説明

放射線硬化性接着剤用組成物、複合体、及び、複合体の製造方法

【課題】PVA系樹脂の成形体と他の被着体とを簡易に接着することができ、耐裁断性、耐湿熱性、接着強度等に優れた複合体(積層フィルム等)を形成しうる放射線硬化性接着剤用組成物を提供する。
【解決手段】(A)脂環式エポキシ化合物物、(B)水酸基を少なくとも1個含有し、かつ、数平均分子量が500以上である化合物、及び(C)光酸発生剤、を含む組成物。複合体1は、PVA系成形体2の片面に、本発明の放射線硬化性接着剤用組成物の硬化物からなる接着剤層4を介して、被着体3を積層してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化性接着剤組成物、該放射線硬化性接着剤組成物を用いて形成した複合体、及び該複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、ガスバリア性に優れた積層フィルムが知られている。
例えば、透明プラスチック材料からなる基材の少なくとも片面に透明プライマー層、厚さ5〜300nmの無機酸化物からなる薄膜層、水性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物又は、(b)塩化錫、の少なくとも一方を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア被膜層を順次積層し、更に接着剤を介してシール層としてポリオレフィン系熱可塑性樹脂層を積層したことを特徴とするボイル・レトルト用強密着透明積層体が提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、23℃、相対湿度60%における酸素透過率(A)と、23℃、相対湿度80%における酸素透過率(B)の比(B)/(A)が2.0以上であるガスバリア性フィルムと、シーラントフィルムとを貼り合わせたラミネートフィルムであって、該ガスバリア性フィルムとシーラントフィルムとのラミネートに用いる接着剤が、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を主成分とするラミネート用接着剤であり、且つ該ラミネート用接着剤により形成されるエポキシ樹脂硬化物中に含有される特定の骨格構造が40重量%以上であることを特徴とするラミネートフィルムが提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平10−722号公報
【特許文献2】特開2003−251752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、積層フィルム(例えば、ガスバリアフィルム)を製品化する際に、耐裁断性に優れることが求められている。すなわち、積層フィルムは、通常、使用目的に合ったサイズに裁断して用いられるものであるが、この裁断時に、裁断部分(裁断後の端部)において剥離(接着剤層の欠け)が生じることがあるという問題がある。この剥離は、剥離部分のガスバリア性能を阻害するだけでなく、ガスバリアフィルムの吸湿を促進し、高温高湿下等での変形を引き起こす恐れがある。
本発明は、上述の背景に鑑みてなされたものであって、例えば、PVA系樹脂からなる成形体と、該PVA系樹脂からなる成形体と同種または異種の被着体とを、簡易な製造工程で短時間に接着することができるとともに、耐裁断性、及び被着体−接着剤層間の接着強度等に優れた複合体(積層フィルム等)を形成することのできる放射線硬化性接着剤用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の成分を含む放射線硬化性接着剤用組成物を用いると、例えば、PVA系樹脂からなる成形体と、該PVA系樹脂からなる成形体と同種または異種の被着体とを、簡易な製造工程で短時間で接着することができるとともに、耐裁断性、及び被着体−接着剤層間の接着強度等に優れた複合体を形成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]を提供するものである。
[1] (A)下記式で表される化合物
【化1】

(式(1)中、R13、R14及びR15は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。)、(B)少なくとも1個の水酸基を有し、かつ、数平均分子量が500以上である化合物、及び(C)光酸発生剤、を含むことを特徴とする放射線硬化性接着剤用組成物。
[2] 上記(B)成分の数平均分子量が、1,000以上である前記[1]に記載の放射線硬化性接着剤用組成物。
[3]上記(B)成分が、下記式(2)
HO−(R−O−CO−O)−(R−O−CO−O)−R−OH (2)
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数2〜12の2価の炭化水素基を表し、Rは、RまたはRのいずれかと同じ構造を表す。mは2〜150、nは0〜150であり、かつ、m+nは2〜200である。)で表される化合物である前記[1]又は[2]に記載の放射線硬化性接着剤用組成物。
[4] 上記放射線硬化性接着剤用組成物は、厚さ200μmの硬化物としたときに波長550nmの光の透過率が70%以上である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の放射線硬化性接着剤用組成物。
[5] 上記放射線硬化性接着剤用組成物が、下記一般式(3)で表される構造を含むポリビニルアルコール系樹脂からなるPVA系成形体と、該PVA系成形体と同種又は異種の被着体との接着に用いるための組成物である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の放射線硬化性接着剤用組成物。
【化2】

(式中、rは0〜4の整数である。)
[6] 下記一般式(3)で表される構造を含むポリビニルアルコール系樹脂からなるPVA系成形体の表面に、接着剤層を介して、上記PVA系成形体と同種又は異種の被着体を接着してなる複合体であって、上記接着剤層が、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の放射線硬化性接着剤用組成物の硬化物からなる複合体。
【化3】

(式中、rは0〜4の整数である。)
[7] 上記PVA系成形体と同種又は異種の被着体が、環状オレフィン系樹脂フィルムである前記[6]に記載の複合体。
[8] 前記[6]又は[7]に記載の複合体の製造方法であって、上記PVA系成形体の表面に、上記PVA系成形体と同種又は異種の被着体を、上記放射線硬化性接着剤用組成物を介して積層する積層工程と、上記放射線硬化性接着剤用組成物に放射線を照射して硬化させ、上記複合体を得る放射線硬化工程を含む複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の放射線硬化性接着剤用組成物は、特定の成分を含むため、例えば、PVA系成形体と、該PVA系成形体と同種又は異種の被着体との接着に好適である。特に、被着体として環状オレフィン系樹脂フィルムを用いた場合であっても、良好な接着強度を得ることができ、この場合、優れたガスバリア性と、低い透湿性(低水分透過性)とを両立することができる。
また、本発明の複合体は、接着剤層が特定の成分を有する放射線硬化性接着剤用組成物の硬化物からなるため、優れた耐裁断性(裁断時に、接着剤層の剥離を生じないこと)、耐湿熱性、及び被着体−接着剤層間の接着性等を有する。
