説明

放電加工機

【課題】 水と油を混合して得られる加工液に減少量分の水を供給することができる放電加工機を提供する。
【解決手段】ワークWと加工電極Eを水と油を混合して得られる加工液に浸漬する加工槽5を備えワークWの放電加工を行う放電加工機1において、加工液の重量を測定する測定装置30と、加工液に水を供給する水供給装置40と、測定装置30により測定された加工液の重量に基づいて該加工液中の水の減少量を演算する演算手段72および該演算手段72により演算された減少量に基づいて水供給装置40を動作させる制御信号を生成する制御信号生成手段74を有する制御装置50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電加工機に関し、特に水と油を混合して得られる加工液に減少量分の水を供給する構成を備えた放電加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
放電加工は、加工液にワークと加工電極を浸漬した状態で該ワークと加工電極との間に形成される極間に放電を発生させつつ行うものであり、加工液には、特許文献1および特許文献2に開示されるように、加工速度の向上を図るべく水と油を混合したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−181522号公報
【特許文献2】特開昭58−181900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、放電加工においては極間が高温にさらされて加工液中の水分量が低下し、あるいは自然蒸発により水分量が低下することがある。このように水と油を混合した加工液中において水分量が低下すると、加工速度が大幅に低下する等、安定した放電加工を妨げる一因となり、その問題解決が強く望まれていた。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、水と油を混合して得られる加工液に減少量分の水を供給することができる放電加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、放電加工機に係る請求項1の発明は、ワークの放電加工を行う加工電極と、前記ワークと前記加工電極を水と油を混合して得られる加工液に浸漬する加工槽と、を備える放電加工機において、前記加工液の重量を測定する測定装置と、前記加工液に水を供給する水供給装置と、前記測定装置により測定された加工液の重量に基づいて該加工液中の水の減少量を演算する演算手段および該演算手段により演算された減少量に基づいて前記水供給装置を動作させる制御信号を生成する制御信号生成手段を有する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、前記加工液の重量を測定する測定装置と、前記加工液に水を供給する水供給装置と、前記測定装置により測定された加工液の重量に基づいて該加工液中の水の減少量を演算する演算手段および該演算手段により演算された減少量に基づいて前記水供給装置を動作させる制御信号を生成する制御信号生成手段を有する制御装置と、を備えることとしたので、減少量分の水を加工液に確実に供給することができる。
【0008】
ここで、前記演算手段は、前記加工液の重量に基づいて該加工液の密度を演算しつつ前記加工液中の水の減少量を演算することとすることができる(請求項2)。すなわち、加工液を構成する水と油は密度差が大きいので、加工液の密度に基づく加工液中の水の減少量の演算を正確に行うことができる。
前記測定装置は、前記加工液を一定の体積貯留し該加工液の重量の測定に供する測定用タンクと、該測定用タンクに貯留された加工液の重量を測定する重量測定器と、を有することとすれば、加工液の密度の演算を簡素化することができる(請求項3)。
【0009】
前記測定装置は、前記加工液を前記測定用タンクに供給する加工液供給手段と前記測定用タンク内の加工液を排出する加工液排出手段を有するとともに、前記制御信号生成手段は、前記加工液の重量の測定開始前に、前記加工液排出手段を動作させる制御信号を生成し、かつ、該加工液排出手段の動作終了後に前記加工液供給手段を動作させる制御信号を生成することとすれば、測定用タンクに最新の加工液を貯留しつつ重量の測定を行うことが可能となる(請求項4)。
