説明

放熱パネル

【課題】温水や冷水の循環により温熱や冷熱を放出する冷暖房用の放熱パネルであって、出力を一層高めることが出来かつパネル表面の温度をより均一化でき、しかも、施工性に優れた放熱パネルを提供する。
【解決手段】放熱パネル1は、断熱材としての発泡樹脂成形体22、一定間隔で配列された複数の根太状部材12、発泡樹脂成形体22の表側に配置された通水管13、発泡樹脂成形体22及び根太状部材12の表側に貼設された放熱シートとから成る。放熱パネル1の表面積に対する通水管13の敷設長さが14〜30m/m、根太状部材12,12の間の通水管13の配列ピッチが30〜55mmに設定される。そして、床仕上材を釘打ち施工する際の根太状部材12上の特定の幅の施工領域の端部から直近の通水管13の外周面までの距離が35〜90mmに設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱パネルに関するものであり、詳しくは、温水や冷水の循環により温熱や冷熱を放出する冷暖房用の放熱パネルであって、例えば居室の床下地の上に敷設され且つ上面にフローリング等の床仕上材が配置され、温水を循環させて床暖房に使用される放熱パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
床暖房の施工においては、フローリング等の床仕上材の下地として、予め通水管を埋設した薄板状の放熱パネルが使用される。斯かる放熱パネルは、「床暖房用温水マット」等として種々の構造のものが提案されており、表側に配管溝が設けられた断熱材としての薄板状の発泡樹脂成形体(マット板)と、当該発泡樹脂成形体の表側の溝に配置された通水管(放熱管)と、発泡樹脂成形体の表側の表面に貼設された熱拡散用の放熱シート(アルミニウム箔)とから主に構成されている。そして、ボイラーの温水を通水管に循環させることにより、放熱シートを介して床仕上材全体を加温する様になされている。また、上記の放熱パネルにおいては、床仕上材を固定、支持するため、発泡樹脂成形体に形成された直線状の切欠き部分に嵌合させる状態で複数の根太状部材が一定間隔で平行に配列されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
昨今、建物やその設備の省エネルギー化が種々提唱される中、上記の様な放熱パネルについても、一層の省エネルギー化を図る観点から、その基本性能、すなわち、出力(パネル上面への放熱量)を更に向上させる必要がある。そして、放熱パネルにおいては、通水管を一層密接に配置することにより、出力を高めることが出来る。換言すれば、根太状部材の間に配列される通水管の配列ピッチを狭くすることにより、高出力のパネルを構成できる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−226604号公報
【特許文献2】特開2008−14579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の放熱パネルにおいては、フローリング等の床仕上材を固定、支持するための根太状部材が必要であり、斯かる根太状部材は、所要の強度を確保する観点、床仕上材を敷設する際の施工性の観点から、例えば50mm程度の幅に設計され、更に、床仕上材の標準的な寸法規格に基づき、例えば303mmの基準ピッチで配列される。そのため、上記の様に、根太状部材の間の通水管の配列密度を上げた場合には、通水管を配置できない根太状部材の周り(根太状部材およびその両側の近接部分)と、根太状部材の間とでパネル表面における温度差が大きくなる傾向にある。
【0006】
一般に、放熱パネルの表面温度のばらつきの基準は、パネル全体での温度差が5℃以内、部位(30cm×30cmの任意の部位)での温度差が3℃以内とされている。従って、根太状部材間と根太状部材周りとの温度差が上記の基準を満足し、かつ、出力が最大となるような通水管の配列を考慮する必要がある。
【0007】
一方、床仕上材として例えばフローリングを敷設する場合には、フローリングの縁部(さね又はほぞの部分)を根太状部材に重ね、例えばさねに対して釘を斜めに打ち込んで固定する。従って、施工上の観点からすると、根太状部材の幅を更に大きく設計するか、あるいは、仮に釘の先端が根太状部材から発泡樹脂成形体内部に突出したとしても、根太状部材の直近の通水管を損傷しない様に、根太状部材とその直近の通水管との間の距離を十分に大きく設定するのが望ましい。
【0008】
しかしながら、根太状部材の幅を大きくしたり、根太状部材から直近の通水管までの距離を大きくすると、根太状部材周りの出力が根太状部材間の出力に比べて低下し、パネル表面における温度の均一化が図れない。これに対し、根太状部材周りの出力に対応させて、根太状部材の間の通水管の配列ピッチを大きくして温度の均一化を図ろうとすると、出力を低下させることになる。
【0009】
