説明

放射線装置

【課題】 放射線装置を過般する場合には、動画撮影用の保護部材は重く利便性が悪い。
【解決手段】 放射線装置において、筐体内部の集積回路を被曝から保護する保護部材の透過率を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の透過放射線から放射線画像を得る放射線装置に関し、特に放射線から電子部品を保護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮影画像が瞬時にモニタに表示されるDR(Digital Radiography)などを用いたデジタルX線撮影装置が普及している。また、静止画撮影では過般が可能であり、動画撮影では架台装置に支持されるDRも開発されつつある。
【0003】
ところで、放射線検出器を使用して放射線を検出する場合、検出した信号を処理するために集積回路が必要となる。集積回路がチップとして一体形成されたICチップが、駆動中に放射線を浴びると、IC回路中のトランジスタの劣化が進行し、放射線照射下ではない場合と比較すると、ICチップの寿命が短くなる。
【0004】
そこで、特許文献1や特許文献2では、IC毎に放射線を吸収、遮蔽する保護部材を配置することで、ICの劣化を防いでいる。
【特許文献1】特開平9−288184号公報
【特許文献2】特開2006−202791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ICを被曝保護する部材として、鉛やモリブデン、タングステン等の重金属が主に使用されている。より多くの被曝を保護するためには、この重金属の放射線照射方向の厚みを増加して線量透過率を小さくする必要がある。また、ICの劣化は総被曝量に比例するため、動画撮影時のフレームレートが上がれば上がるほど、ICの総被曝量が増加し、それだけIC被曝を保護する、厚く、重い部材が必要になってくる。
【0006】
しかし、従来の特開平9−288184号や特開2006−202791号の放射線撮影装置では、静止画、動画兼用の検出器を使用する場合、筐体内の保護部材の量は、被曝の量が大きい動画撮影を想定して決定される。そのため、静止画撮影時も、動画撮影時を想定した保護部材の入った筐体を持ち運ばなければならず、重量が増し、操作性が低減する。また、持ち運べる重量を考慮した保護部材では、ICの寿命が限定され、製品寿命を長く保つことができない。ちなみに、現在用いられている動画撮影には、静止画撮影時の5倍程度の保護部材が必要であり、重量増加により過般して撮像する場合の操作性を下げる要因の一つとなっている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、撮影形態に合わせて筐体内のICへの被曝を保護して、ICの寿命を保ちつつ、筐体の軽量化をすることであり、操作性が向上した放射線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本願に係わる発明は、放射線を電気信号に変換するセンサと、
前記センサが出力した電気信号を処理する電子部品と、
前記電子部品の少なくとも一部を放射線の被曝から保護するもので、線量透過率を変更可能な保護手段と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、保護部材の線量透過率を変更可能にすることにより、過般する場合には操作性が向上し、動画撮影時には電子部品の保護性能をあげることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0011】
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態に係わる放射線撮影装置の構成を示す図である。また、図2は、本発明の第一の実施形態に係わる放射線撮影装置の斜視図である。放射線検出部6は、被検者に向けて放射された放射線10を検出し電気信号に変換するセンサを有する。IC8は、放射線検出部6が出力する信号を処理し、照射野領域外に配置されている。IC基板12は、電子部品であるIC8からの信号を受け取る。
【0012】
IC8は、IC基板12上のICに比べて被曝に弱い構成となっている。ケーブル9は、放射線検出部6とIC8、もしくはIC基板12と信号をやりとりする。
【0013】
保護部材7は、放射線検出部6を支持している支持基台を兼ねている。保護部材11は、静止画撮影時のICへの放射線被曝を保護する。筐体1は、放射線検出部6、支持基台7、IC8、もしくはIC基板8、ケーブル9、保護部材11、IC基板12を内包する。架台装置2は、筐体1と着脱可能で、装着時には筐体1を支持し、位置決めをする。固定具3は、架台装置2に構成されている筐体1を固定する。
【0014】
保護部材4は、筐体1の内部に構成されているIC8の少なくとも一部を動画撮影時に放射線から保護するものであり、厚みを容易に変更可能で、照射野領域に影響しない配置をとっている。
【0015】
保護部材支持部5は、保護部材4を支持する。この保護部材支持部5には、保護部材4が設置されているかを判別する図示しないセンサがついている。そのセンサからの信号に基づいて図示しない制御手段は、保護部材4が設置されていない場合には、放射線が一定以上のフレームレートで曝射されないように放射線発生装置を制御する。また、保護部材11は、筐体内に構成されているため、薄く軽いものが望ましい。一方、保護部材4は、架台装置2内に組み込まれるため、厚みや重さに厳しい制約がなく、被曝保護可能なものであれば良い。すなわち、保護部材4は、保護部材11と材質の異なる、鋼板などの比較的安価なものを使用することができ、コストダウンにつながる。
【0016】
以上のような構成により、保護手段を構成する保護部材4を出し入れすることで電子部品8への放射線透過率を変更する。静止画撮影時には、筐体1を架台装置2から取り外して、可搬型の放射線検出器として扱える。また、動画撮影時には、筐体1を架台装置2に装着することで、保護部材4が、動画撮影時の大きな曝射量のIC8への被曝を防ぐことができるような形態となっている。これにより、ICの被曝による劣化を防ぎ、かつ大きな曝射量に対する保護部材を内包しない軽量な筐体を備えた放射線撮影装置を提供できる。
【0017】
(第二の実施形態)
図3は、本発明の第二の実施形態に係わる放射線撮影装置の構成を示す図である。また、図4は、本発明の第二の実施形態に係わる放射線撮影装置の斜視図である。
【0018】
第二の実施形態では、前記被検者と前記放射線検出部6との距離を縮めるために筐体がよりコンパクトに設計された時に、動画撮影時に被曝保護を必要とするICが照射野領域内に配置されている。
【0019】
図3、5において、穴25は、筐体側面にあり、保護部材4が出し入れされる。筐体の正面カバー22と筐体の裏面カバー23と筐体の側面カバ−20から筐体が構成されている例である。筐体の側面カバー21は、穴25をふさぐ為の移動カバーであり、蝶番が片側に付いていて、開閉可能となっている。電気基板24は、IC8が乗っている。隙間26は、筐体内部の放射線検出部6と電気基板24の間にある保護部材B4が出し入れ可能に構成され、穴25と繋がっている。保護部材4は、架台装置2の内部に構成されており、図4に示すように、30のローラにリードされてスライド式に筐体1を架台装置2に装着すると、隙間26に保護部材B4が挿入される構造となっている。そして、筐体1は、保護部材支持部5に突き当てることで位置決めされる。また、電気基板24や放射線検出部6は隙間26や穴25とは隔てた空間としてあり、電気基板24や放射線検出部6の遮光性や防塵性は保たれている。
【0020】
以上のような構成により、動画撮影時に、隙間26に保護部材B4が配置されることにより、IC8の動画時の被曝を保護する。これにより、照射野内に配置されたICでも被曝による劣化を防ぐことができる。撮影領域と外形との寸法差を縮めることができ、結果、被検者と前記放射線検出部6との距離を縮めることで、撮影時のアライメントをより細かくとることが可能な放射線撮影装置を提供できる。
【0021】
(第三の実施形態)
図5は、本発明の第三の実施形態に係わる放射線撮影装置の構成を示す図である。
【0022】
第三の実施形態では、筐体単体で保護部材の線量透過率を変更する手段を有する。このため、動画時に必要となる保護部材が筐体に設置されていない場合に、筐体内に動画撮影を禁止する機能をつけることによって、IC8への無駄な被曝を防ぐ。
【0023】
図5において、27は、穴25をふさぐ為のスライドカバーであり、側面カバー20に沿って開閉可能な手段を有している。28は、保護部材4が装着されていることを感知するセンサであり、このセンサ28が保護部材4の装着を認めることで、任意のフレームレート以上の曝射を許可する。
【0024】
以上のような構成により、動画撮影時には、スライドカバー27を開き、穴25に保護部材4を装着することにより、センサ28が動画撮影を許可し、IC8の動画時の被曝を保護する。これにより、筐体単体でIC8の被曝による劣化を防ぎ、IC8の寿命が安定した放射線撮影装置を提供できる。
【0025】
また、以上ようなフレームレート制限は、第一、第二の実施形態との組合せでも、同様に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】放射線撮影装置の構成図
【図2】架台装置に支持される放射線撮影装置の斜視図
【図3】架台装置に支持される放射線撮影装置
【図4】架台装置に挿入される放射線撮影装置
【図5】放射線撮影装置の構成図
【符号の説明】
【0027】
1 筐体
2 架台装置
4 保護部材
5 保護部材支持部
6 放射線検出部
7 支持基台
8 IC
11 保護部材
12 IC基板
20 側面カバー
24 電気基板
25 穴
26 隙間
28 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を電気信号に変換するセンサと、
前記センサが出力した電気信号を処理する電子部品と、
前記電子部品の少なくとも一部を放射線の被曝から保護するもので、線量透過率を変更可能な保護手段と、
を有することを特徴とする放射線装置。
【請求項2】
前記保護手段の線量透過率の変更を感知する手段と、前記感知した結果に基づいて前記放射線を放射している放射手段が一定以上のフレームレートの曝射をさせない制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載の放射線装置。
【請求項3】
前記センサ及び電子部品を内包する筐体をさらに備え、
前記筐体側面に穴を少なくとも一つ有し、前記穴に保護部材を出し入れすることで前記保護手段の線量透過率を変更することを特徴とする前記請求項1又は2のいずれか一項に記載の放射線装置。
【請求項4】
前記筐体を着脱可能に支持する架台装置を更に有し、
前記架台装置が前記保護部材を出し入れすることで前記保護手段の線量透過率を変更することを特徴とする前記請求項1又は2のいずれか一項に記載の放射線装置。
【請求項5】
前記保護手段が、前記保護部材の厚みを変えることを特徴とする前記請求項1に記載の放射線装置。
【請求項6】
前記保護手段が、前記保護部材の材質を変えることを特徴とする前記請求項1に記載の放射線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−66109(P2010−66109A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232322(P2008−232322)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】