説明

敗血症性ショックの予防のための医薬

【課題】敗血症性ショックの予防に有効な医薬を提供する。
【解決手段】 敗血症性ショックの予防のための医薬であって、ニンニク加工物、例えば乾燥形態のニンニク粉末を有効成分として含む医薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敗血症性ショックの予防のための医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌が血流中に侵入する状態は菌血症と呼ばれ、感染した口腔組織の外科的処置、尿道や心臓カテーテルの使用、膿瘍の切開や排膿などにより一過性に生じることが多いが、一度に血流中に侵入する細菌の数は限られており、免疫システムにより細菌の大半は除去されてしまうので通常は無症状のままである。しかしながら、血流中に侵入した細菌数が多い場合には感染症が起こり、血流に乗って感染症が他の臓器や全身に拡大して全身的な炎症症状を呈する状態(敗血症)が生じる。菌血症が循環に変化をもたらし組織灌流が危険なレベルに低下すると敗血症性ショックが起こる。敗血症性ショックは一般的には低血圧を伴う急性循環不全及び多臓器不全によって特徴づけられ、輸液療法に抵抗性の敗血症である。敗血症ショックはグラム陰性菌、ブドウ球菌、又は髄膜炎菌による感染で生じることが多く、最初は低血圧でも皮膚が暖かく、尿量が減少し、覚醒状態が低下して錯乱状態が増加し、肺、腎臓、及び肝臓を含む急性多臓器不全が生じる(メルクマニュアル第17版、第13節「感染症」)。敗血症性ショック患者の全体の死亡率は25〜90%であり、敗血症ショックを引き起こした患者は非常に危険な状態に陥ることから、菌血症や敗血症の治療の際には敗血症ショックの予防のための治療を合わせて行うことが極めて重要である。
【0003】
敗血症性ショックの病理発生は完全には解明されていないが、感染菌によって作り出されたリポ多糖類(LPS)に代表される細菌毒素が複雑な免疫反応の引き金を引くことによると考えられている。アポリポタンパク質A1(apoA1)は、敗血症性ショックの主たる原因のひとつと考えられているLPSに結合し、生体におけるLPSに対する生物学的反応を軽減させる(J. Endotoxin Res., 11(2), pp.97-103, 2005)。ApoA1類似ペプチドを用いた検討により、本作用は、LPSの血漿輸送分子であるリポポリサッカライド結合蛋白へのLPSの結合を阻害することに起因することが明らかにされている(Circ. Res., 97(3), pp.236-43, 2005)。ApoA1は、血中では主として低比重リポ蛋白質(HDL)の構成蛋白質であるが、先の実験から、阻害作用の本体は、HDL分子中のコレステロールを含む脂質部分ではなくapoA1そのものであることが示されている。従って、肝臓におけるapoA1遺伝子の発現を増加させることにより、敗血症性ショックの予防が可能になると考えられる。
【0004】
一方、ニンニクより抽出された乾燥粉末には、強壮、健胃、整腸、及び疲労回復などの薬効が認められている。また、ニンニクに含まれるアリシン、アホエン、及び二硫化ニアリル(DADS)等の成分は、Bcl-2発現抑制及びBax発現誘導作用、caspase-3活性上昇によるアポトーシス亢進作用(Exp. Mol. Med. 32(3), pp.127-34, 2000; Leukemia, 16(1), pp.74-83, 2002)、ferritin及びTransferrin receptor発現誘導による生体内の鉄の恒常性への寄与(J. Nutr., 132(12), pp.3638-41, 2002)、及びMicrosomal triglyceride transfer protein遺伝子発現誘導による脂質低下作用(J. Nutr., 132(6), pp.1165-8, 2001)を有することが報告されている。しかしながら、ニンニク抽出物などのニンニク加工物が敗血症性ショックの予防に有効性を示すことに関して従来報告はなく、apoA1遺伝子の発現に対するニンニク加工物の作用についても従来全く報告がない。
【非特許文献1】Exp. Mol. Med. 32(3), pp.127-34, 2000
【非特許文献2】Leukemia, 16(1), pp.74-83, 2002
【非特許文献3】J. Nutr., 132(12), pp.3638-41, 2002
【非特許文献4】J. Nutr., 132(6), pp.1165-8, 2001
【非特許文献5】J. Endotoxin Res, 11(2), pp.97-103, 2005
