整形外科用のセメント混合装置
【課題】整形外科用の骨セメント等を混合して注入するための装置を提供する。
【解決手段】流出開口部を有する混合チャンバーおよび流入開口部を有する分注チャンバーであって、混合チャンバーで混合されたセメントを分注チャンバー内に移動させ得るように、前記流出開口部および前記流入開口部が設けられている混合チャンバーおよび分注チャンバーと、混合チャンバーの流出開口部と分注チャンバーの流入開口部とを分断する第1位置を有する封鎖手段と、混合チャンバーおよび分注チャンバーに真空を供給する手段と、を含み、混合チャンバーと分注チャンバーとの一方から他方へ、供給する前記真空を切り替えるスイッチ手段をさらに含むことを特徴とする整形外科用のセメント混合装置。
【解決手段】流出開口部を有する混合チャンバーおよび流入開口部を有する分注チャンバーであって、混合チャンバーで混合されたセメントを分注チャンバー内に移動させ得るように、前記流出開口部および前記流入開口部が設けられている混合チャンバーおよび分注チャンバーと、混合チャンバーの流出開口部と分注チャンバーの流入開口部とを分断する第1位置を有する封鎖手段と、混合チャンバーおよび分注チャンバーに真空を供給する手段と、を含み、混合チャンバーと分注チャンバーとの一方から他方へ、供給する前記真空を切り替えるスイッチ手段をさらに含むことを特徴とする整形外科用のセメント混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形外科用の骨セメント等を混合して注入するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
整形外科用の骨セメントは、解剖学的に適切な位置に臀部、膝その他の人工器官を固定するために世界中で使用されている。骨セメントは、通常はメチルメタクリレートモノマーの液体およびポリメチルメタクリレートのパウダーという2つの成分を互いに完全に混合することにより製造される。かかる混合は、単にボウルおよびスパチェラを使用して、事前に行なわれる。その後、外科医は必要量のセメントを取り除き、成形キャビティ内にこのセメントを入れる前にまたは人工器官が配されるべきところの切除された骨表面にこのセメントを適用する前に、そのセメントを手で処理する。セメントは、手で使用してもよいし、またはシリンジ内に入れて使用してもよい。
【0003】
真空下での混合構造を提供することを含め、いくつかの改良がこの混合構造になされており、混合効率を改善し、均質なセメント材料をもたらしている。
【0004】
通常は真空下にあるセメント混合装置が現在いくつか利用可能であり、一般に使用されている。
【0005】
利用可能な装置のなかでは、ボウル型混合器およびシリンジ混合器の形態が好ましい。
【0006】
ボウル型混合器は、通常、手持ち型の混合ボウルの形態で与えられる。混合されるべき材料は、真空が供給されるボウル中に配される。この材料はボウル内に伸張している回転パドルを用いて混合され、この回転パドルはボウルの蓋を通して伸張しているハンドルを用いて手動で回転される。いくつかの用途においては、欧州特許出願公開第0616552号公報に開示されている実例のような混合ボウルを使用することが好ましい。多くの外科医はセメントを手作業パックすることを好む。ボウル混合は、この容器で混合する便利さに慣れている看護師にも好まれる傾向にある。ボウルは使い易く、タイミングが極めて重要であり、混合は最初に適切にされなければならないので、看護師が自信を持つことが重要である。多くの外科医もボウル混合を好む傾向にある。経験豊かな外科医が手で触ることにより、セメントを骨の空洞に適用するのに丁度良いタイミングを伝え、かかるセメントを適用する前に混合をセットし始めない、ということが極めて重要である。
【0007】
これらのボウル混合器は普及しており、とても良く知られている。かかるボウル混合器は使用し易く、使用者の技量レベルとは関係なく再現可能で均一な混合を行なうことを可能にし、ボウルに使用される混合のコンセプトは単純であり看護師に良く知られている。ボウル型混合器は、あらゆるタイプおよびさまざまな量のセメント混合に使用することができる、という点で極めて適応性があるものである。高真空が供給されるボウル混合器においては、セメントは気孔率が低くなり、故に高強度になる。
【0008】
欧州特許出願公開第0616552号公報のボウル混合器においては、かかるボウル混合器は固定軸を有するパドルではなく回転軸を有するので、セメントはかなり十分に混合され、デッドスポットすなわちセメントの非混合領域が生じる可能性は極めて小さい。
【0009】
幾つかの用途においては、混合セメントはシリンジを用いて骨または骨の空洞に適用されることが望ましくまたは必然的でさえある。実際に、多くの外科医は手作業パックよりシリンジ型の使用を好む。
【0010】
かかる使用に関して、前述のようにセメントがボウル中で最初に混合される場合には、その後、分注シリンジに移動させなければならない。この移動は面倒であり且つ時間がかかり、混合物がさらに空気を取り込む可能性がある。セメント中に空気が導入されることにより、弱いセメントが製造され明らかに不利となる。
【0011】
この問題を克服するために、混合チャンバーとシリンジとを組み合わせた混合装置が設計されている。例えば、欧州特許出願公開第0178658号公報は、供給装置と連結した混合チャンバーを含む骨セメント混合装置を開示している。真空源は、真空下で材料を混合する供給装置に連結している。この装置は、極めて効率の良い混合システムおよび移動システムであることが判明しており、混合セメントを混合ボウルからシリンジに移動する必要性を除去する。
【0012】
米国特許第4,758,096号公報および米国特許第3,606,094号公報も、セメントが分配容器自体で混合される骨セメント混合器を開示している。これらのうちの最初の特許では、混合はシャフトの板型攪拌器であるマッシャーを用いて手動でなされる。マッシャーの板は、ハンドルに取り付けられた柄に取り付けられている。攪拌器は、軸方向におよび回転自在にチャンバー内で可動であり、使用者によるセメントの混合と、垂直および回転自在なハンドル動作と、を可能にする。しかし、かかる混合作業は難しく非効率的であり、セメントの完全混合を保証するものではない。マッシャーの不完全動作により、非混合パウダー領域がもたらされ、混合は均一ではなく使用者の一貫性に依存する。
【0013】
マッシャー型システムに付随する別の問題は、このプランジャーを使用して標準粘度のセメントを混合することが難しいということである。板がセメント内に押し下げられると、かかる板は高抵抗を受け不完全混合動作のみが実施され、セメントは混合チャンバーの底面に密集する結果となり得る。
【0014】
他には、改良されたシリンジ内混合型の混合器が、例えば独国特許発明第883326号公報および欧州特許出願公開第0744991号公報に開示されている。
【0015】
先と同様に、これらのシリンジ内混合型の混合器はとても良く知られており普及してきている。
【0016】
シリンジ内混合型の混合器は、相対的に少量のセメントが混合され使用されるので極めて有用である。市販のほとんどの混合器は、現在の通常使用(例えばシンプレックスセメント)における最大量の2倍まで混合できるように設計されている。
【0017】
いくつかの異なるタイプのセメントが、整形外科の用途において通常使用されている。これらのセメントは極めて異なる特性および量を有し、異なる粘度をも有している。以下の表1は、最も一般に使用されている3つのタイプのセメントを示しており、乾燥パウダーの概算量と混合セメントの対応量とを示すものである。
【0018】
【表1】
【0019】
上記の表から、シンプレックスのようなセメントは、同量の混合セメントを製造するために大体3倍の乾燥パウダー量を有していることが分かる。
【0020】
従って、一般的にシリンジ内混合型混合器に関しては、たとえ混合セメントの実質量が相当に少ない場合でさえ、通常使用される最大量のセメントの2倍の乾燥パウダーを混合できるに足りるほど、混合チャンバーは大きくなければならない。この為に、一般的に、シリンジまたは混合チャンバーの本体は、他のタイプのセメントが必要とするよりも実際にかなり大きくなり、他の少量セメントが必要とするよりも長い混合動作が必要とされる、ということを意味する。
【0021】
場合によっては、外科医は例えば3倍の混合のような大量のセメントを準備する必要がある。例えば、置換手術においてまたはある種のプライマリーヒップ(primary hips)の為に大量のセメントが必要とされる。
【0022】
かかる大量のセメントは、一般的に、例えば欧州特許出願公開第0616552号公報で説明されているようなボウル型混合器で混合される。しかし、シリンジ型混合器では、より大量のセメントを混合することができるように混合チャンバーの容積を単に増やすことが、一般的に可能ではない。大量のセメントに対応できるように混合チャンバーの高さを増やすことは実現可能ではない。このことは、装置が大きすぎて楽に操作することができない、という結果をもたらすからである。チャンバーの長さが長くなるほど、正確なアライメントでカラムを通して混合パドルを導入し、正確にパドルを位置付けることが難しくなる。このことは、セメントが濃厚である場合に特にそのようであり、効率的な混合をするためにパドルを押し下げることを極端に難しくさせる。
【0023】
従って、不必要に大きくないが、使用するセメントがシンプレックスのような大量のセメントである場合でさえ、例えば3倍のセメントのような大量混合を可能にする効果的、効率的で操作し易い一体型混合器およびシリンジ型の整形外科用のセメント混合器が必要とされる。
【0024】
この問題に対処することを目指した混合器はストライカー社(Stryker)(ストライカー混合器)により製造されており、米国特許第5,558,136号公報および関連特許において説明されている。この混合器は、円筒型シリンジ本体である混合チャンバー内に通じる漏斗部を含む。混合パドルは漏斗部を通って伸長し、この漏斗部の蓋におけるハンドルを用いて回転される。その後、大量のパウダーが漏斗を通して装置内に加えられることができる。モノマーが加えられ、セメントパウダーとモノマーとが混合されると、結果として得られる混合物はシリンジ本体内に収まるような少容積を有する。その後、漏斗部は除去され、シリンジガンおよびノズルに取付けるために、単にシリンジ本体が残される。しかし、この装置は混合されてシリンジ本体である混合チャンバー内に重力で落下するような低粘度セメントの使用に依存している。混合物が練り上がり始める前に、モノマーを加えるやいなや混合段階を早急に始める、ということも非常に重要である。
【0025】
問題は、セメントが減るにつれて、シリンジ本体である混合チャンバー内に落下しない非混合パウダーが漏斗内に残置される可能性があるということである。
【0026】
これによって、漏斗部が除去される際に、非混合パウダーが混合セメント中に落下することとなり、結果としてドライスポットまたはデッドスポットの原因となり、故に砕け易いセメントがもたらされる。
【0027】
他の問題は、標準セメントを混合する際または混合が早急に始まらないところでは、練り上がりつつあるセメントが漏斗の壁およびパドルに付着し、高損失をもたらす。
【0028】
欧州特許出願公開1257237号公報は整形外科用のセメント混合装置を開示しており、この装置は分注シリンジの本体を形成するように構成された、第2の円筒型混合チャンバーの一端に着脱自在に取り付けられた第1の漏斗またはボウル型の導入チャンバーと、第1および第2のチャンバーを通って伸長する回転自在なシャフトを含む混合構造と、を含み、このシャフトは少なくとも1つの半径方向に伸長しているブレードを含む。第1のチャンバーにおけるブレード外形は、第2のチャンバーの方向へ内向きに先細りになっており、第2のチャンバーの長さ方向に実質的に沿って伸長している。しかし、この混合器はかなり複雑な設計を有しており、結果として高い製造コストをもたらす。また、特に高粘性セメントでの混合は、相対的に長い混合チャンバーにおいては難しく、混合ブレードは特に頑丈である必要がある。装置の形も、混合中にとりわけ手に保持しにくい。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0616552号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第0178658号公報
【特許文献3】米国特許第4,758,096号公報
【特許文献4】米国特許第3,606,094号公報
【特許文献5】独国登録特許第883326号公報
【特許文献6】欧州特許出願公開第0744991号公報
【特許文献6】米国特許第5,558,136号公報
【発明の開示】
【0029】
本発明は、相対的に大量のセメントをも混合することができる効果的、効率的な混合システムを与えることを目指すものである。
【0030】
前述のように、より好ましいセメントはシンプレックス(Simplex)およびパラコスR(PalacosR)である。これら両方のセメントは広く用いられているが、パラコスRがヨーロッパで好まれるのに対して、米国において好まれるセメントはシンプレックスである傾向にある。パラコスRは、シンプレックスよりもかなり粘性のあるセメントである。
