説明

放射線画像変換パネル及びその製造方法

【課題】 塗布の膜厚分布が均一で、塗布性が良好で、粒状性が優れた放射線画像変換パネル及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルの製造方法において、降伏値が1〜50Paである輝尽性蛍光体層塗布液を支持体上に塗布、乾燥することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換パネル及びその製造方法に関し、特に塗布の膜厚分布が均一で、塗布性が良好で、粒状性が優れた放射線画像変換パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像のような放射線画像は、病気診断用等の分野で多く用いられている。このX線画像を得る方法としては、被写体を通過したX線を蛍光体層(蛍光スクリーン)に照射し、これにより可視光を生じさせた後、この可視光を通常の写真を撮るときと同様にして、ハロゲン化銀写真感光材料(以下、単に感光材料ともいう)に照射し、次いで現像処理を施して可視銀画像を得る、いわゆる放射線写真方式が広く利用されている。
【0003】
しかしながら、近年では、ハロゲン化銀を有する感光材料による画像形成方法に代わり、蛍光体層から直接画像を取り出す新たな方法が提案されている。
【0004】
この方法としては被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収せしめ、しかる後この蛍光体を、例えば光または熱エネルギーで励起することにより、この蛍光体が上記吸収により蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射せしめ、この蛍光を検出し画像化する方法がある。
【0005】
具体的には、例えば、米国特許第3,859,527号及び特開昭55−12144号等に記載されているような輝尽性蛍光体を用いる放射線画像変換方法が知られている。
【0006】
この方法は、輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルを使用するもので、この放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層に被写体を透過した放射線を当てて、被写体各部の放射線透過密度に対応する放射線エネルギーを蓄積させて、その後、輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線等の電磁波(励起光)で時系列的に励起することにより、輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを輝尽発光として放出させ、この光の強弱による信号を、例えば光電変換して電気信号を得て、この信号を感光材料等の記録材料、CRT等の表示装置上に可視像として再生するものである。
【0007】
上記の放射線画像の再生方法によれば、従来の放射線写真フィルムと増感紙との組合せによる放射線写真法と比較して、はるかに少ない被曝線量で情報量の豊富な放射線画像を得ることができるという利点を有している。
【0008】
このように輝尽性蛍光体は、放射線を照射した後、励起光を照射すると輝尽発光を示す蛍光体であるが、実用的には、波長が600〜800nmの範囲にある励起光によって、300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す蛍光体が一般的に利用される。
【0009】
これらの輝尽性蛍光体を使用した放射線画像変換パネルは、放射線画像情報を蓄積した後、励起光の走査によって蓄積エネルギーを放出するので、走査後に再度放射線画像の蓄積を行うことができ、繰り返し使用が可能である。つまり従来の放射線写真法では、一回の撮影ごとに放射線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線画像変換方法では放射線画像変換パネルを繰り返し使用するので、資源保護、経済効率の面からも有利である。
【0010】
放射線画像変換パネルを使用した放射線画像変換方式は上記のように非常に有利な画像形成方法であるが、この方法に用いられる放射線画像変換パネルも当然感度が高く、画質(鮮鋭性、粒状性等)の良好な画像を与えるものであることが望まれる。
【0011】
感度を向上させる技術としては、白色顔料を適当な結合材中に分散・含有した塗布液を支持体に塗布して支持体上に光反射層を設け、その上に輝尽性蛍光体層を設ける方法(例えば、特許文献1参照。)が知られている。ところで白色顔料は、近紫外領域における反射率が著しく低いため、使用する輝尽性蛍光体によってはこの光反射層が示す光反射特性は充分高いとはいえず、従ってこの白色顔料からなる光反射層を設けたことによる放射線画像変換パネルの感度の向上は必ずしも満足できるレベルとは言えなかった。
【0012】
特許文献2には、支持体と輝尽性蛍光体層との間に設けられた光反射層に、白色顔料として特定の組成式で表されるアルカリ土類金属弗化ハロゲン化物を用いる技術が記載されており、それによる光反射特性、感度、鮮鋭度の向上が謳われている。しかしながらこの光反射層は輝尽性蛍光体層の下に設けられており、輝尽蛍光の反射が放射線画像変換パネルの表面(輝尽蛍光読み取り側)まで届きにくく、輝度向上が不十分であるという問題が明らかになった。
【0013】
放射線画像変換パネルの製造方法として、輝尽性蛍光体塗布液を支持体上に塗布乾燥して輝尽性蛍光体層を形成させる場合、上記塗布液は比較的高比重の蛍光体粒子が分散した状態であるため、液溜まりで塗布液の分散物が沈殿したり、塗布時に受ける剪断や乾燥時に受ける乾燥風の影響により、塗布液中の分散物が凝集したりすることがあり、その結果、塗布幅方向での塗布液の粘度バラツキが生じて膜厚分布が悪化したり、塗布筋、塗布ムラ等の塗布故障の原因となる場合がある。
【0014】
支持体上に輝尽性蛍光体層を塗布するのに、輝尽性蛍光体層の高粘度、厚膜塗布に適しているナイフ型塗布装置が多く使用されるようになっている。ナイフ型塗布装置では、例えば、送液ポンプにより送られてきた塗布液がナイフ型塗布装置とバックロール上の支持体とで形成されたダムと称する液溜め部に一旦溜められ、溜められた塗布液はバックロール上にあるナイフ(膜厚規制部材)により規制されて一定の膜厚に塗布される。このようなナイフ型塗布装置としては、特開昭63−69568号、同63−69566号、同62−289266号に記載されており、塗布液の供給は一般的には塗布液ダムの上から、または、塗布液ダムの壁面の所定の位置からパイプにて供給されることが多い。
【0015】
