説明

放電灯点灯装置および放電灯点灯方法

【課題】放電灯を確実に点灯させつつ、かつ放電灯および放電灯点灯装置を構成する各回路素子に対して、予期しないノイズ電流および/または過大な電流が流れることを抑制する放電灯点灯装置および放電灯点灯方法を提供する。
【解決手段】放電灯点灯装置における制御回路部は、駆動周波数を所定の起点周波数から降下させて、共振電圧が、放電灯が点灯する点灯電圧に到達した場合、当該点灯電圧における駆動周波数を、放電灯を点灯させる周波数である放電灯点灯駆動周波数として設定し、駆動周波数を所定の起点周波数から共振周波数まで降下させても、共振電圧が点灯電圧に到達しない場合、共振電圧のピーク電圧における駆動周波数より所定値だけ大きい周波数を放電灯点灯駆動周波数として設定し、インバータ回路部は、制御回路部によって設定された放電灯点灯駆動周波数で共振回路部を交流駆動させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯を点灯させる放電灯点灯装置および放電灯点灯方法に関し、より特定的には、LC共振を用いた放電灯点灯装置および放電灯点灯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
投射型画像表示装置(例えばプロジェクター)では、画像投射のため、高圧水銀灯ランプ等の放電灯が用いられる。そして、当該放電灯を点灯させる放電灯点灯装置は、当該放電灯を安定的に点灯させることが求められている。
【0003】
一般的に、放電灯点灯装置は、電極間の放電を開始させてから安定動作に移行するまでの高電圧を発生させる機能と、電極間の放電が安定動作に移行した後に、低電圧で所望の安定した電力を放電灯に供給する機能とを有する。
【0004】
上記高電圧を発生させる機能を実現する高電圧発生回路は、一般的に、直列LC共振回路を有し、当該直列LC共振回路における共振現象によって得られる共振電圧を放電灯の電極に印加する。これにより、放電灯が点灯する。
【0005】
その際、直列LC共振回路におけるインダクタ(L)およびキャパシタ(C)の値には、それぞれ個体バラツキがあるため、直列LC共振回路毎に共振周波数を特定し、制御する必要となる。
【0006】
例えば、特許文献1には、直列LC共振回路における共振周波数を含む範囲において、放電灯を起動放電させる交流ランプ電圧の周波数を繰り返して上昇および下降させる放電灯点灯装置が開示されている。当該放電灯点灯装置は、このようにして発生した共振電圧を放電灯に印加することによって放電灯を安定的に点灯させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−217953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した直列LC共振回路では、LおよびCの値の個体バラツキだけでなく、コイルに発生する熱による損失、巻線による損失、巻き方による巻線容量、および温度特性等による個体バラツキがある。さらには、当該直列LC共振回路を駆動させるインバータ回路部、および当該インバータ回路部に電源電圧を供給する電源回路部等の回路動作による個体バラツキもある。これにより、従来の放電灯点灯装置では、直列LC共振回路によって発生する共振電圧値も大きく変動する。
【0009】
そのため、直列LC共振回路における共振周波数において、放電灯を安定的に点灯させるための高電圧を確実に得ることができず、放電灯の点灯不良が発生する可能性がある。
【0010】
また、逆に、当該共振周波数における共振電圧のピーク値が大きく上昇してしまい、共振周波数による駆動時には、放電灯および放電灯点灯装置を構成する各回路素子に対して、予期しない過大な電流または電圧が発生し、当該放電灯および回路素子を破壊してしまう可能性もある。
【0011】
それ故に、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、放電灯を点灯させる際、当該放電灯に印加する高電圧を制御することによって、当該放電灯を安定的に点灯させつつ、かつ放電灯および放電灯点灯装置を構成する各回路素子に対して、予期しない過大な電流または電圧が発生することを抑制する放電灯点灯装置および放電灯点灯方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の放電灯点灯装置は、放電灯を点灯させる放電灯点灯装置であって、直流電源電圧を供給する直流電源生成回路部と、インダクタとキャパシタとから構成され、当該インダクタおよびキャパシタによる共振電圧を放電灯に印加する共振回路部と、放電灯に印加されている共振電圧を検出する電圧検出回路部と、直流電源生成回路部によって供給される直流電源電圧に基づいて、共振回路部を駆動周波数で交流駆動させるインバータ回路部と、電圧検出回路部によって検出される共振電圧を監視し、当該共振電圧に基づいてインバータ回路部を制御する制御回路部とを備え、制御回路部は、駆動周波数を所定の起点周波数から降下させて、共振電圧が放電灯が点灯する点灯電圧に到達した場合、当該点灯電圧における駆動周波数を放電灯を点灯させる周波数である放電灯点灯駆動周波数として設定し、駆動周波数を所定の起点周波数から共振周波数まで降下させても、共振電圧が点灯電圧に到達しない場合、共振電圧のピーク電圧における駆動周波数より所定値だけ大きい周波数を放電灯点灯駆動周波数として設定し、インバータ回路部は、制御回路部によって設定された放電灯点灯駆動周波数で共振回路部を交流駆動させることを特徴とする。
【0013】
好ましい制御回路部は、放電灯点灯駆動周波数でインバータ回路部を制御することを特徴とする。
【0014】
さらに、好ましい制御回路部は、所定期間継続して放電灯点灯駆動周波数を設定することを特徴とする。
【0015】
また、好ましい制御回路部は、放電灯点灯駆動周波数を周期的に設定することを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の放電灯点灯方法は、放電灯を点灯させる放電灯点灯装置が実行する放電灯点灯方法であって、インバータ回路が駆動する駆動周波数を所定の起点周波数に設定するステップと、駆動周波数を起点周波数から一定時間毎に徐々に降下させるステップと、インダクタとキャパシタとから構成された共振回路における共振電圧が放電灯が点灯する予め設定された点灯電圧に到達したかを検出するステップと、共振電圧が点灯電圧に到達していない場合、点灯電圧より小さい当該共振電圧のピーク電圧における駆動周波数を取得し、当該共振周波数より所定値だけ大きい駆動周波数を放電灯点灯駆動周波数として設定するステップと、共振電圧が点灯電圧に到達した場合、当該点灯電圧における駆動周波数を取得し、当該駆動周波数を放電灯点灯駆動周波数として設定するステップと、放電灯点灯駆動周波数でインバータ回路を駆動させるように制御するステップとを含む。
【0017】
また、上記目的を達成するために、上述した本発明の放電灯点灯装置の各構成が行うそれぞれの処理は、一連の処理手順を与える放電灯点灯方法として捉えることができる。この方法は、一連の処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムの形式で提供される。このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で、コンピュータに導入されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
上述のように、本発明の放電灯点灯装置および放電灯点灯方法によれば、放電灯を点灯させる際、当該放電灯に印加する高電圧を制御することによって、当該放電灯を安定的に点灯させつつ、かつ放電灯および放電灯点灯装置を構成する各回路素子に対して、予期しない過大な電流または電圧が発生することを抑制することができる。
【0019】
その結果、放電灯および放電灯点灯装置を構成する各回路素子の故障率を低減することができ、ユーザに対して信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る放電灯点灯装置100の構成を示すブロック図
【図2】本発明の一実施形態に係る放電灯点灯装置100におけるインバータ回路部120および共振回路部130の内部構成を示す図
【図3】インバータ回路部120の駆動周波数と、共振回路部130による共振電圧との関係を示すグラフ
【図4】インバータ回路部120の駆動周波数を、起点周波数fsから徐々に降下させた場合における、スイッチング素子Q4に流れるドレイン電流Idの様子を示す図
【図5】共振電圧が点灯電圧Vonに到達する場合における、共振回路部130による共振電圧およびインバータ回路部120の駆動周波数の様子を示すタイミングチャート
【図6】共振電圧が点灯電圧Vonに到達しない場合における、共振回路部130による共振電圧およびインバータ回路部120の駆動周波数の様子を示すタイミングチャート
【図7】本発明の一実施形態に係る放電灯点灯装置100が実行する放電灯点灯方法700の処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る放電灯点灯装置100の構成を示すブロック図である。図1において、放電灯点灯装置100は、直流電源生成回路部110と、インバータ回路部120と、共振回路部130と、電圧検出回路部140と、制御回路部150とを備える。そして、放電灯点灯装置100は、4つのスイッチング素子からなるフルブリッジ回路方式の直流交流転流器によって、放電灯200に交流電圧を印加して、放電灯200を点灯させる。
【0022】
直流電源生成回路部110は、インバータ回路部120に直流電源電圧であるベース電圧を供給する。
【0023】
インバータ回路部120は、直流電源生成回路部110によって供給される直流電源電圧に基づいて、共振回路部130を駆動周波数で交流駆動させる。
【0024】
共振回路部130は、インダクタとキャパシタとから構成され、当該インダクタおよびキャパシタによる共振電圧を放電灯200に印加する。具体的には、共振回路部130は、直列LC回路によって構成され、放電灯200の点灯始動時に当該放電灯200の電極間に放電を起こさせるために、高電圧を発生させる。
【0025】
電圧検出回路部140は、放電灯200に印加されている共振電圧を検出する。具体的には、電圧検出回路部140は、共振回路部130によって発生した電圧を分圧して、当該電圧を検出する。
【0026】
制御回路部150は、電圧検出回路部140によって検出される共振電圧を監視し、当該共振電圧に基づいてインバータ回路部120を制御する。具体的には、制御回路部150には、電圧検出回路部140によって検出された共振電圧がフィードバックされる。そして、制御回路部150は、直流電源生成回路部110を制御することによって、インバータ回路部120に供給されるベース電圧を制御する。また、制御回路部150は、インバータ回路部120の駆動を直接制御する。
【0027】
図2は、本発明の一実施形態に係る放電灯点灯装置100におけるインバータ回路部120および共振回路部130の内部構成を示す図である。図2において、インバータ回路部120は、4つのスイッチング素子Q1〜Q4のフルブリッジ回路構成を含み、共振回路部130は、直列LC共振回路構成を含む。
【0028】
インバータ回路部120には、直流電源電圧であるベース電圧が供給されて、スイッチング素子Q1およびQ4がオンされ、スイッチング素子Q2およびQ3がオフされる期間と、スイッチング素子Q1およびQ4がオフされ、スイッチング素子Q2およびQ3がオンされる期間とを交互に繰り返すことによって、交流電圧を発生させる。
【0029】
なお、ここで発生する交流電圧の周波数は、インバータ回路部120の駆動周波数に基づいて決定される。
【0030】
共振回路部130には、ベース電圧と、インバータ回路部120の駆動周波数とに基づいて決定される交流電圧が印加される。そして、当該駆動周波数が直列LC回路の共振周波数近傍の周波数になると、Cの両端に共振電圧(高電圧)が発生する。
【0031】
放電灯200は、共振回路部130のCと並列に接続されており、共振電圧(高電圧)が印加される。これにより、放電灯200内の電極間が絶縁破壊されて、放電灯200が点灯する。
【0032】
図3は、インバータ回路部120の駆動周波数と、共振回路部130による共振電圧との関係を示すグラフである。図3において、駆動周波数が共振周波数f0よりも低い周波数領域を領域Aとし、駆動周波数が共振周波数f0よりも高い周波数領域を領域Bとする。
【0033】
インバータ回路部120の駆動周波数は、制御回路部150によって制御されている。制御回路部150は、当該駆動周波数を共振周波数f0より十分高い起点周波数fsから一定時間毎に徐々に降下させるように制御する。
【0034】
インバータ回路部120の駆動周波数が起点周波数fsから共振周波数f0までの周波数領域Bにおいて、共振回路部130による共振電圧は、インバータ回路部120の駆動周波数の降下(時間の経過)に伴い、上昇する。
【0035】
そして、インバータ回路部120の駆動周波数が共振周波数f0となる点において、共振回路部130による共振電圧は、ピーク電圧Vpとなる。
【0036】
さらに、インバータ回路部120の駆動周波数が共振電圧f0より低い周波数領域Aにおいて、共振回路部130による共振電圧は、駆動周波数を降下させるに伴って、降下する。
【0037】
図4は、インバータ回路部120の駆動周波数を、起点周波数fsから徐々に降下させた場合における、スイッチング素子Q4に流れるドレイン電流Idの様子を示す図である。インバータ回路部120の駆動周波数を、起点周波数fsから共振周波数f0まで徐々に降下させて(領域A)、さらに共振周波数f0より十分低い周波数まで降下させる(領域B)。図4に示すように、スイッチング素子Q4に流れるドレイン電流Idは、領域Aにおいて、サージ電流が発生している(領域A1の拡大波形)。
