説明

敷設鋳鉄管の材質判定方法及び敷設鋳鉄管材質判定システム

【課題】敷設鋳鉄管の材質判定、特にその敷設鋳鉄管がダクタイル鋳鉄管であるかまたはねずみ鋳鉄管であるかの判定を敷設されたままの状態で行う。
【解決手段】表面を清掃された敷設鋳鉄管の肉厚に関する肉厚情報に基づいて超音波伝播時間に関する第1材質判定条件を設定し、鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波伝播時間と第1材質判定条件との比較によって鋳鉄管がねずみ鋳鉄管かまたはダクタイル鋳鉄管かを判定する第1評価ステップと、第1評価ステップによる判定が不能の場合、鋳鉄管の超音波減衰度と第2材質判定条件との比較によって鋳鉄管がねずみ鋳鉄管またはダクタイル鋳鉄管のいずれであるかを判定する第2評価ステップとからなる敷設鋳鉄管の材質判定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中等に埋設された敷設鋳鉄管の材質判定、特に、ダクタイル鋳鉄管であるかまたはねずみ鋳鉄管(普通鋳鉄)であるかを判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ダクタイル鋳鉄管は、ねずみ鋳鉄管(ねずみ鋳鉄管は、普通鋳鉄とも呼ばれるが、ここでは以下、ねずみ鋳鉄管と称することにする)に比べ、その黒鉛が球状化しているなどの組織特性により、強度的に優れている。従って、ガス供給網や水道供給網に用いられている敷設鋳鉄管の保守点検において、ねずみ鋳鉄管をダクタイル鋳鉄管に敷設替えする作業が発生する。また、ガス供給網や水道供給網での鋳鉄管の敷設や修理作業において、隣接する鋳鉄管がダクタイル鋳鉄管であるかあるいはねずみ鋳鉄管であるかという情報は、ガス工事や水道工事において隣接する他の鋳鉄管に対する養生作業の方法等を決定する際にも有用となる。
【0003】
材料組織的にはねずみ鋳鉄の黒鉛が片状に形成されており、ダクタイル鋳鉄の黒鉛が球状化されていることから、切り出した試片の顕微鏡写真を見ることによって、ダクタイル鋳鉄あるいはねずみ鋳鉄であるかという判定は正確に行うことができる。あるいは、黒鉛が球状化されるとその材料中の音速が異なるという上記の知識に基づいて、音速を測定することで、ダクタイル鋳鉄又は普通鋳鉄であると判定する技術も知られている。例えば、特許文献1には、超音波プローブ、超音波、探傷部、D/A変換回路、ROM、キーボード、CRT、マイクロプロセッサから構成された、黒鉛球状化率判定を行うための超音波測定装置が以前から知られていることが記載されている。この超音波測定装置では、超音波プローブから送出された超音波は、被検体の表面で一部が反射され、残りがその内部に伝わって被検体の底面でも反射される。この反射波が超音波プローブで検出され、それを受けた超音波探傷部が、表面反射波検出時点から底面反射波検出までの時間を測る。この時間がD/A変換回路を介してデジタル値として入力される。そして、この入力された時間は超音波が被検体中を往復する時間であることから、この入力されたデジタル値と、予め測定されてキーボード7から入力済みの被検体の厚さの2倍の値との比を算出した結果として、被検体の音速が求められる。さらに、この測定された音速値から黒鉛球状化率を算出される。ダクタイル鋳鉄とねずみ鋳鉄の違いは、ダクタイル鋳鉄の黒鉛が球状化されていることであるので、この黒鉛球状化率に基づいて被検体がダクタイル鋳鉄であるかまたはねずみ鋳鉄であるかの判定が可能である。
【0004】
しかしながら、他事業者の敷設鋳鉄管の一部を切り取ることや、自社の健全な敷設鋳鉄管の一部を切り取ることは後からの修理作業を考慮すると避けなければならない。また、埋設鋳鉄管の一部露出した表面に超音波プローブを当てて、超音波パルスを送り出して反射波を得られたとしても、その厚さ、つまり超音波伝播距離を正確に知ることができないから、特許文献1に基づく音速測定による材質判定を本発明の対象となる敷設鋳鉄管の材質判定に適用することは困難である。それは、鋳鉄管の肉厚等の形状寸法は呼び径によって規定されており、その呼び径がわかると肉厚は知ることはできるが、実際の肉厚とはかなりのばらつきがあることがわかっているからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6‐11491号公報(段落番号〔0001−0007〕、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実情に鑑み、本発明の目的は、敷設鋳鉄管の材質判定、特にその敷設鋳鉄管がダクタイル鋳鉄管であるかまたはねずみ鋳鉄管であるかの判定を敷設されたままの状態で行う技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