【0031】
先行技術においては、米国特許第5,558,136号公報に開示されているような、いわゆる混合放下システム(mix and dump system)があり、真空が混合チャンバーおよびシリンジの両方に供給され、これは例えば、これら部分の周囲の真空シュラウドを用いてなされる。その後、混合チャンバーにおいてセメントが混合され、この段階では、混合チャンバーの底面の開口部とシリンジ本体の上面との間に位置付けされたピストンによって、このチャンバーはシリンジの円筒体から分断されている。
【0032】
セメントが完全に混合されると、プランジャーはその位置からピストンをはずすように押し下げられる。その後、ピストンおよび混合セメントは重力下でシリンジ内に落下し、ピストンはシリンジの底面に、混合セメントはシリンジ本体内に落下するようになる。その後、混合チャンバーは除去され、分配ノズルがその位置に取り付けられ、例えばプランジャーまたはディスペンサーガンを用いて、ピストンをシリンジ本体の後方に押すことにより、混合セメントが分配されることができるようにする。
【0033】
混合中、周囲温度の僅かな増加はセメントの粘度に多大な影響を及ぼし、たった数度の温度増加がセメントの粘度を著しく増加させる結果となる。摩擦により保持され、重力下で落下するピストンに依存したシステムに付随する問題は、例えばパラコスのような高粘性セメントまたは温度の増加により粘性が増加するシンプレックスのような低粘性セメントを用いると、混合セメントは真空下でシリンジ本体内に容易に落下しない、ということである。さらに、磨耗、製作上の公差の変化等および遊動パウダー粒子またはセメントは、ピストンのシリンジ底面への落下を妨げる。従って、混合セメントが、移動準備ができているシリンジ本体内に放下される放下段階は、いつも効率的に終了するとは限らない。
【0034】
本発明の1つの態様は、整形外科用のセメント混合装置を与えることによりこの問題を解決することをも目指すものであり、このセメント混合装置は流出開口部を有する混合チャンバーおよび流入開口部を有する分注チャンバーであって、混合チャンバー中の混合セメントを分注チャンバー内に移動させ得るように、流出開口部および流入開口部が設けられている混合チャンバーおよび分注チャンバーと、混合チャンバーの流出開口部と分注チャンバーの流入開口部とを分断する第1位置を有する封鎖手段と、混合チャンバーおよび分注チャンバーに真空を供給する手段と、を含み、混合チャンバーと分注チャンバーとの一方から他方へ、供給される真空を切り替えるスイッチ手段をさらに含むことを特徴としている。
【0035】
この構造において、好ましい実施例では、その第1位置における封鎖手段は、望ましくは分注シリンジの円筒体である分注チャンバーの上部に配されるピストンである。セメント構成成分が混合チャンバー内に加えられ、シリンジ本体は大気圧であるが、混合チャンバーに真空が供給されるように真空スイッチが入れられる。
【0036】
従って、セメントは真空下で完全に混合され、砕け易いセメントをもたらす空気の導入を回避する。同時に、圧力が相違していることにより封鎖部材またはピストンを適当な位置に保持し、セメントが分配器本体内に落下することを回避する。
【0037】
ひとたびセメントが完全に混合されると、そのセメントはシリンジ本体内に放下される必要がある。従って、真空スイッチが入れられ、シリンジ本体に真空が供給される一方、混合チャンバーは大気圧になる。この圧力差により、封鎖部材またはピストンは分配本体内を底面へと引かれ、これとともに混合セメントが引かれて、全てのセメントが分配本体またはシリンジ中に配されるようになる。その後、混合チャンバーは除去され、その位置にノズルが取り付けられ、ノズルに対して前方の分配本体の底面に位置する封鎖部材またはピストンを押すことにより、セメントを分配することが可能になる。
【0038】
かかる真空スイッチ構造は、現存の混合放下タイプの混合構造に組み込むことができ、例えば、前述の問題への解決策として、前述のストライカーシステムの真空シュラウドと置き換えて使用することができる。
【0039】
ストライカーシステムのような混合放下システム内に組み込まれたこの真空スイッチ構造が、シンプレックスのような低粘度セメントによく機能し、および相対的に低温度においてもよく機能する、ということを発明者は見出した。
【0040】
かかる構造は、セメントおよびピストンが前述のように重力下で落下するストライカーシステムについての改良である。しかし、本発明のこの態様は、前述のピストンが自由落下する問題を解決するが、高温においておよび/または高粘度セメントを用いる場合には、混合システムにおけるセメント損失量は依然として相対的に高い。さらに、例えば欧州特許出願公開第0616552号公報に開示され、本出願の序論で説明されているボウル混合器におけるような変わった混合パドルは混合効果を向上させる、ということが経験によって分かっている。
【0041】
ストライカー混合器の業務実施例に組み込まれている損失問題に対する1つの解決策は、シャフトの両側にパドルを伸長することである。パドルは、混合中に中心シャフトとともに回転し、混合中に混合漏斗または混合チャンバーの内側周囲を連続的に回転するように用意され配置される。これによって、損失量が低減されることが見出されている。その理由は、スクレーパーが連続的に混合チャンバーの内壁周囲をこすることにより、壁から混合セメントをこすり、混合セメントを混合チャンバーとシリンジ本体との間の開口部に対して下方に堆積させるからである。混合ブレードまたはパドルに付着した少量のセメントおよび金属スクレーパーに付着した少量のセメントが唯一の顕著な損失である。このことは損失問題に対する幾つかの解決策を与える一方、混合セメントの質の問題を解決するものではない。前述のように、ボウル型混合器および/またはハンドルを回転させる間、蓋の上面を保持することができる混合器を看護師は好むことが見出されている。
【0042】
従って、本発明のさらなる態様に従って、整形外科用のセメント混合装置が与えられており、かかるセメント混合装置は、流出開口部を有する混合チャンバーおよび流入開口部を有する分注チャンバーであって、かかる流出開口部と流入開口部との間でセメントが流通する混合チャンバーおよび分注チャンバーと、さらに前記混合チャンバー内に伸長している混合パドルと、歯車機構により前記パドルに回転自在に連結したハンドルと、を含み、かかるハンドルはこのハンドルの回転により、前記パドルが自己の軸周りに回転すると同時に、チャンバー内でパドルの回転軸が移動するように配置されることによって、チャンバー内部領域における実質上全てのセメントの周りをパドルが移動するようになる。例えばPCT国際出願公開第WO93/10892号公報に説明されているものと同様であり得る、この特有の混合構造は、いわゆる混合放下システムに、良質な混合という利点を与える。特有の利点は、本発明の第1の態様の真空スイッチ構造とこのシステムを組み合わせることにより与えられる。もっとも好ましい実施例においては、混合チャンバーは前述のPCT国際出願公開第WO93/10892号公報に説明されているようなボウル混合器であり、その理由は前述のように、このチャンバーはそのボウル形状のため操作し易く、また使用者が片手でふたを保持し、もう一方の手でハンドルを回転することができるからである。本発明の第1および第2の態様を組み合わせることにより、セメントをより完全に混合し、良質なセメントを与え、且つ前述の自由落下システムを超える改善された放下機構をも有する混合放下タイプのシステムが与えられる。欧州特許出願公開第0616552号公報に説明されているボウル混合器におけるような中心ずれした混合システムを有するこの特有の構造は、高温ですなわち高粘度セメントを混合する際に、特にパラコスおよびセメントに関して、実質的にかなり良質の混合セメントを与えることが判明している。
【0043】
上述の中心ずれした構造では、前述のような伸長しているパドルを有するストライカーシステムよりも、損失量は相対的に少ないが依然として多いことが見出されている。欧州特許出願公開第0616552号公報の中心ずれしたパドルは、ボウルの内部表面にずっと半径方向に伸長しているパドルであって、側面のセメントをこすり、それを混合物中に至らしめるように底面へと方向付けるパドルを有している。しかし、ボウルの側面に伸長しているパドルのこの特徴の主要目的は、非混合パウダーをボウルの側面からセメント内に落下させ、混合の質を改善するように混合中にセメントを切り混ぜることである。混合パドルがボウル周囲を回転する際に、自己の軸周りを回転するという事実により、このパドルは連続的にボウルの内側周囲をこすらずに、むしろボウルの内部表面に接触して移動し、継続的にボウル内側上に残るセメント残余物の小鈍鋸歯状パターンを残す。この問題を解決するために、第3の態様による本発明は整形外科用のセメント混合装置を与え、かかるセメント混合装置は、混合チャンバーと、前記チャンバー内に伸長している混合パドルと、歯車機構により前記パドルに回転自在に連結したハンドルと、を含み、かかるハンドルはこのハンドルの回転により、前記パドルが自己の軸周りを回転すると同時に、チャンバー内でパドルの回転軸をも移動するように配置されることによって、チャンバーの内部領域における実質上全てのセメントの周りをパドルが移動するようになり、スクレーパー部材が同方向または反対方向にパドルの回転軸とともに回転するように、前記歯車機構に連結していることを特徴とする。スクレーパーの形状は、歯車機構から混合チャンバーの内壁に半径方向に伸長し、混合チャンバーの内壁形状と整合するように軸方向に伸長していることが望ましい。従って、回転パドルがボウル周囲および自己の軸周りに回転する際に、スクレーパーは内壁からセメントをこすりながら混合チャンバーの内壁周囲を回転する。
【0044】
この特有のパドルおよびスクレーパーの構造は、PCT国際出願第WO93/10892号公報に説明されている手持ち式のボウルのようなあらゆるタイプの混合装置において利益をもたらすであろう。パドルおよびスクレーパーの構造は、前述のいかなる混合放下システムの混合チャンバー内に有利に組み込まれることができる。
【0045】
スクレーパーの好ましい設計では、スクレーパーは混合チャンバーの側壁のセメントをこすって損失を減じるだけでなく、混合セメントの質を改善する混合効果にも寄与する。
【0046】
かかる構造を使用することにより、混合チャンバー内での損失はほとんどなくなり、主要パドル上の少量の損失だけになる、ということが試験により見出された。
【0047】
混合放下システムにおいて、最初にセメントは混合チャンバー中で混合された後、シリンジを用いて分配されるように円筒型のシリンジ本体内に放下される。
【0048】
前述のように、米国特許第5,558,136号公報に説明されているような従来のシステムにおいては、ピストンは、混合中にシリンジ本体に取り付けられた混合ボウルの底面の中央開口部を封じるように配され保持される。その後、ひとたびセメントが混合されると、ピストンは例えばその固定位置からプランジャーを用いて取り外された後、重力およびセメント重量を受けてシリンジの底面に落下する。本発明の第1の態様を使用する別の実施例においては、ピストンは重力下で落下せず、真空が混合チャンバーからシリンジ本体に供給される際に落下し始め、その後、ピストンは真空下でシリンジの底面まで引かれる。
【0049】
この構造の1つの問題は、真空が供給されるまで、ピストンは混合チャンバーとシリンジとの間の位置に摩擦により保持され、その後、シリンジの底面まで落下するということである。この摩擦を利用した構造は、極めて正確な寸法および調整を必要とし且つ老朽化およびかかるシステムにおいて通常行なわれる殺菌工程等により影響され得る。従って、これらの影響のため、ピストンが必要とされる時に落下しない可能性があり、または逆に、例えば運搬中などの必要とされない時に落下する可能性がある。
【0050】
さらなる態様によれば、本発明は整形外科用のセメント混合装置を提供することにより、この問題に対する解決策を与えるものであり、かかるセメント混合装置は、流出開口部を有する混合チャンバーおよび流入開口部を有する分注チャンバーであって、かかる流出開口部と流入開口部との間でセメントが流通する混合チャンバーおよび分注チャンバーと、流出開口部を流入開口部から隔てて混合チャンバーから分注チャンバーへのセメントの流動を妨げる、第1位置にある封鎖手段と、をさらに含み、この封鎖手段は、着脱自在の締結手段により、その第1位置に保持されることを特徴とする。かかる着脱自在の締結手段は、例えば分注チャンバーの壁を通して、前述のピストンのような封鎖部内に達する取り外し自在のピンであってもよい。その後、ピンが使用者により除去されると、例えばピストンのような封鎖部材は、重力下または本発明の第2の実施例に関連して説明されているような圧力差の下で、分注チャンバーの底面に自由落下する。他の実施例において、着脱自在の締結手段は、封鎖部材の壁と分注チャンバーの内壁との間に摩擦把持を与えるサイズのOリングで与えられる。この構造では、分注チャンバーの底面に落下した後、望ましくは混合セメントの分配に使用されるピストンである封鎖部材は、かなり軽量でありとりわけ頑丈ではない。従って、混合セメントを分注チャンバーから押し出すために、ピストンが逆方向で使用されると、かかるピストンは相対的に高粘度なセメントを前方に押し出すのに足りるほど頑丈ではない、ということが問題になる。従って、好ましい実施例においては、Oリングが分注チャンバーの底面に達したとき、例えばカラー(collar)またはさらなるピストンのようなさらなる部品と係合し、シリンジの内壁と堅いシールが半径方向に外側に形成されるようにOリングを適合させる。
