説明

放射線硬化性被覆物を有する変形可能なフィルムおよびそれから製造される成形品

【課題】被覆されたが、硬化されていないフィルムをロール上に巻き付けることができ、硬化後の被覆物が高い摩耗性とフィルムに対する良好な接着性を示す放射線硬化性被覆物フィルムを提供する。
【解決手段】放射線硬化性被覆物が、(a)ポリイソシアネートと(b1)(メタ)アクリレート基を含み、イソシアネートに対して反応性である化合物とを含む反応混合物の反応により得ることができる(メタ)アクリレート基を含有するポリウレタンポリマーを含み、および≧1nm〜≦200nmの平均粒度を有する無機ナノ粒子をさらに含む放射線硬化性被覆物をさらに含む、フィルムに関する。このような被覆フィルムの製造方法、成形品の製造のための、このようなフィルムの使用、放射線硬化被覆物を有する成形品の製造方法およびこの方法により製造され得る成形品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリレート基を含有するポリウレタンポリマーを含む放射線硬化性被覆物を、さらに含むフィルムに関する。さらに、本発明は、このような被覆フィルムの製造方法、成形品を製造するための、このようなフィルムの使用、放射線硬化性被覆物を用いる成形品の製造方法、およびこの方法により製造され得る成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、ポリマーフィルムを、一般的な塗装方法(例えばナイフ塗工または噴霧)によって広域に渡って被覆し、そしてこの被覆物を、物理的乾燥または部分硬化硬化によって、ほぼタックフリーになるまで最初に乾燥する方法が知られている。次いで、このフィルムは、高温にて変形され、その後、結合され、バック射出成形されるか、または所定の位置で発泡され得る。この概念は、例えば、プラスチック処理装置による成分の製造について、大きな可能性を提供し、三次元成分のためのより複雑な塗装工程を平坦基材のより簡単な塗工によって置き換えることを可能にする。
【0003】
一般に、良好な表面特性は、被覆物の高い架橋密度を必要とする。しかしながら、高い架橋密度は、数%のみの最大可能伸長比を伴う熱硬化挙動を導き、そして、該被覆物は変形操作の間に亀裂が入る傾向がある。この必要な高い架橋密度と所望の高い伸長比との間の明らかな衝突は、例えば、変形の前および後に、二工程で被覆物の乾燥/硬化を行うことにより解決することができる。被覆物における放射線誘導架橋反応は、後硬化に特に適当である。
【0004】
また、ロール上への被覆された変形可能なフィルムの中間の巻き上げは、この方法の経済的適用のために必要である。この操作の間にロールにおいて起こる圧力および温度ストレスは、被覆物の耐ブロッキング性を特に要求する。
【0005】
国際公開WO 2005/080484 A1は、少なくとも一つの基材層と、高い二重結合密度と共に50℃未満のガラス転移温度を有する放射線硬化性材料を含有する最上層を含む放射線硬化性積層シートまたはフィルムを記載する。
【0006】
国際公開WO 2005/118689 A1は、放射線硬化性材料がさらに酸基を含有する、同様の積層シートまたはフィルムを開示する。両出願は、非粘着性として最上層を記載する;例えば、フィルムをコアの周りに巻くために必要とされるような、より高い耐ブロッキング性は達成されない。したがって、最上層の放射線硬化前の積層フィルムのロールへの巻き付けの可能性は、言及さえされていない。
【0007】
国際公開WO 2005/099943 A2は、支持体と該支持体に付与された硬化性ラッカーの少なくとも一つの層を有する柔軟性積層複合物を記載する。該硬化性ラッカーの層は、3 mol/kgと6 mol/kgとの間の二重結合密度、-15℃と20℃との間のガラス転移温度Tg、および40%と100%との間の固形分を有する二重結合含有結合剤を含み、そして熱乾燥後は非粘着性である。該文献は、被覆物が低Tgのために埃による汚染に感受性であり得ることを教示する。その実施例において、放射線硬化前の被覆物の乾燥の程度/耐ブロッキング性は、10℃にて60秒間の500 g/cm2の負荷後、濾紙からのエンボスマークがなお目に見える程度に達成される。フィルムのロールにおける被覆物上への負荷は、通常、圧力および温度に関してより高い。したがって、ラッカーの放射線硬化前のフィルムのロールへの巻き付けの可能性は、この文献中にも言及されていない。
【0008】
また、上記出願の全ては、放射線硬化性被覆物の成分としてのナノスケール粒子の使用を言及していない。
【0009】
国際公開WO 2006/008120 A1は、有機結合剤のナノスケールポリマー粒子の水性分散体を開示する。該ナノ粒子は、これらの水性分散体中に、連続相としての水および/または金属酸化物のコロイド水溶液および必要に応じて補助剤および添加剤に加えて、高度分散相として含有される。このタイプの水性組成物は、被覆用ラッカー組成物として使用される。
【0010】
これらの系の乾燥特性の詳細は記載されていない;しかしながら、低分子量のために、特に該ポリウレタン系の低分子量のために、低耐ブロッキング性のみが推測され得る。フィルムの被覆のためのこれらの系の使用は、言及されていない。
【0011】
同様に、このような分散体が熱可塑性プラスチックフィルム上に付与される場合、および該フィルムが変形される場合、該分散体がどのように挙動するかについての記載をこの文献中に見出すことはできない。このような被覆物は、特に、フィルム基材への適当な接着性を示す必要がある。また、上記のように、被覆されたが、硬化されていないフィルムをロール上に巻き付けることができるように、最も高い可能性のある耐ブロッキング性を有することが有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開WO 2005/080484 A1
【特許文献2】国際公開WO 2005/118689 A1
【特許文献3】国際公開WO 2005/099943 A2
【特許文献4】国際公開WO 2006/008120 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、先行技術において、改善された、または少なくとも代替となる、放射線硬化性被覆物を有するフィルムに対する要求がなお存在している。変形および硬化後に被覆物が、高い耐摩耗性と同時にフィルムに対する良好な接着性を示す、このようなタイプのフィルムが望ましいであろう。これとは独立に、変形前に被覆物が、フィルムを如何なる問題もなく巻き上げることができ、それにも関わらず、高い伸長比を変形工程において達成し得るような高い耐ブロッキング性を示す、改善された、または少なくとも代替となる、フィルムも望ましいであろう。
【0014】
本発明は、先行技術における上記の不利な点を少なくとも部分的に解決することを目的にしている。特に、本発明は、改善された、または少なくとも代替となる、放射線硬化性被覆物を有するフィルムを提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施態様は、放射線硬化性被覆物を含むフィルムであって、
該放射線硬化性被覆物が、
(a)ポリイソシアネートと、
(b1)(メタ)アクリレート基を含み、イソシアネートに対して反応性である化合物と
を含む反応混合物の反応から得られる、(メタ)アクリレート基を含むポリウレタンポリマーを含み、および
1 nm〜200 nmの範囲内の平均粒度を有する無機ナノ粒子をさらに含む、
フィルムである。
【0016】
本発明の別の実施態様は、10 μm〜1500 μmの範囲内の厚さを有するポリカーボネートフィルムである、上記フィルムである。
【0017】
本発明の別の実施態様は、上記ポリウレタンポリマーの重量平均Mwが、250000 g/mol〜350000 g/molの範囲内である、上記フィルムである。
【0018】
本発明の別の実施態様は、上記反応混合物が、
(b2)イオン性基および/またはイオン性基に変換可能な基および/または非イオン性基による親水的変性作用を有する化合物と、
(b3)50 g/mol〜500 g/molの範囲内の平均分子量および2以上のヒドロキシル官能価を有するポリオール化合物と、
(b4)アミノ官能性化合物と
をさらに含む、上記フィルムである。
【0019】
本発明の別の実施態様は、上記反応混合物が、
(b5)500 g/mol〜13000 g/molの範囲内の平均分子量および1.5〜5の範囲内の平均ヒドロキシル官能価を有するポリオール化合物
をさらに含む、上記フィルムである。
【0020】
本発明の別の実施態様は、(b3)中のヒドロキシル基数が、5 mole %〜25 mole %の範囲内のヒドロキシル基とアミノ基との合計量の割合を示す(ここで反応混合物中の水のヒドロキシル基は考慮しない)、上記フィルムである。
【0021】
本発明の別の実施態様は、上記放射線硬化性被覆物が、
(b6)(メタ)アクリレート基を含み、イソシアネートに対して非反応性であり、および/または反応しない化合物
をさらに含む、上記フィルムである。
【0022】
本発明の別の実施態様は、上記被覆物中の上記無機ナノ粒子の表面が、他の化合物の共有結合および/または非共有結合によって変性されている、上記フィルムである。
【0023】
本発明のさらに別の実施態様は、
・(a)ポリイソシアネートと、
(b1)(メタ)アクリレート基を含み、イソシアネートに対して反応性である化合物と
を含む反応混合物の反応から得られる、(メタ)アクリレート基を含むポリウレタンポリマーを含み、および
1 nm〜200 nmの範囲内の平均粒度を有する無機ナノ粒子をさらに含む、
ポリマー分散体を調製する工程と、
・上記ポリマー分散体を用いてフィルムを被覆する工程と、
・上記ポリマー分散体を乾燥する工程と
を含む、上記フィルムの製造方法である。
【0024】
本発明のさらに別の実施態様は、上記フィルムを含む成形品である。
【0025】
本発明のさらに別の実施態様は、
・上記フィルムを調製する工程と、
・上記フィルムを成形品に成形する工程と、
・上記成形品上の放射線硬化性被覆物を硬化する工程と
を含む、放射線硬化被覆物を含む成形品の製造方法である。
【0026】
本発明の別の実施態様は、成形品の成形を、20 bar〜150 barの範囲内の圧力下、型中で行う、上記方法である。
【0027】
本発明の別の実施態様は、成形品の成形を、上記フィルムの材料の軟化点未満の、20℃〜60℃の範囲内の温度にて行う、上記方法である。
【0028】
本発明の別の実施態様は、硬化された放射線硬化性被覆物の反対側の上記フィルムの面上に、ポリマーをさらに付与する工程をさらに含む、上記方法である。
【0029】
本発明のさらに別の実施態様は、上記方法により製造された成形品である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
したがって、本発明によれば、放射線硬化性被覆物をさらに含むフィルムであって、
該被覆物が、
(a)ポリイソシアネートと、
(b1)(メタ)アクリレート基を含み、イソシアネートに対して反応性である化合物と
を含む反応混合物の反応から得られる、(メタ)アクリレート基を含むポリウレタンポリマーを含み、および
≧1 nm〜≦200 nmの平均粒度を有する無機ナノ粒子をさらに含む、フィルムが提案される。
このようなフィルムは、例えば、非常に小さい曲率半径を有する構造要素を示す成形品の製造に使用することができる。被覆物は、硬化後に、良好な耐摩耗性および耐薬品性を示す。
【0031】