による敷設鋳鉄管の材質判定方法は、敷設されている鋳鉄管の表面を清掃するステップと、前記鋳鉄管の肉厚に関する肉厚情報を取得するステップと、前記鋳鉄管の肉厚に関する肉厚情報に基づいて超音波伝播時間に関する第1材質判定条件を設定するステップと、前記鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波伝播時間を測定するとともに前記鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波減衰度を測定するステップとを実行し、さらに前記測定された超音波伝播時間と前記第1材質判定条件との比較によって前記鋳鉄管がねずみ鋳鉄管かまたはダクタイル鋳鉄管かを判定する第1評価ステップと、前記鋳鉄管の超音波減衰度に関する第2材質判定条件を設定し、前記測定された超音波減衰度と前記第2材質判定条件との比較によって前記鋳鉄管がねずみ鋳鉄管またはダクタイル鋳鉄管のいずれであるかを判定する第2評価ステップのうち、少なくとも前記第1評価ステップを行うことにある。ここで、前記鋳鉄管の肉厚に関する肉厚情報に基づいて超音波伝播時間に関する第1材質判定条件を設定するステップ(設定ステップ)と、前記鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波伝播時間を測定するとともに前記鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波減衰度を測定するステップ(測定ステップ)との順番を問うものではない。即ち、設定ステップを実行してから測定ステップを実行してもよいし、測定ステップを実行してから設定ステップを実行してもよい。ただし、測定ステップを実行する前に清掃するステップは当然に実行する。一方、設定ステップ、測定ステップに実行の後に、第1評価ステップを実行することとなる。この第1評価ステップを実行する前に、鋳鉄管の肉厚に関する肉厚情報を取得するステップが実行される。
【0008】
この方法によると、地中等に敷設された鋳鉄管の表面の少なくとも一部を露出させて、その表面から超音波を送受信さえできれば、材料的な要因(超音波物性)に基づいて、鋳鉄管の肉厚に関する肉厚情報に基づいて想定される肉厚と超音波伝播時間との関係から設定される判定条件(第1材質判定条件)を用いて、その測定された超音波伝播時間(音速に対応する)を評価することで、判定対象となっている敷設鋳鉄管がねずみ鋳鉄管またはダクタイル鋳鉄管のいずれであるかを判定することができる。さらに、必要な場合は、想定される肉厚と超音波減衰度との関係から設定される判定条件(第2材質判定条件)を用いて、その測定された敷設鋳鉄管内での超音波減衰度を評価することで、判定対象となっている敷設鋳鉄管がねずみ鋳鉄管またはダクタイル鋳鉄管のいずれであるかを判定することができる。この超音波伝播時間(音速)測定による第1評価と減衰度測定による第2評価という、2つの超音波伝播特性による評価を利用することで、敷設鋳鉄管がダクタイル鋳鉄管であるかまたはねずみ鋳鉄管であるかの判定を敷設されたままの状態で簡単にしかも確実に行うことができる。
【0009】
音速測定による前記第1評価と減衰度による第2評価という2つの超音波伝播特性による評価の好適な方法は、前記第1評価ステップを実行し、当該第1評価ステップで判定不能の場合に、前記第2評価ステップを実行し、第2評価ステップの判定結果を採用することである。ダクタイル鋳鉄管であるかまたはねずみ鋳鉄管であるかの材質判定に関して、減衰度に基づく判定(第2評価)より音速に基づく判定(第1評価)の方が高い信頼性をもつ傾向があるので、第1評価に基づく判定が優先されることが望ましい。しかしながら、想定された敷設鋳鉄管の肉厚が不正確であるなどの理由で、第1評価が判定不能の場合に第2評価に基づく判定が採用される。なお、ここでの「判定が不能な場合」とは判定が難しいような場合も含むものとする。
【0010】
上記敷設鋳鉄管の材質判定方法の具体的な形態では、前記超音波伝播時間の測定結果と前記第1材質判定条件とが表示画面上で示される。同様に、前記超音波減衰度の測定結果と前記第2材質判定条件も表示画面上で示される。つまり、前記超音波伝播時間の測定結果は前記鋳鉄管の表面で励起された超音波パルスの内周面からの反射波を時間軸に沿って表示する表示画面における反射波の時間軸位置であり、前記第1材質判定条件は前記画面上に設定された時間範囲である。また、前記超音波減衰度の測定結果は前記鋳鉄管の表面で励起された超音波パルスの内周面からの反射波の振幅を表示する表示画面における反射波高さであり、前記第2材質判定条件は前記表示画面上に設定された振幅範囲である。この形態では、オシロスコープのような表示画面を採用することで、この表示画面上に現れる反射波の時間軸位置と振幅軸位置から敷設鋳鉄管がねずみ鋳鉄管またはダクタイル鋳鉄管のいずれであるかを視覚的に判定することができる。