【0051】
この特有な封鎖部の構造は、前述の周知である混合放下システムで使用されることができる。しかし、この構造は、チャンバー間で供給される真空を切り替えるシステムにおいてよりもむしろ、混合チャンバーおよび分注チャンバーに混合および放下の全工程中に同時に真空が供給されるシステムにおいて組み合わせて使用されることが望ましい。その理由は、第1位置にあるOリングが気密シールを与えず、セメント中に空気がリークする危険があるからである。
【0052】
Oリング機能の好ましい実施例においては、封鎖部材またはピストンは軽いシールまたは混合チャンバーとシリンジとの間の位置にピストンを保持するのに十分なOリングで与えられる。混合後に真空が供給されると、その後ピストンはシリンジの底面に落下する。この底面には、ピストンおよびOリングと係合するさらなる部材が与えられ、シリンジの内壁と固いシールを形成するようにOリングを圧出し、その後、ピストンおよびこの付加的の部材はセメントを分配するためにデリバリーガンにより上方へ押し上げられ、固いシールが与えられる。
【0053】
この構造は現有システムの改良であるが、搬送中にこのシールはシリンジの上部位置に十分しっかりと保持されないということが見出された。
【0054】
その後、混合中に混合チャンバーとシリンジとの間の位置にピストンを保持する最良の方法としてさらなるアイデアが検討された。例えば、止めピンおよび固定タブ等を提案するアイデアもあった。しかし、どれもが理想的であるとはみなされなかった。
【0055】
さらなる開発により、混合チャンバーとシリンジとの間の最上部にピストンを配さず、混合セメントを分配するシリンジの底面にただピストンを配するだけ、というアイデアがもたらされた(これは、PCT国際出願第WO95/22402号公報に説明されているような混合器である)。その場合に、ピストンは、ノズルを通して混合セメントを強制排出させるために十分頑丈で丈夫なピストンであり得るが、重力下で落下するために、または真空下で引き下げられるために、十分軽い必要はない。
【0056】
もちろん、混合中に混合チャンバー中にセメントを保持し、セメントがシリンジ内に落下することを妨げるための何らかの手段を有することが必要であるが、その後、混合セメントがシリンジ内に落下することを可能にすることが必要である。
【0057】
これらの問題に対する解決策は、整形外科用のセメント混合装置を与える本発明のさらなる態様によって見出され、かかるセメント混合装置は、流出開口部を有する混合チャンバーおよび流入開口部を有する分注チャンバーであって、この流出開口部と流入開口部との間でセメントが流通する混合チャンバーおよび分注チャンバーと、混合チャンバーから分注チャンバーへのセメントの流動を妨げるように、流出開口部と流入開口部とを分断する封鎖手段と、をさらに含み、この封鎖手段は封鎖位置と開放位置との間で可動であり、封鎖位置によって混合チャンバーから分注チャンバーへのセメントの流動が妨げられ、開放位置によってセメントは混合チャンバーから分注チャンバーへと流通することができる。
【0058】
1つの可能な封鎖部材はトラップドアの構造であり、スライド自在な封鎖部材により底面で閉じられた混合チャンバーにおいてセメントが混合され、その後セメント混合後に、このスライド自在な封鎖部材は開放または取り外された後、セメントはシリンジ内に落下する。
【0059】
1つの実施例は、封鎖部材が混合チャンバーと分注チャンバーとの間にスライド自在に配された板を含むような引き抜き用トラップドア設計を使用しており、この板はその封鎖位置において、混合チャンバーから分注チャンバーへのセメントの流動を妨げる封鎖部分と、流出開口部と流入開口部とを位置合わせしてセメントがそれを通して流通することを可能にする開口部分と、を有しており、かかる板はスライド自在に配され、使用者がその板を第1位置に引くことにより、封鎖部分を流入開口部と流出開口部との間に位置付けすることができ、第2位置においては開口部分が流入開口部と流出開口部との間に位置付けされる。この板は、簡単な使用のためにハンドルまたは引き手リングで与えられてもよい。
【0060】
しかし、この実施例の1つの問題点は、製造物および余分な構成部品の供給が必要とされるため、コストが増加し、さらに板が完全に取り外されたり、なくなったりする可能性がある。また、この板は混合装置の外のり寸法を明らかに増すものである。
【0061】
従って、現在好ましい実施例においては、封鎖部材はチャンネルまたは流通路を定めるタップであり、このタップは混合チャンバーと分注チャンバーとの間に取り付けられる。混合中に、チャンネルまたは流通路は、混合チャンバーの流出開口部と分注チャンバーの流入開口部とが繋がらないように配される。混合後に、タップは装置の外側に伸長しているスイッチまたはハンドルにより回転され、チャンネルまたは流通路が混合チャンバーの流出部および分注チャンバーの流入部と位置合わせされた後、セメントは混合チャンバーから分配器へと落下することができるようになる。
【0062】
他の実施例においては、貫通孔を有するボールがタップの代わりに封鎖部材として使用され、混合チャンバーと分注チャンバーとの間に配されることができる。混合中に、チャンネルまたは流通路は、混合チャンバーの流出開口部および/または分注チャンバーの流入開口部が繋がらないように配される。混合後、このボールをハンドルによって回転させ、貫通孔を混合チャンバーの流出部および分注チャンバーの流入部に位置合わせし、セメントが混合チャンバーから分注チャンバーへと落下することを可能にする。
【0063】
これらの封鎖部材の構造は、いかなる混合放下システム内にも組み込むことができ、利点を与えることができると考えられる。
【0064】
しかし、かかる構造をもってしても、最初に説明した真空スイッチ構造は実際に理想的ではない。その理由は、タップまたはボールが完全にシールされていない場合に、混合中に空気がシリンジから混合チャンバー内に混入する可能性があるからである。従って、この構造では、理想的には真空を全装置にわたって供給する必要があり、すなわち混合中および放下中ともに混合チャンバーおよびシリンジに真空が供給される必要がある。
【0065】
従って、好ましい装置は先願のPCT国際出願第WO93/10892号公報に記載されたサミット(Summit)ボウルの中心ずれした混合構造を、逆回転するパドルおよびスクレーパーとともに組み合わせたものであり、球状の封鎖部材を有し、混合チャンバーとシリンジとの両方に真空が供給されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明による混合装置の第1の実施例を示す図である。
【図2】本発明の実施例のピストン封鎖部材の構造を示す図である。
【図3】図2の実施例の別のピストンの構造を示す図である。
【図4】さらなるピストンの構造を示す図である。
【図5】図4の構造の外観図である。
【図6】本発明の1つの態様による封鎖構造の実施例を示す図である。
【図7】異なる封鎖部材の構造を有する装置の、さらなる実施例の断面図である。
【図8A】封鎖部材の実施例を示す図である。
【図8B】封鎖部材の実施例を示す図である。
【図8C】閉鎖位置にある、混合器に配された図8Aの封鎖部材を示す図である。
【図8D】開放位置にある、混合器に配された図8Bの封鎖部材を示す図である。
【図9】タップ封鎖部材を有する混合器の開放位置での断面図である。
【図10】タップ封鎖部材を有する混合器の閉鎖位置での断面図である。
【図11】封鎖部材を格納するカラーを示す図である。
【図12】図11のカラーと対応させて使用する混合チャンバーを示す図である。
【図13A】開放位置にある封鎖部材を有する混合器の他の実施例を示す図である。
【図13B】封鎖位置にある封鎖部材を有する混合器の他の実施例を示す図である。
【図14A】好ましい実施例による混合器の断面斜視図である。
【図14B】好ましい実施例による混合器の上部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明の好ましい実施例を、添付図面を参照して例示の目的で説明する。
【0068】
最初に図1を参照すると、混合装置は第1のボウル型混合チャンバー1と、第2の円筒型の混合チャンバー2と、を含む。混合パドル3は、回転自在なシャフト4により支持された少なくとも1つのブレードを有し、混合チャンバーまで伸長している。従って、シャフトおよび混合パドルは、ハンドル5を用いて回転される。このハンドルは、漏斗部1の上面上に密閉して取り付けられるようになされた蓋6に実装されている。歯車機構7は、混合チャンバー周囲にシャフト軸を回転させるのと同様に、自己の軸周りをシャフト4が回転するように与えられる。
【0069】
好ましい歯車機構は、ハンドル5の回転軸に対して同軸上に配置された、固定で円形の棚受け8を含む。混合パドル3は、シャフト4に実装され半径方向に伸長している混合ブレード9を含む。このシャフト4は、ハンドル5の一端に回転自在に実装される。歯車10は、棚受け8と互いにかみ合うように、シャフト4の上部に固定して取り付けられる。
【0070】
蓋は、真空ポンプ(図示せず)に接続された真空ポート(図示せず)とともに与えられることが望ましい。蓋6は、当該蓋6と混合チャンバー1のへりとの間を密封するシール11とともに与えられることが望ましい。固定手段(図示せず)が、蓋6と混合チャンバー4との間に与えられてもよい。これらの手段について以下にさらに説明する。
【0071】
混合チャンバー1は、混合シリンダー2の一端上にシーリング固定して取り付けられる。この連結は、例えば押し込み式またはネジを用いてなされてもよい。
【0072】
図に示された実施例においては、混合セメントを排出するプランジャー12は、混合チャンバー間にスライド式に配される。図5〜7に関して説明される他の実施例においては、プランジャー12はシリンジ2の一端にスライド式に配される。このシリンジ2の他端は、スタンド13で支えられるように構成されており、対応するネジによりかかるスタンドに固定されてもよい。シールが、シリンダー本体1とスタンド13との間に与えられてもよい。
【0073】
真空が蓋におけるポートを経由して混合チャンバーに供給され、スタンドにおけるポートを経由して分注シリンジにかけられる。スイッチ構造が真空ライン中に与えられ、混合チャンバー、および分注チャンバーまたはシリンジに選択的に真空が供給されることを可能にする。
【0074】
混合装置の使用方法を説明する。
【0075】
図1に示されているように、混合装置は組み立てられた形態で使用者に提供される。
【0076】
1つの実施例においては、装置は事前充填装置として与えられる。すなわち、セメントは、例えば閉鎖バッグまたは他の保持手段で、混合器中にあらかじめ与えられる。
【0077】
事前充填容器の場合には、閉鎖バッグまたは保持手段は除去され、チャンバー中にセメントを残置する。
【0078】
または、混合器を事前充填しない場合には、蓋6および付属の混合構造は取り外され、セメントパウダーが混合チャンバー内に入れられる。
【0079】
ボウル形状は、大量の乾燥セメントパウダーが入れられることを可能にし、上方幅広部によりセメントをこぼすこと無く入れることが容易になる。
【0080】
その後、モノマーのアンプルが割られて混合チャンバー中のセメントに加えられ、蓋はチャンバー上の開口部とシーリング固定して元の位置に戻される。
【0081】
混合が真空下で行なわれる場合に、真空ポートはPVC管(図示せず)を経由して、真空を形成する真空ポンプに接続される。この第1の実施例においては、混合チャンバーに真空が供給されるように真空スイッチが入れられるが、分注チャンバーは大気圧である。他の実施例においては、両方のチャンバーに真空が供給される。その後、セメント構成成分の混合は、使用者がハンドル5を回転することによって行なわれる。混合装置一式は手に保持してもよいしまたはベース13で設置されてもよく、テーブルのような平面上で支持されてもよい。
【0082】
損失量は低減し、図14Aおよび図14Bにおいて最も明瞭に示されている付加的なスクレーパーパドル14によって、混合効果が改善する。このスクレーパーパドルは、セメントを切り混ぜるために相対的に薄い断面を有するべきであるが、混合を助けるようにパドル形状をしており、さらにボウル表面からセメントをこするように、ボウル内壁まで伸長している。このスクレーパーパドルは歯車機構7に取り付けられ、混合中にハンドル5が回転されるとき、当該スクレーパーパドルは混合パドルシャフト4とともに逆回転で混合ボウル周囲を回転する。従ってスクレーパーパドルは、ボウル1の内部表面形状と実質的に合致した半径方向の外側カーブと、回転中にパドル3を通るように曲がった半径方向の内側外形と、を有するように成形される。
【0083】
混合チャンバー1における混合ブレード9の外形は、構成成分が混合されるときに、セメントを混合チャンバーの底面方向に押し下げるようになっている。2つの構成成分が混合されるとセメント量は減り、完全に混合されたときにセメントは円筒型チャンバー2内におさまることができるようになる。
