロトロン44を有する。前段加速装置43が、イオン源及びシンクロトロン44に接続される。シンクロトロン44は、荷電粒子ビームの周回軌道上に、高周波印加装置45,四極電磁石46,偏向電磁石47及びビーム加速装置である高周波加速空洞48を有する。出射用デフレクタ50が、シンクロトロン44とビーム輸送装置42を接続する。イオン源で発生したイオン(例えば、陽子イオンや炭素イオンなどの荷電粒子ビーム)は、前段加速装置43に出射される。シンクロトロン44は、前段加速装置43で加速された荷電粒子ビームを入射し、さらに加速する。この加速は、高周波加速空洞48に高周波電力を印加することによって行われる。周回する荷電粒子ビームが目標のビームエネルギーまで加速されると、四極電磁石46及び偏向電磁石47の励磁電流が設定値に保持される。その後、出射用デフレクタ50に高周波電力を印加することで、シンクロトロン44から荷電粒子ビームが出射される。
【0014】
ビーム輸送装置42は、ビーム経路49,四極電磁石(図示せず)及び偏向電磁石51,22を備える。照射ノズル20が、回転ガントリ21(図2)に設置される。ビーム経路49は、治療室52内に配置された照射ノズル20に接続される。回転ガントリ21は、患者を固定するベッド装置2の周りを360°回転可能な構成を有する。回転ガントリ21が回転軸i(図3)を中心に回転することで、照射ノズル20及び偏向電磁石22,51が回転する。照射ノズル20が治療用ベッド装置2の周囲を回転可能であるため、任意の角度から患者1に対して荷電粒子ビームを照射することができる。シンクロトロン44から出射された荷電粒子ビームは、出射用デフレクタ50を経て、ビーム輸送装置42に到達する。偏向電磁石51,22は、通過する荷電粒子ビームの軌道を変更してビーム経路49に沿って荷電粒子ビームを輸送する。その後、荷電粒子ビームは照射ノズル20に到達する。荷電粒子ビームは、照射ノズル20のビーム軸mに沿って進行し、出射される。照射ノズル20から出射された荷電粒子ビームは、ベッド装置2に固定された患者1の患部に照射される。照射ノズル20は、各患者の患部に応じた最適な線量分布を形成するように荷電粒子ビームを出射する。本実施形態の回転ガントリ21を含む治療室52内の構成について説明する。治療室内52に配置されるベッド装置2は、図3に示すように、Z軸駆動機構5,Y軸駆動機構6及びX軸駆動機構7,θ駆動機構8,天板4を有する。Z軸駆動機構5,Y軸駆動機構6及びX軸駆動機構7が平行移動装置であり、θ駆動機構8が回転移動装置である。ここで、Y軸とは、図3に示すように、回転ガントリ21の回転体の回転軸iに平行な軸である。X軸とは、Y軸と直交する軸である。Z軸は、X軸及びY軸と直交する軸であり、上下方向を示す。X軸,Y軸,Z軸はそれぞれ直交する軸を示す。平行移動装置は、互いに直交する3軸(X軸,Y軸,Z軸)方向に天板4を移動する機能を有する。ベッド装置2の駆動部は、下から順に、Z軸駆動機構5,Y軸駆動機構6,X軸駆動機構7,θ駆動機構8が配置される。
【0015】
Z軸駆動機構5は、重力方向である上下方向にベッド装置2(天板4)を移動可能とする駆動機構(Z方向移動装置)である。Z軸駆動機構5は、リニアガイドおよびボールねじを用いた直線駆動機構で構成される。リニアガイドおよびボールねじを用いた機械構造は、従来機と同様の構成である。また、ストローク(移動量)についても、従来機と同様である。
【0016】
Y軸駆動機構6は、ガントリシリンダ軸方向にベッド装置2(具体的には天板4)を移動可能とする駆動機構(Y方向移動装置)である。Y軸駆動機構6は、リニアガイドおよびボールねじを用いた直線駆動機構で構成される。リニアガイドおよびボールねじを用いた機械構造は、従来機と同様の構成である。ストロークについては、従来よりも小さく治療に必要な最小限のストロークである。なお、Y軸駆動機構6がベッド装置2を治療室52に出し入れするように駆動する。
