説明

放電灯点灯回路

【課題】 簡単な機器構成で、サージレス、始動性改善、放電灯破損の抑制、放電灯消灯後瞬時再点灯化および放電灯点滅化を達成する。
【解決手段】 定常の放電灯点灯電圧を供給する交流電源3に対して、その開閉を行う第4開閉器7を介して、2次側のインピーダンス低下に応じて出力電流を制限することが可能な第1変圧器2と、安定器4と、放電灯5とを直列に接続し、第1変圧器2の2次側端子間に短絡用の第1開閉装置9を接続し、放電灯端子と並列に出力電圧によってインピーダンス変化を生じる第2変圧器13を接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、HID(高輝度放電灯)などの放電灯を点灯させるための回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、放電灯点灯回路としては、スイッチングをさせることによって発振させるインバータを用いる回路や、パルス発生器を用いる回路、電源回路をチョッピンングすることによって発振させるチョッパーを用いる回路などが知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開昭58−117681号公報
【特許文献2】特開平10−225136号公報
【特許文献3】特開2004−63116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
放電灯は、始動時に高い電圧を印加して放電を開始させる必要があるが、高い電圧となるために、スイッチングやチョッピングなどを用いて印加電圧に変化を与え、始動放電を容易にしている。
【0004】
しかし、放電灯が大容量になるほど放電開始のために必要な電圧や電流が上昇し、半導体素子を用いて始動回路を形成することが困難になる。
【0005】
よって、大容量の放電灯を点灯させるに当たっては、単純に高電圧(放電開始電圧)を直接印加して放電を開始させた後、通常電圧(放電継続電圧)を印加することになるが、この場合には、電圧切り替え時の循環電流や、始動電圧遮断時に発生する遮断機開閉サージなどが点灯制御回路に影響を及ぼすなどの問題があった。
【0006】
そのため、循環電流や開閉サージを発生させないような放電灯点灯回路が望まれていた。
【0007】
また、始動性向上対策として従来実施していた電圧上昇では、機器の絶縁設計などが問題となるため、別の手段による始動性改善が望まれていた。
【0008】
一方、放電灯の宿命である消灯後の瞬時再点灯および点滅が不可能であることも、放電灯を用いる施設などの運営上支障をきたすことが多く、課題となっていた。
【0009】
さらに、一般的な放電灯の消灯動作を行う場合には、単に電源電圧の印加を停止することが採用されていたが、この場合には、点灯による熱が瞬時に無くなるために、急激な温度低下を招いてしまう。一般的に放電灯に使用される発光管や保護管、外管などは、ガラスやセラミックなどからなるものであるから、温度の急変によって破損や亀裂発生などを招き易く、放電灯消灯時の破損や故障発生の原因の1つとなっている。
【0010】
また、放電灯の点灯時においても、温度の急激な変化は、上記と同様の不都合を生じさせてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る放電灯点灯回路は、放電灯点灯中に放電灯点灯継続電圧を供給する電源回路に対して、2次側のインピーダンス低下に応じて出力電流を制限することが可能な変圧器によって所定の電圧を発生する電圧発生回路と、安定器とを直列に配してなる始動回路と、前記変圧器の2次側端子間を短絡するための第1開閉装置とを配したものである。
【0012】
この場合には、始動回路で始動放電を行い、始動放電の完了後、前記変圧器の2次側端子に配した開閉装置を閉路させて2次側端子間を短絡させることによって主点灯させることができる。
【0013】
請求項2に係る放電灯点灯回路は、前記変圧器として、漏洩変圧器またはネオントランスを例示することができる。
【0014】
請求項3に係る放電灯点灯回路は、前記変圧器の1次側において、その端子間を短絡させる第2開閉装置と、その端子に対する電源供給、電源非供給を選択させる第3開閉装置とを配したものである。
