説明

放電ランプ用のインバータ、および照明装置

【課題】本発明は、グロー球を備えた放電ランプに適用可能な、放電ランプ用のインバータ、および該インバータを使用した照明装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、グロー球3を備えた予熱型の放電ランプ2用のインバータ4であり、放電ランプ2に予熱電流または放電電流(併せてランプ電流と総称する)を供給する発振回路40と、ランプ電流を測定するランプ電流測定回路43と、放電ランプ2の状態を示す状態パラメータを測定するランプ状態測定部47と、状態パラメータの測定値に基づき、放電ランプ2の放電が開始したときを判定し、発振回路40によるランプ電流の制御を開始するための制御開始信号を発振回路40に出力する放電開始判定部42と、制御開始信号を受け、ランプ電流の測定値に基づき、該ランプ電流が所定の値になるように、発振回路40を制御する電流制御信号を生成し、発振回路40に出力する電流制御部44とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点灯時のランプ電極の予熱にグロー球を使用する予熱型の放電ランプにランプ電流を供給し制御する放電ランプ用のインバータ、および該インバータを使用した照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光灯に代表される予熱型の放電ランプを使用した照明装置には、図5(a)に示すように、放電ランプの点灯にグロー球を用い、点灯後は、安定器を介してランプ電流を供給するというものが多数存在する。グロー球は放電ランプの電極(ランプ電極)の予熱用電路として用いられる。このような照明装置では、予熱後にグロー球の電極間がバイメタル効果により「開」になることで、安定器から高電圧が放電ランプのランプ電極間に供給される。この高電圧とランプ電極の予熱効果によりランプ電極間で放電が開始し、放電ランプが点灯する。安定器は、ランプ点灯に必要な高電圧を発生させ放電ランプの始動を助けるとともに、点灯後はランプ電流を制御して放電の安定性を確保する機能を有している。
【0003】
一方、安定器に替えてインバータを使用すると、同じ消費電力量でもランプの明るさが向上するため、昨今の省エネルギー化の要請に合致し、また、高周波点灯となるためちらつきが少なくなり、軽量となる等の利点がある。そのため、近年、グロー球を備えた放電ランプと安定器とで構成されている既設の照明装置を対象として、安定器をインバータに置き換えたいという要請がある。
【0004】
照明装置にインバータを使用した例は、例えば特許文献1に示されている。インバータを使用した場合、ランプ電極の予熱用の電路にはコンデンサが使用され、グロー球は使用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−169577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、グロー球を備えた放電ランプと安定器とで構成された図5(a)に示す照明器具の安定器を、インバータに置き換えるときは、図5(b)に示すように、グロー球を撤去し、インバータと放電ランプ間の配線を、安定器と放電ランプ間の配線から変更する必要が生じる。その結果、置き換え作業に手間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、グロー球を備えた放電ランプに適用可能な、放電ランプ用のインバータ、および該インバータを使用した照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る放電ランプ用のインバータは、
グロー球を備えた予熱型の放電ランプ用のインバータであって、
前記放電ランプに予熱電流または放電電流(併せてランプ電流と総称する)を供給する発振回路と、
前記ランプ電流を測定するランプ電流測定回路と、
前記放電ランプの状態を示す状態パラメータを測定するランプ状態測定部と、
前記状態パラメータの測定値に基づき、前記放電ランプの放電が開始したときを判定し、前記発振回路による前記ランプ電流の制御を開始するための制御開始信号を前記発振回路に出力する放電開始判定部と、
前記制御開始信号を受け、前記ランプ電流の測定値に基づき、該ランプ電流が所定の値になるように、前記発振回路を制御する電流制御信号を生成し、前記発振回路に出力する電流制御部と、
を備える。
【0009】
本発明の第2の観点に係る照明装置は、
グロー球を備えた予熱型の放電ランプと、電極予熱電流または所定値に制御した放電電流をランプ電流として前記放電ランプに供給するインバータとを備える照明装置であって、
前記インバータは、
前記放電ランプに前記ランプ電流を供給する発振回路と、
前記ランプ電流を測定するランプ電流測定回路と、