【0017】
X軸駆動機構7は、Z軸およびY軸に直交する方向にベッド装置2(天板4)を移動可能とする駆動機構(X方向移動装置)である。リニアガイドおよびボールねじを用いた直線駆動機構で構成される。リニアガイドおよびボールねじを用いた機械構造は、従来機と同様の構成である。ストロークについては、従来よりも小さく治療に必要な最小限のストロークである。
【0018】
θ駆動機構8は、Z軸と平行な軸の周りに、XY平面内でベッド装置2(天板4)を回転移動する駆動機構(回転移動装置)である。XY平面とは、床面と平行な平面を示す。
θ駆動機構8の構成を、図4,図5及び図6を用いて説明する。θ駆動機構8は、図6に示すように、基台25,主回転アーム(第1回転アーム)9,副回転アーム(第2回転アーム)10及び平行移動体(天板支持部材)17を有する。基台25が、X軸駆動機構7の上部に設置される。基台25の内部には、軸受部11a,ウォーム歯車12及びθ軸駆動モータ13が配置される。基台25と主回転アーム9の連結部に、軸受部11a,ウォーム歯車12及びθ軸駆動モータ13が設置される。θ軸駆動モータ13は、ウォーム歯車12に連結される。主回転アーム9は、基台25に設けられた支持部材によって支持され、θ方向に回転可能に軸受部11aに固定される。副回転アーム10は、基台25に設けられた他の支持部材によって支持される。主回転アーム9と副回転アーム10は、θ方向に回転したときに互いに干渉しないように、基台25の上面に支持される。本実施形態では、副回転アーム10が、基台25の上面に設けられた窪み部分(凹部)に支持され、主回転アーム9の底面が副回転アームの上面よりも低い位置に配置されるため、主回転アーム9と副回転アーム10は互いに干渉せずにθ方向に回転できる。また、主回転アーム9と副回転アーム10は、それぞれの長手方向の長さが同じである。
【0019】
平行移動体17は、主回転アーム9及び副回転アーム10の上に設置される。つまり、主回転アーム9及び副回転アーム10が平行移動体17を支持する。平行移動体17の内部には、軸受部11b,11c,スプロケット14,15及びチェーン16が設けられる。平行移動体17と主回転アーム9の連結部に、軸受部11b及びスプロケット14(第2回転機構)を設ける。天板4が、平行移動体17の上に設置される。平行移動体17と天板4の連結部に、軸受部11c及びスプロケット15(第1回転機構)が設置される。
軸受部11cが、平行移動体17の上に天板4をθ方向に回転可能に固定する。主回転アーム9のスプロケット14及び天板4のスプロケット15はチェーン16によって連結される。スプロケット14の直径と天板4のスプロケット15の直径は同じである。なお、ベッド制御装置37は、Z軸駆動機構5,Y軸駆動機構6,X軸駆動機構7及びθ駆動機構8を制御し、ベッド制御装置37を所定の位置に配置するように制御する。
【0020】
本実施例における粒子線治療システム40の制御手順について説明する。
【0021】
まずは、治療計画情報の一つである角度情報(荷電粒子ビームを照射する方向の情報)に基づいて、ガントリ制御装置(図示せず)が回転ガントリ21を回転駆動する。回転ガントリ21は、回転軸iを中心に回転し、照射ノズル20内のビーム経路が上記角度情報に対応した角度になるように移動される。照射ノズル20が所定の位置に配置されると、ベッド制御装置37はベッド装置2を初期位置(X軸駆動機構は中央の位置、Y軸駆動機構は後退位置(ガントリの外方向)、Z軸駆動機構は最も下に沈む位置、θ駆動機構は主回転アームの長手方向がガントリ軸方向と平行となる位置)に配置する。
【0022】
ベッド装置2の天板4に患者1を積載する。医療従事者(たとえば、医師)は、患者用固定具を用いて、天板4の上に患者1を固定する。患者固定具には、治療患部の概略位置を示すマークが印されている。また、治療室52内にはレーザマーカ(図示せず)が備えられている。レーザマーカは、X・Y・Z方向にレーザのラインを描き、空間上のアイソセンタを示す。
