説明

散水装置

【課題】 上方を払出し機が移動する払出しコンベヤが搬送する石炭に対して、幅方向に均一な散水を行なうことができる散水装置を提供する。
【解決手段】 散水装置1は、払出し機のスカート部33の下側に配置された払出しコンベヤ21に積載される石炭51に向けて散水を行なう装置であって、払出しコンベヤ21の上方に配置され、長手方向を有する散水管2と、散水管2を支持する支持枠4とを備える。散水管2は、水を供給するための給水手段に接続され、散水管2は、払出しコンベヤ21に向かって散水するように形成された開口部15を有する。支持枠4は、散水管2の長手方向が払出しコンベヤ21の延びる方向にほぼ垂直な状態からほぼ平行な状態まで回動可能に散水管2を支持するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散水装置に関する。特に、上方を移動物が移動するコンベヤによって搬送される搬送物に向けて散水を行なう散水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭ボイラなどに用いられる石炭を貯蔵する方式の1つとして、室内貯炭方式(サイロ方式)がある。この方式においては、箱型の石炭サイロの内部に石炭を積み上げて、石炭を保管する。
【0003】
特開平9−86622号公報においては、建屋の上部から石炭を投入して、内部に石炭を堆積させて貯蔵を行なう石炭の貯蔵設備が開示されている。この貯蔵設備においては、建屋の天井部が内部に堆積される石炭の上面の安息角とほぼ同一の傾斜角を有するように形成され、天井部に複数の換気口が設けられた石炭サイロを備えることが開示されている。
【0004】
この石炭サイロにおいては、内部に堆積する石炭の表面と換気口との距離を石炭サイロ内全体にわたってほぼ同じにすることができるため、換気を均一にできると開示されている。また、石炭の自然発火を抑制できると開示されている。
【0005】
石炭を石炭ボイラなどに搬送する装置としては、主に、ベルトコンベヤなどコンベヤが用いられる。石炭を供給する装置としては、一列に配列した複数の石炭サイロの下側に払出し機が配置される。払出し機は、複数の石炭サイロが配列している方向とほぼ平行な方向に移動可能に配置される。払出し機の下側には、払出し機の移動方向とほぼ平行な方向にベルトコンベヤなどのコンベヤが配置される。石炭サイロに貯蔵されている石炭は、払出し機によってベルトコンベヤに積載され、ベルトコンベヤで石炭ボイラなどに搬送される(たとえば、特開平9−89238号公報参照)。
【0006】
石炭サイロに石炭を貯留するサイロ方式においては、多量の石炭を保管することができる。一方で、石炭は、空気に触れることにより、低温酸化が生じて温度が上昇する。石炭は、温度上昇に伴って保有する水分が蒸発する。この後に、石炭は、急激に温度が上昇するという特性を有する。石炭は、温度が急激に上昇すると、いずれは発火するという特性を有する。たとえば、石炭のうち、亜瀝青炭や褐炭などは、水分や酸素が多く、自然発火が生じやすい。
【0007】
このように、石炭は、空気に触れることにより、自然発火する場合があるという特性を有する。サイロ方式において、石炭サイロに石炭を貯蔵する場合には、石炭が堆積され、外部に放熱できる表面積が小さくなるため、比較的、自然発火が生じやすい環境にある。
【0008】
石炭は、保有水分が蒸発した後に急激に温度が上昇することから、貯蔵を行なっているときに、石炭サイロ内部の石炭に対して水を散布することが考えられる。しかしながら、貯蔵を行なっている石炭に散水しても、堆積している石炭の表面に水道が形成されるため、堆積している石炭の内部にはほとんど浸透しない。このため、石炭サイロ内部に散水を行なって石炭全体の保有水分を上昇させることは困難である。
【0009】
従来の技術においては、石炭を受入れた順に消費して、一部の石炭のみが長期間貯蔵されないように運用することによって、異常発熱の防止を図っている。すなわち、可能な限り自然発火が生じる前に石炭を使用してしまう運用を行なっている。
【0010】
または、石炭サイロの外部のコンベヤを用いて、石炭サイロの外側に石炭を搬送した後に、再び石炭サイロに戻す(以下、「循環運転」という。)ことにより、石炭の冷却を行なっている。さらに、循環運転を行なう際に石炭の表面水分を上昇させ、冷却を行なうために水の散布を行なっている。
【0011】
図11に、石炭サイロ、払出し機および払出しコンベヤの位置関係を説明する概略配置図を示す。それぞれの石炭サイロ41は、円筒状に形成されている。複数の石炭サイロ41は、一の方向に直線状に配列している。図11に示す例においては、3棟の石炭サイロ41が配置されている。
