説明

放電灯点灯装置

【課題】バッテリから放電灯に流れる電流を制限することが可能な、小型で廉価な放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】バッテリの電圧と生成した付加電圧とを加算した電圧をDC/DCコンバータから出力し、出力した電圧をインバータにより交流電圧に変換した上で放電灯に印加する放電灯点灯装置において、バッテリ電圧検出手段によりバッテリの電圧を検出し、出力電圧検出手段によりDC/DCコンバータの出力電圧を検出し、DC/DCコンバータの出力電圧がバッテリの電圧付近まで低下しているか否かを判定する。DC/DCコンバータの出力電圧がバッテリの電圧付近まで低下している場合には、インバータの変換周波数を増加させることにより、放電灯に直列接続されたイグナイタの2次巻線のインピーダンスを増加させ、放電灯に流れる電流を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放電灯を点灯制御する放電灯点灯装置に関し、特に、自動車に搭載される車載ヘッドランプ用放電灯を点灯する放電灯点灯装置を小型で廉価にするものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車両においては、明るい視界が得られる高輝度光源の放電灯を組み込んだヘッドランプが普及しているが、その高品質化と低廉化は留まることのない常に要求される課題である。放電灯点灯装置を低廉化するためには、往々にして小型化が必要となり、DC/DCコンバータの小型化も課題となる。
【0003】
DC/DCコンバータを小型化する方法として、DC/DCコンバータに使用するフライバックトランスの1次巻線と2次巻線の一端を接続し、スイッチング素子がONのときに1次巻線に通電することにより蓄えた電磁エネルギーを、スイッチング素子がOFFのときに2次巻線に放出し出力電圧とする構成とするものがある。この構成では、スイッチング素子がONのときに1次巻線に通電することにより蓄えた電磁エネルギーをバッテリ電圧に重畳して出力するため、フライバックトランスのコアに蓄える電力を少なくすることができ、それによりコアの断面積を縮小することができる。コアの断面積を縮小すると、ボビン及びトランスも小型化できるため、以ってDC/DCコンバータも小型化することが可能となる。
【0004】
しかしながら、このDC/DCコンバータでは、フライバックトランスの1次巻線の巻終端子と2次巻線の巻始端子を接続しているため、24Vのバッテリを電源として使用するヘッドランプ用の放電灯点灯装置においては、DC/DCコンバータは24V以下の電圧を出力できない。その一方で、放電灯は点灯直後に非常に小さい抵抗値を呈する特性があるため、上記構成のDC/DCコンバータを採用するためには、バッテリからDC/Cコンバータを介して放電灯に流入する電流を制限し、適切な電力に制御する手段を設ける必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開平06−295790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の放電灯点灯装置は、当スイッチング素子を高速にチョッピング動作させることで、放電灯に流れる電流を制御するため、チョッピング動作のために高周波で駆動可能な高価なスイッチング素子を用いる必要があり、装置が高価になるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、バッテリから放電灯に流れる電流を制限することが可能な、小型で廉価な放電灯点灯装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る放電灯点灯装置は、