これらの特許に記載されているナイフ型塗布装置の欠点としては、塗布液を供給する時の流速により塗布液ダム内で、流動ムラが生じて膜厚が不均一になったり、また塗布液が固体粒子を分散した分散液である場合、塗布液ダム内で粒子の沈殿・凝集及び流動ムラによる粘度の変化が発生して塗膜の組成が不均一になったり、塗布筋の問題が起こりやすいことが知られている。
【0016】
こうした塗布液ダムでの流動ムラや沈殿の発生問題を解決するため、塗布液ダム内に、帯状支持体の幅方向に往復運動可能な攪拌パドルや塗布液溜め内の塗布液を前記帯状支持体の幅方向に均一に攪拌するために回転体を設け、塗布液溜まりを攪拌できるような塗布装置が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0017】
しかしながら、回転体を円筒形に近づけると攪拌力が低下するため効果がなくなる場合があるし、回転数を早めると円筒近傍と周辺液溜まり部での剪断性の大きな変化が伴い筋の発生が見られる場合がある。また、回転体を羽根等の攪拌性の高い形状にした場合、羽根の周期の段ムラが発生しやすいという欠点を有し、攪拌性の低い形状では塗布液ダムでの流動ムラや沈殿の発生する場合があり、使用する塗布液を予備実験をして適正を有しているか否かを確認してから使用しなければならず使用する塗布液に制限があった。
【特許文献1】特開昭56−12600号公報
【特許文献2】特公平3−7280号公報
【特許文献3】特開2001−70866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、塗布の膜厚分布が均一で、塗布性が良好で、粒状性が優れた放射線画像変換パネル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0020】
(請求項1)
輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルの製造方法において、降伏値が1〜50Paである輝尽性蛍光体層塗布液を支持体上に塗布、乾燥することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【0021】
(請求項2)
前記輝尽性蛍光体がEu賦活BaFIであることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0022】
(請求項3)
前記輝尽性蛍光体層塗布液が高分子樹脂を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0023】
(請求項4)
前記高分子樹脂が主鎖にウレタン結合を有することを特徴とする請求項3に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【0024】
(請求項5)
請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法により得られたことを特徴とする放射線画像変換パネル。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、塗布の膜厚分布が均一で、塗布性が良好で、粒状性が優れた放射線画像変換パネル及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明者は鋭意研究の結果、輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルの製造方法において、降伏値が1〜50Paである輝尽性蛍光体層塗布液を支持体上に塗布、乾燥することにより、塗布の膜厚分布が均一で、塗布性が良好で、粒状性が優れた放射線画像変換パネルの製造方法が得られることを見出した。
【0027】
以下本発明を詳細に説明する。
【0028】
〔輝尽性蛍光体層塗布液の降伏値〕
本発明は、輝尽性蛍光体層塗布液の降伏値が1〜50Paであることが特徴である。本発明において降伏値とは、塗布液に剪断応力を連続的に与える過程で、塗布液の剪断速度を剪断応力の関数として表したときに、最初に生じる変曲点の剪断応力をいう。剪断速度とは通常用いられる定義に基づくもので、間隔hを隔てて平行に設置された平板の間に流体を流し込み、一方の平板を固定してもう一方の平板を速度Vで平行移動させたときの速度勾配(V/h)を測定したものである。降伏値は下記条件で測定する。
【0029】
(降伏値の測定条件)
23℃の塗布液に、0.1〜100Paの剪断応力を5分間連続的に増加させながら与える。測定装置は特に限定されないが、例えばハーケ社製レオストレスRS1が好ましく用いられる。
【0030】
輝尽性蛍光体層塗布液の降伏値が50Paを超えると膜厚分布が大きくなってしまうことや、粒状性が劣化してしまうことがある。一方、降伏値が1Pa未満では乾燥時に塗布液が受ける風の影響により、塗布性が劣化したり、膜厚分布が大きくなってしまうことがある。
【0031】
輝尽性蛍光体層塗布液の降伏値を3〜50Paの範囲に調整するには、溶媒量及び本発明に係る高分子樹脂量の調整、輝尽性蛍光体の粒子形状を調整する方法がある。
【0032】
次に、輝尽性蛍光体層について説明する。
【0033】
輝尽性蛍光体層は、主に輝尽性蛍光体粒子と高分子樹脂より構成され、支持体上にコーターを用いて塗設、形成される。
【0034】
輝尽性蛍光体層で用いることのできる輝尽性蛍光体としては、波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって、300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す輝尽性蛍光体が一般的に使用される。
【0035】
〔輝尽性蛍光体〕
以下に、本発明に係る輝尽性蛍光体層で好ましく用いることのできる輝尽性蛍光体の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
(1)特開昭55−12145号に記載されている(Ba1-X,M(II)X)FX:yA、(式中、M(II)はMg、Ca、Sr、Zn及びCdのうちの少なくとも一つ、XはCl、Br、及びIのうち少なくとも一つ、AはEu、Tb、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、及びErのうちの少なくとも一つ、そしては、0≦x≦0.6、yは、0≦y≦0.2である)の組成式で表される希土類元素賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物蛍光体;また、この蛍光体には以下のような添加物が含まれていてもよい。
【0037】
a)特開昭56−74175号に記載されている、X′、BeX″、M(III)X′″3、式中、X′、X″、及びX′″はそれぞれCl、Br及びIの少なくとも一種であり、M(III)は三価金属である