本発明に使用されるフィルムは、有利には、特に、必要な熱的変形性に加えて、必要とされる一般的な耐性を有する。したがって、原理上適当なものは、特に熱可塑性プラスチックポリマー、例えばABS、AMMA、ASA、CA、CAB、EP、UF、CF、MF、MPF、PF、PAN、PA、PE、HDPE、LDPE、LLDPE、PC、PET、PMMA、PP、PS、SB、PUR、PVC、RF、SAN、PBT、PPE、POM、PP-EPDMおよびUP(DIN 7728第1章にしたがう略語)およびそれらの混合物、並びにこれらのプラスチックの2以上の層から構成された積層フィルムである。一般に、本発明に使用されるフィルムは、強化繊維または布(ただし、これらは、所望の熱可塑的変形を害しない。)も含有し得る。
【0032】
特に適当なものは、熱可塑性ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびPMMAの変性体、並びにポリカーボネート(PC)、ASA、PET、PP、PP-EPDMおよびABSである。
【0033】
フィルムまたはシートは、好ましくは≧10 μm〜≦1500 μm、より好ましくは≧50 μm〜≦1000 μmおよび特に好ましくは≧200 μm〜≦400 μmの厚さで使用される。また、該フィルムの材料は、例えば安定剤、光安定剤、可塑剤、充填剤(例えば繊維)、および染料などの、フィルム製造用の添加剤および/または加工助剤を含有し得る。被覆が意図されるフィルムの面並びに他の面は、平滑であり得るか、または表面構造を示し得るが、被覆される面については、平滑面が好ましい。
【0034】
一実施態様において、フィルムは、≧10 μm〜≦1500 μmの厚さのポリカーボネートフィルムである。また、これには、上記添加剤および/または加工助剤を有するポリカーボネートフィルムが含まれる。また、フィルムの厚さは、≧50 μm〜≦1000 μmまたは≧200 μm〜≦400 μmであり得る。
【0035】
フィルムは、一つまたは両方の面が被覆され得るが、片面の被覆が好ましい。片面被覆の場合、熱的に変形可能な接着剤層は、必要に応じて、フィルムの反対面(すなわち、被覆組成物が付与されていない表面)に付与され得る。方法に依存して、ホットメルト接着剤または放射線硬化性接着剤がこの目的に適当である。また、同様に熱的に変形可能である保護フィルムも、接着剤層の表面に付与され得る。さらに、フィルム反対面に支持材料(例えば布)を提供することができるが、これらは所望の程度に変形可能であるべきである。
【0036】
放射線硬化層の付与前または後に、フィルムは、必要に応じて、一以上の層で塗装または印刷され得る。これは、フィルムの被覆面または非被覆面上で行われ得る。該層は、着色されてもよく、または官能化されてもよく、そして、例えば印刷イメージとして、全面またはその一部に対して付与されてもよい。使用されるラッカーは、その後の変形の間に亀裂が入らないように、熱可塑性であるべきである。いわゆる「イン-モールドデコレーション」法のために市販されるような印刷インクを使用することができる。
【0037】
フィルムの放射線硬化性被覆物は、その後、消費者用物品の表面を表し得る。本発明によれば、被覆物がポリウレタンポリマーを含むことが提供される。また、このポリウレタンポリマーは、さらなるポリマー単位、例えばポリ尿素単位、ポリエステル単位などを含み得る。ポリウレタンポリマーは、(メタ)アクリレート基を含有する。本発明の目的の範囲内で用語「(メタ)アクリレート基」は、アクリレート基および/またはメタクリレート基を含むと理解されるべきである。原理上、(メタ)アクリレート基は、該ポリウレタンポリマーまたはさらなる単位中の任意の位置で、該ポリマーと連結し得る。例えば、それらは、ポリエーテルまたはポリエステル(メタ)アクリレートポリマー単位の一部であり得る。
【0038】
(メタ)アクリレート基を含有するポリウレタンは、粉末固体として、溶融物として、溶液から、または好ましくは水性分散体として、存在または使用され得る。水性分散体は、特に、動的粘度は分散体中の分散相の成分の分子量に依存しないために、低い動的粘度を有する被覆組成物中の高分子量ポリウレタンを加工する場合でも利点を提供する。
【0039】
適当な分散体は、例えば、(メタ)アクリレート基を含有するポリウレタン分散体単独、または、該ポリウレタン分散体と、(メタ)アクリレート基を含有するポリアクリレート分散体および/または(メタ)アクリレート基を含有する低分子量化合物および/またはアクリレートまたはメタクリレート基を含有しない分散ポリマーとの混合物である。
【0040】
本発明によれば、(メタ)アクリレート基を含有するポリウレタンポリマーは、
(a)ポリイソシアネートと、
(b1)(メタ)アクリレート基を含み、イソシアネートに対して反応性である化合物と
を含む反応混合物の反応から得ることができることが提供される。
【0041】
適当なポリイソシアネート(a)(これはジイソシアネートも含む)は、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環族ポリイソシアネートである。これらのジ-またはポリイソシアネートの混合物も使用することができる。適当なポリイソシアネートの例は、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4-および/または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’-イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたは任意の異性体含量を有するそれらの混合物、イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-および/または2,6-トルエンジイソシアネート、異性体キシレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,4’-または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、またはウレタン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、オキサジアジントリオン、ウレトジオンまたはイミノオキサジアジンジオン構造を有するそれらの誘導体、およびそれらの混合物である。脂環族または芳香族構造を有するジ-またはポリイソシアネートが好ましい。なぜなら、これらの構造要素の高い割合は、UV硬化前の被覆物の乾燥特性(特に耐ブロッキング性)に正の効果を有するからである。特に好ましいジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネートおよび異性体ビス(4,4’-イソシアナトシクロヘキシル)メタンおよびそれらの混合物である。
【0042】
成分(b1)は、好ましくはヒドロキシ官能性アクリレートまたはメタクリレートを含む。その例は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリ(ε-カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレート、例えばPemcure(登録商標) 12A (Cognis、デュッセルドルフ、独国)、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、多価アルコールのアクリル酸および/またはメタクリル酸部分エステル、例えばトリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、エトキシル化、プロポキシル化またはアルコキシル化トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールまたはそれらの工業用混合物である。アクリレート化モノアルコールが好ましい。また、適当なものは、二重結合含有酸と、必要に応じて二重結合を含有する、モノマーエポキシ化合物との反応から得ることができるアルコール、例えば(メタ)アクリル酸と、グリシジル(メタ)アクリレートまたはバーサティック酸のグリシジルエステルとの反応生成物などである。
【0043】
また、イソシアネート反応性オリゴマーまたはポリマー不飽和(メタ)アクリレート基含有化合物は、単独で、または上記モノマー化合物と組み合わせて、使用することができる。成分(b1)としては、≧30 mg KOH/g〜≦300 mg KOH/g、好ましくは≧60 mg KOH/g〜≦200 mg KOH/g、特に好ましくは≧70 mg KOH/g〜≦120 mg KOH/gのOH含量を有するヒドロキシル基含有ポリエステルアクリレートを使用することが好ましい。該ヒドロキシ官能性ポリエステルアクリレートの製造において、合計7つの群のモノマー成分を使用することができる:
1. (シクロ)アルカンジオール、例えば≧62 g/mol〜≦286 g/molの分子量範囲の(シクロ)脂肪族的に結合したヒドロキシル基を有する二価アルコール、例えばエタンジオール、1,2-および1,3-プロパンジオール、1,2-、1,3-および1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-および1,4-シクロヘキサンジオール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、エーテル酸素を含有するジオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、≧200 g/mol〜≦4000 g/mol、好ましくは≧300 g/mol〜≦2000 g/mol、特に好ましくは≧450 g/mol〜≦1200 g/molの分子量を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリブチレングリコールなど。上記ジオールとε-カプロラクトンまたは他のラクトンとの反応生成物もジオールとして使用することができる。
【0044】
2. ≧92 g/mol〜≦254 g/molの分子量範囲の三価および多価アルコール、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびソルビトールまたはこれらのアルコールから出発したポリエーテル、例えば1 molのトリメチロールプロパンと4 molのエチレンオキシドとの反応生成物など、など。
3. モノアルコール、例えばエタノール、1-および2-プロパノール、1-および2-ブタノール、1-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノールおよびベンジルアルコールなど。
【0045】
4. ≧104 g/mol〜≦600 g/molの分子量範囲のジカルボン酸および/またはそれらの無水物、例えばフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、水素化ダイマー脂肪酸など。
【0046】
5. 多官能性カルボン酸またはそれらの無水物、例えばトリメリト酸および無水トリメリト酸など。
6. モノカルボン酸、例えば安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、2-エチルヘキサン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、天然および合成脂肪酸など。
7. アクリル酸、メタクリル酸またはダイマーアクリル酸など。
【0047】
適当なヒドロキシル基含有ポリエステルアクリレートとしては、群1または2からの少なくとも一つの成分と、群4または5からの少なくとも一つの成分と、群7からの少なくとも一つの成分との反応生成物が挙げられる。
【0048】
分散効果を有する基を、必要に応じて、これらのポリエステルアクリレートに組み込むことができる。したがって、ポリエチレングリコールおよび/またはメトキシポリエチレングリコールの割合を、アルコール成分として併用することができる。挙げることができる化合物の例は、アルコールから出発したポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールおよびそれらのブロックコポリマー、並びにこれらのポリグリコールのモノメチルエーテルである。ポリエチレングリコール1500モノメチルエーテルおよび/またはポリエチレングリコール500モノメチルエーテルが特に適当である。
【0049】
さらに、エステル化後、一部のカルボキシル基、特に(メタ)アクリル酸のカルボキシル基と、モノ、ジ-またはポリエポキシドとを反応させることができる。例えば、モノマー、オリゴマーまたはポリマービスフェノールA、ビスフェノールF、ヘキサンジオール、ブタンジオールおよび/またはトリメチロールプロパンのエポキシド(グリシジルエーテル)またはそれらのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体が好ましい。この反応は、該ポリエステル(メタ)アクリレートのOH価を高めるために使用することができる。なぜなら、OH基は、いずれの場合も、エポキシド-酸反応の間に形成されるからである。得られた生成物の酸価は、≧0 mg KOH/g〜≦20 mg KOH/g、好ましくは≧0.5 mg KOH/g〜≦10 mg KOH/gおよび特に好ましくは≧1 mg KOH/g〜≦3 mg KOH/gの間である。該反応は、好ましくは、触媒、例えばトリフェニルホスフィン、チオジグリコール、アンモニウムおよび/またはホスホニウムハライドおよび/またはジルコニウムまたは錫化合物、例えば錫(II)エチルヘキサノエートによって、触媒される。
【0050】
また、成分(b1)として好ましいものは、≧20 mg KOH/g〜≦300 mg KOH/g、好ましくは≧100 mg KOH/g〜≦280 mg KOH/g、特に好ましくは≧150 mg KOH/g〜≦250 mg KOH/gのOH含量を有するヒドロキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート、または≧20 mg KOH/g〜≦300 mg KOH/g、好ましくは≧40 mg KOH/g〜≦150 mg KOH/g、特に好ましくは≧50 mg KOH/g〜≦100 mg KOH/gのOH含量を有するヒドロキシル基含有ポリウレタン(メタ)アクリレート、およびそれらの互いの混合物、およびヒドロキシル基含有不飽和ポリエステルとの混合物、並びにポリエステル(メタ)アクリレートとの混合物、またはヒドロキシル基含有不飽和ポリエステルとポリエステル(メタ)アクリレートとの混合物である。ヒドロキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレートは、特に、アクリル酸および/またはメタクリル酸と、モノマー、オリゴマーまたはポリマービスフェノールA、ビスフェノールF、ヘキサンジオールおよび/またはブタンジオールのエポキシド(グリシジル化合物)との反応生成物、またはそれらのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体に基づく。
【0051】
被覆物中に存在する無機ナノ粒子について、ランタノイドを含む周期表の主群II〜IVの元素および/または小群I〜VIIIの元素の、無機酸化物、混合酸化物、水酸化物、スルフェート、カーボネート、炭化物、ホウ化物および窒化物が適当である。好ましい粒子は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブおよび酸化チタンの粒子であり、酸化ケイ素ナノ粒子が特に好ましい。
【0052】
使用される粒子は、≧1 nm〜≦200 nm、好ましくは≧3 nm〜≦50 nm、特に好ましくは≧5 nm〜≦7 nmの平均粒度を有する。平均粒度は、好ましくは、動的光散乱法によって、z-平均として、分散体中で決定することができる。1 nmの粒度未満の場合、ナノ粒子は、ポリマー粒子のサイズに到達する。次いで、このような小さいナノ粒子は、被覆物の粘度の増大を導き得る(これは不利な点である)。200 nmの粒度を超える場合、粒子は、場合により、肉眼で認められ得る(これは望ましくない)。
【0053】
使用される全ての粒子の好ましくは≧75%、特に好ましくは≧90%、最も好ましくは≧95%が、上記のサイズを有する。粗部分は粒子全体を増大させるので、被覆物の光学的特性を悪化させ、そして特に、ヘーズが生じ得る。
【0054】
上記粒子は、それらの材料の屈折率が硬化された放射線硬化性被覆物の屈折率に対応するように、選択することができる。この場合、被覆物は、透明な光学的特性を示す。例えば、≧1.35〜≦1.45の範囲内の屈折率が有利である。
【0055】
放射線硬化層の非揮発性割合は、例えば、以下の量的割合になり得る。ナノ粒子は、≧1重量%〜≦60重量%、好ましくは≧5重量%〜≦50重量%および特に≧10重量%〜≦40重量%の量で存在し得る。例えばモノマー架橋剤のようなさらなる化合物は、≧0重量%〜≦40重量%および特に≧15重量%〜≦20重量%の割合で存在し得る。次いで、ポリウレタンポリマーは、100重量%までの差を埋め得る。一般に、個々の重量割合の合計が≦100重量%である指針が適用される。
【0056】
上記(メタ)アクリレート基含有ポリアクリレート分散体として適当なものは、共乳化(メタ)アクリレート基を含む低分子量化合物を含有する、いわゆる二次分散体またはエマルジョンポリマーである。二次分散体は、該重合に関して不活性である溶媒中、例えばスチレン、アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどのようなビニルモノマーのフリーラジカル重合によって製造され、次いで、内部乳化剤および/または外部乳化剤によって親水的に変性されて水中に分散される。例えば、該重合においてアクリル酸またはグリシジルメタクリレートのようなモノマーを使用し、そして、例えばアクリル酸またはグリシジルメタクリレートのような(メタ)アクリレート基を含有する、エポキシド-酸反応に関する補助的化合物による変性反応において、分散前にこれらを反応させることによって、(メタ)アクリレート基を組み込むことができる。
【0057】
(メタ)アクリレート基を含む共乳化低分子量化合物を含有するエマルジョンポリマーは、市販されている:例えばAlberdingk & Boley(クレーフェルト、独国)からのLux(登録商標) 515、805、822またはCray Valley(フランス国)からのCraymul(登録商標) 2716、2717。
【0058】
高いガラス転移温度を有するポリアクリレート分散体が好ましい。これは、UV硬化前の被覆物の乾燥特性に関して正の効果を有する。(メタ)アクリレート基を含む共乳化低分子量化合物の高い割合は、乾燥特性に悪影響を及ぼし得る。
【0059】
上記アクリレートまたはメタクリレート基を含有しない分散ポリマーの例は、名称Joncryl(登録商標) (BASF AG、ルートウィヒスハーフェン、独国)、名称Neocryl(DSM Neoresins、ワールワイク、オランダ国)または名称Primal(Rohm & Haas Deutschland、フランクフルト、独国)のもと市販されているようなエマルジョンポリマーである。
【0060】
本発明の別の実施態様において、ポリウレタンポリマーの重量平均Mwは、≧250000 g/mol〜≦350000 g/molの範囲内である。該分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定することができる。また、重量平均Mwは、≧280000 g/mol〜≦320000 g/molまたは≧300000 g/mol〜≦310000 g/molの範囲内にある。該ポリマーのこれらの分子量を有するポリウレタン分散体は、付与後に好ましい手で触れるほどの乾燥(touch drying)挙動を示すことができ、並びに乾燥後に良好な耐ブロッキング性を示すことができる。
【0061】
特に示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される、ガラス転移温度は、しばしば、放射線硬化層の成分を特徴付けるにはむしろ不適当である。ポリマーおよびオリゴマー成分の均一性の欠如、より均一な構造ブロック(例えば、平均分子量2000を有するポリエステルジオールなど)の存在、および該ポリマーの分岐度のために、ガラス転移温度について測定された値は、しばしば、余り有意義ではなく得られる。特に、有機ポリウレタンポリマーおよび無機ナノ粒子(「無機ポリマー」)からなる結合剤についてのガラス転移温度を、有意義な方法で規定することはほとんどできない。しかしながら、ポリウレタン中の芳香族性または脂環族性の成分の増大が、被覆組成物の手で触れるほどの乾燥に正の影響を及ぼすことは真実である。もちろん、水の沸点よりも高い沸点を有する溶媒を≧3重量%〜≦15重量%添加することさえ適当である場合、被覆組成物のフィルム形成がなおあるべきである。
【0062】
本発明の別の実施態様において、反応混合物はまた、以下の成分を含む:
(b2)イオン性基および/またはイオン性基に変換可能な基および/または非イオン性基を有する親水的変性化合物
(b3)≧50 g/mol〜≦500 g/molの平均分子量および≧2のヒドロキシル官能価を有するポリオール化合物、および
(b4)アミノ官能性化合物。
【0063】
成分(b2)は、もともとカチオン性基またはアニオン性基のいずれかであり得るイオン性基、および/または非イオン性親水性基を含む。カチオン的、アニオン的または非イオン的に分散作用を有する化合物は、例えばスルホニウム、アンモニウム、ホスホニウム、カルボキシレート、スルホネートまたはホスホネート基または塩形成により上記基に変換し得る基(潜在的イオン性基)、またはポリエーテル基を含有する化合物であり、およびこれらの基は、存在するイソシアネート反応性基によって高分子中に組み込まれ得る。ヒドロキシル基およびアミン基が、イソシアネート反応性基として好適である。
【0064】
適当なイオン性または潜在的イオン性化合物(b2)は、例えばモノおよびジヒドロキシカルボン酸、モノおよびジアミノカルボン酸、モノおよびジヒドロキシスルホン酸、モノおよびジアミノスルホン酸およびモノおよびジヒドロキシホスホン酸またはモノおよびジアミノホスホン酸およびそれらの塩、例えばジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、N-(2-アミノエチル)-β-アラニン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミンプロピルまたはブチルスルホン酸、1,2-または1,3-プロピレンジアミン-β-エチルスルホン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、N-シクロヘキシルアミノプロピオスルホン酸、リシン、3,5-ジアミノ安息香酸、IPDIおよびアクリル酸の付加生成物およびそのアルカリ塩および/またはアンモニウム塩;2-ブテン-1,4-ジオールへの亜硫酸水素ナトリウムの付加生成物、ポリエーテルスルホネート、2-ブテンジオールおよびNaHSO3のプロポキシル化付加生成物、並びに、親水性構成成分としてカチオン性基(例えばN-メチルジエタノールアミン)に変換することができる構造ブロックである。好ましいイオン性または潜在的イオン性化合物は、カルボキシまたはカルボキシレートおよび/またはスルホネート基および/またはアンモニウム基を有するものである。特に好ましいイオン性化合物は、イオン性または潜在的イオン性基としてカルボキシル基および/またはスルホネート基を含有するもの、例えばN-(2-アミノエチル)-β-アラニンの塩、2-(2-アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸の塩またはIPDIおよびアクリル酸の付加生成物の塩(EP-A 0 916 647、実施例1)およびジメチロールプロピオン酸の塩である。
