説明

放電加工方法およびこれに用いる加工電極

【課題】 加工品質の高品質化および低コスト化を容易に図ることのできる放電加工方法およびこれに用いる加工電極を提供する。
【解決手段】 導電性を有する素材により形成された電極本体2と、導電性を有する素材により形成された電極チップ3と、電極チップ3を電極本体2の先端に着脱自在に保持するための保持手段6とにより加工電極1を形成し、放電加工時には、電極本体2の先端に、電極チップ3を保持し、この電極チップ3をアーク放電に用いる電極端として加工対象物Wに放電加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工品質の高品質化および低コスト化を図るのに好適な放電加工方法およびこれに用いる加工電極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、放電現象を利用して加工対象物を加工する放電加工が知られている。この放電加工は、絶縁性を有する加工液中で、工具電極である加工電極の先端と加工対象物とを数μm〜数十μmの放電ギャップと称される間隙をおいて対向させ、加工対象物と加工電極の先端面との間に数十V〜数百Vの電圧を印加することによりアーク放電を繰返し発生させ、その熱と圧力の作用で加工対象物の表面の一部、詳しくは、加工対象物の加工電極の先端面と対向する部分を溶融除去するものである。
【0003】
このような放電加工は、放電を行う加工電極の形状に応じた加工ができるため、一般の機械加工が困難な材質や複雑な形状の加工に使用されている。
【0004】
なお、放電加工は、加工電極を回転させながら、加工対象物および/または加工電極を数値制御(NC)により移動させることで、フライス加工と同様な3次元加工も可能である。
【0005】
さらに、放電加工は、加工液として電解液を用いることなどにより非金属の加工を行うこともできる。
【0006】
図3は、一般的な放電加工装置の一例を示すものであり、この放電加工装置Mは、絶縁性を有する加工液Lが貯留される加工槽M01を有している。この加工槽M01の内部には、加工対象物Wを着脱自在に固定するための加工テーブルM02が配設されており、この加工テーブルM02の上面に加工対象物Wが固定されるようになっている。また、加工槽M01に貯留される加工液Lの液量は、加工液L中に加工対象物Wが浸漬されるように設定されている。
【0007】
前記加工テーブルM02の上方には、棒状に形成された加工電極101がその先端を下方に向けて配設されている。この加工電極101は、図3の上方に示す基端部がサーボ機構を備えた送り装置M03により着脱自在に保持されており、送り装置M03により加工電極101の先端が加工対象物Wの加工部分に対して接離するように上下方向に移動自在とされている。そして、放電加工時には、送り装置M03により加工電極101と加工対象物Wとが放電ギャップと称される所定の間隙Gを保持するように形成されている。
【0008】
前記加工電極101と加工対象物Wとは、ケーブルCを介して高周波パルス発生装置M04に接続されており、放電加工時には、高周波パルス発生装置M04から供給されるパルスにより間隙Gに放電アークが繰返し発生するように形成されている。
【0009】
前記加工槽M01には、加工槽M01の内部の加工液Lを循環使用するための配管PLが配設されており、配管PLの途中には、常時は閉状態とされたバルブV、加工液Lを正常に保持するためのドレン付きのストレーナSおよびポンプPが図3の反時計方向にて示す加工液Lの流動方向の上流側から下流側に向かってこの順に配設されている。
【0010】
なお、送り装置M03としては、加工電極101を上下動させるとともに回転させる構成や、加工電極101を3次元方向に移動させる構成のものもあり、加工対象物Wに対する加工形状に応じて選択使用されている。
【0011】
このような放電加工装置1においては、加工対象物Wに対して放電加工を行う場合、一般的には市販の加工電極101の先端の形状を、加工形状に応じた形状に整形して使用している。
【0012】
例えば、加工対象物Wに断面円形の穴加工を行う場合には、市販の加工電極101の電極端となる先端を、所定の寸法の円柱状に整形している。勿論、目的とする加工形状に応じたものがあれば、円柱状に形成された市販の加工電極101をそのまま使用する場合もある。
【0013】