【0011】
また、超音波伝播時間が超音波反射波の時間軸の測定から、そして超音波減衰度が超音波反射波の振幅変動の測定から取得できるので、超音波伝播時間と超音波減衰度の測定は同時に行うことが可能なことも本発明の利点である。
【0012】
上述したような表示画面に現れる反射波の形態から敷設鋳鉄管の材質判定を視覚的に行う場合、ねずみ鋳鉄管かダクタイル鋳鉄管かをより簡単に判定するためには、前記時間範囲と前記振幅範囲とが描画されている評価用透明板を前記表示画面に装着することである。この評価用透明板を通じて反射波を観察するだけで、敷設鋳鉄管の材質判定が容易に行うことができる。
【0013】
上述した、本発明による敷設鋳鉄管の材質判定方法は、上記目的を達成するための敷設鋳鉄管の材質判定システムにも適用できる。そのような敷設鋳鉄管材質判定システムは、前記鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波伝播時間を測定する第1超音波特性測定部と、前記鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波減衰度を測定する第2超音波特性測定部と、前記鋳鉄管の肉厚に関する肉厚情報に基づいて超音波伝播時間に関する第1材質判定条件を設定する第1判定条件設定部と、前記鋳鉄管の超音波減衰度に関する第2材質判定条件を設定する第2判定条件設定部と、前記第1超音波特性測定部によって測定された超音波伝播時間と前記第1材質判定条件との比較によって前記鋳鉄管がねずみ鋳鉄管かまたはダクタイル鋳鉄管かを判定する第1評価部と、前記第2超音波特性測定部によって測定された超音波減衰度と前記第2材質判定条件との比較によって前記鋳鉄管がねずみ鋳鉄管またはダクタイル鋳鉄管のいずれであるかを判定する第2評価部とを備え、前記第1評価部の判定と前記第2評価部の判定とに基づいて前記鋳鉄管がねずみ鋳鉄管またはダクタイル鋳鉄管のいずれであるかを最終的に判定する。この敷設鋳鉄管の材質判定システムも上述した敷設鋳鉄管の材質判定方法と同様な作用効果が得られる。またその好適な実施形態も適用可能である。特に、前記超音波伝播時間の測定及び前記超音波減衰度の測定のために前記鋳鉄管の表面で励起された超音波パルスの内周面からの反射波の到達時間を横軸に表示するとともに、当該反射波の振幅を縦軸に沿って表示するモニタを備えると、ねずみ鋳鉄管とダクタイル鋳鉄管との判定に好都合である。特に、反射波の前記超音波伝播時間(つまり音速)に関するねずみ鋳鉄管とダクタイル鋳鉄管とを区分けする境界となる時間範囲または反射波の振幅(つまり減衰度)に関するねずみ鋳鉄管とダクタイル鋳鉄管とを区分けする境界となる振幅範囲あるいはそのような時間範囲と振幅範囲の両方を描画した評価用透明板をこのモニタの表示画面に装着すると、一目で判定対象の敷設鋳鉄管がねずみ鋳鉄管またはダクタイル鋳鉄管のいずれであるかを判定することができる。
【0014】
上述した材質判定システムをさらに自動化させたシステムは、判定対象となった鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波伝播時間を測定する第1超音波特性測定部と、前記鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波減衰度を測定する第2超音波特性測定部と、前記第1超音波特性測定部によって得られた超音波伝播時間と、前記第2超音波特性測定部によって得られた超音波減衰度と、前記鋳鉄管の肉厚に関する肉厚情報とを入力パラメータとして、前記鋳鉄管がねずみ鋳鉄管かまたはダクタイル鋳鉄管かであるかを示す演算結果を、予め学習によって構築された演算機能を通じて導出する判定部とから構成される。つまり、想定される肉厚と、反射波の時間軸情報と、反射波の振幅情報とを入力値として、判定対象の敷設鋳鉄管がねずみ鋳鉄管またはダクタイル鋳鉄管のいずれかであることを示す出力値を導出する判定エンジンを予め構築しておく。これにより、呼び径などの肉厚情報を入力し、敷設鋳鉄管に対して超音波を送受信するだけで、敷設鋳鉄管の材質判定が完了する。判定エンジンには、入力パラメータが少ないので、ニューラルネットワークなどを用いても簡単にシステムを構築することができ、好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】敷設鋳鉄管の材質を超音波伝播特性に基づいて判定する技術を示す模式図である。
【図2】ダクタイル鋳鉄管とねずみ鋳鉄管の超音波伝播特性を呼び径毎に測定した結果を示す図である。
【図3】ダクタイル鋳鉄管とねずみ鋳鉄管における音速と減衰度と相関を示す相関図である。
【図4】本発明の敷設鋳鉄管の材質判定システムの実施形態の1つで用いられた判定装置における機能ブロック図である。
【図5】本発明の敷設鋳鉄管の材質判定システムにおける判定手順を示す模式図である。
【図6】音速に基づく材質判定を容易にする評価用透明板の使用形態を示す模式図である。
【図7】減衰度に基づく材質判定を容易にする評価用透明板の使用形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の敷設鋳鉄管材質判定システムの実施形態を説明する。この実施形態では、図1に示すように、既に地中等に埋設された敷設鋳鉄管の材質判定、特にダクタイル鋳鉄管であるかまたはねずみ鋳鉄管であるかが、複数の超音波伝播特性に基づいて判定される。ここでは、敷設鋳鉄管の材質判定のために用いられる超音波伝播特性は音速と超音波減衰度である。音速と減衰度は、超音波探傷器として知られている計測機器を用いて測定できる。超音波探傷器はよく知られているので、ここでは詳しい説明は省略するが、圧電素子を有する超音波プローブをセンサとして備えている。その超音波プローブの送受信面を材料表面に当て、超音波プローブにパルス状の励起電圧を付与することにより励起される超音波パルス(振動波)を材料表面から送信し、底面で反射してくる反射波を圧電素子が受信する。受信した反射波(正確には反射波に基づく信号波)は、振幅調整(増幅)や時間軸調整されて、モニタ画面に表示される。通常モニタ画面には、励起した超音波パルスを材料表面から直接受信した信号である直接波と、反射波が表示されるが、入射した超音波パルスは材料表面と底面との間で繰り返す反射するので、第1回目の反射波(以下第1波と称する)、第2回目の反射波(以下第2波と称する)、と順次表示されるが、超音波減衰度が大きい鋳鉄管の場合、評価対象になるのはせいぜい第3回目の反射波までである。
超音波探傷器に付属しているモニタの画面では、反射波の振幅が縦軸で示され、反射波の伝播時間が横軸で表される。したがって、直接波と第1波との間の時間軸長さ(直接波の位置でゼロ点調整されていることにする)、あるいは第1波と第2波との間の時間長さが鋳鉄管の肉厚を往復した超音波の伝播時間となる。この伝播時間の半分で鋳鉄管の肉厚を除算すれば音速が求まるが、測定対象が敷設鋳鉄管であるためその肉厚を測定できない。従って、敷設鋳鉄管に刻印されている呼び径や既設管データベースに記録されている品番としての呼び径を通じて内径、外形、肉厚を知ることができるが、実際の肉厚は、許容誤差範囲でばらついているので、本発明では統計的な手法を用いている。つまり、呼び径毎に多数のサンプルを選んで、肉厚のバラツキを考慮して算定されたしきい値を利用して、音速による材質判定を行っている。
【0017】
図2には、100から600までの呼び径毎にサンプリングして算定された肉厚音波伝播時間がダクタイル鋳鉄管とねずみ鋳鉄管とにわけて示されている。例えば、呼び径「100」のダクタイル鋳鉄管では、その肉厚音波伝播時間は最小肉厚の鋳鉄管が「1.45」、最大肉厚の鋳鉄管が「1.67」、平均では「1.52」となっている。呼び径「100」のねずみ鋳鉄管では、その肉厚音波伝播時間は最小肉厚の鋳鉄管が「1.76」、最大肉厚の鋳鉄管が「2.37」、平均では「1.91」となっている。さらにこのデータに基づいて、ダクタイル鋳鉄管における肉厚のばらつきがもたらす音波伝播時間(反射波の時間軸位置)の範囲と、ねずみ鋳鉄管における肉厚のばらつきがもたらす音波伝播時間の範囲を示す横棒グラフが作成されている。各呼び径で作成された横棒グラフが積み重ねられ、それぞれの平均値がプロットされている。
【0018】
図2から理解できるように、ダクタイル鋳鉄管の平均値をプロットした曲線を第1しきい値線と名づけ、ねずみ鋳鉄管の平均値をプロットした曲線を第2しきい値線と名づけると、音波伝播時間が第1しきい値線より左側(伝播時間が短い、つまり音速が速いことを意味する)に反射波が位置するとダクタイル鋳鉄管であると明確に判定することができる。また、音波伝播時間が第2しきい値線より右側(伝播時間が長い、つまり音速が遅いことを意味する)に反射波が位置するとねずみ鋳鉄管であると明確に判定することができる。音波伝播時間が第1しきい値線と第2しきい値線との間に位置する場合、十分な信頼性をもって判定することができず、その原因としては実際の肉厚が呼び径から算定される肉厚からかなりずれていることが推定される。従って、この領域に入れば、肉厚の変動の悪影響が音波伝播時間ほど受けない超音波減衰度(以下単に減衰度と称する)による判定が行われる。この減衰度による判定は、ねずみ鋳鉄管の減衰度がダクタイル鋳鉄管に比べて大きいという超音波伝播特性に基づいている。減衰度は、第1波と第2波との間の振幅差、あるいは第1波と第3波との間の振幅差あるいは、第2波と第3波との間の振幅差から算定できる。なお、ここでいう減衰度とは、超音波が材料中を伝播する際にその材料音響特性によって超音波の音圧、つまり波形の振幅が低下することを表す値を意味している。従って、この減衰度、繰り返される反射波の振幅差や比でもよいし、その他の演算値でもよい。
【0019】
本発明では、検査対象が主に地中に埋設された敷設鋳鉄管なので、超音波伝播特性としての音速や減衰度の測定には大きな誤差が生じる。図3は、ダクタイル鋳鉄管とねずみ鋳鉄管における超音波反射波を用いた音速は減衰度のバラツキの拡がりを模式的に示している。このことから、敷設鋳鉄管がダクタイル鋳鉄管かねずみ鋳鉄管かのいずれであるという判定に、反射波の伝播時間(音速)と反射波の振幅(減衰度)との両方を組み合わせることが重要であることが理解できる。
【0020】
図4は、この敷設鋳鉄管材質判定システムにおいて判定装置として流用された液晶パネル式モニタ10を有する超音波探傷器1が示されている。超音波探傷器1は、接続された超音波プローブを超音波パルスの送受信部として機能させるように構成されている。超音波探傷器1が備えている機能部のうち、本発明に特に関係するものとして、第1超音波特性測定部11、第2超音波特性測定部12、第1評価部13、第2評価部14、表示制御部15が挙げられる。
【0021】
第1超音波特性測定部11は敷設鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波伝播時間を測定し、第2超音波特性測定部12は敷設鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波減衰度を測定する。第1超音波特性測定部11は超音波プローブによって受信される超音波パルスである反射波の信号を時間的に処理することで音速に依存する超音波伝播時間を処理する機能を有する。第2超音波特性測定部12は、超音波プローブによって受信される超音波パルスである反射波の信号の大きさを処理することで減衰度に依存する超音波の振幅を処理する機能を有する。超音波伝播時間が判定対象となっている敷設鋳鉄管の肉厚に依存する所定の条件と比較することで、鋳鉄管がねずみ鋳鉄管またはダクタイル鋳鉄管のいずれであるかを判定することができる。この超音波伝播時間に関する条件である第1材質判定条件を設定するのが第1判定条件設定部であり、超音波減衰度に関する第2材質判定条件を設定するのが第2判定条件設定部である。
【0022】
第1評価部13は、第1超音波特性測定部11によって測定された超音波伝播時間と前記第1材質判定条件との比較によって敷設鋳鉄管がねずみ鋳鉄管かまたはダクタイル鋳鉄管かを判定する。第2評価部14は、第1評価部13による判定が不能の場合、つまり音速による材質判定が不能の場合、第2超音波特性測定部12によって測定された超音波減衰度と前記第2材質判定条件との比較によって敷設鋳鉄管がねずみ鋳鉄管またはダクタイル鋳鉄管のいずれであるかを判定する。
【0023】
表示制御部15は、第1超音波特性測定部11による超音波伝播時間の処理結果と第2超音波特性測定部12に反射波振幅の処理結果を同時にモニタ10に表示する表示画像を生成する。上述した説明から理解できるように、モニタ画面では、超音波パルスの鋳鉄管内周面からの反射波の到達時間が横軸に表示され、当該反射波の振幅が縦軸に沿って表示されるので、上述した第1材質判定条件はモニタ画面の横軸上に設定された時間範囲であり、第2材質判定条件はモニタ画面の縦軸上に設定された振幅範囲である。
【0024】
従って、検査員がモニタ画面に表示される反射波の挙動を観察することで、鋳鉄管がねずみ鋳鉄管またはダクタイル鋳鉄管のいずれであるかを判定することは可能であるが、検査員も負担が大きく、その熟練度によって判定信頼性が異なるという問題も生じる。このため、この実施の形態では、判定を容易にするために、モニタ10の表示画面の前面に装着される評価用透明板3が用意されている。この評価用透明板3には、鋳鉄管の材質(ねずみ鋳鉄管またはダクタイル鋳鉄管)を判定するために用いられる前述の時間範囲が描画されている音速による材質判定用の評価用透明板30と、前述の振幅範囲が描画されている減衰度による材質判定用の評価用透明板40とが含まれている。なお、音速は反射波の伝播時間と鋳鉄管の肉厚によって算出されるので、肉厚が異なる毎に適切な時間範囲が描画されている評価用透明板30を選択する必要があるが、ある程度の肉厚範囲内では同一の評価用透明板30を使用しても良い。同様に、肉厚が異なる毎に適切な振幅範囲が描画されている評価用透明板40を使用しても良い。また、伝播時間と振幅範囲の両方が描画されている評価用透明板30を用いてもよい。
【0025】
上述したように構成された敷設鋳鉄管材質判定システムにおける判定工程を以下に図5の模式図を用いて説明する。
まず、判定対象となる敷設鋳鉄管の少なくとも一部の表面を露出させ、土などを除去する清掃を行う(#01)。露出した敷設鋳鉄管の呼び径を読み取り、この呼び径から求めることができる肉厚に適応する、音速による材質判定用の評価用透明板(以下単に第1パネルと称する)30を選択する(#02)。選択された第1パネル30をモニタ10の画面に装着し、清掃によってきれいにされた敷設鋳鉄管の測定箇所表面にカップラーを塗付する。さらに、超音波プローブの送受信面を測定箇所表面に当て超音波パルスを励起するとともに、敷設鋳鉄管の内周面からの反射波の振幅が最大となるような姿勢を維持して測定を行う(#03)。モニタ画面に表示された反射波と、第1パネル30に描画された、超音波伝播時間に関する第1材質判定条件としてのしきい帯とを比較して、超音波伝播時間(結果的には音速)に基づく材質判定を行う(#04)。
【0026】
このステップ#04での第1パネル30を用いた音速による材質判定(音速判定)を、図6を用いて説明する。第1パネル30には、ダクタイル鋳鉄管とねずみ鋳鉄管とを区別するためのしきい帯31が描画されている。しきい帯31は縦軸に平行な所定幅を有する帯であり、この例では、第1反射波がしきい帯31の右側に位置していればねずみ鋳鉄管と判定し(#07)、第1反射波がしきい帯31の左側に位置していればダクタイル鋳鉄管と判定する。第1反射波がしきい帯31の幅内に入っていると、ねずみ鋳鉄管かダクタイル鋳鉄管かの判定が困難であるとして音速での判定が成立しないとみなす(#05)。このしきい帯31内に第1反射波が入っている場合、肉厚が想定外という可能性が高い。従って、音速による材質判定は断念し、肉厚の誤差が音速測定ほどには影響しない減衰度による材質判定を行う(#07)。なお、しきい帯31の時間軸位置は、図2や図3で示したような、ねずみ鋳鉄管とダクタイル鋳鉄管との間での反射波の肉厚長さにおける伝播時間差(つまり音速差)の統計的な解析によって算定される。例えば、ダクタイル鋳鉄管での最長伝播時間がしきい帯31の左端を規定し、ねずみ鋳鉄管での最短伝播時間がしきい帯31の右端を規定する。図6の例では、第1反射波を音速判定に採用したが、第2反射波ないしは第3反射波を採用してもよく、呼び径によって評価対象となる反射波を代えてもよい。
【0027】
減衰度による材質判定は、超音波パルスの肉厚間の往復伝播によって順次現れる反射波の振幅の低下度(反射波先端をプロットした線の傾きで表してもよい)が超音波の材料組織内の伝播による減衰度(ここでは音波拡散を無視する)である。図2や図3で示したような統計的解析に[よれば、ねずみ鋳鉄管の減衰度はダクタイル鋳鉄管より大きい。従って、超音波減衰度、つまり反射波の振幅低下の度合いからねずみ鋳鉄管とダクタイル鋳鉄管とを区分けすることができる。このねずみ鋳鉄管とダクタイル鋳鉄管とを減衰度で区分けするための第2材質判定条件である。従って、減衰度判定を行うために、第1パネル30に代えて、減衰度判定用の第2パネル評価用透明板(以下単に第2パネルと称する)40を選択して、モニタ画面にはめ込む(#06)。
【0028】
このステップ#06での第2パネル40を用いた減衰度による材質判定(減衰度判定)を、図7を用いて説明する。第2パネル40には、ダクタイル鋳鉄管とねずみ鋳鉄管とを区別するために基準振幅レベルを示す第1しきい帯41と判定条件レベルを示す第2しきい帯42とが描画されている。第1しきい帯41と第2しきい帯42は横軸に平行に延びた帯である。図7では、第1反射波と第2反射波を用いた第1減衰度判定と、第2反射波と第3反射波を用いた第2減衰度判定とが示されている。
第1減衰度判定では、第1反射波を第1しきい帯41に合わせた状態で、第2反射波が第2しきい帯42を越えているか越えていないかをチェックする。第2反射波が第2しきい帯42を越えていれば、ダクタイル鋳鉄管と判定し、第2反射波が第2しきい帯42を越えていなければ、ねずみ鋳鉄管と判定する(#07)。
第2減衰度判定では、第2反射波を第1しきい帯41に合わせた状態で、第3反射波が第2しきい帯42を越えているか越えていないかをチェックする。第3反射波が第2しきい帯42を越えていれば、ダクタイル鋳鉄管と判定し、第3反射波が第2しきい帯42を越えていなければ、ねずみ鋳鉄管と判定する(#07)。
第1しきい帯41と第2しきい帯42との間隔がねずみ鋳鉄管とダクタイル鋳鉄管とを区分けする減衰度に対応するため、その間隔は、図2や図3で示したような、ねずみ鋳鉄管とダクタイル鋳鉄管とに対する繰り返し反射波の振幅低下(つまり減衰度差)の統計的な解析によって算定される。なお、第1減衰度判定と第2減衰度判定とでは、第1しきい帯41と第2しきい帯42との間隔を変えた別な第2パネル40を用いてもよい。
【0029】
〔別実施形態〕
