説明

放射線画像検出装置及び放射線撮影装置

【課題】感度及び画質に優れる放射線画像検出装置を提供する。
【解決手段】放射線画像検出装置3は、蛍光体30と、前記蛍光体の放射線入射側に配置された第1のセンサパネル31と、前記蛍光体を挟んで前記第1のセンサパネルに対向して配置された第2のセンサパネル32と、を備え、前記第1のセンサパネルは、各々画素42の2次元配列を有する複数の第1のセンサモジュール40が少なくとも第1の方向に配列されて構成されており、前記第2のセンサパネルは、前記第1のセンサパネルにおける複数のセンサモジュールの連結部46の少なくとも一部に、該第2のセンサパネルにおける画素52の並びが重なるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像検出装置、及び該放射線画像検出装置を備えた放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線像を検出してデジタル画像データを生成する放射線画像検出装置が実用化されており、従来のイメージングプレートに比べて即時に画像を確認できるといった理由から急速に普及が進んでいる。この放射線画像検出装置には種々の方式のものがあり、その一つとして、間接変換方式のものが知られている。
【0003】
間接変換方式の放射線画像検出装置は、放射線露光によって蛍光を発するCsI(ヨウ化セシウム)などの蛍光組成物によって形成されたシンチレータ(蛍光体)と、薄膜型の複数の光電変換素子が基板上に2次元状に配設されたセンサパネルとを備えている。被写体を透過した放射線は、放射線画像変換パネルのシンチレータによって光に変換され、シンチレータの蛍光は、センサパネルの光電変換素子によって電気信号に変換され、それにより画像データが生成される。
【0004】
そして、間接変換方式の放射線画像検出装置において、放射線をセンサパネル側から入射させるようにした、いわゆる表面読取(ISS:Irradiation Side Sampling)型の放射線画像検出装置も提案されている(例えば、特許文献1参照)。この放射線画像検出装置によれば、シンチレータのセンサパネル近傍における蛍光の発生量が多くなり、感度の向上が図られる。それにより、放射線画像の検出に必要となる露光量を低減し、被写体の被曝量を低減することができる。
【0005】
センサパネルには、一般に、光電変換素子及びTFT(Thin Film Transistor)からなるスイッチ素子によって構成される画素がガラス基板上に2次元状に配列された、いわゆるFPD(Flat Panel Detector)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−017683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
FPDのガラス基板におけるX線吸収は比較的大きく、ISS型の放射線画像検出装置において、センサパネルによる放射線の吸収を低減することで感度を向上させることができる。センサパネルとしてCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを用いた場合に、それらのセンサに用いられる半導体基板は、一般に、FPDに用いられるガラス基板に比べてX線吸収が少ないが、FPDに比べてサイズが小さく、撮像範囲が制約される。
【0008】
撮像範囲を拡大するために複数のセンサモジュールを配列してサンサパネルを構成した場合に、隣り合うセンサモジュールの連結部には画素が存在しないため、そのようなセンサパネルによって生成された画像データにおいて、連結部に対応する画素は、画素情報が欠落した欠陥画素となる。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、感度及び画質に優れる放射線画像検出装置及び放射線撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 放射線露光によって蛍光を発する蛍光組成物を含む蛍光体と、前記蛍光体の放射線入射側に配置され、前記蛍光体から出射される蛍光を検出する光電変換素子及び該光電変換素子に生じた電荷を読み出す読出し回路部を各々含む画素が2次元状に配列された第1のセンサパネルと、前記蛍光体を挟んで前記第1のセンサパネルに対向して配置され、前記蛍光体から出射される蛍光を検出する光電変換素子及び該光電変換素子に生じた電荷を読み出す読出し回路部を各々含む画素が2次元状に配列された第2のセンサパネルと、を備え、前記第1のセンサパネルは、各々前記画素の2次元配列を有する複数の第1のセンサモジュールが少なくとも第1の方向に配列されて構成されており、前記第2のセンサパネルは、前記第1のセンサパネルにおける複数のセンサモジュールの連結部の少なくとも一部に、該第2のセンサパネルにおける前記画素の並びが重なるように配置されている放射線画像検出装置。
(2) 上記(1)の放射線画像検出装置と、前記第1のセンサパネルによって生成される第1の画像データ、及び前記第2のセンサパネルによって生成される第2の画像データを用いて、放射線画像を生成する画像処理部と、を備え、前記画像処理部は、前記第1の画像データにおいて、隣り合う前記第1のセンサモジュールの連結部に対応する画素情報を、前記第2の画像データにおいて対応する画素情報を用いて補間し、放射線画像を生成する放射線撮影装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、X線画像検出装置においてX線入射側に配置される第1のセンサパネルを、複数の第1のセンサモジュールを連結して構成しており、個々の第1のセンサモジュールのサイズが小さくとも、第1のセンサパネル全体としての撮像範囲を確保することができる。それにより、第1のセンサモジュールとして、比較的小サイズなものに限られる、読み出し回路部が半導体基板に形成されたセンサを用いることができ、センサモジュールの基板によるX線吸収を低減して、X線画像検出装置の感度を向上させることができる。
【0012】
そして、第1のセンサパネルによって生成された第1の画像データにおいて、連結部に対応する欠陥画素については、第2のセンサパネルによって生成された第2の画像データにおいて、それらの欠陥画素に対応する画素の画素情報を用いて補間することにより、欠陥画素がない、あるいは欠陥画素が削減された、高画質な放射線画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置及び放射線撮影装置の一例の構成を模式的に示す図である。
【図2】図1の放射線撮影装置の制御ブロック図である。
【図3】図1の放射線画像検出装置の構成、及びこれに含まれる蛍光体の構成を模式的に示す図である。
【図4】図3の蛍光体のIV‐IV断面を示す図である。
【図5】図3の蛍光体のV‐V断面を示す図である
【図6】図1の放射線画像検出装置の構成、及びこれに含まれる第1及び第2のセンサパネルの構成を模式的に示す図である。
【図7】図6の第1及び第2のセンサパネルのVII‐VII断面を示す図である。
【図8】図6の放射線画像検出装置の変形例の構成を模式的に示す図である。
【図9】図6の放射線画像検出装置の他の変形例の構成を模式的に示す図である。
【図10】図6の放射線画像検出装置の他の変形例の構成を模式的に示す図である。