【0010】
前記加工液排出手段は、排出ポンプ、前記測定用タンクから前記排出ポンプに至る吸い込みライン、および前記排出ポンプの吐出ラインを有し、前記吸い込みラインは、前記測定用タンク内から前記測定用タンクの上端開口を介して前記排出ポンプに至り前記測定用タンクと非接続とすることとすれば、排出ポンプの吸い込みラインが測定用タンクに干渉することなく加工液の重量を測定することができ、該測定を正確に行うことができる(請求項5)。
なお、前記制御装置は、該制御装置を前記演算手段として機能させるプログラムを記憶する記憶手段を有することとすることができる(請求項6)。
【0011】
上記目的を達成するために、放電加工機に係る請求項7の発明は、ワークの放電加工を行う加工電極と、前記ワークと前記加工電極を水と油を混合して得られる加工液に浸漬する加工槽と、該加工槽に前記加工液を循環供給する加工液循環供給系統と、を備える放電加工機において、前記加工槽から排出された汚れた加工液を貯留する汚液槽、該汚液槽の汚れた加工液を清澄化しつつ貯留し該貯留した加工液を前記加工槽に供給する清水槽、および液面レベルを検出する第1の液面検出器を有し前記加工液を前記加工槽に循環供給するサービスタンクと;液面レベルを検出する第2の液面検出器を有し前記サービスタンクに貯留された加工液の一部を一定体積貯留し該加工液の重量の間欠的な測定に供する測定用タンク、前記加工液を前記測定用タンクに供給する供給ポンプと前記サービスタンク内の下部から前記供給ポンプに至る吸い込みラインと前記供給ポンプから前記測定用タンクの上端開口を介して前記測定用タンク内に至り前記測定用タンクと非接続の吐出ラインを有する加工液供給手段、前記測定用タンクから前記サービスタンクに前記加工液を排出する排出ポンプと前記測定用タンクの下部から前記測定用タンクの上端開口を介して前記排出ポンプに至り前記測定用タンクと非接続の吸い込みラインを有する加工液排出手段、および前記測定用タンクに貯留された加工液の重量を測定する重量測定器を有する測定装置と;流量計を有し、前記サービスタンクに水を計測しつつ供給する水供給装置と;演算手段、制御信号生成手段、および記憶手段を有する制御装置と;を備え、前記演算手段は、前記測定用タンクの液面レベルに基づいて該測定用タンクに貯留された加工液の体積を演算するとともに、該加工液の体積と前記加工液の重量に基づいて前記加工液の密度を演算し、かつ、前記サービスタンクの液面レベルに基づいて該サービスタンクに貯留された加工液の体積を演算し、更に前記加工液の密度、前記水の密度、および前記油の密度に基づいて前記測定用タンクにおける加工液中の水の濃度を演算しつつ、該演算した水の濃度、前記サービスタンクに貯留された加工液の体積、および予め設定された水の濃度の目標値に基づいて前記サービスタンクにおける水の減少量を演算し、前記制御信号生成手段は、前記流量計により計測された流量が前記演算手段により演算された前記サービスタンクにおける水の減少量に達するまで前記水供給装置を動作させる制御信号、前記加工液の重量の測定開始前に、前記測定用タンクの液面レベルが下限値に達するまで前記排出ポンプを動作させる制御信号、および前記排出ポンプの動作終了後に、前記測定用タンクの液面レベルが設定値に達するまで前記供給ポンプを動作させる制御信号を、一定の間隔を置いて間欠的に生成し、前記記憶手段は、前記制御装置を前記演算手段および前記制御信号生成手段として機能させるプログラムを記憶することを特徴とする。
本発明によれば、減少量分の水を加工液に確実に供給することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加工液に減少量分の水を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る放電加工機の全体構成の概略を示す正面図である。
【図2】放電加工機における加工液循環供給系統の構成を示す系統図である。
【図3】制御装置の構成の概要を示すブロック図である。