さらに、本発明の複合体の製造方法によると、例えば、PVA系成形体の表面に被着体を、放射線硬化性接着剤用組成物を介して積層し、該放射線硬化性接着剤用組成物を光照射して硬化させるだけで複合体(例えば、積層フィルムであるガスバリアフィルム)を形成することができ、複合体の製造効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
まず、本発明の放射線硬化性接着剤用組成物について詳しく説明する。
本発明の放射線硬化性接着剤用組成物は、下記の成分(A)〜(C)及びその他の任意成分を含むものである。
【0009】
[成分(A)]
放射線硬化性接着剤用組成物を構成する成分(A)は、下記式(1)で表される脂環式ジエポキシ化合物である。
【化4】

(式(1)中、R13、R14及びR15は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。)
【0010】
本発明に用いられる成分(A)は、放射線硬化性接着剤用組成物の硬化性(硬化速度)を向上させる機能を有し、かつ、該組成物を低粘度化させる機能を有する。
【0011】
本発明において用いることができる成分(A)の具体例としては、1,2:8,9−ジエポキシリモネン等を挙げることができる。
【0012】
成分(A)として好適に使用できる市販品としては、セロキサイド3000(ダイセル化学工業(株)製)等を挙げることができる。上記の化合物は、1種単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0013】
本発明に用いられる成分(A)の含有量は、有機溶剤を除く組成物全量を100質量%として、好ましくは、3〜90質量%、より好ましくは、5〜80質量%、特に好ましくは、7〜70質量%である。3質量%未満であると、光照射直後の硬化性が不十分なことがあり、90質量%を超えると、PVA系成形体との接着強度が劣ることがある。
【0014】
[成分(B)]
放射線硬化性接着剤用組成物を構成する成分(B)は、水酸基を1個以上含有し、かつ、数平均分子量が500以上の化合物である。
成分(B)として用いられる化合物は、1分子中に1個以上、好ましくは1分子中に1〜4個の水酸基を有するものである。
成分(B)の数平均分子量は、500以上、好ましくは1,000以上である。該分子量の上限値は、特に限定されないが、接着剤用組成物の粘度の過度の増大を防ぐ観点から、好ましくは20,000、より好ましくは10,000である。該分子量が500未満であると、耐裁断性を十分に向上させることができないため、好ましくない。
なお、成分(B)の数平均分子量は、ASTM D2503に従い測定した値である。
成分(B)を用いることにより、耐裁断性に優れた積層フィルムを得ることができる。
【0015】
成分(B)として好適に用いられる化合物としては、ポリカプロラクトンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオールなどが挙げられる。
【0016】
ポリカプロラクトンジオールとしては、例えば、ε−カプロラクトンとジオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンジオールなどが挙げられる。ここで用いられるジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。これらポリカプロラクトンジオールの市販品としては、プラクセル205、205H、205AL、212、212AL、220、220AL(以上、ダイセル化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0017】
ポリエーテルジオールとしては、脂肪族ポリエーテルジオールが好ましく、例えば、
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールなどが挙げられる。これらのポリエーテルジオールの市販品としては、PEG
#600、#1000、#1500、#1540、#4000(以上、ライオン社製)、エクセノール720、1020、2020、3020、510、プレミノールPPG4000(以上、旭硝子社製)などを挙げることができる。
【0018】
ポリエステルジオールとしては、脂肪族ジオール化合物と脂肪族ジカルボン酸化合物の共重合体が好ましい。脂肪族ジオール化合物としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。脂肪族ジオールは1種または2種以上を使用することができる。脂肪族ジカルボン酸も1種または2種以上を使用することができる。これらのポリエステルジオールの市販品としては、クラレポリオールN−2010、O−2010、P−510、P−1010、P−1050、P−2010、P−2050、P−3010、P−3050(以上、クラレ社製)などを挙げることができる。
【0019】
上記ポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、クオドロール等の3価以上の多価アルコールを、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物で変性することにより得られるポリエーテルポリオールを挙げることができる。このような化合物の具体例としては、EO変性トリメチロールプロパン、PO変性トリメチロールプロパン、テトラヒドロフラン変性トリメチロールプロパン、EO変性グリセリン、PO変性グリセリン、テトラヒドロフラン変性グリセリン、EO変性ペンタエリスリトール、PO変性ペンタエリスリトール、テトラヒドロフラン変性ペンタエリスリトール、EO変性ソルビトール、PO変性ソルビトール、EO変性スクロース、PO変性スクロース、EO変性スクロース、EO変性クオドール等を例示することができる。これらのうち、EO変性トリメチロールプロパン、PO変性トリメチロールプロパン、PO変性グリセリン、PO変性ソルビトールが好ましい。
上記ポリオールの市販品としては、サンニックスTP−700、サンニックスGP−1000、サンニックスSP−750、サンニックスGP−600(以上、三洋化成(株)製)等を挙げることができる。
【0020】
また、成分(B)として好適に用いられるポリオールとしては、水酸基含有不飽和化合物の重合体を挙げることができる。上記水酸基含有不飽和化合物としては、水酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらにアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物が挙げられる。
【0021】
また、成分(B)は、下記式(2)で示されるポリカーボネートジオールであることも好ましい。
HO−(R−O−CO−O)−(R−O−CO−O)−R−OH (2)
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数2〜12の2価の炭化水素基を表し、Rは、RまたはRのいずれかと同じ構造を表す。mは2〜150、nは0〜150であり、かつ、m+nは2〜200である。)
上記式(2)で表されるポリカーボネートジオールの製造方法としては特に限定されるものではなく、ジオール化合物とカーボネート化合物のエステル交換反応、ジオール化合物とホスゲンの重縮合反応等、既知の方法が挙げられる。成分(B)の製造に使用されるジオール化合物としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等が挙げられる。また、適度な耐裁断性および剥離強度を得るには、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等の炭素数6の脂肪族炭化水素基を含有するポリカーボネートジオールがより好ましい。