【0015】
この場合には、第2開閉装置を配することによって、始動放電後に始動回路を遮断する際に発生する遮断サージや残留電荷を吸収させることができ、第3開閉装置を配することによって、始動回路を引き外し、主放電中の損失を低減させることができる。
【0016】
請求項4に係る放電灯点灯回路は、前記始動回路として、発振回路を含むものを採用している。ここで、発振回路としては、パルス発生回路、インバータなどが例示できる。
【0017】
この場合には、通常電圧を印加する場合よりも始動性を向上させることができる。
【0018】
請求項5に係る放電灯点灯回路は、前記発振回路として、2次側のインピーダンス変化に応じて出力電圧を可変させることが可能な変圧器と、その出力電圧によってインピーダンス変化を生じる手段とを含むものである。
【0019】
この場合には、半導体素子などによる発振回路を形成することなく高電圧をダイレクトに発振させることができ、始動性を向上させることができる。
また、始動電圧印加中に第1開閉装置を入り切りすることにより、放電灯の消灯後の瞬時再点灯や点滅を実現することができる。
【0020】
請求項6に係る放電灯点灯回路は、放電灯の消灯時にも、始動放電を行わせる制御を行う放電制御手段をさらに含むものである。
【0021】
この場合には、温度を徐々に低下させることができる。
【0022】
請求項7に係る放電灯点灯回路は、放電灯の点灯時に、始動放電を行わせる時間を制御する時間制御手段をさらに含むものである。
【0023】
この場合には、放電灯内部の封入物が安定するまで始動放電を継続させてから放電灯を点灯させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、変圧器、安定器および第1開閉器のみの簡単な機器構成により、1kWを超える大容量放電灯など、高電圧を要求されるような放電灯に好適な放電灯点灯回路を容易に実現できる。
【0025】
そして、始動放電後に第1開閉器を閉路することにより放電灯への印加電圧を切り替えるため開閉サージ防止を図ることが出来る。
【0026】
また、所定の電圧を点灯電圧に重畳することにより、並列異電圧印加時に発生する循環電流を防止できる。
【0027】
さらに、始動回路に残留電荷防止を実施することにより点灯中に始動回路を引き外すことが可能になり、点灯中における始動回路への充電による損失を低減させることが可能になる。
【0028】
さらにまた、始動回路として発振回路を含むものを採用することにより、始動性を改善することができる。
【0029】
特に、前記発振回路として、2次側のインピーダンス変化に応じて出力電圧を可変させることが可能な変圧器と、その出力電圧によってインピーダンス変化を生じる手段とを含むものを採用することによって、1kWを超える大容量放電灯など高電圧を要求される放電灯を点灯する場合において、半導体素子を用いなくてもダイレクトに高電圧発振させることが可能になり、簡単な機器構成での始動性改善も実現することができる。
【0030】
この場合、放電灯には困難であった消灯後の瞬時再点灯および点滅を容易に実現することができる。
【0031】
また、放電灯の消灯時にも、始動放電を行わせる制御を行う放電制御手段をさらに含むことにより、温度を徐々に低下させ、温度の急激な低下に起因する不都合の発生を防止することができる。
【0032】
また、放電灯の点灯時に、始動放電を行わせる時間を制御する時間制御手段をさらに含むことにより、放電灯内部の封入物が安定するまで始動放電を継続させてから放電灯を点灯させ、点灯時の放電灯の破損防止、寿命短縮の軽減を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0034】
図1は本発明の一実施形態に係る放電灯点灯回路である。
【0035】
