説明

放射線画像撮影装置

【課題】剥がれを防止しフレキシブル性を損なうことなく、又浮遊容量に起因する不具合を解決しつつ、フレキシブル基板の移動による接触や擦れに伴う帯電を抑制することができる放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線画像撮影装置において、放射線画像検出器14は、放射線検出パネル142と、信号処理基板144と、フレキシブル基板182と、筐体140とを備えている。フレキシブル基板182には固定電位188に接続されたシールド層182Mが配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置に関し、特に放射線検出パネルと信号処理基板とをフレキシブル基板によって接続する放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、放射線を直接デジタルデータに変換することができるFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が実用化されている。この放射線検出器を用いた放射線画像撮影装置においては、従来のX線フィルムやイメージングプレートを用いた放射線画像撮影装置に比べて、即時に画像を確認することができる特徴がある。また、連続的に放射線画像の撮影を行う透視撮影(動画撮影)を行うことができる特徴がある。
【0003】
この種の放射線検出器には種々のタイプが提案されている。例えば、間接変換方式を採用する放射線検出器は、シンチレータを用いて放射線を光に変換し、変換された光をフォトダイオード等のセンサ部によって電荷に変換し、この電荷を蓄積する。蓄積された電荷はX線撮影によって得られた撮影画像情報である。シンチレータにはCsI:Tl、GOS(GdS:Tb)等が使用されている。放射線画像撮影装置においては、放射線検出器に蓄積された電荷がアナログ信号として読み出され、このアナログ信号はアンプによって増幅された後にアナログデジタル(A/D)変換部によってデジタルデータに変換される。
【0004】
放射線画像検出器は、センサ部と、センサ部の駆動制御を行いセンサ部から得られた撮影画像情報の信号処理を行う信号処理基板とを備えている。センサ部に対して信号処理基板は対向して配置され、センサ部と信号処理基板との間はフレキシブル基板を用いて接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−264250号公報
【特許文献2】特開平5−259591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
可搬型の放射線画像検出器(電子カセッテ)においては、取り扱いが便利であることから高い需要性がある。上記特許文献1には、放射線の照射の開始や停止等を検出し、放射線の発生タイミングに対する同期制御を必要としないX線撮影装置が開示されている。この種のX線撮影装置は、X線撮影中やその直前に、被検体(患者)の位置調整や姿勢調整に伴い、被検体との接触や衝突を生じる。このとき、センサ部及び信号処理基板を収納する筐体の内壁にフレキシブル基板が接触し又は擦れを生じ、フレキシブル基板の配線に帯電が生じ、カウンター(補償)電荷が生じる。このカウンター電荷は、フレキシブル基板の配線に伝送されるアナログ信号に変化を及ぼし、X線撮影画像情報の誤検出を誘発する。アンプを実装するフレキシブル基板においては、アンプによりアナログ信号電圧に変換される前のアナログ信号電荷が、帯電による影響を受け易い。
【0007】
また、放射線の発生タイミングに対する同期制御を必要とするX線撮影装置においても同様であり、フレキシブルケーブル内の配線に帯電が生じると、X線撮影画像情報の読み出し時のアナログ信号に変化が生じる。このアナログ信号の変化はX線撮影画像のノイズになる。
【0008】
上記特許文献2には、プラスチックフィルムに銅箔を貼り付けたフレキシブル基板が、又プラスチックフィルムに帯電防止層を形成し、この帯電防止層を保護層により覆ったフレキシブル基板が開示されている。これらのフレキシブル基板は帯電を抑制する点において有効である。
【0009】
しかしながら、前述の銅箔を貼り付けたフレキシブル基板においては、筐体に接触すると銅箔に剥がれを生じ、帯電抑制効果を持続することが難しい。銅箔の膜厚を厚くすれば剥がれ難くなるが、銅箔の膜厚の増加は、剛性を高め、フレキシブル基板のフレキシブル性を損なう。
【0010】
一方、前述の帯電防止層を形成したフレキシブル基板においては、帯電した電荷の減衰時間が長く、減衰するまでに電荷は配線に付加された浮遊容量となる。この浮遊容量は、フレキシブル基板の配線に伝送されるアナログ信号に変化を及ぼし、X線撮影画像情報の誤検出を誘発する。また、浮遊容量は、時定数に変化を及ぼし、配線に伝送されるアナログ信号の遅延を誘発する。
【0011】
本発明は、上記事実を考慮し、上記不具合を解決しつつ、フレキシブル基板の移動による接触や擦れに伴う帯電を抑制することができる放射線画像撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の放射線画像撮影装置は、放射線を電気信号に変換する光電変換素子を有する放射線検出パネルと、放射線検出パネルに対向して配設され、放射線検出パネルによって得られた電気信号の信号処理を行う信号処理基板と、放射線検出パネルに一端を電気的に接続し、信号処理基板に他端を電気的に接続するとともに、絶縁性樹脂フィルムにより形成されたベースフィルムと、ベースフィルム上に配設された配線と、配線上に配設された絶縁性樹脂により形成されたコート層とを有し、ベースフィルムと配線との間及び配線とコート層との間のいずれか一方に、配線との間に絶縁体を介在させ、固定電位に接続されるシールド層を有するフレキシブル基板と、放射線検出パネル、信号処理基板及びフレキシブル回路基板を収納する筐体と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載の放射線画像撮影装置においては、ベースフィルムの外側に発生する静電気を固定電位に接続されるシールド層によって打ち消し、配線にノイズが乗ることを抑制することができるので、フレキシブル基板の帯電を防止することができる。加えて、シールド層は、ベースフィルムと配線との間又は配線とコート層との間に介在されるので、フレキシブル基板と筐体との接触や擦れに対して剥がれ難い。従って、必要以上にシールド層の膜厚を厚くする必要がないので、フレキシブル基板のフレキシブル性は損なわれない。更に、シールド層は固定電位に接続されているので、帯電によって発生した電荷は即座に固定電位に吸収され、浮遊容量の発生を抑制することができる。従って、放射線撮影画像情報の誤検出を防止することができ、又放射線画像情報の伝送遅延を防止することができる。
【0014】
請求項2に記載の放射線画像撮影装置は、請求項1に記載の放射線画像撮影装置において、シールド層は、ベースフィルム上に配設され、固定電位に接続される配線に接続されていることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の放射線画像撮影装置においては、フレキシブル基板の配線からシールド層に固定電位を供給することができる。
【0016】
請求項3に記載の放射線画像撮影装置は、請求項1に記載の放射線画像撮影装置において、シールド層は固定電位取出用端子を有し、固定電位取出用端子は信号処理基板の固定電位に接続されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の放射線画像撮影装置においては、信号処理基板からシールド層に固定電位を供給することができる。
【0018】
請求項4に記載の放射線画像撮影装置は、請求項1に記載の放射線画像撮影装置において、シールド層は固定電位取出用端子を有し、固定電位取出用端子は放射線検出パネルの固定電位に接続されていることを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の放射線画像撮影装置においては、放射線検出パネルからシールド層に固定電位を供給することができる。
【0020】
請求項5に記載の放射線画像撮影装置は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置において、シールド層は、放射線検出パネル及び信号処理基板に接続する端子領域を除いて配線の全域に配設されていることを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の放射線画像撮影装置においては、配線の全域にシールド層を配設しているので、ベースフィルムの外側の大半の領域に発生する静電気をシールド層によって打ち消し、配線にノイズが乗ることを抑制することができるので、フレキシブル基板の帯電を防止することができる。
【0022】