【図11】本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置の一例の構成を模式的に示す図である。
【図12】本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置の一例の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置及び放射線撮影装置の一例の構成を示し、図2は、図1の放射線撮影装置の制御ブロックを示す。
【0015】
X線撮影装置1は、被写体(患者)Hを立位状態で撮影するX線診断装置であって、被写体HにコーンビームX線を放射するX線源2と、X線源2に対向配置されてX線源2から被写体Hを透過したX線を検出して画像データを生成するX線画像検出装置3と、操作者の操作に基づいてX線源2の曝射動作やX線画像検出装置3の撮影動作を制御するとともに、X線画像検出装置3により取得された画像データを処理するコンソール4とに大別される。X線源2は、天井から吊り下げられたX線源保持装置5により保持されている。X線画像検出装置3は、床に設置されたスタンド6により保持されている。
【0016】
X線源2は、X線源制御部10の制御に基づき、高電圧発生器11から印加される高電圧に応じてX線を発生するX線管12と、X線管12から発せられたX線のうち、被写体Hの検査領域に寄与しない部分を遮蔽するように照射野を制限する可動式のコリメータ13を有するコリメータユニット14とから構成されている。
【0017】
X線源保持装置5は、天井に設置された天井レール15に沿って水平方向(z方向)に移動自在に構成された台車部16と、互いに連結されて台車部16から下方向に延伸する複数の支柱部17と、台車部16を天井レールに沿って移動させるための駆動機構及び支柱部17を伸縮させるための駆動機構とを備えている。X線源2は、支柱部17の先端部に取り付けられている。X線源保持装置5が天井レール15に沿って移動することにより、X線源2とX線画像検出装置3との間の水平方向に関する距離SIDが変更され、また、支柱部17が伸縮することによって、X線源2の上下方向に関する位置が変更される。両駆動機構は、操作者の設定操作に基づき、コンソール4により制御される。
【0018】
スタンド6は、床に設置された本体18と、本体18に上下方向に移動自在に取り付けられた保持部19と、保持部19を上下移動させるための駆動機構を備えている。X線画像検出装置3は、保持部19に取り付けられている。駆動機構は、操作者の設定操作に基づき、後述するコンソール4の制御装置20により制御される。
【0019】
コンソール4には、CPU、ROM、RAM等からなる制御装置20が設けられている。制御装置20には、操作者が撮影指示やその指示内容を入力する入力装置21と、X線画像検出装置3により取得された画像データを処理してX線画像を生成する画像処理部22と、X線画像を記憶する画像記憶部23と、X線画像等を表示するモニタ24と、X線撮影装置1の各部と接続されるインターフェース(I/F)25とを備えている。制御装置20、入力装置21、画像処理部22、画像記憶部23、モニタ24、及びI/F25は、バス26を介して接続されている。
【0020】
入力装置21の操作により、X線源2−X線画像検出装置3間距離(撮影距離)SIDや管電圧等のX線撮影条件、撮影タイミング等が入力される。制御装置20は、X線源保持装置5から供給されるX線源2の水平方向位置に基づいて、上記の入力された撮影距離SIDとなる位置にX線源2を移動させるように、X線源保持装置5を駆動する。また、制御装置20は、スタンド6から供給されるX線画像検出装置3の上下方向位置に基づいて、X線画像検出装置3に対向する上下方向位置にX線源2を移動させるようにX線源保持装置5を駆動する。
【0021】
X線画像検出装置3は、X線露光によって蛍光を発する蛍光組成物を含むシンチレータ(蛍光体)30と、シンチレータ30を間に挟むように配置された第1のセンサパネル31及び第2のセンサパネル32とを備えている。
【0022】
本例のX線画像検出装置3は、第1のセンサパネル31がX線源2側に位置するように保持部19(図1参照)に取り付けられており、X線は、第1のセンサパネル31側からX線画像検出装置3に入射する。X線画像検出装置3に入射したX線は、第1のセンサパネル31を透過してシンチレータ30に入射し、X線露光されたシンチレータ30において蛍光が生じる。第1のセンサパネル31は、シンチレータ30に生じた蛍光の一部を検出し、検出したX線に応じた画像データを生成する。第2のセンサパネル32もまた、シンチレータ30に生じた蛍光の一部を検出し、検出したX線に応じた画像データを生成する。
【0023】
第1のセンサパネル31及び第2のセンサパネル32によって生成された両画像データは、それぞれコンソール4の画像処理部22(図2参照)に送出される。画像処理部22は、両画像データに適宜な画像処理を施し、X線画像を生成する。
【0024】
図3は、シンチレータ30の構成を示す。
【0025】
本例において、シンチレータ30は、結晶が柱状に成長してなる柱状結晶を形成し得る蛍光組成物によって形成されている。柱状結晶を形成し得る蛍光組成物としては、CsI:Tl(タリウム賦活ヨウ化セシウム)、NaI:Tl(タリウム賦活ヨウ化ナトリウム)、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、等を例示することができる。なお、柱状結晶を形成し得ない蛍光組成物であってもよく、そのような蛍光組成物として、BaFX:Eu(Xは、BrやIなどのハロゲン)、CaWO4、ZnS:Ag、LaOBr:Tb、YS:Tb、等を例示することができる。
【0026】
シンチレータ30は、上記の柱状結晶35の群によって形成された柱状部34と、非柱状部36とで構成されている。柱状部34及び非柱状部36は、詳細は後述するが、第2のセンサパネル32を支持体として、非柱状部36、柱状部34の順に第2のセンサパネル32上に層状に重なって、気相堆積法により連続的に形成されている。そして、第1のセンサパネル31が、接着層33を介して柱状部34の表面に貼り合わされている。なお、柱状部34及び非柱状部36は同じ蛍光組成物により形成されるが、CsI等の蛍光材料に対するTl等の賦活剤の添加量は異なっていてもよい。
【0027】
柱状部34は、上記の通り柱状結晶35の群によって形成されている。なお、近隣の複数の柱状結晶が結合して一つの柱状結晶を形成する場合もある。隣り合う柱状結晶35の間には空隙が置かれ、柱状結晶35は互いに独立して存在する。
【0028】
非柱状部36は、蛍光組成物の比較的小さい結晶の群によって形成されている。なお、非柱状部36には、上記の蛍光組成物の非晶質体が含まれる場合もある。非柱状部36においては、結晶同士が不規則に結合したり重なり合ったりするため、結晶間に明確な空隙は生じ難い。
【0029】
第1のセンサパネル31を透過してシンチレータ30に入射したX線は、その大部分が、第1のセンサパネルに隣接している柱状部34の柱状結晶の群によって吸収され、柱状結晶35の各々において蛍光が生じる。柱状結晶35に発生した蛍光は、柱状結晶35とその周囲の間隙(空気)との屈折率差に起因して柱状結晶35内で全反射を繰り返すことで拡散を抑制され、第1のセンサパネル31及び第2のセンサパネル32に導光される。それにより、画像の鮮鋭度が向上する。
【0030】