バッテリの電圧に基づいて付加電圧を生成し、当該付加電圧に前記バッテリの電圧を加算した電圧を出力するDC/DCコンバータと、前記バッテリの出力する電圧を検出するバッテリ電圧検出手段と、前記DC/DCコンバータの出力する電圧を検出する出力電圧検出手段と、前記DC/DCコンバータの出力する電圧を交流電圧に変換し、放電灯に出力するインバータと、前記インバータと前記放電灯との間に設けられた2次巻線、及び当該2次巻線と磁気的に結合した1次巻線を有し、前記DC/DCコンバータの出力により当該1次巻線に印加される電圧に基づいて、前記2次巻線に前記放電灯を始動させるための高電圧パルスを発生させるイグナイタと、前記インバータの変換周波数を変更する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記DC/DCコンバータの出力する電圧から前記バッテリの電圧を引算した値が所定の下限値以下のとき、前記交流電圧の周波数を増加させることにより、前記2次巻線のインピーダンスを増加させ、通電する電流を抑制するようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明はこのような構成を有することにより、小型で廉価な放電灯点灯装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の一実施形態に係る放電灯点灯装置を示す回路図である。図中において、放電灯点灯装置10は、DC/DCコンバータ4、DC/ACインバータ5、イグナイタ6、及び制御部8により構成されており、バッテリ1、及び放電灯7と接続している。
【0011】
バッテリ1は、放電灯点灯装置10に24Vの直流電圧を印加する。放電灯7は、放電管内に互いに対向して配置された放電端子を有しており、これら放電端子間において、放電灯点灯装置10から印加される電圧により放電が発生する。放電灯7の仕様は例えば、定格電力が35W、定格電圧が85V、最大許容電流が2.5Aである。
【0012】
DC/DCコンバータ4は、バッテリ1により印加される24Vの直流電圧を最大400Vの交流電圧に変換する昇圧回路11、及びこの昇圧回路11から出力される交流電圧を整流し直流電圧に変換する整流回路12から構成されており、バッテリ1から印加される直流電圧に対し生成した付加電圧を加算することにより昇圧した直流電圧を出力する。
【0013】
昇圧の方式としては、例えばフライバック方式を用いる。DC/DCコンバータ4の昇圧回路11は、バッテリ1に接続されるインダクタとしての1次巻線92、この1次巻線92に接続されるFET(Field Effect Transistor)91、1次巻線92と磁気的に結合し、巻始端子が1次巻線92の巻終端子と接続した第1の2次巻線93、1次巻線92と磁気的に結合し、巻始端子が第1の2次巻線93の巻終端子と接続した第2の2次巻線94から構成される。整流回路12は、第1の2次巻線93に接続されるダイオード95及びコンデンサ96、第2の2次巻線94に接続されるダイオード97及びコンデンサ98より構成される。
【0014】
DC/DCコンバータ4のFET91は制御部8と接続しており、制御部8によって数百KHzの周波数で切り替えられている。DC/DCコンバータ4は、FET91がONの時に電力を蓄積し、FET91がOFFの時に電力を出力するため、1周期におけるFET91のON時間とOFF時間との割合(以下、Duty)を変化させることで、出力する電力を変化させることができる。この割合の変化は制御部8により行われる。
【0015】
DC/ACインバータ5は、フルブリッジ型に連結した4個のトランジスタ51〜54から構成されており、トランジスタ51は上アーム側、トランジスタ52は下アーム側、トランジスタ53は上アーム側、トランジスタ54は下アーム側にそれぞれ位置している。トランジスタ51とトランジスタ54からなる組と、トランジスタ52とトランジスタ53とからなる組が交互にON/OFFを繰り返すことで、DC/ACインバータ5は、DC/DCコンバータ4により昇圧された直流電圧を交流電圧(矩形波)に変換し、放電灯7に印加する。トランジスタ51〜54は制御部8と接続しており、制御部8によって200Hz〜1000Hzの周波数でON/OFFを切り替えられている。
【0016】
イグナイタ6は、DC/DCコンバータ4に抵抗99を介して接続され、DC/DCコンバータ4により充電されるコンデンサ61、コンデンサ61に接続されたGAP62と、コンデンサ61及びGAP62に接続された1次巻線63、1次巻線63と磁気的に結合し、インバータ5の出力の一端と放電灯7との間に接続された2次巻線64から構成される。1次巻線63と2次巻線64との巻き数比は、例えば1対50とする。コンデンサ61の電圧がGAP62の絶縁破壊電圧以上になると1次巻線63に電流が流れ、2次巻線64に25kV程の高圧パルスが発生する。この高圧パルスが放電灯7に印加されることで、放電灯7の放電が開始する。なお、2次巻線64のインダクタンスは、概ね1mH、直流抵抗は概ね2.5Ωであるとする。当該2次巻線64は、放電灯7に流れる電流を低減するコイルとしても用いられる。
【0017】
制御部8は、バッテリ1の電圧VIN、DC/DCコンバータ4の出力電流ADC、及びDC/DCコンバータ4の出力電圧VDCを検出し、それら検出結果に基づいてDC/DCコンバータ4、及びDC/ACインバータ5を制御することで放電灯7を点灯制御する。放電灯7を自動車に搭載する場合、運転者が放電灯7を点灯させるライティングスイッチ(図示せず)を点灯に切り替えてから短時間で、放電灯7の点灯輝度を高輝度にする必要がある。そこで、制御部8は、放電灯7点灯直後に、DC/DCコンバータ4を制御し、放電灯7に大電力を供給することで、放電灯7を高輝度で点灯させる。
【0018】
制御部8の電圧入力端子aはバッテリ1の正側と接続しており、これにより制御部8はバッテリ1の電圧VINを検出する。また、制御部8の電圧入力端子bは、DC/DCコンバータ4の出力の負側に接続されたシャント抵抗100に接続しており、制御部8はシャント抵抗100に印加された電圧を検出することによってDC/DCコンバータ4の出力電流ADCを検出する。また、制御部8の電圧入力端子cは、DC/DCコンバータ4の出力の正側と接続しており、これにより制御部8は出力電圧VDCを検出する。また、制御部8のGND端子は、コンデンサ96の負側と接続しており、これにより制御部8はDC/DCコンバータ4の負側の電位をアース電位としている。
【0019】
図2は、図1に示した制御部8の内部構成を示す構成図である。図中において制御部8は、VIN検出部101(バッテリ電圧検出手段)、ADC検出部102、VDC検出部103(出力電圧検出手段)、周波数決定部104、周波数記憶部105、インピーダンス算出部106、放電灯電圧算出部107、電流指令値算出部108、Duty決定部109、インバータ駆動部110、メモリ111、コンバータ駆動部112により構成されている。
【0020】
周波数決定部104は、VIN検出部101にて検出した電圧入力端子aの電圧VIN、及びVDC検出部103にて検出した電圧入力端子cの電圧VDCにより、DC/ACインバータ5の動作周波数を決定する。動作周波数の決定方法については後述する。インバータ駆動部110は、周波数決定部104で決定された動作周波数で、DC/ACインバータ5内における、トランジスタ51とトランジスタ54からなる組と、トランジスタ52とトランジスタ53とからなる組のON/OFFを切り替える。周波数決定部104とインバータ駆動部110は、DC/ACインバータ5の動作周波数を変更する変更制御手段を構成する。周波数記憶部105は、周波数決定部104で決定された動作周波数を記憶し、周波数決定部104において動作周波数を決定する場合に、周波数決定部104に記憶した動作周波数を出力する。
【0021】
インピーダンス算出部106は、周波数記憶部105に記憶した動作周波数から、イグナイタ6の2次巻線64のインピーダンスを算出する。例えばインピーダンス算出部106は、内部に2次巻線64の通電周波数とインピーダンスとの関係を示す対応曲線を記憶しており、この対応曲線を用いてインピーダンスを算出する。
【0022】
図3は、イグナイタ6における2次巻線64のインピーダンスと通電周波数との関係を表した対応曲線を示す図である。縦軸にインピーダンス、横軸に通電周波数をとっており、通電周波数の増加に伴いインピーダンスが増加する様子が示されている。例えば、DC/ACインバータ5の動作周波数が400Hzの場合、2次巻線64への通電周波数も400Hzとなるため、インピーダンスが3.5[Ω]であることがわかる。なお、図3におけるインピーダンスの値は、正弦波交流を通電した場合の値である。
【0023】
放電灯電圧算出部107は、インピーダンス算出部106にて算出したイグナイタ6の2次巻線64のインピーダンスとADC検出部102が検出した電流ADCを用いて2次巻線64の電圧降下を算出し、当該2次巻線64の電圧降下とVDC検出部103にて検出した電圧VDCとから放電灯7の電圧を算出する。電圧VDCは、DC/ACインバータ5の電圧降下と、2次巻線64の電圧降下と、放電灯7の電圧とを加算した値になる。例えば、DC/ACインバータ5の電圧降下を2V、DC/ACインバータ5の動作周波数を400Hz、ADC検出部102が検出した電流ADCを2.5A、VDC検出部103にて検出した電圧VDCを30.8Vとした場合の放電灯7の電圧は、20Vであると算出できる。
【0024】
メモリ111は、放電灯の光出力を一定に保つための電圧−電流曲線を記憶する。電流指令値算出部108は、放電灯電圧算出部107にて算出した放電灯7の電圧に対応する電流指令値を電圧−電流曲線に基づいて算出する。Duty決定部109は、ADC検出部102にて検出した電流ADCが電流指令値に一致するように、DC/DCコンバータ4のFET91のDutyを決定する。コンバータ駆動部112は、Duty決定部109にて決定したDutyに基づいてDC/DCコンバータ4のFET91を駆動する。このようにして、放電灯7の光出力は略一定になるよう点灯制御される。なお、電流指令値算出部108、Duty決定部109、コンバータ駆動部112はコンバータ制御手段を構成する。
【0025】
次に、放電灯点灯装置10の動作について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る放電灯点灯装置の制御方法を示すフローチャートである。
【0026】
車輌の運転者により、放電灯を点灯させるスイッチ(図1には図示せず)が点灯状態に切り替えられると、バッテリ1は放電灯点灯装置10に対し直流電圧の印加を開始する。DC/DCコンバータ4は、印加された直流電圧を400Vまで昇圧し、放電灯7の電圧も約400Vとなる。コンデンサ61の充電圧がGAP62のスイッチング電圧に達すると、当GAP62が導通してコンデンサ61の電荷を放出することによってイグナイタ6が略25kVの高圧パルスを放電灯7に印加し、放電灯7が点灯する。
【0027】
放電灯7が点灯すると、図4に示すフローチャートの処理が開始する(S1)。VIN検出部101は、バッテリ1の電圧電圧VINを検出し(S2)、VDC検出部103は、DC/DCコンバータ4の出力する電圧VDCを検出する(S3)。周波数決定部104は、DC/DCコンバータ4の出力する電圧VDCからバッテリ1の電圧VINを除算することで電圧差を求め、当該電圧差が、5V以下か5Vより大きいかによって処理の切り替えを行う(S4)。
【0028】
電圧差が5V以下の場合、周波数決定部104は、周波数記憶部105に記憶されている現在のDC/ACインバータ5の動作周波数が1000Hzであるか判定する(S5)。S5における判定の結果、DC/ACインバータ5の動作周波数が1000Hzである場合は、動作周波数の変更は行わず、そのまま動作周波数を1000Hzとする。
【0029】
S5における判定の結果、動作周波数が400〜900Hzである場合は、周波数決定部104は、現在の動作周波数を100Hz増加させた周波数をDC/ACインバータ5の動作周波数とし(S6)、インバータ駆動部110は、当該動作周波数でDC/ACインバータ5を駆動させる信号をDC/ACインバータ5に出力する。周波数記憶部105は、新たに変更された動作周波数を記憶する。
【0030】
S4において求められた電圧差が5Vより大きい場合、当該電圧差が10V以上か10Vより小さいかを判定する(S7)。S7における判定の結果、電圧差が10V以上である場合は、更に、周波数記憶部105に記憶されている現在のDC/ACインバータ5の動作周波数が400Hzであるかの判定を行う(S8)。動作周波数が400Hzである場合は、動作周波数の変更は行わず、そのまま動作周波数を400Hzとする。
【0031】