【0084】
回転軸構造をもって、操作者がハンドル5を回転させることにより、シャフト4がその中心軸周囲でプラネタリー運動をするようになると同時に、シャフト軸周囲でパドルが回転して歯車を動作させるように、歯車10が棚8とかみ合うようになる。従って、棚受けおよび歯車で与えられる歯車機構でハンドルを回転させることにより、パドルが混合チャンバー周囲でプラネタリー式に移動すると同時に、自己の軸周りを回転するようになる。
【0085】
かかる機構は、ハンドルの回転毎にパドルが数回回転できるようにし、結果として混合チャンバー領域の90%以上の範囲となる。パドルが軸動作の特有周期の最初と最後で異なる方向にあるように、ハンドル1回転によりパドルの全回転数とはならないことが望ましい。これによって、セメント中にデッドスポットが形成されることが回避され、混合の改善がもたらされる。好ましい実施例においては、これはスクレーパーパドルにより、さらに改善される。
【0086】
ひとたびセメントが完全に混合されると(外科医は、容器の透明壁または容器に設けられた窓を通して見ることにより、このことを視覚的に観察することができる。経験豊かな外科医は、セメントが用意できたかどうかを、セメント混合中の抵抗力によっても判断することができる。)、このセメントは分注チャンバーまたはシリンジ本体内に放下される。図1に示された実施例においては、これは混合チャンバー1から分注チャンバー2に真空が供給されることによってなされる。その後、混合チャンバーは大気圧になり、この圧力差により混合チャンバーと分注チャンバーとの間のピストンまたはプランジャー12は十分に引かれるようになり、ピストンまたはプランジャーが分注チャンバーの底面でのその最終位置に達するまで、混合セメントは分注チャンバーの本体内に落下する。他の実施例においては、他の図に関連して説明されるように、混合チャンバー1と分注チャンバー2との間の封鎖部材15が取り外されまたは開放され、混合チャンバーの流出部16から分注チャンバーの流入部17に通じる流通路を与えることで、混合セメントが落下する。ひとたび全ての混合セメントがシリンジ本体内に放下されると、混合チャンバー1、蓋6および混合パドル3は円筒型混合チャンバー2から取り外され、分配ノズルで置換される。
【0087】
これら部品の全ては個々に取り外されるが、好ましい実施例においては、蓋は混合構造にあらかじめ取り付けられており、混合チャンバー1の一部にこの蓋を固定するための固定構造をもって与えられ、これらの部品を全て一緒に取り外すことができるようになる。これによって、混合チャンバー1の上部に残存する非混合セメントパウダーが混合セメント中に落下する危険性が低減する。ブレードのワイピングスロットが混合ボウルとシリンジとの間に導入されてもよく、ブレードが取り外される際に、このブレードはワイピングスロットを通して引き出され、全ての混合セメントが円筒型チャンバー2中に存在するようにすることが確実になる。
【0088】
その後、アプリケータノズル(図示せず)が、混合チャンバー1が取り外された円筒型チャンバー2の開口端に取り付けられる。ベース13が使用される場合、円筒型チャンバー2もこのベースから取り外される。その後、混合セメントはプランジャー12の作用下でノズルを通して適当な任意の位置に排出される。異なるタイプのプランジャーが、ノズルを通してセメントを排出するために使用されてもよく、例えば手動ガンまたはガス動力の圧力ガンが使用されてもよい。分配構造は、例えば欧州特許出願公開第0744991号公報に説明されているようなものであればよい。
【0089】
図2〜図4は異なるピストン構造を示しており、かかるピストン構造は、混合中にピストン12が混合チャンバー1と分注チャンバー2との間に封鎖部材を具備するところで使用されることができ、それによってピストンは混合中に第1の封鎖部の位置に保持されなければならない。混合後、このピストンが混合セメントを排出するためのピストンとして機能するために、ピストン12はチャンバーの底面に位置付けられるまで分注チャンバー本体に押し込まれる。
【0090】
図2に示される実施例においては、封鎖部材またはピストンは、図2Aに示されるようにOリング18およびカラー19の構造で与えられる。最初の封鎖部材の位置において、Oリング18は、混合チャンバーにおける真空を密閉するために、半径方向の軽い圧力を働かせるように適合させられる。ピストンは混合セメントとともにチャンバー底面に落下するに足りるほど軽い。しかし、この軽いピストン構造は混合セメントを排出するのに十分ではない。従って、この実施例はカラー19の部品とともに与えられ、ピストンが底面位置に達すると、このカラーはOリングの押し潰しを増加させ、シールがシリンジ本体の内壁と固いシール接触をなされるように、外側へのOリングの高い放射圧力をもたらし、セメントを押し出す頑強なピストンユニットを与える。
【0091】
図3に示される実施例は、図2に示されているものと同様であるが、カラー19とピストン12とのかみ合わせが若干異なっている。
【0092】
図4においては、スペーサー20(これは図5においてより明確に示されている。)は、運搬中にピストン12を所定の位置に保持するように与えられる。装置の使用準備ができたときに、使用者がスペーサーを取り外した後、ピストンは混合チャンバーの底面に対する上方へのシーリングを強いられる。Oリング18の静止摩擦はシリンジに対して軽減される。その後の混合後、前述のようにシリンジは真空スイッチにより落下する。
【0093】
さらなる実施例においては、前述のように、ピストンは混合中にシリンジ本体の上部に位置付けられておらず、混合チャンバーとシリンジ本体との間に封鎖部を与えない。その代わりに、分離封鎖部材15が混合チャンバーとシリンジ本体との間に与えられ、ピストン12自体は、混合中にシリンジ本体の底面に位置付けられる。
【0094】
図6に、封鎖部分15’’と開口部分15’’’とを有するスライド自在な板15Pの形状をなす封鎖部構造の1つの実施例を示す。セメントが混合チャンバーにおいて混合される間、この板は閉部が混合チャンバーとシリンジ本体との間に位置するように配される。ひとたびセメントが完全に混合されると、使用者は望ましくはプルリング21を引くことにより、図5Bに示されているように混合チャンバーとシリンジ本体との間に、板の開口部分が位置するようなその第2位置に板を移動する。その後、混合セメントは混合チャンバーから分注チャンバー内へ、その板の開口部分を通して流通することができる。空気がセメント内に混合することを避けるために、板は上面および底面上にシールを有して具備されるべきである。
【0095】
装置が運搬される間、かかる構造は頑強であるが、このシーリング構造のように、この部分のモールディングは相対的に複雑であり、このシール部でのリークの可能性がある。
【0096】
図7に、好ましい封鎖部構造を示しており、この封鎖部構造は回転自在なタップ部材15tと、第1の封鎖位置と第2位置との間のタップの回転手段と、を含み、この第1の封鎖位置では、タップは混合チャンバーの流出部および/または分注チャンバーの流入部を覆い、セメントが混合チャンバーからシリンジへと流通することができないようになっており、第2位置では、セメントが混合チャンバーから分注チャンバーへと流通するための流通路を与えるように、この流通路は混合チャンバーの流出開口部と分注チャンバーの流入開口部とに位置合わせされる。
【0097】
好ましい実施例においては、図7に示されるように、タップ構造は混合チャンバーと分注チャンバーとの間に取り付けられたカラーまたはハウジングに実装される。図7に、混合チャンバーと分注チャンバーとの間に位置するタップ15tおよびそのハウジング22を示す。図に示すように、ハンドルまたはスイッチ23はタップに取り付けられ、使用者に操作されるようにハウジングまたはカラーを通って伸長して与えられる。実際のタップ部材自体は図8Aおよび図8Bに示されており、図8Cおよび図8Dにおいては、取り付けられた状態であり、実質的に軸周囲に回転自在なC形状の部品である。図9は封鎖位置にあるタップ部材15tを示しており、それによってC形状のカーブは混合チャンバー出口に渡って封鎖部を与え、セメントが開口部を通って出ていくことを妨げる。混合後、スイッチまたはハンドル22は、図10に示されるように使用者によって開放位置まで回転され、それによってC形状のカーブは開口部との係合から回転し、その後C形状により、混合チャンバーの流出開口部と分注チャンバーの流入開口部との間のチャンネルまたは流通路が定められる。
【0098】
シール24が混合チャンバーの流出開口部周囲に与えられ、スイッチまたはハンドルがタップ部材のカラーまたはハウジングの壁を貫通することが望ましい。
【0099】
図11に、タップ部材のカラー22またはハウジングの概略図を示す。リブすなわち溝25がタップ部材の軸を配するために与えられてもよい。
【0100】
図12に、好ましい実施例における混合チャンバーの底部を示す。リブすなわち溝26を配することによって、タップ部材のカラーまたはハウジングの位置決め溝と係合するようになる。スイッチまたはハンドルが、その開放位置から封鎖位置までタップを動かすために必要とされる90度回転を超える過剰回転することを妨げるように、スイッチ止め27が与えられてもよい。
【0101】
図13Aおよび図13Bに示されるように、例えば混合チャンバーの流出開口部16がタップにより形成される流通路の直径および分注チャンバーの流入開口部17よりも小さい、というような異なる寸法が与えられてもよい。これによって、大量のセメントがタップ構造の壁およびシリンジの上部に接触することなく、このセメントが流通路を通って混合チャンバーから分注チャンバーへと放下されることを可能にし、故に損失が低減されセメントが逆行してタップ構造に影響を与えることを妨げる。
【0102】
図13Aおよび図13Bに、タップ自体および封鎖位置における概略図を各々示す。
【0103】
この構造においては、混合中および放下中に、混合チャンバー、分注チャンバーおよびシリンジベースに真空が供給されることが望ましい。
【0104】
ボウル型混合チャンバー1とシリンジチャンバー2とを組み合わせて使用することにより、大量のセメントを混合することを可能にし、分注シリンジの本体を形成する円筒型混合チャンバー2は、混合セメント量を受け入れるのに足りるほどの大きさであれば十分である。シンプレックスのようなセメントが使用される場合、これは非混合量にかなり満たない可能性がある。
【0105】
使用するセメント量およびタイプの違いにより、異なるシリンジサイズが本発明において使用され得ることが考えられる。このことは、使用者に多大なる自由度を与え、シリンジ本体サイズを最適化する。実質的に、本発明を使用することにより、可能な限り短いシリンジ本体サイズが最大所望量の混合セメントに対して使用することができる。現行のシリンジ本体が、本発明で使用され得ることが考えられる。
【0106】
従って、本構造は大量のセメントが効率的におよび完全に混合され分配されることができ得る混合装置を与える。システムは使用し易く、使用者に良く知られた普通の混合動作を使用するものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形外科用の骨セメント等を混合して注入するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
整形外科用の骨セメントは、解剖学的に適切な位置に臀部、膝その他の人工器官を固定するために世界中で使用されている。骨セメントは、通常はメチルメタクリレートモノマーの液体およびポリメチルメタクリレートのパウダーという2つの成分を互いに完全に混合することにより製造される。かかる混合は、単にボウルおよびスパチェラを使用して、事前に行なわれる。その後、外科医は必要量のセメントを取り除き、成形キャビティ内にこのセメントを入れる前にまたは人工器官が配されるべきところの切除された骨表面にこのセメントを適用する前に、そのセメントを手で処理する。セメントは、手で使用してもよいし、またはシリンジ内に入れて使用してもよい。
【0003】
真空下での混合構造を提供することを含め、いくつかの改良がこの混合構造になされており、混合効率を改善し、均質なセメント材料をもたらしている。
【0004】
通常は真空下にあるセメント混合装置が現在いくつか利用可能であり、一般に使用されている。
【0005】
利用可能な装置のなかでは、ボウル型混合器およびシリンジ混合器の形態が好ましい。
【0006】
ボウル型混合器は、通常、手持ち型の混合ボウルの形態で与えられる。混合されるべき材料は、真空が供給されるボウル中に配される。この材料はボウル内に伸張している回転パドルを用いて混合され、この回転パドルはボウルの蓋を通して伸張しているハンドルを用いて手動で回転される。いくつかの用途においては、欧州特許出願公開第0616552号公報に開示されている実例のような混合ボウルを使用することが好ましい。多くの外科医はセメントを手作業パックすることを好む。ボウル混合は、この容器で混合する便利さに慣れている看護師にも好まれる傾向にある。ボウルは使い易く、タイミングが極めて重要であり、混合は最初に適切にされなければならないので、看護師が自信を持つことが重要である。多くの外科医もボウル混合を好む傾向にある。経験豊かな外科医が手で触ることにより、セメントを骨の空洞に適用するのに丁度良いタイミングを伝え、かかるセメントを適用する前に混合をセットし始めない、ということが極めて重要である。
