説明

整流形直流電源による直接抵抗加熱装置における原料温度計測方法及びその計測装置

【課題】整流直流電源Aにより直接抵抗加熱する場合において、簡単な構成でもって供給電力Pに基づく原料温度Tの計測を行う。
【解決手段】 両電極2、2の間に実効電圧値計測器12と平均電圧値計測器13とを介設する。この両電極間の平均電圧値Va、直流電源装置内の平均電流値Ioa及び両電極間の実効電圧値Vrを演算器14に送り込む。この演算器において、平均電圧値Vaを平均電流値Ioaで割って(Va/Ioa)、原料a層の抵抗値Rを計算し、その抵抗値と実効電圧値Vrでもって電力P(=(Vr)/R)及び電力量Wtを算出し、その電力量Wtに基づき上昇温度Taを、熱量Q/(m×C)=Wt×860×4.186×10−3)/(m×C)から計算して原料温度Tを計測する。この計測温度Tに基づき、整流器8によるサイリスタ位相制御によって、その出力電流Iを無段階にリニア制御し、供給電力Pを可変して所要の原料aの温度とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被加熱体に直流電圧を印加し、その抵抗熱によって加熱する際、その供給電力、被加熱体の抵抗値及び電力供給時間によって被加熱体の温度を計測する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気炉用電極製造プラントにおいて、押出しプレス機により所要形状の電極を成形する前処理工程として原料(カーボン)の混練機による混練工程があり、この混練工程の前段には、その原料をホッパーに収納した静止状態で加熱するプレヒータ工程がある。
このプレヒータ工程は、図4(a)に示すように、ホッパー1内に原料であるカーボンaを所要量収納するとともに、そのホッパー1の両端(収納原料層の両端)にプラス・マイナスの対の両電極2、2を設け(挿入し)、その両電極2、2間に交流又は直流の電源3を供給する(電圧を印加する)ことにより、電極2、2間に原料aを介して電流を流し、その電流による原料a自身の抵抗熱(ジュール熱)によって加熱するものであり、実際の温度域は、常温から200℃前後への加熱となる。
【0003】
また、この静止した加熱によるプレヒータ工程は、後段の混練機におけるピッチ等の添加物との混和を円滑にするための必須条件であり、仮に、同プレヒータ工程を省略し、その混練機において混練と同時に加熱したのでは、原料の昇温を待つために混練時間が長くなり、その結果、粉粒体である原料の粒崩壊が生じやすく、製品として必要な粒度分布を得ることができない(粒度分布から外れる)。なお、一般的には、プレヒータ以降の混練工程等も含んだ最終製品として必要な粒度構成を得るために、プレヒータ工程の前段に粒度調整工程を設けている。
【0004】
そのホッパー収納による直接抵抗加熱に代えて、加熱効率の良いキルン等の間接加熱機を採用することもできるが、この方式であると、加熱時に原料を撹拌するため、同様に、粒崩壊を生じる恐れが高い。
【0005】
被加熱物(原料)aがカーボン等の粉体ではなく固体(塊り)の場合は、図4(b)に示すように、その被加熱物aの両端に電極2、2を取付け、その電極2、2間に原料aを介して電流を流し、その電流による原料自身の抵抗熱(ジュール熱)によって加熱する。
【0006】
この粉体と塊りの何れの直接抵抗加熱においても、原料aの温度を検出し、その検出温度に基づき電流を強弱させて、原料aの加熱に必要な所定の時間と温度の制御を行う。その原料温度の測定手段として、挿入型温度計(接触型温度計)と放射型温度計がある。因みに、一般に、上記電気炉用電極製造プラント等の産業界では、その電流値はkA前後の非常に高い大電流となる。
その原料aの温度を測定する際、大量の原料aの直接抵抗加熱装置においては、その容器(ポッパー1)の形状、その容器中の電極2の配置や形状等によって、原料aへの電流の流れ方に偏りが生じ、結果、温度分布に偏りが生じる。
【0007】