【0023】
治療室52内のレーザマーカを点灯し、レーザマーカが示すアイソセンタの位置と患者固定具のマークが一致するように、Z軸方向に上昇させ、X軸,Y軸およびθ方向に移動する。アイソセンタが患者1の患部の位置に配置されるようにベッド装置2が位置決めされると、荷電粒子ビーム発生装置41,ビーム輸送装置49,照射ノズル20が起動されて、荷電粒子ビームの出射が開始される。
【0024】
ここで、本実施形態のベッド装置2の位置決め制御について説明する。ベッド駆動装置は、治療室52内のレーザマーカが示すアイソセンタの位置と患者固定具のマークとが一致するように、X軸駆動機構7,Y軸駆動機構6,Z軸駆動機構5のそれぞれを駆動する。
【0025】
ベッド装置2は、治療計画に応じて、アイソセンタ3まわりに回転することが求められる。このようなアイソセンタ3まわりに回転する運転方法を、アイソセントリック回転と呼ぶ。なお、このアイソセントリック回転とは、XY平面内をZ軸と平行な軸の周りに回転することを示す。
【0026】
ベッド制御装置37は、指令信号を出力してθ軸駆動モータ13の起動を開始する。θ軸駆動モータ13が駆動すると、これに連結されたウォーム歯車12が回転し、主回転アーム9のスプロケット14が回転する。スプロケット14の回転によって、チェーン16が回転する。この回転が進むと、図7(a)に示すチェーン16の位置A及びBが、図7(b)に示す位置A′及びB′に移動する。主回転アーム9のスプロケット14の直径と天板4のスプロケット15の直径が同じであるため、チェーン16が回転することによって、スプロケット15がスプロケット14に同期して回転を開始する。本実施形態の副回転アーム10は、モータ等の回転駆動機構を有していないが、副回転アーム10と基台25の支持点及び副回転アーム10と平行移動体17の支持点を軸として回転可能に設置されている。このため、副回転アーム10は、主回転アーム9の回転に伴ってθ方向に回転可能な構成を有する。主回転アーム9及び副回転アーム10がθ方向に回転することによって、平行移動体17は、XY平面内を平行移動する。また、天板4は主回転アーム9の回転に伴ってθ方向に回転可能な構成を有する。このように、θ方向に回転移動した場合、主回転アーム9,副回転アーム10及び天板4の長手方向の軸は、図9に示すように、常に平行に保たれる。本実施形態のベッド装置2は、このように機械的に連結されているため、平行移動体17の内部及び天板4の内部に電気部品や配線等を設置する必要がなく、構成が簡素化される。また、駆動制御も簡素化される。
【0027】
天板4の回転角度は、主回転アーム9の回転角度(具体的には、ウォーム歯車12の回転角度やθ軸駆動モータ13の駆動量など)を計測することによって求めることができる。ウォーム歯車12の回転角度を検出する角度検出器(又は、θ軸駆動モータ13の駆動量を測定する測定器など)を設置し、この角度検出器からの角度情報に基づいて、ベッド制御装置がベッド装置2(具体的には天板4)を所定の角度になるまで回転させる。図9は、ベッド装置2の回転の様子を示す図であり、天板4の長手方向の軸とY軸とのなす角度(θ)が0°,15°,30°,45°,60°,75°及び90°の場合における天板4の配置を示す。軸lと軸mが交わる位置がアイソセンタである。本実施形態のベッド装置2を用いた場合、天板4をθ方向に回転させたとしても天板4(又は患者3)に対するアイソセンタ3の位置は変化することがない(図8,図9)。本実施例によれば、X軸,Y軸共に移動することなくアイソセントリック回転することができるため、駆動機構が簡素化される。また、ベッド装置2の位置決めに要する時間が短縮される。これにより、粒子線治療装置を効率的に運用することが可能となる。
【0028】
