説明

整流子の製造方法及び電機子の製造方法並びに整流子の製造装置

【課題】生産効率を向上させる。
【解決手段】本発明の整流子の製造方法は、荒削り用切削バイト36と仕上げ用切削バイト38とを一体に有する切削工具16を整流子素材56に対し整流子素材56の周方向に相対移動させながら整流子素材56の軸方向一方側(Z1側)から他方側(Z2側)へ相対移動させて整流子素材56の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を切削工具16により行う切削工程を含む。荒削り切削加工と仕上げ切削加工とを別々の工程で行う場合に比して、切削回数を減らすことができるので、生産効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流子の製造方法及び電機子の製造方法並びに整流子の製造装置に係り、特に切削工具で整流子素材の外周面を切削してこの整流子素材から整流子を製造する整流子の製造方法及び電機子の製造方法並びに整流子の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、整流子の製造方法及び製造装置としては、例えば、次のものがある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の例では、整流子素材の外周面を荒削り切削した後に、この荒削り切削により生じたバリを除去するために仕上げ切削をし、整流子素材から整流子を製造するようにしている。
【特許文献1】特開平7−163092号公報
【特許文献2】特開2004−289921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、整流子素材を切削して整流子素材から整流子を製造する際に、先ず、荒削り用の切削工具を整流子素材に対し軸方向一方側から他方側へ相対移動させて整流子素材の荒削り切削を行い、次いで、仕上げ用の切削工具を整流子素材に対し軸方向一方側から他方側へ相対移動させて整流子素材の仕上げ切削を行うようにすると、切削回数が複数となり、生産効率が低下する。
【0004】
また、上述のように整流子素材を切削して整流子素材から整流子を製造する場合には、整流子の加工精度を確保する必要がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、生産効率を向上させることができる整流子の製造方法及び電機子の製造方法並びに整流子の製造装置を提供することにある。
【0006】
また、本発明の他の目的は、整流子の加工精度を確保することができる整流子の製造方法及び電機子の製造方法並びに整流子の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の整流子の製造方法は、荒削り用切削部と仕上げ用切削部とを一体に有する切削工具を整流子素材に対し前記整流子素材の周方向に相対移動させながら前記整流子素材の軸方向一方側から他方側へ相対移動させて前記整流子素材の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を前記切削工具により行う切削工程を含む、ことを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の整流子の製造方法によれば、荒削り用切削部と仕上げ用切削部とを一体に有する切削工具を用いるので、切削工具を整流子素材の軸方向一方側から他方側へ相対移動させるだけで同一の工程において整流子素材の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を行うことができる。これにより、従来のように荒削り切削加工と仕上げ切削加工とを別々の工程で行う場合に比して、切削回数を減らすことができるので、生産効率を向上させることができる。
【0009】
しかも、荒削り用切削部と仕上げ用切削部とは同一の切削工具に備えられているので、整流子素材を切削する前に荒削り用切削部及び仕上げ用切削部の整流子素材への位置出し、すなわち、荒削り用切削部及び仕上げ用切削部の刃先延長線上に整流子素材の中心軸線が位置されるように荒削り用切削部及び仕上げ用切削部を整流子素材に対し相対移動させることを同時且つ容易に行うことができる。これにより、生産効率をより一層向上させることができる。
【0010】
また、仮に、荒削り用切削部及び仕上げ用切削部を別々の切削工具に備えた場合には、各切削工具について整流子素材への位置出しを別々に行う必要があり、位置出し用の駆動装置を別々に用意する必要がある。
【0011】
ところが、請求項1に記載の整流子の製造方法によれば、荒削り用切削部と仕上げ用切削部とは同一の切削工具に備えられているので、位置出しのために同一の駆動装置を用いることができる。これにより、生産コストを削減することができる。
【0012】
請求項2に記載の整流子の製造方法は、請求項1に記載の整流子の製造方法における前記切削工程において、前記整流子素材と同軸状に固定された回転シャフトの両端側をU字状又はV字状の溝部で回転可能に支持すると共に、前記回転シャフトと同軸状に固定されたコアに対し前記溝部の開口部側から径方向内側に押圧力を付与しつつ周方向に回転力を付与して前記整流子素材を前記切削工具に対して回転させた状態で前記整流子素材の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を行う、ことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の整流子の製造方法によれば、整流子素材と同軸状に固定された回転シャフトの両端側をU字状又はV字状の溝部で回転可能に支持するので、回転シャフトの回転時における軸ずれを抑制することができる。これにより、整流子の加工精度を確保することができる。
【0014】
また、仮に、例えば複数の爪を有するチャックで回転シャフトの両端側を把持するようにした場合には、複数の爪と回転シャフトとの間にクリアランスが生じることに起因して回転シャフトが傾斜し、整流子素材と荒削り用切削部及び仕上げ用切削部との位置ずれが生じ易く、整流子の加工精度が低下する虞がある。