また、原料aに電流が流れているため、挿入型温度計では、温度計本体から電流(電気)が外部に漏れたり(リークしたり)、原料aに流すべき電流が温度計本体で短絡しないように、温度計の原料aと接触する部分には、原料aにかかる印加電圧や原料温度に耐え得る適正な絶縁処理(絶縁被覆や絶縁膜等)が必要となる。特に、原料aが粉粒体の場合、その原料aを投入・排出する際、その原料aの移動に伴い温度計表面が摩耗で絶縁被覆や絶縁膜等が損傷する恐れがあるため、その保守や絶縁被覆や絶縁膜等は損傷した場合のその短絡等による温度計が接続された制御装置の損傷に至らないように、その接続回路の回路的絶縁装置や故障検出装置が必要である。
さらに、原料aの加熱温度が高い場合(目標温度が高温の場合)、例えば、千数百℃以上の場合、挿入型温度計では測定が不可能となる。
【0008】
一方、図4(b)のように、原料aが固体(大きな塊り)の場合、挿入型温度計は使用できず、放射型温度計による表面温度測定となるが、原料内部の温度を知るためには、設置環境条件、輻射熱、放熱等を考慮した複雑な熱計算が必要となる。
【0009】
ところで、一般の加熱プロセスでは、通常、その制御基準の被加熱体の温度はその平均温度とするため、その被加熱物の平均的な温度を知ればよい。しかし、直接抵抗加熱においては、上記のように温度分布に偏りがあり、その温度測定点の決定は容易ではない上に、上記の各温度計によって、原料aの1点のみの温度を測定したのでは、その平均温度の測定と言う面では不適当である。また、多点測定になればなるほど、イニシャルコストが嵩むこととなる。
【0010】
このため、従来の直接抵抗加熱装置では、経験則によって平均的な温度を計り得ると考える点に温度計を設置するとともに、直接抵抗加熱装置の再現性を期待し、その代表一点の測定温度を基準とした温度制御を行っている。これは、その代表点を取り間違えると、その温度制御も信用できないものとなるとともに、直接抵抗加熱装置の再現性についても、原料aの性状、ホッパー1内の原料aの収納態様等によって、その代表点が原料の平均温度にならず、その代表点における測定温度に基づいても、必ずしも従来と同様な加熱が行われるとは限らない。
【0011】
このような実情の下、理論上、原料aの質量m(kg)とその比熱C(kj/(kg×℃))の積で原料aに供給した熱量Q(kj)を割れば、その熱量Qに基づく、原料aの上昇温度Taとなることから(Ta=Q/(m×C))、原料aに供給した電力量Wtを測定し、その電力量に基づく算出上昇温度Taから、その平均温度を推測して温度制御する技術がある(特許文献1,2参照)。
すなわち、原料aの温度TをT1からT2(℃)に上げるために必要な電力量Wt=Q×(1/860)×(1/4.186)×10となり、この計算式から、原料aの温度T1において、電力量Wtを供給したとすると、上昇温度Ta=Q/(m×C)=(Wt×860×4.186×10−3)/(m×C)(式1)となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭58−38483号公報
【特許文献2】特開2004−53348号公報
【0013】
この理論に基づく直接抵抗加熱装置の一つとして、図5に示すものがある。その電源装置Aは、交流電源3を用いた変圧器方式であって、1990年頃までは盛んに使用され、後述の直流電源装置Aの登場によってその使用度数が減少したが、現在においても使用されており、同図(a)に示すように、交流商用電源3を単相変圧器5を介して両電極2、2間に流して原料aを抵抗加熱する。このとき、原料aの上昇温度Taを、上記式1に基づきその供給した電力量Wtによって算出し、その算出値に基づき原料温度Tを計測し(算出し)、その供給電力P(電圧又は電流)を制御して原料aを所定温度に加熱する。
【0014】
その供給電力Pの強弱の制御は、変圧器5の一次側タップ5aを必要数量引き出し(同図においては2個)、制御器によりそのタップ5aを切り替え、二次電圧V(原料aへの電流)を段階的に可変して行う。このとき、その電力Pの測定は、同図(b)に示すように、電源3から変圧器5の間の変圧器一次側に変流器6aを介して計測器(電力量計:kwhメータ)6を設けて行う。その計測器6を変圧器5の二次側に設けたのでは、非常な大電流となってその対策コストが高価となってコスト的に不向きであるからである。なお、変流器6aは電力量計6に流れる電流が見合った大きさなるように変流する機能を持つ。