本発明は、放熱パネルの基本性能を更に向上させるべく種々検討の結果なされたものであり、その目的は、温水や冷水の循環により温熱や冷熱を放出する冷暖房用の放熱パネルであって、出力を一層高めることが出来かつパネル表面の温度をより均一化でき、しかも、施工性に優れた放熱パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明では、標準的な床仕上材の寸法規格に応じて根太状部材の配列ピッチ及び根太状部材の幅を基本の構成として設計した放熱パネルにおいて、パネルの表面積に対する通水管の敷設長さを特定の長さに設定することにより、パネル全体の出力を高める様にした。そして、根太状部材の間の通水管の配列ピッチを特定の大きさに設定すると共に、床仕上材を敷設する際の根太状部材上の釘打ち可能な施工領域を基準として、当該施工領域の端部から根太状部材の直近の通水管外周面までの距離を特定の距離に設定することにより、パネル表面において根太状部材の周りに相当する部分と根太状部材の間に相当する部分との放熱量の均一化を図り、かつ、床仕上材敷設時の施工性を確保する様にした。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、上面に床仕上材が敷設され且つ温水または冷水を循環させる冷暖房用の放熱パネルであって、断熱材としての薄板状の発泡樹脂成形体と、当該発泡樹脂成形体の切欠き部分に嵌合させる状態で一定間隔で平行に配列された複数の根太状部材と、前記発泡樹脂成形体の表側の溝に配置された通水管と、前記発泡樹脂成形体および前記根太状部材の表側の表面に貼設された放熱シートとから成り、前記根太状部材と平行に前記通水管が複数列配列された通水管の配置パターンを備え、かつ、前記根太状部材の配列ピッチが283〜323mm、前記根太状部材の幅が10〜100mm、放熱パネルの表面積に対する前記通水管の敷設長さが14〜30m/m、前記根太状部材の間の前記通水管の配列ピッチが30〜55mmに設定され、しかも、床仕上材を釘打ち施工により敷設する際の前記根太状部材の仮想中心線に沿った当該根太状部材上の施工領域の幅を根太状部材の幅の0.4〜0.7とした場合、前記施工領域の端部から前記根太状部材の直近の前記通水管の外周面までの距離が35〜90mmに設定されていることを特徴とする放熱パネルに存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パネルの表面積に対する通水管の敷設長さが特定の長さに設定され、根太状部材の間の通水管の配列ピッチが特定の大きさに設定されているため、パネル全体の出力を高めることが出来、しかも、通水管の前記の配列ピッチに対して、所定幅の根太状部材上の釘打ち可能な領域の端部から根太状部材の直近の通水管外周面までの距離が特定の距離に設定されており、根太状部材の周りに相当する部分と根太状部材の間に相当する部分との放熱量の差をより低減できるため、パネル表面の温度を一層均一化することが出来、そして、床仕上材を敷設する際、釘打ちにより通水管を損傷することがなく、容易に施工できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る放熱パネルの実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図10は、本発明に係る放熱パネルの構成例を示す図であり、また、図11は、放熱パネルの出力と放熱効率を測定方法を示す図である。
【0014】
本発明の放熱パネルは、床の機能下地材として上面に床仕上材が敷設される放熱効率に優れた高出力のパネルであり、温水を循環させることにより暖房用として使用され、また、冷水を循環させることにより冷房用として使用される。本発明において、放熱パネルの出力とは、放熱パネルの単位面積当たりの上面側への温熱または冷熱の放熱量を言う。また、放熱パネルの放熱効率とは、放熱パネル上下面への温熱または冷熱の総放熱量に対する放熱パネル上面への放熱量の割合を言う。以下、床暖房に適用する場合の一形態を例に挙げて説明する。
【0015】
図中に符号(1)で示す本発明の放熱パネルは、ベニヤ等の構造用合板やパーティクルボード、あるいは、コンクリートスラブ等から成る床下地の上に配置され且つ上面にフローリング等の床仕上材(71)(図5参照)が敷設されるパネルであり、内部に温水を循環可能に構成される。床仕上材(71)としては、通常、マトア、チーク、オーク、ナラ、サクラ、ヒノキ、メープル、ウリン等の各種天然木材を少なくとも表面に使用した所謂フローリングが使用される。
【0016】
本発明の放熱パネル(1)は、図1に示す様に、施工性の観点から、通常は平面形状を方形(正方形または長方形)に形成される。放熱パネル(1)は、設置場所を考慮して種々の大きさに設計できるが、居室床の寸法設計に対応するため、通常は、一辺の長さ(幅)を500〜4000mm程度、他の一辺の長さ(長さ)を500〜4000mm程度、厚さを7〜20mm程度に設定される。そして、後述するヘッダー(流体分岐ブロック)(14)を使用して複数の循環路を構成する観点から、平面面積を0.5〜12mに設計される。因に、図1に例示した熱パネル(1)をは、幅が2985mm、長さが2424mmのものである。なお、放熱パネル(1)は、敷設する床の広さによっては複数枚使用される。
【0017】
放熱パネル(1)は、図1〜図3に示す様に、断熱材としての薄板状の発泡樹脂成形体(22)と、発泡樹脂成形体(22)の切欠き部分に嵌合させる状態で且つその上下面が露出する様に一定間隔で平行に配列された床仕上材固定用の複数の根太状部材(12)と、発泡樹脂成形体(22)の表側の溝(61)にその一部が露出する様に配置された通水管(13)と、発泡樹脂成形体(22)及び根太状部材(12)の表側の表面に貼設された熱拡散用の放熱シート(21)とから構成され、根太状部材(12)と平行に通水管(13)が複数列配列された通水管の配置パターンを備えている。そして、放熱パネル(1)においては、通常、通水管(13)によって温水の循環路が複数組構成されている。
【0018】
発泡樹脂成形体(22)としては、硬質ポリウレタン発泡体、硬質ポリエチレン発泡体、硬質ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、フェノール樹脂発泡体、硬質ポリ塩化ビニル発泡体、ポリメチルメタクリレート発泡体、ポリカーボネート発泡体、ポリフェニレンオキサイド発泡体、ポリスチレンとポリエチレン混合物の発泡体などが挙げられる。中でも、硬質ポリプロピレン発泡体、硬質ポリウレタン発泡体、ポリスチレン発泡体などが好適である。