【図4】制御装置による水の供給方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の変形例に係る加工液循環供給系統の構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の実施形態を示すワイヤ放電加工機の全体構成の概要を示す正面図である。同図を参照してワイヤ放電加工機1の概要を説明すると、ワイヤ放電加工機1は、上側ガイド組体2と下側ガイド組体3との間に加工電極としてのワイヤ電極Eを連続的に供給し、ワークスタンド4に取り付けられたワークWとワイヤ電極Eを加工槽5内において加工液に浸漬した状態で、各軸の駆動モータ6によりワークWとワイヤ電極Eとの極間距離を所定に設定しつつ電源装置7により極間に所定の電圧を印加して放電を発生させワークWの放電加工を行う構成となっており、加工槽5には加工液循環供給系統10により加工液が連続的に循環供給される。ワイヤ放電加工機1は、制御装置50を備えており、該制御装置50から各軸の駆動モータ6および電源装置7を動作させる制御信号が出力されるとともに、加工液循環供給系統10を動作させる制御信号が出力される。なお、加工液には、水と灯油系の油を混合しエマルジョン化して得られる加工液が採用されている。
【0015】
図2に示すように、加工液循環供給系統10は、サービスタンク20、測定装置30、および水供給装置40を備えている。
サービスタンク20は、汚液槽21および清水槽22を有しており、汚液槽21は、弁23を介して加工槽5から排出された汚れた加工液を供給し貯留する。清水槽22は、汚液槽21の汚れた加工液を移送ポンプ24および第1のフィルタ25を介して清澄化しつつ貯留する。また、清水槽22は、貯留した加工液を、加工用供給ポンプ26を介して加工槽5に供給する。このサービスタンク20は、液面レベルを検出する第1の液面検出器27を有しており、検出された液面レベルに基づいて制御装置50によりサービスタンク20に貯留された加工液の体積が演算可能となっている。
【0016】
測定装置30は、測定用タンク31、加工液供給手段32(32a,32b,32c)、加工液排出手段33(33a,33b,33c)、および重量測定器34を有している。
測定用タンク31は、重量測定器34の上面に載置されており、サービスタンク20に貯留された加工液の一部を一定体積貯留して加工液の重量の間欠的な測定に供する。すなわち、測定用タンク31は、液面レベルを検出する第2の液面検出器37を有しており、液面レベルが所定の設定値に達するまで加工液が貯留される。第2の液面検出器37により検出された液面レベルに基づいてつまり液面レベルの設定値に基づいて制御装置50により測定用タンク31に貯留された加工液の体積が演算可能となっている。
【0017】
加工液供給手段32は、加工液をサービスタンク20の清水槽22から測定用タンク31に供給する機能を有しており、測定用供給ポンプ32a、吸い込みライン32b、および吐出ライン32cを含む。吸い込みライン32bは、サービスタンク20の清水槽22内の下部から測定用供給ポンプ32aの吸い込み側に至る配管ラインである。吐出ライン32cは、測定用供給ポンプ32aの吐出側から測定用タンク31内に至る配管ラインであり、第2のフィルタ35および第1の電磁弁36が備えられている。吐出ライン32cは、測定用タンク31の上端開口を介して測定用タンク31内に達しており、測定用タンク31と非接続となっている。
【0018】
加工液排出手段33は、加工液の重量の測定終了後、測定用タンク31の加工液をサービスタンク20の清水槽22に排出する機能を有しており、ドレイン排出ポンプ33a、吸い込みライン33b、および吐出ライン33cを含む。吸い込みライン33bは、測定用タンク31内の下部からドレイン排出ポンプ33aの吸い込み側に至る配管ラインである。吸い込みライン33bは、測定用タンク31の上端開口を介して測定用タンク31内の下部からドレイン排出ポンプ33aの吸い込み側に達しており、測定用タンク31と非接続となっている。また、吐出ライン33cは、ドレイン排出ポンプ33aの吐出側からサービスタンク20の清水槽22内に至る配管ラインである。
【0019】
