放電装置、放電方法
【課題】従来の放電装置におけるガラスなどの誘電体は放電によって劣化しやすく、部分的に補修することが難しいため、これらの誘電体を交換するための手間及び費用が必要となり、メンテナンスが大変であった。
【解決手段】以上の課題を解決するため、本発明は電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におく放電装置であって、電極の放電面の全部または一部に氷を張ることができる電極部と、前記電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷可能な保冷部と、前記放電が誘起される電極間に原料気体を導入可能な原料気体導入部と、前記電極間で放電を誘起可能な電圧を印加する電源部と、からなる放電装置を提案する。
【解決手段】以上の課題を解決するため、本発明は電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におく放電装置であって、電極の放電面の全部または一部に氷を張ることができる電極部と、前記電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷可能な保冷部と、前記放電が誘起される電極間に原料気体を導入可能な原料気体導入部と、前記電極間で放電を誘起可能な電圧を印加する電源部と、からなる放電装置を提案する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におく放電装置又は放電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放電装置は従来から種々のものが多数市販されており、用途も広がりつつある。一般に、放電電極にはガラスなどの誘電体を電極間に挿入し、グロー放電がアーク放電に移行することを防止する構造が採用されている。例えば、特許文献1では、高電圧が印加される筒状の金属電極にセラミック、ガラスなどによって構成された誘電体を配置し、空気導入パイプを介して導入されたガスを放電環境におく装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−19408
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セラミック、ガラスなどの誘電体は放電によって劣化しやすく、寿命が短い。また、セラミックやガラスなどは高価であると同時に、部分的に補修することが難しいため、これらの誘電体を交換するための手間及び費用が必要となり、メンテナンスが大変であった。この傾向は放電装置が大型なもの程顕著になるものであり、問題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため本発明は、電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におく放電装置であって、電極の放電面の全部または一部に氷を張ることができる電極部と、前記電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷可能な保冷部と、前記放電が誘起される電極間に原料気体を導入可能な原料気体導入部と、前記電極間で放電を誘起可能な電圧を印加する電源部と、からなる放電装置を提案する。
【0006】
また、本発明は、電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におく放電方法であって、電極の放電面の全部または一部に氷を張る氷誘電体層形成ステップと、前記電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷する保冷ステップと、前記放電が誘起される電極間に原料気体を導入する原料気体導入ステップと、前記電極間で放電を誘起可能な電圧を印加する放電誘起ステップと、からなる放電方法を提案する。
【発明の効果】
【0007】
以上の構成をとる本発明では、氷点下に保冷した氷を誘電体として用いることができるため、放電によって氷の一部が欠損したような場合でも容易に修復することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の放電装置の構成図
【図2】実施例1の電極、冷媒、氷の構成の一例を示した図
【図3】実施例1の電極、冷媒、氷の構成の他の一例を示した図
【図4】実施例1の放電方法の処理の流れの一例を示した図
【図5】実施例2の放電装置の構成図
【図6】実施例3の放電装置の構成図
【図7】実施例3の放電方法の処理の流れの一例を示した図
【図8】実施例4の放電装置の構成図
【図9】実施例4の中空部材からなる電極の一例を示した図
【図10】実施例5の円筒形状の電極の一例を示した図
【図11】実施例6の全体として蛇行形状である電極の一例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、様々な態様で実施しうる。実施例と請求項の相互の関係は、以下のとおりである。実施例1は主に請求項1、7などに関し、実施例2は主に請求項2、8などに関し、実施例3は主に請求項3、9などに関し、実施例4は主に請求項4、10などに関し、実施例5は主に請求項5などに関し、実施例6は主に請求項6などに関する。
【実施例1】
【0010】
<概要>
本実施例の放電装置又は放電方法は、電極の全部または一部に氷を張り、当該電極を氷点下に保冷することで、ガラス等に代えて氷を誘電体として用いることができる。これにより、放電によって氷の一部が欠けてしまった場合でも容易に修復することが可能になる。
【0011】
<構成>
図1は、本実施例の放電装置の構成図である。図に示すように、本実施例の「放電装置」(0100)は、「電極部」(0101)と、「保冷部」(0102)と、「原料気体導入部」(0103)と、「電源部」(0104)とから構成される。以下、本実施例の装置の各構成について説明する。
【0012】
「放電装置」は、電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におくことを特徴とする。例えば、大気中で放電を誘起させると、一酸化窒素や、硝酸、オゾン、二酸化炭素などが発生する。特に、酸素を主原料ガスとして電極間に導入し、酸素分子の解離と再結合によってオゾンを生成することが可能である。本実施例の放電装置では特に原料ガスを限定するものではないが、オゾン発生装置として好適に用いることができる。
【0013】
「電極部」は、電極の放電面の全部または一部に氷が張ることができることを特徴とする。氷としては、一般的に水の固体が考えられるが、一酸化炭素や二酸化炭素、メタンなどの水以外の分子物質の固体も含むものである。放電面のうち氷を張る部分としては、放電の発生しやすい部分とすることが考えられるが、特に限定されるものではない。例えば、放電面の一部の氷が放電等によって欠損した場合でも、すぐに使えるように電極の裏面にも氷を張ることが可能な構成が考えられる。また、電極が円筒状の物である場合は、円筒電極の周囲に氷を張る構成も同様に可能である。