【0019】
発泡樹脂成形体(22)は、通常、平面形状が細長の長方形に形成された小片を放熱パネル(1)の幅に沿わせ且つ放熱パネル(1)の長さ方向に多数配列して構成される。発泡樹脂成形体(22)の各小片の長さ及び厚さは、各々、放熱パネル(1)の上記の幅および厚さに応じて設計され、各小片の幅(放熱パネル(1)の長さの方向に沿った小片の短辺の長さ)は、120〜600mm程度とされる。なお、発泡樹脂成形体(22)の下面には、遮音材として不織布などが貼設されてもよい。また、図1に示す様に、発泡樹脂成形体(22)は、放熱パネル(1)を折畳み構造に構成するために分断されていてもよい。
【0020】
更に、図8に示す様に、発泡樹脂成形体(22)の裏面には、コストダウンを図るため、後述する根太状部材(12)の長さ方向と平行に凹溝が複数設けられていてもよい。斯かる凹溝の幅(f)は5mm以上30mm以下とされ、凹溝の深さ(g)は2mm以上7mm以下とされる。凹溝の幅(f)が5mm未満、深さ(g)が2mm未満では、コストダウンの効果が殆どなく、また、凹溝の幅(f)が30mmを超えたり、凹溝の深さ(g)が7mmを超えた場合には、放熱パネル(1)の強度が極端に低下し、敷設作業において歩行などにより凹みが生じたり、防音床を敷設した場合などに床上から歪みが生じる。上記の様な凹溝を設けた場合には、基材としての発泡樹脂成形体(22)の製造において原料を削減することが出来、コストダウンに寄与できる。なお、上記の凹溝が設けられた放熱パネル(1)の性能を後述する方法によって測定した結果、凹溝による出力と放熱効率の低下は見られなかった。
【0021】
図1及び図2に示す様に、通常、発泡樹脂成形体(22)には、放熱パネル(1)の幅に沿って根太状部材(小根太)(12)が発泡樹脂成形体(22)の切欠き部分に嵌合した状態で配置される。すなわち、発泡樹脂成形体(22)の各小片と平行かつ並列に所定の間隔で根太状部材(12)が配置される。根太状部材(12)は、床下地が木質系の場合にビスや釘(72)を使用して当該放熱パネル(1)を固定すると共に、上方から加わる鉛直荷重を支持するための小割り状の部材であり、スギ、サクラ、ヒノキ、ラワン及び合板などの木材、または、樹脂の硬質発泡材で構成される。
【0022】
根太状部材(12)の長さは、放熱パネル(1)の上記の幅と後述する通水管(13)の迂回部分(曲げ部分)とを考慮して設計され、根太状部材(12)の厚さは、発泡樹脂成形体(22)の上記の厚さと同等に設計される。また、根太状部材(12)の幅(W)(図4参照)は、強度および施工性の観点から10〜100mm、好ましくは40〜50mmに設定される。根太状部材(12)の配列ピッチ(隣接する根太状部材の間隔)は、床仕上材(71)の標準的な寸法規格に応じて、通常は283〜323mm、好ましくは300〜305mm、更に好ましくは303mmに設定される。
【0023】
ところで、図5に示す様に、床仕上材(71)としてフローリングを固定する場合には、根太状部材(12)の上面にフローリングの矧部分を載せ、例えば一方のほぞの基端部から放熱パネル(1)の根太状部材(12)へ斜めに釘を打ち込むことにより、釘の引抜き強度を高める様にしているが、その際、フローリングの矧部分が根太状部材(12)の幅(W)の中心から大きく外れていたり、釘の打ち込み角度が傾斜し過ぎていた場合には、通水管(13)の損傷を惹起する。
【0024】
そこで、図4に示す様に、本発明においては、フローリングを施工する際に通水管(13)を損傷することなく且つ確実フローリングを固定するため、根太状部材(12)に施工領域(12L)が設定されている。すなわち、床仕上材(71)を釘打ち施工により敷設する際の根太状部材(12)の幅を2分する仮想中心線に沿った当該根太状部材上の釘打ち可能な領域を施工領域(12L)とされ、斯かる施工領域(12L)の幅(W)は、根太状部材(12)の幅(W)の0.4〜0.7に設定されている。そして、施工領域(12L)は、その位置を明確にして施工性を高める観点から、平面視して根太状部材(12)の幅方向の中央の仮想中心線上に上記の幅で形成され且つ適宜の色(白色、黒色を含む任意の色)が施された施工ラインとして表示されているのが好ましい。
【0025】
更に、本発明においては、施工領域(12L)の幅(W)を上記の大きさとした場合、施工領域(12L)の端部から根太状部材(12)の直近の通水管(13)(根太状部材に隣接する通水管)の外周面までの距離(L)が35〜90mm、好ましくは40〜55mmに設定されている。上記の様に、床仕上材(71)の上面に施工領域(12L)を設け、施工領域(12L)の端部から直近の通水管(13)までの距離(L)を特定の大きさに設定することにより、釘打ちによる通水管(13)の損傷を防止でき、しかも、2本の根太状部材(12),(12)の間の後述する通水管(13)の配列ピッチ(b)との関係からパネル表面における温度差を低減することが出来る。
【0026】
なお、図4中の符号(71n)で示す仮想線は、施工領域(12L)から外れて床仕上材(71)が配置され、最大に傾斜させた状態(約45度傾斜した状態)で釘が打ち込まれた場合のネイルラインを表しており、施工領域(12L)の設定と上記の距離(L)の設定により、施工時の通水管(13)の損傷を確実に防止できる。
【0027】
