説明

整流子の製造方法

【課題】整流子の絶縁体を金型で樹脂成形する際、成形樹脂が外側にはみ出てしまうことを抑制することができる整流子の製造方法を提供する。
【解決手段】円筒素材22の軸方向端部は、軸方向に突出する複数の突出部(各ライザ14の折り曲げ端部14a、第1及び第2中爪15,16の折り曲げ端部15a,16a)を有する段差状に形成される。そして、第1及び第2金型32a,32bにそれぞれ設けられた耐熱ゴム部材34a,34bを各折り曲げ端部14a,15a,16aの周方向の隙間に入り込ませてシールし、その状態で円筒素材22の内側に樹脂材料を封入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整流子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、直流モータの整流子は、電機子の回転軸に固着される樹脂製の円筒形状の絶縁体と、その絶縁体の外周面に導電性を有する複数のセグメントを取着したものである。各セグメントには、電機子のコアに巻回されたコイルの端部が結線されるライザが設けられている。そして、セグメントの外周面には給電ブラシが摺接され、その給電ブラシから印加される直流電源がセグメントを介して電機子のコイルへと供給されるようになっている。
【0003】
ところで、上記のような整流子の製造方法としては、例えば特許文献1のように、まず、金型に配置された導電性を有する円筒素材の内側に樹脂材料を封入してその円筒素材の内側に絶縁体を成形し、その後、円筒素材を軸方向に沿って切断することで絶縁体の外周に複数のセグメントが成形されるようになっている。尚、各セグメントのライザの形成方法としては、例えば、円筒素材の軸方向端部に軸方向突出片を複数成形し、その軸方向突出片を径方向外側に折り曲げて、その先端部を円筒素材の軸方向中央側に向けることでフック状のライザが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−137096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような整流子の製造方法において、円筒素材の軸方向端部が平面状ではなく段差が付いている場合、円筒素材の内側への樹脂封入の際に、金型で円筒素材の軸方向端部を押さえ付けても段差部分に隙間が生じ、その隙間から樹脂が外側にはみ出してしまう。このような円筒素材の軸方向端部の段差は、例えば、上記のようにライザをフック状に折り曲げ形成する場合に形成される。そして、段差部分からこのはみ出した樹脂は、モータの組み付け後に剥がれ落ちた場合には、モータ内の異物となってしまう。
【0006】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、整流子の絶縁体を金型で樹脂成形する際、成形樹脂が外側にはみ出てしまうことを抑制することができる整流子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、金型に配置された導電性を有する円筒素材の内側に樹脂材料を封入し、該円筒素材の内側に絶縁体を成形した後、前記円筒素材を軸方向に沿って切断することで前記絶縁体の外周に複数のセグメントを成形する整流子の製造方法であって、前記円筒素材の軸方向端部は、軸方向に突出する複数の突出部を有する段差状に形成され、前記金型に設けられた耐熱ゴム部材を前記各突出部の周方向の隙間に入り込ませてシールし、その状態で前記円筒素材の内側に前記樹脂材料を封入することを特徴とする。
【0008】
この発明では、円筒素材の内側に樹脂材料を封入する際に、金型に設けられた耐熱ゴム部材を各突出部の周方向の隙間に入り込ませることで、その隙間をシールすることが可能となる。これにより、整流子の絶縁体を金型で樹脂成形する際、円筒素材の軸方向端部と金型の間から成形樹脂が外側にはみ出てしまうことを抑制することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の整流子の製造方法において、前記耐熱ゴム部材は、前記円筒素材の軸方向端部に対応した円環状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
この発明では、円環状の耐熱ゴム部材を円筒素材の軸方向端部に押し付けることで、その軸方向端部の段差状(突出部)に応じて耐熱ゴム部材が変形し、これにより、耐熱ゴム部材を各突出部の周方向の隙間に入り込ませてシールすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の整流子の製造方法において、前記耐熱ゴム部材の軸方向寸法は、周方向全体に亘って均一に設定されていることを特徴とする。
この発明では、円筒素材を金型に配置する際、耐熱ゴム部材の周方向の位置決めが不要となり、その結果、作業性を向上させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の整流子の製造方法において、前記耐熱ゴム部材は、前記円筒素材の軸方向端部に応じた段差状に形成されていることを特徴とする。
この発明では、耐熱ゴム部材が円筒素材の軸方向端部の段差状(突出部)に応じた形状となるため、円筒素材の突出部との軸方向の当接による耐熱ゴム部材の過大圧縮を抑制することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の整流子の製造方法において、前記耐熱ゴム部材は、前記各突出部の周方向の隙間に対応する位置に円環状に複数並設されていることを特徴とする。
【0014】
この発明では、耐熱ゴム部材は、円筒素材の軸方向端部における各突出部の周方向の隙間に対応して設けられるため、耐熱ゴム部材と突出部とが軸方向に当接しないように構成される。このため、円筒素材の突出部との軸方向の当接による耐熱ゴム部材の過大圧縮を避けることができる。また、耐熱ゴム部材を円筒素材の軸方向端部に対応した円環状に形成する構成と比較して、耐熱ゴム部材に掛かる材料コストを抑えることができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の整流子の製造方法において、前記金型は、前記各耐熱ゴム部材の周方向の間に設けられて前記各突出部と軸方向に当接する当接部を有し、前記当接部は、付勢部材によって軸方向の前記突出部側に付勢されることを特徴とする。
【0016】
この発明では、円筒素材の突出部と当接する当接部が付勢部材によって軸方向の突出部側に付勢されるため、突出部に対して好適な圧で当接部を当接させることができ、その結果、突出部と当接部との間を好適にシールすることが可能となる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の整流子の製造方法において、前記金型には、前記耐熱ゴム部材の外径側を保持する保持部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
この発明では、円筒素材内への樹脂封入の際に、その樹脂からの内圧による耐熱ゴム部材の外径側への変形を抑えることができ、その結果、円筒素材の軸方向端部と金型との間を安定してシールさせることができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の整流子の製造方法において、前記各セグメントの軸方向端部には、径方向外側に折り曲げ形成された結線用のライザと、径方向内側に折り曲げ形成されて前記絶縁体内に埋設される中爪とが形成され、前記ライザ及び前記中爪の折り曲げ端部が前記突出部として構成されることを特徴とする。
【0020】
この発明では、結線用のライザと、絶縁体内に埋設される中爪とが折り曲げによって成形されるため、整流子を容易に成形することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
従って、上記記載の発明によれば、整流子の絶縁体を金型で樹脂成形する際、成形樹脂が外側にはみ出てしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の整流子を示す斜視図。
【図2】セグメントの素材を示す斜視図。
【図3】打ち抜き素材を示す斜視図。
【図4】円筒素材を示す斜視図。
【図5】円筒素材のライザ及び中爪を折り曲げた状態を示す斜視図。
【図6】金型による樹脂封入工程の態様を模式的に示す断面図。
【図7】(a)(b)第1金型の耐熱ゴム部材と円筒素材の軸方向端部との関係を示す模式図。
【図8】(a)(b)別例の整流子の製造方法を説明するための模式図。
【図9】(a)(b)別例の整流子の製造方法を説明するための模式図。
【図10】(a)(b)別例の整流子の製造方法を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、整流子10は、熱硬化性樹脂よりなる円筒状の絶縁体11と、該絶縁体11の外周面に固定された8個のセグメント12とから構成されている。絶縁体11の径方向の中央部には、軸方向に貫通する圧入孔11aが形成されており、この圧入孔11aに電機子の回転軸(図示略)が圧入されて同回転軸に一体回転可能に固定される。
【0024】
8個のセグメント12は、導電性の金属材料(例えば銅)よりなり、周方向に等角度間隔に並設されるとともに、軸方向に延びる略短冊状をなしている。周方向に隣り合うセグメント12間には、軸方向に沿って延びる分断溝13がそれぞれ設けられており、この分断溝13によって周方向に隣り合うセグメント12同士が離間され、互いに絶縁分離されている。尚、各分断溝13は、各セグメント12の厚さ(径方向の厚さ)よりも径方向内側に向かって深く形成されており、絶縁体11にまで形成されている。
【0025】
各セグメント12の軸方向一端部(図1において上端部)には、ライザ14が形成されている。このライザ14は、径方向外側に折り曲げ形成されるとともに、その先端部がセグメント12の長手方向中央側を向くように形成されている。また、ライザ14は、各セグメント12の周方向中央部に形成されている。尚、このライザ14は、電機子を構成する電機子コイル(図示略)と結線される。
【0026】
また、各セグメント12の軸方向両端部には、それぞれ第1中爪15及び第2中爪16が形成されている。ライザ14側の端部に形成された第1中爪15は、各セグメント12においてライザ14の周方向両側にそれぞれ形成されている。一方、ライザ14及び第1中爪15とは反対側の端部に形成された第2中爪16は、第1中爪15と軸方向に対向する位置に一対形成されている。
【0027】
第1及び第2中爪15,16は、ライザ14とは反対に径方向内側に折り曲げ形成されている。そして、第1及び第2中爪15,16の先端部は、セグメント12の長手方向中央側を向くように形成されて絶縁体11内に埋設されている。このように、第1及び第2中爪15,16が絶縁体11内に埋め込まれることによって、各セグメント12は絶縁体11に対して連結保持されるようになっている。
【0028】
上記のような整流子10のセグメント12において、ライザ14及び第1及び第2中爪15,16が延出されたセグメント12の軸方向端面12aは、整流子10の軸線Lと直交する同一平面上に形成されている。そして、各セグメント12のライザ14及び第1及び第2中爪15,16の軸方向端の折り曲げ部分である折り曲げ端部14a,15a,16aは、軸方向端面12aから軸方向に突出する突出部として構成されている。
【0029】
次に、上記の整流子10の製造方法について図2〜図7に従って説明する。
図2及び図3に示すように、まず、金属板材20から打ち抜き素材21をプレスにより複数打ち抜く。各打ち抜き素材21は略矩形状に成形され、その短手方向(長手方向と直交する方向)の一端面には、それぞれ8個のライザ14と第1中爪15が、他端面には8個の第2中爪16がそれぞれ短手方向に延出形成されている。尚、ライザ14は、打ち抜き素材21の長手方向に等間隔に形成されている。
【0030】
次に、打ち抜き素材21を丸めて、図4に示す円筒素材22を成形する。このとき、ライザ14と第1及び第2中爪15,16は、円筒素材22の軸線と平行な直線状をなしている。
【0031】
その後、図5に示すように、各ライザ14を径方向外側に折り曲げて、その先端部が円筒素材22の軸方向中央側を向くように成形する。また、第1及び第2中爪15,16を径方向内側に折り曲げて、その先端部が円筒素材22の軸方向中央側を向くように成形する。ここで、ライザ14及び第1及び第2中爪15,16の軸方向端の折り曲げ部分である折り曲げ端部14a,15a,16aは、円筒素材22の軸方向端面22aから軸方向に突出しており、この各折り曲げ端部14a,15a,16aによって円筒素材22の軸方向両端部は軸方向の凹凸を有する段差状を形成される。
【0032】
次に、図6に示すように、金型31を用いた樹脂封入工程を行う。金型31は、図6において上側の第1金型32aと下側の第2金型32bからなり、円筒素材22は、ライザ14及び第1中爪15が設けられた側の軸方向端部が第1金型32aを向くように金型31内に配置される。
【0033】
第2金型32bには、円筒素材22が第2中爪16側の軸方向端部から軸方向に差し込まれる円形の凹部33が形成されており、凹部33の側面は、円筒素材22の外周面と径方向に当接している。そして、この凹部33の円形をなす底面33aの周縁部には、例えばテフロン(登録商標)よりなる円環状の耐熱ゴム部材34bが設けられている。尚、耐熱ゴム部材34bの外周面は、第2金型32bに円筒状に形成された保持部38の内周面(凹部33の側面)と当接している。即ち、保持部38は、耐熱ゴム部材34bの外径側を保持している。
【0034】
耐熱ゴム部材34bは断面矩形状をなしている。また、耐熱ゴム部材34bは、おおよそ円筒素材22の厚さ中心径と同径をなすとともに、耐熱ゴム部材34bの径方向の厚み寸法は、円筒素材22の径方向厚みよりも若干大きく設定されている。また、圧が掛かっていない状態(円筒素材22に押し付けられていない通常状態)において、耐熱ゴム部材34bの円筒素材22側の軸方向端面は平面状をなすとともに、耐熱ゴム部材34bの軸方向寸法H2は、周方向全体に亘って均一に設定されている。
【0035】
一方、第1金型32aにおいて、第2金型32bと軸方向に対向する対向面35には、円環状をなす保持部39が軸方向に突出するように設けられている。この保持部39の内径側には、第2金型32bの耐熱ゴム部材34bと軸方向に対向する円環状の耐熱ゴム部材34aが保持されている。この耐熱ゴム部材34aは、第2金型32bの耐熱ゴム部材34bと同様に、例えばテフロン(登録商標)よりなり、耐熱ゴム部材34aの外周面は、保持部39の内周面と当接している。この第1金型32a側の耐熱ゴム部材34aは、第2金型32b側の耐熱ゴム部材34bと同様に、断面矩形状をなし、おおよそ円筒素材22の厚さ中心径と同径をなし、また、耐熱ゴム部材34aの径方向の厚み寸法は、円筒素材22の径方向厚みよりも若干大きく設定されている。また、通常状態において、耐熱ゴム部材34aの円筒素材22側の軸方向端面は平面状をなすとともに、耐熱ゴム部材34aの軸方向寸法H1は、周方向全体に亘って均一に設定されている(図7(a)参照)。尚、第1金型32aには、絶縁体11の圧入孔11aを成形する柱部36が軸方向に延出形成されている。
【0036】
樹脂封入の際には、まず、第2金型32bの耐熱ゴム部材34bが各第2中爪16の折り曲げ端部16aと軸方向に当接するように円筒素材22を第2金型32bの凹部33に配置する。
【0037】
その後、第1金型32aを第2金型32bとで円筒素材22を軸方向に挟むように配置し、第1金型32aの耐熱ゴム部材34aを円筒素材22のライザ14側の軸方向端部に軸方向に押し付ける。このとき、各耐熱ゴム部材34a,34bは、円筒素材22の軸方向端部の段差状に応じて変形する。詳述すると、図7(b)に示すように、第1金型32aの耐熱ゴム部材34aは、ライザ14及び第1中爪15の各折り曲げ端部14a,15aと軸方向に密着するとともに、各折り曲げ端部14a,15a間では、その各折り曲げ端部14a,15aの周方向の隙間に入り込む。そして、各折り曲げ端部14a,15aの周方向の隙間に入り込んだ部位(入り込み部34c)は、円筒素材22の軸方向端面22aと密着するとともに、折り曲げ端部14a,15aと周方向に密着する。これにより、各折り曲げ端部14a,15aの周方向の隙間が入り込み部34cによって埋められ、第1金型32aと円筒素材22との間がシールされるようになっている。
【0038】
同様に、第2金型32bの耐熱ゴム部材34bは、各第2中爪16の折り曲げ端部16aと軸方向に密着するとともに、各折り曲げ端部16a間では、その各折り曲げ端部16aの周方向の隙間に入り込む。そして、各折り曲げ端部16aの周方向の隙間に入り込んだ部位は、円筒素材22の軸方向端面22aと密着するとともに、折り曲げ端部14a,15aと周方向に密着する。これにより、各第2中爪16の折り曲げ端部16aの周方向の隙間が入り込み部34cによって埋められ、第2金型32bと円筒素材22との間がシールされるようになっている。
【0039】
上記のように円筒素材22を金型31に配置した後、第2金型32bの流入路37から円筒素材22の内側に樹脂材料を封入して絶縁体11を成形する。このとき、各耐熱ゴム部材34a,34bによって第1及び第2金型32a,32bと円筒素材22の軸方向両端部との間がシールされているため、その間から成形樹脂が径方向外側にはみ出てしまうことが抑制されるようになっている。また、このとき、耐熱ゴム部材34a,34bは、封入された樹脂から内圧を受けるが、保持部38,39によって外径側への変形が抑えられるようになっている。
【0040】
その後、絶縁体11と一体をなす円筒素材22の外周面の複数箇所に分断溝13(図1参照)を軸方向に沿って成形して円筒素材22を切断する。これにより、互いに電気的に絶縁された8個のセグメント12が成形され、図1に示す整流子10が完成する。
【0041】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)円筒素材22の軸方向端部は、軸方向に突出する複数の突出部(各ライザ14の折り曲げ端部14a、第1及び第2中爪15,16の折り曲げ端部15a,16a)を有する段差状に形成される。そして、第1及び第2金型32a,32bにそれぞれ設けられた耐熱ゴム部材34a,34bを各折り曲げ端部14a,15a,16aの周方向の隙間に入り込ませてシールし、その状態で円筒素材22の内側に樹脂材料を封入する。このため、整流子10の絶縁体11を第1及び第2金型32a,32bで樹脂成形する際、円筒素材22の軸方向端部と第1及び第2金型32a,32bの間から成形樹脂が外側にはみ出てしまうことを抑制することが可能となる。
【0042】
(2)耐熱ゴム部材34a,34bは、円筒素材22の軸方向端部に対応した円環状に形成されている。このため、円環状の耐熱ゴム部材34a,34bを円筒素材22の軸方向端部に押し付けることで、その軸方向端部の段差状(各折り曲げ端部14a,15a,16a)に応じて耐熱ゴム部材34a,34bが変形し、これにより、耐熱ゴム部材34a,34bを各折り曲げ端部14a,15a,16aの周方向の隙間に入り込ませてシールすることができる。
【0043】
(3)耐熱ゴム部材34a,34bの軸方向寸法H1,H2は、周方向全体に亘って均一に設定されるため、円筒素材22を第1及び第2金型32a,32bに配置する際、耐熱ゴム部材34a,34bの周方向の位置決めが不要となり、その結果、作業性を向上させることができる。
【0044】
(4)第1及び第2金型32a,32bには、耐熱ゴム部材34a,34bの外径側を保持する保持部38,39がそれぞれ設けられる。これにより、円筒素材22内への樹脂封入の際に、その樹脂からの内圧による耐熱ゴム部材34a,34bの外径側への変形を抑えることができ、その結果、円筒素材22の軸方向端部と第1及び第2金型32a,32bとの間を安定してシールさせることができる。
【0045】
(5)各セグメント12の軸方向端部には、径方向外側に折り曲げ形成された結線用のライザ14と、径方向内側に折り曲げ形成されて絶縁体11内に埋設される第1及び第2中爪15,16とが形成され、ライザ14及び第1及び第2中爪15,16の折り曲げ端部15a,16aが突出部として構成される。これにより、結線用のライザ14と、絶縁体11内に埋設される第1及び第2中爪15,16とが折り曲げによって成形されるため、整流子10を容易に成形することが可能となる。
【0046】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、耐熱ゴム部材34a,34bの軸方向寸法H1,H2はそれぞれ、周方向全体に亘って均一に設定されたが、これに特に限定されるものではなく、例えば、図8(a)(b)に示すような構成としてもよい。尚、図8(a)(b)では、円筒素材22のライザ14及び第1中爪15側の軸方向端部、及びそれに対応する第1金型32aの耐熱ゴム部材34aを例にとって図示している。
【0047】
図8(a)に示すように、耐熱ゴム部材34aは、円筒素材22の軸方向端部に押し当てられていない通常状態において、円筒素材22の軸方向端部に応じた段差状に形成されている。詳述すると、耐熱ゴム部材34aは、各折り曲げ端部14a,15aと軸方向に当接する当接凹部41と、当接凹部41よりも軸方向の円筒素材22側に突出する突出シール部42とを有している。この突出シール部42は、通常状態において、その周方向幅W1が折り曲げ端部14a,15a間の周方向幅W2よりも若干大きく設定されている。
【0048】
このような構成では、円筒素材22の軸方向端部に耐熱ゴム部材34aを段差状に合わせて押し当てると、図8(b)に示すように、耐熱ゴム部材34aの当接凹部41が各折り曲げ端部14a,15aと軸方向に密着する。そして、各突出シール部42は、各折り曲げ端部14a,15aの周方向の隙間に入り込み、円筒素材22の軸方向端面22aと密着するとともに、折り曲げ端部14a,15aと周方向に密着する。このように、耐熱ゴム部材34aによって第1金型32aと円筒素材22の軸方向端部との間がシールされるようになっている。このような構成によれば、耐熱ゴム部材34aは、円筒素材22の軸方向端部に応じた段差状に形成されているため、円筒素材22の折り曲げ端部14a,15aとの軸方向の当接による耐熱ゴム部材34aの過大圧縮を抑制することができる。
【0049】
・上記実施形態では、第1及び第2金型32a,32bに円環状の耐熱ゴム部材34a,34bがそれぞれ設けられたが、これ以外に例えば、図9(a)(b)に示すように、耐熱ゴム部材51を各折り曲げ端部14a,15a,16aの周方向の隙間に対応する位置に円環状に複数並設してもよい。尚、図9(a)(b)では、円筒素材22のライザ14及び第1中爪15側の軸方向端部、及びそれに対応する第1金型32aを例にとって図示している。図9(a)に示すように、各耐熱ゴム部材51は、第1金型32aの対向面35に設けられ、該対向面35から軸方向に突出するように構成されている。耐熱ゴム部材51の周方向幅W3は、折り曲げ端部14a,15a間の周方向幅W2よりも若干大きく設定されている。
【0050】
このような構成では、各耐熱ゴム部材51を各折り曲げ端部14a,15aの周方向の隙間に合わせて軸方向に押し込み、図9(b)に示すように、第1金型32aの対向面35が各折り曲げ端部14a,15aと軸方向に密着する。そして、各耐熱ゴム部材51は、円筒素材22の軸方向端面22aと密着するとともに、折り曲げ端部14a,15aと周方向に密着し、これにより、第1金型32aと円筒素材22の軸方向端部との間がシールされるようになっている。このような構成によれば、耐熱ゴム部材51は、円筒素材22の軸方向端部における各折り曲げ端部14a,15aの周方向の隙間に対応して設けられるため、耐熱ゴム部材51と折り曲げ端部14a,15aとが軸方向に当接しないように構成される。このため、円筒素材22の折り曲げ端部14a,15aとの軸方向の当接による耐熱ゴム部材51の過大圧縮を避けることができる。また、耐熱ゴム部材を円筒素材22の軸方向端部に対応した円環状に形成する構成と比較して、耐熱ゴム部材に掛かる材料コストを抑えることができる。
【0051】
また、図9(a)(b)に示す構成を、図10(a)(b)に示すような構成としてもよい。図10に示す構成では、第1金型32aは、各耐熱ゴム部材51の周方向の間に設けられて各折り曲げ端部14a,15aと軸方向に当接する当接部52と、その当接部52と対向面35との間に介在された付勢部材としてのばね部材53とを有し、ばね部材53は、当接部52を軸方向の折り曲げ端部14a,15a側に付勢している。
【0052】
このような構成によれば、円筒素材22の折り曲げ端部14a,15aと当接する当接部52がばね部材53によって軸方向の折り曲げ端部14a,15a側に付勢されるため、折り曲げ端部14a,15aに対して好適な圧で当接部52を当接させることができる。これにより、折り曲げ端部14a,15aに過剰な荷重が掛かることを抑制することができるとともに、折り曲げ端部14a,15aと当接部52との間を好適にシールすることが可能となる。
【0053】
・上記実施形態では、平板状の打ち抜き素材21を丸めて円筒素材22に成形した後にライザ14と第1及び第2中爪15,16を折り曲げ成形したが、これに特に限定されるものではなく、図3に示すような平板状の状態(円筒素材22とする前の状態)においてライザ14と第1及び第2中爪15,16を折り曲げ成形してもよい。
【0054】
・上記実施形態では、セグメント12の個数(ライザ14の個数)を8個としたが、これに特に限定されるものではなく、構成に応じて適宜変更してもよい。
・上記実施形態では、絶縁体11とセグメント12との固定を強固にすべく、各セグメント12に設けた第1及び第2中爪15,16を絶縁体11に埋設して構成しているが、これ以外に例えば、セグメント12に第1及び第2中爪15,16を設けずに、セグメント12の内周面に絶縁体11の外周面と係止する係止部を設けてもよい。
【0055】
・上記実施形態では、金属板材20から打ち抜いた打ち抜き素材21を丸めて円筒素材22を成形したが、これに特に限定されるものではなく、例えば、金属製の管状材を用いてその長手方向に必要寸法切断し、次いでライザ等を形成したものであってもよい。
【0056】
・上記実施形態では、円筒素材22の軸方向端部に形成される突出部がライザ14と第1及び第2中爪15,16の折り曲げ端部14a,15a,16aで構成されているが、これに特に限定されるものではなく、ライザ14や第1及び第2中爪15,16のような爪部以外の突出部で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…整流子、11…絶縁体、12…セグメント、14…ライザ、15…第1中爪、16…第2中爪、14a,15a,16a…折り曲げ端部、22…円筒素材、31…金型、32a…第1金型、32b…第2金型、34a,34b,51…耐熱ゴム部材、38,39…保持部、52…当接部、53…ばね部材(付勢部材)、H1,H2…耐熱ゴム部材の軸方向寸法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に配置された導電性を有する円筒素材の内側に樹脂材料を封入し、該円筒素材の内側に絶縁体を成形した後、前記円筒素材を軸方向に沿って切断することで前記絶縁体の外周に複数のセグメントを成形する整流子の製造方法であって、
前記円筒素材の軸方向端部は、軸方向に突出する複数の突出部を有する段差状に形成され、
前記金型に設けられた耐熱ゴム部材を前記各突出部の周方向の隙間に入り込ませてシールし、その状態で前記円筒素材の内側に前記樹脂材料を封入することを特徴とする整流子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の整流子の製造方法において、
前記耐熱ゴム部材は、前記円筒素材の軸方向端部に対応した円環状に形成されていることを特徴とする整流子の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の整流子の製造方法において、
前記耐熱ゴム部材の軸方向寸法は、周方向全体に亘って均一に設定されていることを特徴とする整流子の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の整流子の製造方法において、
前記耐熱ゴム部材は、前記円筒素材の軸方向端部に応じた段差状に形成されていることを特徴とする整流子の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の整流子の製造方法において、
前記耐熱ゴム部材は、前記各突出部の周方向の隙間に対応する位置に円環状に複数並設されていることを特徴とする整流子の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の整流子の製造方法において、
前記金型は、前記各耐熱ゴム部材の周方向の間に設けられて前記各突出部と軸方向に当接する当接部を有し、
前記当接部は、付勢部材によって軸方向の前記突出部側に付勢されることを特徴とする整流子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の整流子の製造方法において、
前記金型には、前記耐熱ゴム部材の外径側を保持する保持部が設けられていることを特徴とする整流子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の整流子の製造方法において、
前記各セグメントの軸方向端部には、径方向外側に折り曲げ形成された結線用のライザと、径方向内側に折り曲げ形成されて前記絶縁体内に埋設される中爪とが形成され、
前記ライザ及び前記中爪の折り曲げ端部が前記突出部として構成されることを特徴とする整流子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−85365(P2013−85365A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223193(P2011−223193)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】