【0014】
また、電極の一部に誘電体として氷を張り、他の部分についてガラス等の誘電体を用いる構成も可能である。例えば、誘電体の欠損が放電によって生じやすい部分については氷を張り、欠損が生じにくい部分についてはガラス等の誘電体を用いる、といったことも可能である。
【0015】
また、放電面の全部または一部に氷を張る方法としては、電極の所定箇所に水などを吹き付けた後に氷点下に冷却して氷結させることが考えられる。また、別の方法で所定形状の氷を生成し、放電面の全部又は一部に固定器具又は固定物質等によって固定することも考えられる。さらに、放電等によって氷の一部が欠損した場合、欠損した部分に水などを吹きかけて氷を補修することも可能であるし、氷全体を交換することも可能である。氷の製造自体は費用及び手間を必要とするものではないため、上記の作業は容易に行うことが可能である。
【0016】
なお、放電の効率を高める点で氷の純度が高いものを用いることが好ましい。純度が高い水などの氷原料は一般的に氷点下より低い温度で作ることが必要となるが、体積抵抗率が高いため、電気的性質に優れた誘電体となる。また、氷の内部に気泡やボイドなどが極力少なくなるように、時間をかけて気泡のない氷を作ることが好ましい。これは、気泡の比誘電率が1程度であるのに対して氷の比誘電率は4以上であることに起因して気泡部分に部分放電が発生してしまうことを防止するためである。
【0017】
なお、電極部は以下に述べる保冷部による保冷機能を効果的にするために熱伝導性の良い金属を用いることが好適である。例えば、熱伝導性の良い金属として、金、銀、銅、アルミニウムを用いることが考えられる。
【0018】
また、図1においては、両電極が垂直方向に対向するように配置されているが、水平方向に対向するように配置する構成も同様に可能である。当該構成とすることで、一方の電極の氷が溶けたとしても他方の電極の氷面に水滴が付着することを防止できる。その結果、他方の氷面が凹凸形状になることを防止でき、放電の乱れ現象を少なくすることができる。
【0019】
「保冷部」は、前記電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷可能な機能を有する。氷点の値は、誘電体として用いる氷の種類により異なる物であり、適宜適当な値を用いる。また、電極の放電面を冷媒によって氷点下に保冷する方法としては、電極の裏側に冷媒組成物及びそれを用いた冷凍回路からなる冷凍装置を設置することが考えられる。放電面を保冷する冷媒としては、気体、液体、固体のいずれであってもよく、特に限定されるものではない。図2においては、「固体状の冷媒組成物」0201の上に「直方体形状の電極」0202を配置し、その上に直方体の「氷」0203を張った例を示している。なお、氷は上述のように、放電面の全部に張る必要は必ずしもなく、一部にのみ張る構成も同様に可能である。また、図3に示すように、「固体状の冷媒組成物」0301の上に「半円柱形状の電極」0302を配置し、その上に「半円柱の氷」0303を張るといった構成も可能である。
【0020】
電極を中空部材からなる構成とした場合、中空部材の空洞部分に冷凍装置から冷媒を導入して電極の放電面を氷点下に保冷することも考えられる(詳しくは実施例4にて説明する)。上記の冷凍装置としては、特に限定されるものではなく、電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷可能な機能を有するものであれば足りる。
【0021】
また、保冷部の冷却強度を自動制御可能な構成とすることも考えられる。例えば、電極部にセンサーを配置し、氷の厚さが所定値以下になったと検知された場合は、冷却効果を強くして氷をさらに冷却することや、電極部の氷の厚さが所定値以上になったと検知した場合は、冷却効果を弱くすることなどが考えられる。また、周囲の気体の温度を検知するセンサーを配置し、温度に依存して冷却強度を調整する構成も可能である。
【0022】
「原料気体導入部」は、前記放電が誘起される電極間に原料気体を導入可能な機能を有する。ここで、原料気体を導入するための方法としては、例えば原料気体を封入した一般的な開閉コック付きボンベを用いることも可能であるし、原料気体を生成するための装置を用いることも可能である。ここで、原料気体として酸素を導入し、放電によってオゾンを発生させることも考えられる(詳しくは実施例2にて説明する)。また、原料気体として通常の大気成分のガスを導入し、一酸化窒素などを発生させることも考えられる。
【0023】
なお、放電によって生成されるガスの生成効率を上げるために、原料ガスの湿度を低下させる乾燥機を介在させることも可能である。また、アルミナシリカゲル等の吸湿剤を所定箇所に配置する構成も同様に可能である。
【0024】
「電源部」は、前記電極間で放電を誘起可能な電圧を印加する機能を有する。ここで、電極間で放電を誘起可能な電圧としては、電極間の間隔や誘電体の厚さ等によって値が異なってくるため、各条件に適応可能な電圧値に設定することが考えられる。例えば、氷の厚さを検知するセンサーを設け、当該センサーから得られるデータに基づいて電圧値を自動的に変化させる構成も可能である。また、電極間の間隔を上記データ等に基づいて狭くしたり、広くしたりするモーターを設ける構成も可能である。また、氷の欠損等によって放電が好条件で起きていないことをセンサーが検知した場合、センサーがアラーム信号等をディスプレイやスピーカーに出力する構成も可能である。
【0025】
<処理の流れ>
本実施例の放電方法は、電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におくものである。図4は、当該放電方法の処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初に氷誘電体形成ステップ(ステップS0401)では、電極の放電面の全部または一部に氷を張る。保冷ステップ(ステップS0402)では、前記電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷する。原料気体導入ステップ(ステップS0403)では、前記放電が誘起される電極間に原料気体を導入する。放電誘起ステップ(ステップS0404)では、前記電極間で放電を誘起可能な電圧を印加する。
【0026】
<効果>
以上のように、本実施例の放電装置又は放電方法では、ガラス等の誘電体ではなく氷点下に保冷した氷を誘電体として代用するため、放電によって氷が欠損したような場合でも容易に修復することが可能になる。
【実施例2】