【0015】
このとき、供給電力Pの交流電源3はSINカーブを描くので、例えば、その電流値及び電圧値の平均値をそれぞれIa、Vaとすると、その実効電流値IrはIa×π/2√2、実効電力値VrはVa×π/2√2で容易に算出することができる。これが既存の電気計器の原理である。このため、後述の直流電源装置Aに比べると、電気的温度測定(電力量測定)に関しては、一次側に計測器6を設けて測定するため、既存の電気計器で非常に簡単かつ安価にできるメリットもある。
【0016】
一方、この交流電源装置Aの第1の問題点として、上記のように、タップ5aの切り替えによって供給電流を調節するため、その微調節が困難であるとともに、円滑な(リニアな)調節を行うためには、タップ数を増やす必要があり、その構造が繁雑となる。このため、その電流値の調節の必要がない(少ない)場合に使用が限られている。
第2の問題点としては、二次側電流Iが交流の大電流となるため、二次側の電気配線に関して、その周囲の他の構造体への電磁誘導加熱等の誘導障害が生じ易く、そのような障害が生じない配慮が必要であることや、表皮効果で配線銅量が多くなる(配線径が太くなる)等、配線工事やその他の工事のコストアップに繋がる。さらに、電磁誘導用磁力線が周囲に及ぶことから、心臓ペースメーカの誤動作や骨折時に体内に埋めた金属に悪影響が出る恐れが考えられ、柵や囲い等、人体に対して保護対策を講じる必要がある。
【0017】
直流電源装置Aは、1990年頃から以降、半導体技術の進歩に伴って急速に使用されているものであり、一般的には、図6に示すように、商用交流三相電源3aを三相変圧器7により定格電圧まで降圧し、6台の整流器(サイリスタ)8により全波整流したものを定格最大値として(これを、「三相全波整流」という。)、直流電力を供給する。なお、変圧器7とサイリスタ8の組合せにより「三相全波整流」よりさらに波形を平均化した「12相整流」という方式もある。
【0018】
この直流電源装置Aは、整流器(サイリスタ)8により、出力をサイリスタ位相制御することによって、その出力電流Iを無段階にリニア制御することができる。また、直流であるから、上記の交流電源における誘導障害は殆ど生じない。このため、温度を直接に測定する温度センサに基づく制御信号を無段階で出力する用途には非常に優れていることから、今日では、電源装置Aとしては最も多く利用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
この直流電源装置Aによって、ホッパー1に収納した原料aを加熱するには、図6に示すように電流Iを両電極2、2間に流すこととなる。また、上記図5と同様な電流・電圧計測手段とすれば、同図6に示すように、直流電源装置Aから被加熱体(原料a)側の回路に分流器9を介して平均電流値計測器(平均電流計)11及び平均電圧値計測器(平均電圧計)10を設け、その両計測器10、11によって被加熱体(原料a)側に供給される電力Pの平均電流値Ia及び平均電圧値Vaを測定し、その測定値Ia、Vaによって、被加熱体a側の回路の抵抗値R(Va/Ia)を算出するとともに、電力P((Va)/R)を算出し、その電力Pと供給した時間tとでもって、原料aに供給した電力量Wtを測定し(算出し)、その電力量Wtに基づく算出上昇温度Taから、その平均温度を推測して温度制御することとなる。但し、この直流電源装置Aからの波形は、乾電池の出力波形のように真っ平らな直線波形ではないため、直流出力といっても、前記電力P((Va)/R)の計算式は正確ではない。
【0020】
このとき、直流電源装置Aには、出力電流Iをより直流とするために(波打ちをきめ細かくするために)、12相整流やそれ以上の多相化したものもあるが、多相化すればするほど、必要以上に高価なものとなる。何れにしても、乾電池の電流のように、真っ平な直流出力波形とならない。すなわち、この直流電源装置Aにおいては、交流分が若干残った波形となる。