【0038】
換言すれば、インバータ回路部120の駆動周波数が領域Aの範囲である場合には、上記ドレイン電流Idには、予期しない過大な電流であるサージ電流が発生してしまう。
【0039】
ここで、従来の放電灯点灯装置では、直列LC共振回路におけるインダクタ(L)およびキャパシタ(C)の個体バラツキを考慮して、インバータ回路部の駆動周波数を、繰り返して上昇および下降させていた。これにより、共振周波数f0における共振電圧のピーク電圧Vpを検出し、放電灯内の電極間を確実に絶縁破壊させる十分な高電圧を得ている。一方、共振周波数f0におけるピーク電圧Vpが過大な電圧である場合には、インバータ回路部120におけるスイッチング素子等に過大な電流または電圧が発生し、当該放電灯および回路素子を破壊してしまう可能性を有している。
【0040】
そこで、本発明の一実施形態では、図3に示すように、インバータ回路部120の駆動周波数が領域Bの範囲であって、放電灯200が点灯する点灯電圧Vonを設定する。ここで、点灯電圧Vonは、共振周波数f0における共振電圧のピーク電圧Vpより小さい。
【0041】
具体的には、点灯電圧Vonは、予め放電灯200内の電極間を絶縁破壊する電圧として設定されている。そして、インバータ回路部120の駆動周波数を、起点周波数fsから徐々に降下させて、共振周波数f0より高い周波数f1において点灯電圧Vonを検出した際、当該周波数f1を、放電灯200を点灯させる周波数である放電灯点灯駆動周波数として設定する。
【0042】
図5は、共振電圧が点灯電圧Vonに到達する場合における、共振回路部130による共振電圧およびインバータ回路部120の駆動周波数の様子を示すタイミングチャートである。ここで、放電灯200の特性として、放電灯200内の電極間を絶縁破壊する電圧が2.7kV以上である場合、点灯電圧Vonを3kVと設定する。
【0043】
共振回路部130のL(インダクタ)およびC(キャパシタ)の値のセンター値によって算出される共振周波数f0が約350kHzである場合、インバータ回路部120の駆動周波数における3次高調波によって、共振回路部130の共振電圧を取得する。すなわち、インバータ回路部120の駆動周波数が共振周波数f0(≒350kHz)の1/3(≒117kHz)となる際に、共振回路部130の共振電圧は、ピーク電圧Vpとなる。
【0044】
上述したように、通常、共振回路部130の共振周波数f0は、LおよびCの個体バラツキ等を伴うため、インバータ回路部120の駆動周波数を個体毎および起動毎に調整する必要がある。図3に示した起点周波数fsは、共振回路部130による共振周波数f0(≒350kHz)より十分高い周波数(ここでは、450kHzとする)に設定し、インバータ回路部120の駆動を開始する(駆動周波数は150kHz)。
【0045】
そして、当該駆動周波数を起点周波数fs(=450kHz)から一定時間毎に徐々に降下させると、共振周波数f0よりも高い周波数f1において(時刻t1)、電圧検出回路部140は、共振回路部130による共振電圧が点灯電圧Von(3kV)であることを検出する。これにより、当該共振電圧(=点灯電圧Von)における周波数f1(駆動周波数は(f1)/3)をインバータ回路部120の駆動周波数(放電灯点灯駆動周波数)として設定する。
【0046】
時刻t1から時刻t2までの期間において、駆動周波数を周波数f2まで上昇させ、共振電圧を点灯電圧Von(3kV)より十分低い電圧V1まで降下させる。
【0047】
時刻t2から時刻t3までの期間において、再度、駆動周波数を周波数f2から一定時間毎に徐々に降下させる。そして、時刻t3から時刻t4までの期間において、放電灯200に対して、共振電圧(=点灯電圧Von)を印加し続けるようにする。
【0048】
その後、時刻t4から時刻t5までの期間において、再度、駆動周波数を周波数f2まで上昇させ、共振電圧を点灯電圧Von(3kV)より十分低い電圧V1まで降下させる。
【0049】
以降、時刻t2から時刻t5までの動作を、放電灯200が点灯するまで繰り返す。
【0050】
上述のように、時刻t3から時刻t4までの期間において、点灯電圧Von(3kV)という高電圧を放電灯200に対して印加し続けながら、一方、全体的な期間においては、断続的に、点灯電圧Von(3kV)という高電圧を放電灯200に対して印加していることになる。
【0051】
したがって、放電灯200および放電灯点灯装置100を構成する各回路素子に対して、予期しない過大な電流が流れることを抑制し、放電灯200を確実に点灯させる。また、駆動周波数は、常に共振周波数f0よりも高い周波数であるため(図3および図4で示す領域B)、インバータ回路部120に流れるドレイン電流Idには、予期しない過大な電流であるサージ電流が発生しない。
【0052】
換言すれば、仮に、共振周波数f0における共振電圧のピーク電圧Vpが4kVであったとしても、電圧検出回路部140によって、共振電圧が点灯電圧Von(3kV)であることを検出すれば、当該共振電圧(=点灯電圧Von)における周波数f1(駆動周波数は(f1)/3)をインバータ回路部120の駆動周波数(放電灯点灯駆動周波数)として設定する。これにより、必要以上に過大な電流が流れることを防止し、駆動周波数は、常に共振周波数f0よりも高い周波数であるため(図3および図4で示す領域B)、インバータ回路部120に流れるドレイン電流Idには、予期しない過大な電流であるサージ電流が発生しない。
【0053】
さらに、放電灯点灯装置100を構成する各回路素子の個体バラツキおよび周辺温度等の環境に応じて、共振電圧3kVを出力できない可能性もある。つまり、電圧検出回路部140によって点灯電圧Von(=3kV)が検出されることがない。この場合、インバータ回路部120の駆動周波数(放電灯点灯駆動周波数)を設定できず、制御回路部150はインバータ回路部120を制御できない可能性がある。
【0054】
具体的には、インバータ回路部120の駆動周波数を起点周波数fsから一定時間毎に徐々に降下させていく過程において、点灯電圧Von(=3kV)が検出される前に、共振電圧のピーク電圧Vpが検出される。その際、放電灯200が点灯する可能性はあるが、放電灯200に対して高電圧を1回だけ印加したとしても、放電灯200の電極間を絶縁破壊することができないことが多く、不点灯となる可能性がある。換言すれば、放電灯200の電極間を絶縁破壊するためには、共振電圧のピーク電圧Vpよりも小さくなっても、放電灯200の電極間に断続的に高電圧を印加することで不点灯となる可能性を大幅に改善する必要がある。
【0055】
図6は、共振電圧が点灯電圧Vonに到達しない場合における、共振回路部130による共振電圧およびインバータ回路部120の駆動周波数の様子を示すタイミングチャートである。図5で説明したように、同様に、起点周波数fsを、共振回路部130による共振周波数f0(≒350kHz)より十分高い周波数(450kHz)に設定し、インバータ回路部120の駆動を開始する(駆動周波数は150kHz)。
【0056】
そして、当該駆動周波数を起点周波数fs(=450kHz)から一定時間毎に徐々に降下させるが、ここでは、電圧検出回路部140は、共振回路部130による共振電圧が点灯電圧Von(3kV)に到達することを検出することなく、共振周波数f0における共振電圧のピーク電圧Vpを検出することになる。
【0057】
より詳細には、インバータ回路部120の駆動周波数を起点周波数fsから一定時間毎に徐々に降下させることによって共振電圧を上昇させる。そして、共振周波数f0から更に共振周波数f0より低い周波数(領域A)まで降下させ、時間t12において、共振周波数f0より十分低い周波数f11まで降下させる。ここで、時刻0から時刻t12の期間において、電圧検出回路部140は、共振周波数f0における共振電圧のピーク電圧Vpを検出する。
【0058】
なお、時刻0から時刻t12までの期間において、共振周波数f0より所定値だけ高い周波数f13(時刻t11)における共振電圧V11を、放電灯200を点灯させるための高電圧とし、当該周波数f13(駆動周波数は(f13)/3)を、放電灯200を点灯させる周波数である放電灯点灯駆動周波数として決定しておく。
【0059】
時刻t12において、一旦、インバータ回路部120の駆動周波数を、共振周波数f13より所定値だけ高い周波数f12まで上昇させる。
【0060】
時刻t12から時刻t13の期間において、インバータ回路部120の駆動周波数を、周波数f12から上述した周波数f13まで、一定時間毎に徐々に降下させることによって、電圧検出回路部140は、共振回路部130による共振電圧が共振電圧V11に到達することを検出する
【0061】
時刻t13から時刻t14の期間において、周波数f13(駆動周波数はその1/3)を保持することによって、放電灯200に対して、共振電圧V11を印加し続けるようにする。
【0062】
その後、時刻t14から時刻t15までの期間において、駆動周波数を周波数f12まで上昇させ、共振電圧を共振電圧V11より十分低い共振電圧V12まで降下させる。
【0063】
以降、時刻t12から時刻t15までの動作を、放電灯200が点灯するまで繰り返す。
【0064】
上述のように、時刻t13から時刻t14までの期間において、共振電圧V11(ピーク電圧よりも少し小さい電圧)という高電圧を放電灯200に対して印加し続けながら、一方、全体的な期間においては、断続的に、共振電圧V11という高電圧を放電灯200に対して印加していることになる。
【0065】
したがって、放電灯200および放電灯点灯装置100を構成する各回路素子に対して、予期しない過大な電流または電圧が発生することを抑制し、確実に、断続的な共振電圧V11という高電圧を放電灯200に対して印加することで、放電灯200を安定的に点灯させる。また、駆動周波数は、常に共振周波数f0よりも高い周波数であるため(図3および図4で示す領域B)、インバータ回路部120に流れるドレイン電流Idには、予期しない過大な電流であるサージ電流が発生しない。
【0066】
より詳細には、電圧検出回路部140によって点灯電圧Von(=3kV)が検出されない場合であっても、共振周波数f0近傍における、ほぼピーク電圧Vpである共振電圧V11を継続して出力可能としている。その結果、放電灯200に対して1回だけ高電圧を印加する場合に比べて、放電灯200の点灯性能を飛躍的に改善することができる。
【0067】
また、駆動周波数は、常に共振周波数f0よりも高い周波数であるため(図3および図4で示す領域B)、インバータ回路部120に流れるドレイン電流Idには、予期しない過大な電流であるサージ電流が発生しない。
【0068】
次に、本発明の一実施形態に係る放電灯点灯装置100が実行する放電灯点灯方法について、処理の流れを詳しく説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る放電灯点灯装置100が実行する放電灯点灯方法700の処理の流れを示すフローチャートである。
【0069】
先ず、放電灯点灯開始指示があると、ステップS710において、制御回路部150は、インバータ回路部120の駆動周波数を起点周波数fsに設定する。
【0070】
ステップS720において、制御回路部150は、インバータ回路部120の駆動周波数を、起点周波数fsから一定時間毎に徐々に降下させる。
【0071】
ステップS730において、制御回路部150は、共振回路部130における共振電圧が点灯電圧Vonに到達したか否かを判定する。具体的には、電圧検出回路部140は、共振回路部130における共振電圧を監視し、当該共振電圧が点灯電圧Vonに到達した場合、当該情報を制御回路部150に通知すればよい。
【0072】
ここで、当該共振電圧が点灯電圧Vonに到達していない場合には、ステップS740の処理に進み(ステップS730のNo)、当該共振電圧が点灯電圧Vonに到達した場合には、ステップS770の処理に進む(ステップS730のYes)。なお、ステップS770の処理に進むことは、ピーク電圧Vp>点灯電圧Vonであって、放電灯点灯装置100は、上述した図5で説明したように動作する。
【0073】
ステップS740において、制御回路部150は、共振回路部130における共振電圧のピーク電圧Vpを検出する。具体的には、電圧検出回路部140は、共振回路部130における共振電圧を監視し、当該共振電圧のピーク電圧Vpを検出して、当該情報を制御回路部150に通知すればよい。
【0074】
ここで、当該共振電圧が点灯電圧Vonに到達せずに(ステップS730のNo)、共振回路部130における共振電圧のピーク電圧Vpを検出することは、ピーク電圧Vp≦点灯電圧Vonであって、放電灯点灯装置100は、上述した図6で説明したように動作する。
【0075】
ステップS750において、制御回路部150は、ピーク電圧Vpにおける共振周波数f0を取得する。具体的には、電圧検出回路部140は、共振回路部130における共振電圧を監視し、制御回路部150は、当該共振電圧がピーク電圧Vpに到達したことを認識することによって、制御回路部150は、当該ピーク電圧Vpにおける共振周波数f0を取得すればよい。
【0076】
ステップS760において、制御回路部150は、共振周波数f0より所定値だけ大きい周波数f13を放電灯点灯駆動周波数に設定する。
【0077】
ステップS770において、制御回路部150は、点灯電圧Vonにおける駆動周波数を放電灯点灯駆動周波数に設定する。
【0078】
ステップS780において、制御回路部150は、ステップS760またはステップS770で設定された放電灯点灯駆動周波数でインバータ回路部120を駆動させるように制御する。これにより、共振電圧V11または点灯電圧Vonという高電圧を放電灯200に印加する。
【0079】
以上のように、本発明の一実施形態に係る放電灯点灯装置100および放電灯点灯方法700によれば、放電灯200を点灯させる際、当該放電灯200に印加する高電圧を制御することによって、当該放電灯200を確実に点灯させつつ、かつ放電灯200および放電灯点灯装置100を構成する各回路素子に対して、予期しない過大な電流または電圧が発生することを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、例えば、高圧水銀灯ランプ等を放電灯として用いる放電灯点灯装置および投射型画像装置等に有用である。
【符号の説明】
【0081】
100 放電灯点灯装置
110 直流電源電流生成回路部
120 インバータ回路部
130 共振回路部
140 電圧検出回路部
150 制御回路部
200 放電灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯を点灯させる放電灯点灯装置であって、
直流電源電圧を供給する直流電源生成回路部と、
インダクタとキャパシタとから構成され、当該インダクタおよびキャパシタによる共振電圧を前記放電灯に印加する共振回路部と、
前記放電灯に印加されている共振電圧を検出する電圧検出回路部と、
前記直流電源生成回路部によって供給される直流電源電圧に基づいて、前記共振回路部を駆動周波数で交流駆動させるインバータ回路部と、
前記電圧検出回路部によって検出される共振電圧を監視し、当該共振電圧に基づいて前記インバータ回路部を制御する制御回路部とを備え、
前記制御回路部は、
前記駆動周波数を所定の起点周波数から降下させて、前記共振電圧が前記放電灯が点灯する点灯電圧に到達した場合、当該点灯電圧における駆動周波数を前記放電灯を点灯させる周波数である放電灯点灯駆動周波数として設定し、
前記駆動周波数を前記所定の起点周波数から共振周波数まで降下させても、前記共振電圧が前記点灯電圧に到達しない場合、前記共振電圧のピーク電圧における駆動周波数より所定値だけ大きい周波数を前記放電灯点灯駆動周波数として設定し、
前記インバータ回路部は、前記制御回路部によって設定された放電灯点灯駆動周波数で前記共振回路部を交流駆動させることを特徴とする、放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記制御回路部は、前記放電灯点灯駆動周波数で前記インバータ回路部を制御することを特徴とする、請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記制御回路部は、所定期間継続して前記放電灯点灯駆動周波数を設定することを特徴とする、請求項2に記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記制御回路部は、前記放電灯点灯駆動周波数を周期的に設定することを特徴とする、請求項2に記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
放電灯を点灯させる放電灯点灯装置が実行する放電灯点灯方法であって、
インバータ回路が駆動する駆動周波数を所定の起点周波数に設定するステップと、
前記駆動周波数を前記起点周波数から一定時間毎に徐々に降下させるステップと、
インダクタとキャパシタとから構成された共振回路における共振電圧が前記放電灯が点灯する予め設定された点灯電圧に到達したかを検出するステップと、 前記共振電圧が前記点灯電圧に到達していない場合、前記点灯電圧より小さい当該共振電圧のピーク電圧における駆動周波数を取得し、当該共振周波数より所定値だけ大きい駆動周波数を放電灯点灯駆動周波数として設定するステップと、
前記共振電圧が前記点灯電圧に到達した場合、当該点灯電圧における駆動周波数を取得し、当該駆動周波数を放電灯点灯駆動周波数として設定するステップと、
前記放電灯点灯駆動周波数で前記インバータ回路を駆動させるように制御するステップとを含む、放電灯点灯方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−33471(P2012−33471A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139539(P2011−139539)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】