請求項6に記載の放射線画像撮影装置は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置において、シールド層の厚さは配線の厚さに比べて厚く設定されていることを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載の放射線画像撮影装置においては、配線に比べてシールド層が厚く形成され、シールド層の電気抵抗が低く設定されている。従って、ベースフィルムの外側に発生する静電気を即座に打ち消し、配線にノイズが乗ることを抑制することができるので、フレキシブル基板の帯電を防止することができる。
【0024】
請求項7に記載の放射線画像撮影装置は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置において、シールド層はベースフィルムと配線との間及び配線とコート層との間の双方に備えたことを特徴とする。
【0025】
請求項7に記載の放射線画像撮影装置においては、配線の上面側及び下面側の両面にシールド層を備えているので、静電気の打ち消し効果を高め、フレキシブル基板の帯電をより一層防止することができる。
【0026】
請求項8に記載の放射線画像撮影装置は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置において、シールド層は配線と同一の導電性材料により製作されていることを特徴とする。
【0027】
請求項8に記載の放射線画像撮影装置においては、シールド層が配線と同一の導電性材料により製作されているので、シールド層を簡易に製作することができる。
【0028】
請求項9に記載の放射線画像撮影装置は、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置において、フレキシブル基板は、ベースフィルムに形成された素子開口内に半導体素子を実装したテープキャリアパッケージ型回路基板であることを特徴とする。
【0029】
請求項9に記載の放射線画像撮影装置においては、テープキャリアパッケージ型回路基板の帯電を防止することができる。
【0030】
請求項10に記載の放射線画像撮影装置は、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置において、フレキシブル基板は、ベースフィルム上に半導体素子を実装したチップオンフィルム型回路基板であることを特徴とする。
【0031】
請求項10に記載の放射線画像撮影装置においては、チップオンフィルム型回路基板の帯電を防止することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は上記構成としたので、剥がれを防止しフレキシブル性を損なうことなく、又浮遊容量に起因する不具合を解決しつつ、フレキシブル基板の移動による接触や擦れに伴う帯電を抑制することができる放射線画像撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1に係る放射線画像撮影装置の全体構成を説明する概念図である。
【図2】実施例1に係る放射線画像撮影装置の放射線画像検出器(電子カセッテ)の筐体の一部を便宜的に取り除いた斜視図である。
【図3】実施例1に係る放射線画像撮影装置の全体のブロック回路図である。
【図4】図3に示す放射線検出パネルの検出素子及び信号処理部の要部の回路図である。
【図5】図3に示す放射線検出パネルの要部(光電変換素子及び蛍光体)の装置構造を示す模式的断面図である。
【図6】図3に示す放射線検出パネルの他の要部(TFT及び光電変換素子)の装置構造を示す模式的断面図である。
【図7】図2に示す放射線画像検出器の具体的な構造を示す断面図である。
【図8】図7に示す放射線画像検出器のフレキシブル基板の具体的な構造を示す要部断面図である。
【図9】図8に示すフレキシブル基板の平面図である。
【図10】実施例1に係る、放射線照射前後にフレキシブル基板の配線に流れる電荷量と、フレキシブル基板に帯電した電荷量との関係を示すグラフである。
【図11】(A)−(C)は実施例1に係る放射線画像検出器の筐体の構造を示す斜視図である。
【図12】実施例1の変形例1に係る放射線画像検出器のフレキシブル基板の具体的な構造を示す要部断面図である。
【図13】実施例1の変形例2に係る放射線画像検出器のフレキシブル基板の具体的な構造を示す要部断面図である。
【図14】本発明の実施例2に係る放射線画像撮影装置の放射線画像検出器のフレキシブル基板の具体的な構造を示す要部断面図である。
【図15】実施例2の変形例1に係る放射線画像検出器のフレキシブル基板の具体的な構造を示す要部断面図である。
【図16】実施例2の変形例2に係る放射線画像検出器のフレキシブル基板の具体的な構造を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施例を説明する。なお、図面において同一機能を有する構成要素には同一符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0035】
(実施例1)
本発明の実施例1は放射線画像撮影装置を構築する可搬型の放射線画像検出器(電子カセッテ)に本発明を適用した例を説明するものである。
【0036】
[放射線画像撮影装置の全体構成]
図1に示すように、実施例1に係る放射線画像撮影装置10は、放射線照射装置12と、放射線画像検出器(電子カセッテ)14と、コンソール16とを備えて構築されている。放射線照射装置12は、放射線Rを発生し、被検体(例えば、放射線画像を撮影する患者)18に放射線Rを照射する。放射線画像検出器14は被検体18を透過した放射線Rによって得られる放射線画像情報を生成する。放射線画像検出器14は持ち運び自在な可搬型である。コンソール16は、放射線照射装置12及び放射線画像検出器14の動作制御を司り、放射線画像検出器14において生成された放射線画像情報を記憶し、放射線画像情報を表示する等の機能を有する。
【0037】
なお、実施例1において、放射線画像検出器14は、放射線画像情報を記憶する機能を備えていても、又備えていなくてもよい。
【0038】
[放射線画像検出器の外観構成]
図2に示すように、放射線画像検出器14は放射線Rの照射方向に所定の厚みを持つ平板形状を有する筐体140を備えている。筐体140は、放射線照射装置12に対面する側の表面に照射面140Aを有し、この照射面140Aを少なくとも放射線Rを透過する材料によって製作している。
【0039】
筐体140の内部には放射線検出パネル142及び信号処理基板144が収納されている。放射線検出パネル142は、照射面140A側つまり放射線照射装置12に対面する側に配設され、信号処理基板144は照射面140Aに対向する非照射面140B側に配設される。放射線検出パネル142は、放射線照射装置12から照射され被検体18を透過した放射線Rから放射線画像情報を生成する機能を有する。信号処理基板144は、放射線検出パネル142の動作制御を司り、放射線検出パネル142において生成された放射線画像情報のコンソール16への送信を行う機能を有する。
【0040】
[放射線画像検出器のシステム構成]
1.放射線検出パネルのシステム構成
図3に示すように、放射線画像検出器14の放射線検出パネル142はTFTマトリックス基板116を備えている。TFTマトリックス基板116は、行方向に延在し列方向に一定間隔において複数本配列されたゲート線110と、列方向に延在し行方向に一定間隔において複数本配列されたデータ線112とを備えている。ゲート線110とデータ線112との交差部には検出素子100が配置されている。検出素子100は、放射線Rから変換された光(放射線画像情報)を検出し、この光を電気信号に変換した後に一時的に蓄積する(記憶する)。
【0041】
検出素子100は、TFT(薄膜トランジスタ)102と光電変換素子106とを備え、TFT102と光電変換素子106との直列回路により構成されている。TFT102は、一方の主電極(ドレイン電極。図6中、符号102E)をデータ線112に接続し、他端(ソース電極。図6中、符号102D)を光電変換素子106の一方の電極(図5中、符号106A)に接続する。TFT102のゲート電極(図6中、符号102A)はゲート線112に接続される。TFT102は、ゲート電極に供給される駆動信号に従って導通動作(ON)と非導通動作(OFF)との切換えを行うスイッチング素子である。光電変換素子106の他方の電極(図5中、符号106E)は固定電位に接続されている。光電変換素子106は、放射線Rから変換された放射線画像情報としての光信号を電気信号に変換し、この電荷として変換された放射線画像情報を一時的に蓄積する。
【0042】
2.信号処理基板のシステム構成
放射線画像検出器14の信号処理基板144は、ゲート線ドライバ部200と、信号処理部202と、温度センサ204と、画像メモリ206と、検出器制御部208と、通信部210と、電源部212と、を備えている。
【0043】
ゲート線ドライバ部200は、TFTマトリックス基板116を延在するゲート線110に接続され、ゲート線110にTFT102の駆動信号を供給する。ゲート線ドライバ部200は、図3中、作図上、TFTマトリックス基板116の一辺(ここでは左辺)に沿ってそれよりも外側に配設されている。実際には、放射線検出パネル142に対向して信号処理基板144が配設されているので、ゲート線ドライバ部200は、TFTマトリックス基板116の一辺に沿ってその非照射面140B側にTFTマトリックス基板116と重複して配設されている。