【0012】
払出しコンベヤ21は、石炭サイロ41が配列する方向に沿って延びるように配置されている。図11に示す例においては、4本の払出しコンベヤ21が配置されている。それぞれの払出しコンベヤ21に対応するように、4機の払出し機31が配置されている。
【0013】
払出し機31は、矢印63に示すように、払出しコンベヤ21の延びる方向に沿って移動可能に形成されている。また、払出し機31は、複数の石炭サイロ41に跨って移動可能に形成されている。移動範囲89は、それぞれの払出し機31が移動できる領域を示す。払出し機31は矢印63に示す方向に移動しながら、払出しコンベヤ21に石炭を落下させていく。
【0014】
払出しコンベヤ21が稼動することによって、矢印64に示す向きに、石炭が搬送される。石炭は、矢印65に示すように、他の搬送コンベヤである連絡コンベヤ25に移載される。この後に、矢印66に示すように、連絡コンベヤ25により次の箇所に搬送される。
【0015】
図12に、石炭貯蔵設備の概略構成図を示す。この石炭貯蔵設備は、3つの石炭サイロ41を備える。石炭は、たとえば輸送船などで輸送され、矢印71に示すように、受入れコンベヤ28によって受入れサンプリング室43に搬送される。次に、矢印72に示すように、受入れコンベヤ29を通って中継所44に搬送される。さらに、矢印73に示すように、受入れコンベヤ30を通って、それぞれの石炭サイロ41に石炭が搬送される。
【0016】
石炭の払出しにおいては、石炭サイロ41から払出しコンベヤ21に石炭が配置される。石炭は、矢印74に示すように、払出しコンベヤ21によって搬送される。次に、矢印75に示すように、連絡コンベヤ25で、整粒室42に搬送される。整粒室42において、コンベヤ26によって供給コンベヤ24に石炭が配置される。石炭は、矢印77に示すように、供給コンベヤ24で搬送されて、たとえば、石炭ボイラなどの消費設備に向かう。
【0017】
石炭の冷却または石炭の加湿を行なうための循環運転においては、整粒室42において、コンベヤ26によって、石炭をリサイクルコンベヤ27に積載する。石炭は、リサイクルコンベヤ27によって、矢印76に示すように、受入れサンプリング室43に搬送される。この後に、再び受入れコンベヤ29,30で搬送されて、石炭サイロ41に戻される。このように、石炭が循環する。
【0018】
循環運転において、石炭への散水は、可能な限り早く石炭を冷却するために、払出し機によって石炭が払出しコンベヤに載置された直後に行なわれることが好ましい。また、石炭を搬送する払出しコンベヤのベルトは、ゴムで形成されている場合が多い。石炭の温度を急速に低下させてベルトを保護するため、払出し機から払出しコンベヤに石炭が載置された直後に散水を行なうことが好ましい。
【0019】
しかしながら、図11に示すように、石炭サイロからの石炭を搬送する払出しコンベヤの上側には、移動式の払出し機が配置されているため、払出しコンベヤの真上に固定式の散水装置を配置することができない。従来においては、消火ホースなどによって人が散水を行なっている。
【特許文献1】特開平9−86622号公報
【特許文献2】特開平9−89238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述のように、石炭サイロに所定の期間、石炭を貯蔵する場合には、循環運転を行なって石炭を冷却すると共に石炭に散水を行なうことが効果的である。
【0021】
石炭への散水においては、人が消火ホースなどを用いて行なうため、それぞれの払出しコンベヤに対して散水を行なうと多くの人が作業する必要があるという問題があった。また、人が散水を行なうため、払出しコンベヤで搬送される石炭全体にわたって均一に散水を行なうことが難しいという問題があった。
【0022】
また、人が散水を行なうと、払出しコンベヤで搬送される石炭のみではなく、払出しコンベヤの一部分を濡らしてしまうことがあった。たとえば、払出しコンベヤのキャリアローラの一部に水がかかってしまうと、ベルト調芯力が幅方向において不均一になってしまい、濡れた側にベルトが偏ってしまうという問題があった。この結果、払出しコンベヤの運転が不可能になってしまう場合があった。
【0023】
または、払出しコンベヤの側方に固定式の散水装置を配置することが考えられるが、側方に散水装置を配置すると水がコンベヤの幅方向に広がるため、石炭のみに散水が行なわれずに、払出しコンベヤを濡らしてしまうことがあった。たとえば、払出しコンベヤのキャリアローラの一部に水がかかってしまうと、ベルト調芯力が幅方向において不均一になってしまい、濡れた側にベルトが偏ってしまうという問題があった。この結果、払出しコンベヤの運転が不可能になってしまう場合があった。
