説明

放電破砕装置

【課題】従来の放電破砕装置によれば、電極と電源とを互いに接続する同軸電力ケーブルのケーブル径が大きく、堅固な構造で重量もある上記同軸電力ケーブルは、取り扱いが大変であり、また、高価であるという欠点があった。
【解決手段】電極1と電源部50とがケーブル60により接続され、破壊対象物の内側に設けられた電解液82に電源部から電極を介して放電エネルギーを付与して衝撃波を発生させその衝撃波で破壊対象物を破砕する放電破砕装置において、ケーブル60が、電源部50の正極と電極の正極とを接続する電力往路用の単芯高圧ケーブル61と、電源部50の負極と電極の負極とが電力復路用の単芯高圧ケーブル62とにより形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源部と電極とを互いに接続するケーブルの取り扱い容易な放電破砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートや岩石のような破壊対象物に放電用孔を形成し、この放電用孔内に電解液(電気を通す水溶液)としての水道水のような水(水溶液)を充填してこの水中に放電破砕装置の電極を挿入し、この電極に大電流パルスを印加して放電させることで衝撃波を発生させ、衝撃波で放電用孔の周囲を破砕する放電破砕方法が知られている。この放電破砕方法に使用する電極は、棒状の内部導体と内部導体の外周囲を被覆する筒状の絶縁部と絶縁部の外周囲に設けられた筒状の外部導体とで構成される。外部導体は、内部導体の棒の延長方向に沿って放電用の間隔(放電ギャップ)を隔てて複数設けられる。そして、外部導体と外部導体との間に設けられた放電用の間隔を介して放電を生じさせ、衝撃波を発生させる。この放電破砕方法に使用する電極と電源とを互いに接続する電力ケーブルとしては、同軸電力ケーブルが用いられる。
【特許文献1】特開2001−6450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
放電破砕装置の電極での放電時にケーブルを流れる大電流によりケーブルの中心から外周方向に向かって強大な電磁力が作用し、ケーブルの中心導体と外部導体との間に生じる反発力によってケーブルの爆裂作用が起きる。この爆裂作用を抑えるため、従来の放電破砕装置の同軸電力ケーブルは、例えば、中心から順に中心導体、内部半導電層、絶縁体、外部半導電層、電極層、押さえ層、リターン導体、防食層、補強層を備えた構造のもの、即ち、中心から外周まで複数の層による多層構造により形成された堅固な構造のものが用いられる。例えば、ケーブル径が37mm程度と大きく、堅固な構造で重量もある同軸電力ケーブルが用いられる。しかしながら、ケーブル径が大きく、堅固な構造で重量もある上記同軸電力ケーブルは、取り扱いが大変であり、また、高価であるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による放電破砕装置は、電極と電源部とがケーブルにより接続され、破壊対象物の内側に設けられた電解液に電源部から電極を介して放電エネルギーを付与して衝撃波を発生させその衝撃波で破壊対象物を破砕する放電破砕装置において、ケーブルが、電源部の正極端子と電極の正極端子とを接続する電力往路用の単芯高圧ケーブルと、電源部の負極端子と電極の負極端子とが電力復路用の単芯高圧ケーブルとにより形成されたことを特徴とする。電力往路用の単芯高圧ケーブルと電力復路用の単芯高圧ケーブルとがスペーサにより互いに離間した状態に維持されたことも特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ケーブルが、電力往路用の単芯高圧ケーブルと、電力復路用の単芯高圧ケーブルとにより形成されたので、ケーブル径を小さくでき、重量も軽くできるので、ケーブルの取り扱いが容易で、かつ、低価な放電破砕装置を得ることができる。電力往路用の単芯高圧ケーブルと電力復路用の単芯高圧ケーブルとがスペーサにより所定の間隔で離間した状態に維持されたので、電力往路用の単芯高圧ケーブルと電力復路用の単芯高圧ケーブルとによる爆裂作用を防止できるという効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1乃至図5は最良の形態を示し、図1は放電破砕装置を示し、図2はスペーサとスペーサにより互いに接続された2つの単芯高圧ケーブルとを示し、図3はスペーサとスペーサにより互いに接続された2つの単芯高圧ケーブルとを断面で示し、図4は放電破砕装置の電極の縦断面を示し、図5は放電破砕装置の電極を分解して示す。
【0007】
図1に示すように、放電破砕装置は、電極1、電源部50、ケーブル60を備える。電極1と電源部50とがケーブル60により互いに接続される。電源部50は図外のパルスパワー源と電源装置とを備える。電源装置からパルスパワー源に供給される電力がパルスパワー源の図外のコンデンサに溜められた後に、パルスパワー源のコンデンサから放出される150KA〜500KAのような大電流が電極1に1万分の1〜2秒間印加される。これにより、電極1の放電部33で放電が生じて衝撃波が発生する。
【0008】
ケーブル60は、2本の単芯高圧ケーブル61;62とにより形成される。すなわち、ケーブル60は、電源部50の正極端子51と電極1の正極端子52とを互いに接続する電力往路用の単芯高圧ケーブル61と、電源部50の負極端子53と電極1の負極端子54とを互いに接続する電力復路用の単芯高圧ケーブル62とにより形成される。単芯高圧ケーブル61;62は、同じ構造のケーブルであって、例えば、ケーブル径が12mm、耐圧20kV仕様であり、中心から順に中心導体65、絶縁体66、帆布67、ゴムラバー68を備えた構造である(図2;3参照)。電力往路用の単芯高圧ケーブル61と電力復路用の単芯高圧ケーブル62とが合成樹脂により形成されたスペーサ70により互いに離間した状態に維持される。スペーサ70は、単芯高圧ケーブル61;62の径に合わせた内径に形成された2つの筒孔体71;71が20cm〜30cm程度の所定の長さの連結体72の両端に設けられた構成である(図2;3参照)。連結体72の所定の長さは、放電時において電力往路用の単芯高圧ケーブル61と電力復路用の単芯高圧ケーブル62とが相互干渉により爆裂を起こさない長さである。単芯高圧ケーブル61と62のスペーサ70は、単芯高圧ケーブル61;62の一端から単芯高圧ケーブル61;62の外周にスペーサ70の筒孔体71;71をはめ込んで取り付けられる(図2参照)。2本の単芯高圧ケーブル61;62に複数個のスペーサ70が取り付けられる。複数個のスペーサ70;70・・・は、例えば、1m〜2m程度の所定の間隔を隔てて取り付けられる。
【0009】
図4に示すように、電極1は、内部導体2、絶縁部3、外筒導体4、間隔形成材5、浮遊電極6、緩衝材7を備える。内部導体2は、断面円形の鉄棒により形成され、外周にはねじ部10が形成される。内部導体2の一端(先端)部2aを除く外周には、当該外周を覆うように絶縁材としてのFRPシートが巻き付けられることによって絶縁部3が形成される。絶縁部3は、その外周に、間隔形成材5、浮遊電極6、緩衝材7の設けられる径の小さい小径絶縁部31と、その外周に外筒導体4の設けられる大径絶縁部32とを備える。大径絶縁部32は内部導体2の他端部2bの外周に形成され、小径絶縁部31は内部導体2における他端部2bと一端部2aとの間の外周に形成される。大径絶縁部32の外周を覆うように外筒導体4が設けられ、大径絶縁部32と外筒導体4とが図外の接着剤により互いに結合される。間隔形成材5は、ナイロンのような合成樹脂で形成され、筒体部としての円筒部15と円筒部15の一側開口縁より円筒部15の外周面の外側に延長する円形環状の間隔形成部としての鍔部17とを備える。円筒部15の外周囲には、銅により円筒状に形成された浮遊電極6が嵌め込まれる。浮遊電極6の筒の中心線に沿った方向の長さは、円筒部15の筒の中心線に沿った方向の長さよりも短い。緩衝材7はゴムにより環状に形成される。緩衝材7の環の内径は円筒部15の外径より大きく、緩衝材7の環の外径は鍔部17の外径と同じである。緩衝材7が間隔形成材5の鍔部17の反対側から円筒部15の外周にはめ込まれた後に、円筒部15の外周に浮遊電極6が嵌め込まれる。つまり、間隔形成材5の円筒部15の外周に緩衝材7が嵌め込まれた後に、円筒部15の外周面と筒状の浮遊電極6の内周面とが互いにはめ合わされて円筒部15の外周面に浮遊電極6が取り付けられることによって、鍔部17と浮遊電極6との間に緩衝材7が配置された構成の浮遊電極ユニット20が形成される(図5参照)。この浮遊電極ユニット20を複数用意し、複数の浮遊電極ユニット20が内部導体2の一端部2a側から順次同じ向きで小径絶縁部31の外周を覆うように取り付けられた後に、内部導体2の一端部2aの外周のねじ部10に2つのナット21;22がダブルナット構造で締結されたことで電極1が形成される。つまり、一端部に、間隔形成材5の鍔部17と緩衝材7とによって浮遊電極6と浮遊電極6との間に放電用の間隔(放電ギャップ)が形成された放電部33を備えた電極1が形成される。
【0010】
電極1の内部導体2の一端部2aの外側に設けられる複数の浮遊電極6は、間隔形成材5の鍔部17と緩衝材7とによって内部導体2の中心線に沿った方向に間隔を隔てて設けられて互いに電気的に絶縁された複数の短筒状の外部導体である。外筒導体4は、電力復路用の単芯高圧ケーブル62と接続されて電源部50の負極端子53と電気的に接続された復路(リターン)導体として機能する長筒状の外部導体である。
【0011】
電極1とケーブル60とは、例えば、図4に示すように、電極1の他端に接続されるコネクタ75を介して電気的に接続される。コネクタ75の一端部に形成された孔の内周にはねじ部76が形成される。外筒導体4の他端部の外周にはねじ部4aが形成される。外筒導体4のねじ部4aとコネクタ75のねじ部76とが互いに締結される。コネクタ75の他端部には、電力往路用の単芯高圧ケーブル61の接続孔部77が形成される。接続孔部77内には、ねじ部4aとねじ部76とが互いに締結されることによって、電極1の内部導体2に接続される正極端子52が設けられる。コネクタ75の外周部には、電力復路用の単芯高圧ケーブル62の接続孔部78が形成される。接続孔部78内には、ねじ部4aとねじ部76とが互いに締結されることによって、電極1の外筒導体4に接続される負極端子54が設けられる。電力往路用の単芯高圧ケーブル61の一端部が接続孔部77内にはめ込まれて図外のねじ締結具や挟持片のような電気接続維持手段により単芯高圧ケーブル61の中心導体65と正極端子52とが電気的に接続された状態に維持される。電力復路用の単芯高圧ケーブル62の一端部が接続孔部78内にはめ込まれて図外のねじ締結具や挟持片のような電気接続維持手段により単芯高圧ケーブル62の中心導体65と負極端子54とが電気的に接続された状態に維持される。
【0012】
図1のように、破壊対象物80の放電用孔81内に電解液としての水道水のような水(水溶液)82を充填して、電極1を水82中に挿入し、電源部50のパルスパワー源を操作して電極1に大電流パルスを印加すると、放電用の間隔を介して、浮遊電極6と浮遊電極6との間、浮遊電極6と外筒導体4との間で放電を生じ、この放電エネルギーにより放電用孔81内の水82が衝撃波を発生し、これにより、破壊対象物80を破砕できる。電源部50から供給される電力は、ケーブル60の電力往路用の単芯高圧ケーブル61、電極1の内部導体2、ナット21;22、浮遊電極6、外筒導体4、ケーブル60の電力復路用の単芯高圧ケーブル62を経由して電源部50に戻る。
【0013】
最良の形態によれば、ケーブル60を形成する低価な2本の単芯高圧ケーブル61;62は、ケーブル径が例えば12mm程度と小さく、重量も軽くできるので、ケーブル60の取り扱いが容易で、かつ、低価な放電破砕装置を得ることができる。さらに、電力往路用の単芯高圧ケーブル61と電力復路用の単芯高圧ケーブル62とに、1m〜2m程度の所定の間隔を隔てて複数のスペーサ70;70・・・が取り付けられ、2本の単芯高圧ケーブル61;62が複数のスペーサ70により20cm〜30cm程度離間した状態に維持されたので、2本の単芯高圧ケーブル61;62間に作用する爆裂作用を防止できるという効果も得られる。スペーサ70を用いずに、電極1と電源部50とをケーブル60により互いに接続し、その後に、作業者が2本の単芯高圧ケーブル61;62間を離す作業を行っても良いが、最良の形態のように、予め複数のスペーサ70により2本の単芯高圧ケーブル61;62間が互いに離間した状態に維持されたケーブル60を用いれば、作業者が2本の単芯高圧ケーブル61;62間を離す作業をいちいち行わなくても良くなり、作業を簡略化できる。
【0014】
また、緩衝材7により、放電の際の衝撃波による反力の鍔部17への衝撃を緩和できて鍔部17を保護できるので、電極1の放電性能の低下を防止できる。間隔形成材5が、小径絶縁部31の外側を覆う円筒部15を備えるので、絶縁部3の小径絶縁部31を保護でき、内部導体2と浮遊電極6との絶縁構造を維持できる。鍔部17と浮遊電極6との間に緩衝材7が配置された構成の浮遊電極ユニット20を備えるので、浮遊電極ユニット20を1個1個個別に交換できるようになり、交換作業、電極維持コストを抑えることができる。即ち、間隔形成材5が、絶縁部3の小径絶縁部31の外周を覆う円筒部15と、円筒部15の一端部の外周より外側に張り出す鍔部17とを備え、円筒部15の外周に筒状の浮遊電極6が着脱可能に取り付けられた構成としたので、間隔形成材5により、内部導体2の外周にFRPシートが巻き付けられることによって形成された絶縁部3の小径絶縁部31が保護される。内部導体2の外周にFRPシートを巻き付けて絶縁部3を形成したので、絶縁部3を容易に形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
例えば鉄や、銅や、貴金属や、合金等により、直径5mm程度に形成されたワイヤを複数箇所で切断し、切断面と切断面とを対向させて放電部を形成した構造の電極、いわゆる、ワイヤ電極と電源部50とをケーブル60により互いに接続した構成の放電破砕装置としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】放電破砕装置を示す構成図(最良の形態)。
【図2】スペーサとスペーサにより互いに接続された2つの単芯高圧ケーブルとを示す斜視図(最良の形態)。
【図3】スペーサとスペーサにより互いに接続された2つの単芯高圧ケーブルとを示す断面図(最良の形態)。
【図4】放電破砕装置の電極の縦断面図(最良の形態)。
【図5】放電破砕装置の電極を示す分解斜視図(最良の形態)。
【符号の説明】
【0017】
1 電極、50 電源部、60 ケーブル、61 電力往路用の単芯高圧ケーブル、
62 電力往路用の単芯高圧ケーブル、70 スペーサ、80 破壊対象物、
82 水(電解液)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と電源部とがケーブルにより接続され、破壊対象物の内側に設けられた電解液に電源部から電極を介して放電エネルギーを付与して衝撃波を発生させその衝撃波で破壊対象物を破砕する放電破砕装置において、ケーブルが、電源部の正極と電極の正極とを接続する電力往路用の単芯高圧ケーブルと、電源部の負極と電極の負極とが電力復路用の単芯高圧ケーブルとにより形成されたことを特徴とする放電破砕装置。
【請求項2】
電力往路用の単芯高圧ケーブルと電力復路用の単芯高圧ケーブルとがスペーサにより互いに離間した状態に維持されたことを特徴とする請求項1に記載の放電破砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−90213(P2007−90213A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281935(P2005−281935)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(502281127)株式会社ファテック (83)
【Fターム(参考)】