説明

放電灯点灯装置

【課題】加工性や組付け性を向上させると共に、放熱性の向上を図ることができる放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】放電灯点灯装置10は、結合部材20が回路手段11の一部を形成する第2基板15と一体形成されている。これにより、放電バルブ7が装着されるバルブソケット9を固定する固定構造が簡略化され、加工性の向上を図ることができる。また、放電バルブ7を固定していた樹脂カバーが不要となり、金属カバー12と樹脂カバーとの間にあった放熱を妨げていた空気層がなくなり、放熱性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の放電灯点灯装置に関し、特にバルブ一体型バラスト内での放電灯の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前照灯として使用される放電灯点灯装置としては、バルブソケットの中に高電圧発生手段(スタータ)を内蔵した形態や、放電灯とスタータ及びケースを一体にした形態が既に実用化されている。このスタータに、供給電圧変換手段や制御回路等(バラスト)を加え、スタータとバラストをバルブソケットに内蔵、或いは放電灯と一体にする形態が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
通常、バラストとスタータをバルブソケットに内蔵或いは一体にしている放電灯点灯装置では、ノイズ対策のために一部又は全周を金属カバーで覆う必要がある。
また、バルブ一体型バラストの放電灯点灯装置では、電子部品を搭載した基板を樹脂カバーで覆い、この樹脂カバーにバルブソケットを固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−210009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したように樹脂カバーの上から金属カバーを取付けているので、二重のカバー構造となり、加工性や組付け性を向上させるのが難しい。
また、二重のカバー構造であると、金属カバーと樹脂カバーの間に空気層が形成されるので、放熱性を向上させるのが難しい。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、加工性や組付け性を向上させると共に、放熱性の向上を図ることができる放電灯点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、放電灯と、該放電灯が電気的に接続され、前記放電灯に点灯すべき電圧を供給するための回路手段と、該回路手段を収納するケース部材と、前記放電灯を装着して前記回路手段と接続される結合部材と、を備えている放電灯点灯装置において、前記結合部材が、前記回路手段を形成する基板と一体化されていることを特徴とする放電灯点灯装置により達成される。
【0008】
上記構成の放電灯点灯装置によれば、結合部材が回路手段を形成する基板と一体化されているので、放電灯を固定する固定構造が簡略化され、加工性の向上を図ることができる。即ち、放電灯を固定していた樹脂カバーが不要となり簡略化できる。
また、樹脂カバーが無くなることで、金属カバーと樹脂カバーとの間にあった放熱を妨げていた空気層がなくなり、放熱性の向上を図ることができる。
【0009】
また、上記構成の放電灯点灯装置において、前記結合部材が、補強部を有しており、該補強部が前記放電灯の装着位置を決める位置決め機能を有することが望ましい。
【0010】
このような構成の放電灯点灯装置によれば、結合部材が補強部を有しており、この補強部が放電灯用の位置決め機能を有することで、放電灯の装着作業が容易となり、組付け性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る放電灯点灯装置によれば、結合部材が回路手段を形成する基板と一体化されているので、加工性および組付け性を向上させると共に、放熱性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る一実施形態を示す放電灯点灯装置10を含む車両用前照灯1の断面図である。
【図2】図1の放電灯点灯装置10の分解斜視図である。
【図3】図2の結合部材20を示す部分拡大斜視図である。
【図4】放電灯点灯装置10の放電バルブ7の固定状態を示す縦断面図である。
【図5】別の放電灯点灯装置30を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る放電灯点灯装置の一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施形態である放電灯点灯装置を含む車両用前照灯1は、透明カバー2とランプボディ3とで画成された灯室4内に、灯具ユニット5が収容されている。灯具ユニット5は、リフレクタ6、放電バルブ7及び投影レンズ8を備えている。放電バルブ7は、バルブソケット9に取り付けられており、このバルブソケット9がリフレクタ6の後端部に固定されている。
【0015】
本実施形態の放電灯点灯装置10は、バルブ一体型バラストであり、バルブソケット9に固定されており、灯室4内のリフレクタ6の後端部に配置されている。
【0016】
図2に示すように、放電灯点灯装置10は、放電灯に点灯すべき電圧を供給するための回路手段11と、該回路手段11を収納する金属製のカバー12及びケース部材13とを備えている。回路手段11は、ケース部材13内に取り付けられる樹脂製の第1基板14と、該第1基板14上に所定間隔を保持して取り付けられる樹脂製の第2基板15とに形成されている。カバー12は、前端面に放電バルブ7を挿通する挿通孔12aが形成されており、第2基板15を被うようにケース部材13上に被嵌される。
【0017】
第1基板14上には、発熱する電子部品であるパワー素子16や熱容量の大きいコイル17が実装されている。また、第2基板15上には、耐熱性の低い電子部品である電解コンデンサ18や外部接続用のコネクタ19が実装されている。電解コンデンサ18は、パワー素子16から所定距離だけ離れているので、パワー素子16から発生する熱の影響は最小限に抑えられている。
【0018】
回路手段11は、入力電圧をパワー素子16でスイッチングすることにより放電バルブ7への供給電圧を変換する変換手段と、放電バルブ7の点灯を開始するときに放電バルブ7に加える高電圧を発生する高電圧発生手段と、及びパワー素子16をオン/オフすることにより放電バルブ7へ供給する電力を制御する制御回路とを備えている(不図示)。
【0019】
本実施形態の放電灯点灯装置10は、バルブソケット9を第2基板15上に固定すると共に回路手段11と電気的に接続する結合部材20が、第2基板15上に一体的に形成されている。この結合部材20は、第2基板15の成形時に一体成形するか、又は別部品として成形して、第2基板15に後付けしても良い。
【0020】
図3に示すように、結合部材20は、嵌入穴23を有する円筒部21と、横方向に張り出した充填部22とからなる。バルブソケット9の取り付け時は、バルブソケット9の先端の端子部9aを矢印方向から嵌入穴23内に挿入させてから、接着剤24を充填部22から嵌入穴23内に充填する。これにより、バルブソケット9は結合部材20により第2基板15上に強固に固定される。そして、最後にカバー12が被嵌されることで、組み付けが完了する。
【0021】
即ち、図4に示すように、結合部材20は、ケース部材13内の第1基板14と所定間隔を保持して配置された第2基板15上の所定位置に一体的に形成されている。この結合部材20の嵌入穴23内に、放電バルブ7を装着したバルブソケット9の端子部9aが、導通部材25に突き当たるまで挿入されることで、回路手段11と電気的に接続される。これにより、バルブソケット9は第2基板15上に固定されるが、接着剤24を充填することでより強固に固定される。
【0022】
上述した実施形態の放電灯点灯装置10によれば、結合部材20が回路手段11の一部を形成する第2基板15と一体形成されているので、放電バルブ7が装着されるバルブソケット9を固定する固定構造が簡略化され、加工性の向上を図ることができる。即ち、放電バルブ7を固定していた樹脂カバーが不要となり、簡略化することができる。また、樹脂カバーが無くなることで、金属カバー12と樹脂カバーとの間にあった放熱を妨げていた空気層がなくなり、放熱性の向上を図ることができる。
【0023】
次に、本実施形態の変形例である放電灯点灯装置30について、図5に基づいて説明する。なお、上記放電灯点灯装置10と同一構成の部分については、同一符号を付すことで詳細な説明は省略する。
【0024】
図5に示すように、放電灯点灯装置30は、第2基板15の四隅から立設され、結合部材20を補強する補強部31が該第2基板15上に一体的に形成されている。この補強部31は、支持部32と当接部33を有しており、当接部33を4方向から4本の支持部32により支持している。支持部32は、第2基板15の四隅から立設されることで、バルブソケット9の装着時に必要な剛性も確保している。
【0025】
当接部33は、結合部材20の嵌入穴23の前面側に配置され、中心軸が嵌入穴23と一致すると共に、バルブソケット9の装着時に、バルブソケット9の端子部9aが挿通するガイド孔34を有している。これにより、当接部33は、バルブソケット9の装着時における案内と位置決め機能を兼ね備えている。
【0026】
バルブソケット9の装着時は、バルブソケット9の端子部9aを当接部33のガイド孔34から挿入させることで、端子部9aは、結合部材20の嵌入穴23内にそのまま嵌入される。このとき、バルブソケット9は、嵌入穴23と共にガイド孔34によっても保持されている。即ち、バルブソケット9は、嵌入穴23を有する円筒部21と、ガイド孔34を有する補強部31によって位置決め固定されている。その後、バルブソケット9は、嵌入穴23内に接着剤24を充填することでより強固に固定される。
【0027】
上述したように放電灯点灯装置30によれば、結合部材20が補強部31を有しており、この補強部31が放電灯用の位置決め機能を有することで、放電灯の装着作業が容易となり、組付け性の向上を図ることができる。
【0028】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0029】
1…車両用前照灯、7…放電バルブ(放電灯)、9…バルブソケット、10,30…放電灯点灯装置、11…回路手段、12…カバー、13…ケース部材、14…第1基板、15…第2基板、20…結合部材、21…円筒部、22…充填部、23…嵌入穴、31…補強部、32…支持部、33…当接部、34…ガイド孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯と、該放電灯が電気的に接続され、前記放電灯に点灯すべき電圧を供給するための回路手段と、該回路手段を収納するケース部材と、前記放電灯を装着して前記回路手段と接続される結合部材と、を備えている放電灯点灯装置において、
前記結合部材が、前記回路手段を形成する基板と一体化されていることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記結合部材が、補強部を有しており、該補強部が前記放電灯の装着位置を決める位置決め機能を有することを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−142111(P2012−142111A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292568(P2010−292568)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】