【0024】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、上方を移動物が移動するコンベヤが搬送する搬送物に対して、幅方向に均一な散水を行なうことができる散水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に基づく散水装置は、移動物の下側に配置されたコンベヤに積載される搬送物に向けて散水を行なう散水装置であって、上記コンベヤの上方に配置され、長手方向を有する散水管と、上記散水管を支持する支持手段とを備える。上記散水管は、水を供給するための給水手段に接続され、上記散水管は、上記コンベヤに向かって散水するように形成された開口部を有し、上記支持手段は、上記散水管の長手方向が上記コンベヤの延びる方向にほぼ垂直な状態からほぼ平行な状態まで回動可能に上記散水管を支持するように形成されている。この構成を採用することにより、上方を上記移動物が移動する上記コンベヤが搬送する搬送物に対して、幅方向に均一に散水を行なうことができる散水装置を提供することができる。
【0026】
上記発明において好ましくは、上記支持手段は、支持枠と、上記支持枠に対して回動可能に形成され、上記散水管に固定された支持棒とを含む。上記支持枠および上記支持棒のうち少なくとも一方に、球状の第1突起部が形成され、他方に球状の第2突起部が複数配列するように形成されている。上記第1突起部および上記第2突起部は、上記散水管の長手方向が上記コンベヤの延びる方向に垂直な方向に配置されたときに、上記第1突起部が上記第2突起部同士の間に嵌るように配置されている。上記第1突起部および上記第2突起部は、上記散水管を回動することにより、上記第1突起部が上記第2突起部同士の間から抜けるように配置されている。この構成を採用することにより、散水を行なうときの上記散水管の位置決めを容易に行なうことができる。また、散水を行なうときの上記散水管の仮固定を行なうことができて、散水中に上記散水管が回動することを抑制できる。
【0027】
上記発明において好ましくは、上記支持棒の端部に配置され、上記散水管の長手方向に略平行な方向のうち、上記散水管が上記支持棒から飛び出す向きと反対向きに延びるように形成された補助棒と、上記補助棒に接続され、上記コンベヤの延びる方向とほぼ垂直な方向に延びるように配置されたワイヤと、上記ワイヤの向きを下向きに変換するためのプーリと、上記ワイヤに接続されたウエイトとを備える。この構成を採用することにより、上記移動物が上記散水管が配置されている領域を通ることにより、上記散水管を上記移動物が通過する領域から自動的に退避させることができる。
【0028】
上記発明において好ましくは、上記散水管の長手方向の一方の端部に上記給水手段が接続され、上記散水管の長手方向の他方の端部に上記開口部が形成され、上記開口部は、上記他方の端部の先端に向かうにつれて幅が細くなるように形成されている。この構成を採用することにより、上記開口部の長手方向に沿ってほぼ均一な散水を行なうことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、上方を移動物が移動するコンベヤが搬送する搬送物に対して、幅方向に均一な散水を行なうことができる散水装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1から図10を参照して、本発明に基づく実施の形態における散水装置について説明する。本実施の形態における散水装置は、石炭を貯蔵して供給する石炭貯蔵設備に配置されている。
【0031】
図9に、本実施の形態における石炭サイロの概略断面図を示す。石炭サイロ41は、円筒形に形成され、内部が空洞になるように形成されている。石炭51は、石炭サイロ41の内部に貯蔵される。石炭サイロ41の上部には、受入れコンベヤ30が配置されている。石炭は、受入れコンベヤ30によって搬送され、矢印78に示すように、石炭サイロ41の上方から搬入される。石炭サイロ41の下部には、払出し機31が複数配置されている。
【0032】
図10に、図9におけるA部の拡大概略断面図を示す。払出し機31は、回転可能に形成されたプラウ32を含む。本実施の形態における払出し機31は、プラウ32が左右の棚へ挿入された両側切出し方式の回転プラウ型払出し機である。プラウ32が回転することにより、石炭51は、矢印79に示すように、スカート部33を通って払出しコンベヤ21に載置される。