一方、従来の放射線治療用ベッド装置(ベッド装置)30の場合、アイソセントリック回転(θ軸回転)すると、それに応じて天板4aがX軸方向及びY軸方向に移動してしまう。そのため、天板4(又は患者3)に対するアイソセンタの位置を変化させずにアイソセントリック回転するには、図11に示すように、θ回転に伴って、X軸移動量32及びY軸移動量33の分だけX軸及びY軸に移動することが必要となる。また、従来のベッド装置30の場合、X軸移動をストローク端に移動すると床に開口部ができるため、治療スタッフが落下することのないよう、開口部に、X軸移動と共に横方向に移動可能な移動床31を設けることが必要となる。本実施形態によれば、ベッド装置2におけるX軸ストローク範囲18およびY軸ストローク範囲19が従来技術のX軸ストローク範囲34及びY軸ストローク範囲35よりも小さくなるため、移動床が不要となり、設置スペースの小さい装置を提供することができる。また、本実施形態によれば、ベッド装置2のストローク範囲が小さくなるため、小型化された粒子線照射システム40を提供することができる。
【0029】
天板4が回転されて所望の角度に配置されると、ベッド制御装置37は、主回転アーム9の回転を停止する。ベッド装置2の位置決めが終了すると、荷電粒子ビームの出射が開始される。
【0030】
本実施形態では、患者1への荷電粒子ビーム出射を開始する前にベッド装置2をアイソセントリック回転する例を説明したが、アイソセントリック回転は、多門照射の場合に有効である。多門照射とは、一人の患者1の患部に対して荷電粒子ビームを照射する場合、ある方向(第1照射方向)から患部にビームを照射し、第1照射方向からの照射が終了した後、第1照射方向と異なる方向(第2照射方向)からもビームを患部に照射する、というようにいくつかの方向からビームを照射する方法である。ベッド装置2は、第1照射方向からのビームの照射が終了した後、アイソセントリック回転して患者1の向きを変更し、第2照射方向から荷電粒子ビームを照射する、というように動作する。
【0031】
本実施形態では、荷電粒子ビーム発生装置41の加速器としてシンクロトロン44を例に説明したが、サイクロトロンや線形加速器などの場合にも本実施形態は適用することができる。
【0032】
本実施形態では、荷電粒子ビームを用いた粒子線治療システム40を例に説明したが、X線等の放射線照射システムの場合にも適用することができる。
【0033】
本実施形態では、ベッド装置2のスプロケット14及びスプロケット15がチェーン16によって連結される構成を示したが、チェーン16の変わりにベルトを用いてもよい。
【0034】
本実施形態では、ベッド装置2の駆動部は、Z軸駆動機構5,Y軸駆動機構6,X軸駆動機構7,θ駆動機構8の順に下から配置される構成を示したが、この順番に限定するものではない。
【0035】
本実施形態では、θ駆動機構8が二つの回転アーム(主回転アーム9,副回転アーム10)を有する構成を示したが、が三つ以上の回転アームを備えてもよい。
【0036】
本実施形態では、回転ガントリを有する粒子線照射システム40を例に説明した。しかし、照射ノズル20が固定される固定照射の場合にも、本実施形態のベッド装置2を採用することができる。例えば、患者の患部が前立腺ガンの場合は、多門照射を行うことが多いため有効である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態である粒子線治療システムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態である粒子線治療装置の回転ガントリを含む治療室内の構成を示す正面図である。
【図3】本発明の一実施形態である粒子線治療装置の回転ガントリを含む治療室の構成を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施形態であるベッド装置の鳥瞰図である。
【図5】本発明の一実施形態であるベッド装置を上部からみた平面図である。