【0022】
ポリカーボネートジオールとして好適に用いられる化合物の市販品としては、DN−980、981、982、983(以上、日本ポリウレタン社製)、PC−8000(PPG社製)、PC−THF−CD(BASF社製)、クラレポリオールC−590、C−1090、C−2050、C−2090、C−3090、C−2065N、C−2015N(以上、(株)クラレ製)、プラクセルCD CD210PL、プラクセルCD CD220PL(以上、ダイセル化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0023】
放射線硬化性接着剤用組成物中、成分(B)の含有率は、好ましくは3〜50質量%、より好ましくは5〜45質量%、特に好ましくは7〜40質量%である。該含有率が3質量%未満であると、接着剤層の耐裁断性が劣るため好ましくない。一方、上記含有率が50質量%を超えると、放射線硬化性接着剤用組成物の粘度が高くなりすぎて塗工性が悪くなったり、接着剤層と被着体との接着強度が劣ったりするため、好ましくない。
【0024】
[成分(C)]
放射線硬化性接着剤用組成物を構成する成分(C)は、光酸発生剤である。
光酸発生剤は、光を受けることによりルイス酸を放出する光カチオン重合開始剤である。
上記光酸発生剤の例として、例えば、下記一般式(4)で表される構造を有するオニウム塩が挙げられる。このオニウム塩は、400nm未満に実質的な光吸収波長を有する。
[RZ]p+[MXq+pp− (4)
(式中、カチオンはオニウムイオンであり、ZはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、ClまたはN≡Nを示し、R、R、RおよびRは、互いに同一または異なる有機基を示す。a、b、cおよびdは、それぞれ0〜3の整数であって、(a+b+c+d−p)はZの価数に等しい。Mは、ハロゲン化物錯体[MXq+p]の中心原子を構成する金属またはメタロイドを示し、例えばB、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xは例えばF、Cl、Br等のハロゲン原子であり、pはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、qはMの原子価である。)
【0025】
前記一般式(4)において、オニウムイオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム等のジアリールヨードニウムや、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム等のトリアリールスルホニウムや、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)−フェニル]スルフィド、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)−フェニル]スルフィド、η−2,4−(シクロペンタジエニル)[1,2,3,4,5,6−η]−(メチルエチル)−ベンゼン]−鉄(1+)等が挙げられる。
前記一般式(4)において、アニオン[MXq+p]の具体例としては、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl)等が挙げられる。
また、一般式[MX(OH)]で表されるアニオンを有するオニウム塩を使用することができる。さらに、過塩素酸イオン(ClO)、トリフルオロメタンスルフォン酸イオン(CFSO)、フルオロスルフォン酸イオン(FSO)、トルエンスルフォン酸イオン、トリニトロベンゼンスルフォン酸アニオン、トリニトロトルエンスルフォン酸アニオン等の他のアニオンを有するオニウム塩を使用することもできる。
【0026】
成分(C)として用いられるオニウム塩の例としては、例えば特開昭50−151996号公報、特開昭50−158680号公報等に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号公報、特開昭52−30899号公報、特開昭56−55420号公報、特開昭55−125105号公報等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭50−158698号公報等に記載のVA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号公報、特開昭56−149402号公報、特開昭57−192429号公報等に記載のオキソスルホキソニウム塩、特開昭49−17040号公報等に記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4, 139, 655号明細書に記載のチオビリリウム塩等が挙げられる。また、鉄/アレン錯体、アルミニウム錯体/光分解ケイ素化合物系開始剤等も挙げることができる。成分(C)として好ましく用いられる光酸発生剤は、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等の芳香族オニウム塩等であり、より好ましくはトリアリールスルホニウム塩である。
【0027】
(C)光酸発生剤の市販品の例としては、UVI−6950、UVI−6970、UVI−6974、UVI−6990(以上、ユニオンカーバイド社製)、アデカオプトマーSP−150、SP−151、SP−170、SP−172(以上、旭電化工業(株)製)、Irgacure 261(以上、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)、CI−2481、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達(株)製)、CD−1010、CD−1011、CD−1012(以上、サートマー社製)、DTS−102、DTS−103、NAT−103、NDS−103、TPS−103、MDS−103、MPI−103、BBI−103(以上、みどり化学(株)製)、PCI−061T、PCI−062T、PCI−020T、PCI−022T(以上、日本化薬(株)製)、CPI−110A、CPI−101A(以上、サンアプロ(株))等を挙げることができる。これらのうち、UVI−6970、UVI−6974、アデカオプトマーSP−170、SP−172、CD−1012、MPI−103、CPI−110A、CPI−101Aは、これらを含有してなる接着剤用組成物に高い光硬化感度を発現させることができることから特に好ましい。上記の光酸発生剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
なお、光酸発生剤による酸の発生を促進させるために、増感剤を併用してもよい。増感剤の例としては、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、ヒドロキシアセトフェノン、ジヒドロキシジフェニルメタン等が挙げられる。
【0028】
本発明の放射線硬化性接着剤用組成物中、(C)光酸発生剤の含有率は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%、特に好ましくは0.3〜3質量%である。上記含有率が0.1質量%未満であると、放射線硬化性接着剤用組成物の放射線硬化性が低下し、十分な機械的強度を有する接着剤層を形成することができないため好ましくない。一方、上記含有率が10質量%を超えると、光酸発生剤が接着剤層の長期特性に悪影響を及ぼす可能性があるため、好ましくない。