すなわち、その供給電力に基づき原料温度を測定(計測)する際、二次側の電圧Vは、図7(a)に示すように、SINカーブでない若干の交流分を含んだ波形となり、さらに、出力可変制御で出力を絞った場合、絞れば絞る程(同図(b)から同(c))、パルス状波形になるため、その電力を測定するためには、その波形レベルで、電圧・電流・力率の測定をしなければならず、平均値電圧計10や平均値電流計11のみではその計測ができず、その計測のための対策費がかさんでコスト高となる。
【0021】
このように、従来では、平均電流値、平均電圧値だけでは、供給電力Pに基づき原料温度を計測するための電力量のもととなる電力を算出ができないことから、この直流電源装置Aを用いた直接抵抗加熱においては、一般的には原料温度センサと組み合わせてその他の用途(供給電力Pに基づく原料温度計測以外の用途)で使用されており、直流電源装置単体の商品としては、標準的には、平均電流(値)や平均電圧(値)の表示に留まっている。
【0022】
因みに、直流電源装置Aは、図5の変圧器5の場合と同様に、その直流電源装置Aの一次側でその電力を計測しても、直流電源装置Aの一次側電力波形と二次側電力波形は違ったものでもあり、その一次側から二次側への損失も大きいため、その一次側の計測電力でもって二次側出力の電力を算出・推定することは困難である。
【0023】
この発明は、以上の実情の下、直流電源装置Aを使用して直接抵抗加熱する場合においても、簡単な構成でもって上記供給電力Pに基づく原料温度Tの測定を行い得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を達成するため、原料加熱装置を構築する発明者が、上記直流電源装置A単体ではなく、その原料加熱装置全体において、その負荷である電極への供給電力に基づき原料温度を計測することはできないかと考えたものであり、この発明は、まず、整流形直流電源装置Aから両電極2に供給された電力Pの電流Iはその経路(回路)の何れで測定しても同じであり、また、その回路の抵抗値Rは、その測定電流値Iと同等の測定電圧値V、例えば、実効電流値Irであれば実効電圧値Vr、平均電流値Iaであれば平均電圧値Vaにより求めれば、正しい値を得ることができる。つぎに、その求めた抵抗値Rと電圧値によって電力Pは求めることができるが、整流形直流電源装置Aの出力電力は交流分を含んだ直流であることから、その電圧値は実効値とする(実効値を測定する)ことが必要であると考えた。
【0025】
この考えの下、この発明に係る整流形直流電源による直接抵抗加熱装置における原料温度計測方法にあっては、まず、整流形直流電源装置Aから被加熱体a内に設けたプラス・マイナスの対の両電極2、2に電力Pを供給し、その供給された電力量Wtに基づき前記被加熱体aの温度Tを計測するに際し、整流形直流電源装置Aから両電極2に供給された電力Pの実効電圧値Vrを測定し、この実効電圧値Vrと整流形直流電源装置Aの出力端以降の被加熱体a側回路の抵抗値Rから前記電力量Wtを算出することとしたのである。
【0026】
つぎに、電力Pは(電圧V)/(抵抗R)で求められ、電力量Wtはその電力Pに時間tをかけたもの(P×t)であるが、電力Pは瞬時値であり,そのときの負荷の変動等により刻々と変わる。このため、その電力量Wtの算出(積算)は、その変化することを踏まえ、上記のように、電圧Vは実効値を採用し、抵抗Rの算出のための電流や電圧には、平均値や実効値を採用して、温度上昇を測定(算出)する際も、その実効値や平均値を採用する必要がある。
また、上記整流形直流電源装置Aの出力端以降の被加熱体a側回路の抵抗値Rは、その測定電流値Iと同等の測定電圧値Vで求める必要がある。
これらの点から、その抵抗値Rの測定(算出)を、整流形直流電源装置Aから両電極2に供給された電力Pの平均電流値Ia及び平均電圧値Vaを測定して両者Ia、Vaでもって算出したり、整流形直流電源装置Aから両電極2に供給された電力Pの実効電流値Irを測定してその実効電流値Irと上記実効電圧値Vrでもって算出したりすることとしたのである。
【0027】
また、その抵抗値Rは、両電極間の平均(実効)電流値Ia(Ir)及び平均(実効)電圧値Va(Vr)で計算したり、上記整流形直流電源装置Aの出力端間、すなわち、その整流形直流電源装置A内の平均(実効)電流値Ia(Ir)及び平均(実効)電圧値Va(Vr)で算出したりすることができるが、前者の場合、被加熱体の抵抗値Rとほぼ同等となり、その整流形直流電源装置Aから電極2までのインピーダンス(抵抗R)を含んでいないから、被加熱物aにおいて消費する電力量の算出が正確であり、その原料上昇温度Taの計算も正確となる。