通水管(13)は、図3に示す様に、通常、発泡樹脂成形体(22)の表面に形成された溝(61)にその一部が露出し且つ後述する放熱シート(21)に接触する状態に収められる。通水管(13)としては、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管、ポリプロピレン管、ポリエチレン管、銅管の他、周面に金属線を埋設した樹脂管などが使用でき、一般的には、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管が使用される。
【0028】
本発明においては、通水管(13)における圧力損失を小さくして流れる温水の平均温度をより高い温度に維持するため、通水管(13)の大きさは、外径が通常は4〜10mm、好ましくは5〜8mm、内径が通常は4〜7mm、好ましくは5〜6mmとされる。
【0029】
通水管(13)の大きさを上記の範囲に規定する理由は次の通りである。すなわち、通水管(13)の内径が4mm未満の場合は、通水管(13)での圧力損失が大きくなりすぎて十分な通水量を確保できなくなり、床仕上材(71)を加温するのに必要な熱量が不足する。一方、通水管(13)の内径が7mmを超えた場合は、通水管(13)を収めるために発泡樹脂成形体(22)の厚さが厚くなり、放熱パネル(1)周辺に使用するダミー合板の厚みが厚くなることで汎用性が失われたり、施工コストが高くなる他、既存の床へ適用が困難になる。しかも、系内の保有水量が大きくなるため、熱源装置側のタンクも大型化する。その結果、製造コスト、設備コストが増大すると言う問題も生じる。
【0030】
また、本発明においては、放熱パネルの表面積に対する前記通水管の敷設長さ、すなわち、放熱パネル(1)を平面視した場合の単位面積当たりの通水管(13)の合計敷設長さは、通常14〜30m/m、好ましくは19〜27m/mである。上記の敷設長さを規定する理由は次の通りである。すなわち、敷設長さが14m/m未満の場合は、床仕上材(71)を加温するのに必要な熱量が不足する。一方、敷設長さが30m/mを超えた場合は、通水管(13)における圧力損失が増加し、また、製造コストが増大する。
【0031】
図1に示す様に、放熱パネル(1)の1つの縁部には、切込みによって構成されたヘッダー取付部(16)が備えられており、上記の通水管(13)は、ヘッダー取付部(16)に取り付けられた温水分配回収用のヘッダー(流体分岐ブロック)(14)に繋ぎ込まれ、複数系統(複数回路)、例えば図示する様な6系統の温水循環路を構成する様になされている。上記の様に、循環路を複数組構成することにより、各系統における温水の温度低下を少なくしてパネル全体で均一に放熱し且つ出力を高めることが出来る。
【0032】
更に、本発明においては、出力を高めるため、1つの循環路を構成する通水管(13)の全長は、通常3〜40m、好ましくは10〜35mである。上記の様に通水管(13)の全長を規定する理由は次の通りである。すなわち、通水管(13)の全長が40mを超えた場合は、当該通水管における温水の温度降下が大きいため、均一な加熱が難しくなり且つ放出熱量が小さくなる傾向にある。一方、通水管(13)の全長が3m未満の場合は、全体として十分な放熱量を得るためにより多数の循環路(回路)を構成しなければならず、製造コストが増大する傾向にある。
【0033】
通水管(13)は、通常、放熱パネル(1)の幅方向に沿って直線状に配置され且つ幅方向の両端側、すなわち、放熱パネル(1)の長さ方向に沿った縁部、ならびに、放熱パネル(1)の幅の中央部で折り返す様に配置される。換言すれば、放熱パネル(1)は、根太状部材(12)と平行に通水管(13)が複数列配列された通水管の配置パターンを備えている。そして、図2に示す様に、本発明においては、放熱パネル(1)の通水管(13)の敷設長さを十分に確保し、パネルの単位面積当たりの放熱量をより大きくするため、各隣接する根太状部材(12),(12)の間の通水管(13)の配列ピッチ(b)を30〜55mmに設定される。
【0034】
通水管(13)の配列ピッチ(b)を上記の範囲に規定する理由は次の通りである。すなわち、根太状部材(12),(12)の間の通水管(13)の配列ピッチ(b)が30mm未満の場合には、放熱パネル(1)単位面積当たりの通水管(13)の長さが長くなり過ぎて製造コストが高くなる。しかも、根太状部材(12)の周り(根太状部材(12)及びその直近の通水管(13)を含む部分)に対して、放熱量が大きく成り過ぎて、温度バランスがとれなくなる。そして、通水管(13)の長さが長くなることによって圧力損失が大きくなる。一方、上記の部位の通水管(13)の配列ピッチ(b)が55mmを超えた場合には、単位面積当たりの通水管(13)の長さが短くなるため、上面側への十分な放熱量が得られない。
【0035】
更に、本発明の好ましい態様においては、放熱パネル(1)の上面側への出力を高め且つ上面側への放熱効率を高めるため、図3に示す様に、通水管(13)の少なくとも一部分は、その長さ方向に直交する断面がU字状に形成され且つその上端縁に鍔が付設された樋状の伝熱部材(15)に収容され、そして、前述の発泡樹脂成形体(22)の溝(61)に配置される。上記の様な伝熱部材(15)を配置した場合には、通水管(13)から放出される熱を後述する放熱シート(21)へ効率的に伝達でき、放熱パネル(1)の上面側への放熱効率を高めることが出来る。
【0036】
上記の伝熱部材(15)は金属箔から成り、通常は厚さが約10〜500μm、好ましくは50〜150μmのアルミニウム(又はアルミニウム合金)の箔によって構成される。しかも、本発明においては、放熱シート(21)に対する熱伝達効率を高める観点、放熱シート(21)の剥れを防止する観点から、伝熱部材(15)の鍔の幅が1〜9mmに設定される。伝熱部材(15)の鍔の幅を規定する理由は次の通りである。
