説明

放送切替装置

【課題】
同一のチャンネルで放送される複数の番組から一つの番組を視聴できるように、送信機を制御する手段を提案する。
【解決手段】
1以上の正数nとした場合に、n個の番組に対応し全て同一周波数で放送するn個の送信アンテナ部と、前記n個の番組から1個の番組を選択する番組選択部と、前記番組選択部が選択した番組に対応する送信アンテナのみを有効にして当該送信アンテナ以外を無効にする出力制御部と、から成り、前記番組選択部は運営者からの指示と視聴者からの指示を受信する経路を有することを特徴とする放送切替装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置に関するものであり、特に、単チャンネルにて複数の放送サービスを提供する送信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に地上デジタルテレビジョン放送など複数の放送局から番組を放送する放送形態においては、各放送局がそれぞれ送信する電波の干渉を避けるため、隣接する放送局間で異なる周波数帯域を使用してサービスを提供している。
【0003】
つまり、放送局ごとに異なる周波数を使用するため、複数の放送局からの異なる電波が存在する場所においても、端末側で特定の周波数にチューニングすることにより、該当する周波数の放送を視聴することができる。従って、各放送局は、地域限定の番組など、その放送が提供される地域に特化した内容の番組を放送することができる。
【0004】
また、広域向け放送を行いながら、必要に応じて、例えば一部の時間帯に特定の地方に向けた狭域放送を挿む形態の放送は、頻繁に行われている。例えば、ニュース番組において、最初は広域向け放送により例えば全国向けのニュースを放送し、途中から狭域向け放送により当該地域に特化したニュースを放送することができる。同様に、最初に広域向け放送により広域な天気予報を放送し、途中から狭域向け放送により当該地域に特化した天気予報を放送したりすることもできる。
【0005】
ただし、前記のように複数の内容の放送を同時刻に配信する場合であっても、その実体は複数の周波数を用いるものであり、テレビジョンの各チャンネルに設定された受信周波数が利用者の地域毎に異なるために、当該地域向けの放送を実現することが可能なのである。
【0006】
一方、単一周波数帯域での広域放送と狭域放送を同時に実現するシステムとして「MediaFLO」(登録商標)が提案されている。当該MediaFLOとは、携帯端末向け多チャンネル放送サービスであり、移動体環境に適した技術によって、映像や音楽を配信するものである。
【0007】
MediaFLOでは時間領域、あるいは周波数領域を細かく分割したサービスの割り当てが行われており、必要なMLC(Multicast Logical Channel)のみを選択的にデコードすることによって、放送受信端末の受信部の省電力化を図りつつ放送番組を選択することができる。
【0008】
特許文献1では、前記のように時間領域に分割して送信された複数の放送に関して、チャンネルフリッピング(Channel Flipping)と呼ばれる、端末操作によって複数の番組を渡り歩いて受信する際に問題となる、番組切替時の遅延を減少させる方法が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−232894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかるに前記のような従来手法において、複数の地域を対象としたニュースや天気予報の受信に関しては、利用者が選択するのではなく、あくまでもテレビジョンを初期設定し記憶された周波数で放送を受信するものであるし、MediaFLOに関しては、これを受信するための専用の端末と専用のアプリケーションが必要になるという欠点がある。
【0011】
本発明ではこのような欠点を鑑みて、携帯受信端末を含めた従来の一般的なテレビジョン受像器で放送を受信することを想定したものであり、同一のチャンネルで放送される複数の番組から一つの番組を視聴できるように、送信機を制御する手段を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために本発明は次のような手段をとる。つまり、
1以上の整数nとした場合に、
n個の番組に対応し全て同一周波数で放送するn個の送信アンテナ部と、
前記n個の番組から1個の番組を選択する番組選択部と、
前記番組選択部が選択した番組に対応する送信アンテナのみを有効にして当該送信アンテナ以外を無効にする出力制御部と、
から成り、
前記番組選択部は運営者からの指示と視聴者からの指示を受信する経路を有することを特徴とする放送切替装置である。
【0013】
また本発明において、番組選択部は、
運営者あるいは視聴者からの指示数を番組毎に集計し、最も指示数の多い番組を選択結果とすることを特徴とする放送切替装置である。
【0014】
また本発明において、番組選択部は、
運営者からの指示を選択結果とする強制選択手段を有することを特徴とする放送切替装置である。
【発明の効果】
【0015】
前記手段によれば、一つの放送局から複数の番組を放送エリアに伝送し、運営者や視聴者の希望に沿いつつ、簡易な制御によって当該複数の番組の中から放送電波を送信すべき番組を選択できる。しかも本手段によれば、実際に放送する番組は1つの周波数を用いた1つの番組であるから、電波の干渉を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる放送システムである。