【0007】
これらのボウル混合器は普及しており、とても良く知られている。かかるボウル混合器は使用し易く、使用者の技量レベルとは関係なく再現可能で均一な混合を行なうことを可能にし、ボウルに使用される混合のコンセプトは単純であり看護師に良く知られている。ボウル型混合器は、あらゆるタイプおよびさまざまな量のセメント混合に使用することができる、という点で極めて適応性があるものである。高真空が供給されるボウル混合器においては、セメントは気孔率が低くなり、故に高強度になる。
【0008】
欧州特許出願公開第0616552号公報のボウル混合器においては、かかるボウル混合器は固定軸を有するパドルではなく回転軸を有するので、セメントはかなり十分に混合され、デッドスポットすなわちセメントの非混合領域が生じる可能性は極めて小さい。
【0009】
幾つかの用途においては、混合セメントはシリンジを用いて骨または骨の空洞に適用されることが望ましくまたは必然的でさえある。実際に、多くの外科医は手作業パックよりシリンジ型の使用を好む。
【0010】
かかる使用に関して、前述のようにセメントがボウル中で最初に混合される場合には、その後、分注シリンジに移動させなければならない。この移動は面倒であり且つ時間がかかり、混合物がさらに空気を取り込む可能性がある。セメント中に空気が導入されることにより、弱いセメントが製造され明らかに不利となる。
【0011】
この問題を克服するために、混合チャンバーとシリンジとを組み合わせた混合装置が設計されている。例えば、欧州特許出願公開第0178658号公報は、供給装置と連結した混合チャンバーを含む骨セメント混合装置を開示している。真空源は、真空下で材料を混合する供給装置に連結している。この装置は、極めて効率の良い混合システムおよび移動システムであることが判明しており、混合セメントを混合ボウルからシリンジに移動する必要性を除去する。
【0012】
米国特許第4,758,096号公報および米国特許第3,606,094号公報も、セメントが分配容器自体で混合される骨セメント混合器を開示している。これらのうちの最初の特許では、混合はシャフトの板型攪拌器であるマッシャーを用いて手動でなされる。マッシャーの板は、ハンドルに取り付けられた柄に取り付けられている。攪拌器は、軸方向におよび回転自在にチャンバー内で可動であり、使用者によるセメントの混合と、垂直および回転自在なハンドル動作と、を可能にする。しかし、かかる混合作業は難しく非効率的であり、セメントの完全混合を保証するものではない。マッシャーの不完全動作により、非混合パウダー領域がもたらされ、混合は均一ではなく使用者の一貫性に依存する。
【0013】
マッシャー型システムに付随する別の問題は、このプランジャーを使用して標準粘度のセメントを混合することが難しいということである。板がセメント内に押し下げられると、かかる板は高抵抗を受け不完全混合動作のみが実施され、セメントは混合チャンバーの底面に密集する結果となり得る。
【0014】
他には、改良されたシリンジ内混合型の混合器が、例えば独国特許発明第883326号公報および欧州特許出願公開第0744991号公報に開示されている。
【0015】
先と同様に、これらのシリンジ内混合型の混合器はとても良く知られており普及してきている。
【0016】
シリンジ内混合型の混合器は、相対的に少量のセメントが混合され使用されるので極めて有用である。市販のほとんどの混合器は、現在の通常使用(例えばシンプレックスセメント)における最大量の2倍まで混合できるように設計されている。
【0017】
いくつかの異なるタイプのセメントが、整形外科の用途において通常使用されている。これらのセメントは極めて異なる特性および量を有し、異なる粘度をも有している。以下の表1は、最も一般に使用されている3つのタイプのセメントを示しており、乾燥パウダーの概算量と混合セメントの対応量とを示すものである。
【0018】
【表1】
【0019】
上記の表から、シンプレックスのようなセメントは、同量の混合セメントを製造するために大体3倍の乾燥パウダー量を有していることが分かる。
【0020】
従って、一般的にシリンジ内混合型混合器に関しては、たとえ混合セメントの実質量が相当に少ない場合でさえ、通常使用される最大量のセメントの2倍の乾燥パウダーを混合できるに足りるほど、混合チャンバーは大きくなければならない。この為に、一般的に、シリンジまたは混合チャンバーの本体は、他のタイプのセメントが必要とするよりも実際にかなり大きくなり、他の少量セメントが必要とするよりも長い混合動作が必要とされる、ということを意味する。
【0021】
場合によっては、外科医は例えば3倍の混合のような大量のセメントを準備する必要がある。例えば、置換手術においてまたはある種のプライマリーヒップ(primary hips)の為に大量のセメントが必要とされる。
【0022】
かかる大量のセメントは、一般的に、例えば欧州特許出願公開第0616552号公報で説明されているようなボウル型混合器で混合される。しかし、シリンジ型混合器では、より大量のセメントを混合することができるように混合チャンバーの容積を単に増やすことが、一般的に可能ではない。大量のセメントに対応できるように混合チャンバーの高さを増やすことは実現可能ではない。このことは、装置が大きすぎて楽に操作することができない、という結果をもたらすからである。チャンバーの長さが長くなるほど、正確なアライメントでカラムを通して混合パドルを導入し、正確にパドルを位置付けることが難しくなる。このことは、セメントが濃厚である場合に特にそのようであり、効率的な混合をするためにパドルを押し下げることを極端に難しくさせる。
【0023】
従って、不必要に大きくないが、使用するセメントがシンプレックスのような大量のセメントである場合でさえ、例えば3倍のセメントのような大量混合を可能にする効果的、効率的で操作し易い一体型混合器およびシリンジ型の整形外科用のセメント混合器が必要とされる。
【0024】
この問題に対処することを目指した混合器はストライカー社(Stryker)(ストライカー混合器)により製造されており、米国特許第5,558,136号公報および関連特許において説明されている。この混合器は、円筒型シリンジ本体である混合チャンバー内に通じる漏斗部を含む。混合パドルは漏斗部を通って伸長し、この漏斗部の蓋におけるハンドルを用いて回転される。その後、大量のパウダーが漏斗を通して装置内に加えられることができる。モノマーが加えられ、セメントパウダーとモノマーとが混合されると、結果として得られる混合物はシリンジ本体内に収まるような少容積を有する。その後、漏斗部は除去され、シリンジガンおよびノズルに取付けるために、単にシリンジ本体が残される。しかし、この装置は混合されてシリンジ本体である混合チャンバー内に重力で落下するような低粘度セメントの使用に依存している。混合物が練り上がり始める前に、モノマーを加えるやいなや混合段階を早急に始める、ということも非常に重要である。
【0025】
問題は、セメントが減るにつれて、シリンジ本体である混合チャンバー内に落下しない非混合パウダーが漏斗内に残置される可能性があるということである。
【0026】
これによって、漏斗部が除去される際に、非混合パウダーが混合セメント中に落下することとなり、結果としてドライスポットまたはデッドスポットの原因となり、故に砕け易いセメントがもたらされる。
【0027】
他の問題は、標準セメントを混合する際または混合が早急に始まらないところでは、練り上がりつつあるセメントが漏斗の壁およびパドルに付着し、高損失をもたらす。
【0028】
欧州特許出願公開1257237号公報は整形外科用のセメント混合装置を開示しており、この装置は分注シリンジの本体を形成するように構成された、第2の円筒型混合チャンバーの一端に着脱自在に取り付けられた第1の漏斗またはボウル型の導入チャンバーと、第1および第2のチャンバーを通って伸長する回転自在なシャフトを含む混合構造と、を含み、このシャフトは少なくとも1つの半径方向に伸長しているブレードを含む。第1のチャンバーにおけるブレード外形は、第2のチャンバーの方向へ内向きに先細りになっており、第2のチャンバーの長さ方向に実質的に沿って伸長している。しかし、この混合器はかなり複雑な設計を有しており、結果として高い製造コストをもたらす。また、特に高粘性セメントでの混合は、相対的に長い混合チャンバーにおいては難しく、混合ブレードは特に頑丈である必要がある。装置の形も、混合中にとりわけ手に保持しにくい。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0616552号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第0178658号公報
【特許文献3】米国特許第4,758,096号公報
【特許文献4】米国特許第3,606,094号公報
【特許文献5】独国登録特許第883326号公報
【特許文献6】欧州特許出願公開第0744991号公報
【特許文献6】米国特許第5,558,136号公報
【発明の開示】
【0029】
本発明は、相対的に大量のセメントをも混合することができる効果的、効率的な混合システムを与えることを目指すものである。
【0030】
前述のように、より好ましいセメントはシンプレックス(Simplex)およびパラコスR(PalacosR)である。これら両方のセメントは広く用いられているが、パラコスRがヨーロッパで好まれるのに対して、米国において好まれるセメントはシンプレックスである傾向にある。パラコスRは、シンプレックスよりもかなり粘性のあるセメントである。
【0031】
先行技術においては、米国特許第5,558,136号公報に開示されているような、いわゆる混合放下システム(mix and dump system)があり、真空が混合チャンバーおよびシリンジの両方に供給され、これは例えば、これら部分の周囲の真空シュラウドを用いてなされる。その後、混合チャンバーにおいてセメントが混合され、この段階では、混合チャンバーの底面の開口部とシリンジ本体の上面との間に位置付けされたピストンによって、このチャンバーはシリンジの円筒体から分断されている。
【0032】
セメントが完全に混合されると、プランジャーはその位置からピストンをはずすように押し下げられる。その後、ピストンおよび混合セメントは重力下でシリンジ内に落下し、ピストンはシリンジの底面に、混合セメントはシリンジ本体内に落下するようになる。その後、混合チャンバーは除去され、分配ノズルがその位置に取り付けられ、例えばプランジャーまたはディスペンサーガンを用いて、ピストンをシリンジ本体の後方に押すことにより、混合セメントが分配されることができるようにする。
【0033】
混合中、周囲温度の僅かな増加はセメントの粘度に多大な影響を及ぼし、たった数度の温度増加がセメントの粘度を著しく増加させる結果となる。摩擦により保持され、重力下で落下するピストンに依存したシステムに付随する問題は、例えばパラコスのような高粘性セメントまたは温度の増加により粘性が増加するシンプレックスのような低粘性セメントを用いると、混合セメントは真空下でシリンジ本体内に容易に落下しない、ということである。さらに、磨耗、製作上の公差の変化等および遊動パウダー粒子またはセメントは、ピストンのシリンジ底面への落下を妨げる。従って、混合セメントが、移動準備ができているシリンジ本体内に放下される放下段階は、いつも効率的に終了するとは限らない。
【0034】
本発明の1つの態様は、整形外科用のセメント混合装置を与えることによりこの問題を解決することをも目指すものであり、このセメント混合装置は流出開口部を有する混合チャンバーおよび流入開口部を有する分注チャンバーであって、混合チャンバー中の混合セメントを分注チャンバー内に移動させ得るように、流出開口部および流入開口部が設けられている混合チャンバーおよび分注チャンバーと、混合チャンバーの流出開口部と分注チャンバーの流入開口部とを分断する第1位置を有する封鎖手段と、混合チャンバーおよび分注チャンバーに真空を供給する手段と、を含み、混合チャンバーと分注チャンバーとの一方から他方へ、供給される真空を切り替えるスイッチ手段をさらに含むことを特徴としている。
【0035】
この構造において、好ましい実施例では、その第1位置における封鎖手段は、望ましくは分注シリンジの円筒体である分注チャンバーの上部に配されるピストンである。セメント構成成分が混合チャンバー内に加えられ、シリンジ本体は大気圧であるが、混合チャンバーに真空が供給されるように真空スイッチが入れられる。
【0036】
従って、セメントは真空下で完全に混合され、砕け易いセメントをもたらす空気の導入を回避する。同時に、圧力が相違していることにより封鎖部材またはピストンを適当な位置に保持し、セメントが分配器本体内に落下することを回避する。
【0037】
ひとたびセメントが完全に混合されると、そのセメントはシリンジ本体内に放下される必要がある。従って、真空スイッチが入れられ、シリンジ本体に真空が供給される一方、混合チャンバーは大気圧になる。この圧力差により、封鎖部材またはピストンは分配本体内を底面へと引かれ、これとともに混合セメントが引かれて、全てのセメントが分配本体またはシリンジ中に配されるようになる。その後、混合チャンバーは除去され、その位置にノズルが取り付けられ、ノズルに対して前方の分配本体の底面に位置する封鎖部材またはピストンを押すことにより、セメントを分配することが可能になる。