また、加工対象物Wに欠球面状あるいは半球面状などの窪みや溝を形成する場合には、図4に示すように、加工電極101の電極端となる先端101aを、例えば、プロファイル加工などの精密な加工機で高精度の半球状に整形している。
【0014】
ところで、放電加工においては、加工が進むにつれて加工電極101それ自体、詳しくは、アーク放電に用いる電極端となる先端101a部分も放電によって消耗するために、徐々に先端101aの当初の形状が失われて行き、さらには加工電極の先端101aの形状に倣う加工対象物Wの形状も、目的とする形状から逸脱して加工されてしまう。
【0015】
このため、同一の加工電極101で長時間加工を行う場合、例えば、加工対象物Wに対して市販の加工電極101の先端101aの形状では得られない凹曲面などの形状を多数形成する場合には、定期的に加工電極101の形状を測定して、その形状が基準から逸脱した場合は、加工を停止して、放電加工装置1から加工電極101を取り外し、取り外した加工電極101の先端101aの形状の再整形を行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、従来の加工電極101による放電加工では、近年の高品質化および低コスト化の要求に応えることができないという問題点があった。
【0017】
例えば、従来の加工電極101の先端101aの形状の再整形では、10μ程度の加工誤差は避けられず、再整形の前後で加工精度にバラツキが生じ、加工品質に劣るという問題点があった。
【0018】
また、加工電極101の再整形には、多大な時間とコストが必要になるという問題点があった。
【0019】
さらに、加工電極101の再整形による放電加工装置1の加工の停止時間が長いという問題点もあった。
【0020】
そこで、加工品質の高品質化および低コスト化を容易に図ることのできる放電加工方法およびこれに用いる加工電極が求められている。
【0021】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、加工品質の高品質化および低コスト化を容易に図ることのできる放電加工方法およびこれに用いる加工電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前述した目的を達成するため、本発明に係る放電加工方法の特徴は、絶縁性の加工液中で加工電極と加工対象物とを対向させ、前記加工電極と前記加工対象物との間にアーク放電を繰り返し発生させることにより前記加工対象物の一部を溶融除去する放電加工方法において、前記加工電極を、導電性を有する素材により形成された電極本体と、この電極本体に対し着脱自在とされており導電性を有する素材により形成された電極チップとにより構成し、放電加工時には、前記電極本体の先端に、前記電極チップを保持し、この電極チップをアーク放電に用いる電極端として前記加工対象物に放電加工を行う点にある。
【0023】
本発明に係る放電加工方法においては、前記電極チップを磁性を有する素材により形成し、前記電極チップを前記電極本体の先端に磁力により保持することが好ましく、また、前記電極チップとして玉軸受用鋼球を用いることが好ましい。
【0024】
本発明に係る加工電極の特徴は、放電加工に用いる加工電極において、導電性を有する素材により形成された電極本体と、導電性を有する素材により形成された電極チップと、前記電極チップを前記電極本体の先端に着脱自在に保持するための保持手段とを有している点にある。
【0025】
本発明に係る加工電極においては、前記保持手段が、磁性を有する素材により形成された電極チップと、磁石とを有していることが好ましく、また、前記電極チップが、玉軸受用鋼球であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る放電加工方法によれば、加工電極の電極端が消耗した場合、加工電極の電極端の再整形を電極チップの交換という簡便な方法により代替することができるので、加工の停止時間を短くすることができるし、電極チップの交換の前後における加工品質を同一に保持することができる。その結果、加工品質の高品質化および低コスト化を容易に図ることができる。
【0027】
また、本発明の加工電極によれば、加工電極の電極端となる電極チップを容易に交換することができるので、本発明に係る放電加工方法を確実かつ容易に実施することができる。その結果、加工の停止時間を短くすることができるし、電極チップの交換の前後における加工品質を同一に保持することができるので、加工品質の高品質化および低コスト化を容易に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。なお、前述した従来のものと同一ないし相当する構成については図面中に同一の符号を付しその詳しい説明は省略する。
【0029】
図1は本発明に係る加工電極の実施形態の加工状態における要部を示す模式図である。
【0030】
本実施形態の加工電極は、加工対象物に欠球面状あるいは半球面状の窪みや溝を形成するものを例示している。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の放電加工に用いる加工電極1は、電極本体2と、電極チップ3と、磁石4とを有している。
【0032】
前記電極本体2は、図1の上端が送り装置(図3の符号105)のチャックに着脱自に取着されるものであり、導電性を有する素材により円柱状の棒状に形成されている。そして、電極本体2は、従来と同様に、ケーブル(図3の符号106)を介して高周波パルス発生装置(図3の符号107)に接続されている。また、電極本体2の先端である下端面には、上方に向かって小径のテーパ状のチップ受け5が凹設されている。このチップ受け5は、電極チップ3の取付部として機能するものであり、電極チップ3との対向部位の形状に応じて多種多様の形状から選択使用することができるが、テーパ状やインロー構造などの位置決め機能を有するものであることが好ましい。
【0033】
なお、電極本体2としては、市販されている円柱状、ブロック状、円筒状、プレート状などの各種のものを、そのままの形状あるいは所定の形状に加工して用いてもよい。
【0034】
また、電極本体2の素材としては、コバルトなどの磁性成分を加えることで、導電性および磁性を有するものを用いてもよい。
【0035】
前記電極チップ3は、加工対象物Wに放電加工を行う際に、加工電極1のアーク放電に用いる電極端として機能するものであり、電極本体2の先端たる下端に取着されている。この電極チップ3は、磁性および導電性を有する素材により形成されており、本実施形態においては、加工対象物Wに欠球面状あるいは半球面状などの窪みや溝を形成するために、市販されている球体、詳しくは高精度の玉軸受用鋼球3aが用いられている。
【0036】
なお、電極チップ3の形状としては、加工対象物Wの加工形状に応じて各種の形状から選択することができる。
【0037】
例えば、加工対象物WにV溝を加工する場合には、図2に示すように、電極チップ3Aとして、市販されている算盤玉状のものを用いるとよい。
【0038】
なお、電極チップ3としては、玉軸受用鋼球3aに限らず、テーパピン、平行ピン、円筒コロ、円すいコロ、キーなどの高精度で、入手性がよく、しかも低価格な市販品を用いることができる。勿論、電極チップ3として、予め加工対象物Wの加工形状に応じた所定形状に形成したものを複数用意して用いてもよい。
【0039】
また、電極チップ3としては、電極本体2のチップ受け5との対向部位に、インロー構造などの電極本体2との相互間で位置決めを容易に行うことのできる取付部を設けるとよい。
【0040】
前記磁石4は、電極チップ3を電極本体2の先端に磁力により着脱自在に保持させるためのものであり、本実施形態においては、環状に形成された永久磁石4aが用いられている。なお、磁石4としては、設計コンセプトなどの必要に応じて電磁石を用いてもよい。
【0041】
前記永久磁石4aは、その軸方向である図1の上下方向の両側に磁極が形成されるように着磁されている。そして、永久磁石4aの径方向内側、詳しくは、永久磁石4aの内孔に電極本体2がその長手方向を平行にして配置されている。
【0042】
本実施形態の永久磁石4aとしては、初期の磁束密度が、100000μテスラ(1000ガウス)以上のもの、本実施形態においては360000μテスラ(3600ガウス)程度のものが用いられている。この磁束密度は、仕様、設計コンセプトなどの必要に応じて設定すればよい。
【0043】
なお、永久磁石4aを所定位置に保持する構成としては、永久磁石4aの磁力を用いる構成や、取付ステーを用いて永久磁石4aを保持する構成などから選択使用することができる。
【0044】
具体的には、加工電極1の電極本体2を着脱自在に保持する送り装置のチャックが磁性体により形成されているのが一般的なので、永久磁石4aの上端面をチャックに直接吸着させる構成としたり、電極本体2をコバルトなどの磁性成分を含有する素材により形成して樹脂などの非磁性体により形成された磁石保持部材を介して電極本体2の外周の上部に永久磁石4aを吸着させる構成や、加工槽(図3の符号102)あるいは加工テーブル(図3の符号103)に設けた移動自在な磁石取付ステーを用いて固定保持する構成を挙げることができる。そして、このような構成を採用することで、既存の放電加工装置に磁石4を容易かつ確実に設置することができる。
【0045】
なお、磁石4として電磁石を用いると、電磁石4に対する通電の有無により、電極チップ3の着脱を自動的に行うことができるので、電極チップ3を自動的に交換することができる。
【0046】
前記導電性および磁性を有する素材により形成された電極チップ3と、磁石4とにより、本実施形態の電極チップ3を電極本体2の先端に着脱自在に保持するための保持手段6が構成されている。
【0047】
なお、保持手段6としては、磁力を用いずに電極チップ3を電極本体2の先端に着脱自在に保持することのできる構成、例えば、エアカプラのようなワンタッチジョイントを用いてもよい。勿論、インロー構造などの電極本体2と電極チップ3との相互間で位置決めを容易に行うことのできる取付部を設けることが肝要である。
【0048】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について本発明の放電加工方法とともに説明する。
【0049】
本実施形態の放電加工方法は、前述した図1に示す本実施形態の加工電極1を用いて実施する。
【0050】
本実施形態の加工電極1による放電加工は、電極本体2の先端に、電極チップ3を磁石4の磁力により保持して行う。
【0051】
すなわち、送り装置のチャックに電極本体2の上端を取り付ける。そして、永久磁石4aの内孔を電極本体2に挿入し、電極本体2の上端側の周囲に永久磁石4aを配置する。
【0052】
ついで、電極チップ3としての玉軸受用鋼球3aを電極本体2の先端のチップ受け5にセットする。これにより、玉軸受用鋼球3aは、永久磁石4aの磁力によってテーパ状のチップ受け5に吸着保持されるとともに、チップ受け5の内部において、永久磁石4aの磁力によって電極本体2の上端に向かう力を受けて自動調心される。
【0053】
すなわち、電極本体2の先端に形成されたテーパ状のチップ受け5は、電極本体2の先端に磁力により取着される玉軸受用鋼球3aの位置決め機能を兼ね備えている。
【0054】
ついで、従来と同様にして、加工対象物Wへの放電加工を行う。これにより、加工対象物Wの加工部位に、欠球面状あるいは半球面状などの窪みや溝を形成することができる。
【0055】
この時、永久磁石4aの磁力により電極本体2の先端に吸着された玉軸受用鋼球3aが導電性を有しているため、玉軸受用鋼球3aの表面が加工対象物Wとの相互間におけるアーク放電に用いる電極端として機能する。
【0056】
また、放電加工は、加工電極1の電極端となる玉軸受用鋼球3aと加工対象物Wの加工部位との相互間が非接触であるため、加工中における玉軸受用鋼球3aには、大きな外力が加わらない。
【0057】
したがって、玉軸受用鋼球3aを電極本体2に吸着保持するのに必要な磁力としては、人手により玉軸受用鋼球3aを簡単に着脱できる程度に小さいものであっても、玉軸受用鋼球3aが電極本体2から脱落することはない。
【0058】
また、玉軸受用鋼球3aは、等級により1μmあるいはそれ以下と寸法精度が高く、このような玉軸受用鋼球3aを加工電極1の電極端として用いることで、形状が転写される加工対象物Wの加工部位においても高い寸法精度を得ることができるとともに、玉軸受用鋼球3aを交換してもバラツキの少ない高い加工品質を容易に得ることができる。
【0059】
またさらに、加工対象物Wに対する一般的な放電加工では、玉軸受用鋼球3aの表面は、加工対象物Wの加工部位と対向している一部が電極端として使用されるので、放電加工時間の増加にともなって一部が消耗する。この場合、加工を停止して、玉軸受用鋼球3aを回転させて、それまで使用していなかった面を加工対象物Wに向けることで、再び初期と同一条件による放電加工を行うことができる。
【0060】
さらに、玉軸受用鋼球3aの消耗が広範囲に至った場合には、加工を停止して、人手により電極本体2から使用に供した玉軸受用鋼球3aを永久磁石4aの磁力に抗して取り外し、新たな玉軸受用鋼球3aを電極本体2の先端のチップ受け5にセットするという玉軸受用鋼球3aの交換を簡単に行うことで、容易に初期状態(交換前と同一の状態)での放電加工を行うことができる。
【0061】
なお、加工電極1を回転させるとともに、加工電極1を傾斜させることで、玉軸受用鋼球3aの電極端として使用する表面積を大きくすることができる。その結果、玉軸受用鋼球3aの消耗部分が広い面積に分散するので、玉軸受用鋼球3aの使用時間を長くすることができる。すなわち、玉軸受用鋼球3aの精度を長時間に亘り保持させることができる。
【0062】
また、電極本体2は、放電加工により消耗しないので交換不要であるため、サイズの異なる玉軸受用鋼球3aを磁力により保持させることができる。その結果、加工対象物Wに形成する加工部位のサイズの変更を容易に行うことができる。
【0063】
さらに、加工電極1を回転させながら、加工対象物Wおよび/または加工電極1を数値制御により移動させることで、直線状、環状、曲線状などの溝加工を容易に行うこともできる。
【0064】
このように、本実施形態の放電加工方法によれば、加工電極1を、導電性を有する素材により形成された電極本体2と、この電極本体2に対し着脱自在とされており導電性を有する素材により形成された電極チップ3とにより構成し、放電加工時には、電極本体2の先端に、電極チップ3を保持し、この電極チップ3をアーク放電に用いる電極端として加工対象物Wに放電加工を行うことができるので、加工電極1の電極端としての電極チップ3が消耗した場合、消耗した電極チップ3を新たな電極チップ3に容易に交換することができる。
【0065】
したがって、従来の加工電極101の電極端の再整形を電極チップ3の交換という簡便な方法により代替することができる。
【0066】
また、電極チップ3の交換は、従来の加工電極101の電極端の再整形と異なり、交換前後の加工精度を同一に保持することが容易にできる。
【0067】
したがって、本実施形態の放電加工方法によれば、加工電極1の電極端が消耗した場合における加工停止時間を短くすることができるとともに、加工精度のバラツキを少なくすることができるので、加工品質の高品質化および低コスト化を容易に図ることができる。
【0068】
また、本実施形態の放電加工方法によれば、電極チップ3を磁性を有する素材により形成し、電極チップ3を電極本体2の先端に磁力により保持することができるので、人手による操作によって電極本体2に対し電極チップ3を簡単かつ短時間で着脱して交換することが容易にできる。
【0069】
さらに、本実施形態の放電加工方法によれば、電極チップ3として玉軸受用鋼球3aを用いているので、加工対象物Wに欠球面状あるいは半球面状などの窪みや溝を形成するための高精度の球体を容易かつ低コストで入手することができる。
【0070】
すなわち、玉軸受用鋼球3aは、安価で市場に供給されているので、損耗した玉軸受用鋼球3aを新たなものと交換したとしても、従来の加工電極1を再生整形する場合に比べて、加工精度のバラツキをより少なくすることができるとともに、交換に要する費用を低減することができるし、交換に要する時間を短くすることができる。
【0071】
本実施形態の加工電極1によれば、導電性を有する素材により形成された電極本体2と、導電性を有する素材により形成された電極チップ3と、電極チップ3を電極本体2の先端に着脱自在に保持するための保持手段6とを有しているので、放電加工時に、電極チップ3をアーク放電に用いる電極端として加工対象物Wに放電加工を行うことができるとともに、電極チップ3の交換を容易に行うことができる。
【0072】
したがって、従来の加工電極101の電極端の再整形を電極チップ3の交換という簡便な方法により代替することができる。
【0073】
また、電極チップ3の交換は、従来の加工電極101の電極端の再整形と異なり、交換前後の加工精度を同一に保持することが容易にできる。
【0074】
したがって、本実施形態の加工電極1によれば、本発明の放電加工方法、すなわち、加工電極1を、導電性を有する素材により形成された電極本体2と、この電極本体2に対し着脱自在とされており導電性を有する素材により形成された電極チップ3とにより構成し、放電加工時には、電極本体2の先端に、電極チップ3を保持し、この電極チップ3をアーク放電に用いる電極端として加工対象物Wに放電加工を行う放電加工方法を簡便な構成で確実かつ容易に実施することができる。
【0075】
よって、本実施形態の加工電極1によれば、加工品質の高品質化および低コスト化を容易に図ることができる。
【0076】
また、本実施形態の加工電極1によれば、保持手段6が磁性を有する素材により形成された電極チップ3と磁石4とを有しているので、電極本体2の先端に電極チップ3を磁石4の磁力により着脱自在に保持させることが容易かつ確実にできる。
【0077】
したがって、本実施形態の加工電極1によれば、本発明の放電加工方法、すなわち、電極チップ3を磁性を有する素材により形成し、電極チップ3を電極本体2の先端に磁力により保持して放電加工を行う放電加工方法を簡便な構成で確実かつ容易に実施することができる。
【0078】
さらに、本実施形態の加工電極1によれば、電極チップ3が、玉軸受用鋼球3aであるので、加工対象物Wに欠球面状あるいは半球面状などの窪みや溝を形成するための高精度の球体を容易かつ低コストで入手することができる。
【0079】
したがって、本実施形態の加工電極1によれば、本発明の放電加工方法、すなわち、電極チップ3として玉軸受用鋼球3aを用いる放電加工方法を簡便な構成で確実かつ容易に実施することができる。
【0080】
よって、本実施形態の放電加工方法およびこれに用いる加工電極1によれば、加工品質の高品質化および低コスト化を容易に図ることができる。
【0081】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る放電加工方法を実施する加工電極の実施形態の要部を示す模式図
【図2】図1の加工電極の電極チップの変形例を示す図1と同様の図
【図3】一般的な放電加工装置の要部を示す模式図
【図4】従来の加工対象物に欠球面状あるいは半球面状などの窪みや溝を形成する場合に用いる加工電極の要部を示す模式図
【符号の説明】
【0083】
1 加工電極
2 電極本体
3、3A 電極チップ
3a 玉軸受用鋼球
4 磁石
4a 永久磁石
5 チップ受け
G 間隔
W 加工対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の加工液中で加工電極と加工対象物とを対向させ、前記加工電極と前記加工対象物との間にアーク放電を繰り返し発生させることにより前記加工対象物の一部を溶融除去する放電加工方法において、
前記加工電極を、導電性を有する素材により形成された電極本体と、この電極本体に対し着脱自在とされており導電性を有する素材により形成された電極チップとにより構成し、放電加工時には、前記電極本体の先端に、前記電極チップを保持し、この電極チップをアーク放電に用いる電極端として前記加工対象物に放電加工を行うことを特徴とする放電加工方法。
【請求項2】
前記電極チップを磁性を有する素材により形成し、前記電極チップを前記電極本体の先端に磁力により保持することを特徴とする請求項1に記載の放電加工方法。
【請求項3】
前記電極チップとして玉軸受用鋼球を用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放電加工方法。
【請求項4】
放電加工に用いる加工電極において、
導電性を有する素材により形成された電極本体と、
導電性を有する素材により形成された電極チップと、
前記電極チップを前記電極本体の先端に着脱自在に保持するための保持手段とを有していることを特徴とする放電加工に用いる加工電極。
【請求項5】
前記保持手段が、磁性を有する素材により形成された電極チップと、磁石とを有していることを特徴とする請求項4に記載の放電加工に用いる加工電極。
【請求項6】
前記電極チップが、玉軸受用鋼球であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の放電加工に用いる加工電極。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−949(P2007−949A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181599(P2005−181599)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(394005708)株式会社東京ダイス (5)
【Fターム(参考)】