【0065】
適当な親水的に変性化合物は、例えば少なくとも一つのヒドロキシ基またはアミノ基を含有するポリオキシアルキレンエーテルである。これらのポリエーテルは、≧30重量%〜≦100重量%の割合の、エチレンオキシドに由来する構造ブロックを含有する。直鎖状構造物および≧1〜≦3の間の官能価を有するポリエーテルが適当であるが、一般式(I):
【0066】
【化1】

【0067】
〔式中、R1およびR2は互いに独立して、1〜18個の炭素原子を有する二価の脂肪族、脂環族または芳香族基を示し、これらは酸素原子および/または窒素原子が割り込まれていてもよく、および
R3は、アルコキシ末端化ポリエチレンオキシド基を示す。〕
で示される化合物も適当である。
【0068】
また、非イオン的親水的変性作用を有する化合物は、例えば、適当なスターター分子のアルコキシル化により得ることができるような、一分子当たり統計的平均≧5〜≦70、好ましくは≧7〜≦55のエチレンオキシド単位を有する、一価ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールである。
【0069】
適当なスターター分子は、例えば、飽和モノアルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec.-ブタノール、異性体ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールおよびノナノール、n-デカノール、n-ドデカノール、n-テトラデカノール、n-ヘキサデカノール、n-オクタデカノール、シクロヘキサノール、異性体メチルシクロヘキサノールまたはヒドロキシメチルシクロヘキサン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタンまたはテトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、例えばジエチレングリコールモノブチルエーテルなど、不飽和アルコール、例えばアリルアルコール、1,1-ジメチルアリルアルコールまたはオレイルアルコール、芳香族アルコール、例えばフェノール、異性体クレゾールまたはメトキシフェノール、芳香脂肪族アルコール、例えばベンジルアルコール、アニスアルコールまたはシンナミルアルコール、第2級モノアミン、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、N-メチル-およびN-エチルシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミン、並びにヘテロ環式第2級アミン、例えばモルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1H-ピラゾールである。好ましいスターター分子は、飽和モノアルコールである。スターター分子としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが特に好ましく使用される。
【0070】
アルコキシル化反応に適当なアルキレンオキシドは、特にエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、これらは、アルコキシル化反応において、任意の順序で或いは混合物の状態で使用することができる。
【0071】
ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールは、純ポリエチレンオキシドポリエーテルまたはそのアルキレンオキシド単位が≧30 mole %、好ましくは≧40 mole %のエチレンオキシド単位を含む混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルのいずれかである。好ましい非イオン性化合物は、≧40 mole %のエチレンオキシド単位および≦60 mole %のプロピレンオキシド単位を有する単官能性混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0072】
成分(b2)は、好ましくはイオン性親水性化剤を含む。なぜなら、非イオン性親水性化剤は、むしろ、UV硬化前の被覆物の乾燥特性、特に耐ブロッキング性に負の効果を有し得るからである。
【0073】
適当な低分子量 ポリオール(b3)は、好ましくは≧2〜≦20個の炭素原子を含有する、短鎖脂肪族、芳香脂肪族または脂環族ジオールまたはトリオールである。ジオールの例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、位置異性体ジエチルオクタンジオール、1,3-ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-および1,4-シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)および2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオン酸(2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピルエステル)である。好ましいものは、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび1,6-ヘキサンジオールである。適当なトリオールの例は、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンまたはグリセロールである;トリメチロールプロパンが好ましい。
【0074】
成分(b4)は、ポリアミン(これらはジアミンも含む)の群から選択することができる。これらは、分子量を増大させるために使用され、そして、好ましくは、重付加反応の終わりの少し前に添加される。この反応は、好ましくは水性媒体中で行われる。したがって、ポリアミンは、成分(a)のイソシアネート基に対して水よりも反応性であるべきである。例として、以下のものが挙げられる:エチレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3-、1,4-フェニレンジアミン、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、アミノ官能性ポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシド(これらは、名称Jeffamin(登録商標) のもと得ることができる)、Dシリーズ(Huntsman Corp. Europe、ベルギー国)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンおよびヒドラジン。イソホロンジアミン、エチレンジアミンおよび1,6-ヘキサメチレンジアミンが好ましい。エチレンジアミンが特に好ましい。
【0075】
モノアミン、例えばブチルアミン、エチルアミンおよびJeffamin(登録商標) Mシリーズ(Huntsman Corp. Europe、ベルギー国)のアミンなど、アミノ官能性ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドの部分を添加することができる。
【0076】
別の実施態様において、反応混合物はまた、以下の成分を含む:
(b5)≧500 g/mol〜≦13000 g/molの平均分子量および≧1.5〜≦5の平均ヒドロキシル官能価を有するポリオール化合物。
【0077】
適当な高分子量ポリオール(b5)は、≧500 g/mol〜≦13000 g/mol、好ましくは≧700 g/mol〜≦4000 g/molの範囲内の数平均分子量を有するポリオール(ジオールも含む)である。好ましいものは、≧1.5〜≦2.5、好ましくは≧1.8〜≦2.2、特に好ましくは≧1.9〜≦2.1の平均ヒドロキシル官能価を有するポリマーである。これらとしては、例えば、脂肪族、脂環族および/または芳香族ジ-、トリ-および/またはポリカルボン酸と、ジ-、トリ-および/またはポリオールとに基づくポリエステルアルコール、並びにラクトンベースのポリエステルアルコールが挙げられる。好ましいポリエステルアルコールは、例えば、≧500 g/mol〜≦4000 g/mol、特に好ましくは≧800 g/mol〜≦2500 g/molの分子量を有する、アジピン酸と、ヘキサンジオール、ブタンジオールまたはネオペンチルグリコールまたは上記ジオールの混合物との反応生成物である。また、適当なものは、環状エーテルの重合によって、またはアルキレンオキシドとスターター分子との反応によって、得ることができるポリエーテルポリオールである。≧500 g/mol〜≦13000 g/molの平均分子量を有するポリエチレンおよび/またはポリプロピレングリコール、並びに≧500 g/mol〜≦8000 g/mol、好ましくは≧800 g/mol〜≦3000 g/molの平均分子量を有するポリテトラヒドロフランが、その例として挙げられ得る。
【0078】
また、適当なものは、ヒドロキシル末端化ポリカーボネートであり、これらは、ジオールまたはラクトン変性ジオールまたはビスフェノール、例えばビスフェノールAなどと、ホスゲンまたは炭酸ジエステル、例えば炭酸ジフェニルまたは炭酸ジメチルとの反応によって得ることができる。≧500 g/mol〜≦8000 g/molの平均分子量を有する1,6-ヘキサンジオールのポリマーカーボネート、並びに1,6-ヘキサンジオールとε-カプロラクトンとの≧0.1〜≦1のモル比での反応生成物のカーボネートが、その例として挙げられ得る。≧800 g/mol〜≦3000 g/molの平均分子量を有する1,6-ヘキサンジオールに基づくポリカーボネートジオールおよび/または1,6-ヘキサンジオールとε-カプロラクトンとの≧0.33〜≦1のモル比での反応生成物のカーボネートが好ましい。ヒドロキシル末端化ポリアミドアルコールおよびヒドロキシル末端化ポリアクリレートジオールも使用することができる。
【0079】
別の実施態様において、反応混合物中の成分(b3)中のヒドロキシル基の数は、≧5 mole %〜≦25 mole %のヒドロキシル基とアミノ基との合計量の割合を示す(ここで反応混合物中の水のヒドロキシル基は考慮しない)。また、この割合は、≧10 mole %〜≦20 mole %または≧14 mole %〜≦18 mole %の範囲内であり得る。これは、成分(b3)中のOH基の数が、OH基およびNH2基を有する全ての化合物中、すなわち、全成分(b1)、(b2)、(b3)および(b4)中、および、(b5)も存在する場合、全成分(b1)、(b2)、(b3)、(b4)および(b5)中、上記範囲内であることを意味する。水は該計算において考慮されない。成分(b3)の割合は、ポリマーの分岐度に影響を及ぼすために使用することができ、より高い分岐度が有利である。これは、被覆物の手で触れるほどの乾燥挙動を改善し得る。
【0080】
さらに、手で触れるほどの乾燥は、被覆物の分子間の最も強い可能性のある水素基結合の、最も高い可能性のある数によって改善される。ウレタン、尿素およびエステル、特にカーボネートエステルが、手で触れるほどの乾燥を支持する、より高い数が組み込まれる構造単位の例である。
【0081】
別の実施態様において、被覆物はまた、以下の成分も含む:
(b6)(メタ)アクリレート基を含み、イソシアネートに対して非反応性であり、および/または反応しない化合物。
【0082】
これらの化合物は、被覆物の二重結合密度を増大させるために使用される。高い二重結合密度は、UV硬化被覆物の挙動特性(機械的影響または化学的影響に対する耐性)を増大させる。しかしながら、それらは、乾燥特性に対する効果を有する。このため、それらは、被覆組成物の全固形分の、好ましくは≧1重量%〜≦35重量%、特に≧5重量%〜≦25重量%および最も好ましくは≧10重量%〜≦20重量%の量で使用される。UV硬化被覆組成物工業において、これらの化合物はまた、反応性シンナーと呼ばれる。
【0083】
別の実施態様において、被覆物中のナノ粒子の表面は、他の化合物の共有結合および/または非共有結合によって変性されている。
【0084】
好ましい共有結合表面変性は、アルコキシシランおよび/またはクロロシランによるシラン化である。γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランによる部分変性が特に好ましい。
非共有結合の場合の例は、界面活性剤またはブロックコポリマーを使用する吸着/会合変性である。
【0085】
また、ナノ粒子の表面に共有結合的におよび/または非共有結合的に結合した化合物は、炭素-炭素二重結合も含有することができる。この場合、(メタ)アクリレート基が好ましい。このように、ナノ粒子は、放射線硬化の間に比較的強くでさえ、結合剤マトリックス中に結合することができる。
【0086】
乾燥して放射線硬化層を形成する被覆組成物に、手で触れるほどの乾燥およびことによると放射線硬化層の接着性を改善することが意図される、いわゆる架橋剤を添加することもできる。ポリイソシアネート、ポリアジリジンおよびポリカルボジイミドが、好適である。親水的変性ポリイソシアネートが、水性被覆組成物に関して特に好ましい。架橋剤の量および官能価は、特に所望の変形性に関して、フィルムに適合させるべきである。一般に、被覆組成物の固形分に基づいて、固体架橋剤の≦10重量%が添加される。可能性のある架橋剤の多くは、被覆組成物の貯蔵寿命を低減する。なぜなら、それらは、被覆組成物中でゆっくりと予め反応するからである。したがって、架橋剤の添加は、付与前に、適当な短時間で行うべきである。親水的変性ポリイソシアネート、例えば、名称Bayhydur(登録商標) (Bayer MaterialScience AG、レバークーゼン、独国)および名称Rhodocoat(登録商標) (Rhodia、F)を利用することができる。架橋剤を添加する場合、達成されるべき最適な手で触れるほどの乾燥に必要とされる時間および温度は、増大し得る。
【0087】
また、放射線硬化層または該層を製造するために用いられる被覆組成物は、ラッカー、塗料および印刷インクの従来技術における添加剤および/または補助物質および/または溶媒を含有し得る。これらの例は、以下の通りである
【0088】
添加される光開始剤は、適当な重合性基のフリーラジカル重合の引き金となる、化学放射線により活性化し得る開始剤である。光開始剤は、自体既知の市販化合物であり、単分子(タイプI)開始剤と二分子(タイプII)開始剤との間に区別がなされる。(タイプI)系は、例えば、芳香族ケトン化合物、例えば第3級アミンと組み合わせたベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(Michler’s ケトン)、アントロンおよびハロゲン化ベンゾフェノンまたは上記タイプの混合物である。また、適当なものは、(タイプII)開始剤、例えばベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキシド、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸エステル、カンファーキノン、α-アミノアルキルフェノン、α,α-ジアルコキシアセトフェノンおよびα-ヒドロキシアルキルフェノンである。これらの化合物の混合物を使用することも有利であり得る。適当な開始剤は、例えば、名称Irgacure(登録商標) および名称Darocur(登録商標) (Ciba、Basel、CH)および名称Esacure(登録商標) (Fratelli Lamberti、Adelate、IT)のもと市販されている、
【0089】
特に、これらは、安定剤、光安定剤、例えばUV吸収剤および立体障害アミン(HALS)、並びに抗酸化剤および塗料添加剤、例えば沈降防止剤、消泡剤および/または湿潤剤、流動促進剤、可塑剤、帯電防止剤、触媒、共溶媒および/または増粘剤並びに顔料、染料および/または艶消し剤である。
【0090】
適当な溶媒は、水および/または使用される結合剤および付与方法に適合した、被覆技術からの一般的な他の溶媒である。その例は、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピル、ジアセトンアルコール、グリコール、グリコールエーテル、水、キシレンまたは芳香族化合物含有溶媒としてのExxon-Chemieからの溶媒ナフサ、並びに上記溶媒の混合物である。
【0091】
また、充填剤および非官能性ポリマーは、機械的、触覚的、電気的および/または光学的特性を調整するために含有することができる。被覆組成物と相溶性および混和性である全てのポリマーおよび充填剤が、この目的に適当である。
【0092】
適当なポリマー添加剤は、ポリマー、例えばポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドおよびポリ尿素などである。
【0093】
鉱物充填剤、特にいわゆる艶消し剤、ガラス繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブ(例えばBaytubes(登録商標) 、Bayer MaterialScience AG、レバークーゼン)および/または、いわゆる金属塗装仕上げに使用されるような、金属充填剤を、充填剤として用いることができる。
【0094】
また、本発明は、
・(a)ポリイソシアネートと、
(b1)(メタ)アクリレート基を含み、イソシアネートに対して反応性である化合物と
を含む反応混合物の反応から得られ得る、(メタ)アクリレート基を含むポリウレタンポリマーを含み、および
≧1 nm〜≦200 nmの平均粒度を有する無機ナノ粒子をさらに含む、
ポリマー分散体を調製する工程と、
・上記ポリマー分散体を用いてフィルムを被覆する工程と、
・上記ポリマー分散体を乾燥する工程と
を含む、本発明による被覆フィルムの製造方法も提供する。
【0095】
該ポリマー分散体の調製は、ポリマー形成反応および該ポリウレタンポリマーの水中への分散によって行う。
【0096】
上記反応混合物は、上記さらなる成分、すなわち、特に(b2)、(b3)、(b4)、(b5)および(b6)に加えて、光開始剤、添加剤および共溶媒をさらに含み得る。これらの成分は、本発明による反応混合物中に、例えば、以下の量的割合(個々の重量割合の合計は、≦100重量%までになる)で存在し得る:
(a):≧5重量%〜≦50重量%、好ましくは≧20重量%〜≦40重量%、より好ましくは≧25重量%〜≦35重量%。
(b1):≧10重量%〜≦80重量%、好ましくは≧30重量%〜≦60重量%、より好ましくは≧40重量%〜≦50重量%。
(b2):≧0重量%〜≦20重量%、好ましくは≧2重量%〜≦15重量%、より好ましくは≧3重量%〜≦10重量%。
(b3):≧0重量%〜≦25重量%、好ましくは≧0.5重量%〜≦15重量%、より好ましくは≧1重量%〜≦5重量%。
(b4):≧0重量%〜≦20重量%、好ましくは≧0.5重量%〜≦10重量%、より好ましくは≧1重量%〜≦5重量%。
(b5):≧0重量%〜≦50重量%、好ましくは=0重量%。
(b6):≧0重量%〜≦40重量%、好ましくは≧5重量%〜≦30重量%、より好ましくは≧10重量%〜≦25重量%。
【0097】
反応混合物からの反応生成物を、水中に取り込み、水性分散体を製造する。該ポリウレタンポリマーの水中の割合は、≧10重量%〜≦75重量%、好ましくは≧15重量%〜≦55重量%、より好ましくは≧25重量%〜≦40重量%の範囲内であり得る。
【0098】
該水性分散体中のナノ粒子の割合は、≧5重量%〜≦60重量%、好ましくは≧10重量%〜≦40重量%、より好ましくは≧15重量%〜≦30重量%の範囲内であり得る。
【0099】
本発明によるフィルムの被覆物の例としてのポリウレタン分散体の製造は、一以上の工程で、均質相中で、または多工程反応の場合、部分的に分散相中で行うことができる。重付加を完全にまたは部分的に行った後、分散工程を行う。これに続いて、さらなる重付加または変性を、必要に応じて、分散相中で行う。
【0100】
ポリウレタン分散体を製造するために、例えば乳化剤剪断力法、アセトン法、プレポリマー混合法、溶融乳化法、ケチミン法および自然固体分散法またはその派生法のような方法を使用することができる。溶融乳化法およびアセトン法、並びにこれらの2つの方法の混合変法が好ましい。
【0101】
一般に、第1級または第2級アミノ基、およびポリイソシアネート(a)を含有しない成分(b1)、(b2)、(b3)および(b5)を、それらの全体または一部、反応器中に投入し、ポリウレタンプレポリマーを製造し、そして必要に応じて水混和性であるが、イソシアネート基に対して不活性である溶媒で希釈し、ただし、好ましくは溶媒なしで、次いで、高温に、好ましくは≧50℃〜≦120℃の範囲内に加熱する。
【0102】
適当な溶媒は、例えばアセトン、ブタノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルおよび1-エチル-または1-メチル-2-ピロリドンであり、これらは、製造の最初のみに、および必要に応じて部分的にその後に、添加することができる。アセトンおよびブタノンが好ましい。一般に、該反応の最初に、≧60重量%〜≦97重量%、好ましくは≧70重量%〜≦85重量%の固形分になるようにのみ、溶媒を添加する。変法に依存して、特に完全な変換が分散前に起こることになる場合、さらなる溶媒の添加は、反応進行に有用であり得る。
【0103】
該反応は、標準圧力または高圧下、例えば、例えばアセトンのような溶媒の沸点の標準圧力を超える圧力下、行うことができる。
【0104】
また、イソシアネート付加反応を促進させるため、例えばトリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ-[2,2,2]-オクタン、錫ジオクトエート、ビスマスオクトエートまたはジブチル錫ジラウレートのような触媒を、初期充填物に含ませておいてもよく、またはその後に計量供給してもよい。ジブチル錫ジラウレート(DBTL)が好ましい。触媒に加えて、自然の所望されない重合から(メタ)アクリレート基を保護するために、安定剤を追加することも有効であり得る。通常使用される(メタ)アクリレート基を有する化合物は、このような安定剤を予め含有する。
【0105】
次いで、第1級または第2級アミノ基のいずれも含有せず、および該反応の最初に添加されていない成分(a)および/または(b1)、(b2)、(b3)および(b5)のいずれかを計量供給する。該ポリウレタンプレポリマーの製造において、イソシアネート基とイソシアネート-反応性基とのモル比は、≧0.90〜≦3、好ましくは≧0.95〜≦2、特に好ましくは≧1.05〜≦1.5である。成分(a)と成分(b)との反応を、第1級または第2級アミノ基を含有しない成分(b)の部分のイソシアネート反応性基の合計量に基づいて、部分的にまたは完全に行う。ただし、好ましくは完全に行う。変換度は、通常、反応混合物のNCO含量を追跡することにより監視する。この目的のため、試料に対する分光的測定(例えば赤外スペクトルまたは近赤外スペクトル)、屈折率測定および化学的分析(例えば滴定)を行うことができる。遊離イソシアネート基を含有し得るポリウレタンプレポリマーが、物質として、または溶液中で得られる。
【0106】
成分(a)および(b)からのポリウレタンプレポリマーの製造の後または製造の間、出発分子において予め行われていない場合、アニオン的および/またはカチオン的分散作用を有する基の部分的または完全な塩形成を行う。アニオン性基の場合、例えばアンモニア、炭酸アンモニウムまたは炭酸水素アンモニウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルモルホリン、水酸化カリウムまたは炭酸ナトリウムのような塩基がこの目的に使用され、好ましくは、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンまたはジイソプロピルエチルアミンが使用される。該塩基の物質量は、該アニオン性基の物質量の≧50%および≦100%の間、好ましくは≧60%および≦90%の間である。カチオン性基の場合、例えば硫酸ジメチルエステル、乳酸またはコハク酸が使用される。エーテル基を有する非イオン性親水的変性化合物(b2)のみが使用される場合、中和工程は省略される。また、中和は、分散水が予め中和剤を含有する場合、分散と同時に行うことができる。
【0107】
なお残留する任意のイソシアネート基は、アミン成分(b4)、および/または、存在する場合、アミン成分(b2)および/または水との反応によって変換される。この鎖延長は、分散前に溶媒中で、または分散後に水中で、行うことができる。アミン成分が成分(b2)中に含有される場合、鎖延長は、好ましくは分散前に行う。
【0108】
アミン成分(b4)および/または、存在する場合、アミン成分(b2)は、有機溶媒および/または水で希釈された反応混合物に添加することができる。好ましくは≧70重量%〜≦95重量%の溶媒および/または水が使用される。幾つかのアミン成分(b2)および/または(b4)が存在する場合、反応は、任意の順序で逐次的に、または混合物を添加することにより同時に、行うことができる。
【0109】
ポリウレタンの製造の間または製造に続いて、必要に応じて、表面変性ナノ粒子が導入される。これは、該粒子中、単に攪拌することにより行うことができる。しかしながら、例えば超音波、ジェット分散またはローター-ステーター原理による高速攪拌機によって行うことができるような、比較的高い分散エネルギーを使用することも考えられる。簡単な機械的攪拌が好ましい。
【0110】
原理上、粒子は、粉末形態で、および適当な溶媒中のコロイド懸濁液または分散体の形態で、使用することができる。無機ナノ粒子は、好ましくは有機溶媒(オルガノゾル)または特に好ましくは水中のコロイド分散体の形態で使用する。
【0111】
オルガノゾルのための適当な溶媒は、メタノール、エタノール、i-プロパノール、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、ブチルアセテート、エチルアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、トルエン、キシレン、1,4-ジオキサン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールn-プロピルエーテルまたはこれらの溶媒の任意の混合物である。適当なオルガノゾルは、≧10重量%〜≦60重量%、好ましくは≧15重量%〜≦50重量%の固形分を有する。適当なオルガノゾルは、例えば、例えば商品名Organosilicasol(登録商標) および商品名Suncolloid(登録商標) (Nissan Chem. Am. Corp.)または名称Highlink(登録商標) NanO G (Clariant GmbH)として入手できるような、二酸化ケイ素オルガノゾルである。
【0112】
ナノ粒子が有機溶媒(オルガノゾル)中で使用される限りにおいて、これらは、水で分散される前に、製造の間、ポリウレタンとブレンドされる。次いで、得られた混合物は、水を添加することによって、または水中に移すことによって、分散される。オルガノゾルの有機溶媒は、必要に応じて、水で分散する前または分散した後に、好ましくは水で分散した後に、蒸留によって除去することができる。
【0113】
さらに、本発明の目的の範囲内で、それらの水性調製物の形態で、無機粒子を使用することも好ましい。表面変性無機ナノ粒子の水性調製物の形態での無機粒子の使用が、特に好ましい。これらは、シラン変性ポリマー有機結合剤またはシラン変性ポリマー有機結合剤の水性分散体中に組み込まれる前またはそれと同時に、シラン化によって変性することができる。
【0114】
好ましい市販の水性ナノ粒子分散体は、名称Levasil(登録商標) (H.C. Starck GmbH、Goslar、独国)および名称Bindzil(登録商標) (EKA Chemical AB、ブーフス、スウェーデン国)のもと入手することができる。EKA (EKA Chemical AB、ブーフス、スウェーデン国)からのBindzil(登録商標) CC 15、Bindzil(登録商標) CC 30およびBindzil(登録商標) CC 40の水性分散体が、特に好ましく使用される。
【0115】
ナノ粒子が水性形態で使用される限りにおいて、これらは、ポリウレタンの水性分散体に添加される。別の実施態様において、水の代わりに、水性ナノ粒子分散体(好ましくは 水でさらに希釈されたもの)が、ポリウレタン分散体の製造に使用される。
【0116】
ポリウレタン分散体を製造する目的で、ポリウレタンプレポリマーは、必要に応じて強い剪断力下、例えば激しい攪拌下、分散水に添加されるか、または、その反対に、分散水がプレポリマー中に撹拌混合される。その後、これが予め該均質相中で行われていない場合、次いで、成分(b4)に関して存在し得る、任意のイソシアネート基の反応によって、分子量の増大を行うことができる。使用されるポリアミン(b4)の量は、なお存在する未反応イソシアネート基に依存する。イソシアネート基の物質量の好ましくは≧50%〜≦100%、特に好ましくは≧75%〜≦95%を、ポリアミン(b4)と反応させる。
【0117】
得られたポリウレタン-ポリ尿素ポリマーは、≧0重量%〜≦2重量%、好ましくは≧0重量%〜≦0.5重量%、特に0重量%のイソシアネート含量を有する。
【0118】
有機溶媒は、必要に応じて留去し得る。次いで、分散体は、≧20重量%〜≦70重量%、好ましくは≧30重量%〜≦55重量%、特に≧35重量%〜≦45重量%の固形分を有し得る。
【0119】
ポリマー分散体によるフィルムの被覆は、好ましくはローラー塗工、ナイフ塗工、フロー塗工、噴霧またはフラッディングによって行う。印刷法、浸し塗り、転写法および刷毛塗りも行うことができる。付与は、ポリウレタンのアクリレートおよび/またはメタクリレート二重結合の早過ぎる重合を導き得る、放射線を排除して行うべきである。
【0120】
被覆組成物のフィルム上への付与に続いて、ポリマー分散体を乾燥する。この目的のために、乾燥は、特に、高温にてオーブン中、必要に応じて除湿した、空気を動かしつつ(対流式オーブン、ジェット乾燥機)、並びに熱放射線(IR、NIR)によって行う。電子レンジも使用することができる。これらの乾燥法の幾つかを組み合わせることができ、有利である。
【0121】
乾燥のための条件は、有利には、アクリレートまたはメタクリレート基の重合(架橋)が、高温および/または熱放射線によって引き起こされないように選択される。なぜなら、これは、変形性に対して負の効果を有し得るためである。さらに、到達される最大温度は、有利には、フィルムが制御されていない様式で変形しないように、十分に低くなるように選択されるべきである。
【0122】
乾燥/硬化工程後、必要に応じて保護フィルムを被覆物上に積層させた後、被覆フィルムを巻き上げることができる。巻き上げは、基材フィルムまたは積層フィルムの裏面に被覆物が接着しないように行うことができる。しかしながら、被覆フィルムを適当な大きさに切断し、そして該ブランクを、個々にさらなる加工に、または、スタックとして供給することができる。
【0123】
また、本発明は、成形品の製造のための、本発明による被覆フィルムの使用に関する。本発明にしたがって製造されたフィルムは、消費者用物品の製造に価値を有する材料である。したがって、フィルムは、自動車アドオン部、プラスチック部、例えば自動車(内装)構造物および/または航空機(内装)構造物用のパネル、家具構造物、電子デバイス、コミュニケーションデバイス、住宅用品または装飾用品の製造に使用することができる。
【0124】
また、本発明は、以下の工程:
・本発明による被覆フィルムを調製する工程と、
・成形品を成形する工程と、
・放射線硬化性被覆物を硬化する工程と
を含む、放射線硬化被覆物を有する成形品の製造方法に関する。
【0125】
この方法において、被覆フィルムは、熱的変形に、所望の最終形状に至る。これは、例えば熱成形、真空形成、圧縮成形またはブロー成形のような方法によって、行うことができる。
【0126】
変形工程後、フィルムの被覆物は、化学放射線の照射によって、最終硬化を受ける。
化学放射線による硬化は、化学放射線を照射することによって放出される、例えば上記光開始剤からの開始剤ラジカルによるエチレン性不飽和炭素-炭素二重結合のフリーラジカル重合であると理解される。
【0127】
放射線硬化は、好ましくは、高エネルギー放射線(すなわち、UV放射線または日光、例えば≧200 nm〜≦750 nmの波長の光)の衝撃を通じて、または高エネルギー電子(電子ビーム、例えば≧90 keV〜≦300 keVの電子ビーム)を照射することによって、行われる。光またはUV光についての放射線源の例は、中圧-または高圧水銀灯であり、ここで水銀蒸気は、他の元素(例えばガリウムまたは鉄)でドープされて変性されていてもよい。レーザー、パルスランプ(UVフラッシュランプとして既知)、ハロゲンランプまたはエキシマーランプも使用することができる。該ランプは、照射される材料が機械的デバイスを使用して放射線源を通過するように固定位置に設置してもよく、または該ランプが可動性であって、照射される材料が、硬化の間にその位置を変化しなくてもよい。UV硬化によって架橋するのに通常十分な放射線用量は、≧80 mJ/cm2〜≦5000 mJ/cm2の範囲内である。
【0128】
照射は、必要に応じて、酸素を排除して、例えば不活性ガス雰囲気または酸素減少雰囲気下、行うことができる。不活性ガスとして適当なものは、好ましくは窒素、二酸化炭素、希ガスまたは燃焼ガスである。さらに、照射は、被覆物を、放射線を透過する媒体で被覆することによって、行うことができる。これらの例は、例えばポリマーフィルム、ガラスまたは液体(例えば水)である。
【0129】
放射線用量および硬化条件に応じて、必要に応じて使用される開始剤のタイプおよび濃度は、当業者に既知の方法で、または予備的試験によって、変動または最適化すべきである。変形フィルムの硬化に関して、幾つかのランプを用いて硬化を行うことが特に有利である。これらの配置は、被覆物の各点において、可能な限り、硬化のための放射線の最適用量および強度が得られるように選択すべきである。特に、非照射領域(影の区域)を避けるべきである。
【0130】
また、使用されるフィルムに応じて、フィルムに対する熱的負荷が余りに大きくなり過ぎないように、照射条件を選択することが有利であり得る。特に低ガラス転移温度を有する材料から構成される薄フィルムは、照射によって所定の温度を超える場合、制御されない変形を起こす傾向を有し得る。これらの場合において、適当なフィルターを使用して、またはランプの設計を通じて、できるだけ少ない赤外線が基材に対して作用するようにすることが有利である。さらに、放射線用量を適当に減少させることによって、制御されない変形に対抗することができる。しかしながら、照射の所定の用量および強度が、できるだけ完全な重合に必要であることに留意すべきである。これらの場合において、不活性または酸素減少条件下、硬化を行うことが特に有利である。なぜなら、被覆物の上方の雰囲気中の酸素の割合が減少する場合、硬化に必要とされる用量は、低くなるためである。
【0131】
固定単位中の水銀ランプが、特に好ましくは硬化に使用される。この場合、光開始剤は、被覆物中の固体に基づいて、≧0.1重量%〜≦10重量%、特に好ましくは≧0.2重量%〜≦3.0重量%の濃度で使用される。これらの被覆物を硬化するため、≧80 mJ/cm2〜≦5000 mJ/cm2の用量で使用することが好ましい。