この放電灯点灯回路は、定常の放電灯点灯電圧(放電灯点灯継続電圧)を供給する第1交流電源3に対して、その開閉を行う第4開閉器7を介して、2次側のインピーダンス低下に応じて出力電流を制限することが可能な第1変圧器2と、安定器4と、放電灯5とを直列に接続している。そして、第1変圧器2と、安定器4とを含む始動電圧回路で始動放電に必要な高電圧(放電開始電圧)を発生し、放電灯5における放電を開始させる。この実施形態では、第1交流電源3に対して第1変圧器2を直列に接続して、両電圧を加算しているので、レベルの異なる主放電電圧(放電継続電圧)との切り替え時の循環電流を防止することができる。
【0036】
ここで、第1変圧器2として、2次側のインピーダンス変化に応じて出力電流を制限するだけでなく、出力電圧を可変させることも可能な変圧器を採用し、それと並列に放電灯の点灯電圧を供給する第1交流電源3と安定器4が接続されている。一方、これら全体の出力電圧が印加される(始動電圧が印加される放電灯端子と並列に配する)箇所に、出力電圧によってインピーダンス変化を生じる第2変圧器13を接続することによって、発振を生じさせることができ、始動性が向上するため、より好ましい。
【0037】
第1変圧器2は、一定のインピーダンスを保持する負荷に対しては、二次側出力電圧は変化しないが、負荷インピーダンスが変動する場合は、それに見合った二次側出力電圧を出力するものである。ここで、負荷インピーダンスが下がる場合に二次側出力電圧が下がり、負荷インピーダンスが上がる場合に二次側出力電圧が上がるものであることが好ましい。また、負荷インピーダンスが下がる場合に二次側出力電圧が上がり、負荷インピーダンスが上がる場合に二次側出力電圧が下がるものについても好ましく使用出来る。ここで、第1変圧器2に対して符号が反対の比例定数を持った特性の前記第2変圧器13の使用が好ましい。
【0038】
具体的には、第1変圧器2として、漏洩変圧器(リーケージトランス)、ネオントランスが例示できる。これらは、二次側の定電流制御特性を有しており、そのために負荷側のインピーダンス変化に応じて二次側出力電圧を変化させることができる。すなわち、負荷インピーダンスが低下すると、一定電流保持のために二次側出力電圧を低下させることができ、負荷インピーダンスが上がると、一定の電流保持のために二次側出力電圧を上昇させることができるので、好ましい。
【0039】
第2変圧器13は、第1変圧器2の二次側出力電圧と第1交流電源3を加算した電圧によってインピーダンス変化を生じるものである。第1変圧器2の二次側出力電圧と第1交流電源3を加算した電圧によるインピーダンス変化としては、第1変圧器2の二次側出力電圧と第1交流電源3を加算した電圧が高い場合には自己インピーダンスを下げ、その逆の場合は自己インピーダンスを上げるものであることが好ましい。また、第1変圧器2の二次側出力電圧と第1交流電源3を加算した電圧がある一定値以上の場合に急激にそのインピーダンスを低下させ、第1変圧器2の二次側出力電圧が第1交流電源3を加算した電圧一定値以下になった場合に速やかにそのインピーダンスを上昇させるものであることが一層好ましい。このように、急激にインピーダンスを変化させることで、ランプなどの点灯を容易にすることができる。
【0040】
具体的には、第2変圧器13として、印加電圧によって自己インピーダンスが変化する特性を持った計器用変成器、計器用変圧器、リアクトルなどの半導体デバイスを含まない機器が例示できる。計器用変圧器を一例に挙げて説明すると、その定格電圧以上の電圧を印加した場合において鉄心の磁束飽和現象などの影響によって自己インピーダンスが急激に低下する。すなわち、印加電圧の変化によってインピーダンスを変化させることを可能にし、特に印加電圧が高い状態でインピーダンスが低下し、その逆の場合は大きくなるために好ましい。
【0041】
次いで、発振動作を説明する。
【0042】
放電灯5の端子電圧が印加されていない状態もしくは、第1交流電源3のみが印加されている状態においては、第2変圧器13はインピーダンスが高い状態である。
【0043】
その後、第2交流電源1が第1変圧器2の一次側巻線に印加されると、二次側巻線には、二次側のインピーダンスに応じた二次側出力電圧が発生する。
【0044】
そして、第1変圧器2の二次側出力電圧と第1交流電源3を加算した電圧が第2変圧器13の定格電圧以上である場合には、第2変圧器13のインピーダンスは急激に下がる。第2変圧器13のインピーダンスが急激に下がると、第1変圧器2の二次側電圧が下がり、第2変圧器13の定格電圧以下になるため、第2変圧器13のインピーダンスが上がる。第2変圧器13のインピーダンスが上がると、第1変圧器2の二次側出力電圧が上がるため、第1変圧器2の二次側出力電圧と第1交流電源3を加算した電圧が、第2変圧器13の定格電圧以上になり、第2変圧器13のインピーダンスは急激に下がる。
【0045】
以下、第2変圧器13のインピーダンスの変化と第1変圧器2の二次側出力電圧と第1交流電源3を加算した電圧の変化とが反復されることにより、放電灯5に印加される出力電圧が発振出力電圧になる。
【0046】
ただし、第1変圧器2の二次側出力電圧と第1交流電源3を加算した電圧が第2変圧器13のインピーダンスに変化をもたらす電圧値より小さい場合もしくは、放電灯5が始動放電を開始するなどの状態となり、第1変圧器2の二次側出力電圧と第1交流電源3を加算した電圧が第2変圧器13のインピーダンスに変化をもたらす電圧値より小さくなった場合には、第2変圧器13のインピーダンスが変化しないので、放電灯5に印加される出力電圧が発振出力電圧になることはない。
【0047】
このような発振回路を用いた場合の出力発振波形は、第2変圧器13のインピーダンスに変化をもたらす電圧値以下では発振出力電圧にならないことから、交流回路においては、波形の頭頂部付近のみで発振することになる。
【0048】
その後、第1変圧器2の2次側端子間に短絡用の第1開閉装置9を接続し、それを閉路させることによって第1交流電源3のみの電圧レベルとなり放電灯5を点灯継続させることができる。特に高電圧を発生する始動電圧回路を遮断せずに投入させることができるため、遮断時に特に大きくなる開閉サージを大幅に抑制させることができる。このように始動電圧回路を短絡しても、第1変圧器2により出力電流が制限されるため問題はない。
【0049】
そして、第1開閉装置9の入り切りを繰り返すと、放電灯5を点滅させることが出来る。また、一般的に消灯後に数十分程度を必要とする放電灯再点灯のための冷却時間は、第2変圧器13と第1変圧器2との組み合わせにより発振を掛けることにより始動性が向上するため必要でなくなる。すなわち、消灯直後の瞬時再点灯を可能とすることができる。
【0050】
第1変圧器2として、漏洩変圧器またはネオントランスなどを用いることができ、さらに第1変圧器2の1次側の第2交流電源1を低圧のものにすると制御回路の簡単化や、開閉サージ低減を実現できるので好ましい。
【0051】
また、第1変圧器2の1次側に第3開閉装置6を接続することにより始動電圧回路を引き外すことができ、その瞬間に第1変圧器2の1次側と並列に接続した第2開閉装置10を投入することによって短絡回路が形成され、残留電荷を放電させて、低圧側遮断時の開閉サージを吸収させることができる。
【0052】
この状態で第1変圧器2の2次側に接続した第5開閉装置8を開放すれば、主放電後に始動電圧回路を、サージを発生させることなく引き外すことができるため、運転中の始動電圧回路充電による損失を防止することができる。
【0053】
次いで、図2のフローチャートを参照してさらに説明する。
【0054】
ステップSP1において放電灯点灯動作が開始されれば、ステップSP2において第4開閉装置7を入れ、ステップSP3において第2開閉装置10を切り、ステップSP4において第3開閉装置6を入れ、ステップSP5において第5開閉装置8を入れ、ステップSP6において始動放電を開始し、ステップSP7において第1開閉装置9を入れ、ステップSP8において放電灯を点灯し、ステップSP9において第3開閉装置6を切り、ステップSP10において第2開閉装置10を入れ、ステップSP11において第5開閉装置8を切り、ステップSP12において始動回路の切り離しを完了し、ステップSP13において放電灯点灯動作を終了する。
【0055】
ここで、始動放電開始後、直ちに第1開閉装置9を入れるのではなく、放電灯内部の封入物が安定するまで始動放電を継続させてから点灯させることが好ましい。
次いで、図3のフローチャートを参照して消灯動作を説明する。
【0056】
