説明

散水装置

【課題】加圧された水の流れを利用して発電し、この発電した電気を利用して種々の操作を行うことによって、エネルギーコストを大幅に削減した散水装置を提供する。
【解決手段】加圧された水を筐体13内の送水路12に送水し、該送水された水の流れを利用して発電し、当該発電した電気を利用して種々の操作を行い、水をノズル16から放出する散水装置11であって、筐体13には、送水路12の基部に設けられるホースの接続口20と、送水路12に接続した水力発電機14と、送水路12の開閉操作を行うバルブ15と、ノズル16を所定方向へ向ける移動手段17と、種々の操作を無線で行うための無線装置18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄筋コンクリート構造物等の解体工事において、粉塵の飛散を抑制するために散水をおこなう散水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート構造物等を破砕して解体するときには、粉塵が周囲に飛散するのを抑えるために、作業員がホースを手に持って破砕現場に近づき、破砕箇所の周辺に散水をおこなっている。
【0003】
しかし、この散水作業は破砕されたコンクリートガラの上や、不安定な足場上での作業であり、しかも、コンクリート片の直撃や解体物の倒壊の恐れがあり、大変危険を伴う作業である。
【0004】
そこで最近は、高所作業車を改造して、アームの先端に散水ノズルを取り付けた散水機や、油圧ショベルにクレーン型のブームを設けて、その先端に散水ノズルを取り付けた散水機が使用されている。あるいは、作業車の上に貯水タンク、噴射ポンプ及び散水ノズル等を設置した散水装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−31859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来例の散水機においては、ショベルの油圧を利用するか、あるいは、所定の電源からの電気を利用するものであり、いずれの場合もエネルギーコストが掛かるという欠点を有している。
【0007】
また、散水機は、作業員が乗り込んで運転操作を行うものであり、安全性は確保できるが、作業員がホースで散水する場合と同様に人件費が掛かるという欠点がある。
【0008】
従って、従来例における場合においては、エネルギーコストを低減させて、例えば環境に優しいエコ散水システムを開発することと、人件費を抑制して作業コストを低減することとに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、加圧された水を筐体内の送水路に送水し、該送水された水の流れを利用して発電し、当該発電した電気を利用して種々の操作を行い、前記水をノズルから放出する散水装置であって、前記筐体には、前記送水路の基部に設けられるホースの接続口と、前記送水路に接続した水力発電機と、前記送水路の開閉操作を行うバルブと、前記ノズルを所定方向へ向ける移動手段と、前記種々の操作を無線で行うための無線装置とを少なくとも備えることである。
【0010】
また、前記水力発電機で発電した電気を蓄電する蓄電池を備えること、;
前記ノズルの近傍又は前記筐体には、モニターカメラを設置し、該モニターカメラで撮影した画像を所定の記憶装置に記憶させ、該記憶装置に記憶させた画像に基づいて前記移動手段を移動させること、;
前記前記移動手段は、前記ノズルの左右方向の移動及び上下方向の移動をするためのターンテーブル及びモーターであること、;
を含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る散水装置によれば、加圧された水の流れを利用して水力発電機で発電し、この発電した電気を利用して種々の操作を行うので、外部の電源や油圧等を必要とせず、エネルギーコストを大幅に削減できることとなり、環境に優しいエコ散水システムである。
更には、この散水装置は、無線装置を利用するので一人の作業員で2〜3台の散水装置を操作することが可能であり、結果的に人件費が抑制できて作業コストを低減することができるという種々の優れた効果を奏する。
【0012】
また、水力発電機で発電した電気を蓄電する蓄電池を備えることによって、余った電気は蓄電しておき、必要に応じて後から利用できるという優れた効果を奏する。
【0013】
そして、ノズルの近傍又は前記筐体には、モニターカメラを設置し、該モニターカメラで撮影した画像を所定の記憶装置に記憶させ、該記憶装置に記憶させた画像に基づいて前記移動手段を移動させることによって、例えば解体する建物の画像を予め記憶装置に記憶させておき、当該画像と一致した建物に向けて自動的に散水を行うことが可能である。
即ち、散水装置を無人化したロボットシステムとすることが可能であり、人件費を抑制して作業コストを低減することができるという優れた効果を奏する。
【0014】
更に、移動手段は、前記ノズルの左右方向の移動及び上下方向の移動をするためのターンテーブル及びモーターであることによって、ノズルを任意の目標に向かってスムーズに移動させることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る散水装置11の側面を示す、略示的な断面図である。
【図2】本発明に係る散水装置11の平面を示す、略示的な断面図である。
【図3】リモートコントロール装置22を示す、略示的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、図1及び図2において、符号11は散水装置を示し、この散水装置11は、内部に送水路12が配設された筐体13と、送水路12に接続した水力発電機14と、送水路12の開閉操作を行うバルブ15と、ノズル16を所定方向へ向ける移動手段17と、種々の操作を無線で行うための無線装置18とから構成される。
【0017】
筐体13は、所定大きさのボックス型を呈して、持ち運びが自在なように構成されており、その上部には、把手19が設けられている。
【0018】
送水路12は、図示しないホースから加圧された水が送水され、その基部には、ホースの接続口20が設けられている。また、送水路12の先端部には、水を放出するノズル16が設けられている。
【0019】
水力発電機14は、小型の発電装置であって、ホースから送水される加圧された水でタービンを回転させ、その回転力でモーターを駆動させて発電する仕組みである。
なお、水力発電機の構造は、例えば永久磁石とコイルとを組み合わせてタービンの回転で発電するタイプのもの等、様々な種類のものを適宜選択することが可能である。要するに、加圧された水の流れを利用して、羽根車を回転させて発電する水力発電構造であればよいのである。
【0020】
水力発電機14で発電して余った電気は、図示しない小型の蓄電池に蓄電しておくことが望ましい。この場合は、電気を必要に応じて後から利用できる。
なお、この蓄電池に予備端子を設けて外部に電気を送電できるようにすれば、散水以外の用途に電気を利用することが可能である。この場合は、他に電源の無い場所で電気を必要とする工具等を利用できるので便利である。
【0021】
バルブ15は、例えば電磁弁等を用いた構造であり、無線装置18からの所定の操作信号をキャッチして送水路12を開閉操作する。送水路12が開成状態の時は、水力発電機14での発電がなされると共に、ノズル16から水が放出される。また、送水路12が閉成状態の時は、水力発電機14での発電は停止すると共に、ノズル16からの水の放出は停止する。
【0022】
移動手段17は、具体的に一例を上げると、図1及び図2に示すように、ノズル16を上下方向に移動させるためのターンテーブル25と、このターンテーブル25を回動させるモーター26である。更には、ノズル16を左右方向に回動させるためのターンテーブル27と、このターンテーブル27を作動させるモーター28である。
【0023】
これらモーター26又はモーター28が、無線装置18からの所定の操作信号をキャッチして作動し、ターンテーブル25を上下方向に回動させ、又はターンテーブル27を左右方向に回動させることで、ノズル16を任意の方向に向かってスムーズに移動させて散水する。
【0024】
なお、移動手段17の具体的な構成は、上記のターンテーブルとモーターとの組み合わせに限定されるものではなく、例えばベルトやチェーン等を用いて駆動力をノズル16に伝達する構造や、水圧シリンダーで作動する方式等の、様々な構造や方式のものを適宜選択することが可能である。要するに、無線装置18からの所定の操作信号をキャッチしてノズル16の散水方向を変えることができればよいのである。
【0025】
無線装置18は、リモートコントロール装置22(図3参照)から送信される種々の指示信号をキャッチして、上述のように、バルブ15の開閉操作や、モーター26及びモーター28の作動を行う。
なお、図1中の符号23はアンテナを示し、図3中の符号22aはバルブ15操作の指示スイッチを示し、符号22bはモーター26及びモーター28の作動スイッチを示し、符号22cはショルダーベルトを示す。
【0026】
ノズル16の近傍又は筐体13の適宜位置には、モニターカメラ24を設置することが望ましい。この場合、モニターカメラ24で解体する建物の画像を予め撮影し、この撮影した画像を所定の記憶装置に記憶させておく。散水時には、当該記憶装置に記憶した建物の画像と、モニターカメラ24で映し出す建物の画像とが、一致した建物に向けて自動的に散水を行うように設定しておけば、散水装置11を無人化したロボットシステムとすることができる。
【0027】
このような構成の散水装置11は、ショベルのブームの先端、足場の上部、又は梯子の上部等の任意の場所にセットして使用する。散水時には、加圧された水の流れを利用して水力発電機14で発電し、この発電した電気を利用して種々の操作を行うので、外部の電源や油圧等を必要とせず、エネルギーコストを大幅に削減できる。つまり、環境に優しいエコ散水システムである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の散水装置11は、加圧された水の流れを利用して水力発電機14で発電するものであるが、この水力発電機14と併用して又は単独で、ソーラーシステムを利用して発電することも可能である。この場合は、小型のソーラーパネルを適宜の場所に設置して電気を発生させれば、散水装置11と同様に環境に優しいエコ散水システムとなる。
【符号の説明】
【0029】
11 散水装置
12 送水路
13 筐体
14 水力発電機
15 バルブ
16 ノズル
17 移動手段
18 無線装置
19 把手
20 接続口
22 リモートコントロール装置
22a 指示スイッチ
22b 作動スイッチ
22c ショルダーベルト
23 アンテナ
24 モニターカメラ
25 ターンテーブル
26 モーター
27 ターンテーブル
28 モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された水を筐体内の送水路に送水し、該送水された水の流れを利用して発電し、当該発電した電気を利用して種々の操作を行い、前記水をノズルから放出する散水装置であって、
前記筐体には、
前記送水路の基部に設けられるホースの接続口と、
前記送水路に接続した水力発電機と、
前記送水路の開閉操作を行うバルブと、
前記ノズルを所定方向へ向ける移動手段と、
前記種々の操作を無線で行うための無線装置と
を少なくとも備えることを特徴とする散水装置。
【請求項2】
前記水力発電機で発電した電気を蓄電する蓄電池を備えること
を特徴とする請求項1に記載の散水装置。
【請求項3】
前記ノズルの近傍又は前記筐体には、モニターカメラを設置し、該モニターカメラで撮影した画像を所定の記憶装置に記憶させ、該記憶装置に記憶させた画像に基づいて前記移動手段を移動させること
を特徴とする請求項1に記載の散水装置。
【請求項4】
前記移動手段は、前記ノズルの左右方向の移動及び上下方向の移動をするためのターンテーブル及びモーターであること
を特徴とする請求項1に記載の散水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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