【図2】送信アンテナのオン・オフを示した模式図である。
【図3】放送装置のその周辺装置である。
【図4】送信アンテナのオン・オフを行うタイミングを示した図である。
【図5】処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
本発明の好適な実施の形態について、図を参照して説明する。図1はデジタル放送の送信側と受信側を示したブロック図である。
【0018】
運営者101は番組制御装置103を操作し、放送すべきコンテンツを送信網105を介して放送装置107に送信する。ここで送信網105は電波による無線伝送やインターネットもしくは専用回線による有線伝送であってもよく、本発明ではこれを限定しない。
【0019】
放送装置107は、番組制御装置103が送信した放送信号を受信するための受信部109と、視聴者に放送波を送信するアンテナ115を制御する出力制御部111を有する。当該出力制御部111の動作には運営者101及び視聴者119が関与することが可能である。
【0020】
アンテナ113から送信された放送波は、視聴者117が操作する視聴者受信端末115において受信され、当該視聴者117はデジタル放送を視聴者受信端末115の表示装置によって閲覧することができる。
【0021】
図2は本発明の概念図である。デジタル放送を提供しようとする任意のエリアにおいて、放送波の送信アンテナA205とB207を設置する。ある時刻において送信アンテナA205が送信スイッチオン、B207が送信スイッチオフであった場合、視聴可能エリア201においては、送信アンテナA205が送信する番組を視聴者が受信端末115を用いて閲覧することが可能になる。
【0022】
本発明は、このように、運営者101が同時刻に複数の番組を提供し、運営者101あるいは視聴者117の要望により出力制御部111が送信アンテナを切替制御することによって、放送波が混信することなく、視聴者が一つの番組を閲覧できる手段に関するものである。
【0023】
なお、どのような番組を放送可能であるのかという情報は、デジタル放送におけるデータ放送として文字情報で視聴者に知らせる方法や、狭域エリア放送であれば、表示板の設置や、あるいは、受信機に専用アプリケーションをインストールして、該アプリケーションが放送装置107あるいは番組制御装置103と通信することによって取得し表示する方法など、種々のものが考えられる。
【0024】
図3は図1のブロック図における本発明にかかる部分のみを示したものである。送信アンテナ205と207はそれぞれ違う放送コンテンツを送信するためのものであり、放送波が混信しないように一方をオフにする処理を出力制御部111が行う。
【0025】
そして、出力制御部111が送信アンテナ205や207をオン・オフするための指針は、運営者101や視聴者117の指示によるものである。なお、本実施例では送信アンテナを2個として説明しているが、3個以上であっても同様であり、本発明は送信アンテナの個数、あるいは同時放送コンテンツの個数を限定しない。
【0026】
図4は、あるエリアで番組aを放送するための送信アンテナAと、番組bを放送するための送信アンテナBの2個の送信アンテナを設置し、リクエストによって、いずれをオンにし、いずれをオフにするのかを決定するタイミングチャートの一例である。なお、ここでは運営者と視聴者の重み付け配分を事前に1対1と決めており、運営者の1票と視聴者の1票は同じ価値があるとしている。
【0027】
まず、運営者がaを放送したいと希望しaをリクエストした結果、送信アンテナはAがオンに、そしてBがオフになり、当該エリアにおいては送信アンテナAによって番組aを放送する。その後、当該エリアの視聴者2名が番組bをリクエストした時点でリクエスト総数はaが1名、bが2名となるため、送信アンテナはAがオフに、そしてBがオンになり、送信アンテナBによって番組bを放送する。
【0028】
さらにbへのリクエストが1件あり、その後、当該エリアの視聴者3名が番組aをリクエストした時点でリクエスト総数はaが4名、bが3名となるため、送信アンテナはAがオンに、そしてBがオフになり、送信アンテナAによって番組aを放送する。
【0029】
なお、リクエストの集計をどのタイミングでリセットするかは任意であり、例えば番組開始時にリセットする方法や、あるいは近い時刻のリクエストほど係数を乗じ重くみる方法など様々な方法があり、本発明ではこれを限定しない。
【0030】
図5は、前記のように、出力制御部111において、番組aを放送する送信アンテナAと、番組bを放送する送信アンテナBの2つの送信アンテナのオン・オフを切り替える処理のフローチャートである。まず、リセット信号(S501)によってリクエスト数aおよびbが0にリセットされる(S511およびS521)。
【0031】
この後はリクエスト受付状態となり、運営者からaあるいはbのリクエストを受けたら(S513あるいはS523)、変数aあるいはbを1増加する(S515あるいはS527)。同様に、視聴者からaあるいはbのリクエストを受けたら(S515あるいはS525)、変数aあるいはbを1増加する(S515あるいはS525)。
【0032】
リクエスト数によって送信機のオン・オフが変動するため、通常はリセット直後(S511およびS521の直後)に遷移し、リクエスト信号の到来によってリアルタイムにaあるいはbが増加されていく。
【0033】
次に、リクエスト数の大小つまりaとbの大小を比較し(S531)、aがb以上であれば送信アンテナAをオンにし送信アンテナBをオフにする(S533)。または、aがb未満であれば送信アンテナAをオフにし送信アンテナBをオンにする(S535)。