【0037】
すなわち、伝熱部材(15)は、その鍔の幅が大きい程、放熱シート(21)に対する熱伝達効率を高めることが出来る。しかしながら、鍔の幅が大き過ぎると、発泡樹脂成形体(22)の露出面積が小さくなるため、発泡樹脂成形体(22)に対する放熱シート(21)の貼着力が不足し、施工時の放熱パネル(1)の曲げ等により剥がれ易くなる。伝熱部材(15)の鍔の幅を上記の範囲とすることにより、前述の通水管(13)の直線的な配列部分における発泡樹脂成形体(22)の露出面積の比率(発泡樹脂成形体の表側の面積に対して鍔で覆われていない部分の面積の比率)を50〜95%、好ましくは60〜80%とすることが出来、十分な出力を確保しつつ、放熱シート(21)の貼着に必要な貼着力を確保できる。上記の様な伝熱部材(15)の鍔の大きさに関する設定は、特に、放熱シート(21)の剥れが発生し易い放熱パネル(1)の端部において有効である。
【0038】
また、図1に示す様に、前述の根太状部材(12)は、平面形状が方形の発泡樹脂成形体(22)の幅方向に沿って配列され、かつ、発泡樹脂成形体(22)の幅方向の中央部で分断された形態と、発泡樹脂成形体(22)の幅方向から後退させた形態(両端部に達しない形態)とを交互に繰り返すパターンで配置される。そして、通水管(13)は、根太状部材(12)の分断部分および根太状部材(12)の後退部分において根太状部材(12)を迂回する様に配置される。しかも、図6に示す様に、根太状部材(12)を迂回する部位における通水管(13)の配列ピッチ(d)は、当該通水管の内径+5mm以上、内径+10mm以下とされる。すなわち、通水管(13)の配置においては、通水管内径+5mm≦配列ピッチ(d)≦通水管内径+10mmに設定される。
【0039】
根太状部材(12)に対する迂回部分の通水管(13)の配列ピッチ(d)を上記の範囲に規定する理由は次の通りである。すなわち、迂回部分においては、前述の樋状の伝熱部材(15)を挿入するのが実質的に難しい。換言すれば、伝熱部材(15)の曲げ加工は、コストが高くなる等の問題から実用的ではない。しかしながら、上記の迂回部分において通水管(13)を発泡樹脂成形体(22)に直接配置した場合、上面側への放熱効率が他の部分に比較して低くなり、温度ムラを生じる虞がある。これに対し、迂回部分で通水管(13)を上記の様に配置した場合には、伝熱部材(15)が敷設された部位と比較しても放熱パネル(1)の表面における温度ムラを実使用上問題ないレベルに抑えることが出来る。
【0040】
また、図2及び図3に示す様に、発泡樹脂成形体(22)及び根太状部材(12)の表面、すなわち、放熱パネル(1)の表面には、通水管(13)の温水の熱を床仕上材(71)側に伝える放熱シート(21)が配置される。放熱シート(21)は、厚さが通常10μm〜200μm、好ましくは30μm〜100μmで且つ熱伝導性に優れた可撓性のフィルム又はシート、例えば、アルミニウム箔、錫箔、銅箔、ステンレス鋼箔などの金属箔、金属製の織布や不織布、樹脂フィルム又は樹脂シート、あるいは、これらを組合せた積層シート等から構成される。中でも、製造の容易さやコストの点から、アルミニウムシート(又はフィルム若しくは箔)が好ましく、上面への放熱効率の点から、アルミニウムシートの厚さは40μm以上が好ましい。
【0041】
放熱シート(21)は、通常、発泡樹脂成形体(22)及び根太状部材(12)の表面に対して接着材によって貼着される。接着材としては、例えば、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・グリシジルアクリレート共重合体、エチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリエチレンのアクリル酸グラフト共重合体、ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト共重合体などの熱可塑性樹脂、あるいは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂から成る接着剤または接着剤フイルムが挙げられる。上記の発泡樹脂成形体(22)と根太状部材(12)は、これらの表面に貼設された放熱シート(21)によって一体化されている。
【0042】
また、放熱シート(21)の端部は、発泡樹脂成形体(22)の端縁の少なくとも厚み部分まで貼着されていてもよい。更に、発泡樹脂成形体(22)の端縁を巻き付ける状態に当該発泡樹脂成形体の表側から裏側に亙って貼着されていてもよい。放熱シート(21)が発泡樹脂成形体(22)の端縁の少なくとも厚み部分まで貼着された態様においては、前述の伝熱部材(15)の鍔の幅を大きく設計することにより発泡樹脂成形体(22)の表側の露出面積が小さくなった場合でも、発泡樹脂成形体(22)に対する放熱シート(21)の貼着力を高めることが出来、特に施工時に曲げ操作などが多く加えられる放熱パネル(1)の端部における放熱シート(21)の剥がれを確実に防することが出来る。
【0043】
更に、放熱シート(21)は、図7に示す様に、通水管(13)の外周面の15%以上に接触しているのが好ましい。すなわち、通水管(13)を断面視した場合、通水管(13)の外周面と放熱シート(21)との接触部分が符号(e゜)で示す角度の円弧とすると、角度e゜が50゜以上となる様に設計される。放熱シート(21)に対して上記の様に接触する状態に通水管(13)を配置する場合、基材である発泡樹脂成形体(22)に刻む溝(61)の深さは、通水管(13)の外径+伝熱部材(15)の厚さ−突出量(h)とされ、突出量(h)は、0.2〜0.7mm程度とされる。