前記放電ランプの状態を示す状態パラメータを測定するランプ状態測定部と、
前記状態パラメータの測定値に基づき、前記放電ランプの放電が開始したときを判定し、前記発振回路による前記ランプ電流の制御を開始するための制御開始信号を前記発振回路に出力する放電開始判定部と、
前記制御開始信号を受け、前記ランプ電流の測定値に基づき、該ランプ電流が所定の値になるように、前記発振回路を制御する電流制御信号を生成し、前記発振回路に出力する電流制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る放電ランプ用のインバータおよび照明装置によれば、インバータと、グロー球を備えた放電ランプとを組み合わせて使用することができる。また、グロー球を備えた放電ランプと、安定器とで構成される既存の照明装置の安定器をインバータに置き換える際に、本発明に係るインバータを使用することにより、グロー球を残してこれを利用し、且つ安定器と放電ランプ間の配線をそのまま利用してインバータと放電ランプ間の配線を行うことができる。そのため、置き換え工事を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係る照明装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】実施形態1に係るランプ電流およびランプ電圧の時間変化の例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る照明装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態3に係る照明装置の構成例を示すブロック図である。
【図5】(a)安定器を使用した従来の照明装置の構成例を示すブロック図である。(b)インバータを使用した従来の照明装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る照明装置の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、実施形態1に係る照明装置1は、グロー球3を備えた放電ランプ2と、放電ランプ2にランプ電流を供給するインバータ4とを備える。電源5は照明装置1に電流を供給する。
【0013】
放電ランプ2は、放電用のガスを封入したガラス管と、放電ランプ2の両端のガラス管内に設置されたランプ電極21、22と、ランプ電極21の両端からガラス管外にそれぞれ引き出された電極端子211、212と、ランプ電極22の両端からガラス管外にそれぞれ引き出された電極端子221、及び222とを備える。放電ランプ2の電極端子212と、電極端子222との間にはグロー球3が接続されている。電極端子211、221はそれぞれインバータ4の電流出力端子401、402に接続されている。
【0014】
インバータ4は、発振回路40と、ランプ電圧測定回路41(実施形態1ではランプ状態測定部47を意味する)と、放電開始判定部42と、ランプ電流測定回路43と、電流制御部44と、整流回路・力率改善回路45と、調光回路46とを備える。
【0015】
発振回路40は、電源5から供給される交流電流から高周波電流を生成し、放電ランプ2にランプ電流として供給する。ランプ電圧測定回路41は、放電ランプ2のランプ電極21、22間の電圧を測定する。ランプ電流測定回路43は、放電ランプ2のランプ電極21、22間に流れるランプ電流を測定する。放電開始判定部42は、ランプ電圧測定値に基づき、ランプ電極21、22間で放電が開始したことを判定し、制御開始信号を発振回路40に出力する。電流制御部44は、ランプ電流測定値と制御対象となる所定の電流値(以下所定値という)との差異を制御信号として発振回路40に出力する。制御開始信号の入力後、発振回路40は、入力する制御信号が実質0になるように、すなわちランプ電流測定値が所定値に等しくなるように、出力電流を制御する。
【0016】
なお、発振回路40と電源5の間には発振回路40で高周波電流を生成するための準備段階の電流信号処理として整流回路・力率改善回路45が設置され、その出力は発振回路40に入力される。また、放電ランプ2の光量調節を目的として発振回路40から出力される電流、即ちランプ電流を設定するための調光回路46が設置されている。調光回路46の出力は発振回路40に出力される。
【0017】
ランプ状態測定部47は、放電開始判定部42で放電が開始したことを判定するための材料として、ランプの状態を示す状態パラメータを測定し、測定値を放電開始判定部42に提供する。図1ではランプ電圧測定回路41がランプ状態測定部47の役割を担っており、実施形態1におけるランプ状態測定部47はランプ電圧測定回路41と同義である。状態パラメータはランプ電圧である。
【0018】
図1に示すインダクタンスL1と容量C1とは、放電ランプ2への電力供給路に設置されており、放電開始時に放電ランプ2に高電圧を供給するための共振回路を構成する。抵抗R1、R2はランプ電圧測定回路43でランプ電圧を測定するための入力電圧生成用の分割抵抗を構成する。ダイオードD1、D2はそれぞれランプ電流測定回路43、ランプ電圧測定回路41の入力端に、片側の極性の電流、電圧信号のみを測定対象とする目的で設置されている。
【0019】
ランプ電圧測定回路41は、抵抗R2の両端の電圧を測定し、その測定値を放電ランプ2のランプ電極21、22間の電圧値に換算し、これをランプ電圧測定値とする。ランプ電圧測定値は放電開始判定部42に出力される。
【0020】
ランプ電流測定回路43は、インダクタンスL1に所定のインダクタンスを結合させた電流路の一端をその入力端子に接続し、インダクタンスL1に流れる発振回路40の出力電流により、結合された所定のインダクタンスに誘導される電流をランプ電流として測定する。ランプ電流測定値は電流制御部44に出力される。
【0021】
図2は実施形態1に係るランプ電流およびランプ電圧の時間変化の例を示す図である。
図1に示す照明装置1の動作について、図2を参照しながら説明する。なお、以下ではランプ電流は、ランプ電極間の放電電流だけでなく、ランプ電極の予熱の際にグロー球3の電極間で流れる予熱電流も含むものとする。
【0022】
放電ランプ2のランプ電極21、22は電極端子211、221を介してインバータ4の電流出力端子401、402とそれぞれ接続されている。図2に示す時刻t1にインバータ4からの出力(高周波電力)が放電ランプ2に印加されるとする。この高周波電力は、ランプ電極21、22間に印加されることにより、電極21の電極端子211、212及び電極22の電極端子221、222を介してグロー球3の電極端子間にも印加される。これにより当初「開」状態となっているグロー球3の電極間で放電が開始される。この放電電流と、放電電路の抵抗により、グロー球3の電極間に電圧が発生し、これがランプ電圧となる。図2の「グロー球放電期間」として示す領域(時刻t1〜t2)がこの状態に該当する。このときの放電電流は微少であるため、ランプ電流はその後のランプ電流に比べて小さい。なお、電流値、電圧値とはそれぞれの振幅値の1/2、例えば、正値を有する部分の振幅値のことを言うものとする。
【0023】
グロー球3では放電によりその電極が加熱され、バイメタル構造を有する電極の熱膨張によりその電極間が「閉」状態となる。グロー球3の電極間が「閉」状態になることにより、ランプ電圧はほぼ0Vになる。一方、ランプ電流は、グロー球3の電極間が「閉」状態となることにより増大する。この状態は図2に「グロー球閉状態」として示す領域(時刻t2〜t3)に該当する。この電流は電極端子211、および212間を流れ、ランプ電極21を加熱し、更に、グロー球3を経由して、電極端子222、および221間を流れ、ランプ電極22を加熱する。この段階がランプ電極の予熱である。この予熱により、ランプ電極21、22は温度が上昇し、放電が発生しやすい状態になる。
【0024】
グロー球3の電極が「閉」状態になると、グロー球3での放電による電極の加熱が停止するため、その電極温度は低下し、時刻t2からある時間が経過した時刻t3に、グロー球3の電極は、熱収縮効果により当初の「開」の状態に戻る。
【0025】
グロー球3の電極が「開」状態になると、インダクタンスL1と容量C1とで構成される共振回路の働きにより、加熱されたランプ電極21、22間に短時間高電圧が印加され、この高電圧によりランプ電極21、22間で放電が発生し、放電電流が流れ始める。放電電流によりガラス管に封入されたガスが発光し放電ランプ2から光が放出される。これ以降は、この放電電流がランプ電流となる。放電開始後のランプ電圧は放電ランプ2の放電電流とランプ電極21、22間の放電時の電路抵抗との積で定まる値となる。
【0026】
放電ランプ2での放電電流は、所定値に制御する必要がある。そのため、グロー球3の電極間が「開」状態になり、ランプ電極21、22間で放電電流が流れ始めたことを判定し、その後電流制御を開始する必要がある。この判定は放電開始判定部42において実施される。放電開始判定部42は、ランプ電圧測定回路41で得られるランプ電圧測定値を入力し、この電圧測定値に基づき、この判定を行う。この判定がなされると放電開始判定部42は制御開始信号を発振回路40に出力し、この制御開始信号を受けて発振回路40は出力電流、即ちランプ電流の制御を開始する。
【0027】
放電開始判定部42は、インバータ4がON状態となり、放電ランプに電力を供給した後、ランプ電圧測定値が図2に示す値V0とV1との間の値に初めてなった時に制御開始信号を出力する。電圧値V0については、これを図2に示す放電ランプ2の放電時のランプ電圧測定値を超えず、グロー球3の電極が「閉」状態の時のランプ電圧測定値よりも大きい値に設定する。電圧値V1については、これを図2のグロー球3の放電時のランプ電圧測定値を超えず、放電ランプ2の放電時のランプ電圧測定値を超える値に設定する。いずれも予め各電圧値を測定して設定しておく。これらの測定値に代え設計計算結果に基づき上述の設定を行ってもよい。
【0028】
電圧値V1はグロー球3の電極間放電に対応して設定された値で、電圧値V0はグロー球3の電極間が一端「閉」状態を経由した後「開」状態になったときの放電に対応して設定された値である。従って、ランプ電圧測定値に対する判定条件により、グロー球3が所期の動作を行った後、ランプ電極21、22間に放電が生じたことを確認することができる。
【0029】
通常、この判定には所定の期間を設け(図2に示す時刻t3〜t4間の「放電開始判定期間」)、例えばこの間の電圧測定値の平均値を求め、この平均値と電圧値V0、V1との対比を行い、グロー球3の電極間が「開」状態になり、ランプ電極21、22間に放電電流が流れ始めたことを判定する。これは、1測定値のみで判定するのは信頼性にかけるという理由による。
【0030】
電流制御部44は、ランプ電流測定回路43で得られたランプ電流測定値を入力し、この測定値と所定値との差異を制御信号として発振回路40に出力する。発振回路40は放電開始判定部42から制御開始信号を入力した後、電流制御部44から入力した制御信号により、ランプ電流測定値が所定値になるようにその出力電流、即ちランプ電流を制御する。図2の時刻t4以降にこの電流制御がなされている。
【0031】
なお、発振回路40からの電流出力は調光回路による調光に従って変化することがあり、その場合はランプ電圧も変化する。そのため、電圧値V0、V1は固定値ではなく、それぞれの調光時のランプ電圧を予め測定し、これに所定の割合を乗じたものとして調光の設定毎に予め規定しておき、放電開始判定部42は、この規定された値を判定に使用する。また、それぞれの設計電圧値に基づき設定しても良い。
【0032】
また、放電開始判定部42は、制御開始信号を、ランプ電圧測定値が図2に示す電圧値V0を2回目に超えたときに出力するようにしても良い。この場合の電圧値V0は上述した条件に加え、グロー球3の放電期間内のランプ電圧測定値を超えない値にしておく必要がある。その時は、グロー球放電期間にランプ電圧測定値が電圧値V0を超える状態が続く。その後、所定時間(図2のグロー球「閉」状態の時刻t2〜t3間)、電圧値V0を超える電圧値が測定されず、次に電圧値V0を超える電圧測定値が得られた時を2回目とし、放電開始判定部42は、このときを放電開始時と判定し放電開始信号を出力する。なお、所定の判定期間(図2の放電開始判定期間t3〜t4)を設け、放電開始判定部42は、この期間内のランプ電圧測定値の平均値が電圧値V0を超えたときに判定を行ってもよい。
【0033】
上述したいずれの判定方法であっても、時刻t4に放電開始判定部42から発振回路40に制御開始信号が出力される。発振回路40から出力されるランプ電流の制御は、時刻t4以降に開始される。
【0034】
この電流制御部44についても、所定期間の電流測定値の平均値と所定値との差異を制御信号とすることができる。1測定値に依拠するよりもデータの信頼性が向上するため、電流制御の精度が向上する。
【0035】
本発明では、ランプ電圧測定値に基づき、ランプ電極21、22の予熱後に、グロー球3の電極が「開」状態となった結果として、ランプ電極21、22間に放電電流が流れ始めたことを判定し、その後、発振回路40による電流制御を開始し、放電ランプ2の点灯制御を行う。従って、グロー球3を装備した放電ランプ2に対して、グロー球3を活用する形でインバータ4による点灯制御を実現することができる。
【0036】
また、グロー球3を装備した放電ランプ2と、図5(a)に示す安定器6とを備えた既設照明装置1の安定器6をインバータ4に置き換える場合、本発明に係るインバータ4を使用することにより、放電ランプ2と安定器6との間の配線をそのまま利用して放電ランプ2とインバータ4との間の配線を行うことができる。そのため、安定器6をインバータ4に置き換えるに際して配線の組み替えをする必要がなく、従来に比べて置き換え作業を簡略化することができ、工期短縮を図ることができる。
【0037】
(実施形態2)
図3は実施形態2に係る照明装置の構成例を示すブロック図である。図1に示す実施形態1の照明装置1との相違点は、ランプ状態測定部47が、ランプ電圧測定回路41とランプ電流測定回路43とで構成され、状態パラメータはランプ電圧測定回路41で測定されるランプ電圧と、ランプ電流測定回路43で測定されるランプ電流になるということ、及び、インバータ40の放電開始判定部42は、ランプ電圧測定回路41によるランプ電圧測定値だけでなく、ランプ電流測定回路43によるランプ電流測定値も入力し、両測定値から、ランプ電極21、22間の放電が開始したことを判定するという点である。その他については実施形態1と同様である。
【0038】
図2は、本実施形態2のランプ電圧、ランプ電流の時間変化をも示している。放電開始判定部42は、図2に示すように、電圧値V0、電流値I0を予め設定しておき、インバータ4がON状態となり、ランプ電圧測定値が電圧値V0を超え、且つランプ電流測定値が電流値I0を超えた初めてのときを、ランプ電極の予熱後で、グロー球3の電極が「開」状態になり、その結果ランプ電極間で放電が開始したときと判定する。この判定により放電開始判定部42は制御開始信号を発振回路40に出力する。これ以降は実施形態1と同じである。放電開始判定部42は、所定の判定期間を設け、判定に使用するランプ電圧測定値、およびランプ電流測定値として、それぞれの測定値の判定期間内の平均値を比較対象の測定値として使用しても良い。
【0039】
また、調光制御を考慮し、電圧値V0、電流値I0を固定値ではなく、それぞれの調光時に予め測定したランプ電圧値、及びランプ電流値に所定の割合を乗じて求めた値を、調光の設定値毎に予め規定しておき、放電開始判定部42は、この規定された値を判定に使用しても良い。また、それぞれの設計計算値に基づき設定しても良い。
【0040】
このように、実施形態2によれば、放電開始判定部42は、電圧、電流の2種類の測定値に基づき上述の判定を行うので、判定結果の信頼性が向上する。従って、実施形態2に依れば、より高い信頼性で、実施形態1で得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0041】
(実施形態3)
図4は実施形態3に係る照明装置の構成例を示すブロック図である。実施形態1との相違点は、ランプ状態測定部47が兼用するランプ電流測定回路43であり、このときの状態パラメータはランプ電流であること、及び放電開始判定部42は、ランプ電流測定回路43によるランプ電流の測定値だけを利用してランプ電極21、22間で放電が開始したことを判定することである。
【0042】
図2のランプ電流の時間変化を示す図は本実施形態3のランプ電流の時間変化をも示している。放電開始判定部42は、インバータ4がON状態となり、ランプ電流測定値が図2に示す予め設定された電流値I1とI0との間の値になったとき、ランプ電極21、22間の放電が開始されたと判定し、制御開始信号を発振回路40に出力する。
【0043】
放電開始判定部42は、ランプ電流測定値が、電流値I1を超え、その後所定の割合、もしくは値だけ低減したときに上述の判定を行っても良い。
【0044】
電流値I0については、これを、グロー球3が「閉」から「開」状態になったとき(図2の時刻t3〜t4間)のランプ電流値を超えず、グロー球3の電極間放電期間(図2の時刻t1〜t2間)のランプ電流値を超える値に設定し、電流値I1については、これを、グロー球3が「閉」状態のとき(図2の時刻t2〜t3間)のランプ電流値を超えず、グロー球3の電極間放電期間(図2の時刻t1〜t2間)のランプ電流値を超える値に設定する。
【0045】
電流値I1はグロー球3の電極が「開」から「閉」状態に移行したことに対応して設定された値で、電流値I0はグロー球3の電極間が一端「閉」状態を経由した後「開」状態になったときの放電に対応して設定された値である。従って、ランプ電流測定値に対する判定条件により、グロー球3が所期の動作を行った後、ランプ電極21、22間に放電が生じたことを確認することができる。
【0046】
また、実施形態1、2で説明したように、所定の判定期間を設け、放電開始判定部42はその間のランプ電流測定値の平均値と設定された電流値I0、I1とを比較して判定を行ってもよい。その他については実施形態1、または2と同様である。
【0047】
このように、本実施形態3によれば、放電開始判定部42は、ランプ電流測定値だけを利用することにより判定を行うことができる。そのためランプ電圧測定回路を装備する必要がなくなり、より簡単な構成で、実施形態1で得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0048】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0049】
(付記1)グロー球を備えた予熱型の放電ランプ用のインバータであって、
前記放電ランプに予熱電流または放電電流(併せてランプ電流と総称する)を供給する発振回路と、
前記ランプ電流を測定するランプ電流測定回路と、
前記放電ランプの状態を示す状態パラメータを測定するランプ状態測定部と、
前記状態パラメータの測定値に基づき、前記放電ランプの放電が開始したときを判定し、前記発振回路による前記ランプ電流の制御を開始するための制御開始信号を前記発振回路に出力する放電開始判定部と、
前記制御開始信号を受け、前記ランプ電流の測定値に基づき、該ランプ電流が所定の値になるように、前記発振回路を制御する電流制御信号を生成し、前記発振回路に出力する電流制御部と、
を備えることを特徴とする放電ランプ用のインバータ。
【0050】
(付記2)前記判定に使用する前記ランプ状態測定部の測定値は、所定の判定期間の平均値である、
ことを特徴とする付記1に記載の放電ランプ用のインバータ。
【0051】
(付記3)前記ランプ状態測定部は、前記放電ランプの放電電極間の電圧であるランプ電圧を測定するランプ電圧測定回路で構成され、
前記状態パラメータは、前記ランプ電圧である、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の放電ランプ用のインバータ。
【0052】
(付記4)前記ランプ状態測定部は、兼用する前記ランプ電流測定回路で構成され、
前記状態パラメータは、前記ランプ電流である、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の放電ランプ用のインバータ。
【0053】
(付記5)前記ランプ状態測定部は、
兼用する前記ランプ電流測定回路と、
前記放電ランプの放電電極間の電圧であるランプ電圧を測定するランプ電圧測定回路と、で構成され、
前記状態パラメータは、前記ランプ電圧と前記ランプ電流である、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の放電ランプ用のインバータ。
【0054】
(付記6)前記放電開始判定部は、前記インバータがON状態になった後、初めて前記ランプ電圧の測定値が、互いに異なる値としてあらかじめ設定された第1の電圧値と第2の電圧値との間の値になったときを、前記放電ランプの放電が開始したときと判定する、
ことを特徴とする付記3に記載の放電ランプ用のインバータ。
【0055】
(付記7)前記放電開始判定部は、前記ランプ電圧の測定値が、前記インバータがON状態になり、初めて所定の電圧値を超えた後、所定時間以上、前記所定の電圧値を超えず、その後初めて前記所定の電圧値を超えたときを、前記放電ランプの放電が開始したときと判定する、
ことを特徴とする付記3に記載の放電ランプ用のインバータ。
【0056】
(付記8)前記放電開始判定部は、前記ランプ電流の測定値が、互いに異なる値である第1の電流値と第2の電流値との間の値になったときを、前記放電ランプの放電が開始したときと判定する、
ことを特徴とする付記4に記載の放電ランプ用のインバータ。
【0057】
(付記9)前記放電開始判定部は、前記ランプ電圧の測定値が所定の電圧値を超え、且つ前記ランプ電流の測定値が所定の電流値を超えた、初めてのときを、前記放電ランプの放電が開始したときと判定する、
ことを特徴とする付記5に記載の放電ランプ用のインバータ。
【0058】
(付記10)グロー球を備えた予熱型の放電ランプと、電極予熱電流または所定値に制御した放電電流をランプ電流として前記放電ランプに供給するインバータとを備える照明装置であって、
前記インバータは、
前記放電ランプに前記ランプ電流を供給する発振回路と、
前記ランプ電流を測定するランプ電流測定回路と、
前記放電ランプの状態を示す状態パラメータを測定するランプ状態測定部と、
前記状態パラメータの測定値に基づき、前記放電ランプの放電が開始したときを判定し、前記発振回路による前記ランプ電流の制御を開始するための制御開始信号を前記発振回路に出力する放電開始判定部と、
前記制御開始信号を受け、前記ランプ電流の測定値に基づき、該ランプ電流が所定の値になるように、前記発振回路を制御する電流制御信号を生成し、前記発振回路に出力する電流制御部と、
を備えることを特徴とする照明装置。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、照明装置用のインバータとして、及び照明装置として利用できるとともに、グロー球を装備した放電ランプと安定器とを備えた既設照明装置の安定器を本発明のインバータに置き換えるという置き換え工事にも利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 照明装置
2 放電ランプ
3 グロー球
4 インバータ
5 電源
6 安定器
21、22 ランプ電極
40 発振回路
41 ランプ電圧測定回路
42 放電開始判定部
43 ランプ電流測定回路
44 電流制御部
45 整流回路・力率改善回路
46 調光回路
47 ランプ状態測定部
211、212 ランプ電極21の電極端子
221、222 ランプ電極22の電極端子
401、402 インバータ4の電流出力端子
L1 インダクタンス
C1 容量
R1、R2 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グロー球を備えた予熱型の放電ランプ用のインバータであって、
前記放電ランプに予熱電流または放電電流(併せてランプ電流と総称する)を供給する発振回路と、
前記ランプ電流を測定するランプ電流測定回路と、
前記放電ランプの状態を示す状態パラメータを測定するランプ状態測定部と、
前記状態パラメータの測定値に基づき、前記放電ランプの放電が開始したときを判定し、前記発振回路による前記ランプ電流の制御を開始するための制御開始信号を前記発振回路に出力する放電開始判定部と、
前記制御開始信号を受け、前記ランプ電流の測定値に基づき、該ランプ電流が所定の値になるように、前記発振回路を制御する電流制御信号を生成し、前記発振回路に出力する電流制御部と、
を備えることを特徴とする放電ランプ用のインバータ。
【請求項2】
前記判定に使用する前記ランプ状態測定部の測定値は、所定の判定期間の平均値である、
ことを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ用のインバータ。
【請求項3】
前記ランプ状態測定部は、前記放電ランプの放電電極間の電圧であるランプ電圧を測定するランプ電圧測定回路で構成され、
前記状態パラメータは、前記ランプ電圧である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の放電ランプ用のインバータ。
【請求項4】
前記ランプ状態測定部は、兼用する前記ランプ電流測定回路で構成され、
前記状態パラメータは、前記ランプ電流である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の放電ランプ用のインバータ。
【請求項5】
前記ランプ状態測定部は、
兼用する前記ランプ電流測定回路と、
前記放電ランプの放電電極間の電圧であるランプ電圧を測定するランプ電圧測定回路と、で構成され、
前記状態パラメータは、前記ランプ電圧と前記ランプ電流である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の放電ランプ用のインバータ。
【請求項6】
前記放電開始判定部は、前記インバータがON状態になった後、初めて前記ランプ電圧の測定値が、互いに異なる値としてあらかじめ設定された第1の電圧値と第2の電圧値との間の値になったときを、前記放電ランプの放電が開始したときと判定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の放電ランプ用のインバータ。
【請求項7】
前記放電開始判定部は、前記ランプ電圧の測定値が、前記インバータがON状態になり、初めて所定の電圧値を超えた後、所定時間以上、前記所定の電圧値を超えず、その後初めて前記所定の電圧値を超えたときを、前記放電ランプの放電が開始したときと判定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の放電ランプ用のインバータ。
【請求項8】
前記放電開始判定部は、前記ランプ電流の測定値が、互いに異なる値である第1の電流値と第2の電流値との間の値になったときを、前記放電ランプの放電が開始したときと判定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の放電ランプ用のインバータ。
【請求項9】
前記放電開始判定部は、前記ランプ電圧の測定値が所定の電圧値を超え、且つ前記ランプ電流の測定値が所定の電流値を超えた、初めてのときを、前記放電ランプの放電が開始したときと判定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の放電ランプ用のインバータ。
【請求項10】
グロー球を備えた予熱型の放電ランプと、電極予熱電流または所定値に制御した放電電流をランプ電流として前記放電ランプに供給するインバータとを備える照明装置であって、
前記インバータは、
前記放電ランプに前記ランプ電流を供給する発振回路と、
前記ランプ電流を測定するランプ電流測定回路と、
前記放電ランプの状態を示す状態パラメータを測定するランプ状態測定部と、
前記状態パラメータの測定値に基づき、前記放電ランプの放電が開始したときを判定し、前記発振回路による前記ランプ電流の制御を開始するための制御開始信号を前記発振回路に出力する放電開始判定部と、
前記制御開始信号を受け、前記ランプ電流の測定値に基づき、該ランプ電流が所定の値になるように、前記発振回路を制御する電流制御信号を生成し、前記発振回路に出力する電流制御部と、
を備えることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−210406(P2011−210406A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74564(P2010−74564)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】