【非特許文献6】Circ. Res., 97(3), pp.236-43, 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、敗血症性ショックの予防のための医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、ニンニク抽出物などのニンニク加工物が肝臓におけるapoA1遺伝子の発現を増強する作用を有しており、敗血症性ショックの予防に有用であることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成された。
【0007】
すなわち、本発明により、敗血症性ショックの予防のための医薬であって、ニンニク加工物を有効成分として含む医薬が提供される。
この発明の好ましい態様によれば、ニンニク加工物がニンニク抽出物である上記の医薬;ニンニク加工物が乾燥形態のニンニク粉末である上記の医薬が提供される。
【0008】
別の観点からは、上記の医薬の製造のためのニンニク加工物の使用;及び、敗血症性ショックの予防方法であって、ニンニク加工物の有効量をヒトを含む哺乳類動物、好ましくは菌血症又は敗血症を引き起こしたヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が提供される。
さらに、ニンニク加工物を有効成分として含むapoA1遺伝子発現増強剤、ヒトを含む哺乳類動物の生体内においてapoA1遺伝子の発現を増強する方法であって、ニンニク加工物の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が本発明により提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の医薬はapoA1遺伝子の発現を増強する作用を有しており、敗血症性ショックの予防に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の医薬の有効成分として用いられるニンニク加工物の種類は特に限定されず、ユリ科ネギ属にんにく(Allium sativuml.)の鱗茎を加工して得られるものであればいかなるものを用いてもよい。本明細書において、「加工」の用語は生のニンニクに加熱、乾燥、粉砕、又は抽出などの何らかの加工を施すことを意味しているが、加工の種類は特に限定されず、いかなる意味においてもこの用語を限定的に解釈してはならない。
【0011】
加工には、例えば、生ニンニクを乾燥する処理若しくは乾燥後に粉末化する処理、生ニンニクを水蒸気蒸留する処理、生ニンニクを油、水、熱水、若しくは水溶性有機溶媒等で抽出する処理、又は生ニンニクを加熱する処理などが含まれ、特に水溶性有機溶媒で抽出する処理が好ましい。抽出に用いる油としては、例えば、菜種油、オリーブ油、又は大豆油等の食用植物油が挙げられ、水溶性有機溶媒としては、例えば、エタノール若しくはイソプロパノール等の低級アルコール;又はプロピレングリコール若しくはジエチレングリコール等のグリコール等が挙げられる。
【0012】
ニンニク加工物としては、例えば、加工大蒜、ニンニク抽出液、ニンニクエキス、又は乾燥ニンニク等が好ましく、特に加工大蒜が好ましい。加工大蒜は、加熱処理ニンニク抽出液を低級アルコール抽出等の工程を経て調製されるニンニク粉末又はエキスを意味しており、例えば、オキソアミヂン(登録商標)(理研化学工業株式会社製)、オキソアミヂン(登録商標)末(理研化学工業株式会社製)、オキソレヂン(登録商標)(理研化学工業株式会社製)、又はオキソレヂン(登録商標)末(理研化学工業株式会社製)等が市販されている。ニンニクエキスとしては、例えば、ニンニクエキス(アルプス薬品工業株式会社製)又はニンニク流エキス(日本粉末薬品株式会社製)等が市販されている。乾燥ニンニクとしては、例えば、ガーリックパウダー又はローストガーリックパウダーEX(理研化学工業株式会社製)等が市販されている。これらのニンニク加工物のうち、オキソアミヂン(登録商標)(理研化学工業株式会社製)、オキソアミヂン(登録商標)末(理研化学工業株式会社製)、オキソレヂン(登録商標)(理研化学工業株式会社製)、又はオキソレヂン(登録商標)末(理研化学工業株式会社製)等が好ましい。
【0013】
本発明の医薬の有効成分であるニンニク加工物は、以下の実施例に具体的に示すように、肝臓におけるapoA1遺伝子の発現を増強する作用を有している。ApoA1は、敗血症性ショックの主たる原因のひとつと考えられているLPSに結合し、生体におけるLPSに対する生物学的反応を軽減させるが(J. Endotoxin Res., 11(2), pp.97-103, 2005)、この作用は、LPSの血漿輸送分子であるリポポリサッカライド結合蛋白へのLPSの結合阻害に基づくものであることが明らかにされている(Circ. Res., 97(3), pp.236-43, 2005)。また、ApoA1は、血中では主として低比重リポ蛋白質(HDL)の構成蛋白質であるが、阻害作用の本体は、HDL分子中のコレステロールを含む脂質部分ではなくapoA1そのものであることが示されている。従って、本発明の医薬は、肝臓における本遺伝子の発現を増強することにより敗血症性ショックの予防効果を発揮することができる。
【0014】
本発明の医薬は、菌血症に罹患したヒトを含む哺乳類動物に対して投与することが好ましい。菌血症及び敗血症性ショックについてはメルクマニュアル(第17版、第13節「感染症」、156章「菌血症と敗血症性ショック」、萬有製薬株式会社)などの成書に詳細に説明されているので、上記刊行物などを参照することにより、本発明の医薬を適用すべき菌血症を当業者は容易に理解することができる。好ましい適用対象は持続性又は菌数が多い菌血症であり、特に好ましい適用対象は持続性菌血症患者のうち血行力学的に不安定な状態に移行した患者(持続性菌血症のうち25〜40%程度であるとされる)である。本発明の医薬を適用すべき菌血症の典型的症状としては、頻呼吸、悪寒戦慄、スパイク状発熱、消化器症状(腹痛、悪寒、嘔吐、下痢)のような感染症の全身的な徴候を挙げることができる。初期において皮膚が暖かくなる場合があり、精神覚醒状態の低下や低血圧などの症状が出現する場合もある。感染の原因菌が特定されている場合、あるいは未特定の場合においても、菌血症の治療のために1種又は2種以上の抗菌剤を併用することが特に望ましく、その他、菌血症の治療のために膿瘍切開、壊死組織除去、カテーテル除去などの外科的処置を合わせて行うことが望ましい。なお、従来、敗血症症候群と呼ばれていた全身性炎症反応症候群を呈する場合も本発明の医薬の適用対象である。
【0015】
本発明の医薬としては、有効成分である上記のニンニク加工物をそのまま投与してもよいが、ニンニク加工物とともに1種又は2種以上の製剤用添加物を含む医薬組成物を調製して投与してもよい。本発明の医薬は、通常は経口により投与することが望ましいが、ニンニク加工物としてニンニク抽出液を用いる場合などには静脈内投与などの非経口投与を行なうことも可能であり、あるいは直腸内投与形態の医薬組成物を調製して非経口的に投与することも可能である。
【0016】
経口投与に適する医薬組成物としては、固形又は液体の医薬組成物のいずれであってもよい。経口用の固形医薬組成物は、例えば、有効成分であるニンニク加工物に賦形剤を加え、さらに必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、又は矯味剤などの製剤用添加物を加えた後、常法により錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤として調製することができる。製剤用添加物としては、当該分野で一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、乳糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、微結晶セルロース、珪酸等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ゼラチン液、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、ポリビニルピロリドン等の結合剤;カンテン末、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド等の崩壊剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等の滑沢剤;β−カロチン、黄色三二酸化鉄、カラメル等の着色剤;及び白糖、橙皮等の矯味剤を例示できる。
【0017】
経口用の液体医薬組成物は、有効成分であるニンニク加工物に矯味剤、安定化剤、又は保存剤など製剤用添加物の1種又は2種以上を加え、常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等として調製することができる。製剤用添加物としては、当該分野で一般的に使用されているものを用いることができる。例えば白糖等の矯味剤;トラガント等の安定化剤;パラオキシ安息香酸エステル等の保存剤が挙げられる。
【0018】