【0044】
突出量(h)を上記の範囲に設定する理由は次の通りである。すなわち、突出量(h)が0.2mm未満の場合には、通水管(13)と放熱シート(21)との接触面積が小さくなり、放熱パネル上面の放熱量が不足する。一方、突出量(h)が0.7mmを超えた場合には、通水管(13)の浮き上がりや、床仕上材を敷設する際に段差の原因となる。
【0045】
また、本発明の放熱パネル(1)には、熱交換器(図示省略)から供給された温水をパネル内の各循環路に分配し且つこれら循環路を循環した温水を集約して熱交換器に戻すヘッダー(14)が付設されている。すなわち、放熱パネル(1)においては、図9に示す構造のヘッダー(14)を使用することにより、例えば6組または8組の循環路(通水管(13)で構成される回路)に温水を均等に循環させ且つ圧力損失を低減することが出来る。
【0046】
ヘッダー(14)には、熱交換器から伸長された往き及び戻りの一対の連絡配管(図示省略)を接続するための一対の直管状の配管連結口(84)と、各循環路を構成する各通水管(13)の両端を接続するための6組(12本)又は8組(16本)の直管状の通水管連結口(85)とが設けられている。そして、ヘッダー(14)の内部には、各配管連結口(84)からこれら配管連結口と同方向に且つ互いに平行に伸長された一対の主流路(82)と、これら主流路から直交する方向に分岐され且つ互いに平行に各通水管連結口(85)まで伸長された6組または8組の分岐流路(83)とが構成されている。
【0047】
上記の様なヘッダー(14)は、図10に示す様に、小さな継ぎ手ブロック(91),(91)・・・を連結して構成されていてもよい。図10に示すヘッダー(14)は、上記の主流路(82)及び分岐流路(83)に相当する通路が各継ぎ手ブロック(91)の内部に形成されており、継ぎ手ブロック(91)を共通部品として容易に制作でき且つパネルへ装着する際に継ぎ手ブロック(91)の数を調節することにより、6組または8組の循環路に簡単に対応することが出来る。
【0048】
なお、6組または8組の循環路(回路)が設けられ且つ図9に示す様なヘッダー(14)が付設された大サイズの6m以上の放熱パネル(1)と、比較的中サイズの3m以上6m以下の放熱パネル(1)或いは比較的小サイズの3m未満の放熱パネル(1)とを併用する場合は、中サイズの放熱パネル(1)には3回路または2回路のヘッダーを使用し、小サイズの放熱パネル(1)には2回路または1回路のヘッダーを使用し、段階的に1循環路あたりの通水管(13)の長を調節して放熱パネル(1)内の圧損を同等程度にすることにより、温度ムラを抑えることが出来る。
【0049】
本発明の放熱パネル(1)は、通水管(13)の敷設長さ及び配列ピッチ(b)を前述の様に設定することにより、一層高い出力を得ることが出来る。すなわち、本発明においては、60℃の温水を循環させた場合の上面放熱量が150W/m以上、45℃の温水を循環させた場合の上面放熱量が90W/m以上である。上記の上面放熱量は、温水を1循環路当たり0.5L/minで循環させた際の放熱量である。また、出力の上限は、60℃以上の高温水を通湯させたときに床温が不快な温度まで上昇しない様に、通常は200W/m、好ましくは170W/m以下であることが好ましい。
【0050】
放熱パネル(1)の出力と放熱効率は図11に示す測定方法により測定することが出来る。斯かる測定方法は、「優良住宅部品性能試験方法書」(財団法人ベターリビング編)の「暖・冷房システム/床暖房ユニット BLT HS/B−b−8」に記載の試験装置を使用する方法に準じたものである。
【0051】
具体的には、上記の出力と放熱効率の測定においては、厚さ50mmの断熱材(151)(発泡ポリスチレン)の上面に厚さ12mm、平面寸法909mm×909mmの合板(152)(JAS普通合板1類2等F☆☆☆☆)を床下地材に見立てて土間上100mmの高さに配置し、その上面に被験体である放熱パネル(1)を配置し、更に、放熱パネル(1)の上面に前記と同様の合板(154)を床仕上材に見立てて配置すると共に、放熱パネル(1)の下面および最上段の合板の上面にそれぞれシート状の熱流計(155)、(155)(平面寸法:310mm×310mm、英弘精機株式会社製の商品名「熱流計MF−160」)を設置する。次いで、室温を20℃に設定した後、通水管(13)に60℃の温水を0.5l/minの流量で循環させる。そして、放熱パネル(1)の上面方向および下面方向に放出される熱量を上記の熱流計(155)、(155)により測定する。なお、放熱効率は、放熱効率=放熱パネル上面の放熱量/(放熱パネル上面の放熱量+放熱パネル下面の放熱量)として算出する。
【0052】
本発明の放熱パネル(1)は、床下地の上に敷設され、図5に示す様に、上面にフローリング等の床仕上材(71)が配置される。床仕上材(71)を敷設する場合には、根太状部材(12)の上面に接着剤(73)を貼付し、根太状部材(12)の上面の施工領域(12L)に配置した床仕上材(71)の縁部(例えばさね)を釘(72)で仮止めする(図5中の符号(74)は、施工領域(12L)に対応する床仕上材(71)の施工可能な部位を示す)。そして、床仕上材(71)を敷設した後は、別途設置された熱源装置、例えば、ガスの燃焼や電力によって温水を製造する湯沸し装置やボイラー装置と連絡配管で接続される。連絡配管は、往き管および戻り管の一対の管から成る所謂ペアチューブであり、放熱パネル(1)のヘッダー(14)に接続される。
【0053】
放熱パネル(1)を使用して床暖房を行う場合、放熱パネル(1)の各循環路を構成する各通水管(13)に35〜80℃程度の温水が循環される。これにより、通水管(13)から放出された熱を放熱シート(21)に伝達し、床仕上材(71)をその裏面全面から加温することが出来る。特に、本発明の放熱パネル(1)は、放熱効率に優れ且つ高出力化されているため、35〜45℃程度の低温の温水で床仕上材(71)を加温でき、そして、低温水供給時に熱効率に優れた熱源機と組み合わせることが出来る。その結果、熱源機側での効率向上にも対応でき、一次消費エネルギー効率(熱源機に入るエネルギー量に対して実際に暖房に使用されるエネルギー量の割合)を向上させることが出来る。
【0054】
上記の様に、本発明の放熱パネル(1)においては、例えば床暖房に適用した場合、パネルの表面積に対する通水管(13)の敷設長さが特定の長さに設定され、根太状部材(12),(12)の間の通水管(13)の配列ピッチ(b)が特定の大きさに設定されており、通水管(13)における温水の圧力損失が小さく、流れる温水の平均温度をより高い温度に維持できるため、パネル全体の出力および放熱効率を一層高めることが出来る。しかも、通水管(13)の上記の配列ピッチ(b)に対して、床仕上材(71)を敷設する際の根太状部材(12)上の釘打ち可能な施工領域(12L)を基準として、当該施工領域の端部から根太状部材(12)の直近の通水管(13)の外周面までの距離(L)が特定の距離に設定されており、パネル表面において根太状部材(12)の周りに相当する部分と根太状部材(12),(12)の間に相当する部分との放熱量の差をより低減できるため、パネル表面の温度を一層均一化することが出来る。そして、根太状部材(12)に施工領域(12L)を設定することにより、床仕上材(71)を敷設する際、釘打ちにより通水管(13)を損傷することがなく、容易に施工できる。
【0055】
また、本発明においては、特定の構造のヘッダー(14)が付設されていることにより、圧力損失を更に低減して十分な温水を通水することが出来る。更に、通水管(13)が特定の伝熱部材(15)に収容されていることにより、パネル下面側への放熱を低減し、上面側への放熱効率を高め、出力をより一層向上させることが出来、また、通水管(13)が湾曲する部分(根太状部材(12)を迂回する部分)の配列ピッチが特定のピッチに設定されていることにより、一定の出力を確保することが出来る。そして、放熱シート(21)が通水管(13)の外周面の15%以上に接触していることにより、パネル上面側への放熱効率を更に高めることが出来る。
【0056】
上記の構造の本発明の放熱パネル(1)は、温水に代えて冷水を循環させることにより、冷房用としても使用でき、その場合も暖房用の場合と同様に冷熱の出力および放熱効率を高めることが出来る。その結果、本発明によれば、省エネルギー化に一層貢献することが出来る。
【実施例】
【0057】
実施例1:
小型の放熱パネル(1)を作製し、前述の測定方法に準じて出力と放熱効率を測定し、更にパネル表面の温度差を測定した。放熱パネル(1)の平面寸法は561mm×909mm(面積:0.51m)であり、発泡樹脂成形体(22)には、厚さが12mmの発泡ポリスチレンを使用し、表面の放熱シート(21)は、40μmのアルミニウムシートで構成した。根太状部材(12)として、幅(W)が45mmのスギ材で作製されたものを使用し、施工領域(12L)の幅(W)を25mmに設定した。通水管(13)には、呼び径が5A(外径6.9mm、内径5.0mm)の架橋ポリエチレン管を使用した。通水管(13)は、直線状に伸長して発泡樹脂成形体(22)の端部で折り返し、直線部分が12列並ぶパターンで配置した。単位面積当たりの通水管(13)の敷設長さは21.4m/mであった。根太状部材(12),(12)の間の通水管(13)の配列ピッチ(b)は45.45mmに設定し、施工領域(12L)の端縁から根太状部材(12)の直近の通水管(13)の外周面までの距離(L)を22mmに設定した。また、通水管(13)の直線部分には、厚さが60μmのアルミニウムシートから成る伝熱部材(15)を敷設した。なお、循環路は実験用に1回路とした。
【0058】
測定の結果、60℃の温水を通水したときの放熱パネル(1)上面の放熱量は161W/m、放熱パネル(1)下面の放熱量は27W/m、放熱効率は86%であった。また、45℃の温水を通水したときの放熱パネル(1)上面の放熱量は101W/m、放熱パネル(1)下面の放熱量は17W/mであった。更に、放熱パネル(1)の表面温度のばらつきを測定したところ、パネル全体での温度差(根太状部材(12)の周りに相当する部分と根太状部材(12),(12)の間に相当する部分との温度差)は3℃、30cm×30cmの部位での温度差は最大で1℃であった。
【0059】
比較例1:
従来構造の放熱パネルを作製し、実施例1と同様に出力と放熱効率を測定した。通水管(13)としては、呼び径が5A(外径7.2mm、内径5mm)の架橋ポリエチレン管を使用した。通水管(13)の配置パターンは、直線部分を発泡樹脂成形体(22)の端部で折り返し、直線部分が8列並ぶパターンとした。根太状部材(12),(12)の間の通水管(13)の配列ピッチ(b)は75.75mmであった。また、単位面積当たりの通水管(13)の敷設長さは14.2m/mであった。その他の構成は実施例1と同様である。
【0060】