消灯時において図3のソフト消灯側を選択して、消灯させる。その際に始動放電状態であることを消灯放電と呼び、その状態を長く継続するほど、放電灯の破損や亀裂の抑制に繋がる。特に放電灯内封入物が冷却・凝縮され安定するまでは消灯放電を継続させるのが好ましい。
【0057】
また、緊急時の停止方法としては図3のダイレクト消灯側(一般的な消灯動作)を選択し、素早く遮断させることが好ましい。
【0058】
さらに説明する。
【0059】
ステップSP1において放電灯消灯動作が開始されれば、ステップSP2においてソフト消灯、ダイレクト消灯の一方を選択する。
【0060】
ソフト消灯が選択された場合には、ステップSP3において第2開閉装置10を切り、ステップSP4において第3開閉装置6を入れ、ステップSP5において第5開閉装置8を入れ、ステップSP6において第1開閉装置9を入れ、ステップSP7において始動放電を開始し、ステップSP8において第3開閉装置6を切り、ステップSP9において第2開閉装置10を入れ、ステップSP10において第5開閉装置8を切り、ステップSP11において第4開閉装置7を切り、ステップSP12において放電灯消灯動作を完了する。
【0061】
逆に、ダイレクト消灯が選択された場合には、ステップSP3〜ステップSP5の処理およびステップSP7〜ステップSP10の処理を省略する。
【0062】
消灯時においては、添付図での消灯の選択を可能にし、緊急時はダイレクト消灯、定常の消灯時は、ソフト消灯を選択させる。図2の事例では、消灯時の封入物の冷却による安定までに40分かかるため、消灯放電時間を40分とした。
【0063】
点灯時においては、放電灯内部の封入物が安定するまで30分かかるため、始動放電継続時間を30分とした。
【実施例】
【0064】
以下、本発明に係る放電灯点灯回路の実施例について添付図面を参照して詳述する。
図4はその回路図である。
【0065】
第1交流電源3によってAC1100V、60Hzの交流電圧が印加され、第1交流電源3に対して直列に漏洩変圧器11、放電灯5、および100Aに電流制限する安定器4が接続されている。
【0066】
一方、漏洩変圧器11の1次側が接続される交流電源1はAC220V、60Hzの交流電圧を出力し、電源の入り切り制御を低圧で行う。そして、漏洩変圧器11の二次電圧は、放電灯5が始動放電を開始する電圧(この実施例の場合は6600V)から、直列に接続、重畳される第1交流電源3の電圧(この実施例の場合は1100V)を減算した電圧(この実施例の場合は5500V)とする。また、放電灯端子12と並列に、一次側の定格電圧が1100V、二次側の定格電圧が110Vの仕様の計器用変圧器14を接続している。さらに、この実施例では、放電灯5の定格電圧は1100V、始動放電開始電圧は6600Vである。
【0067】
次いで、放電灯点灯動作を説明する。 先ず、第2交流電源1および第1交流電源3を供給してから(具体的には、例えばコンセントにプラグを差し込んでから)、第4開閉装置7を閉路する。そして、始動電圧を印加するために、第2開閉器10を開路してから第3開閉器6を閉路した後、第5開閉器8を閉路する。
【0068】
この状態で放電灯端子12には、第1交流電源3と漏洩変圧器11の2次電圧とが加算され、6600Vが印可される。その際に、計器用変圧器14の1次側の定格電圧を超過することになるため、漏洩変圧器11との間で発振現象が起こり、そのことによってランプ5は容易に始動放電を開始する。
【0069】
その後、放電が完了したために起こる放電灯端子12での電圧低下を確認した後、第1開閉装置9を閉路する。これにより、放電灯端子12には1100Vの交流電圧が印加されると同時に、安定器4によって100Aに電流制限が掛かり、安定した主放電を開始する。
【0070】
また、この状態で第1開閉装置9の入り切り操作を繰り返すと、計器用変成器14の働きにより容易に発振を掛けることが可能であるため、放電灯5を点滅させることができるほか、消灯直後であっても瞬時に再点灯させることが可能になる。
【0071】
その後、第3開閉装置6を開路させると同時に第2開閉装置10を閉路させて開閉サージを吸収し、第5開閉装置8を開路させて漏洩変圧器11を主放電回路と切り離して、主点灯継続のための動作を完了する。
【0072】