【0029】
[成分(D)]
放射線硬化性接着剤用組成物は、さらに成分(D)として、成分(A)以外の脂環式エポキシ化合物を含むことができる。脂環式エポキシ化合物は、好ましくは1分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物である。1分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物を成分(D)の全量中に50質量%以上含有すると、より良好な硬化速度や機械的強度を得ることができる。
【0030】
成分(D)として用いられる脂環式エポキシ化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシシクロへキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0031】
これらの脂環式エポキシ化合物のうち、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートがより好ましく、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートがさらに好ましい。
【0032】
これらの市販品としては、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、エポリードGT−300、エポリードGT−301、エポリードGT−302、エポリードGT−400、エポリード401、エポリード403(以上、ダイセル化学工業(株)製)、KRM2199(アデカ社製)などが挙げられる。
【0033】
放射線硬化性接着剤用組成物中の(D)脂環式エポキシ化合物の含有率は、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは25〜75質量%、特に好ましくは30〜70質量%である。該含有率が20質量%未満の場合、接着剤層の機械的強度及び耐湿熱性が不十分になる傾向がある。上記含有率が80質量%を超えると、放射線硬化性接着剤用組成物を硬化させてなる接着剤層の反り等の変形が大きくなる傾向がある。
【0034】
[成分(E)]
放射線硬化性接着剤用組成物は、さらに成分(E)として、脂肪族エポキシ化合物を含むことができる。成分(E)の脂肪族エポキシ化合物は、接着剤層の機械的強度等をコントロールするために添加される任意成分である。
上記脂肪族エポキシ化合物の具体例としては、例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類;エポキシ化大豆油;エポキシステアリン酸ブチル;エポキシステアリン酸オクチル;エポキシ化アマニ油;エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0035】
放射線硬化性接着剤用組成物中、(E)脂肪族エポキシ化合物の含有率は、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜45質量%、特に好ましくは0〜40質量%である。上記含有率が50質量%を超えると、必須成分である(A)成分等の含有率が小さくなり、本発明の効果を得られなくなるため好ましくない。
【0036】
また、本発明の放射線硬化性接着剤用組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、その他の任意成分として各種の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー等のポリマーあるいはオリゴマー;フェノチアジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤;重合開始助剤;レベリング剤;濡れ性改良剤;界面活性剤;可塑剤;紫外線吸収剤;シランカップリング剤;無機充填剤;顔料;染料等を挙げることができる。
放射線硬化性接着剤用組成物は、成分(A)〜(C)、及び必要に応じて上記任意成分を均一に混合することによって調製することができる。このようにして得られる放射線硬化性接着剤用組成物の粘度は塗工時の温度において、通常、2,000mPa・s以下、好ましくは500mPa・s以下、より好ましくは300mPa・s以下である。
なお、放射線硬化性接着剤用組成物には、必要に応じて有機溶媒等の溶剤を添加することができる。しかし、本発明においては、無溶剤でも放射線硬化性接着剤用組成物を調製することができるため、作業環境の維持、環境負荷等の面から、溶剤を含まないことが好ましい。
放射線硬化性接着剤組成物は、厚さ200μmの硬化物である場合の波長550nmの光の透過率が、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上のものである。
【0037】
次に、図面を適宜参照しながら、本発明の複合体及びその製造方法について説明する。
図1は、本発明の複合体の一例を模式的に示す断面図である。図2は、本発明の複合体の製造方法の一例を示すフロー図である。
図1中、複合体1は、PVA系成形体2と、PVA系成形体2の上面に形成された接着剤層4と、接着剤層4の上面に積層して形成された被着体3とからなる。
【0038】
[PVA系成形体]
PVA系成形体としては、下記一般式(3)で表される構造を含むポリビニルアルコール系樹脂からなる成形体が挙げられる。
【化5】

(式中、rは0〜4の整数である。)
一般式(3)中、rは0〜4の整数であり、好ましくは0である。
このようなポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体などが挙げられるが、耐水性の点から、エチレン・ビニルアルコール共重合体が好ましい。
【0039】
ポリビニルアルコールとしては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコールや、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールや、水酸基が変性された変性ポリビニルアルコールなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。上記ポリビニルアルコールの具体例としては、(株)クラレ製のRSポリマーであるRS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業(株)製のゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)などが挙げられる。
ポリビニルアルコールは、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルの重合体を、アルカリ触媒等を用いてケン化して得られる。
【0040】
上記エチレン・ビニルアルコール共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものであり、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されない。
エチレン・ビニルアルコール共重合体のケン化度は、ガスバリア性の観点から、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。エチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは20〜45モル%である。
上記エチレン・ビニルアルコール共重合体の市販品としては、(株)クラレ製、エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)、日本合成化学工業(株)製、ソアノールD2908、D2935(エチレン含量;29モル%)、D2630(エチレン量;26%)、A4412(エチレン量44%)などが挙げられる。
【0041】
ポリビニルアルコール系樹脂のメルトフローインデックスは、210℃、荷重21.168Nの条件下で、1〜50g/10分、好ましくは5〜45g/10分である。メルトフローインデックスが1g/10分未満であると、ガスバリア性が低下する場合がある。一方、50g/10分を超えると、耐水性、耐溶剤性が低下する場合があり好ましくない。
ポリビニルアルコール系樹脂は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を併用することもできる。
【0042】
PVA系成形体は、上述のポリビニルアルコール系樹脂をキャスティング成形法等の方法によって、成形することにより得られる。前記PVA系成形体は、ホウ酸等による架橋や、延伸をされたものであってもよい。
PVA系成形体の形状としては、特に限定されないが、例えば、フィルム等が挙げられる。なお、本明細書において、「フィルム」の語は、厚みが小さいもの(厚みが1mm未満のもの)の他、厚手のシート(例えば、厚みが1〜5mmのもの)も含むものとする。
PVA系成形体の厚さは、特に限定されないが、例えば偏光膜の場合、通常、10〜40μmとなるように定められる。
[接着剤層]
接着剤層は、上述の放射線硬化性接着剤用組成物を放射線硬化させてなる硬化物層である。
上述の放射線硬化性接着剤用組成物を用いて接着剤層を形成することにより、優れた耐裁断性を得ることができ、また、被着体がシクロオレフィン系ポリマーであっても、被着体−接着剤層間の接着強度等に優れた複合体を得ることができる。
接着剤層の厚さは、特に限定されないが、例えば0.5〜3μmとなるように定められる。
【0043】
[被着体]
上記PVA系成形体と接着される被着体としては、上記PVA系成形体と同種の被着体、又は異種の被着体のいずれも用いることができる。
上記PVA系成形体と同種の被着体としては、上述のとおり、一般式(3)で表されるポリビニルアルコール系樹脂からなるものが挙げられる。この場合、被着体は、PVA系成形体と同一の組成を有する必要はない。例えば、PVA系成形体をポリビニルアルコールからなるフィルムとし、被着体をエチレン・ビニルアルコール共重合体からなるフィルムとすることができる。
上記PVA系成形体と異種の被着体としては、例えば、環状オレフィン系樹脂(例えば、ノルボルネン系樹脂等)、アセテート系樹脂(例えば、トリアセチルセルロース等)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂等)、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などの樹脂からなるフィルムが用いられる。中でも、環状オレフィン系樹脂フィルムが好ましい。
PVA系成形体と接着される被着体として、環状オレフィン系樹脂フィルムを用いると、優れたガスバリア性と低水分透過性とを両立させることができる。
被着体の厚さは、特に限定されないが、例えば、15〜100μmとなるように定められる。また、PVA系以外の被着体は放射線硬化性接着剤用組成物の塗布前に各種表面処理を行うこともできる。
【0044】
(環状オレフィン系樹脂フィルム)
なお、上述の環状オレフィン系樹脂フィルムとしては、環状オレフィン系化合物を少なくとも1種含む単量体組成物を重合し、また必要に応じてさらに水素添加して得られた樹脂からなるフィルムが好適である。
上記環状オレフィン系化合物としては、例えば、下記一般式(5)で表される環状オレフィン系化合物を挙げることができる。
【0045】
【化6】

【0046】
(式(5)中、R〜R11は、各々独立して水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウまたはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換または非置換の炭素原子数1〜15の炭化水素基もしくはその他の1価の有機基を表す。あるいはRとRもしくはR10とR11が相互に結合してアルキリデン基を形成していてもよく、RとR、R10とR11またはRとR10とが相互に結合して炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい。)を形成してもよい。形成される炭素環または複素環は芳香環でもよいし非芳香環でもよい。また、xは0または1〜3の整数、yは0または1を表すが、xが0のときはyも0である。)
【0047】
一般式(5)で表される環状オレフィン系化合物の具体例としては、例えば、以下に示す化合物が例示できるが、これらの例示物に限定されるものではない。
・ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ノルボルネン)
・5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−(4−ビフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−フェニルカルボニルオキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−メチル−5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−メチル−5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5,6−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−フルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−クロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−ブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5,6−ジフルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5,6−ジクロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5,6−ジブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−ヒドロキシエチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−アミノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン
・7−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−(4−ビフェニル)−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7,8,9−トリメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・8−メチル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン
・8−フェニル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン
・7−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−ブロモ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7,8−ジクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7,8,9−トリクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−クロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−ジクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−トリクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−ヒドロキシ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−シアノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・7−アミノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン
・テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・ペンタシクロ[7.4.0.12,5.18,11.07,12]ペンタデカ−3−エン
・ヘキサシクロ[8.4.0.12,5.17,14.19,12.08,13]ヘプタデカ−3−エン
・8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−(4−ビフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−フェニルカルボニルオキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−メチル−8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−メチル−8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8,8−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8,9−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−フルオロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−クロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−ブロモ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8,8−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8,9−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8,8,9,9−テトラクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−ヒドロキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−メチル−8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−シアノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
・8−アミノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン
なお、これら環状オレフィン系化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記環状オレフィン系化合物の種類および量は、得られる樹脂に求められる特性により適宜選択される。
これらのうち、その分子内に酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくはケイ素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を少なくとも1個含む構造(以下、「極性構造」という。)を有する化合物を用いると、他素材との接着性や密着性に優れるため好ましい。特に、前記式(5)中、RおよびR10が水素原子、または炭素数1〜3の炭化水素基、好ましくは水素原子、またはメチル基であり、RまたはR11のいずれか一つが極性構造を有する基であって他が水素原子または炭素数1〜3の炭化水素基である化合物は、樹脂の吸水(湿)性が低く好ましい。さらに、極性構造を有する基が下記一般式(6)で表わされる基である環状オレフィン系化合物は、得られる樹脂の耐熱性と吸水(湿)性とのバランスがとりやすく、好ましく用いることができる。
【0049】
−(CH2zCOOR12 (6)
(式(6)中、R12は置換または非置換の炭素数1〜15の炭化水素基を表し、zは0または1〜10の整数を表す。)
一般式(6)において、zの値が小さいものほど得られる水素添加物のガラス転移温度が高くなり耐熱性に優れるので、zが0または1〜3の整数であることが好ましく、更に、zが0である単量体はその合成が容易である点で好ましい。また、前記一般式(6)におけるRは、炭素数が大きいほど、得られる重合体の水素添加物の吸水(湿)性が低下する傾向にあるが、ガラス転移温度が低下する傾向もあるので、耐熱性を保持する観点からは炭素数1〜10の炭化水素基が好ましく、特に炭素数1〜6の炭化水素基であることが好ましい。
【0050】
なお、前記一般式(5)において、前記一般式(6)で表される基が結合した炭素原子に、炭素数1〜3のアルキル基、特にメチル基が結合していると、耐熱性と吸水(湿)性のバランスの点で好ましい。さらに、前記一般式(5)において、xが0または1であり、yが0である化合物は、反応性が高く、高収率で重合体が得られること、また、耐熱性が高い重合体水素添加物が得られること、さらに工業的に入手しやすいことから好適に用いられる。
【0051】
上記環状オレフィン系樹脂においては、上記環状オレフィン系化合物と共重合可能な他の単量体を単量体組成物に含ませて重合することができる。
上記共重合可能な他の単量体として、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロドデセンなどの環状オレフィンや1,4−シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロドデカトリエンなどの非共役環状ポリエンを挙げることができる。
これらの共重合可能な他の単量体は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0052】
上記環状オレフィン系化合物を含む単量体組成物の重合方法については、例えば、特開2006−201736号公報、特開2005−164632号公報等に記載されたメタセシス開環重合や付加重合による公知の方法を用いることができる。