測定の結果、60℃の温水を通水したときの放熱パネル上面の放熱量は115W/m、放熱パネル下面の放熱量は22W/m、放熱効率は84%であった。また、45℃の温水を通水したときの放熱パネル上面の放熱量は、72W/m、放熱パネル下面の放熱量は14W/mであった。更に、放熱パネルの表面温度のばらつきを測定したところ、パネル全体での温度差(根太状部材(12)の周りに相当する部分と根太状部材(12),(12)の間に相当する部分との温度差)は5℃、30cm×30cmの部位での温度差は最大で1.5℃であった。
【0061】
上記の測定結果から、比較例の放熱パネルにおいては、45℃の温水を通水した場合の出力が特に小さいことが確認された。これに対し、本発明の放熱パネル(1)は、45℃の温水を通水した際も、比較例の放熱パネルに60℃の温水を通水した場合と遜色のない出力が得られ、かつ、上面放熱効率も向上することが確認された。また、パネル表面の温度差が小さくできることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る放熱パネルの一例を示す平面図である。
【図2】本発明に係る放熱パネルの内部構造を部分的に示す図であり、図1のA−A線に沿って破断した縦断面図である。
【図3】本発明の放熱パネルにおける通水管周りの内部構造を部分的に示す縦断面図である。
【図4】本発明に係る放熱パネルにおける根太状部材の施工領域と通水管までの距離の関係を示す縦断面図である。
【図5】本発明の放熱パネルに対する床仕上材の敷設方法を示す斜視図である。
【図6】本発明の放熱パネルにおける通水管の配置パターンの一部を示す図であり、根太状部材に対する通水管の迂回部分の平面図および一部破断の斜視図である。
【図7】本発明の放熱パネルにおける通水管の埋設状態および通水管と熱拡散用の放熱シートの接触状態を示す縦断面図である。
【図8】本発明の放熱パネルにおいて基材の発泡樹脂成形体に肉抜きをした例を示す縦断面図である。
【図9】本発明の放熱パネルに付設されるヘッダーの例を示す平面図である。
【図10】本発明の放熱パネルに付設されるヘッダーの他の例を示す平面図ある。
【図11】放熱パネルの出力と放熱効率を測定方法を示す主要機材の側面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 :放熱パネル
12 :根太状部材
12L:施工領域
13 :通水管
14 :ヘッダー
15 :伝熱部材
16 :ヘッダー取付部
21 :放熱シート
22 :発泡樹脂成形体
61 :溝
71 :床仕上材(フローリング)
b :通水管の配列ピッチ
L :施工領域の端部から通水管の外周面までの距離
:根太状部材の幅
:施工領域の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に床仕上材が敷設され且つ温水または冷水を循環させる冷暖房用の放熱パネルであって、断熱材としての薄板状の発泡樹脂成形体と、当該発泡樹脂成形体の切欠き部分に嵌合させる状態で一定間隔で平行に配列された複数の根太状部材と、前記発泡樹脂成形体の表側の溝に配置された通水管と、前記発泡樹脂成形体および前記根太状部材の表側の表面に貼設された放熱シートとから成り、前記根太状部材と平行に前記通水管が複数列配列された通水管の配置パターンを備え、かつ、前記根太状部材の配列ピッチが283〜323mm、前記根太状部材の幅が10〜100mm、放熱パネルの表面積に対する前記通水管の敷設長さが14〜30m/m、前記根太状部材の間の前記通水管の配列ピッチが30〜55mmに設定され、しかも、床仕上材を釘打ち施工により敷設する際の前記根太状部材の仮想中心線に沿った当該根太状部材上の施工領域の幅を根太状部材の幅の0.4〜0.7とした場合、前記施工領域の端部から前記根太状部材の直近の前記通水管の外周面までの距離が35〜90mmに設定されていることを特徴とする放熱パネル。
【請求項2】
通水管の少なくとも一部分は、断面がU字状に形成され且つ上端縁に鍔が付設された樋状の伝熱部材に収容されて発泡樹脂成形体の溝に配置されており、前記伝熱部材の鍔の幅が、1〜9mmに設定されている請求項1に記載の放熱パネル。
【請求項3】
通水管の内径が4〜7mmであり、根太状部材の間の前記通水管の配列数が6〜8である請求項1又は2に記載の放熱パネル。
【請求項4】
根太状部材は、全体の平面形状が方形の発泡樹脂成形体の幅方向に沿って配列され、かつ、前記発泡樹脂成形体の幅方向の中央部で分断された形態と、前記発泡樹脂成形体の幅方向の両端部から後退させた形態とを交互に繰り返すパターンで配置されており、通水管は、前記根太状部材の分断部分および前記根太状部材の後退部分において根太状部材を迂回する様に配置され、迂回部分における前記通水管の配列ピッチが当該通水管の内径+5mm以上、内径+10mm以下に設定されている請求項1〜3の何れかに記載の放熱パネル。
【請求項5】
放熱シートが、通水管の外周面の15%以上に接触している請求項1〜4の何れかに記載の放熱パネル。
【請求項6】
放熱シートの端部は、発泡樹脂成形体の端縁の少なくとも厚み部分まで貼着されている請求項1〜5の何れかに記載の放熱パネル。
【請求項7】
60℃の温水を循環させた場合の上面放熱量が150W/m以上、45℃の温水を循環させた場合の上面放熱量が90W/m以上である請求項1〜6の何れかに記載の放熱パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−139178(P2010−139178A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316753(P2008−316753)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】