【0027】
<概要>
本実施例の放電装置、放電方法は、基本的に実施例1と共通するが、原料気体として酸素を導入して放電によりオゾンを発生させることができる。例えば、オゾンを発生させるために放電を行い、氷の一部が欠損してしまった場合でも氷原料を吹きかけて凍らせることによって容易に修復することが可能になる。
【0028】
<構成>
図5は、本実施例の放電装置の構成図を示したものである。この図にあるように、本実施例の「放電装置」(0500)は、「電極部」(0501)と、「保冷部」(0502)と、「原料気体導入部」(0503)と、「電源部」(0504)とから構成され、「原料気体導入部」は「酸素導入手段」(0505)を有する。以下、実施例1との相違点である「酸素導入手段」について説明する。
【0029】
「酸素導入手段」は、放電環境中におくことでオゾン化される酸素を導入可能な機能を有する。オゾン生成反応は、低湿度環境が好適であるため、氷を修復する場合を除いて原料気体に氷の成分となる液体、気体を含ませない方がよい。また、低温度環境であることもオゾンの生成にとって好適であるため、酸素導入手段を機能させる場合は、保冷部による冷却効果を自動的に高めることが可能な構成も考えられる。
【0030】
放電によって発生したオゾンは分離装置を用いて酸素から分離することが可能であり、分離したオゾンを所定の領域に導入させる構成も可能である。例えば、オゾンは滅菌作用があるため、生成されたオゾンを滅菌する対象の領域(空気や水など)に導入する構成が考えられる。
【0031】
なお、原料気体としては酸素のみを含有するガスを用いることも可能であるが、酸素を主成分とするガスを用いることも可能である。
【0032】
<処理の流れ>
本実施例の放電方法の処理の流れは基本的に図4を用いて説明した実施例1の処理の流れと同様である。ただし、本実施例の放電方法では、前記原料気体導入ステップが、放電環境中におくことでオゾン化される酸素を導入する酸素導入サブステップからなることを特徴とする。
【0033】
<効果>
以上のように、本実施例の放電装置又は放電方法では、原料気体として酸素を導入してオゾンを発生させることができ、放電によって氷の一部が欠損してしまった場合でも容易に修復することが可能になる。
【実施例3】
【0034】
<概要>
本実施例の放電装置は、基本的に実施例1と共通するが、放電面の氷が放電等によって欠損した場合でも、氷原料を含有した気体を導入することによって、放電面の氷をさらに容易に修復することが可能になる。
【0035】
<構成>
図6は、本実施例の放電装置の構成図を示したものである。この図にあるように、本実施例の「放電装置」(0600)は、「電極部」(0601)と、「保冷部」(0602)と、「原料気体導入部」(0603)と、「電源部」(0604)と、「修復気体導入部」(0605)とから構成される。以下、実施例1との相違点である「修復気体導入部」について説明する。
【0036】
「修復気体導入部」は、前記放電面の氷を修復するために前記電極間に氷原料を含有した気体を導入可能な機能を有する。ここで、氷原料を含有させる気体としては、原料気体導入部から導入される気体が主として考えられるが、その他の気体に対して氷原料を含有させて導入することも可能である。また、氷が水を主成分とする場合は、気体に氷原料として水分を含有させることが考えられるが、氷が一酸化炭素や二酸化炭素、メタンなどを主成分とする場合は、これらの液体又は気体を氷原料として原料気体に含有させることになる。
【0037】
なお、修復気体導入部と原料気体導入部は両方とも同じ導入口を介して各気体を導入させることも考えられる。この場合、修復気体導入部としての機能を発揮させる際に、別途氷原料を所定領域から吸引し、原料気体に含有させる処理を加えて行うことが考えられる。
【0038】
なお、電極にセンサー等を配置し、電極の氷の厚さに応じて気体に含有させる氷原料を自動的に調整可能な構成とすることも可能である。具体的には、CPUがセンサーからの検知信号に基づいて記憶部に記憶されている氷原料量テーブルを参照し、氷原料量を決定する処理を行い、当該処理結果に基づいて修復気体導入部の氷原料量の調整機構を制御する方法が考えられる。
【0039】
また、電極の複数の位置にセンサーを配置して、どの位置にある氷が欠損したか検知し、当該検知情報に基づいて修復気体を導入させる際の導入口の角度や方向を自動的に制御可能な構成とすることも可能である。この場合、導入口の角度や方向を調整するためのモーター等の構成を加えることが考えられる。
【0040】
<処理の流れ>
本実施例の放電方法は、電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におくものである。図7は、当該放電方法の処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初に氷誘電体形成ステップ(ステップS0701)では、電極の放電面の全部または一部に氷を張る。保冷ステップ(ステップS0702)では、前記電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷する。原料気体導入ステップ(ステップS0703)では、前記放電が誘起される電極間に原料気体を導入する。放電誘起ステップ(ステップS0704)では、前記電極間で放電を誘起可能な電圧を印加する。修復気体導入ステップ(ステップS0705)では、前記放電面の氷を修復するために前記電極間に氷原料を含有した気体を導入する。
【0041】
<効果>
以上のように、本実施例の放電装置又は放電方法では、放電面の氷が放電等によって欠損した場合でも、氷原料を含有した気体を導入することによって、放電面の氷をさらに容易に修復することが可能になる。
【実施例4】
【0042】
<概要>
本実施例の放電装置は、基本的に実施例1と共通するが、一方又は両方の電極が中空部材からなり、当該中空部材の空洞部分に冷媒を導入することによって、電極に張られた氷を効果的に氷点下に保冷することが可能になる。
【0043】
<構成>
図8は、本実施例の放電装置の構成図を示したものである。この図にあるように、本実施例の「放電装置」(0800)は、「電極部」(0801)と、「保冷部」(0802)と、「原料気体導入部」(0803)と、「電源部」(0804)とから構成され、「保冷部」は「中空電極保冷手段」(0805)を有する。以下、実施例1との相違点である「中空電極保冷手段」について説明する。
【0044】
「電極部」の一方又は両方の電極は中空部材からなることを特徴とする。また、「中空電極保冷手段」は、前記中空部材の空洞部分に冷媒を導入して前記電極部を氷点下に保冷可能な機能を有する。中空部材からなる電極としては、例えば図9に示すようなものが考えられる。この図の例では、中空部材からなる「電極」0901は平板形状をしており、内部の「空洞部分」0902に冷媒を導入することにより当該電極の温度を氷点下に保冷することが可能になる。また、この図の例では電極部の一部に「氷」0903を平板状に張っており、氷のいずれかのポイントにおいて対向する電極と放電を行うものである。その他の中空部材からなる電極としては、円柱形のものや、三角柱など種々の形状が考えられる。また、中空部材の空洞部分は必ずしも等方的である必要はなく、氷を張る放電面の方に偏った構造なども可能である。
【0045】
<処理の流れ>
本実施例の放電方法の処理の流れは基本的に図4を用いて説明した実施例1の処理の流れと同様である。ただし、本実施例の放電方法では、一方又は両方の前記電極が中空部材からなり、前記保冷ステップが前記中空部材の空洞部分に冷媒を導入して前記電極を氷点下に保冷する中空電極保冷サブステップからなることを特徴とする。
【0046】
<効果>
以上のように、本実施例の放電装置又は放電方法では、電極の空洞部分に冷媒を導入することによって電極に張られた氷を氷点下に保冷することが容易になる。
【実施例5】
【0047】
<概要>
本実施例の放電装置は、基本的に実施例4と共通するが、一方又は両方の電極が円筒形状であることを特徴としている。これにより、電極の周囲に誘電体として氷を等方的に張ることが可能になる。
【0048】
<構成>
本実施例の放電装置の構成図は図8を用いて説明した実施例4の構成図と同様である。本実施例の「放電装置」は、「電極部」と、「保冷部」と、「原料気体導入部」と、「電源部」とから構成される。以下、実施例4との相違点である「電極部」について説明する。
【0049】
本実施例の「電極部」の一方又は両方の電極は円筒形状であることを特徴とする。円筒形状である電極の一例としては図10のようなものが考えられる。この図の例では、実施例4で説明した構成と同様に、冷媒が「電極」1002の「空洞部分」1001に導入されており、「氷」1003が電極の周囲を覆うように配置されている。この場合、仮に氷の一部が放電等によって欠損した場合でも、電極を円柱軸を中心として所定回転させることによって、再度良い条件で放電を起こすことも可能である。また、円筒形状とすることによって、平面形状の電極と対比して放電効率を向上させることも可能である。
【0050】
<効果>
以上のように、本実施例の放電装置は、電極の周囲に誘電体として氷を等方的に張ることが可能になり、放電効率等を向上させることが可能になる。
【実施例6】
【0051】
<概要>
本実施例の放電装置は、基本的に実施例4と共通するが、中空部材からなる電極が全体として蛇行形状であることを特徴としている。当該構成とすることによって、冷媒の流量を増やすことなく広い放電面に誘電体として氷を張ることが可能になる。
【0052】
<構成>
本実施例の放電装置の構成図は図8を用いて説明した実施例4の構成図と同様である。本実施例の「放電装置」は、「電極部」と、「保冷部」と、「原料気体導入部」と、「電源部」とから構成される。る。以下、実施例1との相違点である「電極部」について説明する。
【0053】
本実施例の中空部材からなる電極は全体として蛇行形状であることを特徴とする。全体として蛇行形状である電極としては、図11に示すような構成が考えられる。この図の例では、円筒状のものを「全体として蛇行形状にした電極」1101を示しており、その内部の「空洞部分」1102には電極の周囲に張られた「氷」1103を保冷するための冷媒が導入されている。当該形状とすることによって、冷媒の流量を増やすことなく広い放電面に誘電体として氷を張ることが可能になる。また、原料気体の温度も効率的に下げることが可能になるため、放電効率も併せて高くすることが可能になる。
【0054】
なお、必ずしも両方の電極を蛇行形状とする必要はないが、冷却効率と放電効率を考慮すると、両方の電極を蛇行形状にして対向させることが好ましい。また、上図では円柱状のものを蛇行形状にした例を示したが、四角柱のものや三角柱のものなどを蛇行形状とすることも同様に可能である。
【0055】
<効果>
以上のように、本実施例の放電装置は、冷媒の流量を増やすことなく広い放電面に誘電体としての氷を張ることが可能になり、放電効率を高くすることが可能になる。
【符号の説明】
【0056】
0100 放電装置
0101 電極部
0102 保冷部
0103 原料気体導入部
0104 電源部
0505 酸素導入手段
0605 修復気体導入部
0805 中空電極保冷手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におく放電装置又は放電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放電装置は従来から種々のものが多数市販されており、用途も広がりつつある。一般に、放電電極にはガラスなどの誘電体を電極間に挿入し、グロー放電がアーク放電に移行することを防止する構造が採用されている。例えば、特許文献1では、高電圧が印加される筒状の金属電極にセラミック、ガラスなどによって構成された誘電体を配置し、空気導入パイプを介して導入されたガスを放電環境におく装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−19408
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セラミック、ガラスなどの誘電体は放電によって劣化しやすく、寿命が短い。また、セラミックやガラスなどは高価であると同時に、部分的に補修することが難しいため、これらの誘電体を交換するための手間及び費用が必要となり、メンテナンスが大変であった。この傾向は放電装置が大型なもの程顕著になるものであり、問題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため本発明は、電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におく放電装置であって、電極の放電面の全部または一部に氷を張ることができる電極部と、前記電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷可能な保冷部と、前記放電が誘起される電極間に原料気体を導入可能な原料気体導入部と、前記電極間で放電を誘起可能な電圧を印加する電源部と、からなる放電装置を提案する。
【0006】
また、本発明は、電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におく放電方法であって、電極の放電面の全部または一部に氷を張る氷誘電体層形成ステップと、前記電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷する保冷ステップと、前記放電が誘起される電極間に原料気体を導入する原料気体導入ステップと、前記電極間で放電を誘起可能な電圧を印加する放電誘起ステップと、からなる放電方法を提案する。
【発明の効果】
【0007】
以上の構成をとる本発明では、氷点下に保冷した氷を誘電体として用いることができるため、放電によって氷の一部が欠損したような場合でも容易に修復することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の放電装置の構成図
【図2】実施例1の電極、冷媒、氷の構成の一例を示した図
【図3】実施例1の電極、冷媒、氷の構成の他の一例を示した図
【図4】実施例1の放電方法の処理の流れの一例を示した図
【図5】実施例2の放電装置の構成図
【図6】実施例3の放電装置の構成図
【図7】実施例3の放電方法の処理の流れの一例を示した図
【図8】実施例4の放電装置の構成図
【図9】実施例4の中空部材からなる電極の一例を示した図
【図10】実施例5の円筒形状の電極の一例を示した図
【図11】実施例6の全体として蛇行形状である電極の一例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、様々な態様で実施しうる。実施例と請求項の相互の関係は、以下のとおりである。実施例1は主に請求項1、7などに関し、実施例2は主に請求項2、8などに関し、実施例3は主に請求項3、9などに関し、実施例4は主に請求項4、10などに関し、実施例5は主に請求項5などに関し、実施例6は主に請求項6などに関する。
【実施例1】
【0010】
<概要>
本実施例の放電装置又は放電方法は、電極の全部または一部に氷を張り、当該電極を氷点下に保冷することで、ガラス等に代えて氷を誘電体として用いることができる。これにより、放電によって氷の一部が欠けてしまった場合でも容易に修復することが可能になる。
【0011】
<構成>
図1は、本実施例の放電装置の構成図である。図に示すように、本実施例の「放電装置」(0100)は、「電極部」(0101)と、「保冷部」(0102)と、「原料気体導入部」(0103)と、「電源部」(0104)とから構成される。以下、本実施例の装置の各構成について説明する。
【0012】
「放電装置」は、電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におくことを特徴とする。例えば、大気中で放電を誘起させると、一酸化窒素や、硝酸、オゾン、二酸化炭素などが発生する。特に、酸素を主原料ガスとして電極間に導入し、酸素分子の解離と再結合によってオゾンを生成することが可能である。本実施例の放電装置では特に原料ガスを限定するものではないが、オゾン発生装置として好適に用いることができる。
【0013】
「電極部」は、電極の放電面の全部または一部に氷が張ることができることを特徴とする。氷としては、一般的に水の固体が考えられるが、一酸化炭素や二酸化炭素、メタンなどの水以外の分子物質の固体も含むものである。放電面のうち氷を張る部分としては、放電の発生しやすい部分とすることが考えられるが、特に限定されるものではない。例えば、放電面の一部の氷が放電等によって欠損した場合でも、すぐに使えるように電極の裏面にも氷を張ることが可能な構成が考えられる。また、電極が円筒状の物である場合は、円筒電極の周囲に氷を張る構成も同様に可能である。
【0014】
また、電極の一部に誘電体として氷を張り、他の部分についてガラス等の誘電体を用いる構成も可能である。例えば、誘電体の欠損が放電によって生じやすい部分については氷を張り、欠損が生じにくい部分についてはガラス等の誘電体を用いる、といったことも可能である。
【0015】
また、放電面の全部または一部に氷を張る方法としては、電極の所定箇所に水などを吹き付けた後に氷点下に冷却して氷結させることが考えられる。また、別の方法で所定形状の氷を生成し、放電面の全部又は一部に固定器具又は固定物質等によって固定することも考えられる。さらに、放電等によって氷の一部が欠損した場合、欠損した部分に水などを吹きかけて氷を補修することも可能であるし、氷全体を交換することも可能である。氷の製造自体は費用及び手間を必要とするものではないため、上記の作業は容易に行うことが可能である。
【0016】
なお、放電の効率を高める点で氷の純度が高いものを用いることが好ましい。純度が高い水などの氷原料は一般的に氷点下より低い温度で作ることが必要となるが、体積抵抗率が高いため、電気的性質に優れた誘電体となる。また、氷の内部に気泡やボイドなどが極力少なくなるように、時間をかけて気泡のない氷を作ることが好ましい。これは、気泡の比誘電率が1程度であるのに対して氷の比誘電率は4以上であることに起因して気泡部分に部分放電が発生してしまうことを防止するためである。
【0017】
なお、電極部は以下に述べる保冷部による保冷機能を効果的にするために熱伝導性の良い金属を用いることが好適である。例えば、熱伝導性の良い金属として、金、銀、銅、アルミニウムを用いることが考えられる。
【0018】
また、図1においては、両電極が垂直方向に対向するように配置されているが、水平方向に対向するように配置する構成も同様に可能である。当該構成とすることで、一方の電極の氷が溶けたとしても他方の電極の氷面に水滴が付着することを防止できる。その結果、他方の氷面が凹凸形状になることを防止でき、放電の乱れ現象を少なくすることができる。
【0019】
「保冷部」は、前記電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷可能な機能を有する。氷点の値は、誘電体として用いる氷の種類により異なる物であり、適宜適当な値を用いる。また、電極の放電面を冷媒によって氷点下に保冷する方法としては、電極の裏側に冷媒組成物及びそれを用いた冷凍回路からなる冷凍装置を設置することが考えられる。放電面を保冷する冷媒としては、気体、液体、固体のいずれであってもよく、特に限定されるものではない。図2においては、「固体状の冷媒組成物」0201の上に「直方体形状の電極」0202を配置し、その上に直方体の「氷」0203を張った例を示している。なお、氷は上述のように、放電面の全部に張る必要は必ずしもなく、一部にのみ張る構成も同様に可能である。また、図3に示すように、「固体状の冷媒組成物」0301の上に「半円柱形状の電極」0302を配置し、その上に「半円柱の氷」0303を張るといった構成も可能である。
【0020】
電極を中空部材からなる構成とした場合、中空部材の空洞部分に冷凍装置から冷媒を導入して電極の放電面を氷点下に保冷することも考えられる(詳しくは実施例4にて説明する)。上記の冷凍装置としては、特に限定されるものではなく、電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷可能な機能を有するものであれば足りる。
【0021】
また、保冷部の冷却強度を自動制御可能な構成とすることも考えられる。例えば、電極部にセンサーを配置し、氷の厚さが所定値以下になったと検知された場合は、冷却効果を強くして氷をさらに冷却することや、電極部の氷の厚さが所定値以上になったと検知した場合は、冷却効果を弱くすることなどが考えられる。また、周囲の気体の温度を検知するセンサーを配置し、温度に依存して冷却強度を調整する構成も可能である。
【0022】
「原料気体導入部」は、前記放電が誘起される電極間に原料気体を導入可能な機能を有する。ここで、原料気体を導入するための方法としては、例えば原料気体を封入した一般的な開閉コック付きボンベを用いることも可能であるし、原料気体を生成するための装置を用いることも可能である。ここで、原料気体として酸素を導入し、放電によってオゾンを発生させることも考えられる(詳しくは実施例2にて説明する)。また、原料気体として通常の大気成分のガスを導入し、一酸化窒素などを発生させることも考えられる。
【0023】
なお、放電によって生成されるガスの生成効率を上げるために、原料ガスの湿度を低下させる乾燥機を介在させることも可能である。また、アルミナシリカゲル等の吸湿剤を所定箇所に配置する構成も同様に可能である。
【0024】
「電源部」は、前記電極間で放電を誘起可能な電圧を印加する機能を有する。ここで、電極間で放電を誘起可能な電圧としては、電極間の間隔や誘電体の厚さ等によって値が異なってくるため、各条件に適応可能な電圧値に設定することが考えられる。例えば、氷の厚さを検知するセンサーを設け、当該センサーから得られるデータに基づいて電圧値を自動的に変化させる構成も可能である。また、電極間の間隔を上記データ等に基づいて狭くしたり、広くしたりするモーターを設ける構成も可能である。また、氷の欠損等によって放電が好条件で起きていないことをセンサーが検知した場合、センサーがアラーム信号等をディスプレイやスピーカーに出力する構成も可能である。
【0025】
<処理の流れ>
本実施例の放電方法は、電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におくものである。図4は、当該放電方法の処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初に氷誘電体形成ステップ(ステップS0401)では、電極の放電面の全部または一部に氷を張る。保冷ステップ(ステップS0402)では、前記電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷する。原料気体導入ステップ(ステップS0403)では、前記放電が誘起される電極間に原料気体を導入する。放電誘起ステップ(ステップS0404)では、前記電極間で放電を誘起可能な電圧を印加する。
【0026】
<効果>
以上のように、本実施例の放電装置又は放電方法では、ガラス等の誘電体ではなく氷点下に保冷した氷を誘電体として代用するため、放電によって氷が欠損したような場合でも容易に修復することが可能になる。
【実施例2】
【0027】
<概要>
本実施例の放電装置、放電方法は、基本的に実施例1と共通するが、原料気体として酸素を導入して放電によりオゾンを発生させることができる。例えば、オゾンを発生させるために放電を行い、氷の一部が欠損してしまった場合でも氷原料を吹きかけて凍らせることによって容易に修復することが可能になる。
【0028】
<構成>
図5は、本実施例の放電装置の構成図を示したものである。この図にあるように、本実施例の「放電装置」(0500)は、「電極部」(0501)と、「保冷部」(0502)と、「原料気体導入部」(0503)と、「電源部」(0504)とから構成され、「原料気体導入部」は「酸素導入手段」(0505)を有する。以下、実施例1との相違点である「酸素導入手段」について説明する。
【0029】
「酸素導入手段」は、放電環境中におくことでオゾン化される酸素を導入可能な機能を有する。オゾン生成反応は、低湿度環境が好適であるため、氷を修復する場合を除いて原料気体に氷の成分となる液体、気体を含ませない方がよい。また、低温度環境であることもオゾンの生成にとって好適であるため、酸素導入手段を機能させる場合は、保冷部による冷却効果を自動的に高めることが可能な構成も考えられる。
【0030】
放電によって発生したオゾンは分離装置を用いて酸素から分離することが可能であり、分離したオゾンを所定の領域に導入させる構成も可能である。例えば、オゾンは滅菌作用があるため、生成されたオゾンを滅菌する対象の領域(空気や水など)に導入する構成が考えられる。
【0031】
なお、原料気体としては酸素のみを含有するガスを用いることも可能であるが、酸素を主成分とするガスを用いることも可能である。
【0032】
<処理の流れ>
本実施例の放電方法の処理の流れは基本的に図4を用いて説明した実施例1の処理の流れと同様である。ただし、本実施例の放電方法では、前記原料気体導入ステップが、放電環境中におくことでオゾン化される酸素を導入する酸素導入サブステップからなることを特徴とする。
【0033】
<効果>
以上のように、本実施例の放電装置又は放電方法では、原料気体として酸素を導入してオゾンを発生させることができ、放電によって氷の一部が欠損してしまった場合でも容易に修復することが可能になる。
【実施例3】
【0034】
<概要>
本実施例の放電装置は、基本的に実施例1と共通するが、放電面の氷が放電等によって欠損した場合でも、氷原料を含有した気体を導入することによって、放電面の氷をさらに容易に修復することが可能になる。
【0035】
<構成>
図6は、本実施例の放電装置の構成図を示したものである。この図にあるように、本実施例の「放電装置」(0600)は、「電極部」(0601)と、「保冷部」(0602)と、「原料気体導入部」(0603)と、「電源部」(0604)と、「修復気体導入部」(0605)とから構成される。以下、実施例1との相違点である「修復気体導入部」について説明する。
【0036】
「修復気体導入部」は、前記放電面の氷を修復するために前記電極間に氷原料を含有した気体を導入可能な機能を有する。ここで、氷原料を含有させる気体としては、原料気体導入部から導入される気体が主として考えられるが、その他の気体に対して氷原料を含有させて導入することも可能である。また、氷が水を主成分とする場合は、気体に氷原料として水分を含有させることが考えられるが、氷が一酸化炭素や二酸化炭素、メタンなどを主成分とする場合は、これらの液体又は気体を氷原料として原料気体に含有させることになる。
【0037】
なお、修復気体導入部と原料気体導入部は両方とも同じ導入口を介して各気体を導入させることも考えられる。この場合、修復気体導入部としての機能を発揮させる際に、別途氷原料を所定領域から吸引し、原料気体に含有させる処理を加えて行うことが考えられる。
【0038】
なお、電極にセンサー等を配置し、電極の氷の厚さに応じて気体に含有させる氷原料を自動的に調整可能な構成とすることも可能である。具体的には、CPUがセンサーからの検知信号に基づいて記憶部に記憶されている氷原料量テーブルを参照し、氷原料量を決定する処理を行い、当該処理結果に基づいて修復気体導入部の氷原料量の調整機構を制御する方法が考えられる。
【0039】
また、電極の複数の位置にセンサーを配置して、どの位置にある氷が欠損したか検知し、当該検知情報に基づいて修復気体を導入させる際の導入口の角度や方向を自動的に制御可能な構成とすることも可能である。この場合、導入口の角度や方向を調整するためのモーター等の構成を加えることが考えられる。
【0040】
<処理の流れ>
本実施例の放電方法は、電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におくものである。図7は、当該放電方法の処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初に氷誘電体形成ステップ(ステップS0701)では、電極の放電面の全部または一部に氷を張る。保冷ステップ(ステップS0702)では、前記電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷する。原料気体導入ステップ(ステップS0703)では、前記放電が誘起される電極間に原料気体を導入する。放電誘起ステップ(ステップS0704)では、前記電極間で放電を誘起可能な電圧を印加する。修復気体導入ステップ(ステップS0705)では、前記放電面の氷を修復するために前記電極間に氷原料を含有した気体を導入する。
【0041】
<効果>
以上のように、本実施例の放電装置又は放電方法では、放電面の氷が放電等によって欠損した場合でも、氷原料を含有した気体を導入することによって、放電面の氷をさらに容易に修復することが可能になる。
【実施例4】
【0042】
<概要>
本実施例の放電装置は、基本的に実施例1と共通するが、一方又は両方の電極が中空部材からなり、当該中空部材の空洞部分に冷媒を導入することによって、電極に張られた氷を効果的に氷点下に保冷することが可能になる。
【0043】
<構成>
図8は、本実施例の放電装置の構成図を示したものである。この図にあるように、本実施例の「放電装置」(0800)は、「電極部」(0801)と、「保冷部」(0802)と、「原料気体導入部」(0803)と、「電源部」(0804)とから構成され、「保冷部」は「中空電極保冷手段」(0805)を有する。以下、実施例1との相違点である「中空電極保冷手段」について説明する。
【0044】
「電極部」の一方又は両方の電極は中空部材からなることを特徴とする。また、「中空電極保冷手段」は、前記中空部材の空洞部分に冷媒を導入して前記電極部を氷点下に保冷可能な機能を有する。中空部材からなる電極としては、例えば図9に示すようなものが考えられる。この図の例では、中空部材からなる「電極」0901は平板形状をしており、内部の「空洞部分」0902に冷媒を導入することにより当該電極の温度を氷点下に保冷することが可能になる。また、この図の例では電極部の一部に「氷」0903を平板状に張っており、氷のいずれかのポイントにおいて対向する電極と放電を行うものである。その他の中空部材からなる電極としては、円柱形のものや、三角柱など種々の形状が考えられる。また、中空部材の空洞部分は必ずしも等方的である必要はなく、氷を張る放電面の方に偏った構造なども可能である。
【0045】
<処理の流れ>
本実施例の放電方法の処理の流れは基本的に図4を用いて説明した実施例1の処理の流れと同様である。ただし、本実施例の放電方法では、一方又は両方の前記電極が中空部材からなり、前記保冷ステップが前記中空部材の空洞部分に冷媒を導入して前記電極を氷点下に保冷する中空電極保冷サブステップからなることを特徴とする。
【0046】
<効果>
以上のように、本実施例の放電装置又は放電方法では、電極の空洞部分に冷媒を導入することによって電極に張られた氷を氷点下に保冷することが容易になる。
【実施例5】
【0047】
<概要>
本実施例の放電装置は、基本的に実施例4と共通するが、一方又は両方の電極が円筒形状であることを特徴としている。これにより、電極の周囲に誘電体として氷を等方的に張ることが可能になる。
【0048】
<構成>
本実施例の放電装置の構成図は図8を用いて説明した実施例4の構成図と同様である。本実施例の「放電装置」は、「電極部」と、「保冷部」と、「原料気体導入部」と、「電源部」とから構成される。以下、実施例4との相違点である「電極部」について説明する。
【0049】
本実施例の「電極部」の一方又は両方の電極は円筒形状であることを特徴とする。円筒形状である電極の一例としては図10のようなものが考えられる。この図の例では、実施例4で説明した構成と同様に、冷媒が「電極」1002の「空洞部分」1001に導入されており、「氷」1003が電極の周囲を覆うように配置されている。この場合、仮に氷の一部が放電等によって欠損した場合でも、電極を円柱軸を中心として所定回転させることによって、再度良い条件で放電を起こすことも可能である。また、円筒形状とすることによって、平面形状の電極と対比して放電効率を向上させることも可能である。
【0050】
<効果>
以上のように、本実施例の放電装置は、電極の周囲に誘電体として氷を等方的に張ることが可能になり、放電効率等を向上させることが可能になる。
【実施例6】
【0051】
<概要>
本実施例の放電装置は、基本的に実施例4と共通するが、中空部材からなる電極が全体として蛇行形状であることを特徴としている。当該構成とすることによって、冷媒の流量を増やすことなく広い放電面に誘電体として氷を張ることが可能になる。
【0052】
<構成>
本実施例の放電装置の構成図は図8を用いて説明した実施例4の構成図と同様である。本実施例の「放電装置」は、「電極部」と、「保冷部」と、「原料気体導入部」と、「電源部」とから構成される。る。以下、実施例1との相違点である「電極部」について説明する。
【0053】
本実施例の中空部材からなる電極は全体として蛇行形状であることを特徴とする。全体として蛇行形状である電極としては、図11に示すような構成が考えられる。この図の例では、円筒状のものを「全体として蛇行形状にした電極」1101を示しており、その内部の「空洞部分」1102には電極の周囲に張られた「氷」1103を保冷するための冷媒が導入されている。当該形状とすることによって、冷媒の流量を増やすことなく広い放電面に誘電体として氷を張ることが可能になる。また、原料気体の温度も効率的に下げることが可能になるため、放電効率も併せて高くすることが可能になる。
【0054】
なお、必ずしも両方の電極を蛇行形状とする必要はないが、冷却効率と放電効率を考慮すると、両方の電極を蛇行形状にして対向させることが好ましい。また、上図では円柱状のものを蛇行形状にした例を示したが、四角柱のものや三角柱のものなどを蛇行形状とすることも同様に可能である。
【0055】
<効果>
以上のように、本実施例の放電装置は、冷媒の流量を増やすことなく広い放電面に誘電体としての氷を張ることが可能になり、放電効率を高くすることが可能になる。
【符号の説明】
【0056】
0100 放電装置
0101 電極部
0102 保冷部
0103 原料気体導入部
0104 電源部
0505 酸素導入手段
0605 修復気体導入部
0805 中空電極保冷手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におく放電装置であって、
電極の放電面の全部または一部に氷を張ることができる電極部と、
前記電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷可能な保冷部と、
前記放電が誘起される電極間に原料気体を導入可能な原料気体導入部と、
前記電極間で放電を誘起可能な電圧を印加する電源部と、
からなる放電装置。
【請求項2】
前記原料気体導入部は、放電環境中におくことでオゾン化される酸素を導入可能な酸素導入手段を有する請求項1に記載の放電装置
【請求項3】
前記放電面の氷を修復するために前記電極間に氷原料を含有した気体を導入可能な修復気体導入部をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の放電装置。
【請求項4】
前記電極部の一方又は両方の電極は中空部材からなり、
前記保冷部は前記中空部材の空洞部分に冷媒を導入して前記電極部を氷点下に保冷可能な中空電極保冷手段を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一に記載の放電装置。
【請求項5】
前記電極部の一方又は両方の電極は円筒形状であることを特徴とする請求項4に記載の放電装置。
【請求項6】
前記中空部材からなる電極は全体として蛇行形状であることを特徴とする請求項4又は5に記載の放電装置。
【請求項7】
電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におく放電方法であって、
電極の放電面の全部または一部に氷を張る氷誘電体層形成ステップと、
前記電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷する保冷ステップと、
前記放電が誘起される電極間に原料気体を導入する原料気体導入ステップと、
前記電極間で放電を誘起可能な電圧を印加する放電誘起ステップと、
からなる放電方法。
【請求項8】
前記原料気体導入ステップは、放電環境中におくことでオゾン化される酸素を導入する酸素導入サブステップからなることを特徴とする請求項7に記載の放電方法。
【請求項9】
前記放電面の氷を修復するために前記電極間に氷原料を含有した気体を導入する修復気体導入ステップをさらに有することを特徴とする請求項7または8に記載の放電方法。
【請求項10】
一方又は両方の前記電極は中空部材からなり、
前記保冷ステップは前記中空部材の空洞部分に冷媒を導入して前記電極を氷点下に保冷する中空電極保冷サブステップからなることを特徴とする請求項7から9のいずれか一に記載の放電方法。
【請求項1】
電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におく放電装置であって、
電極の放電面の全部または一部に氷を張ることができる電極部と、
前記電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷可能な保冷部と、
前記放電が誘起される電極間に原料気体を導入可能な原料気体導入部と、
前記電極間で放電を誘起可能な電圧を印加する電源部と、
からなる放電装置。
【請求項2】
前記原料気体導入部は、放電環境中におくことでオゾン化される酸素を導入可能な酸素導入手段を有する請求項1に記載の放電装置
【請求項3】
前記放電面の氷を修復するために前記電極間に氷原料を含有した気体を導入可能な修復気体導入部をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の放電装置。
【請求項4】
前記電極部の一方又は両方の電極は中空部材からなり、
前記保冷部は前記中空部材の空洞部分に冷媒を導入して前記電極部を氷点下に保冷可能な中空電極保冷手段を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一に記載の放電装置。
【請求項5】
前記電極部の一方又は両方の電極は円筒形状であることを特徴とする請求項4に記載の放電装置。
【請求項6】
前記中空部材からなる電極は全体として蛇行形状であることを特徴とする請求項4又は5に記載の放電装置。
【請求項7】
電極間にガス導入するとともに、この電極間で放電を誘起して導入したガスを放電環境中におく放電方法であって、
電極の放電面の全部または一部に氷を張る氷誘電体層形成ステップと、
前記電極の放電面を冷媒により氷点下に保冷する保冷ステップと、
前記放電が誘起される電極間に原料気体を導入する原料気体導入ステップと、
前記電極間で放電を誘起可能な電圧を印加する放電誘起ステップと、
からなる放電方法。
【請求項8】
前記原料気体導入ステップは、放電環境中におくことでオゾン化される酸素を導入する酸素導入サブステップからなることを特徴とする請求項7に記載の放電方法。
【請求項9】
前記放電面の氷を修復するために前記電極間に氷原料を含有した気体を導入する修復気体導入ステップをさらに有することを特徴とする請求項7または8に記載の放電方法。
【請求項10】
一方又は両方の前記電極は中空部材からなり、
前記保冷ステップは前記中空部材の空洞部分に冷媒を導入して前記電極を氷点下に保冷する中空電極保冷サブステップからなることを特徴とする請求項7から9のいずれか一に記載の放電方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−23211(P2011−23211A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167350(P2009−167350)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(599016431)学校法人 芝浦工業大学 (109)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(599016431)学校法人 芝浦工業大学 (109)
【Fターム(参考)】
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