また、得られた(共)重合体の水素添加の方法についても、上記の文献に記載された公知の方法を用いることができる。
水素添加重合体の水素添加率は、500MHz、1H−NMRで測定した値として、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは98%以上である。水素添加率が高いほど、熱や光に対する安定性が優れたものとなり、長期にわたって安定した特性を得ることができる。
【0053】
環状オレフィン系樹脂の固有粘度〔η〕inhは、好ましくは0.2〜2.0dl/g、より好ましくは0.35〜1.0dl/g、特に好ましくは0.4〜0.85dl/gである。
環状オレフィン系樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、好ましくは5,000〜100万、より好ましくは1万〜50万、特に好ましくは1.5万〜25万である。重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万〜200万、より好ましくは2万〜100万、特に好ましくは3万〜50万である。
環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、特に好ましくは150℃以上である。
環状オレフィン系樹脂の飽和吸水率は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1〜0.8質量%である。飽和吸水率が1質量%を超える場合、該樹脂から得られる保護フィルムが、使用される環境によっては経時的に吸水(湿)変形するなど、耐久性に問題が生じることがある。一方、0.1質量%未満の場合、接着性に問題が生じることがある。なお、前記飽和吸水率はASTM D570に従い、23℃の水中で1週間浸漬して増加質量を測定することにより得られる値である。
【0054】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を添加することができる。
酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0055】
(環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法)
環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法については、特開2006−201736号公報、特開2005−164632号公報等に記載された公知の方法を用いることができる。すなわち、環状オレフィン系樹脂フィルムは、前記環状オレフィン系樹脂を直接溶融成形することにより、あるいは溶媒に溶解しキャスティング(キャスト成形)する方法により好適に成形することができる。
【0056】
次に、複合体の製造方法について説明する。
本発明の複合体の製造方法は、PVA系成形体の表面に、PVA系成形体と同種又は異種の被着体を、放射線硬化性接着剤用組成物を介して積層する積層工程と、該放射線硬化性接着剤用組成物を放射線照射(光照射)して硬化させる放射線硬化工程を含む。
図2中、複合体1の製造方法は、PVA系成形体2を準備する工程(a)と、保護フィルム本体である被着体3の表面(片面)に、放射線硬化性接着剤用組成物を塗布して、接着剤用組成物層4’を有する保護フィルム3’を得る工程(b)と、PVA系成形体2の上面に、保護フィルム3’を、接着剤用組成物層4’が対峙するように積層する工程(c)と、光照射により接着剤用組成物層4’を硬化させる工程(d)を含む。
以下、工程ごとに説明する。
【0057】
[工程(a)]
工程(a)は、PVA系成形体2を準備する工程である(図2中の(a)参照)。
[工程(b)]
工程(b)は、被着体3の片面に放射線硬化性接着剤用組成物を塗布して、接着剤用組成物層4’を有する保護フィルム3’を得る工程である(図2中の(b)参照)。
具体的には、被着体3の片面に、放射線硬化性接着剤用組成物を塗布し、必要に応じて乾燥等を行って、接着剤用組成物からなる層3’を形成する。このとき、PVA系以外のフィルムを接着する場合は、接着強度を高めるために接着剤用組成物を塗布する面にコロナ処理を行うことが好ましい。
上記放射線硬化性接着剤用組成物の塗布方法としては、特に限定されないが、例えばダイコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法が挙げられる。
【0058】
[工程(c)]
工程(c)は、PVA系成形体2の上面に、保護フィルム3’を、接着剤用組成物層4’が対峙するように積層する工程である(図2中の(c)参照)。
【0059】
[工程(d)]
工程(d)は、放射線5を照射することにより接着剤用組成物層4’を硬化させる工程である(図2中の(d)参照)。
具体的には、PVA系成形体2及び/又は被着体3の側から、光5を照射する。これにより、接着剤用組成物層4’が硬化して接着剤層4となる。その結果、PVA系成形体2と被着体3とが接着剤層4を介して接着され、複合体1が得られる(図2中の(e)参照)。
光の照射量は、特に限定されるものではないが、波長200〜450nm、照度1〜500mW/cm2の光を、照射量が10〜10,000mJ/cm2となるように照射して露光することが好ましい。
ここで、放射線の照射は、被着体3の側からに限らず、PVA系成形体2側から放射線5を照射してもよいし、両方から照射することもできる。
照射する放射線の種類としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等を用いることができるが、特に紫外線が好ましい。放射線の照射装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ等を用いることが好ましい。
得られた複合体は、通常、裁断等の加工が施されて、偏光板や、食品、飲料、医薬品、化粧品などの包装材料または容器等の用途に使用される。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1〜4、比較例1、2]
[1.放射線硬化性接着剤用組成物の調製]
攪拌装置付きの容器に、表1に示す配合割合で、成分(A)〜(C)及び任意成分を投入し、4時間攪拌し均一に混合した。攪拌を停止し、24時間静置して、実施例1〜6に用いる放射線硬化性組成物を得た。同様に、比較例1、2に用いる放射線硬化性組成物を得た。
なお、表1中の各成分の化合物名は、次のとおりである。
セロキサイド3000: 1,2:8,9−ジエポキシリモネン(ダイセル化学工業社製)
クラレポリオールP−510: ポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)−alt−(アジピン酸)](クラレ社製)
クラレポリオールP−1010: ポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)−alt−(アジピン酸)](クラレ社製)
プレミノールPPG4000: ポリプロピレングリコール(旭硝子社製)
クラレポリオールC−2090: ポリ((3−メチル−1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール)カーボネート)(クラレ社製;数平均分子量2,000)
CPI−110A: ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモナート(サンアプロ社製)
セロキサイド2021P: 3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製)