重量測定器34は、測定用タンク31に貯留された加工液の重量を測定する。すなわち、重量測定器34は、加工液が貯留された測定用タンク31の重量から加工液が貯留されていない空の状態の測定用タンク31の重量を差し引いて加工液の重量を測定することができる。
【0020】
水供給装置40は、水源41、第2の電磁弁42、イオン交換樹脂43、および流量計44を有している。すなわち、水供給装置40は、水源41から供給された水道水を第2の電磁弁42を介してイオン交換樹脂43に供給しイオン交換水を生成する。そして、水供給装置40は、生成されたイオン交換水をサービスタンク20の清水槽22に供給する。更に、水供給装置40は、流量計44により、イオン交換樹脂43から清水槽22に供給されるイオン交換水の重量流量を計測することができる。
【0021】
制御装置50は、図3に示すように、入力手段60、処理手段70、および記憶手段80を有している。
入力手段60は、キーボード、マウス、タッチパネル等で構成され、オペレータが入力手段60を所要に操作することにより処理手段70における各種処理に必要な情報が入力される。本発明においては、入力手段60からは、処理手段70が、記憶手段80に記憶された各種情報を読み出すための情報および各種検出信号を取得するための情報が入力される。
【0022】
処理手段70は、各軸の駆動モータ6および電源装置7を動作させる制御信号を出力し放電加工を実行する手段として機能するとともに、加工液循環供給系統10を動作させる制御信号を出力し所要の加工液の制御を行う手段として機能し、より詳しくは、データ取得手段71、演算手段72、判断手段73、および制御信号生成手段74として機能する。
【0023】
すなわち、データ取得手段71は、入力手段60から入力された情報に基づいて記憶手段80に記憶された各種情報を読み出して取得し、該取得した情報を演算手段72、判断手段73、および制御信号生成手段74に出力する。また、データ取得手段71は、第1の液面検出器27、重量検出器34、第2の液面検出器37、および流量計44から出力された検出信号を入力して取得し、該取得した信号情報を演算手段72、判断手段73、および制御信号生成手段74に出力する。
【0024】
演算手段72は、データ取得手段71により取得されたデータに基づいて各種演算処理を行う。
すなわち、演算手段72は、測定用タンク31の液面レベル(より詳しくは液面レベルの設定値)および測定用タンク31の寸法データに基づいて該測定用タンク31に貯留された加工液の体積V1[m^3]を演算するとともに、サービスタンク20の液面レベルおよびサービスタンク20の寸法データに基づいて該サービスタンク20に貯留された加工液の体積V2[m^3]を演算する。
【0025】
また、演算手段72は、演算された測定用タンク31の加工液の体積V1および測定された加工液の重量M1[kg]に基づいて、数1により加工液の密度X[kg/m^3]を演算するとともに、該演算した加工液の密度X、加工液を構成する水の密度ρ1[kg/m^3]、および油の密度ρ2[kg/m^3]に基づいて、数2により測定用タンク31における加工液中の水の濃度A[%]を演算する。
【0026】
更に、演算手段72は、演算したサービスタンク20の加工液の体積V2および加工液の密度Xに基づいて数3によりサービスタンク20に貯留された加工液の重量M2[kg]を演算するとともに、加工液中の水の濃度Aを考慮して数4によりサービスタンク20に貯留された加工液中の水の重量MW[kg]を演算する。
そして、更に演算手段72は、予め設定された加工液中の水の濃度の目標値A´[%]、サービスタンク20に貯留された加工液の重量M2、該加工液中の水の重量MW[kg]に基づいて、数5によりサービスタンク20における水の減少量α[kg]つまり水供給装置40における水の供給量αを演算する。
【0027】
[数1]
X=M1/V1
[数2]
A=100×(X−ρ2)/(ρ1−ρ2)
[数3]
M2=V2×X
[数4]
MW=M2×A/100
[数5]
α=(A´×M2−100×MW)/(100−A´)
【0028】
判断手段73は、処理手段70による各種情報処理に必要な判断を行う。すなわち、判断手段73は、流量計44により計測された水の流量が、演算された水の減少量αに達したか否か、測定用タンク31の液面レベルが設定値または下限値に達したか否か、の各判断を行う。
【0029】
制御信号生成手段74は、第1の電磁弁36、第2の電磁弁42、測定用供給ポンプ32a、およびドレイン排出ポンプ33aを動作させる制御信号を生成する。
すなわち、制御信号生成手段74は、流量計44により計測された流量が、演算手段72により演算された水の減少量αに達するまで水供給装置40の第2の電磁弁42を開放動作させる制御信号を生成する。
【0030】
また、制御信号生成手段74は、加工液の重量の測定開始前に、測定用タンク31の液面レベルが下限値に達するまでドレイン排出ポンプ33aを動作させる制御信号を生成する。
更に、制御信号生成手段74は、ドレイン排出ポンプ33aの動作終了後に、測定用タンク31の液面レベルが設定値に達するまで第1の電磁弁36を開放動作させつつ測定用供給ポンプ32aを動作させる制御信号を生成する。なお、処理手段70は、CPUとメモリが協働してその機能を果たす。
【0031】
記憶手段80は、制御装置50を、演算手段72、判断手段73、および制御信号生成手段74として機能させるプログラムを記憶する。また、記憶手段80は、測定用タンク31の液面レベルの設定値および下限値、サービスタンク20および測定用タンク31の寸法データ、加工液を構成する水の密度ρ1および油の密度ρ2、加工液中の水の濃度の目標値A´を記憶する(水の濃度の目標値A´は例えば15%程度に設定される)。なお、記憶手段80は、ハードディスクまたはメモリがその機能を果たす。
【0032】
次に、制御装置50による水の供給方法を図4のフローチャートに基づいて説明する。
まず始めに、ステップS10において、オペレータが入力手段60を介して所要の情報を入力するとともに、該入力された情報に基づいて、データ取得手段71が、各種データを取得する。すなわち、データ取得手段71が、第1の液面検出器27、重量検出器34、第2の液面検出器37、および流量計44から出力された各検出信号の取得を開始する。また、データ取得手段71が、記憶手段80に記憶された測定用タンク31の液面レベルの設定値および下限値、測定用タンク31およびサービスタンク20の寸法データ、水の密度ρ1および油の密度ρ2、加工液中の水の濃度の目標値A´を読み出して取得する。更に、データ取得手段71が、記憶手段80に記憶されたプログラムを読み出して取得し、以後制御装置50を、演算手段72、判断手段73、および制御信号生成手段74として機能させる。
【0033】
次いで、ステップS20において、判断手段73が、第2の液面検出器37の検出信号に基づいて測定用タンク31の液面レベルが下限値を超えていると判断したときは、ステップS30において、制御信号生成手段74が、制御信号を生成して液面レベルが下限値以下となるまでドレイン排出ポンプ33aをON動作させる。
一方、ステップS20において、判断手段73が、測定用タンク31の液面レベルが下限値以下であると判断したときは、ステップS40において、制御信号生成手段74が制御信号を生成してドレイン排出ポンプ33aをOFFとする。
【0034】
次に、ステップS50において、制御信号生成手段74が、更に制御信号を生成して第1の電磁弁36を開放動作させるとともに、測定用供給ポンプ32aをON動作させ、測定用タンク31への加工液の供給を行う。
続いて、ステップS60において、判断手段73が、第2の液面検出器37の検出信号に基づいて測定用タンク31の液面レベルが設定値に達したと判断したときは、ステップS70において、制御信号生成手段74が、制御信号を生成して第1の電磁弁36を閉塞動作させるとともに、測定用供給ポンプ32aをOFFとし、測定用タンク31への加工液の供給を停止する。
【0035】
そして、ステップS80において、演算手段72が、測定用タンク31の寸法データ、測定用タンク31に貯留された加工液の液面レベル、および前記加工液の重量M1に基づいて数1により加工液の密度Xを演算する。
次に、ステップS90において、演算手段72が、加工液の密度X、水の密度ρ1、および油の密度ρ2に基づいて数2により加工液中の水の濃度Aを演算し、ステップS100において、演算手段72が、サービスタンク20の寸法データおよびサービスタンク20に貯留された加工液の液面レベルも考慮して数3により前記加工液の重量M2を演算するとともに、数4によりサービスタンク20に貯留された加工液中の水の重量MWを演算し、更に加工液中の水の濃度の目標値A´も考慮して数5により水の供給量αを演算する。
【0036】
続いて、ステップS110において、制御信号生成手段74が、制御信号を生成して第2の電磁弁42を開放動作させてサービスタンク20への水の供給を開始する。
そして、ステップS120において、判断手段73が、計測された水の流量が演算された供給量αに達したと判断したときは、ステップS130において、制御信号生成手段74が、制御信号を生成して第2の電磁弁42を閉塞動作させ、制御装置50による水の供給動作を終了する。なお、かかるステップS10乃至ステップS130の水供給動作は、一定の間隔を置いて間欠的に行われる。すなわち、本発明者により、加工液中の水の濃度は数%から15%程度の範囲とすれば足りることが明らかとされており、かかる間欠的な制御に対応して測定用タンク31は上記の如く加工液の重量の間欠的な測定に供する構成となっている。
【0037】
以上説明したように、本発明によれば、水と油を混合して得られる加工液の重量を測定する測定装置30、該加工液に水を供給する水供給装置40と、測定装置30により測定された加工液の重量に基づいて該加工液の密度を演算しつつ加工液中の水の減少量を演算する演算手段72および該演算手段72により演算された減少量に基づいて水供給装置40を動作させる制御信号を生成する制御信号生成手段74を有する制御装置50と、を備えることとしたので、減少量分の水を加工液に確実に供給することができ、水と油を混合して得られる加工液を用いた放電加工において加工速度の低下を防止することができる。しかも、加工液を構成する水と油は密度差が大きいので、加工液の密度に基づく加工液中の水の減少量の演算を正確に行うことができる。
【0038】
また、測定装置30は、加工液を一定の体積貯留し該加工液の重量の測定に供する測定用タンク31と、該測定用タンク31に貯留された加工液の重量を測定する重量測定器34と、を有することとしたので、加工液の単位体積当たりの重量つまり密度の演算を簡素化することができる。
【0039】
更に、演算手段72は、液面レベルに基づいて測定用タンク31に貯留された加工液の体積を演算するとともに、該演算された加工液の体積、測定された加工液の重量、水の密度、および油の密度に基づいて加工液中の水の濃度を演算し、更に該演算した水の濃度と予め設定された水の濃度の目標値に基づいて水の減少量を演算することとしたので、加工液中の水の減少量を確実に演算することができる。
【0040】
更にまた、測定装置30は、加工液を測定用タンク31に供給する測定用供給ポンプ32aと測定用タンク31内の加工液を排出するドレイン排出ポンプ33aを有するとともに、制御信号生成手段74は、加工液の重量の測定開始前に、ドレイン排出ポンプ33aを動作させる制御信号を生成し、かつ、ドレイン排出ポンプ33aの動作終了後に測定用供給ポンプ31aを動作させる制御信号を生成することとしたので、測定用タンク31に最新の加工液を貯留しつつ重量の測定を行うことが可能となる。
【0041】
また、測定用供給ポンプ32aの吐出ライン32cを、測定用タンク31の上端開口を介して測定用タンク31内に達するように構成し測定用タンク31と非接続とするとともに、ドレイン排出ポンプ33aの吸い込みライン33bを、測定用タンク31の下部から測定用タンク31の上端開口を介してドレイン排出ポンプ33aに達するように構成し測定用タンク31と非接続とすることとしたので、測定用供給ポンプ32aの吐出ライン32cおよびドレイン排出ポンプ33aの吸い込みライン33bが測定用タンク31に干渉することなく加工液の重量を測定することができ、該測定を正確に行うことができる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の応用実施または変形実施が可能であることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、加工液に減少量分の水を供給する構成をワイヤ放電加工機に備えることとしているが、形彫放電加工機に備えることとしてもよい。
【0043】
また、加工液の供給ポンプとして、加工槽5に供給する加工用供給ポンプ26、および測定用タンク31に供給する測定用供給ポンプ32aを有することとしているが、図5に示すように、測定用供給ポンプ32aを省略し、加工用供給ポンプ26を加工液供給手段32の一構成として測定用タンク31に加工液を供給することとしてもよい。
【0044】
更に、制御信号生成手段74は、加工液の重量の測定開始前に、ドレイン排出ポンプ33aを動作させる制御信号を生成することとしているが、前の水供給動作の終了後に所定の制御信号を生成してドレイン排出ポンプ33aを動作させることとしてもよい。すなわち、加工液の重量の測定開始前とは、前の水供給動作の終了後も含む概念である。
【0045】
更にまた、加工液の密度の演算を、測定用タンク31の寸法に基づいて行うこととしているが、測定用タンク31に貯留される加工液の一定体積を、単位体積(例えば1L)とすることとすれば、測定用タンク31の寸法データを介することなく加工液の密度を容易に演算することができ、該演算を簡素化することができる。
【0046】
なお、上述した実施形態において、測定用タンク31の液面レベルの設定値を設定せず、検出された任意の液面レベルに基づいて演算手段72により測定用タンク31に貯留された加工液の体積を演算しつつ、数1乃至数5に基づき水の供給量αの演算が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、放電加工機に利用できる。具体的には水と油を混合して得られる加工液を用いた放電加工を安定して行う場合に役立つ。
【符号の説明】
【0048】
A:加工液中の水の濃度
A´:加工液中の水の濃度の目標値
V1:測定用タンクに貯留された加工液の体積
V2:サービスタンクに貯留された加工液の体積
M1:測定用タンクに貯留された加工液の重量
M2:サービスタンクに貯留された加工液の重量
MW:サービスタンクに貯留された加工液中の水の重量
α:サービスタンクにおける水の減少量(供給量)
X:加工液の密度
ρ1:水の密度
ρ2:油の密度
1:ワイヤ放電加工機
2:上側ガイド組体
3:下側ガイド組体
4:ワークスタンド
5:加工槽
6:各軸の駆動モータ
7:電源装置
10:加工液循環供給系統
20:サービスタンク
21:汚液槽
22:清水槽
23:弁
24:移送ポンプ
25:第1のフィルタ
26:加工用供給ポンプ
27:第1の液面検出器
30:測定装置
31:測定用タンク
32:加工液供給手段
32a:測定用供給ポンプ
32b:吸い込みライン
32c:吐出ライン
33:加工液排出手段
33a:ドレイン排出ポンプ
33b:吸い込みライン
33c:吐出ライン
34:重量測定器
35:第2のフィルタ
36:第1の電磁弁
37:第2の液面検出器
40:水供給装置
41:水源
42:第2の電磁弁
43:イオン交換樹脂
44:流量計
50:制御装置
60:入力手段
70:処理手段
71:データ取得手段
72:演算手段
73:判断手段
74:制御信号生成手段
80:記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークと加工電極を水と油を混合して得られる加工液に浸漬する加工槽を備え前記ワークの放電加工を行う放電加工機において、
前記加工液の重量を測定する測定装置と、
前記加工液に水を供給する水供給装置と、
前記測定装置により測定された加工液の重量に基づいて該加工液中の水の減少量を演算する演算手段および該演算手段により演算された減少量に基づいて前記水供給装置を動作させる制御信号を生成する制御信号生成手段を有する制御装置と、を備えることを特徴とする放電加工機。
【請求項2】
前記演算手段は、前記加工液の重量に基づいて該加工液の密度を演算しつつ前記加工液中の水の減少量を演算することを特徴とする請求項1に記載の放電加工機。
【請求項3】
前記測定装置は、前記加工液を一定の体積貯留し該加工液の重量の測定に供する測定用タンクと、該測定用タンクに貯留された加工液の重量を測定する重量測定器と、を有することを特徴とする請求項2に記載の放電加工機。