【0044】
信号処理部202は、TFTマトリックス基板116を延在するデータ線112に接続され、検出素子100から読み出される放射線画像情報をデータ線112を通して取得する。ゲート線ドライバ部200と同様に、信号処理部202は、図3中、作図上、TFTマトリックス基板116の一辺に隣接する他の一辺(ここでは下辺)に沿ってそれよりも外側に配設されている。実際には、放射線検出パネル142に対向して信号処理基板144が配設されているので、信号処理部202は、TFTマトリックス基板116の他の一辺に沿ってその非照射面140B側にTFTマトリックス基板116と重複して配設されている。ゲート線ドライバ部200、信号処理部202以外においても、信号処理基板144に搭載された素子、回路及びシステムは、TFTマトリックス基板116に重複して配設されている。
【0045】
放射線画像が撮影され、放射線検出パネル142に放射線画像情報が蓄積されると、まずゲート線ドライバ部200を用いて1本のゲート線110が選択され、このゲート線110に駆動信号が供給される。駆動信号の供給によってこのゲート線110に接続されたすべての検出素子100のTFT102が導通状態になり、光電変換素子106に一時的に蓄積された放射線画像情報がデータ線112を通して信号処理部202に読み出される。信号処理部202においては、1本のデータ線112毎に対応して設けられたサンプルホールド回路(チャージアンプ。図4中、符号220。)に電荷が蓄積される。
【0046】
信号処理部202は、行方向において順次サンプルホールド回路220を選択し、サンプルホールド回路220に蓄積された放射線画像情報を順次読み出す。1本の選択されたゲート線110に接続されたすべての検出素子100に蓄積された放射線画像情報が読み出されると、ゲート線ドライバ部200は列方向の次段の1本のゲート線110を選択する。同様の処理手順において、信号処理部202は、サンプルホールド回路220を順次選択し、選択されたゲート線110に接続された検出素子100に蓄積された放射線画像情報の読み出しを行う。放射線検出パネル142に蓄積されたすべての放射線画像情報が読み出されると、撮影された二次元の放射線画像が電気信号(電子情報)として取得可能となる。
【0047】
図4に示すように、信号処理部202はサンプルホールド回路220、マルチプレクサ230、アナログデジタル(A/D)変換器232を備えている。サンプルホールド回路220は、データ配線112毎に配設され、オペアンプ220A、コンデンサ220B及びスイッチ220Cを備えている。検出素子100からデータ配線112を通して伝送された放射線画像情報(電荷信号)はサンプルホールド回路220に保持される。サンプルホールド回路220はオペアンプ220A及びコンデンサ220Bによって電荷信号をアナログ信号(電圧信号:放射線画像情報)に変換する。つまり、サンプルホールド回路220は検出素子100に蓄積された電荷を電圧に変換するチャージアンプとしての機能を有する。サンプルホールド回路220のスイッチ220Cは、コンデンサ220Bの電極間に電気的に並列に接続されており、コンデンサ220Bに蓄積された電荷信号の放電を行うリセット回路として使用される。
【0048】
サンプルホールド回路220において変換されたアナログ信号(出力信号)はマルチプレクサ230にシリアルに入力される。このマルチプレクサ230はアナログデジタル変換器232にアナログ信号をシリアルに出力する。アナログデジタル変換器232において、シリアルに入力されたアナログ信号は順次デジタル信号(放射線画像情報)に変換される。
【0049】
図3に示すように、信号処理部202は画像メモリ206に接続されている。信号処理部202のアナログデジタル変換器232においてデジタル信号に変換された放射線画像情報は画像メモリ206にシリアルに記憶される。画像メモリ206は所定枚数分の放射線画像情報を記憶可能な記憶容量を備え、放射線画像の撮影が行われる毎に撮影によって得られた放射線画像情報が画像メモリ206に順次記憶される。
【0050】
検出器制御部208は、ゲート線ドライバ部200、信号処理部202、温度センサ204、画像メモリ206、通信部210、電源部212に接続され、これらの制御を司る。検出器制御部208はマイクロコンピュータを備え、このマイクロコンピュータはCPU(中央演算処理ユニット)208A、メモリ208B及び記憶部208Cを備えて構築されている。メモリ208Bは、放射線画像検出器14の制御を実行する処理プログラム等を格納するROM(Read Only Memory)、各種処理プログラムや処理中のデータ等を一時的に格納するRAM(Random Access Memory)を備えている。記憶部208Cは、画像メモリ206に格納された放射線画像情報等のデータを記憶する不揮発性のフラッシュメモリ等によって構築されている。
【0051】
温度センサ204は放射線画像検出器14の温度、実施例1においては蛍光体148の下面(非照射面140B側の面)の中央部分の温度を測定する。温度センサ204において測定された温度の情報は検出器制御部208に送られる。
【0052】
通信部210は、検出器制御部208からの制御に基づき、外部機器との間において各種情報の送受信を行う。実施例1に係る通信部210は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応した無線通信部であり、無線通信によって各種情報の伝送を行う。具体的には、通信部210は、検出器制御部208とコンソール16との間において放射線画像の撮影に関する制御を行う各種情報の送受信、検出器制御部208からコンソール16への放射線画像情報の送信等を行う。
【0053】
電源部212はゲート線ドライバ部200、信号処理部202、画像メモリ206、検出器制御部208、通信部210の各種回路に電力を供給する。実施例1において、電源部212は放射線画像検出器14の可搬性を高めるためにバッテリ(充電可能な二次電池)を内蔵する。各種回路にはこのバッテリから電力が供給される。バッテリィは、放射線画像検出器14の非使用時等に、図示しない充電器を通して電源に接続され、充電を行う。
【0054】
実施例1に係る放射線画像検出器14は、放射線画像の撮影の開始に同期させてコンソール16から制御信号を受信し動作を開始するのではなく、放射線発生装置12から照射される放射線Rを感知して自動的に動作制御を開始する非同期型(同期フリー型)を採用している。放射線Rの感知には、検出素子100の配列中に埋め込まれこの検出素子100と同一構造を有する感知センサの出力、又は検出素子100の配列外に配置された感知センサの出力に基づき行われる。また、放射線Rの感知は、放射線Rから変換された光を検出するフォトセンサを使用し、このフォトセンサの出力に基づき行ってもよい。なお、本発明は、非同期型を採用する放射線画像検出器14に限定されるものではなく、放射線画像の撮影の開始に同期させてコンソール16から制御信号を受信し動作を開始する同期型を採用する放射線画像検出器14に適用してもよい。
【0055】
[コンソールのシステム構成]
図3に示すように、コンソール16は、サーバコンピュータとして構築され、ディスプレイ161及び操作パネル162を備えている。ディスプレイ161は放射線画像撮影装置10の操作メニュー、撮影された放射線画像等を表示するモニターである。操作パネル162は、複数の操作キー、スイッチ等を備え、各種情報や操作指示の入力を行う。コンソール16は、CPU163と、ROM164と、RAM165と、ハードディスクドライブ(HDD)166と、ディスプレイドライバ168と、操作入力検出部169と、通信部167とを備えている。
【0056】
CPU163はコンソール16の全体の動作の制御を司る。ROM164はコンソール16の動作を制御する制御プログラムを含む各種プログラム等を格納する。RAM165は各種データを一時的に記憶する。ハードディスクドライブ166は各種データを記憶し保持する。ディスプレイドライバ168はディスプレイ161の各種情報の表示の制御を行う。操作入力検出部169は操作パネル162に対する操作状態の検出を行う。通信部167は、放射線発生装置12との間において曝射条件等の各種情報の送受信を行うとともに、放射線画像検出器14との間において放射線画像情報等の各種情報の送受信を行う。通信部167は、放射線画像検出器14の通信部210と同様に、無線通信によってデータの送受信を行う。
【0057】
コンソール16において、CPU163、ROM164、RAM165、HDD166、ディスプレイドライバ168、操作入力検出部169及び通信部167はシステムバス(共通バス配線)170を通して相互に接続されている。従って、CPU163はシステムバス170を通してROM164、RAM165、HDD166のそれぞれにアクセスを行える。また、CPU163は、システムバス170及びディスプレイドライバ168を通してディスプレイ161において各種情報の表示の制御を行える。また、CPU163は、操作入力検出部169及びシステムバス170を通して操作パネル162に対するユーザの操作状態を把握可能である。更に、CPU163は、システムバス170及び通信部167を通して、放射線発生装置12、放射線画像検出器14のそれぞれとの間において、各種情報の送受信の制御を行える。
【0058】
[放射線発生装置のシステム構成]
図3に示すように、放射線発生装置12は、放射線源121と、線源制御部122と、通信部123とを備えている。通信部123はコンソール16との間において曝射条件等の各種情報の送受信を行う。線源制御部122は通信部123を通して受信された曝射条件に基づいて放射線源121の制御を行う。
【0059】
線源制御部122は前述の放射線画像検出器14の検出器制御部208と同様にマイクロコンピュータを備えている。このマイクロコンピュータのメモリには通信部123を通して受信された曝射条件等の情報が格納される。曝射条件には例えば管電圧、管電流、曝射期間を含む情報が少なくとも含まれている。この曝射条件に基づいて、線源制御部122は放射線源121から放射線Rを照射する。
【0060】
[放射線検出パネルの装置構造]
1.放射線検出パネルの全体構造
実施例1に係る放射線画像検出器14の放射線検出パネル142は、図5に示すように、TFTマトリックス基板116と、同図5中、TFTマトリックス基板116上に配設された蛍光体(シンチレータ)148とを備えている。ここでは、便宜的に1個の検出部が図示されている。TFTマトリックス基板116には検出素子100が配設されている。1つの検出素子100は最小の解像度の単位になる1画像である。検出素子100は、絶縁性基板116Aに配設され、この絶縁性基板116A上に配設されたTFT102上に光電変換素子106を積層した構造を備えている。
【0061】
2.蛍光体(シンチレータ)の構造
図5に示すように、TFTマトリックス基板116の最上層には透明絶縁膜116Cが配設され、この透明絶縁膜116C上に蛍光体148が配設されている。蛍光体148はTFTマトリックス基板116の略全域に配設されている。蛍光体148は、光電変換素子106上に透明絶縁膜116Cを介して配設されているので、蛍光体148側(図5中、上側)から入射される放射線Rを吸収し光に変換可能であるとともに、絶縁性基板116A側(図5中、下側)から入射される放射線Rも吸収し光に変換可能である。
【0062】
蛍光体148が発する光の波長域は光電変換素子106の受光感度により設定される。一例として、一般的に用いられるアモルファスシリコン(a−Si)を用いたフォトダイオードやMIS(Metal Insulator Semiconductor)トランジスタを光電変換素子106に採用した場合には、a−Siの受光感度特性から可視光域(波長360nm〜830nm)に設定される。放射線画像検出器14において、放射線画像の撮影を可能とするためには、a−Siを光電変換素子106に採用した場合には、蛍光体148が発する光にa−Siの受光感度が最大となる緑色の波長域を含むことが好ましい。
【0063】
放射線RとしてX線を使用しX線画像を撮影する場合、蛍光体148にはヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましい。更に、蛍光体148にはX線照射時の発光スペクトルが420nm〜600nmの波長域にあるタリウムが添加されたヨウ化セシウムCsI(Tl)、酸硫化ガドリウムGOS(GdS:Tb)等を用いることが特に好ましい。CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。なお、本発明において、放射線Rは、X線に限定されるものではなく、少なくとも医療に利用されるγ線、電子線、中性子線、陽子線、重粒子線等の放射線を含む意味において使用されている。
【0064】
ここで、実施例1において、蛍光体148は、基本的にはTFTマトリックス基板116つまり放射線検出パネル142に対して別部材(別部品)として製作されている。蛍光体148は、放射線画像検出器14の製作過程(組立工程)において、放射線検出パネル142に装着される。
【0065】
3.光電変換素子の構造
図5及び図6に示すように、実施例1に係る検出素子100には、PIN構造を有し、間接変換方式を採用する光電変換素子106が使用されている。光電変換素子106は、TFTマトリックス基板116の絶縁性基板116A上に配設され、一方の電極(下部電極)106Aと、第1の半導体層106Bと、第2の半導体層106Cと、第3の半導体層106Dと、他方の電極(上部電極)106Eとを順次積層して構成されている。
【0066】
電極106Aは、絶縁性基板116A上に絶縁膜116Bを介在して配設され、検出素子100毎(検出部毎又は画素部毎)に分割されている。絶縁膜116Bは、実施例1において、図6に示すように、TFT保護膜116B1と、その上層に形成された平坦化膜116B2との積層膜により構成されている。TFT保護膜116B1は例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により成膜されたSiN膜である。平坦化膜116B2は、低誘電率を有する感光性の有機材料により成膜された塗布型絶縁膜である。
【0067】
電極106Aは、第1の半導体層106B〜第3の半導体層106Dの膜厚が1μm前後と厚い場合には導電性を有する材料ではあれば透明性、不透明性の制限を殆ど受けない。従って、電極106Aには透明又は不透明な導電性材料を使用することができる。透明導電性材料には、例えば酸化錫インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)等を使用することができる。不透明な導電性材料には、例えばアルミニウム膜、アルミニウム合金膜、銀膜等を使用することができる。一方、第1の半導体層106B〜第3の半導体層106Dの膜厚が薄い場合(例えば、0.2μm〜0.5μm)、第1の半導体層106B〜第3の半導体層106Dにおいて光を十分に吸収することができない。この光はTFT102に照射され、TFT102の主電極102D、102E間のリーク電流が増加してしまうので、電極106Aには不透明性つまり遮光性のある導電性材料又はその積層膜を使用することが好ましい。
【0068】
第1の半導体層106Bは電極106A上に配設され、第2の半導体層106Cは第1の半導体層106B上に配設され、第3の半導体層106Dは第2の半導体層106C上に配設されている。実施例1に係る光電変換素子106はPIN構造を採用しており、第1の半導体層106Bはn+型a−Si層により構成されている。第2の半導体層106Cはi型a−Si層により構成されている。第3の半導体層106Dはp+型a−Si層により構成されている。第2の半導体層106Cは、蛍光体148により変換された光から電荷(一対の自由電子と自由正孔)を発生させる。第1の半導体層106Bは、コンタクト層として使用され、電極106Aに電気的に接続される。第3の半導体層106Dは、同様にコンタクト層として使用され、電極106Eに電気的に接続される。
【0069】
電極106Eは第3の半導体層106E上において個別に配設されている。電極106Eには、透明性が高い、例えばITO、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性材料を使用することができる。図5及び図6において図示を省略しているが、電極106Eには固定電位を供給する配線が接続されている。
【0070】
実施例1においては、第1の半導体層106B〜第3の半導体層106Dに加えて電極106A及び106Eを含み、光電変換素子106が構築されている。また、光電変換素子106は、MIS構造を採用してもよい。
【0071】
4.TFTの構造
図6に示すように、検出素子100のTFT102は、光電変換素子106の電極106Aに対応したその下方の領域であって、絶縁性基板116A上に配設されている。TFT102は、絶縁性基板116Aの表面に対して鉛直方向から見た平面視において、光電変換素子106の電極106Aに重複する領域に配設されている。つまり、TFT102と光電変換素子106とは絶縁性基板116A上に立体的に積層しているので、検出素子100の絶縁性基板116Aの表面と同一平面方向において検出素子100の占有面積を縮小することができる。
【0072】
TFT102は、ゲート電極102Aと、ゲート絶縁膜102Bと、活性層(チャネル層)102Cと、一方の主電極(ドレイン電極)102E及び他方の主電極(ソース電極)102Dとを備えている。ゲート電極102Aは絶縁性基板116Aの表面上に配設されている。ゲート電極102Aは、実施例1において、ゲート線110と同一導電層において同一導電性材料によって形成されている。ゲート絶縁膜102Bは、絶縁性基板116Aの表面上の略全域にゲート電極102Aを介して配設されている。活性層102Cは、ゲート絶縁膜102Bの表面上において、ゲート電極102Aに重複して配設されている。主電極102D及び102Eは、活性層102C上に配設され、ゲート電極102A上において互いに離間されている。主電極102D及び102Eは、実施例1において、同一導電層において同一導電性材料によって形成されている。
【0073】
実施例1に係る放射線画像検出器14において、TFT102の活性層102Cはa−Siにより構成されている。また、活性層102Cは非晶質酸化物により形成してもよい。非晶質酸化物にはIn、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)を使用することができる。また、非晶質酸化物には、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga系若しくはGa−Zn−O系)を使用することが好ましく、更により好ましくはIn、Ga及びZnを含む酸化物が使用される。具体的には、In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物であって、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。活性層102Cが非晶質酸化物により形成されたTFT102は、X線等の放射線Rを吸収せず、又は吸収したとしても極めて微量に留まるので、ノイズの発生を効果的に抑えられる。
【0074】
実施例1において、絶縁性基板116Aには液晶用としての無アルカリガラスが使用されている。ここで、前述のTFT102の活性層102Cに非晶質酸化物を採用し、光電変換素子106の第1の半導体層106B〜第3の半導体層106Dに代えて有機光電変換材料を採用した場合、活性層102C及び有機光電変換材料はいずれも低温プロセスにおいて成膜が可能である。従って、絶縁性基板116Aには、半導体基板、石英基板、ガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、プラスチック等の可撓性基板、アラミド(全芳香族ポリアミド)、バイオナノファイバ等を使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板が絶縁性基板116Aとして使用可能である。このようなプラスチック製の可撓性基板を採用すれば、放射線画像検出器14の軽量化を図ることができ、例えば持ち運び、取り扱い等の可搬性が高まる。
【0075】
また、絶縁性基板116Aには、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を抑制するためのガスバリア層、平坦性或いは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を配設することができる。
【0076】
一方、絶縁性基板116Aとして使用可能なアラミドは、200度以上の温度の高温プロセスを採用することができるので、透明電極材料を高温度において硬化させ、透明電極材料の低抵抗化を図れる。また、200度以上の高温度の半田リフロー工程を含む、ゲート線ドライブ部200を構築するドライバICの自動実装プロセスにも対応することができる。また、ITOやガラス基板の熱膨張係数に対して、アラミドの熱膨張係数は近いので、製造プロセス終了後の絶縁性基板116Aの反りが少なく、絶縁性基板116Aに割れが生じ難い。また、アラミドは、ガラス基板等の機械的強度に対して高い機械的強度を持つので絶縁性基板116Aの薄型化を図れる。なお、絶縁性基板116Aは、単層基板構造に限定されるものではなく、超薄型ガラス基板にアラミドを積層した複合基板構造を採用してもよい。
【0077】
また、絶縁性基板116Aとして使用可能なバイオナノファイバはバクテリア(酢酸菌:Acetobacter Xylinum)により産出されるセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂との複合物である。セルロースミクロフィブリル束は、例えば可視光波長に対して1/10程度の50nmの微細な幅サイズを有し、かつ高強度、高弾性及び低熱膨張を有する。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸させ硬化させることによって、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmにおいて約90%の光透過率を示すバイオナノファイバを得ることができる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3ppm〜7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)及び高弾性(30GPa)を有し、かつフレキシブル性を備えている。従って、ガラス基板等に比べて、絶縁性基板116Aの薄型化を図ることができる。
【0078】
TFT102の主電極102D及び102Eを含む絶縁性基板116A上の全域には層間絶縁膜116Bが配設されている。層間絶縁膜116Bに配設された接続孔116Hを通して光電変換素子106の電極106Aが主電極102Dに電気的に接続されている。
【0079】
[放射線検出器の装置構造]
1.放射線画像検出器の全体の概略構造
図7に示すように、放射線画像検出器14は、放射線検出パネル142と、信号処理基板144と、放射線検出パネル142に一端を電気的に接続し、信号処理基板144に他端を電気的に接続するフレキシブル基板182及び184と、放射線検出パネル142及び信号処理基板144を収納するとともに、フレキシブル基板182及び184を内壁から離間して収納する筐体140とを備えている。
【0080】
実施例1に係る放射線画像検出器14は放射線Rから変換された光を放射線Rの照射面140A側から読み取るISS(Irradiation Side Sampling;TFT基板面入射)方式を採用する。従って、筐体140の内部において、放射線検出パネル142は、図5及び図6に示す絶縁性基板116Aを照射面140A側に向け、蛍光体148を非照射面140B側に向けて、照射面140Aの裏側になる天板内面に装着される。装着には例えば両面粘着テープが使用されている。なお、放射線画像検出器14は、ISS方式に限定されるものではなく、放射線Rから変換された光を放射線Rの照射面140Aとは反対の非照射面140B側から読み取るシンチレータ面入射方式を採用してもよい。
【0081】
実施例1に係る放射線画像検出器14は筐体140の内部に補強部材180を備えている。補強部材180は主に筐体140の機械的強度を高める機能を有する。補強部材180は、筐体140の厚さ方向の中央部分に配設され、筐体140の照射面140A及び非照射面140Bに対して略平行に配設され、照射面140A及び非照射面140Bに対して一回り小さい面積を有する板状部材である。
【0082】
補強部材180は、実施例1において、シャーシ180Aと、補強板180Bと、蒸着基板180Cとを備え、これらを非照射面140Bから照射面140Aに向かって順次積層した3層構造により構成されている。シャーシ180Aは、例えばアルミニウムシャーシであり、0.3mm〜0.5mmの厚さに設定されている。補強板180Bは、例えばカーボン補強板であり、1.1mm〜1.3mmの厚さに設定されている。蒸着基板180Cは、例えばアルミニウム蒸着基板であり、0.2mm〜0.4mmの厚さに設定されている。
【0083】
放射線検出パネル142は補強部材180の照射面140A側に蛍光体148を介して配設されている。ここで、放射線検出パネル142の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば0.6mm〜0.8mmに設定されている。また、蛍光体148の厚さは例えば0.5mm〜0.7mmに設定されている。
【0084】
一方、信号処理基板144は補強部材180の非照射面140B側に配設されている。信号処理基板144は、図7において、模式的に1つの構成要素(部品)として記載されているが、実際には前述の図3に示すゲート線ドライバ部200、信号処理部202、温度センサ204、画像メモリ206、検出器制御部208、通信部210、電源部212のそれぞれを構築する回路を実装した配線基板である。回路は集積回路(IC)、抵抗素子、容量素子、コンデンサ等を含む。また、配線基板には例えばプリント配線基板が使用されている。なお、回路は複数枚の配線基板に分散して実装されていてもよい。
【0085】
2.筐体の構造
図7に示すように、筐体140は、天板となる照射面140Aと、それに離間され対向する底板となる非照射面140Bと、照射面140A及び非照射面140Bの周縁に沿って配設された側部(側板)とを有する中空直方体である。実施例1に係る放射線画像検出器14においては、外部からの電磁ノイズの影響を最小限に留めるために、筐体140の少なくとも外側表面及び内側表面が絶縁体である。ここで、少なくとも表面が絶縁体とは、筐体140の全体が絶縁体である場合、筐体140の母体を導電体としてその表面を絶縁体とした(表面に絶縁処理を施した)場合のいずれも含む意味において使用されている。例えば、前者の例としては、絶縁性樹脂によって製作された筐体140が該当する。後者の例としては、例えばアルミニウム製母体の表面に酸化性被膜を形成し製作した筐体140、同母体の表面に絶縁性塗料のコーティングを行って製作した筐体140等が該当する。
【0086】
実施例1において、筐体140には、放射線画像検出器14の取り扱い性能を向上するために、軽量化並びに高剛性化を実現することができる材料が選択される。このような要求に対し、筐体140にはカーボン繊維を絶縁性樹脂によってコーティングしたカーボン繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)が使用されている。絶縁性樹脂には例えばエポキシ樹脂が使用されている。
【0087】
3.フレキシブル基板の構造
図7中、右側に示すように、フレキシブル基板182は、放射線検出パネル142のデータ線112と信号処理基板144に実装された信号処理部202との間を電気的に接続する配線ケーブルである。詳細には図8及び図9を用いて説明するが、フレキシブル基板182の一端(図9中、端子182C1)は放射線検出パネル142の周辺部まで引き出されたデータ線112の外部端子に電気的に接続される。電気的な接続には、例えば異方性導電コネクタ、異方導電性シート、異方導電性フィルム、異方導電性ゴム等の接続媒体を介在し、熱を加えて圧着する熱圧着接続法が使用される。フレキシブル基板182の他端(図9中、端子182C2)は信号処理基板144の周辺部まで引き出された信号処理部202の外部端子に電気的に接続される。電気的な接続には前述と同様に熱圧着接続法が使用される。図7中、フレキシブル基板182は1本しか図示していないが、実際には放射線検出パネル142の一辺に沿って複数本のフレキシブル基板182が配列されている。
【0088】
フレキシブル基板182の中央部は、放射線検出パネル142の側面及び信号処理基板144の側面から筐体140の側部の内壁に向かって突出し、フレキシブル性を利用して円弧を描くように湾曲し折り返して引き回される。放射線画像検出器14に外力が生じない状態のとき(静止状態のとき)、フレキシブル基板182は、放射線検出パネル142、補強部材180及び信号処理基板144の側面と筐体140の側部の内壁との間の僅かな隙間において、それらに適度に離間し接触しない。離間寸法は例えば数mmに設定されている。
【0089】
実施例1に係るフレキシブル基板182はテープキャリアパッケージ(TCP:Tape Carrier Package)回路基板である。図8及び図9に示すように、フレキシブル基板182は、図8中、下層から上層に向かって、ベースフィルム182A、接着層182B、配線182C、レジスト層182D、コート層182Eのそれぞれを順次積層し構成され、ベースフィルム182Aと配線182Cとの間にシールド層182M及びその上層の絶縁層182Nを備えている。更に、フレキシブル基板182には半導体素子1821が実装されている。
【0090】
ベースフィルム182Aはフレキシブル性(可撓性)を有する絶縁性樹脂フィルムにより形成されている。ベースフィルム182Aには例えばポリイミド樹脂フィルムを使用することができる。接着層182Bは、基本的にはベースフィルム182Aと配線182Cとの間を接着するが、ここでは絶縁層182Nと配線182Cとの間を接着する。接着層182Bには例えばエポキシ樹脂接着層を使用することができる。配線182Cは、放射線検出パネル142と信号処理基板144との間を半導体素子1821を通して又は直接電気的に接続される。
【0091】
配線182Cは、電気伝導性に優れた(低抵抗値を有する)例えば銅(Cu)、銅合金等の金属材料により製作され、例えば15μm−25μmの膜厚に設定されている。図9は主要な層のみを図示しており、この図9中、右側の配線182Cの一方(一端)には放射線検出パネル142の外部端子に接続される端子182C1が配設され、他方には半導体素子1821が接続されている。半導体素子1821は、例えば放射線検出パネル142のデータ線112を通して伝送される放射線画像情報を増幅するチャージアンプ(サンプルホールド回路220)としての機能を有する。また、半導体素子1821は、例えば信号処理部202の一部の機能を有していてもよい。
【0092】
半導体素子1821はフレキシブル基板182のここでは中央部に配設された開口(貫通穴)182H内に配設されている。配線182Cの他方は、開口182H内にフィンガーリードとして突出し、半導体素子1821の外部端子(ボンディングパッド)1822に例えばワイヤボンディング法を用いてボンディングを行ったワイヤ1823によって電気的にかつ機械的に接続されている。
【0093】
図9中、左側の配線182Cの一方(他端)には信号処理基板144の外部端子に接続される端子182C2が配設され、他方には半導体素子1821が接続されている。配線182Cの他方は同様に半導体素子1821の外部端子1822に例えばワイヤ1823を用いて電気的にかつ機械的に接続されている。
【0094】
レジスト層182Dは、配線182C上に配設され、例えばウレタン樹脂により製作されている。コート層182Eは、最終保護層として形成されており、例えばポリイミド系樹脂層により製作されている。
【0095】
シールド層182Mは、放射線検出パネル142に接続する端子182C1及び信号処理基板144に接続する端子182C2の領域、更に半導体素子1821が配設された開口182Hの領域を除いて配線182Cの全域に重複して配設されている。フレキシブル基板182の端子182C1、182C2が配列された領域であって、フレキシブル基板182の一端及び他端に沿った領域には、シールド層182Mの一部を突出させて形成した固定電位取出用端子182MPが配設されている。この固定電位取出用端子182MPを通じて、シールド層182Mは固定電位188に接続される。固定電位188は、実施例1においてフレキシブル基板182のいずれかの配線182Cに固定電位が供給されている場合、その固定電位を利用する。熱圧着接続法を使用するときに、固定電位188に接続される配線182Cの端子182C1又は182C2と固定電位取出用端子182MPとを電気的に接続すれば、シールド層182Mは固定電位188に接続される。固定電位188はフレキシブル基板182に配設された回路上の接地(例えば、グランド又は0V電源電位)である。また、固定電位188には回路上の動作電源電位(0Vよりも高い電源電位)を使用することができる。
【0096】
なお、シールド層182Mは、放射線検出パネル142に使用される固定電位188又は信号処理基板144に使用される固定電位188を利用し、いずれかから固定電位188を供給してもよい。また、シールド層182Mは、筐体140の接地を固定電位188とし、この固定電位188に接続されてもよい。更に、固定電位188は、変動の無い電位であれば、マイナス電位であってもよい。
【0097】
シールド層182Mは、実施例1において、低抵抗化を図り帯電によって生じた静電気(電荷)を即座に取り除くために、配線182Cと同一導電性材料によって製作されている。また、同様の理由から、シールド層182Mの厚さは配線182Cの厚さに比べて例えば15μm−25μm程度厚く設定されている。
【0098】
絶縁層182Nは、シールド層182Mと配線182Cとの間に配設され、双方の電気的短絡を防止している。絶縁層182Nには例えばエポキシ系樹脂層を使用することができる。
【0099】
フレキシブル基板182の開口182H内には、半導体素子1821を外部環境から保護するために、封止材182Fが充填されている。封止材182Fには、例えば滴下塗布(ポッティング)法により製作されるポリイミド系樹脂を使用することができる。
【0100】
図7中、右側に示すように、フレキシブル基板184は、放射線検出パネル142のゲート線110と信号処理基板144に実装されたゲート線ドライバ部200との間を電気的に接続する配線ケーブルである。実施例1においては、最低限、放射線画像情報(アナログ信号電荷)の帯電による誤検出の影響が大きいフレキシブル基板182にシールド層182Mが配設される。共通の部品を利用し、部品点数を削減する観点から、ここではフレキシブル基板184はフレキシブル基板182と同一の構造により構成されている。なお、フレキシブル基板184が搭載する半導体素子1821はフレキシブル基板182が搭載する半導体素子1821と異なる。フレキシブル基板184の一端(図9中、端子182C1に対応)は放射線検出パネル142の周辺部まで引き出されたゲート線110の外部端子に電気的に接続される。電気的な接続には熱圧着接続法が使用される。フレキシブル基板184の他端(図9中、端子182C2に対応)は信号処理基板144の周辺部まで引き出されたゲート線ドライバ部200の外部端子に電気的に接続される。電気的な接続には熱圧着接続法が使用される。図7中、フレキシブル基板184は1本しか図示していないが、実際には放射線検出パネル142の、フレキシブル基板182が配列された一辺に隣り合う他の一辺に沿って複数本のフレキシブル基板184が配列されている。
【0101】