(1)上述した実施形態では、モニタ画面上に表示される反射波の状態から、検査者が超音波伝播特性である音速と減衰度とを評価して、敷設鋳鉄管がねずみ鋳鉄管かあるいはダクタイル鋳鉄管であるかを判定していたが、この判定を機械的に行うことも可能である。そのような自動材質判定システムの原理を説明する。
【0030】
ここでも、敷設鋳鉄管の材質判定のために用いられる超音波伝播特性は音速と超音波減衰度とする。図1で模式的に示されているが、まず検査対象鋳鉄管の肉厚に関する肉厚情報である呼び径を入力パラメータ:βとして入力する。検査対象鋳鉄管の表面をきれいにして、その表面に超音波プローブを当てて、超音波パルスを励起し、反射波の伝播時間と減衰度をそれぞれ入力パラメータ:α1とα2として入力する。与えられた入力パラメータに基づいて検査対象の敷設鋳鉄管がねずみ鋳鉄管かまたはダクタイル鋳鉄管かであるかを示す演算結果を出力する判定エンジンは、多数のダクタイル鋳鉄管とねずみ鋳鉄管をサンプリングして学習することにより構築することができる。そのような判定エンジンは、ニューラルネットワークやルールベースなどの形態をとるが、簡単には、入力パラメータを変数とする多変数関数:fの形で表すことができる。つまり、入力された入力パラメータ、呼び径:β、音速に関連する超音波伝播時間:α1、減衰度に関連する超音波の振幅:α2から敷設鋳鉄管の材質を判定するための評価値:γを導出する。例えば、学習用のサンプルとして、図2や図3で示すような種々の呼び径:β毎のダクタイル鋳鉄管とねずみ鋳鉄管から得られた超音波伝播時間:α1と超音波の振幅:α2を学習データとして、ダクタイル鋳鉄管を示す評価値:γとして「1」を、ねずみ鋳鉄管を表す評価値:γとして「2」を割り振っておいて、ニューラルネットワークのような重み係数を算定することにより、
γ=f(α1,α2,β)、
で関数化された判定エンジンを構築することができる。そして、例えば、判定しきい値:THとして「0.5」を設定し、γ<0.5の場合ダクタイル鋳鉄管と判定し、γ>=0.5の場合ねずみ鋳鉄管と判定する。
このような判定エンジンの構築により、敷設鋳鉄管の材質判定を機械化することが可能であり、このようなシステムも本発明の権利範囲内である。
【0031】
(2)上述した実施の形態では、約2MHzの超音波プローブが使用されているが、他の周波数を用いても良い。さらには、複数の帯域の異なる周波数を用い、周波数毎の超音波減衰度を測定して、その測定結果、つまり超音波減衰度の周波数特性を材質判定の入力パラメータとしてもよい。本発明における超音波減衰度には単一の周波数における減衰度だけでなく超音波減衰度の周波数特性も含むものである。
【0032】
(3)上述したように、本発明による敷設鋳鉄管の材質判定では、判定対象となる敷設鋳鉄管の肉厚を呼び径などから想定し、反射波の肉厚伝播時間の違いを音速の違いとみなし、ねずみ鋳鉄管とダクタイル鋳鉄管を区分けしている。さらに、場合によっては生じる、想定外の肉厚誤差などから、肉厚伝播時間による材質判定が不可能な場合には、肉厚誤差の影響が比較的受けにくい減衰度の違い、つまり繰り返し反射波の振幅の変化からねずみ鋳鉄管とダクタイル鋳鉄管を区別している。簡単な検査方法であるが、判定対象をねずみ鋳鉄管とダクタイル鋳鉄管とに限定し、それぞれの組織がもつ超音波伝播特性の違いを用いて、少なくとも敷設鋳鉄管の一部の表面を露出させるだけで、満足できる材質判定を得ることができる。
(4)上述した実施の形態では、第1評価ステップ(又は第1評価部)による判定が不能の場合に、第2評価ステップ(又は第2評価部)による判定を行うとしたが、並行して判定してもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、複数の超音波伝播特性が異なる材料組織(材質)を有する既設材料に対して、その材質を判定する技術に適用可能であり、ここで記載されているねずみ鋳鉄管とダクタイル鋳鉄管は、超音波伝播特性が異なる材料組織を有する材料を代表しているだけであり、他の名称を有する複数の材料の比較判定にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1:超音波探傷器
10:モニタ
11:第1超音波特性測定部
12:第2超音波特性測定部
13:第1評価部
14:第2評価部
15:表示制御部
3:評価用透明板
30:第1パネル(音波判定用透明板:第1判定条件設定部)
31:しきい帯(第1材質判定条件)
40:第2パネル(減衰度判定用透明板:第2判定条件設定部)
41:第1しきい帯
42:第2しきい帯(第2材質判定条件)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷設されている鋳鉄管の表面を清掃するステップと、
前記鋳鉄管の肉厚に関する肉厚情報を取得するステップと、
前記鋳鉄管の肉厚に関する肉厚情報に基づいて超音波伝播時間に関する第1材質判定条件を設定するステップと、
前記鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波伝播時間を測定するとともに前記鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波減衰度を測定するステップとを実行し、
さらに、前記測定された超音波伝播時間と前記第1材質判定条件との比較によって前記鋳鉄管がねずみ鋳鉄管かまたはダクタイル鋳鉄管かを判定する第1評価ステップと、前記鋳鉄管の超音波減衰度に関する第2材質判定条件を設定し、前記測定された超音波減衰度と前記第2材質判定条件との比較によって前記鋳鉄管がねずみ鋳鉄管またはダクタイル鋳鉄管のいずれであるかを判定する第2評価ステップのうち、少なくとも第1評価ステップを実行する敷設鋳鉄管の材質判定方法。
【請求項2】
前記第1評価ステップを実行し、当該第1評価ステップで判定不能の場合に、前記第2評価ステップを実行し、第2評価ステップの判定結果を採用する請求項1に記載の敷設鋳鉄管の材質判定方法。
【請求項3】
前記超音波伝播時間の測定結果は、前記鋳鉄管の表面で励起された超音波パルスの内周面からの反射波を時間軸に沿って表示する表示画面における反射波の時間軸位置で表され、前記第1材質判定条件は前記画面上に設定された時間範囲であり、かつ
前記超音波減衰度の測定結果は、前記鋳鉄管の表面で励起された超音波パルスの内周面からの反射波の振幅を表示する表示画面における反射波高さで示され、前記第2材質判定条件は前記表示画面上に設定された振幅範囲である請求項1又は2に記載の敷設鋳鉄管の材質判定方法。
【請求項4】
前記時間範囲と前記振幅範囲とは、前記表示画面の前面に装着される評価用透明板に描画されている請求項3に記載の敷設鋳鉄管の材質判定方法。
【請求項5】
敷設鋳鉄管材質判定システムにおいて、
鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波伝播時間を測定する第1超音波特性測定部と、
前記鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波減衰度を測定する第2超音波特性測定部と、
前記鋳鉄管の肉厚に関する肉厚情報に基づいて超音波伝播時間に関する第1材質判定条件を設定する第1判定条件設定部と、
前記鋳鉄管の超音波減衰度に関する第2材質判定条件を設定する第2判定条件設定部と、
前記第1超音波特性測定部によって測定された超音波伝播時間と前記第1材質判定条件との比較によって前記鋳鉄管がねずみ鋳鉄管かまたはダクタイル鋳鉄管かを判定する第1評価部と、
前記第2超音波特性測定部によって測定された超音波減衰度と前記第2材質判定条件との比較によって前記鋳鉄管がねずみ鋳鉄管またはダクタイル鋳鉄管のいずれであるかを判定する第2評価部とを備え、
前記第1評価部の判定と前記第2評価部の判定とに基づいて前記鋳鉄管がねずみ鋳鉄管またはダクタイル鋳鉄管のいずれであるかを最終的に判定する敷設鋳鉄管材質判定システム。
【請求項6】
前記第1評価部による判定が不能の場合にのみ、前記第2評価部による判定が最終的な判定となる請求項5に記載の敷設鋳鉄管材質判定システム。
【請求項7】
前記超音波伝播時間の測定及び前記超音波減衰度の測定のために前記鋳鉄管の表面で励起された超音波パルスの内周面からの反射波の到達時間を横軸に表示するとともに、当該反射波の振幅を縦軸に沿って表示するモニタが備えられており、
前記第1材質判定条件は前記モニタの横軸上に設定された時間範囲であり、前記第2材質判定条件は前記モニタの縦軸上に設定された振幅範囲である請求項6に記載の敷設鋳鉄管材質判定システム。
【請求項8】
前記モニタの表示画面に装着される評価用透明板が備えられ、評価用透明板に前記時間範囲又は前記振幅範囲あるいはその両方が描画されている請求項7に記載の敷設鋳鉄管材質判定システム。
【請求項9】
敷設鋳鉄管材質判定システムにおいて、
鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波伝播時間を測定する第1超音波特性測定部と、
前記鋳鉄管の表面から肉厚方向の超音波減衰度を測定する第2超音波特性測定部と、
前記第1超音波特性測定部によって得られた超音波伝播時間と、前記第2超音波特性測定部によって得られた超音波減衰度と、前記鋳鉄管の肉厚に関する肉厚情報とを入力パラメータとして、前記鋳鉄管がねずみ鋳鉄管かまたはダクタイル鋳鉄管かであるかを示す演算結果を、予め学習によって構築された演算機能を通じて導出する判定部と、
からなる敷設鋳鉄管材質判定システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate