説明

放射線/熱による二重硬化塗料組成物

(a1)化学線照射によって活性化する結合を少なくとも1個含んで成る官能基を少なくとも2個と場合によりイソシアネート反応性官能基を少なくとも1個および場合によりヒドロキシル反応性官能基を少なくとも1個含んで成っていて化学線照射によって重合する放射線硬化性成分、(a2)成分(a3)の官能基と反応する官能基を少なくとも2個含んで成っていて熱暴露によって重合する熱硬化性結合剤成分[ここで、成分(a2)の非揮発重量を基準にして少なくとも5重量%は、官能基(a21)を少なくとも2個有していて0℃未満のTgを示しかつ225を超える当量重量を有する重合体である成分(X)である]、(a3)(a2)の官能基と反応する官能基を少なくとも2個含んで成る熱硬化性架橋成分および(a4)場合により少なくとも1種の反応性希釈剤を含んで成る塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2001年8月28日付けで出願した米国特許出願:09/940,748、2001年8月28日付けで出願した米国特許出願:09/941,118、2001年8月28日付けで出願した米国特許出願:09/941,283および2001年8月28日付けで出願した米国特許出願:09/941,295(これらは全部引用することによって本明細書に組み入れられる)の一部継続出願である。
【0002】
発明の背景
多孔質材料が幅広く多様な用途で用いられている。本明細書で用いるような多孔質は、孔径が約10から1500nmの微孔性表面を1つ以上有する材料または基体を指す。多孔質材料の例には木、ガラス、革、プラスチック、金属、鉱物、繊維材料および繊維強化材料が含まれる。
【0003】
造形および/または成形品または部品の製造で特に有用な多孔質材料はプラスチック、鉱物、例えば焼成もしくは未焼成粘土など、セラミック、天然および人工石またはセメントなど、繊維材料、特にガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、織物繊維、金属繊維およびこれらの複合材料など、繊維強化材料、特に上述した繊維の中の1種以上で強化されたプラスチック複合材料、およびこれらの混合物である。造形および/または成形品の製造に好適な多孔質材料の例は、反応射出成形コンパウンド(RIM)、強化射出成形コンパウンド(RRIM)、構造強化射出成形コンパウンド(SRIM)、ナイロン複合材料、繊維強化シート成形コンパウンド(fiber reinforced sheet molded compounds)(SMC)および繊維強化バルク成形コンパウンド(fiber reinforced bulk molded compounds)(BMC)である。SMCおよびBMCが最も好適な多孔質基体である。
【0004】
厄介な輪郭および/または形態を有する造形品を製造しようとする時には特にSMCおよびBMCが有用であることが認められている。複合材料は鋼および熱可塑性プラスチックに比べていろいろな利点を有する。それらは強度に対する重量の比率が好ましく、複数片部品の強化をもたらし、工具の費用が低く、向上した耐傷性および耐食性を示し、工程サイクル時間が適度であり、デザイン変更費用が低いばかりでなく材料の費用も適度である。家庭用電気器具、自動車部品、構造用部品などの製造ではSMCおよびBMCが用いられる。
【0005】
多くの場合、造形多孔質品の表面に1種以上の塗料組成物を付着させるのが望ましい。視覚、保護または両方の効果が得られるように塗料を考案することができる。しかしながら、塗装された造形多孔質品、特にSMCもしくはBMC品の製造は難題を提起し続けている。
【0006】
SMCまたはBMCで作られた数多くの造形品は、完全に硬化した膜を得るのがより困難な部分を1つ以上有する。例えば、ある種の造形品は、より厚いことで吸熱板として機能し得る領域を含有する。その結果として有効表面温度が低くなることで、その領域に付着させた熱硬化性塗料の硬化が邪魔される可能性がある。
【0007】
化学線単独使用で硬化し得る塗料を用いようとする努力は他の問題に直面している。本明細書で用いるような化学線は電磁放射線、例えば紫外線またはX線などばかりでなく粒子線、例えば電子線なども指す。いろいろな造形多孔質品は特殊な輪郭および形態を有し、その結果として、選択したエネルギー源の照射が直接には当たらない「影」ゾーンまたは領域を有する三次元品がもたらされる。従って、化学線エネルギー源によって硬化する塗料を用いると、結果として、そのようなエネルギー源の1つ以上が当たらない影領域の塗膜は未硬化または硬化度合がある程度である可能性がある。別法として、あらゆる影領域に「到達」させようとする努力を行うと、追加的化学線エネルギー源を入手する必要があることから費用の増大を被る可能性がある。多くの場合、製造の制約によって化学線エネルギー源の数および/または場所が制限されることは理解されるであろう。また、多くの場合、スプレーしぶきは硬化しない、と言うのは、そのような粒子は大きな表面積比を有することで酸素阻害が起こりかつそのような粒子内に酸素がいくらか分散するからである。
【0008】
多孔質基体の塗装で直面する別の重要な問題は、表面欠陥部、例えば間隙、突出物または膨れなどの外観が持続する点にある。そのような欠陥部は最初の性能、性質および品質を大きく低下させると同時に加工および工程費用を増大させる。間隙は下塗りおよび/または上塗り工程後に見られる。それは下塗りに目に見える欠陥部が全く存在していなくても上塗りに見られる可能性がある。それは極めて散発的で予測不可能である。そのような欠陥部は完全な半球体としてかあるいは気泡がしぼむことで生じた残留物として現れ得る。不幸なことに、そのような間隙欠陥部が存在すると、その数が僅かであっても、結果として塗装品が不合格になってしまう可能性がある。従って、多孔質表面の塗装を行う製造業者は、長年に渡り、欠陥部がなくて最適な滑らかさを有する塗装表面を一貫して大量生産することを可能にする方法を探求していた。特に、間隙欠陥部を実質的になくすことを可能にする方法が望まれている。
【0009】
加うるに、付着させた塗料は下に位置する多孔質基体に対して良好な接着力を有するべきでありかつ次に塗布する1層以上の塗膜で重ね塗りできるべきである。下に位置する基体および/または次に塗布する1層以上の塗膜のいずれに対しても膜を付着させて硬化させることができないことを本明細書では塗膜間接着(intercoat adhesion)(ICA)障害と呼ぶ。接着障害を起こし易い塗料は商業的に受け入れられず、特に自動車産業では受け入れられない。多孔質材料は軟質または硬質のいずれかに分類分け可能である。軟質材料は、かけられた応力下である程度動き得るように相対的に低いヤング係数を示すように考案された材料である。そのような基体に塗布される塗膜層は全部同様な度合の柔軟性を示すべきであり、さもなければ、応力がかかった時に接着もしくは亀裂障害を起こす可能性がある(例えば回転曲げ試験)。硬質基体は、柔軟であるように考案されてはいないが、しばしば、当該製品製造中に大きな応力を受ける。それは本発明の塗料を付着させた後であるが最終的な上塗りを付着させる前に起こる可能性がある。それには、例えば、自動車に取り付けられるいわゆる「密閉パネル」、例えばドアおよびフードパネルなどが含まれるであろう。その使用する塗料組成物が柔軟でないと、歪みが当該基体の中に誘発されている間にそれに亀裂が生じる可能性がある。それによって、その塗料で上塗りした多孔質表面に表面欠陥部が実質的に存在しないように表面を改善する能力が悪化する可能性がある。
【0010】
接着は、特に、塗装を受けさせるプラスチック基体が後に電着工程を受けさせる製品の一部になる時に難題になり得る。ある製造施設では、塗装を受けさせるSMC/BMC多孔質造形品をe−コート浴液に浸漬する前に金属構造物に固着させておく方が望ましい。その構造物が前記浴液から出た後、その構造物全体に電着塗膜(存在する場合)の完全な架橋が起こるに充分な条件を受けさせる。その工程中には一般にその塗装を受けさせるSMC/BMC造形品に塗装を受けさせないが、電着焼き付けを行う前に付着させておいた如何なる塗膜の上塗り性も電着焼き付けの影響を受けないのが望ましい。特に、電着焼き付けを行う前に基体に付着させておいた如何なる塗膜も、後に付着させる下塗り剤、ベースコートおよび/またはクリアコートに対して望ましい接着を継続して示すべきである。
【0011】
間隙欠陥部を補正することを意図した塗膜は、接着が最適であることに加えて、また、望ましい耐候性、耐久性、耐湿性、滑らかさなども示すべきである。特に、表面欠陥部をなくすことを意図した塗膜は、熱ショック試験、冷砂利試験および耐候試験、例えばフロリダ暴露、QUV、WOMまたは現場使用などの点で最適な接着を継続して示すべきである。
【0012】
そのような問題を取り扱う試みが従来技術で成されてきたが、不充分なままである。
【0013】
ドイツ特許出願DE 199 20 799(2001年10月30日付けで出願した米国連続番号10/018,106)(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)は、熱と化学線の両方で硬化する塗料組成物を提供するものである。その組成物は、化学線で架橋する働きをする官能基(a11)を少なくとも2個と望まれるならば成分(a2)の中の相補的官能基(a22)と一緒に熱架橋反応を起こし得る官能基(a12)を少なくとも2個含有する少なくとも1種の成分(a1)を含んで成る。官能基(a11)および(a12)の例はそれぞれアクリレート基およびヒドロキシル基である。その組成物は、更に、化学線で架橋する働きをする官能基(a21)を少なくとも2個と成分(a1)の相補的官能基(a12)と一緒に熱架橋反応を起こし得る官能基(a22)を少なくとも1個含有する少なくとも1種の成分(a2)も含んで成る。官能基(a21)および(a22)の例はそれぞれアクリレート基およびイソシアネート基である。
【0014】
DE 199 20 799の組成物は、更に、少なくとも1種の光開始剤(a3)、少なくとも1種の熱架橋開始剤(a4)、熱および/または化学線で硬化する少なくとも1種の反応性希釈剤(a5)、少なくとも1種の塗料用添加剤(a6)および/または少なくとも1種の熱硬化性成分(a7)も含んで成るが、但し成分(a1)が官能基(a12)を持たない時には前記塗料組成物に少なくとも1種の熱硬化性成分(a7)を含有させることを条件とする。成分(a7)として用いるに適した材料の具体例には、熱で硬化する結合剤および/または架橋剤、例えばブロック化ポリイソシアネートなどが含まれる。
【0015】
ドイツ特許出願DE 199 30 665 A1(2001年12月7日付けで出願した米国連続番号10/018,351)、DE 199 30 067 A1(2001年12月13日付けで出願した米国連続番号10/018,703)、DE 199 30 664 A1(2001年12月7日付けで出願した米国連続番号10/018,352)およびDE 199 24 674 A1(2001年11月16日付けで出願した米国連続番号09/926,532)(これらは全部引用することによって本明細書に組み入れられる)は、化学線で活性化可能で化学線で架橋する働きをする結合を少なくとも1個含有する官能基(a11)を1分子当たり平均で少なくとも2個と望まれるならばイソシアネート反応性(isocyanate−reactive)基(a12)、例えばヒドロキシル基などを少なくとも1個含有する少なくとも1種の成分(a1)、イソシアネート反応性基を少なくとも2個含有する少なくとも1種の熱硬化性成分(a2)[この成分は強制的にオレフィン系不飽和単量体とジフェニルエチレンおよびこれの誘導体の共重合体を含んで成る]および(a3)少なくとも1種のポリイソシアネートを含んで成っていて熱および化学線で硬化する塗料材料を開示するものである。
【0016】
国際特許出願WO 98/40170(米国特許第6,333,077号)には、塗布した後であるが硬化していないベースコート膜の上にクリアコートを上塗りするウエットオンウエット(wet−on−wet)方法が開示されている。その後、その2層の膜に焼き付けを一緒に受けさせる前に、その塗布した後であるが硬化していないクリアコート膜に化学線を当てる。そのクリアコート組成物は、固体を基準にして、系A)を50から98重量%と系Bを2から50重量%含有する。系Aは熱による付加および/または縮合反応で硬化する能力を有していてフリーラジカルで重合する二重結合も系Bが有するフリーラジカル重合性二重結合と他の様式で反応する基も実質的に含有しない。系Bは化学線照射によってオレフィン二重結合がフリーラジカルで重合することで硬化する。系Aは好適にはヒドロキシ官能アクリレートである結合剤を含んで成るが、それのガラス転移温度は特定されていない。系(B)は1成分、2成分もしくは多成分系であってもよい。この国際特許出願には、その開示されたクリアコート組成物が微孔性表面の塗装に関係した問題を取り扱うか否かは示されていない。
【0017】
DE 101 13 884.9(引用することによって本明細書に組み入れられる)は、10から1500nmの大きさの孔を有する微孔性表面、特にSMCおよびBMCを塗装する方法を開示するものである。その方法では、少なくとも1種の成分(a1)、少なくとも1種の熱硬化性成分(a2)および少なくとも1種のポリイソシアネート(a3)を含んで成る塗料組成物を利用する。成分(a1)は、化学線で活性化する結合を少なくとも1個有する官能基(a11)を1分子当たり少なくとも2個と場合によりイソシアネート反応性基(a12)を少なくとも1個含んで成る。成分(a2)はイソシアネート反応性基を少なくとも2個含んで成る。
【0018】
前記は改良をもたらすものではあるが、従来技術の組成物のいずれも望まれる性能特性の全部を一貫して与えるのは不可能であった。
【0019】
従って、多孔質表面の塗装の改善を可能にしかつ表面欠陥部が実質的に存在しない上塗りされた多孔質表面を得ることを可能にすると同時に商業的に望ましい他のいろいろな性能特性、特に塗膜層間の商業的に満足される接着を与える塗料組成物および/または方法が継続して求められている。
【0020】
発明の要約
本発明は塗料組成物に関し、この塗料組成物は、
(a1)以下の
(a11)化学線照射によって活性化する結合を少なくとも1個含んで成る官能基を少なくとも2個、
(a12)場合により、イソシアネート反応性官能基を少なくとも1個、および
(a13)場合により、ヒドロキシル反応性官能基を少なくとも1個、
を含んで成っていて化学線照射によって重合する放射線硬化性成分、
(a2)成分(a3)の官能基と反応する官能基(a21)を少なくとも2個含んで成っていて熱暴露によって重合する熱硬化性結合剤成分[ここで、成分(a2)の非揮発重量を基準にして少なくとも5重量%から100重量%は、官能基(a21)を少なくとも2個有していて0℃未満のガラス転移温度を示しかつ1当量当たり225グラムを超える当量重量を有する重合体である成分(X)である]、
(a3)前記官能基(a21)と反応する官能基を少なくとも2個含んで成る熱硬化性架橋成分、および
(a4)場合により、少なくとも1種の反応性希釈剤、
を含んで成り、この塗料組成物は、化学線照射と熱エネルギー暴露の両方によって硬化する。
【0021】
詳細な説明
全体に渡って用いるような範囲は、その範囲内の値の各々および全てを記述する省略表現として用いる範囲である。その範囲内の如何なる値もその範囲の境界として選択可能である。
【0022】
本発明の塗料組成物は二重硬化である。本明細書で定義するような「二重硬化」は、所望の性能特性を達成する度合の架橋を達成しようとする時に化学線照射と熱暴露の両方が必要な硬化性塗料組成物を指す。従って、本発明の塗料組成物は、1つの面において、これに電磁放射線スペクトルのある部分が当たると少なくともある程度硬化または重合する。本発明の別の面において、本発明の塗料組成物は、熱または熱エネルギーにさらされると熱で少なくともある程度硬化または重合する。
【0023】
放射線による硬化と熱による硬化を逐次的または同時に起こさせてもよい。好適な態様では、本発明の塗料組成物に1番目の硬化段階に続いて2番目の硬化段階を受けさせる。最初に起こさせるのは放射線による硬化または熱による硬化のいずれであってもよい。最も好適な態様では、本発明の塗料組成物に最初に化学線、特に紫外線照射を受けさせた後、2番目の硬化段階を受けさせるが、この場合、その前もって化学線照射を受けさせておいた本塗料組成物に熱による硬化を受けさせる。
【0024】
その2番目の段階を1番目の段階の直後に行わないで次に付着させる塗膜を1層以上付着させた後に2番目の段階を実施してもよいことも本発明の範囲内である。例えば、放射線で硬化させておいた本発明の塗膜に1種以上の追加的塗料組成物を付着させそして次にその放射線で硬化させておいた本発明の塗膜を追加的に付着させた1層以上の塗膜と一緒に同時に熱で硬化させることは本発明の範囲内である。
【0025】
本明細書で用いるような化学線は、波長が500nm未満のエネルギーおよび粒子線、例えば電子線などを指す。好適な化学線は波長が180から450nm、即ち紫外領域の化学線であろう。より好適には、そのような化学線は波長が225から450nmの紫外線であろう。最も好適な化学線は、波長が250から425nmの紫外線であろう。
【0026】
本明細書で用いるような熱は、分子の振動または特定種の輻射のいずれかによる接触でもたらされるエネルギーの伝達を指す。
【0027】
本明細書で用いるような輻射で熱エネルギーを伝達することは、赤外(IR)または近赤外(NIR)、即ち波長が約800nmから10−3mのエネルギーとして一般的に記述される電磁エネルギーの使用を指す。
【0028】
本明細書で用いるような熱は、また、対流または伝導で伝達されるエネルギーも包含する。対流は、加熱された液体または気体が上昇しそして冷えた部分が落下することで熱が伝達されることを指す。伝導は、物質またはエネルギーの伝達として定義可能である。特に、対流による熱エネルギーの伝達が好適である。
【0029】
本発明の塗料組成物は少なくとも3種類の成分、即ち化学線照射、特に紫外線照射によって重合する放射線硬化性成分(a1)、熱暴露によって重合する熱硬化性結合剤成分(a2)、およびイソシアネート基を1分子当たり少なくとも2個有する熱硬化性架橋成分(a3)を含んで成る。
【0030】
放射線硬化性成分(a1)は、官能基(a11)を1分子当たり平均で少なくとも2個、より好適には官能基(a11)を少なくとも3個含有する。各官能基(a11)は、好適には、化学線照射、特に紫外線照射によって活性化して架橋を起こす結合を少なくとも1個有するであろう。特に好適な態様では、各官能基(a11)は紫外線で活性化する結合を1個有するであろう。
【0031】
好適な態様における本発明の塗料組成物が含有する官能基(a11)は1分子当たり平均で6個以下であり、最も好適には、これが含有する官能基(a11)は1分子当たり平均で5個以下である。
【0032】
化学線、特に紫外線で活性化し得る適切な結合の例は、炭素−水素の単結合、炭素−炭素の単結合、炭素−酸素の単結合、炭素−窒素の単結合、炭素−燐の単結合、炭素−ケイ素の単結合、炭素−炭素の二重結合、炭素−酸素の二重結合、炭素−窒素の二重結合、炭素−燐の二重結合、炭素−ケイ素の二重結合または炭素−炭素の三重結合である。これらの中で二重結合が好適であり、炭素−炭素の二重結合が最も好適である。
【0033】
非常に適切な炭素−炭素二重結合は、例えば(メタ)アクリレート基、エタアクリレート基、クロトネート基、シンナメート基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、エテニルアリーレン基、ジシクロペンタジエニル基、ノルボルネニル基、イソプレニル基、イソプロペニル基、アリル基、ブテニル基、エテニルアリーレンエーテル基、ジシクロペンタジエニルエーテル基、ノルボルネニルエーテル基、イソプレニルエーテル基、イソプロペニルエーテル基、アリルエーテル基、ブテニルエーテル基、エテニルアリーレンエステル基、ジシクロペンタジエニルエステル基、ノルボルネニルエステル基、イソプレニルエステル基、イソプロペニルエステル基、アリルエステル基およびブテニルエステル基の中の少なくとも1種に存在する。これらの中で(メタ)アクリレート基が好適であり、アクリレート基が最も好適である。
【0034】
放射線硬化性成分(a1)は、更に、熱硬化性架橋成分(a3)のイソシアネート基(a31)と反応する官能基(a12)を少なくとも1個含んで成っていてもよい。
【0035】
適切なイソシアネート反応性基の例は、イソシアネートと反応し得る基の全部である。適切な官能基の例には、これらに限定するものでないが、チオール基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、イミノ基およびヒドロキシル基が含まれ、ヒドロキシル基が最も好適である。
【0036】
放射線硬化性成分(a1)は、更に、ヒドロキシル反応性官能基である官能基(a13)を少なくとも1個含んで成っていてもよい。適切なヒドロキシル反応性基の例は、ヒドロキシル基と反応し得る基の全部である。適切な官能基の例には、これらに限定するものでないが、イソシアネート、アミノプラスト(aminoplast)、エポキシ基、シラン基、環状無水物および環状ラクトンが含まれる。
【0037】
放射線硬化性成分(a1)はオリゴマーまたは重合体であってもよい。本発明の文脈において、オリゴマーは、基本的構造または単量体単位を平均で一般に2から15個含有する化合物である。それとは対照的に、重合体は、基本的構造または単量体単位を平均で一般に少なくとも10個含有する化合物である。そのような化合物をまた結合剤または樹脂とも呼ぶかもしれない。それとは対照的に、本発明の文脈における低分子質量化合物は、実質的に1個のみの基本的構造または単量体単位で作られている化合物を指す。この種類の化合物をまた反応性希釈剤と呼ぶかもしれず、それを以下に任意の反応性希釈剤成分(a4)に関して考察する。
【0038】
放射線硬化性成分(a1)の数平均分子量は一般に500から50,000、好適には1000から5000であろう。本発明の好適な面において、放射線硬化性成分(a1)と全ての任意反応性希釈剤(a4)の合計が有する二重結合当量重量は、好適には400から2000、より好適には500から900であろう。更に、放射線硬化性成分(a1)と全ての任意反応性希釈剤(a4)の組み合わせが23℃で示す粘度が好適には250から11,000mPasであるようにもする。
【0039】
放射線硬化性成分(a1)の使用量は、各場合とも、本発明の塗料組成物に含める膜形成成分の非揮発性固体の総量を基準にして、1から50重量%、好適には3から45重量%、最も好適には5から20重量%であってもよい。本明細書で用いるような膜形成成分は、放射線硬化性成分(a1)、熱硬化性結合剤成分(a2)、熱硬化性架橋成分(a3)、任意の反応性希釈剤(a4)、および成分(a1)、(a2)または(a3)のいずれかと化学的に反応して結果として重合した網状組織の中に入り込む他のいずれかの単量体、オリゴマーまたは重合体成分のような成分を指す。
【0040】
放射線硬化性成分(a1)として用いるに適した結合剤または樹脂の例には、これらに限定するものでないが、(メタ)アクリロイル官能(メタ)アクリル系共重合体、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエステル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アミノアクリレート、メラミンアクリレート、シリコンアクリレートおよびホスファゼンアクリレート、相当する(メタ)アクリレート、ビニルエーテルおよびビニルエステルのオリゴマーおよび/または重合体の種類が含まれる。(メタ)アクリル系および(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタアクリレートの両方ばかりでなくアクリル系およびメタアクリル系を指すことは理解されるであろう。しかしながら、アクリル系およびアクリレート種の方がメタアクリル系およびメタアクリレート種よりも好適である。
【0041】
