説明

放射能汚染防護服

【課題】防護服の脱衣時に汚染物質が身体に付着することを防止した放射能汚染防護服を提供すること。
【解決手段】少なくとも、防護服本体と、当該防護服本体に設けられた開閉部を具備してなる放射能汚染防護服であって、前記防護服本体は、胴体部と、該胴体部の下部において当該胴体部と一体又は別体に設けた脚筒からなる脚部と、前記胴体部の上部左右において連設した袖筒からなる袖部と、同胴体部の上端部に連設したフード部を備えるとともに、前記開閉部は前記脚部の上部域から前記フード部にわたり開閉可能なファスナ部材を具備しており、当該ファスナ部材が前記防護服本体の背部に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質等の汚染物質が身体に付着して被曝することを防止するため、主として核施設内作業において用いる放射能汚染防護服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子力発電所内においては、補修、点検或いは清掃のために原子炉の周辺設備に作業者が近づく必要がある場合、作業中に生ずる放射性物質(粉塵、水滴等)による身体への汚染ないし被曝を防ぐために、作業者は防護服を着用して作業を行うのが通常である。
【0003】
この種の放射能汚染防護服としては、胴体部の下端に筒状の1対の脚部を設け、胴体部の上部両側に筒状の1対の袖部を設け、胴体部の上部中央にはフード部を連続して設け、さらに、胴体部の前部中央には、上部のフード部付近から脚部の上部付近に至って開閉自在なファスナが設けられた構成のものが既に提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−23460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においても見られるように、従来の防護服は、胴体部の前部にファスナ部材が設けられたいわば前開き構造であったため、作業が終了してこれを脱衣する際、作業者が手袋をはめた手でファスナ部材を操作すると手袋に付着した放射性物質が飛散し、開いたファスナの間などから身体に付着して被曝等してしまうことがあった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、脱衣時に汚染物質が身体に付着することを完全に回避できる放射能汚染防護服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の放射能汚染防護服は、少なくとも、防護服本体と、当該防護服本体に設けられた開閉部を具備してなる放射能汚染防護服であって、前記防護服本体は、胴体部と、該胴体部の下部において当該胴体部と一体又は別体に設けた脚筒からなる脚部と、前記胴体部の上部左右において連設した袖筒からなる袖部と、同胴体部の上端部に連設したフード部を備えるとともに、前記開閉部は前記脚部の上部域から前記フード部にわたり開閉可能なファスナ部材を具備しており、当該ファスナ部材が前記防護服本体の背部に配設されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載の放射能汚染防護服は、前記フード部の前部略中央には、前記開閉部を完全に閉じたとき、顔出し用の窓となる開口部が形成されるようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載の放射能汚染防護服は、前記開閉部を閉じたときに前記ファスナ部材を外側からカバーするカバーテープが同ファスナ部材の片側に配設されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、防護服本体の背部に、脚筒の上部付近からフード部にかけてファスナにより開閉できる開閉部を設けたことにより、脱衣時に防護服ないしこれに付着した汚染物質が着用者に触れるおそれを大きく低減することができ、より安全性の高い防護服を得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明放射能汚染防護服の一実施例の正面図
【図2】本発明放射能汚染防護服の一実施例の側面図
【図3】本発明放射能汚染防護服の一実施例の開閉部を開いた状態を表す正面図
【図4】本発明放射能汚染防護服の他の実施例の着用状態を表す正面図
【図5】本発明放射能汚染防護服の他の実施例を表す背面図
【図6】図5のVI−VI線断面図
【図7】本発明放射能汚染防護服の他の実施例の正面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例を図面とともに説明する。
【0013】
図1は本発明に係る放射性物質防護服の正面図、図2は同じく側面図、図3は開閉部を開いた状態を表す正面図である。
【0014】
各図において、本発明放射能防護服Aは、防護服本体1と、防護服本体1の背部に設けられた開閉部7に取付けられたファスナ部材8とで構成されている。
【0015】
防護服本体1は、胴体部2と、胴体部2の下部において当該胴体部2と一体(本実施例)又は別体(他の実施例)に設けられた一対の脚筒からなる脚部3と、胴体部2の上部左右に設けられた一対の袖筒からなる袖部4と、胴体部2の上端部に連設されたフード部5とで構成されており、このフード部5の前部中央には顔出し用の開口部6が設けられている。
【0016】
図3は脱衣時の状態を示す背面図であって、胴体部2の背後の中央には脚部3の上部付近からフード部5にかけて開閉部7が形成され、この開閉部7の両側にファスナ部材8が取付けられている。
【0017】
胴体部2の前部の上端には開閉部7から連続する略U字状の開放部9が形成され、ファスナ部材8を閉じたとき、この開放部9の上端が閉じられて、図1に示すように、顔出し窓部6が形成されるようになっている。
【0018】
ファスナ部材8の片側には、被曝の原因である汚染水等が付着するのを防止するカバーテープ10が取り付けられている(図6参照)。
【0019】
なお、防護服本体1の生地としては、例えばポリエステル素材の混紡生地の織物、不織布あるいはシート材など遮水性、制菌性及び制電性を有する柔軟材であることが好ましいが、これに限定されないことは勿論である。
【0020】
また、本発明防護服Aは、上衣の袖筒の長さ方向の内部にゴム紐等の伸縮性部材を伸張状態で連続的又は断続的もしくは部分的に縫着する一方、下衣の脚筒の長さ方向内部にゴム紐等の伸縮性部材を伸張した状態で連続的又は断続的もしくは部分的に縫着したことによって伸縮性を有するつなぎ型の作業衣として構成すること(特開2003-55813参照)、あるいは袖筒の下側から胴体部の側部を通り脚筒の側部にかけて伸ばした状態の伸縮性部材を取付けて伸縮性を備えるよう構成すること等が可能である(実登3112388号参照)。
【0021】
左右の肩を含む前後身頃の上部側が炭素繊維又は金属繊維を織込んだ導電性を備えた布地で形成され、その他の胴部を含む前後身頃が導電性のメッシュ地で形成されていると共に、前後身頃に帯電防止機能を備えた反射板が取付けられ、かつ、開閉部のファスナは、合成樹脂のような非金属材で形成したことによって帯電防止効果を有するように構成することも任意である(実登3148551参照)。
【0022】
さらに、股裂け防止目的で袖筒の下側から胴体部の側部を通り脚筒の側部にかけて伸ばした状態の伸縮性部材を取付けると共に、前記脚筒の股部にマチ部材を設けることも可能である(実登3135243号参照)。
【0023】
図4および図5に示すように、本発明防護服Aの着用時は、脚部3に足を、袖部4に手をそれぞれ通し、ファスナ8のスライダ8aを上端までスライドさせることにより、ファスナ8を閉じ、顔出し窓部6から目鼻だけを出した状態となり、この状態で核施設において作業する。
【0024】
ファスナ8の開閉は、スライダ8aが上端に位置するときに開いた状態、下端に位置するときに閉じた状態となるよう、本実施例とは逆の開閉方向を備えるものに構成することは、当然任意である。
【0025】
なお、ファスナ8の操作は着用者とは別人に手伝ってもらうことが安全性からも望ましいことは言うまでもない。
【0026】
作業が終了し、防護服Aを脱衣するときは、図3に示すように、スライダ8を下方にスライドさせ下端まで移動させることにより、ファスナ8を開き、開閉部7を大きく開いて、フード部5を前方に移動させ、袖部4から手を抜き、最後に脚部3から足を抜くことによって、安全に脱衣することができる。
【0027】
ファスナ8の開放操作も着用者とは別の人に手伝ってもらうのが望ましいことは勿論である。
【0028】
従来のように、前部にあるファスナ部材の開閉を着用者自身が行うと、作業が終了した着用者の手袋に付着した汚染水等が、ファスナの間から飛び散って手など身体の一部に付着するおそれが高いが、本発明によれば、ファスナ開放操作を着用者以外の別人が行うことによって斯かる危険性を回避することができ、より安全性の高い防護服を実現することができるようになる。
【符号の説明】
【0029】
1 防護服本体
2 胴体部
3 脚部
4 袖部
5 フード部
6 顔出し窓部
7 開閉部
8 ファスナ
8a スライダ
9 開放部
10 カバーテープ
A 本発明放射能汚染防護服

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、防護服本体と、当該防護服本体に設けられた開閉部を具備してなる放射能汚染防護服であって、前記防護服本体は、胴体部と、該胴体部の下部において当該胴体部と一体又は別体に設けた脚筒からなる脚部と、前記胴体部の上部左右において連設した袖筒からなる袖部と、同胴体部の上端部に連設したフード部を備えるとともに、前記開閉部は前記脚部の上部域から前記フード部にわたり開閉可能なファスナ部材を具備しており、当該ファスナ部材が前記防護服本体の背部に配設されていることを特徴とする放射能汚染防護服。
【請求項2】
前記フード部の前部略中央には、前記開閉部を完全に閉じたとき、顔出し用の窓となる開口部が形成されるようにした請求項1の放射能汚染防護服。
【請求項3】
前記開閉部を閉じたときに前記ファスナ部材を外側からカバーするカバーテープが同ファスナ部材の片側に配設されてなる請求項1又は2の放射能汚染防護服。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−252021(P2012−252021A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204237(P2012−204237)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3160053号
【原出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000230940)日本原子力発電株式会社 (130)
【出願人】(508036813)原電ビジネスサービス株式会社 (1)
【出願人】(390006079)東洋物産株式会社 (5)
【Fターム(参考)】