後者の場合は、整流形直流電源装置Aから電極2までのインピーダンス(抵抗R)を含むこととなるが、そのインピーダンス(抵抗R)は計算または実測によって容易に算出または測定でき、その被加熱体aの抵抗値Rは、整流形直流電源装置Aの出力端以降の被加熱体a側回路全体の抵抗値Rからその抵抗値Rを引いた値とする。
【0028】
この発明に係る整流形直流電源による直接抵抗加熱装置における原料温度計測装置にあっては、上記測定方法を実施すべく、整流形直流電源装置Aと、被加熱体a内に設けたプラス・マイナスの対の両電極2、2と、前記整流形直流電源装置Aから前記両電極2に送られた電力量Wtの演算器とからなり、その演算器の演算値に基づきその被加熱体aの温度を計測する装置において、整流形直流電源装置Aから両電極2に供給された電力Pの実効電圧値Vrの計測器を設け、前記演算器によって、前記計測器による実効電圧値Vrと整流形直流電源装置Aの出力端以降の被加熱体a側回路の抵抗値R)でもって電力量Wtを算出する構成を採用したのである。
【0029】
この構成においても、上記整流形直流電源装置Aの出力端以降の被加熱体a側回路の抵抗値Rを求める手段としては、上記の測定方法と同様な考えから、整流形直流電源装置Aから両電極2に供給された電力Pの平均電流値Ia及び平均電圧値Vaの計測器を設け、その計測器により測定した平均電流値Iaと平均電圧値Vaから求めたり、整流形直流電源装置Aから両電極2に供給された電力Pの実効電流値Irの計測器を設け、その計測器の計測による実効電流値Irと上記実効電圧値Vrから求めたりすることができる。
【0030】
また、同様に、上記両電極2、2間又は整流形直流電源装置A内に平均電圧値計測器及び実効電圧値計測器を設け、その計測値を上記供給された電力Pの平均電圧値Va及び実効電圧値Vrとして、整流形直流電源装置Aから被加熱体a側回路の抵抗値Rを算出することもできる。
【発明の効果】
【0031】
この発明は、以上のように構成し、整流形直流電源装置から出力される電流・電圧が交流成分波形を含むのにも拘わらず、既存の電圧計や電流計によって電圧及び電流を計測し、その電圧値及び電流値によって電力を算出し得るようにしたため、図7に示した波形レベルで測定する必要がなく、安価かつ簡単なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)はこの発明の一実施形態の概略図、(b)は同実施形態の一部詳細図
【図2】同他の実施形態の概略図
【図3】同他の実施形態の要部概略図
【図4】(a)(b)は原料加熱装置の各例の概略図
【図5】(a)(b)は従来の交流方式原料加熱装置における原料温度制御の各例の概略図
【図6】従来の直流方式原料加熱装置における原料温度制御の一例の概略図
【図7】(a)〜(c)は同従来例の二次電圧出力波形図
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1にこの発明の一実施形態を示し、この実施形態の直流式原料加熱装置は、図6で示した装置において、プラス・マイナスの対の両電極2、2の間に実効電圧値計測器12と平均電圧値計測器13とを設けたものである。この平均電圧値計測器13が測定した両電極2、2間の平均電圧値Va、直流電源装置A内の平均電流値計測器11が測定した平均電流値Ioa及び実効電圧値計測器12が測定した実効電圧値Vr(r:root mean square)を演算器14に送り込む。
その実効電圧値計測器12は同図(b)に示すように、直流電圧計(DCV)12aと交流実効値電圧計(ACVr)12bを並列し、その両測定値に基づき演算器12cでもって実効電圧値Vrを算出(例えば、Vr=√((DCV)+(ACVr))して前記演算器14に送り込む。
【0034】