非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、注射剤、点滴剤、坐剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤などの製剤形態を例示することができる。注射剤は、例えば水性のニンニク抽出液に安定化剤又は等張化剤等などの製剤用添加物の1種又は2種以上を添加し、常法により皮下、筋肉、又は静脈内投与用の注射剤として製造することができる。製剤用添加物としては、当該分野で一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム等の安定化剤;塩化ナトリウム等の等張化剤を例示できる。直腸内投与用の医薬組成物としては坐薬を挙げることができる。座薬は、ニンニク加工物に担体及び界面活性剤などの製剤用添加物を加えて常法により製造することができる。製剤用添加物としては、当該分野で一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、ポリエチレングリコール、ハードファット等の担体;ポリソルベート80等の界面活性剤を例示できる。
【0019】
本発明の医薬の投与量は特に限定されず、患者の年齢、体重、及び症状、投与形態、投与経路、及び投与回数などによって適宜選択可能である。通常は、ニンニク加工物の質量として成人1日あたり0.1 mg〜10 g程度を投与することができる。本発明の医薬は1日1回又は数回に分けて経口投与又は非経口投与することができるが、投与回数も適宜選択可能である。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例により限定されることはない。
例1
(1)方法
(a)被験物質:
オキソアミヂン末(登録商標、理研化学工業株式会社製)
媒体:生理食塩液、濃度:5mg/mL
(b)動物実験
一晩絶食したラットにオキソアミヂン末を100mg/kgとなるよう経口単回投与した(対照動物については媒体を経口単回投与)。24時間後、それぞれの動物について無麻酔下で断頭した後肝臓を摘出し、液体窒素で凍結させた。凍結させた肝臓については次の操作まで−80℃で保存した。
【0021】
(c)Total RNAの抽出並びに蛍光標識
Total RNAの抽出にはSV total RNA isolation system(登録商標、Promega社製)を用いた。すなわち、凍結したサンプルを約30mg秤量し、SV RNA Lysis Bufferを175μL 添加し、30分間の超音波処理並びに注射針(22G)により肝臓をホモジナイズし、SV RNA Dilution Bufferを350μL 添加して転倒混和させた。70℃で2分 インキュベートした後、10000×g、4℃で10分間の遠心分離を2回行い、上清を回収した。氷冷した95%エタノールを200μL添加し、ピペッティングにより混和した後、溶液をSpin BasketとCollection tubeからなるSpin Column Assemblyに移し、10000×g、4℃で1分間遠心分離した。Spin Column AssemblyにSV RNA Wash Solutionを600μL添加した後、10000×g、4℃で1分間遠心分離することにより洗浄した。予め調製したDNaseI反応液(Yellow Core Buffer 40μL 、MnCl2 5μL 、DNaseI 5μLを含む)を Spin Column Assemblyに添加し、室温で5分間静置した後、Spin Column AssemblyにSV DNase Stop Solutionを200μL添加して、10000×g、4℃で1分間遠心分離した。SV RNA Wash Solutionを250μL添加して洗浄した後、Nuclease-Free Waterを100μL添加して10000×g、4℃で2分間遠心分離することによりtotal RNAを溶出した。
【0022】
得られたtotal RNAのうち400ngを用いて、Low RNA Input リニア増幅&ラベル化キットによるラベリングを行った。すなわち、total RNAを400ng、T7 promoter プライマーを1.2μL、Nuclease-free waterを混合して合計11.5μLとした後、65℃で10分間インキュベーションし、5分間氷冷後、予め65℃で加温した5×First strand bufferを4μL、0.1M DTTを2μL、10mM dNTP mixを1μL、MMLV-RTを1μL、RNaseOUTを0.5μL添加して40℃で2時間インキュベートした。65℃で10分間インキュベートすることにより反応を停止した後、5分間氷冷した。氷冷後、Nuclease-free waterを15.3μL、4×Transcription bufferを20μL、0.1M DTTを6μL、NTP mixを8μL、予め40℃で加温した50% PEGを6.4μL、RNaseOUTを0.5μL、Inorganic pyrophosphataseを0.6μL、T7 RNA polymeraseを0.8μL添加し、混合した。混合後、オキソアミヂン末を投与した動物の肝臓由来のRNAについては10mM Cyanine 5-CTP(以下Cy5)を2.4μL、媒体を投与した動物の肝臓由来のRNAについては10mM Cyanine 3-CTP(以下Cy3)を2.4μL 添加し、40℃で2時間、遮光下でインキュベートした。
【0023】
反応終了後、RNeasy mini(QIAGEN社製)を用いて反応物(ラベル化cRNA)の精製を行った。すなわち、RLT bufferを350μL、エタノールを250μL添加し、混合後カラムに供し、10000×gで30秒間遠心した。カラムにRPE bufferを500μL添加し10000×gで30秒間遠心することでカラムを洗浄した。本洗浄操作は2回行った。RNase-free waterを30μL添加し、1分間静置した後10000×gで30秒間遠心することによりラベル化cRNAを溶出した。本溶出操作は2回行った。得られたラベル化cRNAを用いて、In situ hybridization kit plus(Agilent社製)によるrat microarray oligo(Agilent社製、以下ラットオリゴ)とのハイブリダイゼーションを行った。すなわち、Cy3 ラベル化cRNA 0.75μg相当とCy5ラベル化cRNA 0.75μg、10×コントロールターゲットを50μLとヌクレアーゼフリー水を混合して合計215μLとし、2×ターゲットソリューションを215μL、25×フラグメンテーションバッファを9μL添加し、60℃で30分間、遮光下でインキュベートした。2×ハイブリダイゼーションバッファを225μL添加して反応停止させた後、マイクロアレイ用チャンバー内でラットオリゴにアプライし、60℃で17時間ハイブリダイゼーションを行った。反応終了後、ラットオリゴを0.005% TritonX-102含6×SSC並びに0.005% TritonX-102含0.1×SSCで洗浄し、窒素ガスで乾燥させた。乾燥したラットオリゴをマイクロアレイスキャナー(Agilent社製)に供して画像を取り込んだ後、画像化ソフトFeature Extractionを用いてスポットの画像化並びにシグナル強度の数値化を行った。得られた数値について、Microsoft EXCEL にて解析を行った。
【0024】
(2)結果及び考察
ラットオリゴに搭載されているプローブのうち、コントロールプローブ並びにノイズにより測定値の信頼性が低いプローブを除去し、残りの約20000遺伝子について解析を行った。その結果、オキソアミヂン末投与により媒体投与に対して発現量が2倍以上増加したものが1464遺伝子、逆にオキソアミヂン末投与により媒体投与に対して発現量が1/2以下に減少したものが1714遺伝子であった。これらのうち、機能既知遺伝子については発現が増加したものが1113遺伝子、減少したものが1222遺伝子であった。発現が増加した遺伝子にはラットapoA1遺伝子が含まれており、本遺伝子の発現量は媒体投与時を1とした場合、2.3であった(表1)。
apoA1遺伝子は敗血症性ショックの抑制遺伝子の一つと考えられる。よって、本遺伝子の発現を増強したオキソアミヂンは、敗血症性ショックの発症に対する予防効果を有するものと考えられる。
【0025】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
敗血症性ショックの予防のための医薬であって、ニンニク加工物を有効成分として含む医薬。
【請求項2】
ニンニク加工物がニンニク抽出物である請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
ニンニク加工物が乾燥形態のニンニク粉末である請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
持続性菌血症の患者に投与する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の医薬。

【公開番号】特開2008−63238(P2008−63238A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239962(P2006−239962)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】