【0015】
ところが、請求項2に記載の整流子の製造方法によれば、回転シャフトの両端側をU字状又はV字状の溝部で回転可能に支持することで、整流子素材と荒削り用切削部及び仕上げ用切削部との位置ずれも抑制することができる。これにより、整流子の加工精度をより一層確保することができる。
【0016】
請求項3に記載の整流子の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載の整流子の製造方法における前記切削工程において、前記整流子素材の周方向における前記荒削り用切削部と前記仕上げ用切削部との間の第一周方向長さを前記整流子素材の一つのセグメント部と一つのアンダーカット部とを合わせた第二周方向長さよりも長くして前記整流子素材の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を行う、ことを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の整流子の製造方法によれば、整流子素材の周方向における荒削り用切削部と仕上げ用切削部との間の第一周方向長さを整流子素材の一つのセグメント部と一つのアンダーカット部とを合わせた第二周方向長さよりも長くするので、荒削り用切削部と仕上げ用切削部とが整流子素材における同一のセグメント部を切削することを防止できる。従って、同一のセグメント部に切削荷重が集中することを防止できるので、これにより、整流子の加工精度をより一層確保することができる。
【0018】
請求項4に記載の整流子の製造方法は、請求項3に記載の整流子の製造方法における前記切削工程において、前記第一周方向長さを前記第二周方向長さの非整数倍の長さに設定して前記整流子素材の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を行う、ことを特徴とする。
【0019】
仮に、上述の第一周方向長さを第二周方向長さの整数倍の長さに設定した場合には、荒削り用切削部と仕上げ用切削部とがアンダーカット部に同時に位置し、その後、次のセグメント部を同時に切削することになる。そして、このときには切削工具に作用する切削抵抗が瞬間的に増大する。
【0020】
ところが、請求項4に記載の整流子の製造方法によれば、第一周方向長さを第二周方向長さの非整数倍の長さに設定するので、荒削り用切削部と仕上げ用切削部とが異なるセグメント部を同時に切削することを防止でき、この結果、整流子の加工精度を確保することができる。
【0021】
請求項5に記載の整流子の製造方法は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の整流子の製造方法における前記切削工程において、前記荒削り用切削部を前記仕上げ用切削部に対し前記整流子素材の軸方向他端側に位置させて前記整流子素材の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を行う、ことを特徴とする。
【0022】
請求項5に記載の整流子の製造方法によれば、切削工具を整流子素材の軸方向一方側から他方側へ相対移動させて整流子素材の外周面を切削加工する際に、荒削り用切削部を仕上げ用切削部に対し整流子素材の軸方向他端側に位置させるので、荒削り用切削部により荒削り切削された表面を仕上げ用切削部により仕上げ切削することができる。これにより、整流子の加工精度を確保することができると共に、仕上げ用切削部の刃先寿命の低下を抑制できる。
【0023】
請求項6に記載の整流子の製造方法は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の整流子の製造方法における前記切削工程において、前記整流子素材への前記荒削り用切削部の切り込み量よりも前記仕上げ用切削部の切り込み量を少なくして前記整流子素材の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を行う、ことを特徴とする。
【0024】
請求項6に記載の整流子の製造方法によれば、整流子素材への荒削り用切削部の切り込み量よりも仕上げ用切削部の切り込み量を少なくしているので、仕上げ用切削部に作用する切削抵抗を荒削り用切削部に作用する切削抵抗よりも小さくすることができる。これにより、整流子素材の外周面の仕上がりが良好となり、整流子の加工精度を確保することができる。
【0025】
また、前記課題を解決するために、請求項7に記載の電機子の製造方法は、整流子素材及び前記整流子素材と同軸状に固定された回転シャフトを備えた電機子の製造方法であって、前記整流子素材を請求項1の方法により切削することを特徴とする。
【0026】
請求項7に記載の電機子の製造方法によれば、整流子素材を請求項1の方法により切削するので、生産効率を向上させることができる。
【0027】
また、前記課題を解決するために、請求項8に記載の電機子の製造方法は、整流子素材と前記整流子素材と同軸状に固定された回転シャフト及びコアを備えた電機子の製造方法であって、前記整流子素材を請求項2の方法により切削することを特徴とする。
【0028】
請求項8に記載の電機子の製造方法によれば、整流子素材を請求項2の方法により切削するので、整流子の加工精度を確保することができる。
【0029】
また、前記課題を解決するために、請求項9に記載の整流子の製造装置は、荒削り用切削部と仕上げ用切削部とを一体に有する切削工具と、前記切削工具を整流子素材に対し前記整流子素材の周方向に相対移動させるための周方向駆動手段と、前記切削工具を前記整流子素材に対し前記整流子素材の軸方向に相対移動させるための軸方向駆動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0030】
請求項9に記載の整流子の製造装置では、荒削り用切削部と仕上げ用切削部とを一体に有する切削工具を整流子素材に対し整流子素材の周方向に相対移動させながら整流子素材の軸方向一方側から他方側へ相対移動させて整流子素材の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を切削工具により行うことができる。
【0031】
このように、請求項9に記載の整流子の製造装置によれば、荒削り用切削部と仕上げ用切削部とを一体に有する切削工具を用いるので、切削工具を整流子素材の軸方向一方側から他方側へ相対移動させるだけで同一の工程において整流子素材の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を行うことができる。これにより、従来のように荒削り切削加工と仕上げ切削加工とを別々の工程で行う場合に比して、切削回数を減らすことができるので、生産効率を向上させることができる。
【0032】
しかも、荒削り用切削部と仕上げ用切削部とは同一の切削工具に備えられているので、整流子素材を切削する前に荒削り用切削部及び仕上げ用切削部の整流子素材への位置出し、すなわち、荒削り用切削部及び仕上げ用切削部の刃先延長線上に整流子素材の中心軸線が位置されるように荒削り用切削部及び仕上げ用切削部を整流子素材に対し相対移動させることを同時且つ容易に行うことができる。これにより、生産効率をより一層向上させることができる。
【0033】
また、仮に、荒削り用切削部及び仕上げ用切削部を別々の切削工具に備えた場合には、各切削工具について整流子素材への位置出しを別々に行う必要があり、位置出し用の駆動装置を別々に用意する必要がある。
【0034】
ところが、請求項9に記載の整流子の製造装置によれば、荒削り用切削部と仕上げ用切削部とは同一の切削工具に備えられているので、位置出しのために同一の駆動装置を用いることができる。これにより、生産コストを削減することができる。
【0035】
請求項10に記載の整流子の製造装置は、請求項9に記載の整流子の製造装置において、前記整流子素材と同軸状に固定された回転シャフトの両端側を回転可能に支持するU字状又はV字状の溝部を有する支持部材を備え、前記周方向駆動手段は、前記回転シャフトと同軸状に固定されたコアに対し前記溝部の開口部側から径方向内側に押圧力を付与しつつ周方向に回転力を付与するための押圧回転力付与部材を有する、ことを特徴とする。
【0036】
請求項10に記載の整流子の製造装置では、整流子素材と同軸状に固定された回転シャフトの両端側を支持部材のU字状又はV字状の溝部で回転可能に支持すると共に、回転シャフトと同軸状に固定されたコアに対し溝部の開口部側から周方向駆動手段の押圧回転力付与部材によって径方向内側に押圧力を付与しつつ周方向に回転力を付与して整流子素材を切削工具に対して回転させた状態で整流子素材の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を行うことができる。
【0037】
このように、請求項10に記載の整流子の製造装置によれば、整流子素材と同軸状に固定された回転シャフトの両端側をU字状又はV字状の溝部で回転可能に支持するので、回転シャフトの回転時における軸ずれを抑制することができる。これにより、整流子の加工精度を確保することができる。
【0038】
また、仮に、例えば複数の爪を有するチャックで回転シャフトの両端側を把持するようにした場合には、複数の爪と回転シャフトとの間にクリアランスが生じることに起因して回転シャフトが傾斜し、整流子素材と荒削り用切削部及び仕上げ用切削部との位置ずれが生じ易く、整流子の加工精度が低下する虞がある。
【0039】
ところが、請求項10に記載の整流子の製造装置によれば、回転シャフトの両端側をU字状又はV字状の溝部で回転可能に支持することで、整流子素材と荒削り用切削部及び仕上げ用切削部との位置ずれも抑制することができる。これにより、整流子の加工精度をより一層確保することができる。
【0040】
請求項11に記載の整流子の製造装置は、請求項9又は請求項10に記載の整流子の製造装置において、前記切削工具は、前記荒削り用切削部と前記仕上げ用切削部とが互いに前記整流子素材の周方向に離間して配置されると共に、前記整流子素材の周方向における前記荒削り用切削部と前記仕上げ用切削部との間の第一周方向長さが前記整流子素材の一つのセグメント部と一つのアンダーカット部とを合わせた第二周方向長さよりも長く設定された構成とされている、ことを特徴とする。
【0041】
請求項11に記載の整流子の製造装置によれば、整流子素材の周方向における荒削り用切削部と仕上げ用切削部との間の第一周方向長さは、整流子素材の一つのセグメント部と一つのアンダーカット部とを合わせた第二周方向長さよりも長いので、これにより、荒削り用切削部と仕上げ用切削部とが整流子素材における同一のセグメント部を切削することを防止できる。従って、同一のセグメント部に切削荷重が集中することを防止できるので、これにより、整流子の加工精度をより一層確保することができる。
【0042】
請求項12に記載の整流子の製造装置は、請求項11に記載の整流子の製造装置において、前記切削工具は、前記第一周方向長さが前記第二周方向長さの非整数倍の長さに設定された構成とされている、ことを特徴とする。
【0043】
仮に、上述の第一周方向長さが第二周方向長さの整数倍の長さに設定された場合には、荒削り用切削部と仕上げ用切削部とがアンダーカット部に同時に位置し、その後、次のセグメント部を同時に切削することになる。そして、このときには切削工具に作用する切削抵抗が瞬間的に増大するので、整流子の加工精度が低下する虞がある。
【0044】
ところが、請求項12に記載の整流子の製造装置によれば、第一周方向長さが第二周方向長さの非整数倍の長さに設定されているので、荒削り用切削部と仕上げ用切削部とが異なるセグメント部を同時に切削することを防止でき、この結果、整流子の加工精度を確保することができる。
【0045】
請求項13に記載の整流子の製造装置は、請求項9〜請求項12のいずれか一項に記載の整流子の製造装置において、前記切削工具は、前記荒削り用切削部が前記仕上げ用切削部に対し前記整流子素材の軸方向他端側に位置された構成とされている、ことを特徴とする。
