説明

散乱媒質の異方性の特徴を判定する方法及びこの方法を実装する装置

本発明は、散乱媒質の特徴を判定する方法に関する。本発明によれば、非偏光信号に対して、散乱媒質により散乱される電磁ビームに対する処理が行われる。こうして、散乱媒質により誘発されるビームのインコヒーレントな異方性輸送だけが、本発明による特徴判定で得られる。本発明によると、非偏光ビームを表す第1画像の角度変化を示すデータは散乱の純粋に等方性部分を表す。本発明によれば、この純粋に等方性部分を取得することにより、散乱の非等方性部分を表す第2画像を算出することが可能である。この非等方性部分は散乱時の媒質により誘発されるビームの異方性輸送を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散乱媒質の特徴を判定する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
散乱媒質の1つの重要な特性は、その異方性にある。実際に、粒子が変形可能であると共に/又は異方性を有する場合には、2つのシナリオが考えられる。第1のシナリオは、粒子がランダムに方向付け及び分散されており、この結果、これらの粒子を有する媒質は、粒子の寸法を上回るスケールにおいて等方性を有する状態に留まるというものである。この場合には、媒質を通じた光の伝播は、ランダムに分散した等方性粒子のものと実質的に同一となる。第2のシナリオにおいては、粒子が空間の特定方向において方向付けされている。方向付けされた粒子は、その方向付けの方向においては、光の伝播に悪い影響を与えると共に、その他のすべての方向においては、その伝播を促す。従って、例えば、散乱媒質が、切断された又は細長い流れに暴された際などには、光伝播の異方性を大規模に観察することが可能である。
【0003】
従来技術として、
−少なくとも1つの入射電磁ビームを生成する段階と、
−前述の入射電磁ビームを散乱媒質の表面上に合焦する段階と、
−前述の散乱媒質によって散乱された前述の少なくとも1つの電磁ビームに対応する少なくとも1つの散乱電磁ビームを収集する段階と、
−前述の少なくとも1つの散乱電磁ビームを表す第1画像を生成する段階と、
−前述の画像を処理する段階と、−前述のプロセスに基づいて前述の散乱媒質の特徴を判定する段階と、
を有する散乱媒質の特徴を判定する方法は既知である。
【0004】
このような方法及びこの方法を実装する装置については、例えば、特許文献1に開示されている。
【0005】
前記特許文献1においては、分析対象である散乱媒質上における入射ビームのいくつかの偏光状態について、散乱媒質によって散乱されたビームを表す画像を分析することにより、等方性散乱媒質の特徴判定が提供されている。
【0006】
しかしながら、前記明細書の装置及び方法は、散乱媒質によって誘発されるインコヒーレントな異方性輸送(trans port anisotrope)に対する迅速なアクセスを許容していないという欠点があるため、従って、静的な又は低速で変化する媒質にしか適用されない。
【0007】
実際に、散乱媒質上に放射される入射ビームも偏光されているため、入射ビームを偏光させた影響が、散乱媒質の異方性によって誘発されるビームの異方性輸送の影響と合成され、この結果、媒質の異方性によって誘発されるビームの異方性輸送に対するアクセスが妨げられる。
【0008】
具体的には、明細書の装置は、例えば、前述の明細書の図15に示されているものなどのMueller行列のすべての係数に関し計算しなければならない。
【0009】
従って、前記明細書の装置は、いずれにしても、散乱媒質の異方性によって誘発される放射の異方性輸送に対するアクセスを許容していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,011,626号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来技術のこれらの欠点を解決することを目的としている。
【0012】
従って、本発明の1つの目的は、散乱媒質の異方性と関連するビームの異方性輸送を客観的に計測することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、散乱媒質の異方性と関連するビームの異方性輸送を定量的に計測することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、散乱媒質の異方性の程度を定量化することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、原位置において、且つ、非侵襲的な(instrusive)方式により、散乱媒質の異方性と関連するビームの異方性輸送の影響を計測することにある。