また、非柱状部36は、比較的小さい結晶若しくはその凝集体によって形成され、柱状部34の支持体13側領域に比べて緻密であり、空隙率は小さい。第2のセンサパネル32と柱状部34との間に非柱状部36が介在することにより、第2のセンサパネル32とシンチレータ30との密着性が向上し、シンチレータ30が第2のセンサパネル32から剥離することが防止される。
【0031】
図4は、シンチレータ30の図3におけるIV‐IV断面を示す電子顕微鏡写真である。
【0032】
図4に明らかなように、柱状部34においては、柱状結晶35が結晶の成長方向に対しほぼ均一な断面径を示し、かつ、柱状結晶35の周囲に間隙を有し、柱状結晶35が互いに独立して存在することがわかる。柱状結晶35の結晶径(柱径)は、光ガイド効果、機械的強度、そして画素欠陥防止の観点から、2μm以上8μm以下であることが好ましい。柱径が小さすぎると、柱状結晶35の機械的強度が不足し、衝撃等により損傷する懸念があり、柱径が大きすぎると、画素毎の柱状結晶35の数が少なくなり、結晶にクラックが生じた際にその画素が欠陥となる確率が高くなる懸念がある。
【0033】
ここで、柱径は、柱状結晶35の成長方向上面から観察した結晶の最大径を示す。具体的な測定方法としては、柱状結晶35の成長方向上面からSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することで柱径を測定する。柱状結晶35が100本から200本観察できる倍率(約2000倍程度)で観察し、1撮影に含まれる結晶全てに対し、柱径の最大値を測定して平均した値を採用している。柱径(μm)は小数点以下2桁まで読み、平均値をJIS Z 8401に従い小数点以下2桁目を丸めた値とする。
【0034】
図5は、シンチレータ30の図3におけるV‐V断面を示す電子顕微鏡写真である。
【0035】
図5に明らかなように、非柱状部36においては、結晶同士が不規則に結合したり重なり合ったりして結晶間の明確な空隙は、柱状部34ほどは認めらない。非柱状部36を形成する結晶の径は、密着性の観点から7.0μm以下であることが好ましい。結晶径が大きすぎると、平坦性が低下し、支持体としての第2のセンサパネル32との密着性が低下する懸念がある。
【0036】
ここで、結晶同士が結合している場合の結晶径の測定は、隣接する結晶間に生じる窪み(凹)同士を結んだ線を結晶間の境界と見なし、結合した結晶同士を最小多角形となるように分離して柱径及び柱径に対応する結晶径を測定し、柱状部34における結晶径と同様にして平均値をとり、その値を採用する。
【0037】
また、柱状部34の厚みは、X線のエネルギーにもよるが、柱状部34における十分なX線吸収及び画像の鮮鋭度の観点から、200μm以上700μm以下であることが好ましい。柱状部34の厚みが小さすぎると、X線を十分に吸収することができず、感度が低下する虞があり、厚みが大きすぎると光拡散が生じ、柱状結晶の光ガイド効果によっても画像の鮮鋭度が低下する懸念がある。
【0038】
非柱状部36の厚みは、支持体としての第2のセンサパネル32との密着性の観点から、5μm以上125μm以下であることが好ましい。非柱状部36の厚みが小さすぎると、第2のセンサパネル32との十分な密着性が得られない虞があり、また厚みが大きすぎると、非柱状部36における蛍光の寄与が増大し、画像の鮮鋭度が低下する懸念がある。
【0039】
以下、X画像検出装置3及びシンチレータ30の製造方法の一例を説明する。なお、シンチレータ30を形成する蛍光組成物として、CsI:Tlを用いるものとして説明する。
【0040】
シンチレータ30は、第2のセンサパネル32を支持体として、非柱状部36、柱状部34の順に第2のセンサパネル32上に層状に重なって、気相堆積法により連続的に形成される。具体的には、真空度0.01〜10Paの環境下で、CsI:Tlを抵抗加熱式のるつぼに通電するなどの手段で加熱して気化させ、第2のセンサパネル32の温度を室温(20℃)〜300℃としてCsI:Tlを第2のセンサパネル32上に堆積させる。
【0041】
第2のセンサパネル32上にCsI:Tlの結晶相を形成する際、当初は直径の比較的小さい結晶を堆積させて非柱状部36を形成する。非柱状部36を形成した後、真空度及び第2のセンサパネル32の温度の少なくとも一方の条件を変更して、連続して柱状部34を形成する。具体的には、真空度を上げる、及び/又は第2のセンサパネル32の温度を高くすることによって、CsI:Tlの結晶を柱状に成長させて柱状結晶35の群、つまりは柱状部34を形成し、シンチレータ30を得る。
【0042】
以上によりシンチレータ30を効率よく、容易に製造することができる。また、この製造方法によれば、真空度や第2のセンサパネル32の温度を制御することで、簡易に種々の仕様のシンチレータを設計通りに製造することができるという利点をも有する。
【0043】
次いで、シンチレータ30の柱状部34側の表面に、接着層33を介して第1のセンサパネル31を貼り合わせて、X線画像検出装置3を得る。なお、接着層によって覆われるシンチレータ30の柱状部34側の表面は、柱状結晶35の先端部の集合によって構成され、柱状結晶35の先端部は、その結晶成長末期における第2のセンサパネル32の温度にもよるが、典型的には凸形状となる。そこで、柱状部34側の表面を研磨して、平坦性を確保した上で、接着層33を介して第1のセンサパネル31を貼り合わせるようにしてもよい。それによれば、密着性が高まると共に、第1のセンサパネル31の損傷を防止することができる。また、研磨することに替えて、柱状部34の表面に、更に非柱状部36と同様の非柱状部を形成するようにしてもよい。
【0044】
接着層33を形成する材料としては、シンチレータ30から出射される蛍光を減衰させることなく第1のセンサパネル31に到達させ得るものであれば特に制限はなく、例えば、UV硬化接着剤や加熱硬化型接着剤や室温硬化型接着剤やホットメルト型接着剤などの接着剤、若しくはゴム系粘着剤やシリコン系粘着剤やアクリル系粘着剤などの粘着剤、又はこれらの接着剤や粘着剤が両面に設けられた両面接着/粘着シート、等によって形成することができる。なお、接着剤としては、画像の鮮鋭度を低下させないという観点から、十分に薄い接着層を形成し得る低粘度エポキシ樹脂製の接着剤を用いることが好ましい。また、粘着剤としては、光や酸化による劣化が少ないアクリル系粘着剤が好ましい。
【0045】
次に、第1のセンサパネル31及び第2のセンサパネル32について説明する。
【0046】
図6は、X線画像検出装置3に含まれる第1のセンサパネル31及び第2のセンサパネル32の構成を示し、図7は、第1のセンサパネル31及び第2のセンサパネル32の図6におけるVII‐VII断面を示す。
【0047】
X線画像検出装置3におけるX線入射側に配置される第1のセンサパネル31は、複数の第1のセンサモジュール40を有しており、これらの第1のセンサモジュール40は、面状に配列され、隣り合うセンサモジュール40と適宜な接着剤を用いて互いに接合されている。図示の例においては、第1のセンサパネル31は、2つの第1のセンサモジュール40を有し、これらの第1のセンサモジュール40は、X方向に配列され、互いに接合されている。
【0048】