この演算器14において、まず、上記平均電圧値Vaを平均電流値Ioaで割って(Va/Ioa)、原料a層の抵抗値Rを計算する。この抵抗値Rの測定は、実効電圧値計測器12を直接電極2に接続しているため、4線式測定方式となり、整流形直流電源装置Aから電極2までの配線のインピーダンス(抵抗R)を無視できる。
【0035】
つぎに、その抵抗値Rと実効電圧値Vrでもって電力P(=(Vr)/R)を算出し、さらにその電力Pと給電時間tとによって電力量Wtを算出し、その電力量Wtに基づき上昇温度Taを算出(計算)する。すなわち、上記式1に基づき、上昇温度Ta=Q/(m×C)=(Wt×860×4.186×10−3)/(m×C)を計算して原料温度Tを計測する。
この計測温度Tに基づき、従来と同様に、整流器(サイリスタ)8により、出力をサイリスタ位相制御することによって、その出力電流Iを無段階にリニア制御し、供給電力Pを可変して所要の原料aの温度となるようにする。
【0036】
図2にこの発明の他の実施形態を示し、この実施形態の直流式原料加熱装置は、図6で示した装置において、直流電源装置A内に上記実効電圧値計測器12と同一構成の実効電圧値計測器15を設けたものである。
この装置においては、演算器14において、直流電源装置A内の平均電圧値計測器10及び平均電流値計測器11の測定した平均電圧値Voa及び平均電流値Ioaにより整流形直流電源装置Aの出力端o以降の被加熱体(a)側回路の抵抗Rを計算し、その計算した抵抗値Rと実効電圧値計測器15の測定した実効電圧値Vorとによって電力Pを算出し、さらにその電力Pと給電時間tとによって電力量Wtを算出し、その電力量Wtに基づき上昇温度を算出(計算)する。すなわち、同様に、上記式1に基づき、上昇温度T=Q/(m×C)=(Wt×860×4.186×10−3)/(m×C)を計算して原料温度Tを計測する。
【0037】
この計測温度Tに基づき、同様に、整流器(サイリスタ)8により、出力をサイリスタ位相制御することによって、その出力電流Iを無段階にリニア制御し、供給電力Pを可変して所要の原料aの温度となるようにする。
この実施形態においては、上記抵抗値Rには直流電源装置Aから電極2までの配線のインピーダンス(抵抗R)も含まれるが、上述のように、この種の原料加熱装置においては、電源装置Aから両電極2、2までの配線インピーダンスは配線部材によって算出でき、すなわち、既知で、その抵抗値Rを予め設定しておけば、この構成においても、上記電力量Wtの算出において、計測抵抗値Rからその抵抗値Rを引いた値(R−R)が、原料aの抵抗値Rとなるので、上記と同様に、原料aへの供給電力量を適切に計測することができ、その電力量Wtに基づき原料aの加熱温度も適切に計測できる。
【0038】
図1、図2に示す実施形態は、平均電圧値計測器10、13、平均電流値計測器11及び実効電圧値計測器12、15を併用したものであるが、平均電流値計測器11も電流実効値(例えば、Ir=√((DCI)+(ACIr))を測定する実効電流値計測器を採用し、その実効電流値計測器と実効電圧値計測器12、15を電極2、2の間又は直流電源装置A内の整流回路の出力端子の間に直列又は並列に設け、その測定した実効電流値、実効電圧値でもって、抵抗値R、電力P及び電力量Wtを算出したり、電極2、2の間に平均電圧値計測器10、平均電流値計測器11を並列又は直列に設け、その測定した平均電流値、平均電圧値及び実効電圧値計測器12による実効電圧値でもって、抵抗値R(R)、電力P及び電力量Wtを算出したりすることもできる。
【0039】
また、ホッパー(直接加熱容器)1を一つの筒状電極とみなし、その内にさらに多重に筒状の電極を設けた場合は、プラス電極2及びマイナス電極2をその各筒に適宜に設けて、ホッパー1内の被加熱体a全体に均一に電圧がかかるようにする。例えば、図3に示す、内筒1a、中間筒1b及び外筒1cからなる3重筒の場合は、中間筒1bにプラス電極2、内筒1a及び外筒1cにマイナス電極2を設ける。
【0040】
なお、この発明は、温度計による被加熱体aの温度測定を併用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0041】
1 ポッパー(容器)
1a ホッパーの内筒
1b ホッパーの中間筒
1c ホッパーの外筒
2 電極