【0038】
かかる真空スイッチ構造は、現存の混合放下タイプの混合構造に組み込むことができ、例えば、前述の問題への解決策として、前述のストライカーシステムの真空シュラウドと置き換えて使用することができる。
【0039】
ストライカーシステムのような混合放下システム内に組み込まれたこの真空スイッチ構造が、シンプレックスのような低粘度セメントによく機能し、および相対的に低温度においてもよく機能する、ということを発明者は見出した。
【0040】
かかる構造は、セメントおよびピストンが前述のように重力下で落下するストライカーシステムについての改良である。しかし、本発明のこの態様は、前述のピストンが自由落下する問題を解決するが、高温においておよび/または高粘度セメントを用いる場合には、混合システムにおけるセメント損失量は依然として相対的に高い。さらに、例えば欧州特許出願公開第0616552号公報に開示され、本出願の序論で説明されているボウル混合器におけるような変わった混合パドルは混合効果を向上させる、ということが経験によって分かっている。
【0041】
ストライカー混合器の業務実施例に組み込まれている損失問題に対する1つの解決策は、シャフトの両側にパドルを伸長することである。パドルは、混合中に中心シャフトとともに回転し、混合中に混合漏斗または混合チャンバーの内側周囲を連続的に回転するように用意され配置される。これによって、損失量が低減されることが見出されている。その理由は、スクレーパーが連続的に混合チャンバーの内壁周囲をこすることにより、壁から混合セメントをこすり、混合セメントを混合チャンバーとシリンジ本体との間の開口部に対して下方に堆積させるからである。混合ブレードまたはパドルに付着した少量のセメントおよび金属スクレーパーに付着した少量のセメントが唯一の顕著な損失である。このことは損失問題に対する幾つかの解決策を与える一方、混合セメントの質の問題を解決するものではない。前述のように、ボウル型混合器および/またはハンドルを回転させる間、蓋の上面を保持することができる混合器を看護師は好むことが見出されている。
【0042】
従って、本発明のさらなる態様に従って、整形外科用のセメント混合装置が与えられており、かかるセメント混合装置は、流出開口部を有する混合チャンバーおよび流入開口部を有する分注チャンバーであって、かかる流出開口部と流入開口部との間でセメントが流通する混合チャンバーおよび分注チャンバーと、さらに前記混合チャンバー内に伸長している混合パドルと、歯車機構により前記パドルに回転自在に連結したハンドルと、を含み、かかるハンドルはこのハンドルの回転により、前記パドルが自己の軸周りに回転すると同時に、チャンバー内でパドルの回転軸が移動するように配置されることによって、チャンバー内部領域における実質上全てのセメントの周りをパドルが移動するようになる。例えばPCT国際出願公開第WO93/10892号公報に説明されているものと同様であり得る、この特有の混合構造は、いわゆる混合放下システムに、良質な混合という利点を与える。特有の利点は、本発明の第1の態様の真空スイッチ構造とこのシステムを組み合わせることにより与えられる。もっとも好ましい実施例においては、混合チャンバーは前述のPCT国際出願公開第WO93/10892号公報に説明されているようなボウル混合器であり、その理由は前述のように、このチャンバーはそのボウル形状のため操作し易く、また使用者が片手でふたを保持し、もう一方の手でハンドルを回転することができるからである。本発明の第1および第2の態様を組み合わせることにより、セメントをより完全に混合し、良質なセメントを与え、且つ前述の自由落下システムを超える改善された放下機構をも有する混合放下タイプのシステムが与えられる。欧州特許出願公開第0616552号公報に説明されているボウル混合器におけるような中心ずれした混合システムを有するこの特有の構造は、高温ですなわち高粘度セメントを混合する際に、特にパラコスおよびセメントに関して、実質的にかなり良質の混合セメントを与えることが判明している。
【0043】
上述の中心ずれした構造では、前述のような伸長しているパドルを有するストライカーシステムよりも、損失量は相対的に少ないが依然として多いことが見出されている。欧州特許出願公開第0616552号公報の中心ずれしたパドルは、ボウルの内部表面にずっと半径方向に伸長しているパドルであって、側面のセメントをこすり、それを混合物中に至らしめるように底面へと方向付けるパドルを有している。しかし、ボウルの側面に伸長しているパドルのこの特徴の主要目的は、非混合パウダーをボウルの側面からセメント内に落下させ、混合の質を改善するように混合中にセメントを切り混ぜることである。混合パドルがボウル周囲を回転する際に、自己の軸周りを回転するという事実により、このパドルは連続的にボウルの内側周囲をこすらずに、むしろボウルの内部表面に接触して移動し、継続的にボウル内側上に残るセメント残余物の小鈍鋸歯状パターンを残す。この問題を解決するために、第3の態様による本発明は整形外科用のセメント混合装置を与え、かかるセメント混合装置は、混合チャンバーと、前記チャンバー内に伸長している混合パドルと、歯車機構により前記パドルに回転自在に連結したハンドルと、を含み、かかるハンドルはこのハンドルの回転により、前記パドルが自己の軸周りを回転すると同時に、チャンバー内でパドルの回転軸をも移動するように配置されることによって、チャンバーの内部領域における実質上全てのセメントの周りをパドルが移動するようになり、スクレーパー部材が同方向または反対方向にパドルの回転軸とともに回転するように、前記歯車機構に連結していることを特徴とする。スクレーパーの形状は、歯車機構から混合チャンバーの内壁に半径方向に伸長し、混合チャンバーの内壁形状と整合するように軸方向に伸長していることが望ましい。従って、回転パドルがボウル周囲および自己の軸周りに回転する際に、スクレーパーは内壁からセメントをこすりながら混合チャンバーの内壁周囲を回転する。
【0044】
この特有のパドルおよびスクレーパーの構造は、PCT国際出願第WO93/10892号公報に説明されている手持ち式のボウルのようなあらゆるタイプの混合装置において利益をもたらすであろう。パドルおよびスクレーパーの構造は、前述のいかなる混合放下システムの混合チャンバー内に有利に組み込まれることができる。
【0045】
スクレーパーの好ましい設計では、スクレーパーは混合チャンバーの側壁のセメントをこすって損失を減じるだけでなく、混合セメントの質を改善する混合効果にも寄与する。
【0046】
かかる構造を使用することにより、混合チャンバー内での損失はほとんどなくなり、主要パドル上の少量の損失だけになる、ということが試験により見出された。
【0047】
混合放下システムにおいて、最初にセメントは混合チャンバー中で混合された後、シリンジを用いて分配されるように円筒型のシリンジ本体内に放下される。
【0048】
前述のように、米国特許第5,558,136号公報に説明されているような従来のシステムにおいては、ピストンは、混合中にシリンジ本体に取り付けられた混合ボウルの底面の中央開口部を封じるように配され保持される。その後、ひとたびセメントが混合されると、ピストンは例えばその固定位置からプランジャーを用いて取り外された後、重力およびセメント重量を受けてシリンジの底面に落下する。本発明の第1の態様を使用する別の実施例においては、ピストンは重力下で落下せず、真空が混合チャンバーからシリンジ本体に供給される際に落下し始め、その後、ピストンは真空下でシリンジの底面まで引かれる。
【0049】
この構造の1つの問題は、真空が供給されるまで、ピストンは混合チャンバーとシリンジとの間の位置に摩擦により保持され、その後、シリンジの底面まで落下するということである。この摩擦を利用した構造は、極めて正確な寸法および調整を必要とし且つ老朽化およびかかるシステムにおいて通常行なわれる殺菌工程等により影響され得る。従って、これらの影響のため、ピストンが必要とされる時に落下しない可能性があり、または逆に、例えば運搬中などの必要とされない時に落下する可能性がある。
【0050】
さらなる態様によれば、本発明は整形外科用のセメント混合装置を提供することにより、この問題に対する解決策を与えるものであり、かかるセメント混合装置は、流出開口部を有する混合チャンバーおよび流入開口部を有する分注チャンバーであって、かかる流出開口部と流入開口部との間でセメントが流通する混合チャンバーおよび分注チャンバーと、流出開口部を流入開口部から隔てて混合チャンバーから分注チャンバーへのセメントの流動を妨げる、第1位置にある封鎖手段と、をさらに含み、この封鎖手段は、着脱自在の締結手段により、その第1位置に保持されることを特徴とする。かかる着脱自在の締結手段は、例えば分注チャンバーの壁を通して、前述のピストンのような封鎖部内に達する取り外し自在のピンであってもよい。その後、ピンが使用者により除去されると、例えばピストンのような封鎖部材は、重力下または本発明の第2の実施例に関連して説明されているような圧力差の下で、分注チャンバーの底面に自由落下する。他の実施例において、着脱自在の締結手段は、封鎖部材の壁と分注チャンバーの内壁との間に摩擦把持を与えるサイズのOリングで与えられる。この構造では、分注チャンバーの底面に落下した後、望ましくは混合セメントの分配に使用されるピストンである封鎖部材は、かなり軽量でありとりわけ頑丈ではない。従って、混合セメントを分注チャンバーから押し出すために、ピストンが逆方向で使用されると、かかるピストンは相対的に高粘度なセメントを前方に押し出すのに足りるほど頑丈ではない、ということが問題になる。従って、好ましい実施例においては、Oリングが分注チャンバーの底面に達したとき、例えばカラー(collar)またはさらなるピストンのようなさらなる部品と係合し、シリンジの内壁と堅いシールが半径方向に外側に形成されるようにOリングを適合させる。
【0051】
この特有な封鎖部の構造は、前述の周知である混合放下システムで使用されることができる。しかし、この構造は、チャンバー間で供給される真空を切り替えるシステムにおいてよりもむしろ、混合チャンバーおよび分注チャンバーに混合および放下の全工程中に同時に真空が供給されるシステムにおいて組み合わせて使用されることが望ましい。その理由は、第1位置にあるOリングが気密シールを与えず、セメント中に空気がリークする危険があるからである。
【0052】
Oリング機能の好ましい実施例においては、封鎖部材またはピストンは軽いシールまたは混合チャンバーとシリンジとの間の位置にピストンを保持するのに十分なOリングで与えられる。混合後に真空が供給されると、その後ピストンはシリンジの底面に落下する。この底面には、ピストンおよびOリングと係合するさらなる部材が与えられ、シリンジの内壁と固いシールを形成するようにOリングを圧出し、その後、ピストンおよびこの付加的の部材はセメントを分配するためにデリバリーガンにより上方へ押し上げられ、固いシールが与えられる。
【0053】
この構造は現有システムの改良であるが、搬送中にこのシールはシリンジの上部位置に十分しっかりと保持されないということが見出された。
【0054】
その後、混合中に混合チャンバーとシリンジとの間の位置にピストンを保持する最良の方法としてさらなるアイデアが検討された。例えば、止めピンおよび固定タブ等を提案するアイデアもあった。しかし、どれもが理想的であるとはみなされなかった。
【0055】
さらなる開発により、混合チャンバーとシリンジとの間の最上部にピストンを配さず、混合セメントを分配するシリンジの底面にただピストンを配するだけ、というアイデアがもたらされた(これは、PCT国際出願第WO95/22402号公報に説明されているような混合器である)。その場合に、ピストンは、ノズルを通して混合セメントを強制排出させるために十分頑丈で丈夫なピストンであり得るが、重力下で落下するために、または真空下で引き下げられるために、十分軽い必要はない。
【0056】
もちろん、混合中に混合チャンバー中にセメントを保持し、セメントがシリンジ内に落下することを妨げるための何らかの手段を有することが必要であるが、その後、混合セメントがシリンジ内に落下することを可能にすることが必要である。
【0057】
これらの問題に対する解決策は、整形外科用のセメント混合装置を与える本発明のさらなる態様によって見出され、かかるセメント混合装置は、流出開口部を有する混合チャンバーおよび流入開口部を有する分注チャンバーであって、この流出開口部と流入開口部との間でセメントが流通する混合チャンバーおよび分注チャンバーと、混合チャンバーから分注チャンバーへのセメントの流動を妨げるように、流出開口部と流入開口部とを分断する封鎖手段と、をさらに含み、この封鎖手段は封鎖位置と開放位置との間で可動であり、封鎖位置によって混合チャンバーから分注チャンバーへのセメントの流動が妨げられ、開放位置によってセメントは混合チャンバーから分注チャンバーへと流通することができる。
【0058】