【0046】
請求項13に記載の整流子の製造装置によれば、荒削り用切削部が仕上げ用切削部に対し整流子素材の軸方向他端側に位置されているので、荒削り用切削部により荒削り切削された表面を仕上げ用切削部により仕上げ切削することができる。これにより、整流子の加工精度を確保することができると共に、仕上げ用切削部の刃先寿命の低下を抑制できる。
【0047】
請求項14に記載の整流子の製造装置は、請求項9〜請求項13のいずれか一項に記載の整流子の製造装置において、前記切削工具は、前記整流子素材への前記荒削り用切削部の切り込み量よりも前記仕上げ用切削部の切り込み量が少なくなるように前記荒削り用切削部及び前記仕上げ用切削部を保持する構成とされている、ことを特徴とする。
【0048】
請求項14に記載の整流子の製造装置によれば、整流子素材への荒削り用切削部の切り込み量よりも仕上げ用切削部の切り込み量を少なくすることができるので、仕上げ用切削部に作用する切削抵抗を荒削り用切削部に作用する切削抵抗よりも小さくすることができる。これにより、整流子素材の外周面の仕上がりが良好となり、整流子の加工精度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、図面に基づき、本発明の一実施形態について説明する。
【0050】
図1,図2には、本発明の一実施形態に係る整流子の製造装置10の全体構成が示されている。これらの図に示される整流子の製造装置10は、例えば、ブラシ付き直流モータに備えられる電機子50の整流子を製造するものであり、支持台12と、回転機構14と、切削工具16と、入力操作部18と、回転駆動用モータ20と、軸方向駆動用モータ22と、径方向駆動用モータ24と、制御回路26と有して構成されている。
【0051】
支持台12は、一対の支持部材28を有して構成されており、支持部材28は、整流子素材56と同軸状に固定された回転シャフト52の両端側を回転可能に支持するU字状の溝部29を有する構成とされている。
【0052】
回転機構14は、駆動ベルト30と、駆動プーリ32と、複数の従動プーリ34A〜34Dとを有して構成されている。駆動ベルト30は、駆動プーリ32及び複数の従動プーリ34A〜34Dにそれぞれ掛け渡しされている。複数の従動プーリ34A〜34Dのうち電機子50側に配置された一対の従動プーリ34A,34Bは、回転シャフト52と同軸状に固定されたコア54の外周部54A(この場合、鉛直方向上端部)に対し回転シャフト52側にオフセットして配置されている。これにより、駆動ベルト30における一対の従動プーリ34A,34B間の部分は、コア54に対し径方向内側へ押圧力を付与している。
【0053】
そして、この回転機構14では、駆動プーリ32が回転されると、駆動ベルト30が回転されてコア54に対し周方向に回転力を付与し、これにより、コア54と共に電機子50全体を回転させる構成とされている。
【0054】
切削工具16は、整流子素材56(整流子58になる前の段階の部材)に対し径方向に対向して配置されている。この切削工具16は、荒削り用切削バイト36と仕上げ用切削バイト38とを一体に保持している。
【0055】
図3には、この切削工具16がより詳細に示されており、図4には、荒削り用切削バイト36及び仕上げ用切削バイト38がより詳細に示されている。図3(A)に示されるように、荒削り用切削バイト36と仕上げ用切削バイト38とは、互いに整流子素材56の周方向に離間して配置されている。
【0056】
また、図4(A)に示されるように、整流子素材56の周方向における荒削り用切削バイト36と仕上げ用切削バイト38との間の第一周方向長さL1は、整流子素材56の一つのセグメント部56Aと一つのアンダーカット部56Bとを合わせた第二周方向長さL2よりも長く設定されている。さらに、上述の第一周方向長さL1は、第二周方向長さL2の非整数倍の長さに設定されている。
【0057】
また、図4(B)に示されるように、荒削り用切削バイト36は、仕上げ用切削バイト38に対し上述の整流子素材56の軸方向他端側(Z2側)に位置されている。また、この荒削り用切削バイト36及び仕上げ用切削バイト38は、整流子素材56への荒削り用切削バイト36の切り込み量D1よりも仕上げ用切削バイト38の切り込み量D2が少なくなるように切削工具16に保持されている。
【0058】
なお、整流子素材56の複数のセグメント部の周方向長さが互いに異なる場合には、この複数のセグメント部のうち周方向長さが最大となるセグメント部とアンダーカット部とを合わせた長さを上述の第二周方向長さL2とする。また、荒削り用切削バイト36及び仕上げ用切削バイト38は、図3(A),図3(C)に示されるように、整流子素材56の径方向に沿って延びる長孔42を有し、この長孔42が切削工具16のホルダ39に螺合された精密ネジ44に対し相対移動されることで整流子素材56の径方向に位置調節可能とされている。また、荒削り用切削バイト36と仕上げ用切削バイト38とは、ホルダ39に対し取り外し可能とされている。
【0059】
図1に示される入力操作部18は、送り速度、送り量、切り込み量などの加工条件や、加工開始及び加工終了の指令を入力できるようになっており、回転駆動用モータ20は、上述の駆動プーリ32を回転させる構成とされている。
【0060】
軸方向駆動用モータ22は、上述の切削工具16を整流子素材56に対し整流子素材56の軸方向に移動させる構成とされており、径方向駆動用モータ24は、上述の切削工具16を整流子素材56に対し整流子素材56の径方向に移動させる構成とされている。
【0061】
制御回路26は、例えば、CPU、ROM、RAM等を有する電子回路により構成されており、整流子素材56を切削加工するためのプログラムを予め記憶している。そして、制御回路26は、入力操作部18から入力された送り速度、送り量、切り込み量などの加工条件や加工開始及び加工終了の指令に基づいて、上述の回転駆動用モータ20、軸方向駆動用モータ22、径方向駆動用モータ24の駆動を制御し、切削工具16により整流子素材56を切削加工する構成とされている。
【0062】
次に、上記構成からなる整流子の製造装置10を用いた整流子(電機子)の製造方法について説明する。
【0063】
(切削工程)
入力操作部18に加工開始指令が入力されると、制御回路26は、軸方向駆動用モータ22及び径方向駆動用モータ24の駆動を制御し、切削工具16を図2の矢印(1)で示されるように原点位置から整流子素材56の軸方向一方側(Z1側)に移動させる。
【0064】
そして、制御回路26は、軸方向駆動用モータ22及び径方向駆動用モータ24の駆動を制御し、荒削り用切削バイト36及び仕上げ用切削バイト38の整流子素材56への位置出しを行う。すなわち、制御回路26は、荒削り用切削バイト36及び仕上げ用切削バイト38の刃先延長線上に整流子素材56の中心軸線が位置されるように荒削り用切削バイト36及び仕上げ用切削バイト38を整流子素材56に対し相対移動させる。
【0065】
続いて、制御回路26は、回転駆動用モータ20の駆動を制御し、駆動プーリ32を回転させる。これにより、駆動ベルト30が回転され、回転シャフト52の両端側がU字状の溝部29で回転可能に支持された状態で電機子50と共に整流子素材56が回転される。
【0066】
続いて、制御回路26は、整流子素材56を回転させながら、軸方向駆動用モータ22の駆動を制御し、切削工具16を図2の矢印(2)で示されるように整流子素材56の軸方向一方側(Z1側)から他方側(結線爪側;Z2側)に移動させる。
【0067】
このとき、図4(B)に示されるように、荒削り用切削バイト36が仕上げ用切削バイト38に対し整流子素材56の軸方向他端側(Z2側)に位置されるので、これにより、荒削り用切削バイト36により荒削り切削された表面が仕上げ用切削バイト38により仕上げ切削される。
【0068】
ここで、図3(C)に示されるように、整流子素材56の周方向における荒削り用切削バイト36と仕上げ用切削バイト38との間の第一周方向長さL1は、整流子素材56の一つのセグメント部56Aと一つのアンダーカット部56Bとを合わせた第二周方向長さL2よりも長く設定されている。従って、荒削り用切削バイト36と仕上げ用切削バイト38とが整流子素材56における同一のセグメント部を切削することが防止され、同一のセグメント部に切削荷重が集中することが防止される。
【0069】
しかも、第一周方向長さL1は、第二周方向長さL2の非整数倍の長さに設定されているので、これにより、荒削り用切削バイト36と仕上げ用切削バイト38とが異なるセグメント部を同時に切削することも防止される。
【0070】
さらに、図4(B)に示されるように、整流子素材56への荒削り用切削バイト36の切り込み量D1よりも仕上げ用切削バイト38の切り込み量D2が少なくされているので、仕上げ用切削バイト38に作用する切削抵抗が荒削り用切削バイト36に作用する切削抵抗よりも小さくなり、整流子素材56の外周面の仕上がりが良好となる。
【0071】
続いて、制御回路26は、径方向駆動用モータ24の駆動を制御し、切削工具16を図2の矢印(3)で示される如く整流子素材56の径方向外側へ退避させる。そして、その後、制御回路26は、軸方向駆動用モータ22及び径方向駆動用モータ24の駆動を制御し、切削工具16を図2の矢印(4)で示されるように上述の退避位置から原点位置に復帰させる。
【0072】
(バリ取り工程)
そして、整流子素材56は、上述の切削工程の後、図5に示される如く、バリ取り工程に搬送される。そして、このバリ取り工程において、整流子素材56は、バリ取り装置のナイロンブラシ40によってアンダーカット溝に残されたバリ等を除去される。本発明の一実施形態に係る整流子(電機子)の製造方法では、以上の要領により、整流子素材56から整流子58が製造される。
【0073】
次に、上述の本発明の一実施形態に係る整流子(電機子)の製造方法の効果について説明する。
【0074】
ここで、本発明の一実施形態に係る整流子の製造方法の効果をより明確にするために、第一乃至第四比較例に係る整流子の製造方法について説明する。
【0075】
[第一比較例]
図6,図7には、第一比較例に係る整流子の製造方法で用いられる整流子の製造装置110の全体構成が示されている。この比較例に係る整流子の製造装置110は、切削工具116A,116Bを除き、上述の本発明の一実施形態に係る整流子の製造装置10と同一の構成とされている。
【0076】
この第一比較例に係る整流子の製造方法では、荒削り切削加工と仕上げ切削加工とでそれぞれ別々の整流子の製造装置110が使用される。つまり、図6に示される整流子の製造装置110は、荒削り切削加工用とされており、図7に示される整流子の製造装置110は、仕上げ切削加工用とされている。
【0077】
そして、この第一比較例に係る整流子の製造方法では、先ず、図6に示されるように、荒削り用の切削工具116Aを整流子素材56に対し軸方向一方側(Z1側)から他方側(Z2側)へ相対移動させて整流子素材56の荒削り切削を行い、次いで、図7に示されるように、仕上げ用の切削工具116Bを整流子素材56に対し軸方向一方側(Z1側)から他方側(Z2側)へ相対移動させて整流子素材56の仕上げ切削を行うようにしている。
【0078】
[第二比較例]
図8には、第二比較例に係る整流子の製造方法で用いられる整流子の製造装置210の全体構成が示されている。この第二比較例に係る整流子の製造装置210では、回転シャフト52を把持する一対の爪212A,212Bを有するチャック212と、荒削り用の切削工具216A及び仕上げ用の切削工具216Bとを有する構成とされている。荒削り用の切削工具216Aと仕上げ用の切削工具216Bとは、別体に構成されている。
【0079】
そして、この第二比較例に係る整流子の製造方法では、荒削り用の切削工具216A及び仕上げ用の切削工具216Bを整流子素材56の軸方向一方側(Z1側)から他方側(Z2側)へ同時に相対移動させ、同一の工程において整流子素材56の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を行うようにしている。
【0080】
[第三比較例]
図9には、第三比較例に係る整流子の製造方法で用いられる切削工具316によって整流子素材56の外周面を切削する様子が示されている。この第三比較例に係る切削工具316は、荒削り用切削部336と仕上げ用切削部338とを一体に有する構成とされている。整流子素材56の周方向における荒削り用切削部336と仕上げ用切削部338との間の第一周方向長さL1は、整流子素材56の一つのセグメント部56Aと一つのアンダーカット部56Bとを合わせた第二周方向長さL2よりも短くなっている。
【0081】
そして、この第三比較例に係る整流子の製造方法では、荒削り用切削部336と仕上げ用切削部338とを一体に有する切削工具316を整流子素材56に対し整流子素材56の周方向に相対移動させながら整流子素材56の軸方向一方側(Z1側)から他方側(Z2側)へ相対移動させて整流子素材56の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を切削工具316により行うようにしている。なお、本例は、L1≦L2となる場合を除いて、本発明の一実施形態に含まれるものである。
【0082】
[第四比較例]
第四比較例に係る整流子の製造方法は、特に図示しないが、単に、荒削り切削加工を廃止し、仕上げ切削用の切削工具の切り込み量を増加させたものである。
【0083】
しかしながら、上述の第一乃至第四比較例に係る整流子の製造方法では、次の問題がある。
【0084】
すなわち、第一比較例に係る整流子の製造方法では、先ず、荒削り用の切削工具116Aを整流子素材56に対し軸方向一方側から他方側へ相対移動させて整流子素材56の荒削り切削を行い、次いで、仕上げ用の切削工具116Bを整流子素材56に対し軸方向一方側から他方側へ相対移動させて整流子素材56の仕上げ切削を行うので、切削回数が複数となり、生産効率が低下する。
【0085】
また、第二比較例に係る整流子の製造方法では、荒削り用の切削工具216A及び仕上げ用の切削工具216Bの両方を用いるので、整流子の製造装置210が複雑となり、コストが増加する。また、整流子素材56を切削する前に荒削り用の切削工具216A及び仕上げ用の切削工具216Bの整流子素材56への位置出しを別々に行う必要があり、且つ、位置出しが容易でない。また、各切削工具216A,216Bについて整流子素材56への位置出しを別々に行う必要があり、位置出し用の駆動装置を別々に用意する必要がある。さらに、複数の爪212A,212Bを有するチャック212で回転シャフト52の両端側を把持するので、複数の爪212A,212Bと回転シャフト52との間にクリアランスが生じることに起因して回転シャフト52が傾斜し、整流子素材56と荒削り用の切削工具216A及び仕上げ用の切削工具216Bとの位置ずれが生じ易く、整流子の加工精度が低下する虞がある。
【0086】
また、第三比較例に係る整流子の製造方法では、整流子素材56の周方向における荒削り用切削部336と仕上げ用切削部338との間の第一周方向長さL1が整流子素材56の一つのセグメント部56Aと一つのアンダーカット部56Bとを合わせた第二周方向長さL2よりも短くなっているので、荒削り用切削部336と仕上げ用切削部338とが整流子素材56における同一のセグメント部を切削することがあり、この場合に同一のセグメント部に切削荷重が集中することになる。
【0087】
また、第四比較例に係る整流子の製造方法では、切削工具に対する切削抵抗が大きくなり、整流子の加工精度が低下する虞がある。
【0088】
これに対し、本発明の一実施形態に係る整流子の製造方法によれば、上述の第一乃至第四比較例に係る整流子の製造方法に対し、以下の特有な効果を奏する。
【0089】
すなわち、本発明の一実施形態に係る整流子の製造方法によれば、荒削り用切削バイト36と仕上げ用切削バイト38とを一体に有する切削工具16を用いるので、切削工具16を整流子素材56の軸方向一方側から他方側へ相対移動させるだけで同一の工程において整流子素材56の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を行うことができる。これにより、第一比較例に係る整流子の製造方法のように荒削り切削加工と仕上げ切削加工とを別々の工程で行う場合に比して、切削回数を減らすことができるので、生産効率を向上させることができる。
【0090】
しかも、本発明の一実施形態に係る整流子の製造方法によれば、荒削り用切削バイト36と仕上げ用切削バイト38とは同一の切削工具16に備えられているので、整流子素材56を切削する前に荒削り用切削バイト36及び仕上げ用切削バイト38の整流子素材56への位置出しを同時に行うことができ、且つ、その位置出しは第二比較例に係る整流子の製造方法に比して容易に行うことができる。これにより、生産効率をより一層向上させることができる。
【0091】
さらに、本発明の一実施形態に係る整流子の製造方法によれば、荒削り用切削バイト36と仕上げ用切削バイト38とは同一の切削工具16に備えられているので、位置出しのために同一の駆動装置を用いることができる。これにより、生産コストを削減することができる。
【0092】
また、本発明の一実施形態に係る整流子の製造方法によれば、回転シャフト52の両端側をU字状の溝部29で回転可能に支持するので、回転シャフト52の回転時における軸ずれを抑制することができる。これにより、整流子の加工精度を確保することができる。
【0093】
また、本発明の一実施形態に係る整流子の製造方法によれば、回転シャフト52の両端側をU字状の溝部29で回転可能に支持することで、整流子素材56と荒削り用切削バイト36及び仕上げ用切削バイト38との位置ずれも抑制することができる。これにより、第二比較例に係る整流子の製造方法に比して、整流子の加工精度をより一層向上させることができる。
【0094】
また、本発明の一実施形態に係る整流子の製造方法によれば、整流子素材56の周方向における荒削り用切削バイト36と仕上げ用切削バイト38との間の第一周方向長さL1が整流子素材56の一つのセグメント部56Aと一つのアンダーカット部56Bとを合わせた第二周方向長さL2よりも長く設定された切削工具16を用いるので、荒削り用切削バイト36と仕上げ用切削バイト38とが整流子素材56における同一のセグメント部を切削することを防止できる。従って、第三比較例に係る整流子の製造方法の如く同一のセグメント部に切削荷重が集中することを防止できるので、これにより、整流子の加工精度をより一層確保することができる。
【0095】
また、仮に、上述の第一周方向長さL1が第二周方向長さL2の整数倍の長さに設定された場合には、荒削り用切削バイト36と仕上げ用切削バイト38とがアンダーカット部に同時に位置し、その後、次のセグメント部を同時に切削することになる。そして、このときには切削工具16に作用する切削抵抗が瞬間的に増大するので、整流子の加工精度が低下する虞がある。
【0096】
ところが、本発明の一実施形態に係る整流子の製造方法によれば、第一周方向長さL1が第二周方向長さL2の非整数倍の長さに設定されているので、荒削り用切削バイト36と仕上げ用切削バイト38とが異なるセグメント部を同時に切削することを防止でき、この結果、整流子の加工精度を確保することができる。
【0097】
また、本発明の一実施形態に係る整流子の製造方法によれば、荒削り用切削バイト36が仕上げ用切削バイト38に対し整流子素材56の軸方向他端側(Z2側)に位置されているので、荒削り用切削バイト36により荒削り切削された表面を仕上げ用切削バイト38により仕上げ切削することができる。これにより、荒削り用切削バイト36及び仕上げ用切削バイト38の刃先に作用する切削抵抗は、第二比較例に係る整流子の製造方法のように荒削り用の切削工具216A及び仕上げ用の切削工具216Bを用いた場合と同等となる。従って、整流子の加工精度を確保することができると共に、仕上げ用切削バイト38の刃先寿命の低下を抑制できる。
【0098】
また、本発明の一実施形態に係る整流子の製造方法によれば、整流子素材56への荒削り用切削バイト36の切り込み量D1よりも仕上げ用切削バイト38の切り込み量D2を少なくしているので、仕上げ用切削バイト38に作用する切削抵抗を荒削り用切削バイト36に作用する切削抵抗よりも小さくすることができる。これにより、第四比較例に係る整流子の製造方法に比して、整流子素材56の外周面の仕上がりが良好となり、整流子の加工精度を確保することができる。
【0099】
また、本発明の一実施形態に係る整流子の製造方法によれば、上述のように仕上げ用切削バイト38に作用する切削抵抗を小さくすることができるので、例えば、切削工具16の送り速度を遅くしたり、仕上げ用切削バイト38の切り込み量D2を小さくしたりする必要が無いので、これにより、生産効率を向上させることができる。
【0100】
また、本発明の一実施形態に係る整流子の製造方法によれば、切削工具16の構造を改良するだけであるので、製造コストの増加を抑制することができる。また、荒削り用切削バイト36が仕上げ用切削バイト38には、一般の規格品のものを使用することができるので、このことによっても製造コストの増加を抑制することができる。
【0101】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【0102】
例えば、上記実施形態では、回転機構14及び回転駆動用モータ20を用いて、切削工具16を整流子素材56に対し整流子素材56の周方向に移動させていたが、その他の周方向駆動手段を用いて、切削工具16が整流子素材56に対し整流子素材56の周方向に相対移動されるように、切削工具16及び整流子素材56の少なくとも一つを移動させるようにしても良い。
【0103】
また、上記実施形態では、軸方向駆動用モータ22を用いて、切削工具16を整流子素材56に対し整流子素材56の軸方向に移動させていたが、その他の軸方向駆動手段を用いて、切削工具16が整流子素材56に対し整流子素材56の軸方向に相対移動されるように、切削工具16及び整流子素材56の少なくとも一つを移動させるようにしても良い。
【0104】
また、上記実施形態では、径方向駆動用モータ24を用いて、切削工具16を整流子素材56に対し整流子素材56の径方向に移動させていたが、その他の径方向駆動手段を用いて、切削工具16が整流子素材56に対し整流子素材56の径方向に相対移動されるように、切削工具16及び整流子素材56の少なくとも一つを移動させるようにしても良い。
【0105】
また、上記実施形態において、回転シャフト52を回転可能に支持するための溝部29は、U字状に構成されていたが、V字状に構成されていても良い。
【0106】
また、上記実施形態では、切削工具16に対し荒削り用切削バイト36及び仕上げ用切削バイト38が取り外し可能とされていたが、切削工具16に荒削り用切削部及び仕上げ用切削部が一体的に形成されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の一実施形態に係る整流子の製造装置の全体構成を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る整流子の製造装置の全体構成を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る整流子の製造装置に備えられた切削工具の構成を示す図である。
【図4】図3の切削工具の要部拡大図である。
【図5】整流子素材のバリを除去するためのバリ取り工程を説明する図である。
【図6】第一比較例に係る整流子の製造方法を説明する図である。
【図7】第一比較例に係る整流子の製造方法を説明する図である。
【図8】第二比較例に係る整流子の製造方法を説明する図である。
【図9】第三比較例に係る整流子の製造方法を説明する
【符号の説明】
【0108】
10…製造装置、12…支持台、14…回転機構(周方向駆動手段の一部)、16…切削工具、18…入力操作部、20…回転駆動用モータ(周方向駆動手段の一部)、22…軸方向駆動用モータ(軸方向駆動手段)、24…径方向駆動用モータ、26…制御回路、28…支持部材、29…溝部、30…駆動ベルト(押圧回転力付与部材)、36…荒削り用切削バイト(荒削り用切削部)、38…仕上げ用切削バイト(仕上げ用切削部)、40…ナイロンブラシ、42…長孔、44…精密ネジ、50…電機子、52…回転シャフト、54…コア、54A…外周部、56…整流子素材、56A…セグメント部、56B…アンダーカット部、58…整流子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荒削り用切削部と仕上げ用切削部とを一体に有する切削工具を整流子素材に対し前記整流子素材の周方向に相対移動させながら前記整流子素材の軸方向一方側から他方側へ相対移動させて前記整流子素材の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を前記切削工具により行う切削工程を含む、
ことを特徴とする整流子の製造方法。
【請求項2】
前記切削工程において、前記整流子素材と同軸状に固定された回転シャフトの両端側をU字状又はV字状の溝部で回転可能に支持すると共に、前記回転シャフトと同軸状に固定されたコアに対し前記溝部の開口部側から径方向内側に押圧力を付与しつつ周方向に回転力を付与して前記整流子素材を前記切削工具に対して回転させた状態で前記整流子素材の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の整流子の製造方法。
【請求項3】
前記切削工程において、前記整流子素材の周方向における前記荒削り用切削部と前記仕上げ用切削部との間の第一周方向長さを前記整流子素材の一つのセグメント部と一つのアンダーカット部とを合わせた第二周方向長さよりも長くして前記整流子素材の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を行う、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の整流子の製造方法。
【請求項4】
前記切削工程において、前記第一周方向長さを前記第二周方向長さの非整数倍の長さに設定して前記整流子素材の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を行う、
ことを特徴とする請求項3に記載の整流子の製造方法。
【請求項5】
前記切削工程において、前記荒削り用切削部を前記仕上げ用切削部に対し前記整流子素材の軸方向他端側に位置させて前記整流子素材の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を行う、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の整流子の製造方法。
【請求項6】
前記切削工程において、前記整流子素材への前記荒削り用切削部の切り込み量よりも前記仕上げ用切削部の切り込み量を少なくして前記整流子素材の外周面の荒削り切削加工及び仕上げ切削加工を行う、
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の整流子の製造方法。
【請求項7】
整流子素材及び前記整流子素材と同軸状に固定された回転シャフトを備えた電機子の製造方法であって、
前記整流子素材を請求項1の方法により切削することを特徴とする電機子の製造方法。
【請求項8】
整流子素材と前記整流子素材と同軸状に固定された回転シャフト及びコアを備えた電機子の製造方法であって、
前記整流子素材を請求項2の方法により切削することを特徴とする電機子の製造方法。
【請求項9】
荒削り用切削部と仕上げ用切削部とを一体に有する切削工具と、
前記切削工具を整流子素材に対し前記整流子素材の周方向に相対移動させるための周方向駆動手段と、
前記切削工具を前記整流子素材に対し前記整流子素材の軸方向に相対移動させるための軸方向駆動手段と、
を備えたことを特徴とする整流子の製造装置。
【請求項10】
前記整流子素材と同軸状に固定された回転シャフトの両端側を回転可能に支持するU字状又はV字状の溝部を有する支持部材を備え、
前記周方向駆動手段は、前記回転シャフトと同軸状に固定されたコアに対し前記溝部の開口部側から径方向内側に押圧力を付与しつつ周方向に回転力を付与するための押圧回転力付与部材を有する、
ことを特徴とする請求項9に記載の整流子の製造装置。
【請求項11】
前記切削工具は、前記荒削り用切削部と前記仕上げ用切削部とが互いに前記整流子素材の周方向に離間して配置されると共に、前記整流子素材の周方向における前記荒削り用切削部と前記仕上げ用切削部との間の第一周方向長さが前記整流子素材の一つのセグメント部と一つのアンダーカット部とを合わせた第二周方向長さよりも長く設定された構成とされている、
ことを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の整流子の製造装置。
【請求項12】
前記切削工具は、前記第一周方向長さが前記第二周方向長さの非整数倍の長さに設定された構成とされている、
ことを特徴とする請求項11に記載の整流子の製造装置。
【請求項13】
前記切削工具は、前記荒削り用切削部が前記仕上げ用切削部に対し前記整流子素材の軸方向他端側に位置された構成とされている、
ことを特徴とする請求項9〜請求項12のいずれか一項に記載の整流子の製造装置。
【請求項14】
前記切削工具は、前記整流子素材への前記荒削り用切削部の切り込み量よりも前記仕上げ用切削部の切り込み量が少なくなるように前記荒削り用切削部及び前記仕上げ用切削部を保持する構成とされている、
ことを特徴とする請求項9〜請求項13のいずれか一項に記載の整流子の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−131072(P2009−131072A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304347(P2007−304347)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】