放射線硬化性成分(a1)は好適には芳香構造単位を含有しない。ウレタン(メタ)アクリレート、ホスファゼン(メタ)アクリレートおよび/またはポリエステル(メタ)アクリレートの使用が好適であり、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、脂肪族ウレタンアクリレートが最も好適である。
【0042】
放射線硬化性成分(a1)として用いるに適したウレタン(メタ)アクリレートは、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートを鎖伸長剤(chain extender)[これはジオール、ポリオール、ジアミン、ポリアミン、ジチオール、ポリチオールおよびアルカノールアミンの中の少なくとも1種である]と反応させた後に残りの遊離イソシアネート基を少なくとも1種の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルまたは1種以上のエチレン系不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルと反応させることで得ることができる。この場合の鎖伸長剤、ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートおよびヒドロキシアルキルエステルの量を、好適には、1)前記鎖伸長剤が有する反応性基(ヒドロキシル、アミノおよび/またはメルカプチル基)に対するNCO基の当量比が3:1から1:2の範囲、最も好適には2:1でありおよび2)前記エチレン系不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステルが有するOH基がイソシアネートと鎖伸長剤から生じたプレポリマーが有する残存遊離イソシアネート基に対して化学量論的量であるように選択する。
【0043】
また、最初にジイソシアネートもしくはポリイソシアネートが有するイソシアネート基のいくらかを少なくとも1種のヒドロキシアルキルエステルと反応させた後に残りのイソシアネート基を鎖伸長剤と反応させることを通して、放射線硬化性成分(a1)として用いるに適したウレタン(メタ)アクリレートを生じさせることも可能である。そのような鎖伸長剤、イソシアネートおよびヒドロキシアルキルエステルの量を、また、前記ヒドロキシアルキルエステルが有する反応性基に対するNCO基の当量比が3:1から1:2の範囲、好適には2:1であると同時に前記鎖伸長剤が有するOH基に対する残存NCO基の当量比が1:1であるようにも選択すべきである。
【0044】
本発明では、また、他の反応機構によってもたらされるウレタン(メタ)アクリレートも放射線硬化性成分(a1)として用いるに適切であり得ることは理解されるであろう。例えば、最初にジイソシアネートが有するイソシアネート基のいくらかをジオールと反応させた後にイソシアネート基のさらなる部分をヒドロキシアルキルエステルと反応させそして次に残りのイソシアネート基をジアミンと反応させることも可能である。
【0045】
別の態様では、放射線硬化性成分(a1)として用いるに適したウレタン(メタ)アクリレートを軟化させることも可能である。例えば、相当するイソシアネート官能性プレポリマーもしくはオリゴマーを比較的長鎖の脂肪ジオールおよび/またはジアミン、特に炭素原子数が少なくとも6の脂肪ジオールおよび/またはジアミンと反応させることで、ウレタン(メタ)アクリレートを軟化させることができる。そのような軟化反応を実施する時期は、アクリル酸および/またはメタアクリル酸を当該オリゴマーおよび/またはプレポリマーに添加する前または後であってもよい。
【0046】
放射線硬化性成分(a1)として用いるに適したウレタン(メタ)アクリレートの具体例には、材料の点で商業的に入手可能な多官能脂肪族ウレタンアクリレート、例えばCroda Resins Ltd.,(Kent、英国)のCRODAMER(商標)UVU 300、Rahn Chemie(スイス)のGENOMER(商標)4302、4235、4297または4316、UCB(Drogenbos、ベルギー)のEBECRYL(商標)284、294、IRR 351、5129または1290、Bayer AG(ドイツ)のROSKYDAL(商標)LS 2989またはLS 2545またはV94−504、Vianova(オーストリア)のVIAKTIN(商標)VTE 6160、またはBASF AGのLAROMER(商標)8861、およびそれに修飾を受けさせた実験製品が含まれる。
【0047】
放射線硬化性成分(a1)として用いるに適したヒドロキシル含有ウレタン(メタ)アクリレートが米国特許第4,634,602 A号および米国特許第4,424,252 A号に開示されている。適切なポリホスファゼン(メタ)アクリレートの例は出光(Idemitsu)(日本)のホスファゼンジメタアクリレートである。
【0048】
本塗料に、更に、イソシアネート反応性基(a21)を少なくとも2個含んで成る少なくとも1種の熱硬化性結合剤成分(a2)も含有させる。適切なイソシアネート反応性基(a21)の例は、この上にイソシアネート反応性基(a12)に関して記述したそれらである。最も好適なイソシアネート反応性基(a21)はヒドロキシル基である。
【0049】
結合剤成分(a2)の固体重量で表して、結合剤成分(a2)の少なくとも5%から100%は成分(X)である。成分(X)は、官能基(a21)を少なくとも2個有していて0℃未満のガラス転移温度(Tg)を示しかつ1当量当たり225グラムを超える当量重量を有する重合体である。そのようなホモ重合体が示すTgは、好適には−20℃未満、最も好適には−50℃未満である。その当量重量は好適には265を超える。成分(X)は、好適には、ポリエーテルジオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルジオールおよびポリエステルポリオールの中の少なくとも1種である。その量を好適には20%から40%にする。
【0050】
前記ポリエーテルジオールの例には、これらに限定するものでないが、ポリオキシアルキレンが含まれる。ポリオキシアルキレンの例には、これらに限定するものでないが、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドおよびポリテトラヒドロフランが含まれる。一般的には、そのようなポリエーテルジオールの中の繰り返し単位数を少なくとも4にする。好適には、繰り返し単位数を7から50にする。
【0051】
前記ポリエーテルポリオールの例には、これらに限定するものでないが、BASFが商標LUPRANOL(商標)、PLURACOL(商標)、PLURONIC(商標)およびTETRONIC(商標)の下で販売しているポリエーテルポリオール、BayerのARCOL(商標)、DESMOPHEN(商標)およびMULTRANOL(商標)、DowのVORANOL(商標)、E.R.CarpenterのCARPOL(商標)、Hannam(韓国)のPORANOLTM、およびKorea PolyolのKONIXTMが含まれる。
【0052】
前記ポリエステルジオールの例には、これらに限定するものでないが、ポリラクトン(例えばポリε−カプロラクトン)、および脂肪酸二量体とイソフタル酸と1,6−ヘキサンジオールから誘導されたポリエステルが含まれる。そのようなポリエステルジオールは好適にはTONE(商標)201またはTONE(商標)301として入手可能なポリε−カプロラクトンである。一般的には、そのようなポリエステルジオールもしくはトリオールの中の繰り返し単位数を少なくとも4にする。好適には、繰り返し単位数を4から50にする。ポリエステルジオールの例を米国特許第5,610,224号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に見ることができる。
【0053】
そのようなポリエステルポリオールの製造は、より高い官能性を示すポリオール(OH基を4個以上有するポリオール)にラクトンによる伸長を受けさせることで実施可能である。そのようなポリエステルポリオールの例は、ペンタエリスリトールのε−カプロラクトン伸長物である。一般的には、ラクトン数をポリオールが有するOH基1個当たり平均で少なくとも2にする。好適には、ラクトン数をOH基1個当たり平均で2から25にする。そのようなポリエステルポリオールの製造は、低分子量のアルコールと多塩基性カルボン酸、例えばアジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、これらの酸の無水物、およびこれらの酸および/または酸無水物の混合物を用いて実施可能である。また、ヒドロキシル基を含有するポリラクトン、特にポリ−ε−カプロラクトンも適切である。そのようなポリエステルポリオールの調製で用いるに適したポリオールには、これらに限定するものでないが、多価アルコール、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチルペンタンジオール、エチルブチルプロパンジオール、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアネート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどばかりでなくこれらの組み合わせが含まれる。望まれるならば、そのようなポリオール成分にまた一価アルコール、例えばブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、およびエトキシル化およびプロポキシル化フェノールなどを少量含有させることも可能である。そのようなポリエステルの製造ではまたラクトン、特にε−カプロラクトンも適切である。そのようなポリエステルの合成でポリラクトンポリオールを反応体として用いることも可能である。別の態様では、ポリエステルポリオールをラクトンと反応させることで、それに修飾を受けさせることも可能である。ポリエステルジオールのさらなる例を米国特許第6,436,477号および5,610,224号(これらは両方とも引用することによって本明細書に組み入れられる)に見ることができる。
【0054】
ポリエーテルジオール、ポリエステルジオールまたはトリオールおよびポリエステルポリオールの中の少なくとも1種を本塗料組成物に少なくとも5重量%含有させると、そのような塗料組成物から生じさせた塗膜の柔軟性がそれらを含有させなかった塗料組成物から生じさせた塗膜の柔軟性よりも高くなるであろう。そのような柔軟性は、8mmx4mmx0.04mmの膜を0.0074秒−1の引き伸ばし速度で引き伸ばすことによって測定した伸び%により測定した柔軟性である。その測定をRheometric Scientific DMTA Vを用いて室温で実施する。この方法はLoren Hill著、Progress in Organic Coatings、24巻、1994、147頁およびMark Nichols著、Polymer Degredation and Stabilization、60巻、1998、291頁に記述されている。
【0055】
前記少なくとも1種の熱硬化性結合剤成分(a2)はイソシアネート反応性基を少なくとも2個持つべきであるが、3個以上のイソシアネート基も本発明の範囲内である。特に好適な態様における熱硬化性結合剤成分(a2)は、イソシアネート反応性基(a21)を1分子当たり2から10個、最も好適にはイソシアネート反応性基(a21)を1分子当たり2から7個持つであろう。
【0056】
そのような熱硬化性結合剤成分(a2)は、この上で定義したように、オリゴマーまたは重合体である。500から50,000の数平均分子量が適切であるが、500から4000の数平均分子量が好適であり、500から2000の数平均分子量が最も好適である。
【0057】
熱硬化性結合剤成分(a2)として用いるに一般的に適したオリゴマーおよび重合体は、(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル、アルキド、アミノ樹脂、ポリウレタン、ポリラクトン、ポリエステルポリオール、ポリカーボネート、ポリエーテル、エポキシ樹脂−アミン付加体、(メタ)アクリレートジオール、ポリ尿素のポリビニルエステルの部分鹸化品、およびこれらの混合物であり得る。成分(a2)として用いるに適した特に好適なオリゴマーおよび重合体材料は、(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル、ポリウレタンおよびエポキシ樹脂−アミン付加体である。
【0058】
特に、活性水素基、例えばヒドロキシル基などを有するポリエステルが熱硬化性結合剤成分(a2)として用いるに適する。そのようなポリエステルの調製は、有機ポリカルボン酸(例えばフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、マレイン酸)またはこれらの無水物と第一もしくは第二ヒドロキシル基を含有する有機ポリオール(例えばエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール)のポリエステル重縮合で実施可能である。
【0059】
適切なポリエステルの調製は、ポリカルボン酸もしくはこれの無水物にポリオールおよび/またはエポキシドによるエステル化を受けさせることで実施可能である。そのようなポリエステルの製造で用いるポリカルボン酸を主に1分子当たりの炭素原子数が2から18のポリカルボン酸もしくはこれの無水物である単量体で構成させる。有用な酸は、とりわけ、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、セバシン酸、および他のいろいろな種類のジカルボン酸である。そのような反応混合物に一塩基酸、例えば安息香酸、ステアリン酸、酢酸およびオレイン酸などを少量含有させることも可能である。また、より高級なカルボン酸、例えばトリメリット酸およびトリカルバリル酸などを用いることも可能である。この上に挙げた酸の代わりに、前記酸の無水物(存在する場合)を用いることも可能である。また、前記酸の低級アルキルエステル、例えばグルタル酸ジメチルおよびテレフタル酸ジメチルなどを用いることも可能である。
【0060】
そのようなポリエステルを生じさせる時に使用可能なポリオールには、ジオール、例えばアルキレングリコールなどが含まれる。具体例には、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよび2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネートが含まれる。他の適切なグリコールには2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネートが含まれる。他の適切なグリコールには水添ビスフェノールA、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、カプロラクトンが基になったジオール、例えばe−カプロラクトンとエチレングリコールの反応生成物など、ヒドロキシアルキル置換ビスフェノール、ポリエーテルグリコール、例えばポリ(オキシテトラメチレン)グリコールなどが含まれる。そのようなポリオール成分がジオールの全部を構成していてもよいが、また、より高い官能性を示すポリオールを用いることも可能である。より高い官能性を有するポリオールの例には、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが含まれるであろう。
【0061】
本発明で用いるに適し得るいくつかの熱硬化性結合剤(a2)は、Bayerから商標名DESMOPHEN(商標)650、2089、1100、670、1200または2017、UniquemaからPRIPLAS(商標)またはPRIPOL(商標)樹脂、CCPからChempol(商標)ポリエステルまたはポリアクリレート−ポリオール、またはCray ValleyからCRODAPOL(商標)樹脂の下で商業的に入手可能である。
【0062】
しかしながら、熱硬化性結合剤成分(a2)が紫外線照射によって活性化する結合を有する官能基を実質的に持たない時に特に有利な性能特性均衡を達成することができることを見いだした。そのような官能基は、この上に官能基(a11)に関して記述した官能基であり得る。最も好適には、熱硬化性結合剤成分(a2)は完全に飽和状態の化合物であろう。
【0063】
場合により、また、熱硬化性成分(a2)が示す多分散性(PDI)が4.0未満、好適には3.5未満、より好適には多分散性が1.5から3.5未満、最も好適には多分散性が1.5から3.0未満であるようにそれを選択することも可能である。多分散性は下記の式:[重量平均分子量(M)/数平均分子量(M)]で決定した多分散性である。単分散重合体が示すPDIは1.0である。その上、本明細書で用いるようなMおよびMは、ポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィーで測定したそれらである。
【0064】
本発明の別の任意面において、また、前記熱硬化性結合剤成分(a2)が有する芳香環部分が5重量%未満、好適には芳香環部分が2重量%以下、最も好適には芳香環部分が0から2重量%未満[これらは全部熱硬化性結合剤成分(a2)の非揮発重量が基になっている]であるようにそれを選択することも可能である。
【0065】
熱硬化性結合剤成分(a2)として用いるに特に好適なポリエステルは、Akzo Nobel(Louisville、KY)から商業的に入手可能なSETALTM26−1615である。
【0066】
本発明の塗料組成物に入れる成分(a2)の量は幅広く多様であり得、個々の場合の要求に左右される。しかしながら、熱硬化性結合剤成分(a2)を、各場合とも本塗料組成物の膜形成成分の非揮発性固体の総量を基準にして、好適には5から90重量%、より好適には6から80重量%、特に好適には7から70重量%、非常に特に好適には8から60重量%、特に9から50重量%の量で用いる。
【0067】
本発明の二重硬化塗料組成物にまた少なくとも1種の熱硬化性架橋成分(a3)も含有させる。最も好適には、熱硬化性架橋成分(a3)はジ−および/またはポリイソシアネートであるが、ポリイソシアネートが最も好適である。そのようなジ−および/またはポリイソシアネートはブロックされているかあるいはブロックされていなくてもよい。
【0068】
そのような熱硬化性架橋成分(a3)が1分子当たりに含有するイソシアネート基は平均で好適には少なくとも2.0、好ましくは2.0以上、特に3.0以上である。イソシアネート基の数には基本的に上限はないが、しかしながら、本発明に従い、その数が15を超えない、好適には12を超えない、特に好適には10を超えない、非常に特に好適には8.0を超えない、特に6.0を超えないのが有利である。最も好適には、熱硬化性架橋成分(a3)が1分子当たりに有するイソシアネート基は2.5から3.5であろう。
【0069】
適切なジイソシアネートの例は、イソホロンジイソシアネート(即ち5−イソシアナト−i−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン)、5−イソシアナト−1−(2−イソ−シアナトエチ−1−イル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、5−イソ−シアナト−1−(3−イソシアナトプロピ−1−イル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、5−イソシアナト−(4−イソシアナトブチ−1−イル)−1,3,3−トリ−メチルシクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトプロピ−1−イル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトエチ−1−イル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(4−イソシアナトブチ−1−イル)シクロヘキサン、1,2−ジイソシアナトシクロブタン、1,3−ジイソシアナトシクロブタン、1,2−ジイソシアナトシクロペンタン、1,3−ジイソシアナトシクロペンタン、1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−2,4−ジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、エチルエチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、メチルペンチルジイソシアネート(MPDI)、ノナントリイソシアネート(NTI)、または脂肪酸二量体から誘導されたジイソシアネート、例えばHenkelが商標DDI 1410の下で販売していて特許公開WO 97/49745およびWO 97/49747に記述されているジイソシアネート、特に2−ヘプチル−3,4−ビス(9−イソシアナトノニル)−1−ペンチル−シクロヘキサン、または1,2−、1,4−もしくは1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2−、1,4−もしくは1,3−ビス(2−イソシアナトエチ−1−イル)シクロヘキサン、1,3−ビス(3−イソシアナトプロピ−1−イル)シクロヘキサン、1,2−、1,4−もしくは1,3−ビス(4−イソシアナトブチ−1−イル)シクロヘキサン、またはトランス/トランス含有量が30重量%以下、好適には25重量%以下、特に20重量%以下の液状ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、例えば特許出願DE 44 14 032 A1、GB 1220717 A1、DE 16 18 795 A1およびDE 17 93 785 A1に記述されているそれら、好適にはイソホロンジイソシアネート、5−イソシアナト−1−(2−イソシアナトエチ−1−イル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、5−イソシアナト−1−(3−イソ−シアナトプロピ−1−イル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、5−イソ−シアナト−(4−イソシアナトブチ−1−イル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトプロピ−1−イル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトエチ−1−イル)シクロ−ヘキサン、1−イソシアナト−2−(4−イソシアナトブチ−1−イル)シクロ−ヘキサン、またはHDIであり、特にHDIが好適である。
【0070】
適切なポリイソシアネートの例はイソシアナト含有ポリウレタンプレポリマーであり、これの調製は、ポリオールを過剰量のジイソシアネートと反応させることで実施可能であり、好適には、それは低粘度である。
【0071】
また、イソシアヌレート、ビウレット、アロファネート、イミノオキサジアジンジオン、ウレタン、尿素、カルボジイミドおよび/またはウレトジオン基を含有するポリイソシアネートを用いることも可能であり、それらの調製は通常上述したジイソシアネートを用いて行われる。適切な調製方法およびポリイソシアネートの例は、例えば特許CA 2,163,591 A、US−A−4,419,513、US 4,454,317 A、EP 0 646 608 A、US 4,801,675 A、EP 0 183 976 A1、DE 40 15 155 A1、EP 0 303 150 A1、EP 0 496 208 A1、EP 0 524 500 A1、EP 0 566 037 A1、US 5,258,482 A1、US 5,290,902 A1、EP 0 649 806 A1、DE 42 29 183 A1およびEP 0 531 820 A1などから公知であるか、あるいはドイツ特許出願DE 100 05 228.2に記述されている。特に、HDIのイソシアヌレートが熱硬化性架橋成分(a3)として用いるに好適である。
【0072】
また、ドイツ特許出願DE 198 28 935 A1に記述されている高粘度のポリイソシアネート、またはヨーロッパ特許出願EP 0 922 720 A1、EP 1 013 690 A1およびEP 1 029 879 A1に従って尿素形成および/またはブロッキング(blocking)で表面を不活性にしておいたポリイソシアネート粒子も熱硬化性架橋成分(a3)として用いるに適切である。
【0073】
また、ポリイソシアネートとジオキサン、ジオキソランおよびオキサゾリジンの付加体も適切であり、これはドイツ特許出願DE 196 09 617 A1に記述されており、イソシアネート反応性官能基を含有しかつ更に遊離イソシアネート基も含有する。
【0074】
また、アミノプラスト樹脂も熱硬化性架橋成分(a3)として用いるに適する。適切なアミノプラスト樹脂の例には、メラミンホルムアルデヒド樹脂[単量体もしくは重合体であるメラミン樹脂、および部分もしくは完全アルキル置換メラミン樹脂(高イミノメラミンを包含)を包含]、尿素樹脂[例えば尿素ホルムアルデヒド樹脂などのメチロール尿素、例えばブチル化尿素ホルムアルデヒド樹脂などのアルコキシ尿素]などが含まれる。また、米国特許第5,300,328号に記述されているように、硬化温度が150℃未満の方法では、アミノの窒素の1個以上がカルバメート基で置換されているアミノプラスト樹脂の使用も有用である。
【0075】
適切なトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンの例が米国特許第4,939,213号および5,084,541号およびヨーロッパ特許第0 624 577号に記述されている。トリス(メトキシ−、トリス(ブトキシ−および/またはトリス(2−エチルヘキソキシカルボニルアミノ)トリアジンが好適である。
【0076】
しかしながら、最も好適には、熱硬化性架橋成分(a3)はポリイソシアネート、例えばHDIのイソシアヌレートなどであろう。特に好適な態様の熱硬化性架橋成分(a3)は、化学線、特に紫外線照射によって活性化する結合を有する官能基を実質的に持たないであろう。そのような結合は、この上に官能基(a11)に関して記述した結合である。最も好適には、熱硬化性架橋成分(a3)はHDIのポリイソシアヌレートであり、これは炭素−炭素二重結合を実質的に含有しない。
【0077】
本発明の塗料組成物に入れる熱硬化性架橋成分(a3)の量は、各場合とも本発明の塗料組成物に含める膜形成成分の非揮発物の総量を基準にして、一般に5から70重量%、より好適には10から60重量%、特に好適には15から55重量%、非常に特に好適には20から50重量%、特に25から45重量%である。
【0078】
本発明の最も好適な面では、成分(a12)と(a21)の中のイソシアネート反応性官能基の合計に対するNCO基(a31)の比率を1.30未満、好適には0.50から1.25、より好適には0.75から1.10、非常に好適には1.00未満、最も好適には0.75から1.00にする。特に、成分(a12)と(a21)の中のイソシアネート反応性官能基の合計に対するNCO基(a31)の比率が1.30未満、好適には0.50から1.25、より好適には0.75から1.10、非常に好適には1.00未満、最も好適には0.75から1.00であり、および熱硬化結合剤成分(a2)が紫外線照射によって活性化する結合を有する官能基を実質的に持たない時に間隙密閉と接着、特に冷砂利、熱ショックおよび耐候性に関して測定した接着の間の望ましい均衡が得られる。
【0079】
本発明の塗料組成物に、場合により更に、化学線および/または熱で硬化する反応性希釈剤(a4)も含有させてもよい。反応性希釈剤(a4)を用いる場合、それは好適には化学線、最も好適には紫外線で硬化するであろう。最も好適には、そのような反応性希釈剤はまた更に熱硬化性架橋成分(a3)と反応する官能基を1個以上含有するであろう。最も好適な態様における反応性希釈剤(a4)は化学線、例えば紫外線などで硬化しかつ更にイソシアネート基と反応する官能基、例えばこの上に官能基(a12)および(a21)に関して記述したような基を複数含有するであろう。
【0080】
熱で硬化する適切な反応性希釈剤の例は、位置異性体であるジエチルオクタンジオールまたはヒドロキシル含有超分枝化合物またはデンドリマー、例えば特許出願DE 198 09 643 A1、DE 198 40 605 A1およびDE 198 05 421 A1に記述されているそれらである。
【0081】
適切な反応性希釈剤のさらなる例は、ポリカーボネートジオール、ポリエステルポリオール、ポリ(メタ)−アクリレートジオールまたはヒドロキシル含有ポリ付加体である。
【0082】
反応性希釈剤として用いることができる適切な反応性溶媒の例には、これらに限定するものでないが、ブチルグリコール、2−メトキシプロパノール、n−ブタノール、メトキシブタノール、n−プロパノール、エチレングリコールのモノメチルエーテル、エチレングリコールのモノブチルエーテル、エチレングリコールのモノブチルエーテル、ジエチレングリコールのモノメチルエーテル、ジエチレングリコールプロパンジオールエーテル、ジエチレングリコールのジエチルエーテル、ジエチレングリコールのモノブチルエーテル、トリメチロールプロパン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチルまたは3−メチル−3−メトキシブタノール、およびまたプロピレングリコールが基になった誘導体、例えばプロピオン酸エトキシエチルなど、イソプロポキシプロパノールまたは酢酸メトキシプロピルが含まれる。
【0083】
化学線によって架橋し得る最も好適な反応性希釈剤(a4)として、例えば(メタ)アクリル酸およびこれのエステル、マレイン酸およびこれのエステル(モノエステルを包含)、酢酸ビニル、ビニルエーテル、ビニル尿素などを用いる。挙げることができる例には、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸アリル、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ペンタエリスリトール、トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アクリル酸エトキシエトキシエチル、N−ビニルピロリドン、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ジシクロペンチル、EP 0 250 631 A1に記述されている分子量が400から4000、好適には600から2500の長鎖直鎖ジアクリレートが含まれる。例えば、2個のアクリレート基がポリオキシブチレン構造で分離されていてもよい。また、1,12−ドデシルプロパンジオール、および2モルのアクリル酸と1モルの脂肪アルコール二量体(炭素原子数が一般に36)の反応生成物を用いることも可能である。また、上述した単量体の混合物も適切である。
【0084】
化学線によって硬化する適切な反応性希釈剤のさらなる例は、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben(Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、1998)の491頁に「Reactive diluents」の項目の下に記述されているそれらである。
【0085】
本発明の塗料組成物に場合により更に1種以上の顔料および/または充填材を含有させることも可能である。そのような充填材および/または顔料は1種以上の着色および/または効果顔料、蛍光顔料、導電性顔料、磁気遮蔽顔料、金属粉末、耐引っ掻き性顔料、有機染料、有機充填材、無機充填材、透明充填材、不透明充填材および/またはナノ粒子を含んで成っていてもよい。
【0086】
本塗料組成物を用いて導電性塗料組成物を製造する場合には、それに好適には少なくとも1種の導電性顔料および/または少なくとも1種の導電性充填材を含有させる。
【0087】
適切な効果顔料の例は、金属フレーク顔料、例えば商業的に通例のアルミニウムブロンズ、DE 36 183 A1に従ってクロムメッキされたアルミニウムブロンズ、および商業的に通例のステンレス鋼ブロンズ、およびまた非金属効果顔料、例えば真珠光沢顔料および干渉顔料、例えば酸化鉄が基になっていて色がピンクから褐色がかった赤色の血小板形状効果顔料、または液晶効果顔料などである。さらなる詳細に関してはRoempp Lexikon Lacke und Druckfarben(Georg Thieme Verlag、1998)の176頁の「Effect pigments」および380頁および381頁の「Metal oxide−mica pigments」から「Metal pigments」、そして特許出願および特許DE 36 36 156 A1、DE 37 18 446 A1、DE 37 19 804 A1、DE 39 30 601 A1、EP 0 068 311 A1、EP 0 264 843 A1、EP 0 265 820 A1、EP 0 283 832 A1、EP 0 293 746 A1、EP 0 417 567 A1、US 4,828,826 AおよびUS 5,244,649 Aが注目される。
【0088】
適切な無機着色顔料の例は、白色顔料、例えば二酸化チタン、亜鉛白、硫化亜鉛またはリトポンなど、黒色顔料、例えばカーボンブラック、鉄マンガンブラックまたはスピネルブラックなど、有色顔料、例えば酸化クロム、酸化クロム水化物グリーン、コバルトグリーンまたはウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルーまたはマンガンブルー、ウルトラマリンバイオレットまたはコバルトバイオレット、およびマンガンバイオレット、赤色酸化鉄、スルホセレン化カドミウム、モリブデン酸塩レッドまたはウルトラマリンレッド、褐色酸化鉄、混合ブラウン、スピネルフェーズおよびコランダムフェーズまたはクロムオレンジ、または黄色酸化鉄、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、硫化カドミウム亜鉛、クロムイエローまたはバナジン酸ビスマスなどである。
【0089】
適切な有機着色顔料の例は、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾール顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロビロール顔料、ジオキサジン顔料、インダントロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、インジゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料またはアニリンブラックである。
【0090】
さらなる詳細に関してはRoempp Lexikon −Lacke und DruckLParben(Georg Thieme Verlag、1998)の180および181頁の「Iron blue pigments」から「Black iron oxide」、451から453頁の「Pigments」から「Pigment volume concentration」、563頁の「Thioindigo pigments」、567頁の「Titanium dioxide pigments」、400および467頁の「Naturally occurring pigments」、459頁の「Polycyclic pigments」、52頁の「Azomethine pigments」、「Azo pigments」および379頁の「Metal complex pigments」が注目される。
【0091】
蛍光顔料(昼光蛍光顔料)の例はビス(アゾメチン)顔料である。
【0092】
適切な導電性顔料の例は二酸化チタン/酸化錫顔料および雲母顔料である。最も好適な導電性顔料はEM IndustriesのMINATEC(商標)40CMである。磁気遮蔽顔料の例は、酸化鉄または二酸化クロムが基になった顔料である。適切な金属粉末の例は、金属および金属合金、例えばアルミニウム、亜鉛、銅、ブロンズまたは真鍮などの粉末である。
【0093】
適切な可溶有機染料は、塗料またはそれから生じさせた塗膜から移行する傾向がほとんどかあるいは全くない耐光性有機染料である。そのような移行傾向は、本分野の技術者の一般的知識を基にして推定可能でありおよび/または簡単な予備範囲の確認試験、例えばそれを着色実験の一部として用いて決定可能である。
【0094】
適切な有機および無機充填材の例は、チョーク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸塩、例えばタルク、雲母またはカオリンなど、シリカ、酸化物、例えば水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムなど、または有機充填材、例えば重合体粉末、特にポリアミドまたはポリアクリロニトリルなどの粉末である。さらなる詳細に関しては、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben(Georg Thieme Verlag、1998)の250頁ff以降の「Fillers」が注目される。
【0095】
粘度および流動性に関しては、血小板形状の無機充填材、例えばタルクまたは雲母などと血小板形状ではない無機充填材、例えばタルク、ドロマイト、硫酸カルシウムまたは硫酸バリウムなどの混合物の使用が特に有利である。
【0096】
適切な透明充填材の例は、シリカ、アルミナまたは酸化ジルコニウムなどが基になった充填材、特にナノ粒子である。
【0097】
本発明の塗料組成物に入れる前記顔料および/または充填材の量は、本塗料組成物の非揮発物総量を基準にして、一般に0から50重量%、好適には5から50重量%、より好適には5から40重量%、特に好適には5から45重量%、非常に特に好適には3から35重量%、最も好適には5から30重量%(全部、本塗料組成物の非揮発物総量を基準)である。
【0098】
本発明の二重硬化塗料組成物に更に1種以上の増粘剤を含有させてもよい。用語「増粘剤」は、接着剤がこれに穏やかな圧力を短期間かけた時に表面にしっかりと接着するようにそれの粘着性、即ち固有の粘性または自己接着性を高める高分子量の接着性添加剤を指す(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、CD−ROM、Wiley VCH、Weinheim、1997、「Tackfiers」を参照)。
【0099】
適切な増粘剤の例は、(メタ)アクリル酸アルキル、特にアクリル酸アルキルのホモ重合体、例えばポリ(アクリル酸イソブチル)またはポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)[これらをBASF Aktiengesellschaftが商標名ACRONAL(商標)、DupontがELVACITE(商標)、AveciaがNEOCRYL(商標)、そしてRoehmがPLEXIGUM(商標)の下で販売している]、線状ポリエステル[例えばDynamit Nobelが商標名DYNAPOL(商標)、SK Chemicals(日本)がSKYBOND(商標)、またはHuelsが商標LTWの下で販売していてコイルの被覆で一般に用いられるような]、ポリカーボネートジオールまたはポリエステルジオールが基になっていて化学線で硬化し得る数平均分子量が2000以上、特に3000から4000の線状二官能オリゴマー[Craynorが商標CN 970またはUCBが商標名EBECRYL(商標)の下で販売している]、エチル、プロピル、イソブチル、ブチルおよび/または2−エチルヘキシルビニルエーテルが基になった線状ビニルエーテルホモ重合体および共重合体[BASF Aktiengesellschaftが商標名LUTONAL(商標)の下で販売]、および非反応性ウレタン尿素オリゴマー[ビス(4,4−イソシアナトフェニル)メタンとN,N−ジメチルエタノールアミンとジオール、例えばプロパンジオール、ヘキサンジオールまたはジメチルペンタンジオールなどから作られ、例えばSwift Reicholdが商標名SWIFT RANGE(商標)またはMictchem Chemicalsが商標名SURKOPACK(商標)またはSURKOFILM(商標)の下で販売している]から成る群から選択される高柔軟性樹脂である。
【0100】
そのような増粘剤を、各場合とも本発明の二重硬化塗料組成物の固体を基準にして、0から10重量%、より好適には0.1から9重量%、特に好適には0.3から8重量%、最も好適には0.4から5重量%の量で用いてもよい。
【0101】
本発明の塗料組成物にまた1種以上の光開始剤を入れてもよく、最も好適には、少なくとも1種の光開始剤を入れる。本塗料組成物を紫外線で架橋させる場合には、一般に、光開始剤の使用が好適である。光開始剤を用いる場合、それを本塗料に各場合とも本塗料組成物の固体を基準にして、好適には0.1から10重量%、より好適には0.2から8重量%、特に好適には0.3から7重量%、最も好適には0.5から5重量%の分率で存在させる。
【0102】
適切な光開始剤の例はノリッシュII型の光開始剤[これの作用機構は、光化学反応の場合に多様に起こるような水素引き抜き反応の分子内変形が基になっている(例として、ここではRoempp Chemie Lexikonの第9版、拡張および改定版、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、4巻、1991が参考になり得る)]、またはカチオン性光開始剤(例として、ここではRoempp Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、1998、444から446頁が参考になり得る)、特にベンゾフェノン、ベンゾインもしくはベンゾインエーテル、またはホスフィンオキサイドである。また、例えばCiba Geigyから名称IRGACURE(商標)184、IRGACURE(商標)819、IRGACURE(商標)1800およびIRGACURE(商標)500、RahnからGENOCURE(商標)MBFおよびBASF AGからLUCIRIN(商標)TPOおよびLUCIRIN(商標)TPO−Lの下で商業的に入手可能な製品などを用いることも可能である。そのような光開始剤に加えて、通常の増感剤、例えばアントラセンなどを有効量で用いることも可能である。
【0103】
本発明の二重硬化塗料組成物にまた場合により少なくとも1種の熱架橋開始剤を含有させることも可能である。そのような開始剤は80から120℃でラジカルを発生して、そのラジカルが架橋反応を開始させる。熱に不安定なフリーラジカル開始剤の例は有機過酸化物、有機アゾ化合物またはC−C開裂開始剤、例えばジアルキルパーオキサイド、ペルオキソカルボン酸、ペルオキソジカーボネート、パーオキサイドエステル、ヒドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、アゾジニトリルまたはベンズピナコールシリルエーテルである。特にC−C開裂開始剤が好適である。そのような熱開始剤を各場合とも本塗料材料の固体を基準にして0から10重量%、好適には0.1から8重量%、特に1から5重量%の量で存在させてもよい。
【0104】
本塗料に更に水および/または少なくとも1種の不活性な有機もしくは無機溶媒を含有させることも可能である。無機溶媒の例は液体窒素および超臨界二酸化炭素である。適切な有機溶媒の例は、塗料で一般的に用いられる高沸点の(「長鎖」)溶媒または低沸点溶媒、例えばケトン、例えばメチルエチルケトン、メチルイソアミルケトンまたはメチルイソブチルケトンなど、エステル、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、エトキシプロピオン酸エチル、酢酸メトキシプロピルまたはブチルグリコールアセテートなど、エーテル、例えばジブチルエーテルまたはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコールまたはジブチレングリコールのジメチル、ジエチルまたはジブチルエーテルなど、N−メチルピロリドン、またはキシレン、または芳香族および/または脂肪族炭化水素の混合物、例えばSOLVENTINAPHTHA(商標)、ペトロリウムスピリット−135/180、ジペンテンまたはSOLVESSO(商標)である[また「Paints,Coatings and Solvents」、Dieter StoyeおよびWerner Freitag(編集者)、Wiley−VCH、第2版、1998、327から349頁も参照]。
【0105】
本発明の塗料組成物に場合により更に1種以上の塗料用添加剤を有効量、即ち各場合とも本発明の塗料組成物の固体を基準にして40重量%以下、特に好適には30重量%以下、特に10重量%以下の量で含有させてもよい。適切な塗料用添加剤の例は、紫外線吸収剤、光安定剤、例えばHALS化合物、ベンゾトリアゾールまたはオキサルアニリドなど、フリーラジカル捕捉剤、架橋用触媒、例えばジブチル錫ジラウレートまたはデカン酸リチウムなど、スリップ剤、重合禁止剤、消泡剤、乳化剤、特に非イオン性乳化剤、例えばアルコキシル化アルカノールおよびポリオール、フェノールおよびアルキルフェノールなど、またはアニオン性乳化剤、例えばアルカンカルボン酸、アルカンスルホン酸およびアルコキシル化アルカノールのスルホ酸およびポリオール、フェノールおよびアルキルフェノールのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩など、湿潤剤、例えばシロキサン、フッ素化合物、カルボン酸モノエステル、燐酸エステル、ポリアクリル酸およびそれらの共重合体、ポリウレタンまたはアクリレート共重合体[これらは商標名MODAFLOW(商標)またはDISPARLON(商標)の下で商業的に入手可能である]など、接着促進剤、例えばトリシクロデカン−ジメタノールなど、レベリング剤(leveling agent)、膜形成助剤、例えばセルロース誘導体など、難燃剤、たるみ制御剤、例えば尿素、修飾尿素および/またはシリカなど、例えば文献DE 199 24 172 A1、DE 199 24 171 A1、EP 0 192 304 A1、DE 23 59 923 A1、DE 18 05 693 A1、WO 94/22968、DE 27 51 761 C1、WO 97/12945および「Farbe+Lack」、11/1992、829頁以降に記述されているようなそれら、流動制御用添加剤、例えば特許WO 94/22968、EP 0 276 501 A1、EP 0 249 201 A1およびWO 97/12945から公知のそれら、架橋した重合体微小粒子、例えばEP 0 038 127 A1に開示されているそれら、無機フィロケイ酸塩、例えばケイ酸アルミニウムマグネシウム、フィロケイ酸ナトリウムマグネシウムおよびモントモリロナイト型のフィロケイ酸ナトリウムマグネシウムフッ素リチウムなど、シリカ、例えばAEROSILSTMシリカなど、またはイオン性および/または結合性基を含有する合成重合体、例えばポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレン−無水マレイン酸もしくはエチレン−無水マレイン酸共重合体およびこれらの誘導体、または疎水修飾を受けたエトキシル化ウレタンもしくはポリアクリレートなど、艶消し剤、例えばステアリン酸マグネシウムなど、および/または有機修飾セラミック材料前駆体、例えば加水分解性有機金属化合物、特にケイ素およびアルミニウムの有機金属化合物などである。適切な塗料用添加剤のさらなる例がJohan Bieleman著のテキストブック「Lackaddivite」[塗料用添加剤](Wiley−VCH、Weinheim、ニューヨーク、1998)に記述されている。
【0106】
本発明の塗料組成物はいろいろな形態で本発明の方法で使用可能であることは理解されるであろう。例えば、この上に記述した成分(a1)、(a2)および(a3)また存在させてもよいさらなる成分を適切に選択するならば、本発明の塗料用組成物は、有機溶媒および/または水を実質的に含有しない液状の塗料組成物になり得る。別法として、本発明の塗料組成物は、上述した成分が水および/または有機溶媒に入っている溶液もしくは分散液も構成し得る。本発明の塗料組成物のさらなる利点は、本発明の塗料組成物を基準にして固体含有量が80重量%に及ぶように配合可能である点にある。その上、本発明の塗料組成物の成分をこの上に記述したように適切に選択するならば、それは粉体塗装用組成物、例えばクリアコートなどにもなり得る。また、そのような粉体塗装用組成物を水の中に分散させることで粉体スラリー塗装用組成物を生じさせることも可能である。
【0107】
本発明の塗料組成物は所望に応じて1成分もしくは2成分系になり得る。本発明の塗料組成物を1成分系にする時、ある場合には、貯蔵中にあまりにも早期の架橋が起こらないように、熱硬化性架橋成分(a3)にブロッキングを受けさせておく必要があり得る。本発明の塗料組成物を2成分系にする場合、熱硬化性架橋成分を他の成分とは別に貯蔵、およびそれを使用直前になるまで他の成分に添加しない。
【0108】
本発明の塗料組成物を製造する方法は、一般に、適切な混合装置、例えば撹拌型タンク、溶解装置、Ultraturrax、インライン溶解装置、歯車分散装置、排気ホモジェナイザー、ミクロ流動装置、撹拌型ミルまたは押出し加工機などを用いて上述した成分を通常に混合することで実施可能である。放射線で活性化する架橋を最小限にする適切な手段を用いるべきである、即ち放射線源をなくすべきであることは理解されるであろう。
【0109】
本発明の方法は、孔径が10から1500、好適には20から1200、特に50から1000nmの孔を有する微孔性表面の塗装で使用可能である。より好適には、本発明の塗料組成物を用いて微孔性表面を密閉することができる。最も好適には、本発明の塗料組成物を1層以上の硬化した塗膜の状態で用いて欠陥部を実質的になくすことができる。
【0110】
その塗装を受けさせるべき表面は導電性または電気絶縁性であってもよいかあるいはそうでなくてもよい。具体的な導電性表面は金属もしくは非金属であり得る。適切な導電性非金属表面は、例えば導電性セラミック材料、特に酸化物およびカルコゲニドなど、または導電性重合体などである。
【0111】
本発明の方法の特に好適な態様において、塗装を受けさせるべき基体は造形品もしくは部品の微孔性表面であろう。そのような製品もしくは部品は木、ガラス、革、プラスチック、鉱物、発泡体、繊維材料および繊維強化材料、金属、金属被覆材料およびこれらの混合物などのような材料で作られている可能性がある。
【0112】
具体的な発泡体は、DIN 7726:1982−05に従う発泡体であり、それらは塊全体に渡って分散している開放気泡および/または独立気泡を有していて構成物質の密度より低い密度を有する。DIN 53580に従う弾性および柔軟性発泡体が好適である(また、Roempp Lexikon Chemie、CD−ROM:Version 2.0、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、1999、「Foams]も参照)。
【0113】
金属被覆材料は木、ガラス、革、プラスチック、鉱物、発泡体、繊維材料、繊維強化材料およびこれらの混合物で作られている可能性がある。
【0114】
適切な鉱物には、焼成および未焼成粘土、セラミック、天然石もしくは合成石またはセメントが含まれる。具体的な繊維材料には、好適には、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、織物繊維、重合体繊維または金属繊維、これらの繊維の複合体およびこれらの混合物が含まれる。適切な繊維強化材料には、上述した繊維で強化されたプラスチックが含まれる。
【0115】
適切な金属には、反応に役立つ金属、特に鉄、鋼、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、チタン、およびこれらの金属の中の少なくとも2種類の合金が含まれる。
【0116】
具体的な造形部品および製品は、自動車部品、例えば車体パネル、トラック床、保護プレート、フェンダー、スポイラー、フード、ドアまたはランプ反射体など、衛生品および家庭用品、内側および外側両方の建物構成要素、例えばドア、窓および家具など、産業用部品(コイル、容器およびラジエータを包含)、および電気部品(巻かれた製品を包含)、例えば電気モーターのコイルなどである。
【0117】
好適な造形部品および製品はSMC(シート成形コンパウンド)またはBMC(バルク成形コンパウンド)で作られたものであろう。従って、本発明の方法の1つの面では、本発明の塗料組成物をSMCまたはBMCで作られた造形品もしくは部品の1つ以上の表面に塗布する。
【0118】
本発明の塗料組成物を個々の基体に塗布する回数は1回以上であってもよい。その場合に塗布する本発明の塗料は同じまたは異なってもよい。最も好適には、本発明の塗料組成物を個々の表面に塗布する回数は1回のみである。即ち、本発明の塗料組成物を1回塗布することで望ましい密閉性能が得られる、即ち表面の欠陥部を実質的になくすことができ、好適にはそれがなくなる。
【0119】
本発明の塗料組成物を塗布する時、一般に、湿った状態の膜の厚みが硬化後に結果として10から100、好適には10から75、より好適には10から55、最も好適には10から35μmの乾燥した状態の膜の厚みになるように塗布する。
【0120】
本発明の塗料組成物を塗布するに適した具体的な塗布方法には、噴霧、はけ塗り、ナイフコーティング、流し塗り、浸漬、圧延などが含まれる。噴霧塗布方法、例えば圧縮空気噴霧、無気噴霧、高速回転、静電塗装(ESTA)などを単独またはホットスプレー塗布、例えば熱風噴霧などと併用するのが好適である。
【0121】
本塗料組成物を塗布する時の温度は、熱応力が短期間かかっている間に本発明の塗料組成物が如何なる変化も損傷も起こさずかつ塗り過ぎ(再処理が意図され得る)も起こすことなく適切な塗布粘度が達成されるように、93℃(200度F)以下である。例えばホットスプレーの場合、本発明の塗料組成物がスプレーノズルの中で加熱される時間が非常に短時間のみであるかあるいはスプレーノズルの直前のみであるようにそれを設定してもよい。より好適には、本発明の塗料組成物を21℃から57℃(70から135度F)、最も好適には26.7℃から43℃(80から110度F)の温度で塗布する。
【0122】
塗布で用いるスプレーブースの操作では、例えば温度制御可能な循環装置を用いて操作してもよく、かつ塗り過ぎのための適切な吸収用媒体(このような媒体の例は本発明の塗料組成物自身である)を用いて操作する。
【0123】
本発明の塗料組成物の処理および塗布は、電磁スペクトルの波長が放射線硬化性成分(a1)を活性化させ得る波長であるか否かにかかわらず、可視光下で実施可能である。しかしながら、放射線硬化性成分(a1)または任意の反応性希釈剤(a4)を活性化させ得る波長の照射を用いて塗布および/または処理を行う場合には本発明の塗料組成物を入れる容器およびラインの全部にカバーを付けて本塗料を前記照射から保護することは理解されるであろう。このようにして、本発明の塗料組成物が前もってゲル化を起こすことがないようにすることができる。
【0124】
本発明に従い、本発明の塗料組成物を塗布した後、化学線、最も好適には紫外線と熱で硬化させる。
【0125】
特定の休止期間を置いた後に硬化を実施することも可能である。その期間は0秒から2時間、好適には1分から1時間、最も好適には5分以上から30分以内の期間であってもよい。そのような休止期間を用いる理由は、例えば本発明の塗料組成物の塗膜を平らにし、および揮発物を除去する目的、または揮発性成分、例えば溶媒、水または二酸化炭素(超臨界二酸化炭素を溶媒として用いて本発明の塗料組成物を塗布した場合)を蒸発させる目的である。そのような休止期間中に乾燥を起こさせる場合、60℃(140度F)未満、より好適には49℃(120度F)未満の高温をかけることで乾燥時間を短くしおよび/または乾燥を補助することができるが、ただしそれによって本発明の塗料組成物の塗膜が如何なる損傷も変化も起こさない、例えばあまりにも早期の熱による架橋などを起こさないことを条件とする。
【0126】
硬化を好適には化学線、例えば紫外線または電子線などを用いて起こさせる。望まれるならば、他の放射線源による化学線を用いてそれを補うかあるいは実施することも可能である。最も好適には、そのような第一段階の硬化を不活性気体雰囲気、即ち二酸化炭素および/または窒素をその塗布した本発明の塗料組成物の表面に直接送り込むことで実施する。紫外線による硬化の場合には、不活性ガスでオゾンの発生を防止する。
【0127】
化学線による硬化は通常の公知放射線源および任意の補助手段を用いて実施可能である。適切な放射線源の具体的例は、高もしくは低圧水銀蒸気ランプ(放射線枠を450nmにまで広げる目的で鉛、鉄またはガリウムが添加されているかあるいは添加されていなくてもよい)、または電子線源である。また、ハロゲン化金属放射体も使用可能である。紫外線源が最も好適である。そのような源の配置は原則として公知であり、それを加工中の製品の環境およびプロセスパラメーターに適合させることができる。車体で予想されるように、加工中の製品の形状が複雑な場合、放射線が直接には当たらない領域(影領域)、例えば空洞部、折り目および他の構造刻み目などの硬化では、空洞部または縁に照射を受けさせる目的で、点別の小面積もしくは全方位放射装置を自動移動手段と協力させて用いて(ある程度)硬化させてもよい。その塗布した本発明の塗料組成物に化学線を1.5から15.0J/cm、好適には1.0から10.0J/cm、最も好適には2.0から7.0J/cmの量で当てることで、その塗布した本塗料の放射線硬化を実施してもよい。
【0128】
成分(a1)および任意の成分(a4)の放射線硬化性基の少なくとも75%、好適には少なくとも80%、より好適には少なくとも90%、最も好適には少なくとも95%[放射線硬化性成分(a1)と任意の反応性希釈剤(a4)の放射線硬化性基の総数を基準]が架橋を起こしたならば、本発明の塗料組成物が放射線で硬化したと述べることができる。放射線硬化性基の架橋%はRAMAN顕微鏡を用いて測定可能である、と言うのは、放射線硬化性基、例えばC=C基などに相当するピークは架橋度合が増すにつれて低くなるからである。本塗料組成物を硬化させている時に変化しない基準ピークを選択する。その基準ピークの場所は個々の塗料組成物の化学的性質に依存しかつ本分野の技術者はそれを選択することができることは理解されるであろう。
【0129】
そのような硬化方法の装置および条件は、例えばR.Holmes、UV and E.B.Curing Formulations for Printing Inks,Coatings and Paints、SITA Technology、Academic Press、ロンドン、英国、1984に記述されている。
【0130】
硬化は段階的に実施可能である、即ち化学線照射を数回行うことで実施可能である。これをまた交互に実施することも可能である、即ち紫外線による硬化と電子線による硬化を交互に実施することも可能である。
【0131】
熱による硬化では、通常の公知方法、例えば強制空気オーブン内で行う加熱またはIRもしくはNIRランプへの暴露などに従って硬化を実施する。熱による硬化もまた化学線による硬化の場合と同様に段階的に実施可能である。有利には、熱による硬化を49℃から177℃(120度Fから350度F)、好適には65.5℃から149℃(150から300度F)、より好適には93℃から149℃(200から300度F)、最も好適には107℃から135℃(225から275度F)の温度で実施する。本発明の塗料を熱で硬化させる時間は、1分から2時間、好適には2分から1時間、特に5から30分間であってもよい。
【0132】
その用いる放射線による硬化と熱による硬化は同時または交互に実施可能である。この2種類の硬化方法を交互に用いる場合、例えば熱による硬化で開始して化学線による硬化で終了してもよい。別の場合には、化学線による硬化で開始してそれによる硬化で終了するのも同様に有利であることは分かるであろう。
【0133】
本発明の別の面において、本発明の方法は、本発明の塗料組成物を塗布し、その塗布した塗料組成物を放射線で硬化させ、その放射線で硬化させた塗料組成物に他の1種以上の塗料組成物を塗布した後、放射線で硬化させた本発明の塗料組成物とその塗布した他の1種以上の塗料組成物の両方を熱で一緒に硬化させることを含んで成り得る。
【0134】
本発明の塗料組成物で被覆しておいた造形部品およびSMCおよびBMCを乾燥させそしてそれに化学線を当てた後であるが好適には完全には硬化していない状態でそれに直ちに上塗りを受けさせることができることが本発明の方法の非常に特別な利点であり、このことは、本発明の造形部品を生産する時および本発明のSMCおよびBMCを生産する時の時間、エネルギーおよび費用が大きく節約されることを意味する。
【0135】
その上、本発明の塗料組成物で被覆しておいた製品を乾燥させそしてそれに化学線を当てた後、それに熱による後硬化を例えば90℃で20分間受けさせてもよく、その後、さらなる処理を待つ間、その被覆しておいた本発明の製品を積み重ねた状態で粘着の恐れも変形の恐れもなく貯蔵することができる。
【0136】
本発明の1つの面は、本発明の塗料組成物を比較的低い温度、即ち71℃(160度F)未満の温度で用いて例外的な一体性を示す架橋した膜を生じさせることができる点にある。特に、本発明の塗料組成物を紫外線で硬化させた膜は、間隙を遮蔽するに充分な一体性を有する架橋した網状組織を有する。その結果として、本発明の方法を用いて得た上塗りされた製品および基体は実質的に表面欠陥部を持たない。そのような欠陥部はしばしば間隙、微細気泡、膨れ、突出物またはポップ(pops)と呼ばれる。ある場合には、本発明の塗料組成物を用いて間隙欠陥部を完全になくすことができることを見いだした。
【0137】
さらに、本発明の塗装製品および基体は卓越した熱安定性を示す。放射線と熱で硬化させた塗膜の表面に熱負荷を高温で数時間受けさせた時でも損傷を起こさないことを観察した。従って、その結果として、自動車付属品を電着浴液の中に浸漬する前の未被覆車体付属品に本発明の塗料組成物で前もって被覆しておいた製品および基体を直接接着させることができる。即ち、電着浴液への浸漬および硬化用オーブンがその前もって塗布しておいた本発明の塗料組成物に悪影響を与えないことを確認した。
【0138】
本発明の方法で得た塗膜およびシールはまた卓越したヤスリ掛け性および研磨性も示し、従って、欠陥部の修復が容易である。
【0139】
本発明の塗料組成物にあらゆる通常および公知の水性もしくは通常の液体もしくは固体状の無水および無溶媒の物理的または熱および/または化学線で硬化する下塗り剤、電気塗装、下塗り−中塗りまたはアンチストーンチッププライマー(antistonechip primers)、固体−着色および/または効果トップコートまたはベースコートおよびまたクリアコートによる上塗りを受けさせることができる。その結果としてもたらされるマルチコート系は卓越した塗膜間接着力を示す。
【0140】
本発明の具体的な態様
本発明を以下の実施例で更に記述する。本実施例は単に説明的であり、記述および請求するような本発明の範囲を決して限定するものでない。
【0141】
実施例1
以下の表1に示す材料を表1に示す量(グラム)で用いて塗料組成物サンプル1−6の調製を下記の如く実施した。サンプル1は比較組成物であり、そしてサンプル2−6はポリエーテルまたはポリエステルジオールを含めた場合を示すものである。ポリエステル樹脂および/またはポリテトラヒドロフランおよび/またはポリε−カプロラクトン、ウレタンメタアクリレート、増粘剤樹脂およびレベリング剤を1クオートの缶に入れて穏やかなコールズブレード撹拌下で均一になるまで約5分間混合した。流動用添加剤を添加した後、中程度のコールズ撹拌下で約5分間分散させた。穏やかな撹拌下で導電性雲母を約5分間かけてゆっくり加えた後、タルクも同様にして加えた。次に、触媒を添加した。そのサンプルを密封して一晩放置した。このサンプルをコールズ様「高速分散」で処理して7500rpmで20分間撹拌した。ドローダウン方法を用いて粒径を検査しまた粒ゲージで約27μmであることを確認した。次に、光開始剤溶液を添加した。その光開始剤溶液を前もって作成しておき、それを光開始剤と酢酸ブチルの両方で構成させた。その完成A成分を小さくしない状態で2種類のメッシュのコーン(two mesh cones)に通して濾過することで埃および/または他の粒子を除去した後、1クオートの鋼製缶に入れて噴霧塗布時まで貯蔵した。次に、成分B(HDIのイソシアヌレート)とAを噴霧で塗布する前に一緒に混合した。
【0142】
表1
【0143】
【表1】

【0144】
実施例2
その結果として得た膜の伸び%(この上に記述した試験に従う)、応力がかかる前のポップの数、および応力がかかった後のポップの数を試験した。その結果を以下の表2に示す。置き換えるポリエステルの量を多くするにつれて膜の伸び%が向上した。
【0145】
表2
【0146】
【表2】

【0147】
本発明はこの上に記述した具体的な態様に限定されず、以下の請求項で定義する変形、修飾形および相当する態様を包含すると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料組成物であって、
(a1)以下の
(a11)化学線照射によって活性化可能な結合を少なくとも1個含んで成る官能基を少なくとも2個、
(a12)場合により、イソシアネート反応性官能基を少なくとも1個、および
(a13)場合により、ヒドロキシル反応性官能基を少なくとも1個、
を含んで成っていて化学線照射によって重合する放射線硬化性成分、
(a2)成分(a3)の官能基と反応する官能基(a21)を少なくとも2個含んで成っていて熱暴露によって重合する熱硬化性結合剤成分[ここで、成分(a2)の非揮発重量を基準にして少なくとも5重量%から100重量%は、官能基(a21)を少なくとも2個有していて0℃未満のガラス転移温度を示しかつ1当量当たり225グラムを超える当量重量を有する重合体である成分(X)である]、
(a3)前記官能基(a21)と反応する官能基を少なくとも2個含んで成る熱硬化性架橋成分、および
(a4)場合により、少なくとも1種の反応性希釈剤、
を含んで成っていて化学線照射と熱エネルギー暴露の両方によって硬化する塗料組成物。
【請求項2】
成分(X)がポリエーテルジオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルジオールおよびポリエステルポリオールの中の少なくとも1種である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
成分(X)のホモ重合体が−20℃未満のガラス転移温度を有する請求項1記載の塗料組成物。
【請求項4】
成分(X)のホモ重合体が−50℃未満のガラス転移温度を有する請求項1記載の塗料組成物。
【請求項5】
成分(X)が1当量当たり265グラムを超える当量重量を有する請求項1記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記ポリエーテルジオールがポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドおよびポリテトラヒドロフランの中の少なくとも1種である請求項2記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記ポリエステルジオールがポリラクトンである請求項2記載の塗料組成物。
【請求項8】
前記ポリエステルジオールがペンタエリスリトールのε−カプロラクトン伸長物である請求項2記載の塗料組成物。
【請求項9】
成分(X)がポリテトラヒドロフランである請求項1記載の塗料組成物。
【請求項10】
前記化学線が紫外線である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項11】
前記熱硬化性結合剤成分(a2)がイソシアネート反応性官能基を少なくとも2個含んで成る請求項1記載の塗料組成物。
【請求項12】
前記少なくとも2個のイソシアネート反応性官能基(a21)がヒドロキシル基である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項13】
前記熱硬化性架橋成分(a3)がイソシアネート基を少なくとも2個含んで成る請求項1記載の塗料組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1個の官能基(a12)がヒドロキシル基である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項15】
成分(a3)の少なくとも2個の官能基がイソシアネート基でありおよび官能基(a12)と(a21)の合計に対するイソシアネート基の比率が1.3未満である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項16】
前記比率が1.0未満である請求項15記載の塗料組成物。
【請求項17】
前記比率が0.5から1.25である請求項15記載の塗料組成物。
【請求項18】
前記比率が0.75から1.0である請求項15記載の塗料組成物。
【請求項19】
前記熱硬化性結合剤成分(a2)が含有する芳香環部分が前記熱硬化性結合剤成分(a2)の非揮発重量を基準にして5重量%未満である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項20】
前記ヒドロキシル反応性官能基(a13)がイソシアネート、アミノプラスト、エポキシ、シラン、環状無水物および環状ラクトンの中の少なくとも1種である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項21】
前記ヒドロキシル反応性官能基(a13)がイソシアネートである請求項1記載の塗料組成物。
【請求項22】
前記イソシアネート反応性官能基(a12)がチオール基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、イミノ基およびヒドロキシル基の中の少なくとも1種である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項23】
請求項1記載の前記塗料組成物を基体に塗布して膜を生じさせることを含んで成る方法。
【請求項24】
更に前記膜に化学線を当てることも含んで成る請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記化学線が紫外線である請求項24記載の方法。
【請求項26】
更に前記膜に熱をかけることで塗装された基体を生じさせることも含んで成る請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記膜に熱をかけた後に化学線を当てることで塗装された基体を生じさせることも含んで成る請求項23記載の方法。
【請求項28】
更に追加的塗膜を少なくとも1層付着させることも含んで成る請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記基体がプラスチックを含んで成る請求項23記載の方法。
【請求項30】
前記基体が繊維強化プラスチック基体である請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記基体がSMCまたはBMCである請求項29記載の方法。

【公表番号】特表2006−526688(P2006−526688A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509999(P2006−509999)
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/011418
【国際公開番号】WO2004/108844
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(591020700)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (53)
【氏名又は名称原語表記】BASF Corporation
【住所又は居所原語表記】3000 Continental Drive−North,Mount Olive, NJ 07828−1234, U.S.A
【Fターム(参考)】