【0033】
図1に、本実施の形態における散水装置の概略斜視図を示す。本実施の形態においては、コンベヤとして石炭51を搬送するための払出しコンベヤ21が配置されている。また、移動物として払出しコンベヤ21に石炭を載置する払出し機のスカート部33が配置されている。スカート部33は、矢印63に示すように、払出しコンベヤ21の延びる方向に沿って移動可能なように形成されている。
【0034】
払出しコンベヤ21は、スカート部33の下側に配置されている。払出しコンベヤ21は、ベルト22を含む。払出しコンベヤ21は、ベルト22を支持するためのキャリアローラ23を含む。
【0035】
散水装置1は、払出しコンベヤ21の上方に配置され、長手方向を有する散水管2を備える。本実施の形態における散水管2は、長手方向が水平方向とほぼ平行になるように配置されている。散水装置1は、散水管2を支持するための支持手段を備える。支持手段は、支持枠4を含む。支持手段は、散水管2を固定された支持棒3を含む。散水管2は、支持棒3に支持されている。散水管2は、矢印60に示すように、支持棒3を回転軸にして、支持枠4に対して回動可能に形成されている。本実施の形態における散水管2は、水平面内で回動可能に形成されている。
【0036】
散水装置1は、散水管2に水を供給するための給水手段を備える。本実施の形態における給水手段は、散水管2に接続された供給管9およびホース10を含む。給水手段は、図示しない給水ポンプによりホース10および供給管9を通して、散水管2の内部に水を供給できるように形成されている。
【0037】
散水管2は、払出しコンベヤ21で搬送される石炭51に向かって散水できるように形成された開口部15を有する。開口部15は、散水管2の長手方向に沿って長手方向を有するように形成されている。開口部15は、払出しコンベヤ21に載置される石炭51の幅方向の長さとほぼ同じ長さを有するように形成されている。すなわち、開口部15の長手方向の長さは、搬送される石炭51の幅方向の長さに対応して形成されている。
【0038】
開口部15は、給水手段が接続されている供給管9から離れるにつれて、幅が細くなるように形成されている。本実施の形態においては、散水管2の長手方向の端部のうち、給水手段が接続されている端部と反対側の端部に向かうにつれて、開口部15の幅が細くなるように形成されている。
【0039】
散水管2は、長手方向が払出しコンベヤ21の延びる方向とほぼ平行になる位置まで回動可能なように形成されている。すなわち、散水管2は、支持棒3を回転軸として、矢印60に示す方向のうち一の向きに回動して、払出しコンベヤ21の延びる方向と散水管2の長手方向とがほぼ平行になるように形成されている。また、散水管2は、一の向きと反対向きに回動して、払出しコンベヤ21の延びる方向と散水管2の長手方向とがほぼ平行になるように形成されている。このように、本実施の形態における散水管2は、平面視したときに、180°回動可能なように形成されている。
【0040】
支持棒3は、支持枠4を貫通するように形成されている。支持棒3の一方の端部には散水管2が固定されている。支持棒3の他方の端部には補助棒5が形成されている。本実施の形態における補助棒5は、水平方向に長手方向を有するように形成されている。補助棒5は、長手方向が散水管2の長手方向とほぼ平行になるように配置されている。補助棒5は、散水管2の支持棒3から飛び出す向きと反対向きに飛び出すように形成されている。
【0041】
散水装置1は、補助棒5に接続されたワイヤ6を備える。ワイヤ6は、払出しコンベヤ21の延びる方向とほぼ垂直な方向に延びるように配置されている。ワイヤ6は、補助棒5の外側の先端部に接続されている。
【0042】
図2に、散水管が回動して、長手方向と払出しコンベヤの延びる方向とがほぼ平行になったときの正面図を示す。支持枠4は、床面に固定された支持台20に固定されている。図2に示す状態は、払出し機のスカート部33が通るときに、散水管2がスカート部の通過領域から退避した状態である。
【0043】
図3に、払出しコンベヤの長手方向に垂直な面で切断したときの散水装置および払出しコンベヤの概略断面図を示す。図3は、散水管2が石炭に対して散水を行なう散水位置に配置されたときの概略断面図である。散水管2は、長手方向が払出しコンベヤの幅方向とほぼ平行になるように配置されている。
【0044】
払出しコンベヤ21は、上側に向かって開くように形成されている。キャリアローラ23は、円柱状に形成されている。キャリアローラ23は、ベルト22の底面に配置されている。キャリアローラ23は、ベルト22の荷重を支持しながら、ベルト22を送ることができるように形成されている。ベルト22の上側には、石炭51が載置される。
【0045】
本実施の形態における散水装置は、ワイヤ6の向きを下向きに変換するためのプーリ7を備える。散水装置は、下向きに方向変換されたワイヤの先端に接続されたウエイト(錘)8を備える。ワイヤ6は、ウエイト8によって、矢印62に示す向きに引張られるように形成されている。補助棒5とワイヤ6との接続点は、矢印62に示す向きに引張られるように形成されている。
【0046】
図4に、図3におけるB部の拡大斜視図を示す。支持棒3は、第1突起部11を含む。支持枠4は、第2突起部12を含む。図4において、支持棒3は、支持枠4に対して、矢印69に示す方向に回動可能に形成されている。本実施の形態においては、支持枠4と支持棒3との境界部分において、支持棒3に第1突起部11が形成されている。また、支持枠4と支持棒3との境界部分において、支持枠4に第2突起部12が形成されている。本実施の形態においては、球状の第1突起部11が1個形成されている。また、球状の第2突起部12が2個形成されている。このように本実施の形態においては、3個の突起部が形成されている。
【0047】
第2突起部12は、矢印69に示す支持棒3の回動方向に沿って配列している。第1突起部11および第2突起部12は、散水管の長手方向が払出しコンベヤの延びる方向とほぼ垂直な方向に配置されたときに、第1突起部11が第2突起部12同士の間に嵌るように配置されている。第1突起部11は、第2突起部12同士を投影したときの投影領域の内部に、一部が配置されるように形成されている。
【0048】
図5に、散水管の長手方向と払出しコンベヤの幅方向とがほぼ平行になったときの突起部の概略正面図を示す。第1突起部11は、第2突起部12同士の間に嵌って、支持棒3の位置を定めることができるように形成されている。
【0049】
図6に、散水管および支持棒を一の向きに回動したときの概略正面図を示す。散水管に所定の力を加えて回動することにより、支持棒3が回動する。支持棒3が回動することにより、第1突起部11が、第2突起部12同士の間から抜ける。図6においては、矢印70に示す向きに散水管を回動して支持棒3を回すことにより、第1突起部11が、第2突起部12同士の間から離れる。
【0050】
図7に、本実施の形態における石炭貯蔵設備の概略配置図を示す。本実施の形態における石炭貯蔵設備において、複数の石炭サイロ41および複数の払出しコンベヤ21を備えることは、図11に示す従来の技術に基づく石炭貯蔵設備と同様である。石炭は、矢印64に示す向きに搬送される。払出し機31は、矢印63に示すように、払出しコンベヤ21の延びる方向に沿って移動する。払出し機31は移動範囲89の範囲内で移動する。
【0051】
本実施の形態における貯蔵設備においては、配置位置85に、本実施の形態における散水装置が配置されている。散水装置は、払出し機31の移動範囲89の範囲内に配置されている。散水装置は、それぞれの石炭サイロ41が形成されている領域を避けた領域に配置されている。散水装置は、石炭サイロ41が形成されている領域の下流側において、石炭サイロ41の近傍に配置されている。散水装置は、それぞれの石炭サイロ41同士の間に配置されている。
【0052】
本実施の形態においては、配置位置86,87に示すように、払出し機31の移動範囲89の外側においても散水装置が配置されている。散水装置は、それぞれの石炭サイロの近傍に配置されている。配置位置87は、払出しコンベヤ21の最も上流側の位置である。この位置においては、払出しコンベヤに石炭は配置されておらず、散水装置は、払出しコンベヤ21のベルトに向けて散水を行なう。
【0053】
図1を参照して、本実施の形態における散水装置は、散水を行なうときに、払出しコンベヤ21の延びる方向と垂直な方向に散水管2が延びるように配置される。散水管2には、長手方向に沿って開口部15が形成されている。この構成を採用することにより、払出しコンベヤ21で搬送される石炭51に向けて、幅方向に均一な散水を行なうことができる。また、搬送物に対して近い距離で直接的に散水を行なうことができるため、搬送物に対する散水量を容易に調整することができる。図1においては、矢印61に示すように、石炭51の幅方向にわたって均一に散水を行なうことができる。
【0054】
また、本実施の形態においては、開口部15の長手方向の長さが搬送される石炭51の幅方向の長さに対応して形成されているため、払出しコンベヤ21のベルト22などに、水がかかってしまうことを抑制できる。この結果、払出しコンベヤ21のベルト22の調芯力を維持することができ、ベルト22の偏りを抑制することができる。
【0055】
本実施の形態における開口部15は、給水手段が接続されている散水管2の一方の端部から遠くなるにつれて、幅が細くなるように形成されている。石炭貯蔵設備などにおいては、設備内に必要な水を高圧で供給する手段を有する場合がある。たとえば、石炭サイロ内で石炭が発火したときの消火設備を本発明における給水手段として用いることができる。この消火水などは、高圧で供給される。給水手段の水圧が高いと、長手方向を有する散水管においては、先端に行くほど水圧が高くなる。このような場合にも、散水管2の先端に向かって幅が細くなるように開口部15が形成されていることによって、搬送される石炭の幅方向に均一な量の散水を行なうことができる。
【0056】
図8に、払出し機のスカート部が散水装置が配置されている領域を通過するときの概略平面図を示す。スカート部33は、矢印68に示す向きに移動する。本実施の形態における散水管2は、回動可能に形成されている。このため、スカート部33が散水管2と当接して、矢印67に示す向きに回動する。このように、本実施の形態における散水装置は、コンベヤの上方を通る移動物の走行を妨げることなく、搬送物に均一な散水を行なうことができる。
【0057】
なお、本実施の形態においては、散水装置が石炭サイロの形成されている領域を避けた領域に配置されているため、スカート部が散水装置の配置されている領域を通る時には、払出し機による石炭の載置は行なわれておらず、散水の必要はない。
【0058】
図3から図6を参照して、散水を行なっているときは、散水管2の長手方向と払出しコンベヤ21の延びる方向とはほぼ垂直になっている。支持枠4に形成された第2突起部12同士の間に、支持棒3に形成された第1突起部11が嵌ることにより、散水管2の散水位置を安定して保つことができる。このとき、補助棒5に接続されたワイヤ6は、張力を有する状態である。
【0059】
払出し機のスカート部が通ることにより、散水管2が回動する。第1突起部11は、第2突起部12同士の間から抜ける。このとき、補助棒5の延びる方向とワイヤ6の延びる方向とがほぼ平行な状態からずれるために、ワイヤ6の延びる方向に補助棒5の端部が引張られる。この結果、散水管2が自動的に回動して、散水管2の長手方向と払出しコンベヤ21の延びる方向とがほぼ平行になる。
【0060】
図7を参照して、配置位置85に示すように、本実施の形態における散水装置は散水管が回動可能なため、払出し機の移動範囲89の内部に配置することができる。たとえば、配置位置85に示すように、石炭サイロ41同士の間に、散水装置を配置することができる。払出し機31は、石炭サイロ41が形成されている領域内で、払出しコンベヤ21に石炭を払い出す。このため、石炭を払出しコンベヤ21に載置した直後に、散水装置で散水を行なうことができ、石炭を効果的に冷却することができる。
【0061】
散水装置においては、石炭を払出しコンベヤに載置した直後のみではなく、たとえば、配置位置87に示すように、払出しコンベヤの最も上流側に配置しても構わない。この構成を採用することにより、払出しコンベヤのベルトに予め散水して、ベルトの昇温によるベルトの撓みや損傷を抑制することができる。
【0062】
本実施の形態においては、支持棒に1個の第1突起部が形成され、支持枠に2個の第2突起部が形成されているが、特にこの形態に限られず、いずれか一方に複数の突起部が形成され、他方の突起部が嵌るように形成されていれば構わない。
【0063】
また、本実施の形態においては、散水管に長手方向を有する長穴の開口部が形成されているが、この形態に限られず、散水管の開口部は任意の形状を採用することができる。たとえば、平面形状が円形の開口部が、散水管の長手方向に沿って複数形成されていても構わない。また、散水装置の給水手段において、散水管が散水位置からずれるときに、水の供給を停止する給水停止手段を備えていても構わない。
【0064】
また、石炭への散水は、循環運転の時のみではなく、石炭ボイラなどに石炭を供給する際に行なっても構わない。
【0065】
本実施の形態においては、コンベヤの上方の移動物として、石炭の払出し機のスカート部が配置されているが、特にこの形態に限られず、任意の移動物に対して、本発明を適用することができる。また、散水を行なう対象物は、石炭に限られず、散水が必要な任意の物に対して本願発明を適用することができる。
【0066】
上記の実施の形態に係るそれぞれの図面において、同一または相当する部分には、同一の符号を付している。