第1のセンサモジュール40は、半導体基板41と、この半導体基板41に2次元状に配列された複数の画素42とを有している。各画素42は、シンチレータから出射された蛍光を受光して電荷を生成するフォトダイオードなどの光電変換素子43と、光電変換素子43において生成された電荷を読み出すためのCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの読み出し回路部44とで構成されている。画素42を構成する光電変換素子43及び読み出し回路部44は、いずれも半導体基板41に形成されている。また、半導体基板41において隣り合う画素42の間には画素分離領域45が形成されている。
【0049】
画素分離領域45は、例えば、半導体基板41とは逆導電型の領域として形成され、隣り合う画素42同士は、画素分離領域45とその周囲の半導体基板41との界面に形成されるpn接合によって絶縁分離される。また、画素分離領域45は、例えば、半導体基板41の表面に形成された溝(トレンチ)内部に絶縁膜を埋め込むことによって形成され、隣り合う画素42同士は、この絶縁膜によって絶縁分離される。
【0050】
第1のセンサモジュール40の半導体基板41を形成する材料としては、典型的には単結晶シリコンが用いられるが、本例において、第1のセンサモジュール40は、X線画像検出装置3におけるX線入射側に配置されており、比較的多量のX線に晒されることから、単結晶シリコンよりもX線耐性に優れる半導体材料を用いることが好ましい。そのような半導体材料としては、単結晶シリコンよりもバンドギャップが大きい半導体材料であり、具体的には、SiC、GaN、ZnO、C(ダイヤモンド)、BN、AlN、等を例示することができる。
【0051】
本例のX線画像検出装置3において、第2のセンサパネル32もまた、複数の第2のセンサモジュール50を有しており、これらの第2のセンサモジュール50は、面状に配列され、隣り合うセンサモジュール50と互いに接合されている。図示の例においては、第2のセンサパネル32は、2つの第2のセンサモジュール50を有し、これらの第2のセンサモジュール50は、X方向に配列され、互いに接合されている。
【0052】
第2のセンサモジュール50は、第1のセンサモジュール40と同様に、半導体基板51と、この半導体基板51に2次元状に配列された複数の画素52とを有している。各画素52は、光電変換素子53と、光電変換素子53において生成された電荷を読み出すための読み出し回路部54とで構成されている。そして、隣り合う画素52の間には画素分離領域55が形成されている。
【0053】
第2のセンサモジュール50は、X線画像検出装置3におけるX線入射側とは反対側に配置されており、入射したX線の大部分はシンチレータ30によって吸収されるため、第1のセンサモジュール40のように多量のX線に晒されることはない。よって、第2のセンサモジュール50の半導体基板51を形成する材料としては、単結晶シリコンでもよいし、単結晶シリコンよりもバンドギャップが大きいSiC等の上記の半導体材料でもよい。
【0054】
本例のX線画像検出装置3において、蛍光を多く発生させるシンチレータ30のX線入射側には、第1のセンサパネル31が配置されており、第1のセンサパネル31は、第2のセンサパネル32に比べて、感度及び画像の鮮鋭度に優れた画像データを生成可能である。ここで、第1のセンサパネル31を構成する第1のセンサモジュール40において、その半導体基板41を形成する材料として、単結晶シリコンよりもバンドギャップが大きい上記の半導体材料を用いた場合に、半導体基板41に形成される光電変換素子43の分光感度は、単結晶シリコン基板の場合と比べて短波長側にシフトする。例えば、単結晶シリコンフォトダイオードの分光感度の極大値が750nm付近であるのに対して、SiCフォトダイオードの分光感度の極大値は440nm付近である。そこで、シンチレータ30を形成する蛍光組成物は、光電変換素子42の分光感度に応じて、その分光感度の極大値に適合するピーク波長の蛍光を生じる蛍光組成物を用いることが好ましい。
【0055】
具体的には、半導体基板41を形成する材料として単結晶シリコンを用い、この半導体基板41に光電変換素子43を形成する場合には、シンチレータ30を形成する蛍光組成物としては、例えば、ピーク波長540nm付近の蛍光を生じるCsI:Tlを用いることが好ましい。一方、半導体基板41を形成する材料として、単結晶シリコンよりもバンドギャップが大きい上記の半導体材料を用い、この半導体基板41に光電変換素子43を形成する場合には、ピーク波長が540nmよりも小さい蛍光を生じる蛍光組成物を用いることが好ましい。そのような蛍光組成物としては、CsI:Na(ピーク波長420nm)、BaFX:Eu(Xは、BrやIなどのハロゲン(ピーク波長380nm))、CaWO4(ピーク波長425nm)、ZnS:Ag(ピーク波長450nm)、LaOBr:tb、YS:Tb、等を例示することができる。
【0056】
以上のように構成された第1のセンサパネル31及び第2のセンサパネル32は、それらの対向方向にみて、X方向に隣り合う第1のセンサモジュール40の連結部46と、同じくX方向に隣り合う第2のセンサモジュール50の連結部56とがX方向に間隔を置くように配置されている。かかる相対位置関係において、第1のセンサパネル31における連結部46に、第2のセンサパネル32における画素52の並びが重なっている。
【0057】
X画像検出装置3に入射したX線は、第1のセンサパネル31を透過してシンチレータ30に入射し、X露光されたシンチレータ30において蛍光が生じる。第1のセンサパネル31は、シンチレータ30に生じた蛍光の一部を検出し、検出したX線に応じた画像データを生成する。第2のセンサパネル32もまた、シンチレータ30に生じた蛍光の一部を検出し、検出したX線に応じた画像データを生成する。
【0058】
第1のセンサパネル31によって生成された第1の画像データにおいて、連結部46に対応する画素は画素情報が欠落した欠陥画素となる。しかし、第1のセンサパネルの連結部46には、第2のセンサパネル32の画素52の並びが重なっており、第2のセンサパネル32によって生成された第2の画像データにおいて、上記の第1の画像データの欠陥画素に対応する画素は、連結部46を透過してシンチレータ30に入射したX線強度に関連した画素情報を有する。
【0059】
そこで、コンソール4の画像処理部22(図2参照)は、第1の画像データの欠陥画素について、それらの欠陥画素に対応する第2の画像データの画素の画素情報を用い、適宜な重み付け等を行って補間してX線画像を生成する。それにより、欠陥画素がない、あるいは欠陥画素が削減されたX線画像を得ることができる。更に、第1の画像データの欠陥画素の補間に用いられる第2の画像データの画素の画素情報は、欠陥画素に対応する第1のセンサパネル31の連結部46を透過してシンチレータ30に入射したX線強度に関連しており、第1の画像データにおいて、欠陥画素の周囲の画素の画素情報を用いて補間する場合に比べて、より精度の高い補間が可能となる。
【0060】
以上、説明したように、X線画像検出装置3においてX線入射側に配置される第1のセンサパネル31を、複数の第1のセンサモジュール40を連結して構成しており、個々の第1のセンサモジュール40のサイズが小さくとも、第1のセンサパネル31全体としての撮像範囲を確保することができる。それにより、第1のセンサモジュール40として、比較的小サイズなものに限られる、読み出し回路部が半導体基板に形成されたセンサを用いることができ、センサモジュール40の基板によるX線吸収を低減して、X線画像検出装置3の感度を向上させることができる。
【0061】