1つの可能な封鎖部材はトラップドアの構造であり、スライド自在な封鎖部材により底面で閉じられた混合チャンバーにおいてセメントが混合され、その後セメント混合後に、このスライド自在な封鎖部材は開放または取り外された後、セメントはシリンジ内に落下する。
【0059】
1つの実施例は、封鎖部材が混合チャンバーと分注チャンバーとの間にスライド自在に配された板を含むような引き抜き用トラップドア設計を使用しており、この板はその封鎖位置において、混合チャンバーから分注チャンバーへのセメントの流動を妨げる封鎖部分と、流出開口部と流入開口部とを位置合わせしてセメントがそれを通して流通することを可能にする開口部分と、を有しており、かかる板はスライド自在に配され、使用者がその板を第1位置に引くことにより、封鎖部分を流入開口部と流出開口部との間に位置付けすることができ、第2位置においては開口部分が流入開口部と流出開口部との間に位置付けされる。この板は、簡単な使用のためにハンドルまたは引き手リングで与えられてもよい。
【0060】
しかし、この実施例の1つの問題点は、製造物および余分な構成部品の供給が必要とされるため、コストが増加し、さらに板が完全に取り外されたり、なくなったりする可能性がある。また、この板は混合装置の外のり寸法を明らかに増すものである。
【0061】
従って、現在好ましい実施例においては、封鎖部材はチャンネルまたは流通路を定めるタップであり、このタップは混合チャンバーと分注チャンバーとの間に取り付けられる。混合中に、チャンネルまたは流通路は、混合チャンバーの流出開口部と分注チャンバーの流入開口部とが繋がらないように配される。混合後に、タップは装置の外側に伸長しているスイッチまたはハンドルにより回転され、チャンネルまたは流通路が混合チャンバーの流出部および分注チャンバーの流入部と位置合わせされた後、セメントは混合チャンバーから分配器へと落下することができるようになる。
【0062】
他の実施例においては、貫通孔を有するボールがタップの代わりに封鎖部材として使用され、混合チャンバーと分注チャンバーとの間に配されることができる。混合中に、チャンネルまたは流通路は、混合チャンバーの流出開口部および/または分注チャンバーの流入開口部が繋がらないように配される。混合後、このボールをハンドルによって回転させ、貫通孔を混合チャンバーの流出部および分注チャンバーの流入部に位置合わせし、セメントが混合チャンバーから分注チャンバーへと落下することを可能にする。
【0063】
これらの封鎖部材の構造は、いかなる混合放下システム内にも組み込むことができ、利点を与えることができると考えられる。
【0064】
しかし、かかる構造をもってしても、最初に説明した真空スイッチ構造は実際に理想的ではない。その理由は、タップまたはボールが完全にシールされていない場合に、混合中に空気がシリンジから混合チャンバー内に混入する可能性があるからである。従って、この構造では、理想的には真空を全装置にわたって供給する必要があり、すなわち混合中および放下中ともに混合チャンバーおよびシリンジに真空が供給される必要がある。
【0065】
従って、好ましい装置は先願のPCT国際出願第WO93/10892号公報に記載されたサミット(Summit)ボウルの中心ずれした混合構造を、逆回転するパドルおよびスクレーパーとともに組み合わせたものであり、球状の封鎖部材を有し、混合チャンバーとシリンジとの両方に真空が供給されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明による混合装置の第1の実施例を示す図である。
【図2】本発明の実施例のピストン封鎖部材の構造を示す図である。
【図3】図2の実施例の別のピストンの構造を示す図である。
【図4】さらなるピストンの構造を示す図である。
【図5】図4の構造の外観図である。
【図6】本発明の1つの態様による封鎖構造の実施例を示す図である。
【図7】異なる封鎖部材の構造を有する装置の、さらなる実施例の断面図である。
【図8A】封鎖部材の実施例を示す図である。
【図8B】封鎖部材の実施例を示す図である。
【図8C】閉鎖位置にある、混合器に配された図8Aの封鎖部材を示す図である。
【図8D】開放位置にある、混合器に配された図8Bの封鎖部材を示す図である。
【図9】タップ封鎖部材を有する混合器の開放位置での断面図である。
【図10】タップ封鎖部材を有する混合器の閉鎖位置での断面図である。
【図11】封鎖部材を格納するカラーを示す図である。
【図12】図11のカラーと対応させて使用する混合チャンバーを示す図である。
【図13A】開放位置にある封鎖部材を有する混合器の他の実施例を示す図である。
【図13B】封鎖位置にある封鎖部材を有する混合器の他の実施例を示す図である。
【図14A】好ましい実施例による混合器の断面斜視図である。
【図14B】好ましい実施例による混合器の上部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明の好ましい実施例を、添付図面を参照して例示の目的で説明する。
【0068】
最初に図1を参照すると、混合装置は第1のボウル型混合チャンバー1と、第2の円筒型の混合チャンバー2と、を含む。混合パドル3は、回転自在なシャフト4により支持された少なくとも1つのブレードを有し、混合チャンバーまで伸長している。従って、シャフトおよび混合パドルは、ハンドル5を用いて回転される。このハンドルは、漏斗部1の上面上に密閉して取り付けられるようになされた蓋6に実装されている。歯車機構7は、混合チャンバー周囲にシャフト軸を回転させるのと同様に、自己の軸周りをシャフト4が回転するように与えられる。
【0069】
好ましい歯車機構は、ハンドル5の回転軸に対して同軸上に配置された、固定で円形の棚受け8を含む。混合パドル3は、シャフト4に実装され半径方向に伸長している混合ブレード9を含む。このシャフト4は、ハンドル5の一端に回転自在に実装される。歯車10は、棚受け8と互いにかみ合うように、シャフト4の上部に固定して取り付けられる。
【0070】
蓋は、真空ポンプ(図示せず)に接続された真空ポート(図示せず)とともに与えられることが望ましい。蓋6は、当該蓋6と混合チャンバー1のへりとの間を密封するシール11とともに与えられることが望ましい。固定手段(図示せず)が、蓋6と混合チャンバー4との間に与えられてもよい。これらの手段について以下にさらに説明する。
【0071】
混合チャンバー1は、混合シリンダー2の一端上にシーリング固定して取り付けられる。この連結は、例えば押し込み式またはネジを用いてなされてもよい。
【0072】
図に示された実施例においては、混合セメントを排出するプランジャー12は、混合チャンバー間にスライド式に配される。図5〜7に関して説明される他の実施例においては、プランジャー12はシリンジ2の一端にスライド式に配される。このシリンジ2の他端は、スタンド13で支えられるように構成されており、対応するネジによりかかるスタンドに固定されてもよい。シールが、シリンダー本体1とスタンド13との間に与えられてもよい。
【0073】
真空が蓋におけるポートを経由して混合チャンバーに供給され、スタンドにおけるポートを経由して分注シリンジにかけられる。スイッチ構造が真空ライン中に与えられ、混合チャンバー、および分注チャンバーまたはシリンジに選択的に真空が供給されることを可能にする。
【0074】
混合装置の使用方法を説明する。
【0075】
図1に示されているように、混合装置は組み立てられた形態で使用者に提供される。
【0076】
1つの実施例においては、装置は事前充填装置として与えられる。すなわち、セメントは、例えば閉鎖バッグまたは他の保持手段で、混合器中にあらかじめ与えられる。
【0077】
事前充填容器の場合には、閉鎖バッグまたは保持手段は除去され、チャンバー中にセメントを残置する。
【0078】
または、混合器を事前充填しない場合には、蓋6および付属の混合構造は取り外され、セメントパウダーが混合チャンバー内に入れられる。
【0079】
ボウル形状は、大量の乾燥セメントパウダーが入れられることを可能にし、上方幅広部によりセメントをこぼすこと無く入れることが容易になる。
【0080】
その後、モノマーのアンプルが割られて混合チャンバー中のセメントに加えられ、蓋はチャンバー上の開口部とシーリング固定して元の位置に戻される。
【0081】
混合が真空下で行なわれる場合に、真空ポートはPVC管(図示せず)を経由して、真空を形成する真空ポンプに接続される。この第1の実施例においては、混合チャンバーに真空が供給されるように真空スイッチが入れられるが、分注チャンバーは大気圧である。他の実施例においては、両方のチャンバーに真空が供給される。その後、セメント構成成分の混合は、使用者がハンドル5を回転することによって行なわれる。混合装置一式は手に保持してもよいしまたはベース13で設置されてもよく、テーブルのような平面上で支持されてもよい。
【0082】
損失量は低減し、図14Aおよび図14Bにおいて最も明瞭に示されている付加的なスクレーパーパドル14によって、混合効果が改善する。このスクレーパーパドルは、セメントを切り混ぜるために相対的に薄い断面を有するべきであるが、混合を助けるようにパドル形状をしており、さらにボウル表面からセメントをこするように、ボウル内壁まで伸長している。このスクレーパーパドルは歯車機構7に取り付けられ、混合中にハンドル5が回転されるとき、当該スクレーパーパドルは混合パドルシャフト4とともに逆回転で混合ボウル周囲を回転する。従ってスクレーパーパドルは、ボウル1の内部表面形状と実質的に合致した半径方向の外側カーブと、回転中にパドル3を通るように曲がった半径方向の内側外形と、を有するように成形される。
【0083】
混合チャンバー1における混合ブレード9の外形は、構成成分が混合されるときに、セメントを混合チャンバーの底面方向に押し下げるようになっている。2つの構成成分が混合されるとセメント量は減り、完全に混合されたときにセメントは円筒型チャンバー2内におさまることができるようになる。
【0084】
回転軸構造をもって、操作者がハンドル5を回転させることにより、シャフト4がその中心軸周囲でプラネタリー運動をするようになると同時に、シャフト軸周囲でパドルが回転して歯車を動作させるように、歯車10が棚8とかみ合うようになる。従って、棚受けおよび歯車で与えられる歯車機構でハンドルを回転させることにより、パドルが混合チャンバー周囲でプラネタリー式に移動すると同時に、自己の軸周りを回転するようになる。
【0085】
かかる機構は、ハンドルの回転毎にパドルが数回回転できるようにし、結果として混合チャンバー領域の90%以上の範囲となる。パドルが軸動作の特有周期の最初と最後で異なる方向にあるように、ハンドル1回転によりパドルの全回転数とはならないことが望ましい。これによって、セメント中にデッドスポットが形成されることが回避され、混合の改善がもたらされる。好ましい実施例においては、これはスクレーパーパドルにより、さらに改善される。
【0086】
ひとたびセメントが完全に混合されると(外科医は、容器の透明壁または容器に設けられた窓を通して見ることにより、このことを視覚的に観察することができる。経験豊かな外科医は、セメントが用意できたかどうかを、セメント混合中の抵抗力によっても判断することができる。)、このセメントは分注チャンバーまたはシリンジ本体内に放下される。図1に示された実施例においては、これは混合チャンバー1から分注チャンバー2に真空が供給されることによってなされる。その後、混合チャンバーは大気圧になり、この圧力差により混合チャンバーと分注チャンバーとの間のピストンまたはプランジャー12は十分に引かれるようになり、ピストンまたはプランジャーが分注チャンバーの底面でのその最終位置に達するまで、混合セメントは分注チャンバーの本体内に落下する。他の実施例においては、他の図に関連して説明されるように、混合チャンバー1と分注チャンバー2との間の封鎖部材15が取り外されまたは開放され、混合チャンバーの流出部16から分注チャンバーの流入部17に通じる流通路を与えることで、混合セメントが落下する。ひとたび全ての混合セメントがシリンジ本体内に放下されると、混合チャンバー1、蓋6および混合パドル3は円筒型混合チャンバー2から取り外され、分配ノズルで置換される。
【0087】
これら部品の全ては個々に取り外されるが、好ましい実施例においては、蓋は混合構造にあらかじめ取り付けられており、混合チャンバー1の一部にこの蓋を固定するための固定構造をもって与えられ、これらの部品を全て一緒に取り外すことができるようになる。これによって、混合チャンバー1の上部に残存する非混合セメントパウダーが混合セメント中に落下する危険性が低減する。ブレードのワイピングスロットが混合ボウルとシリンジとの間に導入されてもよく、ブレードが取り外される際に、このブレードはワイピングスロットを通して引き出され、全ての混合セメントが円筒型チャンバー2中に存在するようにすることが確実になる。
【0088】
その後、アプリケータノズル(図示せず)が、混合チャンバー1が取り外された円筒型チャンバー2の開口端に取り付けられる。ベース13が使用される場合、円筒型チャンバー2もこのベースから取り外される。その後、混合セメントはプランジャー12の作用下でノズルを通して適当な任意の位置に排出される。異なるタイプのプランジャーが、ノズルを通してセメントを排出するために使用されてもよく、例えば手動ガンまたはガス動力の圧力ガンが使用されてもよい。分配構造は、例えば欧州特許出願公開第0744991号公報に説明されているようなものであればよい。