フレキシブル基板184の中央部は、フレキシブル基板182の中央部と同様に、筐体140の内部においてフレキシブル性を利用して引き回される。放射線画像検出器14に外力が生じない状態のとき、フレキシブル基板182は、放射線検出パネル142、補強部材180及び信号処理基板144の側面と筐体140の側部の内壁との間の僅かな隙間において、それらに適度に離間し接触しない。離間寸法は例えば数mmに設定されている。フレキシブル基板184の半導体素子1821はゲート線ドライブ部200の一部の機能(例えばドライバIC)を有している。
【0102】
[放射線画像撮影装置の動作]
前述の図1に示す放射線画像撮影装置10において、放射線画像の撮影前の取り扱い、或いは撮影中やその直前に被検体18の位置調整や姿勢調整に伴う接触、衝突によって放射線画像検出器14に外力による加減速度や振動が加わる。この加減速度や振動の度合いによって、放射線画像検出器14においては、放射線検出パネル142、信号処理基板144及び筐体140の剛性体の位置変化に対してフレキシブル基板182の位置変化を追従させることができないので、フレキシブル性によってフレキシブル基板182の中央部に移動が生じる。この移動に伴い、フレキシブル基板182は筐体140の側部の内壁に接触し、或いは振動に伴い擦れを生じる。フレキシブル基板182に半導体素子が実装されている場合には、フレキシブル基板182の移動量は増加する。
【0103】
この接触或いは擦れによって、フレキシブル基板182の配線にはカウンター帯電が生じる。図8及び図9に示すように、フレキシブル基板182にはシールド層182Mが配設されている。従って、フレキシブル基板182のベースフィルム182Aの外側に発生する静電気(電荷)を固定電位188に接続されるシールド層182Mによって打ち消し、配線182Cにノイズが乗ることを抑制することができるので、フレキシブル基板182の帯電を防止することができる。加えて、シールド層182Mは、ベースフィルム182Aと配線182Cとの間に介在されているので、フレキシブル基板182と筐体との接触や擦れに対して剥がれ難い。シールド層182Mはベースフィルム182Aと絶縁層182Bとに挟まれる構造を有し、上下の樹脂材同士の接着力は高い。従って、必要以上にシールド層182Mの膜厚を厚くする必要がないので、フレキシブル基板182のフレキシブル性は損なわれない。更に、シールド層182Mは固定電位188に接続されているので、帯電によって発生した電荷は即座に固定電位188に吸収され、浮遊容量の発生を抑制することができる。従って、放射線撮影画像情報の誤検出を防止することができ、又放射線画像情報の伝送遅延を防止することができる。
【0104】
図10は、放射線Rの照射前後にフレキシブル基板の配線に生じる発生電荷量と、フレキシブル基板に帯電によって生じる発生電荷量との関係を示す。図10中、横軸は時間(msec)、縦軸は発生電荷量である。グラフAは、放射線照射前後において、放射線検出パネル142のデータ線112と信号処理部202とを接続するフレキシブル基板182の配線に生じる電荷量の変化を示す。当然のことながら、放射線照射前に比べて、放射線照射後の電荷量は増加する。グラフBは、放射線照射中やその直前に生じた外力に伴い、フレキシブル基板182と筐体140との接触或いは振動によってフレキシブル基板182の配線に帯電した電荷量の変化を示す。仮に、図10中、破線を引いた値に放射線Rの検出信号の判定を行う閾値Vthを設定すると、フレキシブル基板182の配線が帯電し電荷量が閾値Vthを超えると、放射線Rの誤検出信号が生じる。
【0105】
[放射線画像検出器の筐体の種類]
前述の実施例1に係る放射線画像検出器14の筐体140は、図11(A)に示すように、フレームレスのモノコック構造により構成されている。この種の筐体140は、本来フレームに持たせる機械的強度を表皮(表面、裏面及び側面)に持たせ、軽量化に適している。この筐体140は、外力による全体的な変形を生じ易く、フレキシブル基板182の接触が生じ易いので、実施例1に係る固定電位188に接続されたシールド層182Mはこのモノコック構造に有効である。
【0106】
図11(B)に示す筐体140は、筐体本体140Cと、その片側においてヒンジを中心に開閉する蓋140Dとを備えている。導電体186はフレキシブル基板182の蓋140Dに対向する位置及び蓋部140Dとは反対側であって筐体本体140Cの側部に対向する位置に配設される。
【0107】
図11(C)に示す筐体140は、筐体本体140Cと、その両側において各々差込により開閉する蓋140D及び140Eとを備えている。蓋140D及び140Eのそれぞれから突出するアーム部が筐体本体140Cの内壁に係合して差込位置において固定される。フレキシブル基板182は蓋140D、140Eに対向する位置に配設される。
【0108】
[実施例1の作用効果]
以上説明したように、実施例1に係る放射線画像撮影装置10においては、ベースフィルム182Aの外側に発生する静電気を固定電位188に接続されるシールド層182Mによって打ち消し、配線182Cにノイズが乗ることを抑制することができるので、フレキシブル基板182の帯電を防止することができる。加えて、シールド層182Mは、ベースフィルム182Aと配線182Cとの間に介在されるので、フレキシブル基板182と筐体140との接触や擦れに対して剥がれ難い。従って、必要以上にシールド層182Mの膜厚を厚くする必要がないので、フレキシブル基板182のフレキシブル性は損なわれない。更に、シールド層182Mは固定電位188に接続されているので、帯電によって発生した電荷は即座に固定電位188に吸収され、浮遊容量の発生を抑制することができる。従って、放射線撮影画像情報の誤検出を防止することができ、又放射線画像情報の伝送遅延を防止することができる。
【0109】
また、放射線画像撮影装置10においては、フレキシブル基板182の配線182Cからシールド層182Mに固定電位188を供給することができる。
【0110】
また、放射線画像撮影装置10においては、信号処理基板144からシールド層182Mに固定電位188を供給することができる。
【0111】
また、放射線画像撮影装置10においては、放射線検出パネル142からシールド層182Mに固定電位188を供給することができる。
【0112】
また、放射線画像撮影装置10においては、配線182Cの全域にシールド層182Mを配設しているので、ベースフィルム182Aの外側の大半の領域に発生する静電気をシールド層182Mによって打ち消し、配線182Cにノイズが乗ることを抑制することができるので、フレキシブル基板182の帯電を防止することができる。
【0113】
また、放射線画像撮影装置10においては、配線182Cに比べてシールド層182Mが厚く形成され、シールド層182Mの電気抵抗が低く設定されている。従って、ベースフィルム182Aの外側に発生する静電気を即座に打ち消し、配線182Cにノイズが乗ることを抑制することができるので、フレキシブル基板182の帯電を防止することができる。
【0114】
[変形例1]
実施例1の変形例1に係る放射線画像撮影装置10は、前述の実施例1に係る放射線画像撮影装置10の放射線画像検出器14において、フレキシブル基板182の構造を変えた例を説明するものである。
【0115】
図12に示すように、変形例1に係る放射線画像検出器14のフレキシブル基板182は、配線182Cとコート層182Eとの間に、配線182Cとはレジスト層182D(絶縁体)を介在させ、固定電位188に接続されるシールド層182Mを備えている。シールド層182Mの構成、材質等は実施例1に係るシールド層182Mと同等である。
【0116】
また、シールド層182Mとコート層182Eとの間にレジスト層182Oが配設されている。レジスト層182Oは例えばレジスト層182Dと同一材料により製作されている。
【0117】
このように構成される変形例1に係る放射線画像撮影装置10においては、前述の実施例1に係る放射線画像撮影装置10によって得られる作用効果と同様の作用効果を奏することができる。なお、フレキシブル基板182の構造を変えたことにより、併せてフレキシブル基板184の構造を変えることができる。以下の変形例又は実施例に関しても同様である。
【0118】
[変形例2]
実施例1の変形例2に係る放射線画像撮影装置10は、前述の実施例1に係る放射線画像撮影装置10の放射線画像検出器14において、フレキシブル基板182の構造を変えた例を説明するものである。
【0119】
図13に示すように、変形例2に係る放射線画像検出器14のフレキシブル基板182、184は、ベースフィルム182Aと配線182Cとの間に、配線182Cとは絶縁層182N(絶縁体)を介在させ、固定電位188に接続されるシールド層182M1を備え、更に配線182Cとコート層182Eとの間に、配線182Cとはレジスト層182D(絶縁体)を介在させ、固定電位188に接続されるシールド層182M2を備えている。シールド層182M1、182M2の構成、材質等は実施例1に係るシールド層182Mと同等である。すなわち、変形例2に係るフレキシブル基板182は、配線182Mの上下双方にシールド層182M1、182M2を配設している。
【0120】
このように構成される変形例2に係る放射線画像撮影装置10においては、前述の実施例1に係る放射線画像撮影装置10によって得られる作用効果と同様の作用効果を奏することができるとともに、配線182Cの上面側及び下面側の両面にシールド層182M1及び182M2を備えているので、静電気の打ち消し効果を高め、フレキシブル基板182の帯電をより一層防止することができる。
【0121】
(実施例2)
本発明の実施例2は、前述の実施例1に係る放射線画像撮影装置10の放射線画像検出器14においてフレキシブル基板182の構造を変えた例を説明するものである。
【0122】
図14に示すように、実施例2に係る放射線画像撮影装置10の放射線画像検出器14において、フレキシブル基板182、184はチップオンフィルム(COF:Chip On Film)回路基板である。フレキシブル基板184は、図14中、下層から上層に向かって、ベースフィルム182A、接着層182B、配線182C、レジスト層182D、コート層182Eのそれぞれを順次積層し構成され、ベースフィルム182Aと配線182Cとの間にシールド層182M及びその上層の絶縁層182Nを備えている。シールド層182Mは前述の実施例1に係るシールド層182Mと同様に固定電位188に接続されている。
【0123】
半導体素子1821は、レジスト層182D及びコート層182Eに形成された開口(止め穴)182H内においてレジスト層182O上に配設されている。配線182Cの他方は開口182H内に引き出され、この配線182Cの他方は半導体素子1821の外部端子1822に電気的に接続されている。電気的な接続にはワイヤボンディング法を用いてボンディングを行ったワイヤ1823が使用されている。
このように構成される放射線画像撮影装置10においては、前述の実施例1に係る放射線画像撮影装置10によって得られる作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【0124】
[変形例1]
実施例2の変形例1に係る放射線画像撮影装置10は、前述の実施例2に係る放射線画像撮影装置10の放射線画像検出器14において、フレキシブル基板182の構造を変えた例を説明するものである。
【0125】
図15に示すように、変形例1に係る放射線画像検出器14のフレキシブル基板182、184は、配線182Cとコート層182Eとの間に、配線182Cとはレジスト層182D(絶縁体)を介在させ、固定電位188に接続されるシールド層182Mを備えている。シールド層182Mの構成、材質等は実施例1に係るシールド層182Mと同等である。
【0126】
また、シールド層182Mとコート層182Eとの間にレジスト層182Oが配設されている。レジスト層182Oは例えばレジスト層182Dと同一材料により製作されている。
【0127】
このように構成される変形例1に係る放射線画像撮影装置10においては、前述の実施例2に係る放射線画像撮影装置10によって得られる作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【0128】
[変形例2]
実施例2の変形例2に係る放射線画像撮影装置10は、前述の実施例2に係る放射線画像撮影装置10の放射線画像検出器14において、フレキシブル基板182の構造を変えた例を説明するものである。
【0129】
図16に示すように、変形例2に係る放射線画像検出器14のフレキシブル基板182は、ベースフィルム182Aと配線182Cとの間に、配線182Cとは絶縁層182N(絶縁体)を介在させ、固定電位188に接続されるシールド層182M1を備え、更に配線182Cとコート層182Eとの間に、配線182Cとはレジスト層182D(絶縁体)を介在させ、固定電位188に接続されるシールド層182M2を備えている。シールド層182M1、182M2の構成、材質等は実施例1に係るシールド層182Mと同等である。すなわち、変形例2に係るフレキシブル基板182は、配線182Mの上下双方にシールド層182M1、182M2を配設している。
【0130】
このように構成される変形例2に係る放射線画像撮影装置10においては、前述の実施例2に係る放射線画像撮影装置10によって得られる作用効果と同様の作用効果を奏することができるとともに、配線182Cの上面側及び下面側の両面にシールド層182M1及び182M2を備えているので、静電気の打ち消し効果を高め、フレキシブル基板182の帯電をより一層防止することができる。
【0131】
(その他の実施例)
以上、本発明を実施例1及び実施例2を用いて説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、本発明は、フレキシブル基板をテープオートメイテッドボンディング(TAB:Tape Automated Bonding)回路基板としてもよい。
【符号の説明】
【0132】
10 放射線画像撮影装置
12 放射線照射装置
14 放射線画像検出器(電子カセッテ)
140 筐体
142 放射線検出パネル
144 信号処理基板
148 蛍光体(シンチレータ)
16 コンソール
100 検出素子
102 TFT
106 光電変換素子
110 ゲート線
112 データ線
180 補強部材
182、184 フレキシブル基板
182A ベースフィルム
182B 接着層
182C 配線
182C1、182C2 端子
182D、182O レジスト層
182E コート層
182M、182M1、182M2 シールド層
182N 絶縁層
182MP 固定電位取出用端子
1821 半導体素子
188 固定電位
200 ゲート線ドライバ部
202 信号処理部
204 温度センサ
206 画像メモリ
208 検出器制御部
210 通信部
212 電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を電気信号に変換する光電変換素子を有する放射線検出パネルと、
前記放射線検出パネルに対向して配設され、前記放射線検出パネルによって得られた電気信号の信号処理を行う信号処理基板と、
前記放射線検出パネルに一端を電気的に接続し、前記信号処理基板に他端を電気的に接続するとともに、絶縁性樹脂フィルムにより形成されたベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配設された配線と、前記配線上に配設された絶縁性樹脂により形成されたコート層とを有し、前記ベースフィルムと前記配線との間及び前記配線と前記コート層との間のいずれか一方に、前記配線との間に絶縁体を介在させ、固定電位に接続されるシールド層を有するフレキシブル基板と、
前記放射線検出パネル、前記信号処理基板及び前記フレキシブル回路基板を収納する筐体と、
を備えた放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記シールド層は、前記ベースフィルム上に配設され、前記固定電位に接続される前記配線に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記シールド層は固定電位取出用端子を有し、該固定電位取出用端子は前記信号処理基板の固定電位に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記シールド層は固定電位取出用端子を有し、該固定電位取出用端子は前記放射線検出パネルの固定電位に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
シールド層は、前記放射線検出パネル及び前記信号処理基板に接続する端子領域を除いて前記配線の全域に配設されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記シールド層の厚さは前記配線の厚さに比べて厚く設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずかれ1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記シールド層は前記ベースフィルムと前記配線との間及び前記配線と前記コート層との間の双方に備えたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記シールド層は前記配線と同一の導電性材料により製作されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記フレキシブル基板は、前記ベースフィルムに形成された素子開口内に半導体素子を実装したテープキャリアパッケージ型回路基板であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記フレキシブル基板は、前記ベースフィルム上に半導体素子を実装したチップオンフィルム型回路基板であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−88324(P2013−88324A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230044(P2011−230044)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】