そして、第1のセンサパネル31によって生成された第1の画像データにおいて、連結部46に対応する欠陥画素については、第2のセンサパネル32によって生成された第2の画像データにおいて、それらの欠陥画素に対応する画素の画素情報を用いて補間することにより、欠陥画素がない、あるいは欠陥画素が削減された、高画質なX線画像を得ることができる。
【0062】
なお、上述したX線画像検出装置3において、シンチレータ30は、第2のセンサパネル32を支持体として、気相堆積法によって第2のセンサパネル32上に直接形成されているものとして説明したが、かかる構成に限られるものではない。例えば、光透過性の支持体を用い、この支持体上にシンチレータ30を形成して、接着層を介して、支持体と第2のセンサパネル32とを貼り合わせるようにしてもよい。光透過性の支持体としては、ポリイミド、ポリアリレート、二軸延伸ポリスチレン(OPS)、アラミド、等からなる透明なフィルムやフレキシブル基板を例示することができる。
【0063】
また、第1のセンサパネル31とシンチレータ30との間や、第2のセンサパネル32とシンチレータ30との間に接着層を設けずに、第1のセンサパネル31と第2のセンサパネル32とでシンチレータ30を挟持するようにしてもよい。それによれば、第1のセンサパネル31及び第2のセンサパネル32とシンチレータ30との分離が容易であり、例えば、第1のセンサパネル31及び第2のセンサパネル32を構成するいずれかのセンサモジュールが損傷した場合などに、第1のセンサパネル31ないし第2のセンサパネル32を分離して、損傷したセンサモジュールを容易に取り替えることができ、リワーク性に優れる。
【0064】
また、上述したX線画像検出装置3において、複数の第1のセンサモジュール40は、互いに接合されることによって連結され、第1のセンサパネル31を構成するものとして説明したが、図8に示すように、支持基板47を用い、この支持基板47上において複数の第1のセンサモジュール40を配列し、これらの第1のセンサモジュール40を支持基板47にそれぞれ固定して、第1のセンサパネル31を構成するようにしてもよい。図8に示す例において、第1のセンサモジュール40の各々は、紫外線照射によって剥離する解体型接着剤48によって透明な支持基板47に接着固定されている。かかる構成によれば、いずれかのセンサモジュール40が損傷した場合に、そのセンサモジュール40の背後から紫外線を照射することによって、そのセンサモジュール40のみを分離して容易に取り替えることができ、リワーク性が更に向上する。なお、第2のセンサパネル32についても、同様に、支持基板を用い、複数の第2のセンサモジュール50を支持基板にそれぞれ固定して構成するようにしてもよい。
【0065】
図9は、X画像検出装置3の変形例を示す。
【0066】
図9に示すX線画像検出装置103は、シンチレータ(図示せず)と、シンチレータを間に挟むように配置された第1のセンサパネル131及び第2のセンサパネル132とを備えている。
【0067】
X線入射側に配置される第1のセンサパネル131は、4つの第1のセンサモジュール40を有しており、これらの第1のセンサモジュール40は、X方向及びY方向にそれぞれ2つずつ配列され、互いに連結されている。第2のセンサパネル132もまた、4つの第2のセンサモジュール50を有しており、これらの第2のセンサモジュール50は、X方向及びY方向に2つずつ配列され、互いに連結されている。
【0068】
以上のように構成された第1のセンサパネル131及び第2のセンサパネル132は、それらの対向方向にみて、X方向に隣り合う第1のセンサモジュール40の連結部46xと同じくX方向に隣り合う第2のセンサモジュール50の連結部56xとがX方向に間隔を置き、また、Y方向に隣り合う第1のセンサモジュール40の連結部46yと同じくY方向に隣り合う第2のセンサモジュール50の連結部56yとがY方向に間隔を置くように配置されている。かかる相対位置関係において、第1のセンサパネル131における連結部46x,46yに、第2のセンサパネル132における画素52の並びが重なっている。
【0069】
第1のセンサパネル131によって生成された第1の画像データにおいて、連結部46x,46yに対応する画素は画素情報が欠落した欠陥画素となる。しかし、第1のセンサパネル131の連結部46x,46yには、第2のセンサパネル32の画素52の並びが重なっており、第2のセンサパネル32によって生成された第2の画像データにおいて、上記の第1の画像データの欠陥画素に対応する画素は、連結部46x,46yを透過してシンチレータに入射したX線強度に関連した画素情報を有する。
【0070】
コンソール4の画像処理部22(図2参照)は、第1の画像データの欠陥画素について、それらの欠陥画素に対応する第2の画像データの画素の画素情報を用い、適宜な重み付け等を行って補間してX線画像を生成する。それにより、欠陥画素がない、あるいは欠陥画素が削減されたX線画像を得ることができる。更に、第1の画像データの欠陥画素の補間に用いられる第2の画像データの画素の画素情報は、欠陥画素に対応する第1のセンサパネル131の連結部46x,46yを透過してシンチレータに入射したX線強度に関連しており、第1の画像データにおいて、欠陥画素の周囲の画素の画素情報を用いて補間する場合に比べて、より精度の高い補間が可能となる。
【0071】
図10は、X画像検出装置3の他の変形例を示す。
【0072】
図10に示すX線画像検出装置203は、シンチレータ(図示せず)と、シンチレータを間に挟むように配置された第1のセンサパネル131及び第2のセンサパネル232とを備えている。
【0073】
X線入射側に配置される第1のセンサパネル131は、複数の第1のセンサモジュール40を有しており、これらの第1のセンサモジュール40は、X方向及びY方向に配列され、互いに連結されている。一方の第2のセンサパネル232は、単一のセンサモジュールとして形成されており、第1のセンサパネル131に比べて、その撮像領域のサイズは小さい。
【0074】
ここで、被写体H及びX線画像検出装置203は、典型的には、被写体Hにおいて特に関心の高い部位がX線画像検出装置203の中心付近に重なるように、それらの位置関係が調整される。そこで、第2のセンサパネル232は、その中心が第1のセンサパネル131の中心に重なるように配置されている。かかる相対位置関係において、第1のセンサパネル131の連結部46x及び46yの第1のセンサパネル131における中心付近の部分に、第2のセンサパネル232の画素の並びが重なっている。
【0075】
コンソール4の画像処理部22(図2参照)は、第1のセンサパネル131によって生成された第1の画像データにおいて、連結部46x,46yの中心付近に対応する欠陥画素について、それらの欠陥画素に対応する第2の画像データの画素の画素情報を用い、適宜な重み付け等を行って補間してX線画像を生成する。それにより、欠陥画素が削減されたX線画像を得ることができる。更に、第1の画像データの欠陥画素の補間に用いられる第2の画像データの画素の画素情報は、欠陥画素に対応する第1のセンサパネル131における連結部46x,46yを透過してシンチレータに入射したX線強度に関連しており、第1の画像データにおいて、欠陥画素の周囲の画素の画素情報を用いて補間する場合に比べて、より精度の高い補間が可能となる。
【0076】
そして、第1のセンサパネル及び第2のセンサパネルの2つのセンサパネルを、いずれも複数のセンサモジュールを連結して構成する場合に比べて、X線画像検出装置の構成を簡素化することができ、関心の高い部位については、上述の通り、欠陥画素を高精度に補間して削減したX線画像を得ることができる。
【0077】
図11は、本発明の実施形態を説明するための放射線画像検出装置の他の例を示す。
【0078】
図11に示すX線画像検出装置303は、X線露光によって蛍光を発する蛍光組成物を含むシンチレータ30と、シンチレータ30を間に挟むように配置された第1のセンサパネル331及び第2のセンサパネル332とを備えている。
【0079】
X線画像検出装置303におけるX線入射側に配置される第1のセンサパネル331は、複数の第1のセンサモジュール340を有しており、これらの第1のセンサモジュール340は、面状に配列され、隣り合うセンサモジュール340と互いに連結されている。
【0080】
第1のセンサモジュール340は、半導体基板341と、この半導体基板341に2次元状に配列された複数の画素342とを有している。各画素342は、シンチレータから出射された蛍光を受光して電荷を生成する光電変換素子343と、光電変換素子343において生成された電荷を読み出すための読み出し回路部344とで構成されている。また、半導体基板341において隣り合う画素342の間には画素分離領域345が形成されている。
【0081】
本例のX線画像検出装置303において、第1のセンサモジュール340の光電変換素子343は、有機光電変換素子であって、半導体基板341上に積層された、有機光電変換(OPC;Organic photoelectric conversion)材料の薄膜からなる光導電層347、及びこれを挟む一対の電極348a,348bによって形成されている。一方、読み出し回路部344は、半導体基板341に形成されており、その上に形成された光電変換素子343の一方の電極348bと接続される。
【0082】
OPC材料としては、アリーリデン系有機化合物、キナクリドン系有機化合物、及びフタロシアニン系有機化合物を例示することができる。OPC膜は、一般に、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ30による発光以外の電磁波を吸収することがほとんどなく、よって、光電変換素子343のX線耐性を高めることができると共に、X線を減衰させることなく透過させてシンチレータ30に入射させることができる。
【0083】
また、光電変換素子343を、半導体基板341上に積層されたOPC膜からなる光導電層347によって形成することにより、半導体基板341を形成する半導体材料によらず、光電変換素子343の分光感度を設定することができ、シンチレータ30を形成する蛍光組成物の選択の幅を拡大することができる。
【0084】
例えば、読み出し回路部344のX線耐性を確保するために、半導体基板341を形成する材料として、単結晶シリコンよりもバンドギャップの大きいSiC等の半導体材料を用いた場合に、そこに形成された光電変換素子の分光感度の極大値は、上述の通り短波長側にシフトして、CsI:Tlのピーク波長(540nm)に適合しなくなる傾向にある。しかし、キナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであり、OPC材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ30の材料としてCsI:Tlを用いたとしても、光電変換素子343の分光感度の極大値とシンチレータ30の蛍光のピーク波長とを適合させることができる。
【0085】
本例のX線画像検出装置303において、第2のセンサパネル332もまた、複数の第2のセンサモジュール350を有しており、これらの第2のセンサモジュール350は、面状に配列され、隣り合うセンサモジュール350と互いに連結されている。
【0086】
第2のセンサモジュール350は、第1のセンサモジュール340と同様に、半導体基板351と、この半導体基板351に2次元状に配列された複数の画素352とを有している。各画素352は、シンチレータ30から出射された蛍光を受光して電荷を生成する光電変換素子353と、光電変換素子353において生成された電荷を読み出すための読み出し回路部354とで構成されている。そして、光電変換素子353は、有機光電変換素子であって、半導体基板351上に積層された、OPC材料の薄膜からなる光導電層357、及びこれを挟む一対の電極358a,358bによって形成されている。一方、読み出し回路部354は、半導体基板351に形成されており、その上に形成された光電変換素子353の一方の電極358bと接続される。また、半導体基板351において隣り合う画素352の間には画素分離領域355が形成されている。
【0087】
以上のように構成された第1のセンサパネル331及び第2のセンサパネル332は、それらの対向方向にみて、X方向に隣り合う第1のセンサモジュール340の連結部346と同じくX方向に隣り合う第2のセンサモジュール350の連結部356とがX方向に間隔を置くように配置されている。かかる相対位置関係において、第1のセンサパネル331における連結部346に、第2のセンサパネル332における画素352の並びが重なっている。
【0088】
コンソール4の画像処理部22(図2参照)は、第1のセンサパネル331によって生成された第1の画像データにおいて連結部346に対応する欠陥画素について、それらの欠陥画素に対応する第2の画像データの画素の画素情報を用い、適宜な重み付け等を行って補間してX線画像を生成する。それにより、欠陥画素がない、あるいは欠陥画素が削減されたX線画像を得ることができる。
【0089】
図12は、本発明の実施形態を説明するための放射線画像検出装置の他の例を示す。
【0090】
図12に示すX画像検出装置403は、X線露光によって蛍光を発する蛍光組成物を含むシンチレータ30と、シンチレータ30を間に挟むように配置された第1のセンサパネル431及び第2のセンサパネル432とを備えている。
【0091】
X線画像検出装置403におけるX線入射側に配置される第1のセンサパネル431は、複数の第1のセンサモジュール440を有しており、これらの第1のセンサモジュール440は、面状に配列され、隣り合うセンサモジュール440と互いに連結されている。
【0092】
第1のセンサモジュール440は、半導体基板441と、この半導体基板441に2次元状に配列された複数の画素442とを有している。各画素442は、シンチレータから出射された蛍光を受光して電荷を生成する光電変換素子443と、光電変換素子443において生成された電荷を読み出すための読み出し回路部444とで構成されている。また、半導体基板441において隣り合う画素442の間には画素分離領域445が形成されている。
【0093】
半導体基板441は、いわゆるSOI(Silicon on Insulator)基板であり、単結晶シリコン基板441a、シリコン酸化膜からなる絶縁層441b、そして、単結晶シリコン層441cが、この順に積層されて形成されている。画素442を構成する光電変換素子443及び読み出し回路部444は、いずれも、半導体基板441の表層を構成する単結晶シリコン層441cに形成されている。SOI基板の表層シリコン層441cに形成された光電変換素子443及び読み出し回路部444は、絶縁層441bがあることにより、バルクの単結晶シリコン基板に形成される場合に比べて、X線耐性に優れる。