【0034】
また、運営者は通常のリクエスト以外に、強制的に放送番組を決定することができる(S540)。この場合には、前記のように視聴者からリクエストが到来しても、運営者による強制制御を優先させる。
【0035】
なお、前記のように、リセット(S501)のタイミングは番組開始時であったり、任意の一定時間間隔であったり、様々なタイミングが考えられるが、本発明ではこれを限定しない。また、運営者からのリクエスト数を視聴者からのリクエスト数の定数倍するなどの重み付けが考えられるが、リクエスト1票の重みの定義について、本発明ではこれを限定しない。
【0036】
また、直近のリクエストを古いリクエストよりも重視する手段として、リクエストした時間から一定時間が過ぎたら該リクエストを忘却し、aあるいはbから1を減算するといった手段も考えられるが、このようなリクエストデータの時間推移に対する忘却に関しては、これを実施するかどうかも含めて、本発明ではこれを限定しない。
【0037】
次に視聴者からの番組リクエスト方法について説明する。現在どういった番組が放送可能状態にあるかを知る手段としては前記のように、デジタル放送におけるデータ放送として文字情報で視聴者に知らせる方法や、狭域エリア放送であれば、表示板の設置や、あるいは、受信機に専用アプリケーションをインストールして、該アプリケーションが放送装置107あるいは番組制御装置103と通信することによって取得し表示する方法など、種々のものが考えられる。
【0038】
視聴者はこれらの手段で番組一覧を閲覧し、複数の手段で運営者にリクエストを伝達する。
【0039】
(視聴者リクエストの第一の手段)
デジタル放送におけるデータ放送を閲覧可能な場合には、該データ放送の番組リストにリンクされた一次リンクから、運営者にリクエストを伝達することができる。一般に、放送局の側からは、データ放送で提供できるデータ(データ放送コンテンツ)の情報量は限られるため、放送により提供される情報を通信で補うために、データ放送コンテンツの中からリンクされる情報が置かれるサーバとして1次リンクサーバと呼ばれるサーバを用意している。
【0040】
1次リンクサーバでは、BMLで記述されたコンテンツを提供し、端末ではこのコンテンツをBMLブラウザがデータ放送コンテンツと同様に取り扱う。視聴者はこのBMLブラウザ上で対応箇所をクリックするなどによって、運営者側にリクエストを送信する。
【0041】
(視聴者リクエストの第二の手段)
前記BMLサーバを用いた通信を一次リンクと呼ぶのに対して、Webサーバを用いる通信を二次リンクと呼ぶが、これを用いる。視聴者が受信端末上のWebアプリケーションから番組を指定する手段である。
【0042】
(視聴者リクエストのその他の手段)
その他、放送が狭域エリア放送であれば、当該エリアの送信機近傍に放送番組の掲示板を設置し、当該掲示板によって番組リストを閲覧した後、併設されたリクエストボタンを押したり、直接運営者に電話をかけることも考えられる。
【0043】
また、任意の無線通信によって、受信端末にインストールされたアプリケーションが放送装置と通信をし、番組リストの取得やリクエストの発行をする手段も考えられる。
【0044】
一方、運営者は、前記視聴者によるリクエストと同手段を用いることが可能であるが、番組制御装置103や放送装置107を直接操作して番組を変更することができる。
【0045】
以上説明したように、本発明によれば、一つの放送局から複数の番組を放送エリアに伝送し、運営者や視聴者の希望に沿いつつ、簡易な制御によって当該複数の番組の中から放送電波を送信すべき番組を選択できる。しかも本手段によれば、実際に放送する番組は1つの周波数を用いた1つの番組であるから、電波の干渉を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0046】
101…運営者、 103…番組制御装置、
105…任意のネットワーク、 107…放送装置、
109…受信部、 111…出力制御部、
113…アンテナ、 115…視聴者受信端末、
117…視聴者、
201…放送エリア、 205…送信アンテナA、
207…送信アンテナB。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の整数nとした場合に、
n個の番組に対応し全て同一周波数で放送するn個の送信アンテナ部と、
前記n個の番組から1個の番組を選択する番組選択部と、
前記番組選択部が選択した番組に対応する送信アンテナのみを有効にして当該送信アンテナ以外を無効にする出力制御部と、
から成り、
前記番組選択部は運営者からの指示と視聴者からの指示を受信する経路を有することを特徴とする放送切替装置。
【請求項2】
請求項1に記載の番組選択部は、
運営者あるいは視聴者からの指示数を番組毎に集計し、最も指示数の多い番組を選択結果とすることを特徴とする放送切替装置。
【請求項3】
請求項1乃至請求項2のいずれか一項に記載の番組選択部は、
運営者からの指示を選択結果とする強制選択手段を有することを特徴とする放送切替装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−165307(P2012−165307A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25777(P2011−25777)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】