3、3a 電源
5 変圧器
6 電圧計測器(電圧計)
7 三相変圧器
8 整流器(サイリスタ)
10 電源装置出力電圧の平均電圧値計測器
11 電源装置出力電流の平均電流値計測器
12、15 実効電圧値計測器
13 平均電圧値計測器
14 演算器
、A 電源装置
a 原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流形直流電源装置(A)から被加熱体(a)に設けたプラス・マイナスの対の両電極(2、2)に電力(P)を供給し、その供給された電力量(Wt)に基づき前記被加熱体(a)の温度(T)を計測する方法であって、
上記整流形直流電源装置(A)から両電極(2)に供給された電力(P)の実効電圧値(Vr)を測定し、この実効電圧値(Vr)と前記整流形直流電源装置(A)の出力端(o)以降の被加熱体(a)側回路の抵抗値(R)から上記電力量(Wt)を算出することを特徴とする整流形直流電源による直接抵抗加熱装置における原料温度計測方法。
【請求項2】
上記両電極(2)間の平均電圧値(Va)及び実効電圧値(Vr)を求めるとともに、上記供給された電力(P)の平均電流値(Ia)を求め、前記実効電圧値(Vr)を上記供給された電力(P)の実効電圧値(Vr)とし、前記平均電圧値(Va)と前記平均電流値(Ia)とから上記被加熱体(a)側回路の抵抗値(R)を求めることを特徴とする請求項1に記載の整流形直流電源による直接抵抗加熱装置における原料温度計測方法。
【請求項3】
上記整流形直流電源装置(A)から両電極(2)に供給された電力(P)の平均電流値(Ia)及び平均電圧値(Va)を測定し、その測定した平均電流値(Ia)と平均電圧値(Va)から前記被加熱体(a)側回路の抵抗値(R)を求めることを特徴とする請求項1に記載の整流形直流電源による直接抵抗加熱装置における原料温度計測方法。
【請求項4】
整流形直流電源装置(A)と、被加熱体(a)内に設けたプラス・マイナスの対の両電極(2、2)と、前記整流形直流電源装置(A)から前記両電極(2)に送られた電力量(Wt)の演算器(14)とからなり、その演算器(14)の演算値に基づきその被加熱体(a)の温度(T)を計測する装置であって、
上記整流形直流電源装置(A)から両電極(2)に供給された電力(P)の実効電圧値(Vr)の計測器(12、15)を設け、上記演算器(14)によって、前記計測器(12、15)による実効電圧値(Vr)と整流形直流電源装置(A)の出力端(o)以降の被加熱体(a)側回路の抵抗値(R)でもって上記電力量(Wt)を算出することを特徴とする整流形直流電源による直接抵抗加熱装置における原料温度計測装置。
【請求項5】
上記整流形直流電源装置(A)から両電極(2、2)に供給された電力(P)の平均電流値(Ia)の計測器(11)を設けるとともに、上記両電極(2、2)間に平均電圧値計測器(13)及び実効電圧値計測器(12)を設け、その実効電圧値計測器(12)による実効電圧値(Vr)を上記供給された電力(P)の実効電圧値(Vr)とし、前記平均電圧値計測器(13)による平均電圧値(Va)と平均電流値計測器(11)による平均電流値(Ia)とから前記被加熱体(a)側回路の抵抗値(R)を求めるようにしたことを特徴とする請求項4に記載の整流形直流電源による直接抵抗加熱装置における原料温度計測装置。
【請求項6】
上記整流形直流電源装置(A)から両電極(2)に供給された電力(P)の平均電流値(Ia)及び平均電圧値(Va)の計測器(10、11)を設け、その計測器(10、11)により測定した平均電流値(Ia)と平均電圧値(Va)から上記被加熱体(a)側回路の抵抗値(R)を求めることを特徴とする請求項5に記載の整流形直流電源による直接抵抗加熱装置における原料温度計測装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−58962(P2011−58962A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209206(P2009−209206)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】