【0067】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に基づく実施の形態における散水装置の概略斜視図である。
【図2】本発明に基づく実施の形態における散水装置の散水管を散水位置から退避させたときの概略正面図である。
【図3】本発明に基づく実施の形態における散水装置の散水管を、散水位置に配置したときの概略断面図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態における散水装置の支持棒と支持枠との接触部分の拡大斜視図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態における散水装置の支持棒と支持枠との接触部分の第1の拡大正面図である。
【図6】本発明に基づく実施の形態における散水装置の支持棒と支持枠との接触部分の第2の拡大正面図である。
【図7】本発明に基づく実施の形態における散水装置の配置を説明する貯蔵設備の概略配置図である。
【図8】本発明に基づく実施の形態における散水装置の散水管が退避するときの概略平面図である。
【図9】石炭サイロの概略断面図である。
【図10】払出し機の概略断面図である。
【図11】石炭の貯蔵設備の概略配置図である。
【図12】石炭の貯蔵設備の構成を説明する概略斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
1 散水装置、2 散水管、3 支持棒、4 支持枠、5 補助棒、6 ワイヤ、7 プーリ、8 ウエイト、9 供給管、10 ホース、11 第1突起部、12 第2突起部、15 開口部、20 支持台、21 払出しコンベヤ、22 ベルト、23 キャリアローラ、24 供給コンベヤ、25 連絡コンベヤ、26 コンベヤ、27 リサイクルコンベヤ、28〜30 受入れコンベヤ、31 払出し機、32 プラウ、33 スカート部、41 石炭サイロ、42 整粒室、43 受入れサンプリング室、44 中継所、51 石炭、60〜79 矢印、85〜87 配置位置、89 移動範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動物の下側に配置されたコンベヤに積載される搬送物に向けて散水を行なう散水装置であって、
前記コンベヤの上方に配置され、長手方向を有する散水管と、
前記散水管を支持する支持手段と
を備え、
前記散水管は、水を供給するための給水手段に接続され、
前記散水管は、前記コンベヤに向かって散水するように形成された開口部を有し、
前記支持手段は、前記散水管の長手方向が前記コンベヤの延びる方向にほぼ垂直な状態からほぼ平行な状態まで回動可能に前記散水管を支持するように形成された、散水装置。
【請求項2】
前記支持手段は、支持枠と、
前記支持枠に対して回動可能に形成され、前記散水管に固定された支持棒と
を含み、
前記支持枠および前記支持棒のうち少なくとも一方に、球状の第1突起部が形成され、他方に球状の第2突起部が複数配列するように形成され、
前記第1突起部および前記第2突起部は、前記散水管の長手方向が前記コンベヤの延びる方向に垂直な方向に配置されたときに、前記第1突起部が前記第2突起部同士の間に嵌るように配置され、
前記第1突起部および前記第2突起部は、前記散水管を回動することにより、前記第1突起部が前記第2突起部同士の間から抜けるように配置された、請求項1に記載の散水装置。
【請求項3】
前記支持棒の端部に配置され、前記散水管の長手方向に略平行な方向のうち、前記散水管が前記支持棒から飛び出す向きと反対向きに延びるように形成された補助棒と、
前記補助棒に接続され、前記コンベヤの延びる方向とほぼ垂直な方向に延びるように配置されたワイヤと、
前記ワイヤの向きを下向きに変換するためのプーリと、
前記ワイヤに接続されたウエイトと
を備える、請求項2に記載の散水装置。
【請求項4】
前記散水管の長手方向の一方の端部に前記給水手段が接続され、前記散水管の長手方向の他方の端部に前記開口部が形成され、
前記開口部は、前記他方の端部の先端に向かうにつれて幅が細くなるように形成された、請求項1に記載の散水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−305528(P2006−305528A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134384(P2005−134384)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】