【0016】
本発明の別の目的は、偏光アナライザの使用を要することなしに、散乱媒質の異方性と関連するビームの異方性輸送の影響を計測することにある。
【0017】
本発明の別の目的は、異方性散乱媒質の異方性軸を決めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これらの目的の中の少なくとも1つは、本発明によって実現される。本発明は、散乱媒質の特徴を判定する方法に関するもので、この方法は、
−少なくとも1つの入射電磁ビームを生成する段階と、
−前述の入射電磁ビームを前述の散乱媒質の表面上に合焦する段階と、−前述の散乱媒質によって散乱された前述の少なくとも1つの電磁ビームに対応する少なくとも1つの散乱電磁ビームを収集する段階と、
−前述の少なくとも1つの散乱電磁ビームを表す第1画像を生成する段階と、
−前述の画像を処理する段階と、−前述のプロセスに基づいて前述の散乱媒質の特徴を判定する段階と、を有し、
−前述の第1画像は、前述の少なくとも1つの散乱電磁ビームと関連する非偏光信号を表し、
−前述の処理段階は、
・前述の第1画像の角度変化を表すデータを判定するサブ段階と、
・前述の第1画像の非等方性部分を表す第2画像を生成するサブ段階であって、前述の第2画像は、前述の第1画像及び前述の角度変化を表す前述のデータを使用して算出される、サブ段階と、を有し、且つ、
前述の特徴判定段階は、
・前述の第2画像を利用して前述の散乱媒質の異方性の特徴を判定するサブ段階を有することを特徴とする。
【0019】
従って、本発明によれば、散乱媒質によって散乱された電磁ビームに関するプロセスは、非偏光信号について実行される。この結果、本発明による特徴判定においては、散乱媒質によって誘発されるビームの異方性輸送のみが取得される。本発明によれば、非偏光散乱放射を表す第1画像の角度変化を表すデータは、散乱の純粋に等方性の部分を表している。この角度変化は、特に、媒質の特性と、その濃度に依存しており、その異方性には依存していない。本発明によれば、この純粋に等方性の部分を取得することにより、散乱の非等方性部分を表す第2画像を算出可能である。この非等方性部分は、散乱の瞬間において媒質によって誘発される放射の異方性輸送を表している。
【0020】
第1画像の角度変化を表すデータは、例えば、第1画像の角度平均又は角度の標準偏差である。
【0021】
この結果、本発明によるプロセスは、散乱ビームを表す画像に対して直接的に実行されるので、米国特許第6,011,626号に説明されている方法とは異なり、散乱媒質の出力において偏光アナライザを使用する必要がないことに留意されたい。
【0022】
散乱の非等方性部分を算出可能である一実施例においては、前述の第2画像は、前述の第1画像と前述のデータの間の差によって算出される。
【0023】
散乱の等方性部分を算出可能である一実施例においては、前述の処理段階は、
−前述の第1画像のバリック中心(baric center)を判定する段階と、
−前述のバリック中心に基づいて前述の第1画像の角度変化を表す前述のデータを判定する段階と、
を有する。
【0024】
前述の方法において前述の少なくとも1つの散乱電磁ビームに対応する非偏光信号を表す第1画像を取得するべく、
−少なくとも1つの電磁ビームを生成する前述の段階は、
・第1偏光を具備する第1入射電磁ビームを生成する段階と、
・第2偏光を具備する第2入射電磁ビームを生成する段階であって、前述の第2偏光は、前述の第1偏光とは反対である、段階と、を有し、
−前述の散乱媒質によって散乱された少なくとも1つの電磁ビームを収集する前述の段階は、
・前述の散乱媒質によって散乱された前述の第1入射ビームに対応する第1散乱電磁ビームを収集する段階と、
・前述の散乱媒質によって散乱された前述の第2入射ビームに対応する第2散乱電磁ビームを収集する段階と、を有し、
且つ、この場合に、前述の第1画像は、前述の第1散乱電磁ビーム及び前述の第2散乱電磁ビームに対応する非偏光信号を表している。
【0025】
偏光入射放射を使用して非偏光散乱ビームをシミュレートするべく、前述の方法は、
−前述の第1散乱電磁ビームを表す第3画像を生成する段階と、
−前述の第2散乱電磁ビームを表す第4画像を生成する段階と、を有し、この場合に、前述の第1画像は、前述の第3画像及び前述の第4画像のハーフサム(half−sum)に等しい。
【0026】
又、本発明は、散乱媒質の異方性の特徴を判定する装置にも関し、この装置は、