この場合においては、2次側のインピーダンス変化に応じて出力電流を制限し、かつ出力電圧を可変することが可能な変圧器として使用する漏洩変圧器11の2次電圧が5500Vで、それに直列に第1交流電源3の1100Vが加算され、放電灯端子12に6600Vが印加される。それに対して出力電圧によってインピーダンス変化を生じる手段を含む変圧器として使用する計器用変成器14の定格電圧が1100Vであるために、前述の通り発振回路が形成されることとなる。
【0073】
消灯時においては、添付図での消灯の選択を可能にし、緊急時はダイレクト消灯、定常の消灯時は、ソフト消灯を選択させる。図4の実施例では、消灯時の封入物の冷却による安定までに40分かかるため、消灯放電時間を40分とし、点灯時においては、放電灯内部の封入物が安定するまで30分かかるため、始動放電継続時間を30分とすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
放電灯の点灯回路を簡単な機器構成で構成できるほか、開閉サージや循環電流などの問題が解決できる。
【0075】
特に1kWを超えるような大容量の放電灯点灯回路においては、始動時に高い始動電圧を要求される一方、点灯中は大電流を要求されるなど設備的な要求が存在する中で、安価かつ簡単、高信頼性、省エネなどを満足する放電灯点灯回路として利用することができる。
【0076】
スタジアムや公共施設(トンネルや道路)において、停電後の再点灯に要する待機時間を無くすことができるほか、劇場や灯台など高圧放電灯の点滅を要求する用途においても利用が可能となる。電源回路構成としても、簡単な機器構成で、発振回路に必要とされていた半導体を省くことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0077】

【図1】本発明の放電灯点灯回路の一実施形態を示す電気回路図である。
【図2】放電灯点灯動作の一例を説明するフローチャートである。
【図3】放電灯消灯動作の一例を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の放電灯点灯回路の一例を示す電気回路図である。
【符号の説明】
【0078】

1 第2交流電源
2 第1変圧器
3 第1交流電源
4 安定器
5 放電灯
6 第3開閉装置
7 第4開閉装置
8 第5開閉装置
9 第1開閉装置
10 第2開閉装置
11 漏洩変圧器
12 放電灯端子
13 第2変圧器
14 計器用変圧器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯点灯中に放電灯点灯継続電圧を供給する電源回路に対して、
2次側のインピーダンス低下に応じて出力電流を制限することが可能な変圧器(2)によって所定の電圧を発生する電圧発生回路と、安定器(4)とを直列に接続してなる始動回路と、
前記変圧器(2)の2次側端子間を短絡するための第1開閉装置(9)と
を接続してあることを特徴とする放電灯点灯回路。
【請求項2】
前記変圧器(2)は、漏洩変圧器またはネオントランスである請求項1に記載の放電灯点灯回路。
【請求項3】
前記変圧器(2)の1次側において、その端子間を短絡させる第2開閉装置(10)と、その端子に対する電源供給、電源非供給を選択させる第3開閉装置(6)とを接続してある請求項1または請求項2に記載の放電灯点灯回路。
【請求項4】
前記始動回路は、発振回路を含んでいる請求項1から請求項3の何れかに記載の放電灯点灯回路。
【請求項5】
前記発振回路は、2次側のインピーダンス変化に応じて出力電圧を可変させることが可能な変圧器と、その出力電圧によってインピーダンス変化を生じる手段(13)を含んでいる請求項4に記載の放電灯点灯回路。
【請求項6】
放電灯の消灯時にも、始動放電を行わせる制御を行う放電制御手段をさらに含む請求項3から請求項5の何れかに記載の放電灯点灯回路。
【請求項7】
放電灯の点灯時に、始動放電を行わせる時間を制御する時間制御手段をさらに含む請求項3から請求項5の何れかに記載の放電灯点灯回路。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate