説明

放電装置

【課題】放電生成物や飛散物などの付着物が処理対象の表面に落下することによる不具合を防止することのできる放電装置を提供する。
【解決手段】下方に位置する処理対象1に対して放電を行い該処理対象の表面を帯電又は除電する放電装置2は、軸線を有する放電電極10と、放電電極10に対向する内面12b1とその反対側の外面12b2とを有し前記軸線と略平行に延在する側板12bを備えたシールド12と、放電電極10と処理対象1の表面との間に配置されるグリッド電極11と、側板12bと処理対象1の表面との間に配置され、前記軸線と略直交する方向において側板12bの内面12b1側から外面12b2側まで連続する平面状の落下物受け部30と、を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真方式を利用した電子写真装置に用いられる放電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置では、電子写真感光体(感光体)の表面を帯電させた後に、画像情報に応じて露光することにより、感光体の表面に静電潜像を形成する。感光体の表面を帯電させる方法として、放電装置であるコロナ帯電器を用いる方法が広く用いられている。
【0003】
コロナ帯電器は、一面が開放された支持筐体であるシールド(シールドケース)の両端部に配設された保持部材であるブロック間に、放電線(放電電極)が展張された構成を有する。シールドは、代表的にはステンレス鋼(以下「SUS」ともいう。)で構成される。又、放電線は、タングステンなどの線材で構成される。コロナ帯電器を用いて感光体などの被帯電部材の被帯電面を帯電させる場合、シールドの開口部を被帯電面に近接させた状態で対向させ、放電線に放電電流を供給してコロナ放電を発生させ、被帯電面の表面に電荷を付与する。
【0004】
被帯電面の帯電電位は、放電線と被帯電面との間にグリッド(グリッド電極)を設け、そのグリッドに印加するグリッドバイアスによって被帯電面に付与する電荷量を調整することで制御される。グリッドとしては、主に、放電線と同種の材料又はSUSなどにより形成されたワイヤ形状のグリッドや、エッチングなどにより多数の孔が形成された多孔性の板状のグリッドが知られている。
【0005】
ワイヤ形状のグリッドには、トナーなどの汚染物質が付着し易く、汚染物質の付着により、被帯電面の帯電電位を制御する機能が不充分になり、被帯電面の帯電電位が不均一になる場合がある。
【0006】
板状のグリッドは、ワイヤ形状のグリッドに比べて相対的に大きな面積を有することから、被帯電面の帯電電位を適正な範囲に制御でき、加えて、汚染物質が多少付着しても、帯電電位の制御性の低下が少ない。又、SUSで形成された板状のグリッドは、高い耐久性を有し、長期間使用しても変形せず、変形などに伴う帯電電位の制御性の変化も非常に少ない。従って、上述のような多孔性の板状のグリッドは、長期間にわたって被帯電面の帯電電位をほぼ一定に制御するのに適している。
【0007】
ところで、コロナ帯電器を高温高湿度環境下で使用すると、コロナ帯電器の長手方向において被帯電面の帯電ムラが生じ、それにより濃度斑などの画像不良が発生する場合がある。その原因は、次のように考えられる。つまり、コロナ放電によって発生する放電生成物との化学反応により、グリッドの表面に、放電生成物として絶縁性の金属酸化物が発生する。この放電生成物によるグリッドの部分的な絶縁化によって、グリッドへの電荷の注入量が低下し、被帯電面方向への電荷が増し、結果として帯電電位にムラが発生する。メッシュ状の開口を有する板状のグリッドが知られている。このような板状のグリッドでは、メッシュ状の開口を放電生成物などが塞ぐことにより、帯電ムラが生じる場合がある。このような放電生成物は、グリッドに限らず、コロナ帯電器内の他の部材にも発生する。一般的に、SUSは他の金属に比べて、通常の大気環境において優れた耐食性を示す材質であるが、特に放電装置の部材として使用した場合には上記のような問題が発生することがある。
【0008】
更に、画像形成装置の装置本体内において、トナー、外添剤、紙粉などの飛散物(粉塵)が飛散することにより、この飛散物がコロナ帯電器内の部材に静電的に付着したり、物理的に付着したりすることがある。このような飛散物の付着によっても、上述のような帯電ムラによる問題などが生じることがある。
【0009】
上述のような放電生成物や飛散物などの付着物に対しては、コロナ帯電器内に清掃部材を配設して、これを清掃することが提案されている。特許文献1には、放電線に付着した付着物を清掃部材で清掃することが開示されている。又、特許文献2には、グリッドに付着した付着物を清掃部材で清掃することが開示されている。又、特許文献3には、シールドに付着した付着物を清掃部材で清掃することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−085814号公報
【特許文献2】特開2005−338797号公報
【特許文献3】特開2003−295585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、コロナ帯電器内の部材に付着した付着物が、清掃部材によって回収できずに、例えば処理対象としての被帯電面である感光体の表面に落下してしまうことがある。その結果、落下した付着物が現像装置に取り込まれることにより、当該付着物がトナーならば混色、異物ならば現像剤担持体と感光体との間のギャップにおける詰まりを引き起す場合がある。そのため、この付着物の落下は、画像不良の一因、ひいてはパーツ交換による画像形成装置の稼働率の低下とサービスに要する費用増加の一因となる場合がある。
【0012】
又、落下した付着物は、画像形成中にコロナ放電に曝露されていることにより、放電生成物が付着している。そのため、例えばこの付着物が感光体の表面に落下することにより、感光体上の潜像の形成に影響を与え、画像流れを引き起す一因となる場合がある。
【0013】
従って、本発明の目的は、放電生成物や飛散物などの付着物が処理対象の表面に落下することによる不具合を防止することのできる放電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は本発明に係る放電装置にて達成される。要約すれば、本発明は、下方に位置する処理対象に対して放電を行い該処理対象の表面を帯電又は除電する放電装置において、軸線を有する放電電極と、前記放電電極に対向する内面とその反対側の外面とを有し前記軸線と略平行に延在する側板を備えたシールドと、前記放電電極と前記処理対象の表面との間に配置されるグリッド電極と、前記側板と前記処理対象の表面との間に配置され、前記軸線と略直交する方向において前記側板の前記内面側から前記外面側まで連続する平面状の落下物受け部と、を有することを特徴とする放電装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、放電生成物や飛散物などの付着物が処理対象の表面に落下することによる不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の主要部の概略断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係る帯電器の概略斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係る帯電器が備えるグリッドの概略平面図である。
【図4】本発明の一実施例に係る帯電器が備える清掃部材を説明するための概略斜視図である。
【図5】本発明の一実施例に係る帯電器に適用し得る清掃部材の他の例を説明するための概略斜視図である。
【図6】本発明の一実施例に係る帯電器のシールドとグリッドとの配置関係を説明するたえの模式図である。
【図7】Δd1(=Wg−Ws)と規格化された付着物の落下量との関係を示すグラフ図である。
【図8】本発明の他の実施例に係る帯電器のシールドと遮蔽部材とを示す概略斜視図である。
【図9】本発明の他の実施例に係るシールドと遮蔽部材との配置関係を説明するための模式図である。
【図10】Δd2(=Wb−Ws)と規格化された付着物の落下量との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る放電装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0018】
実施例1
1.画像形成装置
先ず、本発明に係る放電装置を備える電子写真方式の画像形成装置の一実施例の全体構成及び動作について説明する。
【0019】
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略構成を示す。画像形成装置100は、矢印R1方向(反時計回り)に回転駆動される、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(感光体)、即ち、感光ドラム1を有する。感光ドラム1の周囲には、次の各手段が配置されている。先ず、帯電手段としての放電装置である帯電器(コロナ帯電器)2である。次に、露光手段(情報書き込み手段)としての露光装置(レーザービームスキャナ)3である。次に、現像手段としての現像装置4である。次に、転写手段としての転写装置5である。次に、クリーニング手段としてのクリーニング装置7である。
【0020】
画像形成時には、回転する感光ドラム1の表面は、帯電器2によって一定の電位に帯電させられる。その後、帯電した感光ドラム1の表面は露光装置3によって画像情報に応じて露光される。これにより、感光ドラム1上に静電潜像(静電像)が形成される。感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像装置4によって現像剤のトナーが付着させられて、トナー像(現像剤像)として現像される。感光ドラム1上に形成されたトナー像は、転写装置5において、1次転写部材としての1次転写ローラ5aにより、被転写体としての中間転写ベルト5b上に1次転写される。
【0021】
その後、中間転写ベルト5b上のトナー像は、2次転写部材としての2次転写ローラ(図示せず)により、記録用紙などの転写材に2次転写される。その後、転写材は定着手段としての加熱及び加圧式の定着器(図示せず)により加熱及び加圧され、その上にトナー像が定着される。
【0022】
一方、中間転写ベルト5bに転写されずに感光ドラム1の表面に残留したトナー(転写残トナー)は、クリーニング装置7によって感光ドラム1の表面から除去されて、回収される。クリーニング装置7は、感光ドラム1に当接して配置されたクリーニングブレード7a及びファーブラシ7bによって感光ドラム1の表面からトナーを掻き落とし、回収容器7cに回収する。又、感光ドラム1の周囲には、感光ドラム1の表面に残存している電位を除電するための除電手段として、第1の前露光手段である帯電前露光器8と、第2の前露光手段であるクリーニング前露光器9とが設けられている。
【0023】
2.感光ドラム
画像形成装置100は、像担持体として回転可能なドラム型の電子写真感光体(感光体)、即ち、感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、帯電器2による処理対象としての被帯電部材である。この感光ドラム1は、負帯電特性のOPC(有機光半導体)で形成された感光層を有する。感光ドラム1は、直径が84mmであり、中心支軸を中心に285mm/secのプロセススピード(周速度)で矢印R1方向に回転駆動される。
【0024】
3.帯電器(非接触帯電装置)
画像形成装置100は、重力方向において下方に位置する処理対象に対して放電を行い該処理対象の表面を帯電又は除電する放電装置として、帯電手段である帯電器(コロナ帯電器)2を有する。図2は、帯電器2の外観を示す。帯電器2は、感光ドラム1の長手方向(回転軸線方向)に沿って感光ドラム1に対向配置され、放電により感光ドラム1の表面を帯電させる。
【0025】
帯電器2は、電気的なシールド作用(遮断作用)をなす支持筐体であるシールド(シールドケース)12を有する。シールド12は、電気的に接地されている。シールド12は、感光ドラム1の長手方向に沿って互いに略平行に対向して延在する2個の側板12b、12bと、両側板12b、12bの上端間を連結する天板12cと、を有する。これにより、シールド12は、感光ドラム1に対向する一面が開放され、帯電器2の長手方向(感光ドラム1の回転軸線方向と平行)に見た断面が略コの字形状とされている。即ち、シールド12の感光ドラム1に対向する側には、帯電器2の長手方向の長さ、帯電器2の短手方向(感光ドラム1の回転軸線方向と略直交する方向)の幅を有する矩形形状の開口部12aが形成されている。尚、所望により、天板12cは設けられていなくてもよい。帯電器2の長手方向におけるシールド12の両端部には、上記側板12b、12b、天板12cなどを保持する保持部材であるブロック17、17が結合され、シールド12と一体化されている。シールド12の側板12b、12b、天板12cはアルミニウムやステンレス鋼(SUS)などの金属(本実施例ではSUS)で形成され、ブロック17、17は樹脂などの電気絶縁性の材料(本実施例では樹脂)で形成されている。又、帯電器2は、シールド12の内部空間に軸線を有する放電線(放電電極)である放電ワイヤ10を有する。放電ワイヤ10は、その軸線が帯電器2の長手方向(即ち、感光ドラム1の軸線方向)と略平行になるように、2個のブロック17間に張架されている。更に、帯電器2は、シールド12の感光ドラム1と対向する開口部12aに位置して、制御電極である板状のグリッド(グリッド電極)11を有する。放電ワイヤ10には第1の帯電電源(図示せず)が接続されており、感光ドラム1の帯電処理を行う際には直流電圧が印加される。第1の帯電電源が放電ワイヤ10に電圧を印加することにより、放電ワイヤ10でコロナ放電が発生する。又、グリッド11には第2の帯電電源(図示せず)が接続されており、感光ドラム1の帯電処理を行う際には直流電圧が印加される。これは、放電ワイヤ10から感光ドラム1に向かうイオンの量を安定化させるためのものであり、その結果、感光ドラム1を所望の電位に帯電することが可能となる。
【0026】
更に説明すると、放電ワイヤ10には、外部電源である第1の帯電電源が接続されている。この第1の帯電電源から放電ワイヤ10に所定の極性(本実施例では負極性)・値の直流電圧を印加し、コロナ放電を発生させて、感光ドラム1の表面を帯電させる。放電ワイヤ10の材料としては、金属、例えば、ステンレススチール、ニッケル、モリブデン、タングステンなどを好適に用いることができる。本実施例では、放電ワイヤ10の材料として、金属の中で非常に安定性の高いタングステンを使用した。放電ワイヤ10の材料としてタングステンを使用することで、加熱される苛酷な条件下でも安定したコロナ放電を行うことができる。又、放電ワイヤ10の材料としてタングステンを使用することで、帯電器2を長期間にわたり安定して使用することが可能となる。放電ワイヤ10は、支持筐体12と一体化されたブロック17、17によって一定の張力で保持される。電気絶縁性の材料で形成されたブロック17、17によって、放電ワイヤ10とシールド12との間の電気的な絶縁が保たれている。放電ワイヤ10の直径は、40μm〜100μmであることが好ましい。放電ワイヤ10の直径が小さすぎると、放電によるイオンの衝突で切断してしまうことがある。逆に、放電ワイヤ10の直径が大きすぎると、安定したコロナ放電を得るために必要な、放電ワイヤ10に印加する電圧が高くなってしまう。放電ワイヤ10に印加する電圧が高いと、オゾンが発生しやすくなり、又電源のコストが上昇しやすい。本実施例では、放電ワイヤ10の直径は60μmとした。
【0027】
又、グリッド11には、外部電源である第2の帯電電源として定電圧電源が接続されている。この第2の帯電電源からグリッド11に印加するバイアスの制御により、帯電ワイヤ10におけるコロナ放電により発生し感光ドラム1に付与される電荷量を調整して、感光ドラム1の表面の帯電電位を制御する。本実施例では、グリッド11は、感光ドラム1に面する側と、放電ワイヤ10に面する側とを貫通する複数の孔が形成された多孔性(多孔質形状)の板状のグリッドである。この板状のグリッド11は、ステンレス鋼の薄板にエッチング処理により多数の開口部を形成することで作製した。
【0028】
より詳細には、本実施例では、グリッド11は、図3に示すように、厚さ0.1mm〜0.5mm程度の平坦な板状のグリッド本体(板体)11aを貫通するように、メッシュ状の複数の貫通孔11bが形成されて成る。グリッド本体11aは、帯電器2の長手方向の長さLg、帯電器2の短手方向の幅Wgを有する。又、貫通孔11bは、グリッド本体11aの略中央部に、帯電器2の長手方向の長さlg(<Lg)、帯電器2の短手方向の幅wg(<Wg)の領域(以下「貫通孔領域」という。)11c内に形成されている。つまり、グリッド11は、貫通孔領域11cと、貫通孔領域11cの周囲を取り囲む縁領域とを有する。この縁領域は、帯電器2の短手方向における貫通孔領域11cの両端に隣接する縁領域11d、11dと、帯電器2の長手方向における貫通孔領域11cの両端に隣接する縁領域11e、11eとで構成される。このグリッド11は、シールド12の開口部12aに位置するようにしてシールド12に対して取り付けられ、感光ドラム1の外周面に近接して配置される。より具体的には、グリッド11は、貫通孔領域11cがシールド12の開口部12aの内部に収まるように、ブロック17、17に固定される。尚、本実施例では、板状のグリッド11を用いたが、これに限定されるものではなく、例えばワイヤ形状のグリッドを用いてもよい。
【0029】
本実施例では、帯電器2は、放電ワイヤ10、グリッド11及びシールド12に付着した付着物、即ち、コロナ放電により発生した放電生成物、或いはトナー、外添剤又は紙粉などの飛散物を清掃する清掃部材を有する。この清掃部材については後述する。
【0030】
4.露光装置
画像形成装置100は、帯電処理された感光ドラム1の表面に静電潜像を形成する露光手段(情報書き込み手段)として露光装置(レーザービームスキャナ)3を有する。本実施例では、露光装置3としては、半導体レーザを用いたレーザビームスキャナを用いたが、これに限定されるものではなく、例えばLEDによる露光方式を採用してもよい。
【0031】
5.現像装置
画像形成装置100は、現像手段として現像装置4を有する。現像装置4は、感光ドラム1上の静電潜像に現像剤のトナーを供給し、トナー像として可視化する。本実施例では、現像装置4として、2成分磁気ブラシ現像方式のものを用いた。又、本実施例では、現像装置4は、一様に帯電処理された感光ドラム1における、露光により電荷が減衰した露光部に、感光ドラム1の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性に帯電したトナーを付着させる反転現像方式により、静電潜像を現像する。
【0032】
更に説明すると、現像装置4は、現像容器4aと、現像容器4aに回転可能に取り付けられた現像剤担持体としての現像スリーブ4bと、を有する。現像容器4a内には、現像剤として主に非磁性トナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)とが混合された2成分現像剤が収容されている。トナーには、斯界にて一般に行われているように、トナーの流動性や帯電性の調整などのために、無機微粉体などとされる外添剤が添加されていてよい。本実施例では、キャリアの体積抵抗率は約5×108Ω・cm、平均粒径は35μmであった。トナーは、キャリアとの摺擦により負極性に摩擦帯電される。現像スリーブ4bは、感光ドラム1との最近接距離(S−Dギャップ)を約250μmに保持した状態で、感光ドラム1に対向して配置されている。感光ドラム1と現像スリーブ4bとの対向部が現像部となる。現像スリーブ4bは、現像部における感光ドラム1と現像スリーブ4bの表面の移動方向が互いに逆方向になるように回転駆動される。つまり、現像スリーブ4bは、感光ドラム1の矢印R1方向の回転に対して、順方向に回転駆動される。現像スリーブ4bの内側には、磁界発生手段としてのマグネットローラが設けられており、その磁力により、現像スリーブ4bの回転に伴って2成分現像剤が現像部に搬送される。現像部において、2成分現像剤は、現像スリーブ4bの表面から穂立ちした磁気ブラシの層を形成する。磁気ブラシの層は、現像剤コーティングブレード(図示せず)により所定の厚さの薄層として整えられる。又、現像スリーブ4bには、現像電源から所定の現像バイアスが印加される。本実施例では、現像スリーブ4bに印加される現像バイアスは、直流電流(Vdc)と交流電圧(Vac)とを重畳した振動電圧であり、直流電圧は−650V、交流電圧はVpp1800Vとした。この現像バイアスによって感光ドラム1と現像スリーブ4bとの間に形成される電界によって、感光ドラム1上の静電潜像に対応して、2成分現像剤中のトナーが感光ドラム1上に選択的に付着させられる。これにより、静電潜像がトナー像として現像される。本実施例では、感光ドラム1上に形成されたトナー像のトナーの帯電量は、約−30μC/gであった。現像部を通過した現像スリーブ4b上の2成分現像剤は、現像スリーブ4bの回転に伴い現像容器4a内の現像剤溜り部に戻される。
【0033】
6.転写装置
画像形成装置100は、中間転写ユニットとされる転写手段5を有する。転写装置5は、無端ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト5bを有する。1次転写部材としての1次転写ローラ5aは、中間転写ベルト5bの内周面側に配置されており、中間転写ベルト5bを介して、感光ドラム1の表面に対し所定の押圧力で圧接されている。感光ドラム1と中間転写ベルト5bとのニップ部(接触領域)が、感光ドラム1から中間転写ベルト5bへのトナー像の転写が行われる転写部Tとなる。中間転写ベルト5bは、感光ドラム1と1次転写ローラ5aとの間に挟持されて搬送される。1次転写ローラ5aには、1次転写電源から、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である1次転写バイアスが印加される。本実施例では、特に、+2.0kVの1次転写バイアスが印加される。これにより、感光ドラム1上のトナー像は、中間転写ベルト5bの表面に静電的に転写される。
【0034】
尚、本明細書では詳しい説明は省略するが、当業者には周知のように、中間転写ベルト5b上に転写されたトナー像は、次に2次転写部(図示せず)において、別途搬送されてきた転写材に転写される。
【0035】
7.クリーニング装置
画像形成装置100は、1次転写工程後の感光ドラム1の表面をクリーニングするクリーニング手段として、クリーニング装置7を有する。クリーニング装置7は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード7a及びファーブラシ7bと、クリーニングブレード7a及びファーブラシ7bにより感光ドラム1から除去されたトナーを収容する回収トナー容器7cとを有する。本実施例では、クリーニングブレード7aは、弾性体材料であるウレタンゴムで形成された板状部材であり、感光ドラム1の長手方向に沿って延在し、感光ドラム1の表面に所定の押圧力で圧接されている。又、本実施例では、ファーブラシ7bは、感光ドラム1の長手方向に沿って延びる回転軸に複数本植設されたブラシ部を有し、該ブラシ部が感光ドラム1の表面に接触するようにして回転駆動される。1次転写工程後に感光ドラム1上に残留したトナーは、先ず、ファーブラシ7bにより感光ドラム1の表面から除去されて回収トナー容器7cに回収される。そして、ファーブラシ7bで回収されなかったトナーが、クリーニングブレード7aにより感光ドラム1の表面から除去されて、回収トナー容器7cに回収される。
【0036】
8.除電手段
画像形成装置100は、除電手段として、第1の前露光手段である帯電前露光器(前露光ランプ)8と、第2の前露光手段であるクリーニング前露光器(クリーニング前露光ランプ)9とを有する。これら2つの前露光手段により、1次転写工程後の感光ドラム1の表面の電位をリセットすることにより、ゴーストの発生を防止する。本実施例では、帯電前露光器8及びクリーニング前露光器9として、中心波長660nmのスタンレー社製のLEDチップ(発光部)をアレイ状に加工したものを使用した。帯電前露光器8及びクリーニング前露光器9は、感光ドラム1の表面電位の少なくとも一部を除電(リセット)する除電手段(表面電位リセット手段)を構成する。帯電前露光器8及びクリーニング前露光器9は、それぞれの駆動制御部としての帯電前露光器駆動回路、クリーニング前露光器駆動回路に接続されている。帯電前露光器駆動回路及びクリーニング前露光器駆動回路はそれぞれ、制御手段としての情報集積回路によって、光照射のON/OFFタイミング、出力値(光量)などの条件が制御される。
【0037】
9.定着器
画像形成装置100は、2次転写部(図示せず)にて転写材に転写されたトナー像を転写材に定着させる定着手段として加熱及び加圧式の定着器(図示せず)を有する。本実施例では、定着器は熱ローラ式のものであり、加熱ローラとこれに圧接する加圧ローラとで形成されるニップ部(接触領域)において転写材を加熱及び加圧しながら搬送することで、トナー像を転写材に定着させる。トナー像の定着処理を受けた転写材は、画像形成物(プリント、コピー)として画像形成装置100から出力される。
【0038】
10.放電ワイヤ用清掃部材
図4に示すように、帯電器2は、放電ワイヤ10に付着した付着物を清掃するための放電ワイヤ用清掃部材14を有する。放電ワイヤ用清掃部材14は、支持体13に保持されている。本実施例では、放電ワイヤ用清掃部材14は、支持体13に保持された状態で互いに圧接すると共にその間に放電ワイヤ10を挟持する、2個の矩形形状のパッドで構成されている。放電ワイヤ用清掃部材14は放電ワイヤ10に圧接した状態で移動して放電ワイヤ10を清掃する。但し、放電ワイヤ用清掃部材14の形状はこれに限定されるものではない。本実施例では、放電ワイヤ用清掃部材14の各パッドには、スポンジを基材として、放電ワイヤ10に接触するその表層にゴム層を設けて、その表層に研磨粒子であるアルミナを塗布し、樹脂結着させたものを用いた。
【0039】
放電ワイヤ用清掃部材14は、支持体13が移動機構(後述)によって帯電器2の長手方向に移動させられることによって、放電ワイヤ10を摺擦して、それに付着していた付着物を拭き取る。放電ワイヤ用清掃部材14の移動による放電ワイヤ10の清掃動作は、画像形成装置100の電源ON時又は一定枚数の画像形成を行う毎に行われる。
【0040】
11.シールド用清掃部材
図4に示すように、帯電器2は、シールド12、より詳細には、その側板12b、12bの放電ワイヤ10に対向する内面に付着した付着物を清掃するためのシールド用清掃部材15を有する。シールド用清掃部材15は、支持体13に保持されている。本実施例では、シールド用清掃部材15は、支持体13とシールド12とで挟持されて圧縮された状態で支持体13に保持された、矩形形状のパッドで構成されている。シールド用清掃部材15はシールド12に圧接した状態で移動してシールド12を清掃する。本実施例では、シールド用清掃部材15には、アクリル系ブラシを基布に織り込んだ部材を使用した。但し、シールド用清掃部材15を構成する材料はこれに限定されるものではなく、ナイロン、PVC、PPSなどを使用してもよい。又、シールド用清掃部材15は、植毛系の部材に限らず、フェルト、スポンジのような弾性部材や、アルミナ、炭化珪素などの研磨剤を塗布したシートなどを利用してもよい。シールド12への接触時の力学的な抵抗が、シールド12の清掃に不都合を生じなければ、任意の清掃部材を用いることができる。
【0041】
シールド用清掃部材15は、支持体13が移動機構(後述)によって帯電器2の長手方向に移動させられることによって、シールド12の側板12b、12bの放電ワイヤ10に対向する内面を摺擦して、それに付着していた付着物を拭き取る。シールド用清掃部材15の移動によるシールド12の清掃動作は、画像形成装置100の電源ON時又は一定枚数の画像形成を行う毎に行われる。
【0042】
12.グリッド用清掃部材
図4に示すように、帯電器2は、グリッド11、より詳細には、その放電ワイヤ10に対向する側の表面に付着した付着物を清掃するためのグリッド用清掃部材16を有する。グリッド用清掃部材16は、支持体13に保持されている。本実施例では、グリッド用清掃部材16は、支持体13とグリッド11とで挟持されて圧縮された状態で支持体13に保持された、矩形形状のパッドで構成されている。グリッド用清掃部材16はグリッド11に圧接した状態で移動してグリッド11を清掃する。本実施例では、グリッド用清掃部材16には、アクリル系ブラシを基布に織り込んだ部材を使用した。但し、グリッド用清掃部材16を構成する材料はこれに限定されるものではなく、ナイロン、PVC、PPSなどを使用してもよい。又、グリッド用清掃部材16は、植毛系の部材に限らず、フェルト、スポンジのような弾性部材や、アルミナ、炭化珪素などの研磨剤を塗布したシートなどを利用してもよい。グリッド11への接触時の力学的な抵抗が、グリッド11の清掃に不都合を生じなければ、任意の清掃部材を用いることができる。
【0043】
グリッド用清掃部材16は、支持体13が移動機構(後述)によって帯電器2の長手方向に移動させられることによって、グリッド11の放電ワイヤ10に対向する面を摺擦して、それに付着していた付着物を拭き取る。グリッド用清掃部材16の移動によるグリッド11の清掃動作は、画像形成装置100の電源ON時又は一定枚数の画像形成を行う毎に行われる。
【0044】
尚、本実施例では、シールド用清掃部材15に加えて、グリッド用清掃部材16を有する。これにより、帯電器2内に付着した付着物をより良好に清掃することができる。しかし、所望により、グリッド用清掃部材16は省略してもよい。
【0045】
ここで、本実施例では、帯電器2は、移動機構として、駆動軸としてのスクリュー軸20と、スクリュー軸20を回転駆動する駆動源としてのモータ(図示せず)を有する。スクリュー軸20は、らせん状の溝が長手方向にわたって周面に形成されており、このらせん状の溝が、支持体13に設けられた駆動係合部13aに螺合している。従って、モータによりスクリュー軸20が正転することにより支持体13は一方向に移動し、又モータによりスクリュー軸20が逆転することにより支持体13は逆方向に移動する。このように、支持体13が往復移動することによって、支持体13に保持された放電ワイヤ用清掃部材14、シールド用清掃部材15及びグリッド用清掃部材16による清掃動作を実行することができる。本実施例では、放電ワイヤ用清掃部材14、シールド用清掃部材15及びグリッド用清掃部材16は、同じ支持体13に保持されており、同じ移動機構により、同期して駆動される。
【0046】
又、例えば、図5に示すように、帯電器2の清掃動作時に、シールド用清掃部材15の一の移動方向への移動を開始した後に、グリッド用清掃部材16の同方向への移動を開始することができるようにしてもよい。これにより、シールド用清掃部材15により回収しきれずに落下してしまった付着物を、グリッド用清掃部材16により再度清掃することができる。従って、より効果的に清掃機能を発揮することができる。例えば、この場合に、シールド用清掃部材15とグリッド用清掃部材16とを別個の移動機構により移動させることができる。シールド用清掃部材15による清掃時に落下した付着物をグリッド用清掃部材16により清掃するためには、清掃時に、清掃部材の進行方向において、グリッド用清掃部材16がシールド用清掃部材15を追い越さないようにすればよい。図5に示す例では、放電ワイヤ用清掃部材14とグリッド用清掃部材16が同じ支持体13に支持されており、各側板12b、12bを清掃するシールド用清掃部材15、15は、それぞれ個別の支持体13に支持されている。
【0047】
13.落下物受け部
図6は、帯電器2の短手方向における帯電器2とグリッド11との配置関係を模式的に示す。
【0048】
本実施例では、帯電器2は、シールド12の側板12bと感光ドラム1の表面との間に配置され、帯電器2の短手方向において側板12bの放電ワイヤ10に対向する内面12b1側からその反対側の外面12b2側まで連続する平面状の落下物受け部30を有する。より詳細には、本実施例では、落下物受け部30は、帯電器2の短手方向において、シールド12の側板12bよりも内側(シールド12の内部空間側)に延在する平坦な板状の内側延長部31を有する。又、本実施例では、落下物受け部30は、帯電器2の短手方向において、シールド12の側板12bよりも外側に延在する平坦な板状の外側延長部32を有する。これら内側延長部31と外側延長部32は、側板12bの厚さ相当の接続部分33により同一平面上で連続している。尚、本実施例では、落下物受け部30は、2個の側板12b、12bのそれぞれと感光ドラム1の表面との間に設けられている。
【0049】
特に、本実施例では、内側延長部31、外側延長部32及び接続部分33から成る落下物受け部30は、帯電器2の短手方向においてグリッド11の貫通孔領域11cに隣接する平坦な板状の縁領域11dで形成されている。
【0050】
本実施例では、帯電制御に対する影響をも考慮して、内側延長部31は、帯電器2の短手方向において、シールド12の側板12bよりも内側に1±0.5mmの長さで延在する。又、本実施例では、外側延長部32は、帯電器2の短手方向において、シールド12の側板12bよりも外側に2±0.5mmの長さで延在する。尚、シールド12の側板12のグリッド11側の端部とグリッド11との間の距離は、沿面放電による高圧リーク防止の理由から、1.0mm〜3.0mmとされる。
【0051】
内側延長部31を設けることにより、シールド用清掃部材15により回収されなかった付着物が、シールド用清掃部材15の直下付近、即ち、シールド12の直下付近の内側延長部31に堆積する。そして、本実施例では、この内側延長部31に堆積した付着物は、グリッド用清掃部材16によって清掃される。従って、シールド12から付着物が感光ドラム1の表面に落下することを防止することができる。
【0052】
又、外側延長部32を設けることにより、シールド12やグリッド11の清掃時における付着物の横走りにより、貫通孔領域11c、内側延長部31からの付着物が帯電器2の短手方向に移動して、グリッド11から漏れることを防ぐことができる。
【0053】
又、コロナ帯電器2においては、コロナ放電により発生するオゾンなどは、エアフローを利用し、オゾンフィルターを通して外気に排出することで処理している。本実施例によれば、落下物受け部30は、板状のグリッド11と一体に形成されているので、画像形成中におけるエアフロー制御において渦流の発生が少なく、効率的な給排気制御が維持できる。従って、不均一な流速分布の発生による帯電斑の発生は起きない。
【0054】
又、本実施例によれば、落下物受け部30は、グリッド11の一部として形成されているので、別個の部材を設ける必要がなく、簡易な構成とすることができる。
【0055】
尚、上述のように、本実施例では、落下物受け部30には、平坦な板状の内側延長部31が設けられている。このような構成によれば、シールド12から落下した付着物を内側延長部31によって、より良好に受けることができる。しかし、本実施例では、落下物受け部30がグリッド11の部分として形成されている。この場合には、貫通孔領域11c内における貫通孔12b以外の、感光ドラム1と放電ワイヤ10との間を遮蔽するグリッド本体11aの部分(ワイヤ、グリルなど)によっても、シールド12から落下した付着物を受けることができる。この部分に堆積した付着物も、シールド12やグリッド11の清掃時の横走りにより帯電器2の短手方向に移動するが、この部分に連続して外側延長部32が設けられているのでその落下が防止される。この場合、貫通孔領域11c内における貫通孔12b以外のグリッド本体11aの部分が、平面状の落下物受け部30の側板12bの外面側の部分と連続している、平面状の落下物受け部30の側板12bの内面側の部分を構成する。
【0056】
このように、本実施例では、帯電器2の短手方向におけるシールド12の最大幅(以下「シールド幅」ともいう。)Wsと、帯電器2の短手方向におけるグリッド11の最大幅(以下「グリッド幅」ともいう。)Wgとは、Ws<Wgの関係を満たす。本実施例では、シールド幅Wsは、シールド12の2個の側板12bの外面12b2間の距離である。又、本実施例では、帯電器2の短手方向におけるグリッド11の貫通孔領域11cの幅wgは、同方向におけるシールド12の開口部12aの幅よりも小さい。
【0057】
ここで、シールド幅Wsとグリッド幅Wgとの関係について更に説明する。図7は、シールド幅Wsとグリッド幅Wgとの差分Δd1=Wg−Wsと、清掃時における付着物の落下量を規格化した値との関係を示す。図7より、Δd1>0の場合に感光ドラム1に落下する付着物の量が明確に減少していることが分かる。好ましくは、Δd1は1mm以上、より好ましくは2mm以上である。尚、帯電器2が必要以上に大きくなることは好ましくないことから、通常、Δd1は5mm以下、好ましくは4mm以下である。又、シールド12の2個の側板12b、12bの外側に外側延長部32が同じ長さで延在するようにすることが好ましく、これによりいずれの側板12b、12bの下方においても良好に落下物を受けることができる。
【0058】
又、Δd1の条件を振って画像形成時における現像不具合及び画像流れの発生有無を確認した。ここでは、現像不具合とは、画像上において現像されるべき箇所にトナーが現像されず、出力画像において白く抜けたスジ状の画像を指す。又、ここでは、画像流れとは、高温高湿(30℃、80%)環境下において10000枚通紙後に3晩放置した後の、画像上における潜像ボケによる画像不良を指す。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から、Ws<Wgとすることにより、画像品位を良好に維持できることが分かる。
【0061】
以上、本実施例によれば、放電生成物や飛散物などの付着物が被帯電面に落下することによる不具合を防止することができる。
【0062】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0063】
図8に示すように、本実施例では、グリッド11と略同一平面上に遮蔽部材18が配設されている。より詳細には、本実施例では、遮蔽部材18は、厚さ0.1mm〜0.5mm程度の平坦な板状の遮蔽部材本体(板体)18aを貫通するように、グリッド11の貫通孔領域11cに対応する部分に、貫通長孔18bが形成されている。遮蔽部材18は、帯電器2の長手方向(感光ドラム1の回転軸線方向と平行)の長さLb、帯電器2の短手方向(感光ドラム1の回転軸線方向と略直交する方向)の幅Wbを有する。又、貫通長孔18bは、遮蔽部材本体18aの略中央部に、帯電器2の長手方向の長さlb(<Lb)、帯電器2の短手方向の幅wb(<Wb)で形成されている。つまり、遮蔽部材18は、貫通長孔18bと、貫通長孔18bの周囲を取り囲む縁領域とを有する。この縁領域は、帯電器2の短手方向における貫通長孔18bの両端に隣接する縁領域18c、18cと、帯電器2の長手方向における貫通長孔18bの両端に隣接する18d、18dとで構成される。この遮蔽部材18は、シールド12とグリッド11との間のグリッド11と略同一平面上に、貫通長孔18bがシールド12の開口部12aの内部に収まるように、ブロック17、17に固定されている。
【0064】
図9は、帯電器2の短手方向における帯電器2と遮蔽部材18との配置関係を模式的に示す。
【0065】
本実施例では、実施例1と同様、帯電器2は、シールド12の側板12bと感光ドラム1の表面との間に配置され、帯電器2の短手方向において側板12bの放電ワイヤ10に対向する内面側からその反対側の外面側まで連続する平面状の落下物受け部30を有する。より詳細には、本実施例では、落下物受け部30は、帯電器2の短手方向において、シールド12の側板12bよりも内側(シールド12の内部空間側)に延在する平坦な板状の内側延長部31を有する。又、本実施例では、落下物受け部30は、帯電器2の短手方向において、シールド12の側板12bよりも外側に延在する平坦な板状の外側延長部32を有する。これら内側延長部31と外側延長部32は、側板12bの厚さ相当の接続部分33により同一平面上で連続している。尚、本実施例では、落下物受け部30は、2個の側板12b、12bのそれぞれと感光ドラム1の表面との間に設けられている。
【0066】
特に、本実施例では、内側延長部31、外側延長部32及び接続部分33から成る落下物受け部30は、帯電器2の短手方向において遮蔽部材18の貫通長孔18bに隣接する平坦な板状の縁領域18cで形成されている。遮蔽部材18の内側延長部31は、グリッド用清掃部材16が接する部分となるため、該グリッド用清掃部材16により清掃が可能となっている。
【0067】
本実施例では、帯電制御に対する影響をも考慮して、内側延長部31は、帯電器2の短手方向において、シールド12の側板12bよりも内側に3±0.5mmの長さで延在する。又、本実施例では、外側延長部32は、帯電器2の短手方向において、シールド12の側板12bよりも外側に2±0.5mmの長さで延在する。
【0068】
内側延長部31を設けることにより、シールド用清掃部材15により回収されなかった付着物が、シールド用清掃部材15の直下付近、即ち、シールド12の直下付近の内側延長部31に堆積する。そして、本実施例では、この内側延長部31に堆積した付着物は、グリッド用清掃部材16によって清掃される。従って、シールド12から付着物が感光ドラム1の表面に落下することを防止することができる。
【0069】
又、外側延長部32を設けることにより、シールド12やグリッド11の清掃時における付着物の横走りにより、内側延長部31からの付着物が帯電器2の短手方向に移動して、グリッド11から漏れることを防ぐことができる。
【0070】
又、遮蔽部材18をグリッド11と略同一平面上に配設することにより、画像形成中におけるエアフロー制御において、遮蔽部材18とグリッド11との間において渦流による乱流が発生することを防止し、効率的な給排気制御が維持できる。これにより、飛散した付着物がグリッド11に再度付着することを防止することができる。
【0071】
本実施例では、遮蔽部材18の材料として、摩擦帯電により付着物を付着させやすい、薄板のステンレス鋼を使用した。遮蔽部材17の材料としては、ガラス、雲母、鋼などの摩擦により正極性に帯電する物質、テフロン(登録商標)、PVC、PPS、PMMAなどの摩擦により負極性に帯電する物質を使用することができる。付着物に対して異極性に帯電する物質が好ましい。
【0072】
このように、本実施例では、帯電器2の短手方向におけるシールド12の最大幅(シールド幅)Wsと、帯電器2の短手方向における遮蔽部材18の最大幅(以下「遮蔽部材幅」ともいう。)Wbとは、Ws<Wbの関係を満たす。又、本実施例では、帯電器2の短手方向における遮蔽部材18の貫通長孔18bの幅wbは、同方向におけるシールド12の開口部12bの幅よりも小さい。
【0073】
ここで、シールド幅Wsと遮蔽部材幅Wbとの関係について更に説明する。図10は、シールド幅Wsと遮蔽部材幅Wbとの差分Δd2=Wb−Wsと、清掃時における付着物の落下量を規格化した値との関係を示す。図10より、Δd2>0の場合に感光ドラム1に落下する付着物の量が明確に減少していることが分かる。好ましくは、Δd2は1mm以上、より好ましくは2mm以上である。尚、帯電器2が必要以上に大きくなることは好ましくないことから、通常、Δd2は5mm以下、好ましくは4mm以下である。又、シールド12の2個の側板12b、12bの外側に外側延長部32が同じ長さで延在するようにすることが好ましく、これによりいずれの側板12b、12bの下方においても良好に落下物を受けることができる。
【0074】
又、Δd2の条件を振って画像形成時における現像不具合及び画像流れの発生有無を確認した。ここでは、現像不具合とは、画像上において現像されるべき箇所にトナーが現像されず、出力画像において白く抜けたスジ状の画像を指す。又、ここでは、画像流れとは、高温高湿(30℃、80%)環境下において10000枚通紙後に3晩放置した後の、画像上における潜像ボケによる画像不良を指す。結果を表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
表2から、Ws<Wbとすることにより、画像品位を良好に維持できることが分かる。
【0077】
以上、本実施例のように、グリッド11と略同一平面上の所定位置に遮蔽部材18を設けることによっても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0078】
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0079】
例えば、上記実施例では、本発明を、放電装置である感光体を帯電処理する帯電器に適用した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。電子写真方式の画像形成装置では、感光体を帯電処理するための帯電器以外にも、処理対象を帯電又は除電処理する放電装置が用いられている。例えば、感光体上の帯電したトナー像(トナー)の電荷極性を強めるための、転写前帯電手段としてのコロナ放電器がある。又、感光体上のトナー像を転写材に転写させるための転写手段としてのコロナ放電器がある。又、トナー像が転写された転写材を除電して感光体の表面から分離させるための分離手段としてのコロナ放電器がある。又、転写工程後の感光体の表面を除電するための除電手段としてのコロナ放電器がある。これらの他の放電装置においても、付着物が処理対象の表面に落下する可能性がある配置関係にある場合には、本発明を同様に適用することにより、放電生成物や飛散物などの付着物が処理対象の表面に落下することによる不具合を防止することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 感光ドラム(像担持体)
2 帯電器(放電装置)
10 放電ワイヤ(放電電極)
11 グリッド(グリッド電極)
12 シールド
14 ワイヤ用清掃部材
15 シールド用清掃部材
16 グリッド用清掃部材
17 ブロック
18 遮蔽部材
30 落下物受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に位置する処理対象に対して放電を行い該処理対象の表面を帯電又は除電する放電装置において、
軸線を有する放電電極と、
前記放電電極に対向する内面とその反対側の外面とを有し前記軸線と略平行に延在する側板を備えたシールドと、
前記放電電極と前記処理対象の表面との間に配置されるグリッド電極と、
前記側板と前記処理対象の表面との間に配置され、前記軸線と略直交する方向において前記側板の前記内面側から前記外面側まで連続する平面状の落下物受け部と、
を有することを特徴とする放電装置。
【請求項2】
前記シールドは、前記放電電極を挟んで対向するように2個の前記側板を有し、前記落下物受け部は、2個の前記側板のそれぞれと前記処理対象の表面との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の放電装置。
【請求項3】
前記グリッド電極は、平坦な板状のグリッド本体と、該グリッド本体の前記放電電極と対向する領域に形成された貫通孔と、を有しており、前記落下物受け部は、前記グリッドの前記貫通孔が形成された領域の周囲の前記グリッド本体で構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の放電装置。
【請求項4】
移動しながら前記側板の前記内面に圧接して前記内面を清掃するシールド用清掃部材を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の放電装置。
【請求項5】
移動しながら前記グリッド電極に圧接して該グリッド電極を清掃するグリッド用清掃部材を有することを特徴とする請求項4に記載の放電装置。
【請求項6】
当該放電装置の清掃動作時に、前記シールド用清掃部材の一の方向への移動を開始した後に、前記グリッド用清掃部材の同方向への移動を開始することを特徴とする請求項5に記載の放電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−78668(P2012−78668A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225184(P2010−225184)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】