【0089】
図2〜図4は異なるピストン構造を示しており、かかるピストン構造は、混合中にピストン12が混合チャンバー1と分注チャンバー2との間に封鎖部材を具備するところで使用されることができ、それによってピストンは混合中に第1の封鎖部の位置に保持されなければならない。混合後、このピストンが混合セメントを排出するためのピストンとして機能するために、ピストン12はチャンバーの底面に位置付けられるまで分注チャンバー本体に押し込まれる。
【0090】
図2に示される実施例においては、封鎖部材またはピストンは、図2Aに示されるようにOリング18およびカラー19の構造で与えられる。最初の封鎖部材の位置において、Oリング18は、混合チャンバーにおける真空を密閉するために、半径方向の軽い圧力を働かせるように適合させられる。ピストンは混合セメントとともにチャンバー底面に落下するに足りるほど軽い。しかし、この軽いピストン構造は混合セメントを排出するのに十分ではない。従って、この実施例はカラー19の部品とともに与えられ、ピストンが底面位置に達すると、このカラーはOリングの押し潰しを増加させ、シールがシリンジ本体の内壁と固いシール接触をなされるように、外側へのOリングの高い放射圧力をもたらし、セメントを押し出す頑強なピストンユニットを与える。
【0091】
図3に示される実施例は、図2に示されているものと同様であるが、カラー19とピストン12とのかみ合わせが若干異なっている。
【0092】
図4においては、スペーサー20(これは図5においてより明確に示されている。)は、運搬中にピストン12を所定の位置に保持するように与えられる。装置の使用準備ができたときに、使用者がスペーサーを取り外した後、ピストンは混合チャンバーの底面に対する上方へのシーリングを強いられる。Oリング18の静止摩擦はシリンジに対して軽減される。その後の混合後、前述のようにシリンジは真空スイッチにより落下する。
【0093】
さらなる実施例においては、前述のように、ピストンは混合中にシリンジ本体の上部に位置付けられておらず、混合チャンバーとシリンジ本体との間に封鎖部を与えない。その代わりに、分離封鎖部材15が混合チャンバーとシリンジ本体との間に与えられ、ピストン12自体は、混合中にシリンジ本体の底面に位置付けられる。
【0094】
図6に、封鎖部分15’’と開口部分15’’’とを有するスライド自在な板15Pの形状をなす封鎖部構造の1つの実施例を示す。セメントが混合チャンバーにおいて混合される間、この板は閉部が混合チャンバーとシリンジ本体との間に位置するように配される。ひとたびセメントが完全に混合されると、使用者は望ましくはプルリング21を引くことにより、図5Bに示されているように混合チャンバーとシリンジ本体との間に、板の開口部分が位置するようなその第2位置に板を移動する。その後、混合セメントは混合チャンバーから分注チャンバー内へ、その板の開口部分を通して流通することができる。空気がセメント内に混合することを避けるために、板は上面および底面上にシールを有して具備されるべきである。
【0095】
装置が運搬される間、かかる構造は頑強であるが、このシーリング構造のように、この部分のモールディングは相対的に複雑であり、このシール部でのリークの可能性がある。
【0096】
図7に、好ましい封鎖部構造を示しており、この封鎖部構造は回転自在なタップ部材15tと、第1の封鎖位置と第2位置との間のタップの回転手段と、を含み、この第1の封鎖位置では、タップは混合チャンバーの流出部および/または分注チャンバーの流入部を覆い、セメントが混合チャンバーからシリンジへと流通することができないようになっており、第2位置では、セメントが混合チャンバーから分注チャンバーへと流通するための流通路を与えるように、この流通路は混合チャンバーの流出開口部と分注チャンバーの流入開口部とに位置合わせされる。
【0097】
好ましい実施例においては、図7に示されるように、タップ構造は混合チャンバーと分注チャンバーとの間に取り付けられたカラーまたはハウジングに実装される。図7に、混合チャンバーと分注チャンバーとの間に位置するタップ15tおよびそのハウジング22を示す。図に示すように、ハンドルまたはスイッチ23はタップに取り付けられ、使用者に操作されるようにハウジングまたはカラーを通って伸長して与えられる。実際のタップ部材自体は図8Aおよび図8Bに示されており、図8Cおよび図8Dにおいては、取り付けられた状態であり、実質的に軸周囲に回転自在なC形状の部品である。図9は封鎖位置にあるタップ部材15tを示しており、それによってC形状のカーブは混合チャンバー出口に渡って封鎖部を与え、セメントが開口部を通って出ていくことを妨げる。混合後、スイッチまたはハンドル22は、図10に示されるように使用者によって開放位置まで回転され、それによってC形状のカーブは開口部との係合から回転し、その後C形状により、混合チャンバーの流出開口部と分注チャンバーの流入開口部との間のチャンネルまたは流通路が定められる。
【0098】
シール24が混合チャンバーの流出開口部周囲に与えられ、スイッチまたはハンドルがタップ部材のカラーまたはハウジングの壁を貫通することが望ましい。
【0099】
図11に、タップ部材のカラー22またはハウジングの概略図を示す。リブすなわち溝25がタップ部材の軸を配するために与えられてもよい。
【0100】
図12に、好ましい実施例における混合チャンバーの底部を示す。リブすなわち溝26を配することによって、タップ部材のカラーまたはハウジングの位置決め溝と係合するようになる。スイッチまたはハンドルが、その開放位置から封鎖位置までタップを動かすために必要とされる90度回転を超える過剰回転することを妨げるように、スイッチ止め27が与えられてもよい。
【0101】
図13Aおよび図13Bに示されるように、例えば混合チャンバーの流出開口部16がタップにより形成される流通路の直径および分注チャンバーの流入開口部17よりも小さい、というような異なる寸法が与えられてもよい。これによって、大量のセメントがタップ構造の壁およびシリンジの上部に接触することなく、このセメントが流通路を通って混合チャンバーから分注チャンバーへと放下されることを可能にし、故に損失が低減されセメントが逆行してタップ構造に影響を与えることを妨げる。
【0102】
図13Aおよび図13Bに、タップ自体および封鎖位置における概略図を各々示す。
【0103】
この構造においては、混合中および放下中に、混合チャンバー、分注チャンバーおよびシリンジベースに真空が供給されることが望ましい。
【0104】
ボウル型混合チャンバー1とシリンジチャンバー2とを組み合わせて使用することにより、大量のセメントを混合することを可能にし、分注シリンジの本体を形成する円筒型混合チャンバー2は、混合セメント量を受け入れるのに足りるほどの大きさであれば十分である。シンプレックスのようなセメントが使用される場合、これは非混合量にかなり満たない可能性がある。
【0105】
使用するセメント量およびタイプの違いにより、異なるシリンジサイズが本発明において使用され得ることが考えられる。このことは、使用者に多大なる自由度を与え、シリンジ本体サイズを最適化する。実質的に、本発明を使用することにより、可能な限り短いシリンジ本体サイズが最大所望量の混合セメントに対して使用することができる。現行のシリンジ本体が、本発明で使用され得ることが考えられる。
【0106】
従って、本構造は大量のセメントが効率的におよび完全に混合され分配されることができ得る混合装置を与える。システムは使用し易く、使用者に良く知られた普通の混合動作を使用するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流出開口部を有する混合チャンバーおよび流入開口部を有する分注チャンバーであって、
前記流出開口部と前記流入開口部との間でセメントが流動する混合チャンバーおよび分注チャンバーと、
前記混合チャンバーから前記分注チャンバーへのセメントの流動を妨げるように、前記流入開口部と前記流出開口部とを分断する封鎖手段と、をさらに含む整形外科用のセメント混合装置であって、
前記封鎖手段は、前記混合チャンバーから前記分注チャンバーへのセメントの流動を妨げる封鎖位置と、セメントを前記混合チャンバーから前記分注チャンバーへ流動させる開放位置と、の間を移動自在であることを特徴とする整形外科用のセメント混合装置。
【請求項2】
前記封鎖手段は、スライド自在の封鎖部材により底面で封鎖された混合チャンバー内でセメントが混合され、前記セメントを混合した後に前記シリンジ内へ投下する際に、前記スライド自在の封鎖部材が開放または取り外されるトラップドア構造を含むことを特徴とする請求項1に記載のセメント混合装置。
【請求項3】
前記トラップドア構造は、引き抜き用トラップドアを有しており、前記封鎖部材は前記混合チャンバーと前記分注チャンバーとの間にスライド自在に配された板を含み、前記板はその封鎖位置において前記混合チャンバーから前記分注チャンバーへのセメントの流動を妨げる封鎖部分と、前記流出開口部と前記流入開口部とに位置合わせしてセメントを流通させる開口部分と、を含むセメント混合装置であって、
使用者が前記板を第1位置に引くことにより前記封鎖部分を前記流入開口部と前記流出開口部との間に配し、第2位置においては前記開口部分を前記流入開口部と前記流出開口部との間に配することができるように、前記板がスライド自在に配置されることを特徴とする請求項2に記載のセメント混合装置。
【請求項4】
前記板は、ハンドルまたはプルリングとともに具備されることを特徴とする請求項3に記載のセメント混合装置。
【請求項5】
前記封鎖部材は、前記混合チャンバーと前記分注チャンバーとの間に取り付けられ、チャンネルまたは流通路を定めるタップを含むことを特徴とする請求項1に記載のセメント混合装置。
【請求項1】
流出開口部を有する混合チャンバーおよび流入開口部を有する分注チャンバーであって、
前記流出開口部と前記流入開口部との間でセメントが流動する混合チャンバーおよび分注チャンバーと、
前記混合チャンバーから前記分注チャンバーへのセメントの流動を妨げるように、前記流入開口部と前記流出開口部とを分断する封鎖手段と、をさらに含む整形外科用のセメント混合装置であって、
前記封鎖手段は、前記混合チャンバーから前記分注チャンバーへのセメントの流動を妨げる封鎖位置と、セメントを前記混合チャンバーから前記分注チャンバーへ流動させる開放位置と、の間を移動自在であることを特徴とする整形外科用のセメント混合装置。
【請求項2】
前記封鎖手段は、スライド自在の封鎖部材により底面で封鎖された混合チャンバー内でセメントが混合され、前記セメントを混合した後に前記シリンジ内へ投下する際に、前記スライド自在の封鎖部材が開放または取り外されるトラップドア構造を含むことを特徴とする請求項1に記載のセメント混合装置。
【請求項3】
前記トラップドア構造は、引き抜き用トラップドアを有しており、前記封鎖部材は前記混合チャンバーと前記分注チャンバーとの間にスライド自在に配された板を含み、前記板はその封鎖位置において前記混合チャンバーから前記分注チャンバーへのセメントの流動を妨げる封鎖部分と、前記流出開口部と前記流入開口部とに位置合わせしてセメントを流通させる開口部分と、を含むセメント混合装置であって、
使用者が前記板を第1位置に引くことにより前記封鎖部分を前記流入開口部と前記流出開口部との間に配し、第2位置においては前記開口部分を前記流入開口部と前記流出開口部との間に配することができるように、前記板がスライド自在に配置されることを特徴とする請求項2に記載のセメント混合装置。
【請求項4】
前記板は、ハンドルまたはプルリングとともに具備されることを特徴とする請求項3に記載のセメント混合装置。
【請求項5】
前記封鎖部材は、前記混合チャンバーと前記分注チャンバーとの間に取り付けられ、チャンネルまたは流通路を定めるタップを含むことを特徴とする請求項1に記載のセメント混合装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【公開番号】特開2009−165841(P2009−165841A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49443(P2009−49443)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【分割の表示】特願2006−501720(P2006−501720)の分割
【原出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【出願人】(501195186)サミット・メディカル・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【分割の表示】特願2006−501720(P2006−501720)の分割
【原出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【出願人】(501195186)サミット・メディカル・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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