【0132】
得られた硬化被覆変形フィルムは、家庭において見出されるような溶媒および染色液に対する非常に良好な耐性を示し、並びに、高い光学的透明性と共に、高い硬度、良好な耐スクラッチ性および良好な耐摩耗性を示す。
【0133】
一実施態様において、成形品の成形は、≧20 bar〜≦150 barの圧力下、型中で行う。この高圧成形法において、圧力は、好ましくは≧50 bar〜≦120 barの範囲内または≧90 bar〜≦110 barの範囲内である。適用される圧力は、特に、変形されるフィルムの厚さ、および用いられる温度並びにフィルム材料によって、決定される。
【0134】
別の実施態様において、成形品の成形は、フィルムの材料の軟化点未満の、≧20℃〜≦60℃の温度にて行う。この温度は、軟化点未満の、好ましくは≧30℃〜≦50℃または≧40℃〜≦45℃である。この手順は、冷間成形と比べて、より正確な成形を導くシンナーフィルムを使用することができるという利点を有する。別の利点は、より短いサイクル時間並びに被覆物のより低い熱的負荷にある。これらの変形温度は、有利には、高圧力成形法と組み合わせて使用される。
【0135】
別の実施態様において、該方法はまた、以下の工程:
・硬化層の反対側のフィルムの面上に、ポリマーを付与する工程
を含む。
【0136】
変形被覆フィルムは、最終硬化前または好ましくは最終硬化後、例えばバック射出成形または所定の位置での発泡のような方法によって、必要に応じて充填剤入りポリマー、例えば熱可塑性プラスチックまたは反応性ポリマー、例えば二成分ポリウレタン系を用いて、変性することができる。この場合、接着剤層は、必要に応じて、接着促進剤としても使用することができる。それらの表面がフィルム上の硬化被覆物によって成形される場合、優れた挙動特性を有する成形品が得られる。
【0137】
また、本発明は、本発明による方法によって製造し得る成形品を提供する。このような成形品は、例えば、自動車アドオン部、プラスチック部、例えば自動車(内装)構造物および/または航空機(内装)構造物用のパネル、家具構造物、電子デバイス、コミュニケーションデバイス、住宅用品または装飾用品であり得る。
【0138】
上記の全ての文献は、全ての有用な目的のために、それらの全体が参照により本明細書中に援用される。
本発明を具体化する所定の特定の構成が本明細書中に開示または記載されているが、その部分の種々の変形および転位が、本発明の概念の基調をなす精神および範囲を逸脱することなくなされ得ること、および本発明が、本明細書中に開示または記載された特定の態様に限定されないことは、当業者には明らかである。
【実施例】
【0139】
本発明を、以下の実施例を用いてさらに説明する。これらの実施例中に使用される単位は、以下の意味を有する:
酸価:mg KOH/g試料で与えられる。DIN 3682に基づいて、ブロモチモールブルー(エタノール溶液)に対して0.1 mol/lのNaOH溶液を用いて滴定(黄色から緑色を経て青色に変色)。
ヒドロキシル官能価:mg KOH/g試料で与えられる。DIN 53240に基づいて、ジメチルアミノピリジンによって触媒された無水酢酸による冷アセチル化後、0.1 mol/lのKOHメタノール溶液を用いて滴定。
イソシアネート含量:%で与えられる。DIN EN ISO 11909に基づいて、ブチルアミンによる反応後、0.1 mol/lの塩酸を用いて逆滴定。
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC):溶離剤N,N-ジメチルアセトアミド、RI検出、30℃、ポリスチレン標準による較正後の積分。
粘度:回転式粘度計(Haake、タイプVT 550)、23℃にて測定および剪断勾配(他に示さない限り)D 1/40 s-1
他に示さない限り、実施例中のパーセンテージは重量%である。
【0140】
実施例において、それらの商品名のもと挙げられる化合物は、以下の意味を有する:
Laromer PE 44 F:約85 mg KOH/gのOH価を有するポリエステルアクリレート
Desmodur W:脂環族ジイソシアネート(メチレンビス-4-イソシアナトシクロヘキサン)
Photomer 4399:ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート
Bayhydrol XP2648:脂肪族ポリカーボネート含有アニオン性ポリウレタン分散体(溶媒非含有)
Bindzil CC40:無定形シリカ、コロイド水溶液
Irgacure 500:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンとの均等な重量割合の混合物
TegoGlide 410:有機変性ポリシロキサン
BYK 346:ポリエーテル変性シロキサンの溶液
Bayhydur 305:ポリイソシアネートに基づく親水性脂肪族ヘキサメチレンジイソシアネート
DBTL:ジブチル錫ジラウレート
DAA:ジアセトンアルコール、4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン
【0141】
〔粒度決定〕
粒度は、HPPS粒度分析器(Malvern、ウースターシャー、英国)を使用する動的光散乱によって決定した。評価は、Dispersion Technology Software 4,10を使用して行った。多重散乱を避けるために、ナノ粒子の高希釈分散体を製造した。希釈ナノ粒子分散体(約0.1〜10%)の一滴を、分散体として約2 mlの同溶媒を含有するキュベット中に入れ、振盪させ、および20〜25℃にてHPPS分析器中で測定した。当業者にとっての一般常識であるように、分散媒体の関連パラメーター(温度、粘度および屈折率)を、予めソフトウェア中に入力した。有機溶媒の場合、使用されるキュベットは、ガラスから構成された。得られた結果は、粒径に対する強度および/または体積のプロット、並びに粒径についてのz-平均であった。多分散指数が<0.5であることを確保するように注意した。
【0142】
〔本発明によるUV硬化ポリウレタン分散体UV1の製造〕
攪拌機、内部温度計およびガス供給器(空気流量1 l/h)を有する反応容器において、471.9部のポリエステルアクリレートLaromer(登録商標) PE 44 F(BASF AG、ルートウィヒスハーフェン、独国)、8.22部のトリメチロールプロパン、27.3部のジメチロールプロピオン酸、199.7部のDesmodur(登録商標) W(脂環族ジイソシアネート;Bayer MaterialScience AG、レバークーゼン、独国)および0.6部のジブチル錫ジラウレートを、220部のアセトン中に溶解させ、そして、1.47重量%のNCO含量まで攪拌しながら60℃にて反応させた。115.0部のジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレートPhotomer(登録商標) 4399(Cognis AG、デュッセルドルフ、独国)を、かくして得られたプレポリマー溶液に添加し、および撹拌した。
【0143】
次いで、該混合物を40℃に冷却し、そして19.53 gのトリエチルアミンを添加した。40℃で5分間撹拌した後、該反応混合物を、迅速に撹拌しながら、1200 gの水中に20℃にて注いだ。次いで、30.0 gの水中の9.32 gのエチレンジアミンを添加した。
加熱または冷却せずに30分間攪拌を続けた後、該生成物を、40±1重量%の固形分に到達するまで真空中で蒸留した(50 mbar、最大50℃)。
該分散体は、8.7のpH値および130 nmの粒径についてのz-平均を有した。4 mmのフローカップでの流出時間は、18秒であった。得られたポリマーの重量平均分子量Mwは、307840 g/molと決定された。
【0144】
〔処方例〕
(被覆組成物の製造)
以下に記載の被覆溶液の製造を、全ての成分の完全な適合性を保証するため、2つの工程で達成した。
まず、溶媒(LM)を、攪拌機および混合単位を有する撹拌容器中に入れた。次いで、添加剤(A)を、500 rpmにて逐次的に添加し、そして各添加剤が均質に溶解するまで攪拌を行った。最後に、攪拌を5分間行った。
攪拌機および混合単位を有する第二の撹拌容器中に、結合剤(BM:以下の実施例中の項目1)を最初に充填した。次いで、全ての他の結合剤(BM)、必要に応じてナノ粒子(NP)および架橋剤(V)を、500 rpmにて逐次的に添加し、そして各々5分間均質化した。次いで、各々の添加剤溶液を、一定の攪拌をしながら添加し、そして処方物を、さらに10分間均質化した。このようにして製造された被覆物溶液を、付与前にフィルターカートリッジ(例えばPall HDC(登録商標) IIフィルター:孔径1.2 μmまたはSartorius Minisart(登録商標) フィルター 17593:孔径1.2 μm)を通じて濾過した。
【0145】
実施例中で使用される原料の機能およびそれらの略語を、以下の表中にさらに説明する。
【0146】
【表1】

【0147】
〔実施例1〕
UV1に基づく水性物理的乾燥およびUV硬化性被覆組成物の処方物。
【0148】
【表2】

【0149】
〔実施例2〕
UV1およびBindzil(登録商標) CC40(Eka Chemicals AB)の添加に基づく水性物理的乾燥およびUV硬化性被覆組成物の処方物。
【0150】
【表3】

【0151】
〔実施例3〕
UV1、Bayhydrol XP2648(BMS AG)およびBindzil(登録商標) CC40(Eka Chemicals AB)の添加に基づく水性物理的乾燥およびUV硬化性被覆組成物の処方物。
【0152】
【表4】

【0153】
〔実施例4〕
ポリイソシアネート架橋剤Bayhydur(登録商標) 305(BMS AG)を含有する、UV1、Bayhydrol XP2648(BMS AG)およびBindzil(登録商標) CC40(Eka Chemicals AB)の添加に基づく水性物理的乾燥およびUV硬化性被覆組成物の処方物。
【0154】
【表5】

【0155】
〔実施例5〕
EP 1790673/DE 102005057245中の実施例11中のような伝統的な溶媒系二重硬化被覆組成物。
【0156】
〔実施例6〕
MacDermid Autotype Ltd.からの市販の被覆フィルムAutoflex XtraForm(商標)。
【0157】
(被覆および予め架橋したポリマーフィルムの製造)
実施例1〜5を、市販のドクターナイフ(所要の湿被覆厚さ100 μm)を使用して、PCポリマーフィルム(Makrofol(登録商標) DE1-1、フィルム厚さ250 μmおよび375 μm、シートサイズDIN A4)の片面に付与した。20℃〜25℃での10分間の溶媒蒸発段階後、被覆フィルムを、循環空気オーブン中で乾燥するか、または110℃にて10分間予備硬化させた。次いで、かくして製造した被覆フィルム並びに実施例6を、過程連鎖中のこの時点にて手で触れる程度に乾燥した。
【0158】
(印刷されたポリマーフィルムの製造)
片面が被覆されたこれらのPCポリマーフィルムの幾つかに、物理的乾燥銀金属スクリーン印刷インクNoriphan(登録商標) HTR (Proell KG、ワイセンブルグ、独国)を、製造業者の指示書にしたがって、スクリーン印刷法(半自動スクリーン印刷機、ESC (Europa Siebdruck Centrum)製;80 THT ポリエステル布;RKSスキージ;乾燥フィルム厚さ:10〜12 μm)によって印刷し、そしてトンネル乾燥機中、2 m/分の押出量で80℃にて2.5分間乾燥させた。
【0159】
(熱成形)
このように被覆および印刷されたPCポリマーフィルムを、熱成形工場(Adolf ILLIG、ハイルブロン)中で、型(車内フィッティング用フィルム製造用の加熱/通気パネル)を使用して成形した。成形用の本質的な方法パラメーターを以下に列挙する:
型温度:Makrofol(登録商標) DE1-1について100℃
フィルム温度:Makrofol(登録商標) DE1-1について190℃
加熱時間:Makrofol(登録商標) DE1-1について20秒。
【0160】
(高圧力成形法)
上記の型(車内フィッティング用フィルム製造用の加熱/通気パネル)を用いるPCポリマーフィルムの成形を、HPF装置(HDVF Penzberg、Kunststoffmaschinen(タイプ:SAMK 360))を使用して、同様の方法で行った。成形用の本質的な方法パラメーターを以下に列挙する:
型温度:Makrofol(登録商標) DE1-1について100℃
フィルム温度:Makrofol(登録商標) DE1-1について140℃
加熱時間: Makrofol(登録商標) DE1-1について16秒
圧力:100 bar。
【0161】
(UV放射線による成形ラッカーフィルムの硬化)
成形ラッカーフィルムのUV硬化を、水銀灯タイプMC200(出力80 W/cm)を有する、IST Strahlentechnik GmbH(ニュルティンゲン)からのUV装置タイプU300-M-1-TRを使用して行った。硬化に必要とされた用量を、Eta Plus ElectronicからのEta Plus UMD-1線量計を用いて決定した。3 m/分の連続硬化速度にて、および上記UV装置を3回通過させて、a 合計3 × 1.2 J/cm2、すなわち、3.6 J/cm2の放射線強度を、被覆フィルムを硬化するために使用した。
【0162】
(被覆フィルムのバック射出成形による成形品の製造)
三次元UV硬化ポリマーフィルムを、Bayblend(登録商標) T65 (ポリカーボネートおよびABSに基づく無定形熱可塑性プラスチックポリマーブレンド;Bayer MaterialScience AG、レバークーゼン、独国)を用いて、Arburg(ロスバーグ)からの射出成形機、タイプAllrounder 570C (2000-675)を使用してバック射出成形した。バック射出成形の本質的な方法パラメーターを以下に列挙する:
射出温度:260℃溶融
型温度:60℃
射出圧力:1400 bar
型充填時間:2秒。
【0163】
〔試験方法〕
(DIN 52347によるTaber摩耗試験機および散乱光測定を用いる耐摩耗性)
平坦な試験片(寸法100 mm × 100 mm)を、化学放射線によって予め硬化した被覆フィルムから調製した。この試験片の最初のヘーズ値を、ASTM D1003にしたがって、BYK-GardnerからのHaze Gard Plusを使用して決定した。次いで、試験片の被覆面を、DIN 52347またはASTM D1044にしたがって、CS10Fホイール(タイプIV;灰色)を使用して、および摩耗ホイール当たり500 gの負荷重量で、ErichsenからのTaber Abraser model 5131を用いてスクラッチした。25、100、500および1000回転後の最終ヘーズ値を決定することによって、試験片のΔヘーズ値を、所定数の回転での最終ヘーズ値と最初のヘーズ値との間の差から決定することができた。
【0164】
(ISO 15184/ASTM D3363にしたがう鉛筆硬度試験機を使用する耐スクラッチ性)
平坦な試験片を、化学放射線によって予め硬化した被覆フィルムから製造し、そしてガラスプレートに貼った。鉛筆硬度を、BYK-GardnerからのWolf-Wilbum鉛筆硬度試験機およびCretacolorからの鉛筆を使用して決定した。ISO 15184にしたがって、45°の角度にて750 gの圧力下、試験配置において如何なる表面の損傷ももたらさない最も硬い鉛筆の名称を示す。
【0165】
(EN ISO 2409/ASTM D3359にしたがうクロスハッチ試験による接着強度)
予め乾燥のみした被覆ラッカーフィルムのラッカー層の接着強度および化学放射線によって硬化した、ラッカーフィルム上の被覆物の接着強度を決定した。以下のように評価した:
a.)粘着テープ引き剥がしを行うまたは行わないクロスハッチング(使用した粘着テープ:3MからのScotch(商標) 610-1PK)、および
b.)粘着テープ引き剥がし(使用した粘着テープ:上記参照)後の98℃の熱水中での、合計4時間の貯蔵後のクロスハッチング、各時間毎に評価を行う。
【0166】
(耐薬品性)
化学放射線により硬化され、そして熱可塑性プラスチック材料(例えばBayblend T65)によってバック射出成形された成形部品(車用加熱/通気パネル)は、r = 0.8 mmまでの変形臨界半径を有する。薄いラッカー層厚さを有するこれらの高度に変形され、およびストレスがかかった領域の耐薬品性を、以下のように調査した。当業者に既知の攻撃的なローションおよびクリーム(例えばAtrixハンドクリーム、Daimler Chrysler AGサンオイル試験混合物DBL7384、子供用Garnier Ambre Solaire SF30および子供用Nivea Sun保湿サンローションSF30)を上記領域に付与し、次いで、加熱チェンバー中、80℃にて24時間貯蔵した。この負荷に続いて、残留物を水を用いて注意深く除去し、そして試料を乾燥した。暴露した領域中の表面の視覚的評価を行った。
【0167】
(耐ブロッキング性)
巻かれた予備乾燥した被覆フィルムの耐ブロッキング性を模擬実験するためには、例えばDIN 53150に記載された標準試験方法は十分ではないため、したがって、以下の試験を行った。ラッカー材料を、市販のドクターナイフ(所要の湿被覆厚さ100 μm)を使用してMakrofol DE 1-1フィルム(375 μm)に付与した。20℃〜25℃にて10分間の溶媒蒸発段階に続いて、被覆フィルムを、循環空気オーブン中、110℃にて10分間乾燥した。1分間の冷却段階の後、市販の接着剤積層フィルムGH-X173 natural (Bischof und Klein、レンゲリッヒ、独国)を、プラスチック塗装ローラーを使用して、100 mm × 100 mmの領域に渡って、乾燥被覆フィルム上にしわなく付与した。次いで、該積層フィルム部分に、全面に渡って、10 kg重量を用いて、1時間負荷をかけた。その後、積層フィルムを除去し、そしてラッカー表面を視覚的に評価した。
【0168】
(ラッカー層のフィルム厚さ)
化学放射線により硬化したラッカー層のフィルム厚さを、白色光干渉計ETA-SST(ETA-Optik GmbH)を用いて決定した。
【0169】
〔結果〕
試験の結果を以下の2つの表に示す。
【0170】
【表6】

【0171】
重要事項:
GS:クロスハッチ;KBA:粘着テープ引き剥がし;KT:98℃の熱水中n時間貯蔵後のKBA。
クロスハッチの評価:評点0〜5、ここで0は非常に良好な接着性であり、および5はラッカー層のほぼ完全な層間剥離である。
【0172】
【表7】

【0173】
(要旨)
上記試験結果は、本発明による被覆組成物(実施例 2〜4)および方法を使用することによって、変形フィルム上、80℃までの高温にて優れた耐薬品性を有する表面を得ることができることを示す。さらに、長期の負荷のもとでさえも、フィルムの一貫した高い透明性と共に、優れた耐摩耗性および耐スクラッチ性が達成される。被覆された、UV硬化されていない、フィルムの耐ブロッキング性は、先行技術(実施例5および6)および被覆物中に無機ナノ粒子を含有しないフィルム(実施例1)の耐ブロッキング性よりも顕著に良好であり、したがって、未UV硬化被覆フィルムのロールからロールへの直接積層法を用いる経済的に重要なフィルム被覆方法を使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化性被覆物を含むフィルムであって、
該放射線硬化性被覆物が、
(a)ポリイソシアネートと、
(b1)(メタ)アクリレート基を含み、イソシアネートに対して反応性である化合物と
を含む反応混合物の反応から得られる、(メタ)アクリレート基を含むポリウレタンポリマーを含み、および
1 nm〜200 nmの範囲内の平均粒度を有する無機ナノ粒子をさらに含む、
フィルム。
【請求項2】
上記フィルムが、10 μm〜1500 μmの範囲内の厚さを有するポリカーボネートフィルムである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
上記ポリウレタンポリマーの重量平均Mwが、250000 g/mol〜350000 g/molの範囲内である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
上記反応混合物が、
(b2)イオン性基および/またはイオン性基に変換可能な基および/または非イオン性基による親水的変性作用を有する化合物と、
(b3)50 g/mol〜500 g/molの範囲内の平均分子量および2以上のヒドロキシル官能価を有するポリオール化合物と、
(b4)アミノ官能性化合物と
をさらに含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
上記反応混合物が、
(b5)500 g/mol〜13000 g/molの範囲内の平均分子量および1.5〜5の範囲内の平均ヒドロキシル官能価を有するポリオール化合物
をさらに含む、請求項4に記載のフィルム。
【請求項6】
(b3)中のヒドロキシル基数が、5 mole %〜25 mole %の範囲内のヒドロキシル基とアミノ基との合計量の割合を示す(ここで反応混合物中の水のヒドロキシル基は考慮しない)、請求項4に記載のフィルム。
【請求項7】
上記放射線硬化性被覆物が、
(b6)(メタ)アクリレート基を含み、イソシアネートに対して非反応性であり、および/または反応しない化合物
をさらに含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項8】
上記被覆物中の上記無機ナノ粒子の表面が、他の化合物の共有結合および/または非共有結合によって変性されている、請求項1に記載のフィルム。
【請求項9】
・(a)ポリイソシアネートと、
(b1)(メタ)アクリレート基を含み、イソシアネートに対して反応性である化合物と
を含む反応混合物の反応から得られる、(メタ)アクリレート基を含むポリウレタンポリマーを含み、および
1 nm〜200 nmの範囲内の平均粒度を有する無機ナノ粒子をさらに含む、
ポリマー分散体を調製する工程と、
・上記ポリマー分散体を用いてフィルムを被覆する工程と、
・上記ポリマー分散体を乾燥する工程と
を含む、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載のフィルムを含む成形品。
【請求項11】
・請求項1に記載のフィルムを調製する工程と、
・上記フィルムを成形品に成形する工程と、
・上記成形品上の放射線硬化性被覆物を硬化する工程と
を含む、放射線硬化被覆物を含む成形品の製造方法。
【請求項12】
成形品の成形を、20 bar〜150 barの範囲内の圧力下、型中で行う、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
成形品の成形を、上記フィルムの材料の軟化点未満の、20℃〜60℃の範囲内の温度にて行う、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
硬化された放射線硬化性被覆物の反対側の上記フィルムの面上に、ポリマーをさらに付与する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法により製造された成形品。

【公開番号】特開2009−280809(P2009−280809A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−108997(P2009−108997)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】