【図6】本発明の一実施形態であるベッド装置を示す構成図である。
【図7】本発明の一実施形態でのアイソセントリック回転時のベッド装置の配置を示す図であり、(a)はθが45°のときの配置図、(b)はθが60°のときの配置図である。
【図8】本発明の一実施形態でのアイソセントリック回転時のベッド装置の配置を示す図であり、(a)はθが0°のときの配置図、(b)はθが45°のときの配置図、(c)はθが90°の時の配置図である。
【図9】本発明の一実施形態であるベッド装置を上部から見た平面図であり、(a)はθが0°のときの平面図、(b)はθが15°のときの平面図、(c)はθが30°のときの平面図、(d)はθが45°のときの平面図、(e)はθが60°のときの平面図、(f)はθが75°のときの平面図、(g)はθが90°のときの平面図である。
【図10】従来例の粒子線治療装置における回転ガントリを含む治療室内の構成を示す正面図である。
【図11】従来例のアイソセントリック回転時のベッド装置を示す配置図であり、(a)はθが0°のときの配置図、(b)はθが45°のときの配置図、(c)はθが90°の時の配置図である。
【符号の説明】
【0038】
1 患者
2 放射線治療法ベッド装置
3 アイソセンタ
4 天板
5 Z軸駆動機構
6 Y軸駆動機構
7 X軸駆動機構
8 θ駆動機構
9 主回転アーム
10 副回転アーム
11 支持軸受
12 ウォーム歯車(ウォーム減速機)
13 θ軸駆動モータ
14 スプロケットA
15 スプロケットB
16 チェーン
17 平行移動体
18 X軸ストローク範囲
19 Y軸ストローク範囲
20 照射ノズル
21 回転ガントリ
22 偏向電磁石
23 ガントリ支持部
30 放射線治療用ベッド装置
31 移動床
32 アイソセントリック回転に必要なX軸移動量
33 アイソセントリック回転に必要なY軸移動量
34 従来型治療台におけるX軸ストローク範囲
35 従来型治療台におけるY軸ストローク範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者をのせる天板と、
前記天板を互いに直交した3軸方向に移動させる平行移動装置と、
床面と平行な平面内で、上下方向であるZ軸と平行な軸の周りに前記天板を回転させる回転移動装置と、
前記天板を所定の位置に配置するために、前記平行移動装置及び前記回転移動装置を制御するベッド制御装置を備え、
前記回転移動装置は、前記天板を支持する複数の回転アームを有し、
前記ベッド制御装置は、前記回転アームの長手方向と前記天板の長手方向を平行に保って、前記回転アームを前記平面内で前記Z軸と平行な軸の周りに回転させることを特徴とする放射線治療用ベッド装置。
【請求項2】
前記回転移動装置は、
回転駆動手段を有し、前記回転駆動手段によって前記平面内で前記Z軸と平行な軸の周りに回転駆動される第1回転アームと、
前記第1回転アームが回転駆動されることで回転する第2回転アームを有し、
前記第1回転アーム,前記第2回転アーム及び前記天板は、前記第1回転アーム,前記第2回転アーム及び前記天板の長手方向の軸が平行に保たれて回転することを特徴とする放射線治療用ベッド装置。
【請求項3】
前記第1回転アーム及び第2回転アームによって支持され、前記天板を回転可能に支持する天板支持部材を備え、
前記天板支持部材と前記平行移動体の連結部に設けられる第1回転機構が、前記第1回転アームと前記平行移動体の連結部に設けられる第2回転機構に連動して回転することを特徴とする請求項2に記載の放射線治療装置用ベッド装置。
【請求項4】
第1回転機構と第2回転機構を連結するベルト又はチェーンを有することを特徴とする請求項3に記載の放射線治療装置用ベッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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