−少なくとも1つの入射電磁ビームを生成する能力を有する少なくとも1つの電磁放射源と、
−前述の入射電磁ビームを前述の散乱媒質の表面上に伝播させる能力を有する合焦手段と、
−前述の散乱媒質によって散乱された前述の少なくとも1つの電磁ビームに対応する少なくとも1つの散乱電磁ビームを収集する能力を有する収集手段と、
−前述の少なくとも1つの散乱電磁ビームを表す第1画像を生成する能力を有する生成手段と、
−前述の第1画像を処理する能力を有する処理手段と、
−前述の散乱媒質の特徴を判定する能力を有する特徴判定手段と、を有し、
この場合に、
−前述の第1画像は、前述の少なくとも1つの散乱電磁ビームと関連する非偏光信号を表しており、
−前記処理手段は、
・前述の第1画像の角度変化を表すデータを判定する段階と、
・前述の第1画像の非等方性部分を表す第2画像を生成する段階であって、前述の第2画像は、前述の第1画像及び前述のデータを使用して算出される、段階と、を実行する能力を有するサブユニットを有し、
且つ、この場合に、
−特徴判定手段は、
・前述の第2画像を利用して前述の散乱媒質の異方性の特徴を判定する段階を実行する能力を有するサブユニットを有する。
【0027】
前述の装置の一実施例によれば、これは、
−初期電磁ビームを生成する能力を有する放射源と、
−第1偏光を具備する第1入射電磁ビームを生成するべく、前述の電磁ビームを偏光させる能力を有する第1偏光器と、
−第2偏光を具備する第2入射電磁ビームを生成するべく、前述の初期電磁ビームを偏光させる能力を有する第2偏光器であって、前述の第2偏光は、前述の第1偏光と反対である、第2偏光器と、を有し、
この場合に、
−前述の収集手段は、
・前述の散乱媒質によって散乱された前述の第1入射ビームに対応する第1散乱電磁ビームを収集する段階と、
・前述の散乱媒質によって散乱された前述の第2入射ビームに対応する第2散乱電磁ビームを収集する段階と、
を実行する能力を有する収集ユニットを有し、且つ、この場合に、前述の第1画像は、前述の第1散乱電磁ビーム及び前述の第2散乱電磁ビームに対応する非偏光信号を表している。
【0028】
最後に、非偏光散乱ビームをシミュレートするべく、前述の装置は、
−前述の第1散乱電磁ビームを表す第3画像を生成する段階と、
−前述の第2散乱電磁ビームを表す第4画像を生成する段階と、を実行する能力を有する演算ユニットを有し、且つ、前述の第1画像は、前述の第3画像及び前述の第4画像のハーフサムに等しい。
【0029】
本発明の更なる目的及び利点については、添付の図面を参照して提供される以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に従って散乱媒質の異方性の特徴を判定する装置を示す。
【図2】Meuller行列を使用した散乱媒質内における入力場に応じた出力場の計算を示す。
【図3】第1偏光及び反対の第2偏光を有する入力場における散乱媒質を通過した後の出力場の計算を示す。
【図4】処理の前において本発明によるCCDカメラによって得られた画像の一例である。
【図5】図4の画像の特徴を示す要素の図である。
【図6】画像のバリック中心における半径に応じた図4の画像の強度の角度平均を示すグラフである。
【図7】処理の後に本発明に従って異方性の特徴を判定するための画像の一例である。
【図8】図7の画像の特徴を示す要素の図である。
【図9】散乱距離の固定半径における計測角度に応じた本発明による異方性画像の強度を示すグラフである。
【図10】赤血球の散乱媒質に印加された剪断に応じた赤血球の懸濁液に対応する散乱媒質の偏光の程度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に示されているように、本発明による散乱媒質の異方性の特徴を判定する装置1は、635nmのモノクロ電磁ビームを放射する能力を有するレーザーダイオード2と、右円偏光器3A又は左円偏光器3Bを有する偏光手段3と、を有する。又、装置1は、ミラー4と、ビームスプリッタ5と、をも有し、ビームスプリッタは、レオメーター9とガラスプレート7の間に配置された特徴判定の対象である散乱媒質8を有するアセンブリに向かって電磁ビームを伝播させる能力を有する。電磁ビームは、散乱媒質8を通過した後にスプリッタ5に向かって後方散乱され、この結果、この後方散乱ビームは、スプリッタにより、CCDカメラ6に向かって伝播する。CCDカメラ6は、処理手段10に接続されており、この処理手段は、例えば、CCDカメラ6によって生成された1つ又は複数の分析画像によって散乱媒質8の特性を分析するプログラムが搭載された計算機の形態を有する。レオメーター9は、散乱媒質8に対して力を印加する能力を有する。この力は、接線方向又は半径方向のものであってよく、可変の速度を有する。
【0032】
図2は、散乱粒子と交差した際の出力場と入力場の間の関係を示している。mi,jの行列は、Mueller行列と呼ばれる。この行列は、電磁放射理論において周知である。図2においては、個々の平行及び垂直成分ES1及びES2を有する入力場が、個々の平行及び垂直成分Ei1及びEi2を有する入力場との関係において付与されている。又、これは、Mueller行列であるmi,jに従って入力場の強度Siにおける出力場の強度SSをも提供している。この電磁的な相互作用の理論及びMueller行列の各項の解釈に関する詳しい説明については、C. F. Bohren及びD. R. Huffmanによる書籍「Absorption and scattering of light by small particles」(Wiley Science (米国)、ISBN:0−471−29340−7(1983年))を参照されたい。
【0033】
図3に示されているように、本発明によれば、図1に示された装置1のCCDカメラ6を使用し、散乱媒質8上における入射光ビームE1が第1平行偏光を具備するように偏光手段が構成された際には、第1画像I1を、そして、散乱媒質8上における入射光ビームE2が第2垂直偏光を具備するように偏光手段が構成された際には、第2画像I2を取得する。
【0034】
これら2つの画像I1及びI2のハーフサムは、Mueller行列の係数m11を提供する。
【0035】
画像I1及びI2のハーフサムによって計算手段10を使用して取得された画像Iは、非偏光入射光に対応している。説明対象の例においては、この非偏光入射光は、2つの反対の偏光ビームを使用して取得される。図示されてはいない別の実施例によれば、白色光などの非偏光入射光を使用し、係数m11を直接的に取得することも可能である。
【0036】
取得された画像Iは、図4及び図5に示されているようなものである。図4は、実際のサンプルから取得された画像であり、図5は、図4の実際の画像の構造の図である。
【0037】
これら2つの画像は、方向付けされた中央ゾーン11の形態において角度的な異方性を示している。この方向付けされた中央ゾーン11は、実質的に円形のゾーン12によって囲まれている。
【0038】
この画像により、図1のレオメーター9の力が印加された状態における散乱媒質の誘発された異方性の特徴を判定することが可能である。本出願人は、実際に、視覚化された画像が角度的な等方性を有する場合には、それは、物体が球状であるか又はランダムに方向付けされていることを意味するということを発見した。図4及び図5の場合のように、角度的な異方性が存在している場合には、異方性の散乱物体又は粒子の全体的な方向付けが発生している。
【0039】
画像Iを利用し、方向付けされた状態に対応する画像Iと等方性の又はランダムな状態の基準画像の間の差によって異方性を計測する。
【0040】
この基準状態は、この画像のバリック中心(barycentre;baric center)に基づいた画像Iの角度平均によって算出可能である。
【0041】
図6は、画像Iのバリック中心において始まる半径に応じた画像Iの角度平均に対応する画像の強度I’を示している。周知の方式により、散乱の等方性部分は、散乱距離Iのみに依存している。この散乱距離Iは、散乱媒質内における2つの散乱イベントの間の代表的な距離である。
【0042】
この図において、各点は、実際の計測値に対応しており、実線の曲線は、例えば、C. Baravian、F. Caton、J. Dillet、及びJ. Mougelによる論文「Steady light transport under flow: characterisation of evolving dense random media」(Physical Review E 71、066603、2005年)などにおける実際のポイントのモデル化に対応している。このモデル化を使用し、散乱距離Iを判定可能である。
【0043】
図7及び図8は、この同一の画像Iから画像Iの角度平均I’を減算することによって取得された画像I”を示している。図7は、実際のサンプルから取得された画像であり、図8は、図7の画像の構造の模式的な表現である。
【0044】
図7及び図8の画像I”は、2つの一連の正及び負のローブを有し、これらの2つの一連の正及び負のローブは、レオメーターの力が印加された状態における散乱媒質の異方性粒子の全体的な方向付けに対応した特定の軸を定義している。この方向付けは、負のローブに対応した軸Yによって定義されている。
【0045】
図9は、散乱距離Iの固定半径における計測角度に応じた画像の強度I”を示すグラフである。強度I”の角度平均は、定義により、ゼロであることを観察可能である。
【0046】
この結果、偏光の程度を、画像I”の強度の標準偏差、即ち、図7及び図8の画像の標準偏差として定義可能である。
【0047】
従って、異方性の程度は、次式の通りである。
【0048】
【数1】

【0049】
この異方性の程度は、レオメーターの影響下において方向付けによって誘発されたインコヒーレントな異方性輸送を表す微小な値である。このパラメータは、散乱媒質の異方性の程度の客観的且つ定量的な計測を実現する。この異方性の程度は、平均的な等方性媒質においてゼロであることを観察可能である。
【0050】
図10は、レオメーター9によって媒質に印加された剪断に応じた赤血球の懸濁液に対応する散乱媒質の異方性の程度の変化を示すグラフである。
【0051】
この図においては、ハッチングが施された円によって表され、且つ、例えば、浸透性の応力によって調製された球状の赤血球は、塗り潰された円によって表された円板形状の赤血球よりも変形が少ないことを観察可能である。
【0052】
塗り潰されていない円によって表され、且つ、硬化した2つのタイプの赤血球は、特定の異方性を示していない。
【0053】
従って、このタイプの計測によれば、赤血球の変形可能性を計測可能であり、且つ、従って、異なるタイプの血液を互いに比較可能である。
【0054】
多数の臨床的な又は血液の病状が赤血球の変形可能性にリンクされていることが、例えば、Langenfeld JE、Machiedo GW、Lyons M、Rush BF Jr、Dikdan G、Lysz TWによる論文「Correlation between red blood cell deformability and changes in hemodynamic function」(Surgery 116(5): 859−67 (1994年))において証明されているため、この計測を使用し、特に、これらの病状を検出可能である。
【0055】
従って、前述のものなどの方法により、可視光において不透明なシステムの異方性の特徴を判定可能である。これは、微視的なスケールで集合的な方向付けを具備する異方性の及び/又は変形可能な粒子のあらゆる散乱に適用可能である。
【0056】
以下、本発明の別の実施例について記述する。
【0057】
以上においては、画像Iの角度の標準偏差を算出することにより、本発明を説明した。別の実施例によれば、図9の画像Iのバリック中心からの散乱距離において算出された角度の標準偏差により、異方性輸送を判定可能である。散乱距離Iは、図6を参照して前述したように、画像Iから取得可能である。
【0058】
更に一般的には、画像Iの角度変化の分析によって得られる媒質による散乱放射の輸送の角度異方性の任意の分析を本発明の文脈において使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散乱媒質の特徴を判定する方法において、
−少なくとも1つの入射電磁ビームを生成するステップと、
−前記入射電磁ビームを前記散乱媒質の表面上に合焦するステップと、
−前記散乱媒質によって散乱された前記少なくとも1つの電磁ビームに対応する少なくとも1つの散乱電磁ビームを収集するステップと、
−前記少なくとも1つの散乱電磁ビームを表す第1画像を生成するステップと、
−前記画像を処理するステップと、
−前記プロセスに基づいて前記散乱媒質の特徴を判定するステップと、
を有し、
−前記第1画像は、前記少なくとも1つの散乱電磁ビームと関連する非偏光信号を表し、
−前記処理ステップは、
・前記第1画像の角度変化を表すデータを判定するサブステップと、
・前記第1画像の非等方性部分を表す第2画像を生成するサブステップであって、前記第2画像は、前記第1画像及び前記角度変化を表す前記データを使用して算出される、サブステップと、
を有し、
−前記特徴判定ステップは、
・前記第2画像を利用して前記散乱媒質の異方性の特徴を判定するサブステップ、
を有する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
角度変化の変化を表す前記データは、前記画像の角度の平均又は前記画像と関連する角度の標準偏差である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2画像は、前記第1画像と前記データの間の差によって算出される請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記処理ステップは、
−前記第1画像のバリック中心を判定するステップと、
−前記バリック中心に基づいて前記第1画像の角度変化を表す前記データを判定するステップと、
を有する前項までの任意の請求項記載の方法。
【請求項5】
−少なくとも1つの電磁ビームを生成する前記ステップは、
・第1偏光を具備する第1入射電磁ビームを生成するステップと、
・第2偏光を具備する第2入射電磁ビームを生成するステップであって、前記第2偏光は、前記第1偏光とは反対である、ステップと、
を有し、
−前記散乱媒質によって散乱された少なくとも1つの電磁ビームを収集する前記ステップは、
・前記散乱媒質によって散乱された前記第1入射ビームに対応する第1散乱電磁ビームを収集するステップと、
・前記散乱媒質によって散乱された前記第2入射ビームに対応する第2散乱電磁ビームを収集するステップと、
を有し、
この場合に、前記第1画像は、前記第1散乱電磁ビーム及び前記第2散乱電磁ビームと関連する非偏光信号を表す、前項までの任意の請求項記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、
−前記第1散乱電磁ビームを表す第3画像を生成するステップと、
−前記第2散乱電磁ビームを表す第4画像を生成するステップと、
を有し、
この場合に、前記第1画像は、前記第3画像及び前記第4画像のハーフサムに等しい、請求項5記載の方法。
【請求項7】
散乱媒質(8)の異方性の特徴を判定する装置(1)において、
−少なくとも1つの入射電磁ビームを生成する能力を有する少なくとも1つの電磁放射源(3)と、
−前記入射電磁ビームを前記散乱媒質の表面上に伝播させる能力を有する合焦手段(4、5、7)と、
−前記散乱媒質によって散乱された前記少なくとも1つの電磁ビームに対応する少なくとも1つの散乱電磁ビームを収集する能力を有する収集手段(5、6)と、
−前記少なくとも1つの散乱電磁ビームを表す第1画像を生成する能力を有する生成手段(6)と、
−前記第1画像を処理する能力を有する処理手段(10)と、
−前記散乱媒質の特徴を判定する能力を有する特徴判定手段(10)と、
を有し、
−前記第1画像は、前記少なくとも1つの散乱電磁ビームと関連する非偏光信号を表し、
−前記処理手段は、
・前記第1画像の角度変化を表すデータを判定するステップと、
・前記第1画像の非等方性部分を表す第2画像を生成するステップであって、前記第2画像は、前記第1画像及び前記データを使用して算出される、ステップと、
を実行する能力を有する処理サブユニットを有し、且つ、
−前記特徴判定手段は、
・前記第2画像を利用して前記散乱媒質の異方性の特徴を判定するステップ、
を実行する能力を有するサブユニットを有する、ことを特徴とする装置。
【請求項8】
−初期電磁ビームを生成する能力を有する放射源と、
−第1偏光を具備する第1入射電磁ビームを生成するべく、前記電磁ビームを偏光させる能力を有する第1偏光器と、
−第2偏光を具備する第2入射電磁ビームを生成するべく、前記初期電磁ビームを偏光させる能力を有する第2偏光器であって、前記第2偏光は、前記第1偏光の反対である、第2偏光器と、
を有し、
この場合に、
−前記収集手段は、
・前記散乱媒質によって散乱された前記第1入射ビームに対応する第1散乱電磁ビームを収集するステップと、
・前記散乱媒質によって散乱された前記第2入射ビームに対応する第2散乱電磁ビームを収集するステップと、
を実行する能力を有する収集ユニットを有し、
且つ、この場合に、前記第1画像は、前記第1散乱電磁ビーム及び前記第2散乱電磁ビームと関連する非偏光信号を表す、請求項7記載の装置。
【請求項9】
−前記第1散乱電磁ビームを表す第3画像を生成するステップと、
−前記第2散乱電磁ビームを表す第4画像を生成するステップと、
を実行する能力を有する演算ユニットを有し、
この場合に、前記第1画像は、前記第3画像及び前記第4画像のハーフサムに等しい、請求項8記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−541727(P2009−541727A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515908(P2009−515908)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000983
【国際公開番号】WO2007/147959
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【Fターム(参考)】