b)特開昭55−160078号に記載されているBeO、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Al23、Y23、La23、In23、SiO2、TiO2、ZrO2、GeO2、SnO2、Nb25、Ta25及びThO2等の金属酸化物
c)特開昭56−116777号に記載されているZr、Sc
d)特開昭57−23673号に記載されているB
e)特開昭57−23675号に記載されているAs、Si
f)特開昭58−206678号に記載されているM・L、式中、MはLi、Na、K、Rb、及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、LはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、In、及びTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属である
g)特開昭59−27980号に記載されているテトラフルオロホウ酸化合物の焼成物;特開昭59−27289号に記載されているヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸及びヘキサフルオロジルコニウム酸の一価もしくは二価金属の塩の焼成物;特開昭59−56479号に記載されているNaX′、式中、X′はCl、Br及びIのうちの少なくとも一種である
h)特開昭59−56480号に記載されているV、Cr、Mn、Fe、Co及びNi等の遷移金属;特開昭59−75200号に記載されているM(I)X′、M′(II)X″2、M(III)X′″3、A、式中、M(I)はLi、Na、K、Rb、及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M′(II)はBe及びMgからなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属を表し、M(III)はAl、Ga、In、及びTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、Aは金属酸化物であり、X′、X″、及びX′″はそれぞれF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
i)特開昭60−101173号に記載されているM(I)X′、式中、M(I)はRb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、X′はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
j)特開昭61−23679号に記載されているM(II)′X′2・M(II)′X″2、式中、M(II)′はBa、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;X′及びX″はそれぞれCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX′≠X″である;さらに、特開昭61−264084号に記載されているLnX″3、式中、LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;X″はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである。
【0038】
(2)特開昭60−84381号に記載されているM(II)X2・aM(II)X′2:xEu2+(式中、M(II)はBa、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;X及びX′はCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X′であり;そしてaは0.1≦a≦10.0、xは0<x≦0.2である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物蛍光体;また、この蛍光体には以下のような添加物が含まれていてもよい。
【0039】
a)特開昭60−166379号に記載されているM(I)X′、式中、M(I)はRb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;X′はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
b)特開昭60−221483号に記載されているKX″、MgX′″2、M(III)X″″3、式中、M(III)はSc、Y、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり;X″、X′″及びX″″は何れもF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
c)特開昭60−228592号に記載されているB、特開昭60−228593号に記載されているSiO2、P25等の酸化物、特開昭61−120882号に記載されているLiX″、NaX″、式中、X″はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
d)特開昭61−120883号に記載されているSiO;特開昭61−120885号に記載されているSnX″2、式中、X″はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
e)特開昭61−235486号に記載されているCsX″、SnX′″2、式中、X″及びX′″はそれぞれF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである;さらに、特開昭61−235487号に記載されているCsX″、Ln3+、式中、X″はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;LnはSc、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素である。
【0040】
(3)特開昭55−12144号に記載されているLnOX:xA(式中、LnはLa、Y、Gd、及びLuのうち少なくとも一つ;XはCl、Br、及びIのうち少なくとも一つ;AはCe及びTbのうち少なくとも一つ;xは、0<x<0.1である)の組成式で表される希土類元素賦活希土類オキシハライド蛍光体。
【0041】
(4)特開昭58−69281号に記載されているM(II)OX:xCe(式中、M(II)はPr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化金属であり;XはCl、Br、及びIのうち少なくとも一つであり;xは0<x<0.1である)の組成式で表されるセリウム賦活三価金属オキシハライド蛍光体。
【0042】
(5)特開昭62−25189号に記載されているM(I)X:xBi(式中、M(I)はRb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてxは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体。
【0043】
(6)特開昭60−141783号に記載されているM(II)5(PO43X:xEu2+(式中、M(II)はCa、Sr及びBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロリン酸塩蛍光体。
【0044】
(7)特開昭60−157099号に記載されているM(II)2BO3X:xEu2+(式中、M(II)はCa、Sr及びBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロホウ酸塩蛍光体。
【0045】
(8)特開昭60−157100号に記載されているM(II)2(PO43X:xEu2+(式中、M(II)はCa、Sr及びBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロリン酸塩蛍光体。
【0046】
(9)特開昭60−217354号に記載されているM(II)HX:xEu2+(式中、M(II)はCa、Sr及びBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属水素化ハロゲン化物蛍光体。
【0047】
(10)特開昭61−21173号に記載されているLnX3・aLn′X′3:xCe3+、(式中、Ln及びLn′はそれぞれY、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;X及びX′はそれぞれF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X′であり;そしてaは0.1<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物蛍光体。
【0048】
(11)特開昭61−21182号に記載されているLnX3・aM(I)X′3:xCe3+、(式中、LnはY、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;M(I)はLi、Na、K、Cs及びRbからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;X及びX′はそれぞれCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物系蛍光体。
【0049】
(12)特開昭61−40390号に記載されているLnPO4・aLnX3:xCe3+、(式中、LnはY、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;XはF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0.1≦a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類ハロ燐酸塩蛍光体。
【0050】
(13)特開昭61−236888号に記載されているCsX:aRbX′:xEu2+、(式中、X及びX′はそれぞれCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活ハロゲン化セシウム・ルビジウム蛍光体。
【0051】
(14)特開昭61−236890号に記載されているM(II)X2・aM(I)X′:xEu2+、(式中、M(II)はBa、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;M(I)はLi、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;X及びX′はそれぞれCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0.1≦a≦20.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活複合ハロゲン化物蛍光体。
【0052】
上記の輝尽性蛍光体のうちでも、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する希土類元素賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体、及びヨウ素を含有するビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体が、高輝度の輝尽発光を示すため好ましく、特に、輝尽性蛍光体がEu賦活BaFIであることが好ましい。
【0053】
〔高分子樹脂〕
本発明に係る輝尽性蛍光体は、高分子樹脂に分散された形態で輝尽性蛍光体層中に含有されていることが特徴である。
【0054】
本発明で用いることのできる高分子樹脂としては、公知の高分子樹脂を併せて用いることができ、例えば、ポリエステル、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。中でも本発明では主鎖にウレタン結合を有する高分子樹脂が好ましい。
【0055】
〔主鎖にウレタン結合を有する高分子樹脂〕
主鎖にウレタン結合を有する高分子樹脂は、一般にウレタン樹脂と総称され、樹脂構造中に、イソシアネート基の活性水素化合物に対する反応性を利用したポリイソシアネートとポリオール等の活性化合物との重付加反応によって得られるウレタン結合や、ウレア(尿素)結合、ビューレット・アロファネート結合等のイソシアネート基と活性水素の反応に起因する結合、活性水素化合物分子内に含まれるエステル結合、エーテル結合、アミド結合、及び、イソシアネート基同士の反応で生成するウレトジオン、イソシアヌレート、カルボジイミド等をも含む高分子化合物である。
【0056】
一般的にポリウレタン樹脂は、分子内に存在する凝集エネルギーの大きいウレタン結合やウレア結合等による分子間2次結合のため、機械的特性、耐磨耗性、耐久性、耐薬品性に優れた性能を持っている。また、ポリイソシアネート、活性水素化合物等の使用原料の種類、組成比反応条件等をコントロールすることで大きく性能を変化することができる。
【0057】
ポリウレタン樹脂の合成に用いられるポリイソシアネートとしては、次のようなものが挙げられるが、これに限定されるものではない。トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナトフェニル)チオフォスフェート、ウレタン変成トルエンジイソシアネート、アロファネート変成トルエンジイソシアネート、ビウレット変成トルエンジイソシアネート、イソシアヌレート変成トルエンジイソシアネート、ウレタン変成ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変成ジフェニルメタンジイソシアネート、ウレトニミン変成ジフェニルメタンジイソシアネート、アシル尿素変成ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート等。
【0058】
これらのイソシアネート化合物は単品で用いてもよく、また、あらかじめ複数の種類のポリイソシアネートの反応物、また、メタノールやエタノールのエチレンオキシド付加物とポリイソシアネートの反応物、また、1分子中に2個以上の活性水素を有する化合物とポリイソシアネートとの反応によって得られる遊離イソシアネート基を有する化合物として用いてもよい。
【0059】
ポリウレタン樹脂の具体的な合成法は、特開平5−127306号、同6−67328号、同6−293821号、同4−96919号、特開昭58−63716号、同58−80320号、同63−301251号、同56−151753号、特開平2−269723号、同7−10950号等に詳しく記載されている。また、ギュンター オーテル著「ポリウレタンハンドブック」(1985)、今井嘉夫著「ポリウレタンフォーム」(1987)、技術情報協会刊「水系塗料とコーティング技術」(1992)等にも詳しいポリウレタン合成法の記載がある。
【0060】
市販されているポリウレタン樹脂としては、例えば、第一工業製薬(株)製スーパーフレックスシリーズ107、110、126、150、160、190、300、361、410、460、750、820、スーパーフレックスEシリーズ E−2000、E−2500、E−4500。武田薬品工業(株)製タケラックWシリーズ W−6015、W−621、W−511、XW−75−P15、W−512A、W−635、W−7004、XW−97−W6、AW−605、ACW−54HD、シラノール基を含有したタケラックXWシリーズ、大日本インキ化学工業(株)製パンデックスシリーズ、日本ポリウレタン工業(株)製ニッポランシリーズ等が挙げられる。また、熱反応型水系ポリウレタン樹脂としては、第一工業製薬(株)製エラストロンシリーズ、武田薬品(株)製タケネートWBシリーズ WB−700、WB−710、WB−720、WB−730、WB−920等が挙げられる。これらのうち、本発明ではMDI骨格を持つものが特に好ましく、その一例として日本ポリウレタン工業(株)製ニッポラン2304等が挙げられる。
【0061】
放射線画像変換パネルの製造には輝尽性蛍光体層塗布液を使用する。これは、適当な有機溶媒中に高分子樹脂と輝尽性蛍光体粒子とを添加し、例えば、ディスパーザーやボールミル等を使用して、攪拌、混合して、高分子樹脂中に輝尽性蛍光体が均一に分散するようにして調製する。輝尽性蛍光体層塗布液の調製に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライド等の塩素原子含有炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレン等の芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステル等のエーテル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0062】
なお、輝尽性蛍光体層塗布液には、必要に応じて、塗布液中における輝尽性蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、あるいはパネル形成後の輝尽性蛍光体層中における高分子樹脂と輝尽性蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤等種々の添加剤が混合されてもよい。
【0063】
分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤等を挙げることができる。また、可塑剤の例としては、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニル等の燐酸エステル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチル等のフタル酸エステル、グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタルブチル等のグリコール酸エステル、トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールと琥珀酸とのポリエステル等のポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステル等を挙げることができる。
【0064】
輝尽性蛍光体層塗布液の調製は、通常、ボールミル、サンドミル、アトライター、三本ロールミル、高速インペラー分散機、Kadyミル、及び超音波分散機等の分散装置を用いて行なわれる。調製された塗布液は、例えば、ドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター、押し出しコーター等の公知の塗布コーターを用いて、支持体上に塗設した後、乾燥することにより、下引き層上への輝尽性蛍光体層の形成が完了する。
【0065】
本発明の放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層の膜厚は、目的とする放射線画像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類、高分子樹脂と輝尽性蛍光体との混合比等によって異なるが、10〜1000μmの範囲から選ばれるのが好ましく、10〜500μmの範囲から選ばれるのがより好ましい。
【0066】
支持体上に輝尽性蛍光体層が塗設された蛍光体シートは、所定の大きさに断裁される。断裁に当たっては、一般のどのような方法でも可能であるが、作業性、精度の面から化粧断裁機、打ち抜き機等が望ましい。
【0067】
本発明の放射線画像変換パネルには、輝尽性蛍光体層の表面を物理的、化学的に保護するための保護膜(保護フィルムともいう)を設けることが好ましく、それらの構成は目的、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0068】
本発明の放射線画像変換パネルに設ける保護層としては、ASTMD−1003に記載の方法により測定したヘイズ率が、5%以上60%未満の励起光吸収層を備えたポリエステルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフィルム、セルロースアセテートフィルム等が使用できるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルム等の延伸加工されたフィルムが、透明性、強さの面で保護層として好ましく、さらには、これらのポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム上に金属酸化物、窒化珪素等の薄膜を蒸着した蒸着フィルムが防湿性の面からより好ましい。
【0069】
保護層で用いるフィルムのヘイズ率は、使用する樹脂フィルムのヘイズ率を選択することで容易に調整でき、また任意のヘイズ率を有する樹脂フィルムは工業的に容易に入手することができる。放射線画像変換パネルの保護フィルムとしては、光学的に透明度の非常に高いものが想定されている。そのような透明度の高い保護フィルム材料として、ヘイズ値が2〜3%の範囲にある各種のプラスチックフィルムが市販されている。本発明の効果を得るために好ましいヘイズ率としては5%以上60%未満であり、さらに好ましくは10%以上50%未満である。ヘイズ率が5%未満では、画像ムラや線状ノイズを解消する効果が低く、また60%以上では鮮鋭性の向上効果が損なわれ、好ましくない。
【0070】
本発明において、保護層で用いるフィルムは、必要とされる防湿性に合わせて、樹脂フィルムや樹脂フィルムに金属酸化物等を蒸着した蒸着フィルムを複数枚積層することで最適な防湿性とすることができ、輝尽性蛍光体の吸湿劣化防止を考慮して、透湿度は少なくとも50g/m2・day以下であることが好ましい。樹脂フィルムの積層方法としては、特に制限はなく、公知の何れの方法を用いてもよい。
【0071】
また、積層された樹脂フィルム間に励起光吸収層を設けることによって、励起光吸収層が物理的な衝撃や化学的な変質から保護され安定したプレート性能が長期間維持でき好ましい。また、励起光吸収層は複数箇所設けてもよいし、積層するための接着剤層に色剤を含有して、励起光吸収層としてもよい。
【0072】
保護フィルムは、輝尽性蛍光体層に接着層を介して密着していてもよいが、蛍光体面を被覆するように設けられた構造(以下、封止または封止構造ともいう)であることがより好ましい。蛍光体プレートを封止するに当たっては、公知の何れの方法でもよいが、防湿性保護フィルムの蛍光体シートに接する側の最外層樹脂層を熱融着性を有する樹脂フィルムとすることは、防湿性保護フィルムが融着可能となり蛍光体シートの封止作業が効率化される点で、好ましい形態の1つである。さらには、蛍光体シートの上下に防湿性保護フィルムを配置し、その周縁が前記蛍光体シートの周縁より外側にある領域で、上下の防湿性保護フィルムをインパルスシーラー等で加熱、融着して封止構造とすることで、蛍光体シートの外周部からの水分進入も阻止でき好ましい。また、さらには、支持体面側の防湿性保護フィルムが1層以上のアルミフィルムをラミネートしてなる積層防湿フィルムとすることで、より確実に水分の進入を低減でき、またこの封止方法は作業的にも容易であり好ましい。上記インパルスシーラーで加熱融着する方法においては、減圧環境下で加熱融着することが、蛍光体シートの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。
【0073】
防湿性保護フィルムの蛍光体面が接する側の熱融着性を有する最外層の樹脂層と蛍光体面は、接着していても、接着していなくてもよい。ここでいう接着していない状態とは、微視的には蛍光体面と防湿性保護フィルムとが点接触していても、光学的、力学的にはほとんど蛍光体面と防湿性保護フィルムは不連続体として扱える状態のことである。また、上記の熱融着性を有する樹脂フィルムとは、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムのことで、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0074】
〔支持体〕
本発明の放射線画像変換パネルに用いられる支持体としては各種高分子材料が用いられる。特に情報記録材料としての取り扱い上可撓性のあるシートあるいはウェブに加工できるものが好適であり、この点からいえばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルムが好ましい。
【0075】
また、これら支持体の層厚は用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80〜1000μmであり、取り扱い上の点から、さらに好ましくは80〜500μmである。これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0076】
また、支持体の反射性を上げ、放射線画像変換パネルの輝度を向上させる観点からは、気泡を含有するポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。気泡を含有するポリエチレンテレフタレートは、特開平3−76727号及び同6−226894号に記載の手法にてポリエチレンテレフタレート中に気泡を含有させて輝尽蛍光に対する反射能を高め、放射線画像変換パネルの輝度が向上した支持体が作製できる。また、市販品としては、東レ(株)社製E60L等の気泡を含有するポリエチレンテレフタレートがある。
【0077】
また、前記気泡を含有するポリエチレンテレフタレート支持体の厚みは一般的には80〜1000μmであり、取り扱い上の点から、好ましくは50〜500μmである。
【0078】
これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、反射層や、光吸収層及び輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0079】
さらに、これら支持体は、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的で輝尽性蛍光体層が設けられる面に下引層を設けてもよい。
【0080】
下引き層は主として架橋剤により架橋できる高分子樹脂と架橋剤とを含有している。
【0081】
下引き層に含有される高分子樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニールブチラール、ニトロセルロース等を挙げることができ、その平均ガラス転移点温度(Tg)が25℃以上であることが好ましく、さらに25〜200℃のTgを有することが好ましい。
【0082】
下引き層に含有される架橋剤としては、特に制限はなく、例えば、多官能イソシアネート及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、アミノ樹脂及びその誘導体等を挙げることができる。特に多官能イソシアネート化合物を用いることが好ましく、例えば、日本ポリウレタン社製のコロネートHX、コロネート3041等が挙げられる。
【0083】
下引き層は、例えば以下に示す方法により支持体上に形成することができる。
【0084】
まず、上記の高分子樹脂と架橋剤を適当な溶剤、例えば蛍光体層塗布液の調製で用いる溶剤に添加し、これを充分に混合して下引き層塗布液を調製する。
【0085】
架橋剤の使用量は、目的とする放射線画像変換パネルの特性、蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂の種類等により異なるが、蛍光体層の支持体に対する接着強度の維持を考慮すれば、高分子樹脂に対して、50質量%以下の比率で添加することが好ましく、特に15〜50質量%であることが好ましい。
【0086】
下引き層の膜厚は、目的とする放射線画像変換パネルの特性、蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂及び架橋剤の種類等により異なるが、一般には3〜50μmであることが好ましく、特に5〜40μmであることが好ましい。
【0087】
支持体上に下引き層を塗設した後、輝尽性蛍光体層を塗布する前に、下引き層に含有した高分子樹脂と架橋剤との反応をより完遂させるため、40〜150℃で2〜100時間の熱処理を行うことが好ましい。熱処理方法としては、特に制限はなく、作製したシート状、ロール状等の下引き層塗設済み試料が完全に収納でき、かつ温度、湿度が制御できる恒温室であれば何れの方法を用いてもよい。熱処理条件としては、40〜150℃で2〜100時間であればよく、好ましくは55〜100℃、5〜50時間である。
【0088】
支持体上に下引き層を形成した後、ロール状で積層した形態、あるいはシート状で積層した形態で上記加熱処理を行う際に、各積層試料間に、保護シートを挿入し、加熱処理後に保護シートを取り除いた後、蛍光体層を塗設するのがよい。この方法を採ることにより、加熱処理時の下引き層と支持体裏面とのブロッキングを効果的に防止することができ好ましい。
【0089】
本発明で用いることのできる保護シートとして、用いる材料に特に制限はなく、接着あるいは融着が防止でき、かつ保護シートと下引き層あるいは支持体裏面との接着力が極めて弱いものであれば良く、例えば、前述の保護フィルムとして用いる各種樹脂フィルムを適宜選択して用いることができる。また、保護シートには、加熱処理後の剥離を容易とするため、離型剤が塗布されていることが好ましい。
【0090】
本発明では、下引き層に限定することなく他の層にも上記の架橋剤を用いることのできる。
【0091】
本発明において、高分子樹脂と架橋剤を適当な溶剤、例えば、輝尽性蛍光体層塗布液の調製で用いる溶剤に添加し、これを充分に混合して塗布液を調製する。
【0092】
架橋剤の使用量は、目的とする放射線画像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂の種類等により異なるが、輝尽性蛍光体層の支持体に対する接着強度の維持を考慮すれば、高分子樹脂に対して、50質量%以下の比率で添加することが好ましく、特に15〜50質量%であることが好ましい。
【0093】
本発明では、蛍光体シートを得た段階で圧縮処理を行った方がよい。圧縮処理とは、支持体あるいは下引層を設けた支持体上に輝尽性蛍光体層塗布液を塗設し、所望の条件で乾燥させて、輝尽性蛍光体層を形成して蛍光体シートとした後、例えば、通常直径1〜100cmの平滑性の高いニップローラーとそれに対面する加熱可能なローラーの間を温度と圧力をかけて処理することを指す。この圧縮処理を施すことにより、第1の効果は輝尽性蛍光体層中における輝尽性蛍光体の充填率を向上させることができ、高い発光輝度と鮮鋭性の向上を達成でき、第2の効果としては、加圧、加熱条件を特定の条件とすることにより、圧縮処理時の蛍光体シートの高い均一性を得ることができる。
【0094】
カレンダーロールを用いた圧縮方法に関しては、特にその方法に制限はないが、例えば、「樹脂加工技術ハンドブック(高分子学会編):日刊工業新聞社編、1965年6月12日刊」に記載されている方法を参照して適用することができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0096】
実施例1
《放射線画像変換パネルの作製》
(輝尽性蛍光体の調製)
ユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウムの輝尽性蛍光体前駆体を合成するために、BaI2水溶液(3.6mol/L)2780mlとEuI3水溶液(0.15mol/L)27mlを反応器に入れた。この反応器中の反応母液を撹拌しながら83℃で保温した。次いで、弗化アンモニウム水溶液(8mol/L)322mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈澱物を生成させた。注入終了後も保温と撹拌を2時間続けて沈澱物の熟成を行なった。次に、沈澱物をろ別後、エタノールで洗浄した後、真空乾燥させてユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウムの結晶を得た。焼成時の焼結により粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するために、アルミナの超微粒子粉体を0.2質量%添加し、ミキサーで充分撹拌して結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。これを石英ボートに充填して、チューブ炉を用いて水素ガス雰囲気下で、850℃で2時間焼成してユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウム蛍光体粒子を得た。次に、分級して平均粒径4μmの蛍光体粒子を調製した。
【0097】
(蛍光体層塗布液1の調製)
上記調製したユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウム蛍光体480gと、樹脂量/(蛍光体量+樹脂量)が25体積%(固形比)となる量の、Tgが30℃のポリウレタン樹脂(ニッポラン2304、MDI系、固形分35%、日本ポリウレタン工業(株)製)とをシクロヘキサノン:メチルエチルケトン:トルエンの6:2:2混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散して、粘度3〜4Pa・sの蛍光体層塗布液1を調製した。なお、粘度はビスメトロン回転粘度計を用い25℃で測定した。
【0098】
(蛍光体層塗布液2〜6の調製)
蛍光体層塗布液1の調製において、蛍光体層塗布液の降伏値が表1の値になるようにポリウレタン樹脂の有無、種類、シクロヘキサノン:メチルエチルケトン:トルエンの6:2:2混合溶媒の量を変えて、他は同様にして蛍光体層塗布液2〜6を調製した。蛍光体層塗布液の降伏値は、ハーケ社製レオストレスRS1を用いて前述の方法で測定した。
【0099】
(下引き層塗布液の調製)
Tgが30℃のポリエステル樹脂(バイロン53SS、東洋紡績(株)社製)100質量部と架橋剤として多官能イソシアネート化合物であるコロネートHX(日本ポリウレタン工業(株)製)3質量部とを混合し、この混合物をメチルエチルケトン:トルエンの1:1混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散して、粘度500mPa・sの下引き層塗布液を調製した。
【0100】
(蛍光体シート1の作製)
〈下引き層の塗布〉
厚さ250μmのカーボン錬り込みをした黒色ポリエチレンテレフタレート支持体上に、上記調製した下引き層塗布液を、乾燥膜厚が30μmとなるようにナイフコーターを用いて塗布した後、乾燥して下引き層付き支持体を作製した。
【0101】
〈蛍光体層の塗布〉
下引き層付き支持体上に前記調製した蛍光体層塗布液1を乾燥膜厚が180μmになるように塗布、乾燥して、蛍光体シート1を作製した。
【0102】
(蛍光体シート2〜6の作製)
上記蛍光体シート1の作製において、蛍光体層塗布液1を蛍光体層塗布液2〜6に変更した他は同様にして蛍光体シート2〜6を作製した。
【0103】
《防湿性保護フィルムの作製》
上記作製した各蛍光体シートの蛍光体層塗設面側の保護フィルムとして下記構成(A)のものを使用した。
【0104】
構成(A)
VMPET12//VMPET12//PET12//シーラントフィルム
PET:ポリエチレンテレフタレート
シーラントフィルム:熱融着性フィルムでCPP(キャステングポリプロピレン)またはLLDPE(低密度線状ポリエチレン)を使用
VMPET:アルミナ蒸着PET(市販品:東洋メタライジング社製)
各樹脂フィルムの後ろに記載の数字は、フィルムの膜厚(μm)を示す。
【0105】
上記「//」はドライラミネーション接着層で、接着剤層の厚みが2.5μmであることを意味する。使用したドライラミネーション用の接着剤は2液反応型のウレタン系接着剤を用いた。この時、使用した接着剤溶液にあらかじめメチルエチルケトンに分散溶解させた有機系青色着色剤(ザボンファーストブルー3G、ヘキスト社製)を添加しておくことで、接着剤層の全てを励起光吸収層とした。
【0106】
蛍光体シートの支持体裏面側の保護フィルムは、シーラントフィルム/アルミ箔フィルム9μm/ポリエチレンテレフタレート(PET)188μmの構成のドライラミネートフィルムとした。また、この場合の接着剤層の厚みは1.5μmで2液反応型のウレタン系接着剤を使用した。
【0107】
《放射線画像変換パネル1〜6の作製》
前記作製した各蛍光体シートを、各々一辺が45cmの正方形に断裁した後、上記作製した防湿性保護フィルムを用いて、減圧下で周縁部をインパルスシーラを用いて融着、封止して、放射線画像変換パネル1〜6を作製した。なお、融着部から蛍光体シート周縁部までの距離は1mmとなるように融着した。融着に使用したインパルスシーラーのヒーターは8mm幅のものを使用した。
【0108】
《評価》
以上のようにして作製した各蛍光体シート及び各放射線画像変換パネルを用いて、以下の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0109】
(膜厚分布)
作製した蛍光体シートの塗布開始から150mまでについて、塗布膜の厚さの分布測定を行い、下記のランクに従い評価した。
【0110】
膜厚の厚さの分布はアンリツ(株)製のフィルムシックネステスタを用い、塗布幅手500mm間を5mm間隔で測定し、以下の計算式より求めた。
【0111】
膜厚の厚さの分布(%)=(最大値−最小値)/平均値×100
○:膜厚の厚さの分布4%未満
△:膜厚の厚さの分布4〜6%
×:膜厚の厚さの分布6%を超える
(塗布性)
作製した蛍光体シートの塗布開始から150mまでについて、目視による筋故障の有無及び塗布ムラを下記のランクに従い評価した。
【0112】
〈筋故障〉
○:塗布開始から150mまでに筋故障なし
△:塗布開始から50mで筋故障が認められる
×:塗布開始から50m未満で筋故障が認められる
〈塗布ムラ〉
○:塗布ムラの発生なし
△:部分的に塗布ムラの発生が認められる
×:塗布液の脈動の間隔に合わせて塗布ムラの発生が認められる
(粒状性)
作製した放射線画像変換パネルに管電圧80kVpのX線を均一に照射した後、蛍光体層塗設面側から、He−Neレーザ光(633nm)で走査して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光してその画像を読み取り、さらにその画像をレーザー書き込み式のフィルムプリンタを用いて出力し、その画像粒状度(ざらつき感)を下記の基準に則り、目視により3段階評価を行なった。なお、△以下は実用上X線による診断に適さないものと判断した。
【0113】
○:ざらつき感がなく均一なベタ画像である
△:粒状感があり、均一感が損なわれている
×:目視で明らかにざらついており、均一感がない
【0114】
【表1】

【0115】
表1から明らかなように、輝尽性蛍光体層塗布液の降伏値が1〜50Paである本発明の試料は、比較例に対して膜厚分布が均一で、塗布性(筋故障及び塗布ムラ)が良好で、粒状性が優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルの製造方法において、降伏値が1〜50Paである輝尽性蛍光体層塗布液を支持体上に塗布、乾燥することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項2】
前記輝尽性蛍光体がEu賦活BaFIであることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項3】
前記輝尽性蛍光体層塗布液が高分子樹脂を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項4】
前記高分子樹脂が主鎖にウレタン結合を有することを特徴とする請求項3に記載の放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線画像変換パネルの製造方法により得られたことを特徴とする放射線画像変換パネル。

【公開番号】特開2006−10548(P2006−10548A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189441(P2004−189441)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】