KRM2199: ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート(アデカ社製)
SR−NPG: ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製)
サンニックスGP−400: ポリオキシプロピレングリセリルエーテル(三洋化成工業社製)
【0061】
【表1】

【0062】
[2.接着用基材の製造または準備]
[製造例1]
三井化学社製の「アペルAPL6013T」(商品名)をシクロペンタンに溶解させ、樹脂濃度30質量%の樹脂溶液とした。この樹脂溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム上にバーコーターで塗布し、1時間静置した後、80℃で12時間乾燥させて膜厚72μmのアペルフィルムを得た。
【0063】
[製造例2]
ポリプラスチックス社製の「TOPAS5013」(商品名)を塩化メチレンに溶解させた以外は製造例と同様の操作を行い、75μmのトパスフィルムを得た。
その他、表に記載したフィルムは以下のものを使用した。
PVAフィルム:クラレ社製 「クラリアS」(商品名)
エバールフィルム:クラレ社製 「エバール EF−F」(商品名)
TACフィルム:富士フイルム社製 「フジタック80D」(商品名)
アートンフィルム:JSR社製 「アートンR5000」(商品名)
ゼオノアフィルム:日本ゼオン社製 「ゼオノアZF14−100」(商品名)
このうち、PVAフィルム、エバールフィルム以外のフィルムは、コロナ表面処理装置(春日電機社製の「AGF−012」)を用い、320W・分/mの放電量でフィルム表面にコロナ放電処理を行い、表面処理後1時間以内に接着を実施した。
【0064】
[3.複合体(貼合フィルム)の作製]
実施例1〜4、比較例1、2の各放射線硬化性組成物を、ワイヤーバーコーター#3を用いて被着体となるPVAフィルムに塗布した。被着体のPVAフィルムをもう1枚のPVAフィルムに気泡等の欠陥が入らないように貼合した。ガラス板上にフィルムの四方をテープで固定し、メタルハライドランプ(照度220mW/cm、照射光量1,000mJ/cm)にて照射し接着し、PVAフィルム/PVAフィルムを得た。なお、光照射はPVA系成形体の側から行った。
他のフィルムでも同様の操作を行い、表1に示す各種の貼合フィルムを作製した。なお、アートンフィルム/PVAフィルム/アートンフィルムの光照射は、後から貼り合わせたフィルムの側から光照射を行った。
【0065】
[4.複合体の評価]
[耐裁断性]
光照射の後、23℃、50%RHで24時間静置した貼合フィルムを、コクヨ社製の「パンチPN−2」(商品名)で打ち抜き、円形のフィルム片の剥がれの有無及び程度を確認し、以下の基準で判定した。結果を表1に示す。
◎:剥がれなし
○:切片の周囲に線状の剥がれあり
×:明らかな剥がれあり
【0066】
[波長550nmの光の透過率]
ガラス板上に、PETフィルム(膜厚188μm、表面未処理品)を粘着剤で固定し、PETフィルム上にギャップ15ミルのアプリケーターを用い、実施例および比較例の接着剤組成物を塗布した。この塗膜に、メタルハライドランプ(照度220mW/cm、照射光量1,000mJ/cm)で光照射し、組成物を硬化させ、23℃、50%RHで24時間静置した。PETフィルムから硬化物を剥離し、膜厚が200±5μmであることを確認した後、U−3410型自記分光光度計(日立製作所製)で、空気をリファレンスとして550nmの透過率を測定した。
【0067】
表1から、実施例1〜4の放射線硬化性組成物を接着剤として用いて作製した複合体(貼合フィルム)は、耐裁断性に優れることがわかる。一方、比較例1、2の複合体はいずれも耐裁断性に劣る。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の複合体の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の複合体の製造方法の一例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0069】
1 複合体
2 PVA系成形体
3 被着体
3’ 保護フィルム
4 接着剤層
4’ 接着剤用組成物層
5 放射線(紫外線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表される化合物
【化1】

(式(1)中、R13、R14及びR15は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基である。)、
(B)水酸基を少なくとも1個含有し、かつ、数平均分子量が500以上である化合物、及び
(C)光酸発生剤、
を含むことを特徴とする放射線硬化性接着剤用組成物。
【請求項2】
上記(B)成分の数平均分子量が、1,000以上である請求項1に記載の放射線硬化性接着剤用組成物。
【請求項3】
上記(B)成分が、下記式(2)で表される化合物
HO−(R−O−CO−O)−(R−O−CO−O)−R−OH (2)
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数2〜12の2価の炭化水素基を表し、Rは、RまたはRのいずれかと同じ構造を表す。mは2〜150、nは0〜150であり、かつ、m+nは2〜200である。)である、請求項1又は2に記載の放射線硬化性接着剤用組成物。
【請求項4】
上記放射線硬化性接着剤用組成物は、厚さ200μmの硬化物としたときに波長550nmの光の透過率が70%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線硬化性接着剤用組成物。
【請求項5】
上記放射線硬化性接着剤用組成物が、下記一般式(3)で表される構造を含むポリビニルアルコール系樹脂からなるPVA系成形体と、該PVA系成形体と同種又は異種の被着体との接着に用いるための組成物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線硬化性接着剤用組成物。
【化2】

(式中、rは0〜4の整数である。)
【請求項6】
下記一般式(3)で表される構造を含むポリビニルアルコール系樹脂からなるPVA系成形体の表面に、接着剤層を介して、上記PVA系成形体と同種又は異種の被着体を接着してなる複合体であって、上記接着剤層が、請求項1〜5のいずれかに記載の放射線硬化性接着剤用組成物の硬化物からなる複合体。
【化3】

(式中、rは0〜4の整数である。)
【請求項7】
上記PVA系成形体と同種又は異種の被着体が、環状オレフィン系樹脂フィルムである請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の複合体の製造方法であって、上記PVA系成形体の表面に、上記PVA系成形体と同種又は異種の被着体を、上記放射線硬化性接着剤用組成物を介して積層する積層工程と、上記放射線硬化性接着剤用組成物に放射線を照射して硬化させ、上記複合体を得る放射線硬化工程を含む複合体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−239723(P2008−239723A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80421(P2007−80421)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】