【0094】
本例のX線画像検出装置403において、第2のセンサパネル432もまた、複数の第2のセンサモジュール450を有しており、これらの第2のセンサモジュール450は、面状に配列され、隣り合うセンサモジュール450と互いに連結されている。
【0095】
第2のセンサモジュール450は、第1のセンサモジュール440と同様に、単結晶シリコン基板451a、シリコン酸化膜からなる絶縁層451b、そして、単結晶シリコン層451cが、この順に積層されて形成されたSOI基板451と、この半導体基板451に2次元状に配列された複数の画素452とを有している。各画素452は、シンチレータ30から出射された蛍光を受光して電荷を生成する光電変換素子453と、光電変換素子453において生成された電荷を読み出すための読み出し回路部454とで構成されている。画素452を構成する光電変換素子453及び読み出し回路部454は、いずれも、半導体基板451の表層を構成する単結晶シリコン層451cに形成されている。また、SOI基板451において隣り合う画素452の間には画素分離領域455が形成されている。
【0096】
以上のように構成された第1のセンサパネル431及び第2のセンサパネル432は、それらの対向方向にみて、X方向に隣り合う第1のセンサモジュール440の連結部446と同じくX方向に隣り合う第2のセンサモジュール450の連結部456とがX方向に間隔を置くように配置されている。かかる相対位置関係において、第1のセンサパネル431における連結部446に、第2のセンサパネル432における画素452の並びが重なっている。
【0097】
コンソール4の画像処理部22(図2参照)は、第1のセンサパネル431によって生成された第1の画像データにおいて連結部446に対応する欠陥画素について、それらの欠陥画素に対応する第2の画像データの画素の画素情報を用い、適宜な重み付け等を行って補間してX線画像を生成する。それにより、欠陥画素がない、あるいは欠陥画素が削減されたX線画像を得ることができる。
【0098】
上述した放射線画像検出装置は、放射線画像を高感度、高精細に検出しうるため、低放射線照射量で鮮鋭な画像を検出することを要求される、マンモグラフィなどの医療診断用のX線撮影装置をはじめ、様々な装置に組み込んで使用することができる。例えば、工業用のX線撮影装置として非破壊検査に用いたり、或いは、電磁波以外の粒子線(α線、β線、γ線)の検出装置として用いたりすることができ、その応用範囲は広い。
【0099】
以上説明したように、本明細書には、下記(1)〜(15)の放射線画像検出装置、及び下記(16)の放射線撮影装置が開示されている。
【0100】
(1) 放射線露光によって蛍光を発する蛍光組成物を含む蛍光体と、前記蛍光体の放射線入射側に配置され、前記蛍光体から出射される蛍光を検出する光電変換素子及び該光電変換素子に生じた電荷を読み出す読出し回路部を各々含む画素が2次元状に配列された第1のセンサパネルと、前記蛍光体を挟んで前記第1のセンサパネルに対向して配置され、前記蛍光体から出射される蛍光を検出する光電変換素子及び該光電変換素子に生じた電荷を読み出す読出し回路部を各々含む画素が2次元状に配列された第2のセンサパネルと、を備え、前記第1のセンサパネルは、各々前記画素の2次元配列を有する複数の第1のセンサモジュールが少なくとも第1の方向に配列されて構成されており、前記第2のセンサパネルは、前記第1のセンサパネルにおける複数のセンサモジュールの連結部の少なくとも一部に、該第2のセンサパネルにおける前記画素の並びが重なるように配置されている放射線画像検出装置。
(2) 上記(1)の放射線画像検出装置であって、前記第2のセンサパネルは、各々前記画素の2次元配列を有する複数の第2のセンサモジュールが少なくとも前記第1の方向に配列されて構成されており、前記第1のセンサパネルと前記第2のセンサパネルとの対向方向にみて、前記第1のセンサパネルにおいて前記第1の方向に隣り合う第1のセンサモジュールの連結部と、前記第2のセンサパネルにおいて前記第1の方向に隣り合う第2のセンサモジュールの連結部とは、前記第1の方向に間隔を置いている放射線画像検出装置。
(3) 上記(2)の放射線画像検出装置であって、前記第1のセンサパネルは、前記複数の第1のセンサモジュールが前記第1の方向及び該第1の方向と交差する第2の方向に配列されて構成され、前記第2のセンサパネルは、前記複数の第2のセンサモジュールが前記第1の方向及び該第1の方向と交差する第2の方向に配列されて構成されており、 前記第1のセンサパネルと前記第2のセンサパネルとの対向方向にみて、前記第1のセンサパネルにおいて前記第2の方向に隣り合う第1のセンサモジュールの連結部と、前記第2のセンサパネルにおいて前記第2の方向に隣り合う第2のセンサモジュールの連結部とは、前記第2の方向に間隔を置いている放射線画像検出装置。
(4) 上記(1)の放射線画像検出装置であって、前記第2のセンサパネルは、単一のモジュールとして構成されている放射線画像検出装置。
(5) 上記(1)から(4)のいずれか一つの放射線画像検出装置であって、前記第1のセンサモジュールは、半導体基板を有し、前記読出し回路部が該半導体基板に形成されている放射線画像検出装置。
(6) 上記(2)又は(3)の放射線画像検出装置であって、前記第2のセンサモジュールは、半導体基板を有し、前記読み出し回路部が該半導体基板に形成されている放射線画像検出装置。
(7) 上記(5)又は(6)の放射線画像検出装置であって、前記半導体基板を形成する半導体材料は、結晶シリコンよりもバンドギャップが大きい放射線画像検出装置。
(8) 上記(7)の放射線画像検出装置であって、前記半導体材料は、SiC、GaN、ZnO、C(ダイヤモンド)、BN、AlNの群から選ばれるいずれか一つである放射線画像検出装置。
(9) 上記(7)又は(8)の放射線画像検出装置であって、前記光電変換素子は、前記半導体基板に形成されている放射線画像検出装置。
(10) 上記(9)の放射線画像検出装置であって、前記蛍光体の蛍光のピーク波長は、540nmよりも小さい放射線画像検出装置。
(11) 上記(10)の放射線画像変換装置であって、前記蛍光組成物は、CsI:Na、BaFX:Eu(Xはハロゲン)、CaWO4、ZnS:Ag、LaOBr:tb、YS:Tbの群から選ばれるいずれか一つである放射線画像検出装置。
(12) 上記(7)又は(8)に記載の放射線画像検出装置であって、前記光電変換素子は、有機光電変換素子であって、前記半導体基板上に形成されている放射線画像検出装置。
(13) 上記(5)又は(6)の放射線画像検出装置であって、前記半導体基板は、SOI基板である放射線画像検出装置。
(14) 上記(1)から(13)のいずれか一つの放射線画像検出装置であって、前記第1のセンサパネルは、支持基板を有しており、前記複数の第1のセンサモジュールは、前記支持基板にそれぞれ固定されている放射線画像検出装置。
(15) 上記(14)の放射線画像検出装置であって、前記複数の第1のセンサモジュールは、解体型接着剤によって前記支持基板にそれぞれ接着されている放射線画像検出装置。
(16) 上記(1)から(15)のいずれか一つの放射線画像検出装置と、前記第1のセンサパネルによって生成される第1の画像データ、及び前記第2のセンサパネルによって生成される第2の画像データを用いて、放射線画像を生成する画像処理部と、を備え、 前記画像処理部は、前記第1の画像データにおいて、隣り合う前記第1のセンサモジュールの連結部に対応する画素情報を、前記第2の画像データにおいて対応する画素情報を用いて補間し、放射線画像を生成する放射線撮影装置。
【符号の説明】
【0101】
1 X線撮影装置
2 X線源
3 X線画像検出装置
4 コンソール
5 X線源保持装置
6 スタンド
10 X線源制御部
11 高電圧発生器
12 X線管
13 コリメータ
14 コリメータユニット
15 天井レール
16 台車部
17 支柱部
18 本体
19 保持部
20 制御装置
21 入力装置
22 画像処理部
23 画像記憶部
24 モニタ
25 I/F
26 バス
30 シンチレータ(蛍光体)
31 第1のセンサパネル
32 第2のセンサパネル
33 接着層
34 柱状部
35 柱状結晶
36 非柱状部
40 第1のセンサモジュール
41 半導体基板
42 画素
43 光電変換素子
44 読み出し回路部
45 画素分離領域
46 連結部
50 第2のセンサモジュール
51 半導体基板
52 画素
53 光電変換素子
54 読み出し回路部
55 画素分離領域
56 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線露光によって蛍光を発する蛍光組成物を含む蛍光体と、
前記蛍光体の放射線入射側に配置され、前記蛍光体から出射される蛍光を検出する光電変換素子及び該光電変換素子に生じた電荷を読み出す読出し回路部を各々含む画素が2次元状に配列された第1のセンサパネルと、
前記蛍光体を挟んで前記第1のセンサパネルに対向して配置され、前記蛍光体から出射される蛍光を検出する光電変換素子及び該光電変換素子に生じた電荷を読み出す読出し回路部を各々含む画素が2次元状に配列された第2のセンサパネルと、
を備え、
前記第1のセンサパネルは、各々前記画素の2次元配列を有する複数の第1のセンサモジュールが少なくとも第1の方向に配列されて構成されており、
前記第2のセンサパネルは、前記第1のセンサパネルにおける複数のセンサモジュールの連結部の少なくとも一部に、該第2のセンサパネルにおける前記画素の並びが重なるように配置されている放射線画像検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線画像検出装置であって、
前記第2のセンサパネルは、各々前記画素の2次元配列を有する複数の第2のセンサモジュールが少なくとも前記第1の方向に配列されて構成されており、
前記第1のセンサパネルと前記第2のセンサパネルとの対向方向にみて、前記第1のセンサパネルにおいて前記第1の方向に隣り合う第1のセンサモジュールの連結部と、前記第2のセンサパネルにおいて前記第1の方向に隣り合う第2のセンサモジュールの連結部とは、前記第1の方向に間隔を置いている放射線画像検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線画像検出装置であって、
前記第1のセンサパネルは、前記複数の第1のセンサモジュールが前記第1の方向及び該第1の方向と交差する第2の方向に配列されて構成され、
前記第2のセンサパネルは、前記複数の第2のセンサモジュールが前記第1の方向及び該第1の方向と交差する第2の方向に配列されて構成されており、
前記第1のセンサパネルと前記第2のセンサパネルとの対向方向にみて、前記第1のセンサパネルにおいて前記第2の方向に隣り合う第1のセンサモジュールの連結部と、前記第2のセンサパネルにおいて前記第2の方向に隣り合う第2のセンサモジュールの連結部とは、前記第2の方向に間隔を置いている放射線画像検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の放射線画像検出装置であって、
前記第2のセンサパネルは、単一のモジュールとして構成されている放射線画像検出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置であって、
前記第1のセンサモジュールは、半導体基板を有し、前記読出し回路部が該半導体基板に形成されている放射線画像検出装置。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の放射線画像検出装置であって、
前記第2のセンサモジュールは、半導体基板を有し、前記読み出し回路部が該半導体基板に形成されている放射線画像検出装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の放射線画像検出装置であって、
前記半導体基板を形成する半導体材料は、結晶シリコンよりもバンドギャップが大きい放射線画像検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の放射線画像検出装置であって、
前記半導体材料は、SiC、GaN、ZnO、C(ダイヤモンド)、BN、AlNの群から選ばれるいずれか一つである放射線画像検出装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の放射線画像検出装置であって、
前記光電変換素子は、前記半導体基板に形成されている放射線画像検出装置。
【請求項10】
請求項9に記載の放射線画像検出装置であって、
前記蛍光体の蛍光のピーク波長は、540nmよりも小さい放射線画像検出装置。
【請求項11】
請求項10に記載の放射線画像変換装置であって、
前記蛍光組成物は、CsI:Na、BaFX:Eu(Xはハロゲン)、CaWO4、ZnS:Ag、LaOBr:tb、YS:Tbの群から選ばれるいずれか一つである放射線画像検出装置。
【請求項12】
請求項7又は8に記載の放射線画像検出装置であって、
前記光電変換素子は、有機光電変換素子であって、前記半導体基板上に形成されている放射線画像検出装置。
【請求項13】
請求項5又は6に記載の放射線画像検出装置であって、
前記半導体基板は、SOI基板である放射線画像検出装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置であって、
前記第1のセンサパネルは、支持基板を有しており、
前記複数の第1のセンサモジュールは、前記支持基板にそれぞれ固定されている放射線画像検出装置。
【請求項15】
請求項14に記載の放射線画像検出装置であって、
前記複数の第1のセンサモジュールは、解体型接着剤によって前記支持基板にそれぞれ接着されている放射線画像検出装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の放射線画像検出装置と、
前記第1のセンサパネルによって生成される第1の画像データ、及び前記第2のセンサパネルによって生成される第2の画像データを用いて、放射線画像を生成する画像処理部と、
を備え、
前記画像処理部は、前記第1の画像データにおいて、隣り合う前記第1のセンサモジュールの連結部に対応する画素情報を、前記第2の画像データにおいて対応する画素情報を用いて補間し、放射線画像を生成する放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−229999(P2012−229999A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98508(P2011−98508)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】