S8における判定の結果、動作周波数が500〜1000Hzである場合は、周波数決定部104は、現在の動作周波数を100Hz減少させた周波数をDC/ACインバータ5の動作周波数とし(S9)、インバータ駆動部110は、当該動作周波数でDC/ACインバータ5を駆動させる信号をDC/ACインバータ5に出力する。周波数記憶部105は、新たに変更された動作周波数を記憶する。
【0032】
インピーダンス算出部106は、周波数記憶部105から動作周波数を読み出し、図3に示した対応曲線を用いて、読み出した動作周波数に対応するインピーダンスを算出する(S10)。放電灯電圧算出部107は、VDC検出部103にて検出した電圧VDC、ADC検出部102で検出した電流ADC、及びインピーダンス算出部106で求めたインピーダンスから放電灯7の電圧を算出する(S11)。電流指令算出部108は、メモリ111から読み出した電圧−電流曲線を用いて、S11にて算出した放電灯7の電圧に対応する電流指令値を求める(S12)。Duty決定部109は、S12にて求めた電流指令値に、S3で検出した電流ADCが一致するようにDutyを決定する(S13)。コンバータ駆動部112は、S13にて決定したDutyでDC/DCコンバータ4を駆動させる信号を、DC/DCコンバータ4のFET91に出力する(S14)。以降、S2〜S14のステップを繰り返すことにより、放電灯7の電圧、及び電流を、点灯直後の値(20V、2.5A)から、安定状態の値(85V,0.4A)まで制御していくことができる。
【0033】
点灯直後の放電灯は温度が低く、放電灯の電圧は20V程になる。また、DC/ACインバータ5の動作周波数を400Hzとした場合、イグナイタ2の2次巻線64のインピーダンスは、図3より3.5Ωであり、最大電流の通電時には2.5A×3.5Ω=8.8Vの電圧降下が発生する。そのため、DC/ACインバータ5の電圧降下を2Vとすれば、負荷側全体での電圧降下は、30.8Vとなる。従って、DC/DCコンバータ4の入力電圧が30.8V以下であれば、放電灯に流れる電流は最大電流2.5A以下に留めることができる。しかし、24Vのバッテリ電圧は、16V〜32Vの電源電圧範囲で変動するため、バッテリ電圧が30.8Vを超えた場合、FET91のDutyに寄らず放電灯7には最大電流2.5A以上の電流が流れ、DC/DCコンバータ4による制御ができなくなる。
【0034】
しかし、DC/ACインバータの動作周波数を上昇させ1000Hzとすれば、イグナイタ6の2次巻線64における電圧降下は、2.5A×6.8Ω=19.0Vとなる。これにより、負荷側全体での電圧降下は41.0Vとなり、バッテリ電圧が32VであってもDC/DCコンバータの出力電圧を32V以上に維持することができる。
【0035】
以上のように、実施の形態1に係る放電灯点灯装置によれば、DC/DCコンバータ4の出力する電圧がバッテリ電圧付近まで低下したことを検出すると、DC/ACインバータの動作周波数を上昇させることにより、イグナイタ6の2次巻線64における電圧降下を増加させるため、DC/DCコンバータ4の制御不能状態を回避することができる。そのため、24Vのバッテリを用いる放電灯点灯装置においても、DC/DCコンバータ4の蓄えた電磁エネルギーをバッテリ電圧に重畳して出力する構成とすることで、放電灯点灯装置を小型で廉価にすることができる。
【0036】
なお、DC/DCコンバータの出力電圧をバッテリ電圧に重畳して出力するDC/DCコンバータの構成においては、点灯直後の低電圧の放電灯7に、高いバッテリ電圧から大電力が供給され、放電灯7に定格電流以上の電流が流れることで、放電灯7が故障してしまう危険性があるが、本実施の形態の構成によれば、そのような場合においても、放電灯7に流れる電流を制御することができ、放電灯7の故障を防ぐことができる。このように、本実施の形態の構成によれば、過電流による放電灯7の故障を防ぎつつも、点灯直後から放電灯7の発光輝度を高輝度にできる。
【0037】
また、DC/DCコンバータ4が放電灯の電流を制御可能な状態にあることから、放電灯に過電流が発生することを防ぎ、放電灯の電極の磨耗を防ぐことができる。
【0038】
また、イグナイタ6における2次巻線64のインピーダンスの変化に合わせて、DC/DCコンバータ4の出力する電流を制御することで、放電灯の電流を正確に制御することができる。
【0039】
また、DC/ACインバータ5の動作周波数を変化させているため、DC/DCコンバータ4の出力する電圧を制御することができる。制御部8における制御のように、ADC検出部102にて検出した電流ADCが電流指令値に一致するように制御している状態では、2次巻線64のインピーダンスが増加すると、DC/DCコンバータ4の出力する電圧が増加し、2次巻線64に流れる電流の大きさは維持される。2次巻線64のインピーダンスは上述のようにDC/ACインバータ5の動作周波数により変化させることができるため、DC/ACインバータ5の動作周波数を制御することにより、DC/DCコンバータ4の出力する電圧を制御することが可能となる。
【0040】
また、放電灯7に印加される交流電圧の周波数が1000Hz以上になると、放電灯7の放電管内に形成されるアーク放電が放電管内の音響的圧力の影響を受けて歪む音響的共鳴現象と呼ばれる現象が発生し放電灯7がちらつくが、制御部8は、DC/ACインバータ5の動作周波数が1000Hz以下になるように制御するため、放電灯7における音響的共鳴現象の発生を防ぎ、放電灯7のちらつきを防ぐことができる。
【0041】
また、DC/ACインバータ5の動作周波数が200Hz以下になると、放電灯7に印加される電圧の極性の反転による明るさの変動が視認できてしまうため、フリッカと呼ばれるちらつきが発生するが、制御部8は、DC/ACインバータ5の動作周波数が200Hz以上になるように制御するため、放電灯7におけるフリッカの発生を防ぐことができる。
【0042】
また、イグナイタ6の2次巻線64のインピーダンスから求めた放電灯7の電圧を用いた制御を行うことで、放電灯7の電流をより正確に制御することが可能となる。
【0043】
また、インピーダンス算出部106には図3に示した対応曲線が記憶されているが、周波数決定部104で決定する周波数が、図4のフローチャートに示すように100Hzおきであれば、記憶する情報量が少なくてすむため、制御部8を安価にできる。なお、インピーダンス算出部106により細かい間隔の情報を記憶すれば、イグナイタ6の2次巻線64のインピーダンスをより細かく制御することが可能である。
【0044】
なお、2次巻線64のインピーダンスが低い方が当該2次巻線64にて消費される電力は小さくなるため、初期状態におけるDC/ACインバータ5の動作周波数は400Hzに設定しておく。そのため、動作周波数は、放電灯点灯直後に400Hzよりも高くなり、その後安定状態に向かうにつれて低くなる。
【0045】
なお、上述では、周波数決定部104においてDC/ACインバータ5の動作周波数を決定する際の、バッテリ1の電圧とDC/DCコンバータ4の出力する電圧との電圧差の許容範囲を5V〜10Vとし、動作周波数の変化量を100Hzとしたが、電圧差の許容範囲を狭くし、動作周波数の変化量を小さくすると、バッテリ1の電圧とDC/DCコンバータ4の出力する電圧との電圧差をアナログ的に一定に制御することができる。このようなアナログ的な制御により、動作周波数の切り替え時における発光の大きな変化を抑えなめらかにし、ちらつきのない高品位な光を提供できる。
【0046】
なお、上述では、Duty決定部109において、ADC検出部102にて検出した電流ADCが、電流指令値算出部108にて算出した電流指令値に一致するように、DC/DCコンバータ4のFET91のDutyを決定するものとしたが、電流指令値算出部108の代わりに電圧指令値算出部を設け、VDC検出部103にて検出した電圧VDCが、電圧指令値に一致するように制御してもよい。また、電力指令値算出部を設け、ADC検出部102にて検出した電流ADC及びVDC検出部103にて検出した電圧VDCから求めた出力電力が、電力指令値に一致するように制御してもよい。電圧または電力を制御する場合であっても、DC/DCコンバータ4が出力する電圧に下限値があることからDC/DCコンバータ4が制御不能になることがあるが、DC/ACインバータ5の周波数を制御することにより、負荷側の電圧降下を変化させ、制御不能を回避することができる。
【0047】
実施の形態2.
図5は、本発明の他の実施形態に係る放電灯点灯装置を示す回路図である。図1と同一又は相当部分については同一符号を付し、説明を省略する。
【0048】
図5の回路において、接地されたバッテリ1の負側はシャント抵抗100を介してコンデンサ96の正側(図5中の上側)と接続しており、バッテリ1の正側はDC/ACインバータ5の上アームに接続しており、整流用ダイオード113のアノードはコンデンサ96の負側(図5中の下側)と接続しており、コンデンサ96の負側(図5中の下側)の電圧は、DC/ACインバータの下アームの電圧となっている。
【0049】
また、図5の回路において、ダイオード113により、バッテリ電圧とは逆極性の負電圧が発生するため、DC/ACインバータに印加される電圧は、バッテリ電圧と、2次巻線に発生した電圧とが加算された電圧となる。
【0050】
以上のような回路構成においても、DC/DCコンバータ41の出力する電圧より放電灯の電圧が低くなり、当該DC/DCコンバータ41を制御することができない状況が発生する。図5の回路においては、DC/DCコンバータ41とバッテリ電圧加算電圧とバッテリ1の電圧との電圧差が許容範囲内となるよう、DC/ACコンバータ5の動作周波数を制御することにより、DC/DCコンバータ41が制御不能状態となることを防ぐことができる。従って、DC/DCコンバータ41に蓄えた電磁エネルギーをバッテリ電圧に重畳して出力する構成が使用でき、放電灯点灯装置を小型で廉価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る放電灯点灯装置を示す回路図
【図2】本発明の一実施形態に係る放電灯点灯装置の制御部8を示す回路図
【図3】通電周波数に対するイグナイタのインピーダンスを示す図。
【図4】本発明の一実施形態に係る放電灯点灯装置の制御方法を示すフローチャート
【図5】本発明における放電灯点灯装置の他の実施の形態を示す回路図
【符号の説明】
【0052】
1 バッテリ
4,41 DC/DCコンバータ
5 インバータ
6 イグナイタ
7 放電灯
8 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電圧に基づいて付加電圧を生成し、当該付加電圧に前記バッテリの電圧を加算した電圧を出力するDC/DCコンバータと、
前記バッテリの電圧を検出するバッテリ電圧検出手段と、
前記DC/DCコンバータの出力する電圧を検出する出力電圧検出手段と、
前記DC/DCコンバータの出力する電圧を交流電圧に変換し、放電灯に出力するインバータと、
前記インバータと前記放電灯との間に設けられた2次巻線、及び当該2次巻線と磁気的に結合した1次巻線を有し、前記DC/DCコンバータの出力により当該1次巻線に印加される電圧に基づいて、前記2次巻線に前記放電灯を始動させるための高電圧パルスを発生させるイグナイタと、
前記インバータの変換周波数を変更する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記DC/DCコンバータの出力する電圧から前記バッテリの電圧を引算した値が所定の下限値以下のとき、
前記インバータの出力する交流電圧の周波数を増加させることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記インバータの出力する交流電圧の周波数に基づいて、前記2次巻線のインピーダンスを算出するインピーダンス算出手段と、
前記2次巻線のインピーダンス、及び前記DC/DCコンバータの出力する電圧に基づいて、前記放電灯の電圧を算出する放電灯電圧算出手段と、
前記放電灯の電圧に基づいて、前記DC/DCコンバータを制御するコンバータ制御手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記DC/DCコンバータの出力する電圧から前記バッテリの電圧を引算した値が、所定の上限値以上のとき、前記交流電圧の周波数を減少させることを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記インバータの出力する交流電圧の周波数を1KHz以下とすることを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記インバータの出力する交流電圧の周波数を200Hz以上とすることを特徴とする請求項3に記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記インピーダンス算出手段は、前記インバータの出力する交流電圧の周波数に対応する前記2次巻線のインピーダンスをあらかじめ前記制御手段に記憶することを特徴とする請求項2に記載の放電灯点灯装置。
【請求項7】
前記バッテリは車両の24V系のバッテリであり、前記放電灯は車両のヘッドランプ用放電灯であることを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−62014(P2010−62014A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226880(P2008−226880)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】