【請求項4】
前記測定装置は、前記加工液を前記測定用タンクに供給する加工液供給手段と前記測定用タンクの加工液を排出する加工液排出手段を有するとともに、
前記制御信号生成手段は、前記加工液の重量の測定開始前に、前記加工液排出手段を動作させる制御信号を生成し、かつ、該加工液排出手段の動作終了後に前記加工液供給手段を動作させる制御信号を生成することを特徴とする請求項3に記載の放電加工機。
【請求項5】
前記加工液排出手段は、排出ポンプ、前記測定用タンクから前記排出ポンプに至る吸い込みライン、および前記排出ポンプの吐出ラインを有し、
前記吸い込みラインは、前記測定用タンク内から前記測定用タンクの開口を介して前記排出ポンプに至り前記測定用タンクと非接続とすることを特徴とする請求項4に記載の放電加工機。
【請求項6】
前記制御装置は、該制御装置を前記演算手段として機能させるプログラムを記憶する記憶手段を有することを特徴とする請求項5に記載の放電加工機。
【請求項7】
ワークの放電加工を行う加工電極と、前記ワークと前記加工電極を水と油を混合して得られる加工液に浸漬する加工槽と、該加工槽に前記加工液を循環供給する加工液循環供給系統と、を備える放電加工機において、
前記加工槽から排出された汚れた加工液を貯留する汚液槽、該汚液槽の汚れた加工液を清澄化しつつ貯留し該貯留した加工液を前記加工槽に供給する清水槽、および液面レベルを検出する第1の液面検出器を有し前記加工液を前記加工槽に循環供給するサービスタンクと;
液面レベルを検出する第2の液面検出器を有し前記サービスタンクに貯留された加工液の一部を一定体積貯留し該加工液の重量の間欠的な測定に供する測定用タンク、前記加工液を前記測定用タンクに供給する供給ポンプと前記サービスタンク内の下部から前記供給ポンプの吸い込み側に至る吸い込みラインと前記供給ポンプの吐出側から前記測定用タンクの上端開口を介して前記測定用タンク内に至り前記測定用タンクと非接続の吐出ラインを有する加工液供給手段、前記測定用タンクから前記サービスタンクに前記加工液を排出する排出ポンプと前記測定用タンクの下部から前記測定用タンクの上端開口を介して前記排出ポンプの吸い込み側に至り前記測定用タンクと非接続の吸い込みラインと前記排出ポンプの吐出側から前記サービスタンク内に至る吐出ラインを有する加工液排出手段、および前記測定用タンクに貯留された加工液の重量を測定する重量測定器を有する測定装置と;
流量計を有し、前記サービスタンクに水を計測しつつ供給する水供給装置と;
演算手段、制御信号生成手段、および記憶手段を有する制御装置と;を備え、
前記演算手段は、前記測定用タンクの液面レベルに基づいて該測定用タンクに貯留された加工液の体積を演算するとともに、該加工液の体積と前記加工液の重量に基づいて前記加工液の密度を演算し、かつ、前記サービスタンクの液面レベルに基づいて該サービスタンクに貯留された加工液の体積を演算し、更に前記加工液の密度、前記水の密度、および前記油の密度に基づいて前記測定用タンクにおける加工液中の水の濃度を演算しつつ、該演算した水の濃度、前記サービスタンクに貯留された加工液の体積、および予め設定された水の濃度の目標値に基づいて前記サービスタンクにおける水の減少量を演算し、
前記制御信号生成手段は、前記流量計により計測された流量が前記演算手段により演算された前記サービスタンクにおける水の減少量に達するまで前記水供給装置を動作させる制御信号、前記加工液の重量の測定開始前に、前記測定用タンクの液面レベルが下限値に達するまで前記排出ポンプを動作させる制御信号、および前記排出ポンプの動作終了後に、前記測定用タンクの液面レベルが設定値に達するまで前記供給ポンプを動作させる制御信号を、一定の間隔を置いて間欠的に生成し、
前記記憶手段は、前記制御装置を前記演算手段および前記制御信号生成手段として機能させるプログラムを記憶することを特徴とする放電加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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