説明

文字入力キーボードを備えた電子機器

【課題】キー数が30程度のアルファベットキーで、英字、数字、記号、機能の
100種類程度のキー入力を効率よく行なう文字入力キーボードを備えた電子機器を提供すること。
【解決手段】左右で2個の多段の親指シフトキーを備え、アルファベット26文字と4個の記号に対応したキーのシフト状態で、十分に多くの種類のキー入力ができるようにする。
多段の親指シフトとは、シフトキーを打鍵する毎に、シフト状態が変化し、続いて、シフトキーを押しながら、変化したシフト状態でキー入力を行なう。シフトキーでのデータキー入力をする直前に、シフトキー打鍵を複数回することにより、多くの種類のキー入力をすることができる。
また、キーの入力状態に応じた操作ガイド情報キーマップを表示画面に表示できるようにして操作者が容易に多くの種類のキー入力ができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パソコンや携帯情報機器などにキーボードなどからデータ入力をする装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パソコンや携帯情報機器などにデータを入力手段として、アルファベット26文字をQWERTYキー配列と呼ばれる配置で構成したキーボードが広く使われている。
【0003】
例えば、日本語を処理できる標準的なパソコンでは、アルファベット26文字をQWERTYキー配列で配置し、数字/記号、その他のキーを加えて、図16の模式図のような109個のキーで109の種類のキー入力ができるキーボードが使われている。さらに、英字の大文字などのように入力できる文字の種類を増やすために、図16のシフトキー(1691)あるいはシフトキー(1703)が使われる。
【0004】
ただし、これらのシフトキーは、左右の小指キーで押しながら操作するように設けられており、キーコード入力としては、左右で同じ動作をする。
一方、QWERTYキー配列よりも、日本語のキー入力が、効率よく行なえるNEC社製のM式キー配置や、富士通製の親指シフト入力などの製品が市販されている。これらでは、左右の親指に対応した、2個の親指シフトキーが異なるシフト動作を行なう機能が、備えられている。これらのキーボードも、総キー数は100個程度である。
【0005】
しかし、これらの親指シフトキーは、従来の左右の小指シフトキーが、親指シフトキーとして、単純に位置が置き換わっているにすぎないので、シフトキーで、入力できる文字の種類は、従来に較べて大きくは増加しない。
【特許文献1】特許1546214号公報
【特許文献2】特許1441829号公報
【非特許文献1】「これが日本語に最適なキーボードだ」、43-44頁 森田正典著、日本経済新聞社、1992年3月
【非特許文献2】昭和54年度情報処理学会第20回全国大会論文集、 「親指シフトキーボード」675頁 神田泰典他
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明が解決しようとする課題は、図16の模式図のようなパソコンに標準的に使用されている、キー数が100程度の従来のキーボードに較べて、キー数が50程度の小型で、携帯性が向上し、従来のキーボードとの操作上の互換性、親和性を保ちながら、尚且つ、効率的で、操作性に優れたキーボードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
キーボードのキー数を減らすために、シフト状態の数を増加させる。即ち、シフトしながら、データキーを打鍵する前に(以下では、打鍵とはキーを押して、離す一連の動作をいう)、シフトキーを押して、データキーを打鍵しないで、シフトキーを離した場合は、シフト状態を変化させる。
【0008】
このシフトキーを押して、離す動作をn回繰り返すことにより、シフトキーを押しながら、データキーを打鍵して、キー入力をする前に、シフト状態をnだけ増加させてもよい。
【0009】
操作上の便宜性を勘案して、シフトキーを押しながらでなくても、特定のシフト状態で、データキーを打鍵した場合に、当該シフト状態での1回だけのキー入力が、行なわれ、シフト状態が解除されるようにしてもよい。
【0010】
シフトキーの操作を左右の親指で行なうのに便利であるように、シフトキーを2個設け、シフト状態の数を増やし、アルファベットキーで、アルファベットの小文字、大文字、数字、記号や機能入力ができるようにしてもよい。
【0011】
シフト状態が増えて、入力できるキーコードの数を増やせることを利用して、ソフトウェアとの組み合わせにより、省打鍵入力ができるようにしてもよい。
【0012】
同じキーのシフト状態で、異なるキーコードを入力する場合は、シフト状態で区別した操作に便利なようなキーマップが、電子機器の表示装置に画面表示されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第一の効果は、キーボードのキー数を少なくでき、省スペース型のキーボードを実現できることである。これは、左右の多段階での親指シフトで、同じキーを効率よく複数種類のキーコード入力に使用できるためである。
【0014】
第2の効果は、少ないキー数のキーボードにもかかわらず、キー入力速度が、全体として、低下しないことである。これは、キー数が少ないために、指の移動距離が少ないので、親指以外の指の移動時間が短く、多段階での親指シフトも親指の移動時間を必要とせず、全体として速度低下しないためである。
【0015】
第3の効果は、キーボードの数字や記号を含めてのタッチタイピングが容易なキーボードを実現できることである。これは、少ないキーでの指の移動範囲の少ないキー配置に加えて、小指に大きな負担をかけることなく、親指で円滑にシフト動作を可能としているためである。
【0016】
第4の効果は、従来は小指で行なっていた英字の大文字のシフト動作を力の強い親指で円滑に行い、小指の負担を少なくして、長時間の英文でのキー入力をするときの疲労を軽減できることである。
【0017】
第5の効果は、1回のキー打鍵で複数のキーコード列を入力できる省打鍵入力を効率よく実現できることである。これは、左右の多段階の親指シフト機能により、多くの種類のキーコード列を簡単なキー打鍵で実現できるためである。
【0018】
第6の効果は、辞書を使った省打鍵を効率よくキー入力できることである。これは、パソコンなどに本来備えられている辞書機能と左右の多段階の親指シフト機能とを適切に組み合わせる工夫がされたためである。
【0019】
第7の効果は、多くの種類の文字や文字列の入力を初心者でも間違うことが少なく入力できることである。これは、パソコンなどにインストールされたソフトウェアにより、操作画面に、適切に表示されたキーマップに従ってキー操作ができるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例1と2で使用するキーボードの模式図である。本キーボードは、4行12列の格子状に配列された48個のキーから構成されている。本キーボードは、パソコンのUSBインターフェースに接続され、操作者によって押されたキーに対応した文字のキーコードがパソコンに送られ、キー入力が行なわれる。
【0021】
左半分の上から3行には、アルファベットキーが15文字配列されている。同じく、右半分の上から3行には、他のアルファベットキーが11文字と4個の記号が配列されている。アルファベットの配列は、所謂QWERTY配列で配置されており、パソコンなどの電子機器のキーボードで標準的に採用されている配列である。
【0022】
図1の中央部に配置された切り替え数/記キー(116)と切り替え文字キー(136)と切り替え機能キー(156)の3個のキーは、図1のキーボードの状態を切り替えるキーである。これらのキーのキートップにはランプが埋め込まれており、これらのキーが押されるとランプが点灯して、それぞれのキーボードの状態になる。初期状態では文字キーが押された状態になっている。
【0023】
図1のキーボードの最下段には、12個の制御キーが配置されており、右端の上から3段には、3個の制御キー配置されている。
【0024】
図1のキーボードの文字状態においては、図1のキー配列に従って、パソコンに文字のキー入力がされる。
【0025】
図1のキーボードの文字状態あるいは機能状態において、切り替え数/記キー(116)が押されると図1のキーボードは、図2の数/記状態となり、図2のキー配列に従って、パソコンに記号/数字のキー入力がされる。なお、数/記状態において、一部のキーには、機能キーが割り当てられている。
【0026】
図1のキーボードの数/記状態あるいは文字状態、において、機能キー(156)が押されると図1のキーボードは、図3の機能状態となり、図3のキー配列に従って、パソコンに機能のキー入力がされる。なお、機能状態において、入力される数字は、通常、テンキーで入力される数字であり、数/記状態でのテンキーではない数字キーコードと区別される。
【0027】
以上のように、図1のキーボードを切り替えて、図2、図3としても使うことにより、キー数が48個と少ないにもかかわらず、109キーからなるパソコンのフルキーボードと同等のキー入力ができる。ただし、NumLockキーと呼ばれるテンキーに関係する機能キーの入力は、必要がないので備えられていない。
【0028】
本発明の実施の形態では、図1のようなキーボードをハードウエアとして使用し、パソコンに特別のソフトウェア(以下では、ソフトウェアAと呼ぶ)をインストールすることによって、パソコンに対する文字列入力を簡単にし、効率化する。
【0029】
ソフトウェアAは、キーボードドライバーと組み合わされたユーティティソフトウェアで、パソコン上で動作し、パソコンへのキーコード入力を状態や指定情報に従って変換する。あるいは、キーマップと呼ばれる操作ガイド情報をパソコン画面に表示する。
【0030】
図1の無変換キー(175)は、左親指シフトキーとして、変換キー(177)は、右親指シフトキーとして、シフト状態の変更に使用される。このときの動作については、以下の実施例で説明する。
【実施例1】
【0031】
ソフトウェアAが、起動され動作している初期状態で、図1のキーボードのパソコンへのキー入力の状態は、図4の状態となっている。図4は、文字入力状態であり、図4と図1では、図4の左親指シフトキー(475)と右親指シフトキー(477)以外は、キー配置は同じである。
【0032】
ソフトウェアAの動作によって、図16の無変換キー(1714)として動作した図1のキー(175)が、左親指シフトキー(475)として、動作する。同じく、図16の変換キー(1718)として動作した図1のキー(177)が、右親指シフトキー(477)として、動作する。
【0033】
図4において、左親指シフトキー(475)を押しながら、他のキーを打鍵すると、打鍵されたキーに対応して、図5の文字配置に対応したキーコードがパソコンに送られる(左親指シフトキー(475)の押下が続けば、図5の状態が継続する)。
【0034】
あるいは、図4において、左親指シフトキー(475)を押し、何も他のキーを打鍵しないで、左親指シフトキー(475)の押下を止め、続いて、他のキーを打鍵すると図5の文字配置に対応した、キーコードがパソコンに送られたあと、図4の状態に戻る。図5のキーボードの状態を左αシフト状態と呼ぶ。
【0035】
次に、図4において、右親指シフトキー(477)を押しながら、他のキーを打鍵すると(ここで打鍵とはキーを押して、離す一連の動作をいう)、打鍵されたキーに対応して、図6の文字配置に対応した、キーコードがパソコンに送られる(右親指シフトキー(477)の押下が続けば、図6の状態が継続する)。
【0036】
あるいは、図4において、右親指シフトキー(477)を押し、何も他のキーを打鍵しないで、左親指シフトキー(475)の押下を止め、続いて、他のキーを打鍵すると図6の文字配置に対応した、キーコードがパソコンに送られたあと、図4の状態に戻る。図6のキーボードの状態を右αシフト状態と呼ぶ。
【0037】
次に、図4において、左親指シフトキー(475)を押し、何も他のキーを打鍵しないで、左親指シフトキー(475)の押下を止め、続いて、左親指シフトキー(475)を押しながら、他のキーを打鍵すると、打鍵されたキーに対応して、図7の文字配置に対応した、キーコードがパソコンに送られる(左親指シフトキー(475)の押下が続けば、図7のシフト状態が継続する)。
【0038】
あるいは、図4において、左親指シフトキー(475)を押し、何も他のキーを打鍵しないで、左親指シフトキー(475)の押下を止め、続いて、左親指シフトキー(475)を押し、何も他のキーを打鍵しないで、左親指シフトキー(475)の押下を止め、他のキーを打鍵すると図7の文字配置に対応した、キーコードがパソコンに送られたあと、図4の状態に戻る。図7のキーボードの状態を左βシフト状態と呼ぶ。
【0039】
次に、図4において、右親指シフトキー(477)を押し、何も他のキーを打鍵しないで、右親指シフトキー(477)の押下を止め、続いて、右親指シフトキー(477)を押しながら、他のキーを打鍵すると、打鍵されたキーに対応して、図8の文字配置に対応した、キーコードがパソコンに送られる(右親指シフトキー(477)の押下が続けば、図8の状態が継続する)。
【0040】
あるいは、図4において、右親指シフトキー(477)を押し、何も他のキーを打鍵しないで、右親指シフトキー(477)の押下を止め、続いて、右親指シフトキー(477)を押し、何も他のキーを打鍵しないで、左親指シフトキー(475)の押下を止め、他のキーを打鍵すると図8の文字配置に対応した、キーコードがパソコンに送られたあと、図4の状態に戻る。図8のキーボードの状態を右βシフト状態と呼ぶ。
【0041】
ここで、図4、図5、図6、図7、図8のキーボードの状態の意味について、説明する。
【0042】
図4の状態では、左親指シフトキー(475)と右親指シフトキー(477)以外は、図1と同じ状態であり、アルファベットと若干の記号が入力される。
【0043】
図5の状態では、キーボードの右半分では、アルファベットの大文字(QWERTYキー配置の右半分)と若干の記号が入力され、左半分では、記号と若干の制御キーが入力される。
【0044】
図6の状態では、キーボードの右半分では、数字と若干の記号が入力され、左半分では、アルファベットの大文字(QWERTYキー配置の左半分)が入力される。

【0045】
図7の状態では、キーボードの右半分では、テンキー数字と若干の記号が入力され、左半分では、シフト記号が入力される。

【0046】
図8の状態では、キーボードの右半分では、シフト数字が入力され、左半分では、機能キーが入力される。
【0047】
図4、図5、図6、図7、図8の全体で、図1、図2、図3の全体と同じキー入力ができ、さらにアルファベットの大文字のキー入力ができる。
【0048】
つぎに、いくつかの例によって、説明する。
例えば、図4の状態で、左手小指で、データキーa(431)を打鍵し、左手薬指で、データキーs(432)を打鍵し、右手中指で、データキーk(439)を打鍵すると文字列「ask」が、入力される。
【0049】
同じく例えば、図4の状態で、右手親指で、右親指シフトキー(477)を押し、図6の状態で、左手小指で、データキーA(631)を打鍵し、右親指シフトキー(677)を離し、図4の状態で、左手小指で、データキーs(432)を打鍵し、左手中指で、データキーk(439)を打鍵すると文字列「Ask」が入力される。
【0050】
同じく例えば、図4の状態で、右手親指で、右親指シフトキー(477)を押し、続いて、図6の状態で、右親指シフトキー(677)を離し、図6の状態で、左手小指で、データキーA(631)を打鍵し、図4の状態で、左手薬指で、データキーs(432)を打鍵し、右手中指で、データキーk(439)を打鍵すると文字列「Ask」が、入力される。
【0051】
同じく例えば、図4の状態で、右手親指で、右親指シフトキー(477)を押し、図6の状態で、左手小指で、データキーA(631)を打鍵し、右親指シフトキー(677)を離し、図4の状態で、左手薬指で、データキーs(432)を打鍵し、右手中指で、データキーk(439)を打鍵し、左手親指で、左親指シフトキー(475)を押して、続いて、離し、再び、押して、離して、図7の状態で、左手小指で、データキー?(751)を打鍵すると、文字列「Ask?」が、入力される。
【0052】
同じく例えば、図4の状態で、右手親指で、右親指シフトキー(477)を押し、図6の状態で、左手小指で、データキーA(631)を打鍵し、右親指シフトキー(677)を離し、図4の状態で、左手薬指で、データキーs(432)を打鍵し、右手中指で、データキーk(439)を打鍵し、右手親指で、右親指シフトキー(477)を押しながら、図6の状態で、右手人差し指で、データキー数字1(658)を打鍵し、右手中指で、データキー数字5(639)を打鍵し、右手人差し指で、データ数字キー7(618)を打鍵し、文字列「Ask157」が入力される。
【0053】
以上の例において、指の操作法はタッチタイピングと呼ばれる効率的な方法で、行なわれる。特に、左右の親指は、同じキー位置において、打鍵のたびに移動する必要がない。
【0054】
つぎに、操作者のためのガイド情報としての、キーマップ表示について述べる。ソフトウェアAは、キーマップをパソコンの表示画面に表示する。キーマップの内容は、ソフトウェアAの使用者が適宜、設定することができる。
【0055】
たとえば、図5のキーボードの状態を図11のように、3行10列格子枠に表示する。表示は、図4のアルファベットキーに対応した格子の部分が表示の対象となる。
【0056】
例えば、図11の表示は、図4の状態で、左親指シフトキー(475)が押されたときに、図5の状態に対応して、表示されている。操作者は、図11のキーマップ枠H(1136)表示を見て、図5のデータキーH(537)を打鍵すると文字Hが入力される。
なお、キーマップ表示は、操作者が、操作法を暗記すれば、必要がないので、操作者によって、必要に応じて、オンオフできる。
【0057】
つぎに、パソコンの辞書を使った文字列の省打鍵入力について、述べる。パソコンでは、文字列の省打鍵入力機能を備えている。
【0058】
たとえば、「省打鍵入力機能」を「しょうだき」と入力し、「スペース」キーと「Enter」を打鍵すると「省打鍵入力機能」と入力される。このためには、パソコンの辞書にあらかじめ、「読み」として、「しょうだき」を、入力文字列として、「省打鍵入力機能」を登録しておく必要がある。「読み」としての「しょうだき」は、通常はあまり使わない入力を選ぶことが望ましい。
【0059】
この機能を使って、効率的な省打鍵方法を以下のように実現する。
図4の状態において、左親指シフトキー(475)を2回打鍵し、さらに左親指シフトキー(475)を押している状態、あるいは、左親指シフトキー(475)を3回打鍵した状態が、図9の状態である。
【0060】
このとき、データキー¥^1(911)を打鍵するとソフトウェアAはデータキー¥^1(911)に対応するキーコードを識別して、文字列「¥^1」に対応するキーコード列に変換してキー入力し、さらに続いて、「スペース」キーと「Enter」のキーコードが入力される。このとき、上述の辞書には、読みとして、通常はあまり使わない「¥^1」を、入力文字列として、「省打鍵入力機能」をあらかじめ登録しておくと、文字列「省打鍵入力機能」が入力される。
【0061】
図9の他のキーも同様に「¥^n(nは2から30まで)」の合計30種類の文字列が登録できる。
【0062】
なお、キーマップとして、図12が表示され、キーマップ枠省打機(1211)枠には、覚えやすい標語、例えば
「省打機」などと設定しておく。図12の他の枠も辞書の内容に応じて設定しておく。
【0063】
同様に、図4の状態において、右親指シフトキー(477)を2回打鍵し、さらに右親指シフトキー(477)を押している状態、あるいは、右親指シフトキー(477)を3回打鍵した状態が、図10の状態である。
【0064】
このとき、データキー¥=1(1011)を打鍵すると文字列「¥=1」に対応するキーコード列が入力され、さらに続いて、「スペース」キーと「Enter」のキーコードが入力される。上述の辞書には、読みとして、通常はあまり使わない「¥=1」と入力文字列をあらかじめ登録しておくと、登録された入力文字列が入力される。
【0065】
図10の他のキーも同様に「¥=n(nは2から30まで)」の合計30種類の文字列が登録できる。
なお、キーマップとして、覚えやすい標語を設定しておく。
【実施例2】
【0066】
本実施例では、日本語を入力するときに、効果のある省打鍵入力方法を提供する。
【0067】
実施例1では、左右の親指シフトを使用して、英字の大文字を入力したが、本実施例では、
英字の大文字の代わりに、仮名ローマ字の効果的な省略打鍵をできるようにする。
【0068】
図13と図14が、実施例1の図5と図6の代わりに置き換えられる。
【0069】
図4において、左親指シフトキー(475)を押しながら、他のキーを打鍵すると(ここで打鍵とはキーを押して、離す一連の動作をいう)、打鍵されたキーに対応して、図13の文字配置に対応した、キーコードがパソコンに送られる(左親指シフトキー(475)の押下が続けば、図13の状態が継続する)。
【0070】
あるいは、図4において、左親指シフトキー(475)を押し、何も他のキーを打鍵しないで、左親指シフトキー(475)の押下を止め、続いて、他のキーを打鍵すると図5の文字配置に対応した、キーコードがパソコンに送られたあと、図4の状態に戻る。図13のキーボードの状態を左αシフト状態と呼ぶ。
【0071】
次に、図4において、右親指シフトキー(477)を押しながら、他のキーを打鍵すると(ここで打鍵とはキーを押して、離す一連の動作をいう)、打鍵されたキーに対応して、図14の文字配置に対応した、キーコードがパソコンに送られる(右親指シフトキー(477)の押下が続けば、図6の状態が継続する)。
【0072】
あるいは、図4において、右親指シフトキー(477)を押し、何も他のキーを打鍵しないで、右親指シフトキー(477)の押下を止め、続いて、他のキーを打鍵すると図6の文字配置に対応した、キーコードがパソコンに送られたあと、図4の状態に戻る。図6のキーボードの状態を右αシフト状態と呼ぶ。
【0073】
図13と図14のキーボードの状態では、ローマ字の子音には、「Y」が付けられる。たとえば、図13のデータキーKY(1339)を打鍵すると、文字列「KY」が入力される。「KY」に続いて、例えば、「A」が入力され拗音「きゃ」となる。拗音は日本語では、頻繁に使用される。
【0074】
ローマ字母音には、「NN」がつけられる。たとえば、図14のデータキーANN(1431)を打鍵すると、文字列「ANN」が入力され、撥音「あん」となる。撥音も日本語では、頻繁に使用される。
【0075】
また、図13では、複合母音「AI」「EI」「OU」「OI」が配置されている。これらの複合母音も、また、頻繁に使用される。
【0076】
以上のキー入力は、左右のシフトキーとあわせて、2タッチでのキー入力となるが、左右のシフトキーとアルファベットキーは、同時にタッチすることができ、省打鍵効果が得られる。
【0077】
図13と図14のキーボードの状態によるキー入力方法は、日本語入力に適したM式キー入力として知られている方法(非特許文献1「これが日本語に最適なキーボードだ」を参照)、を本発明の実施例に適用したものである。
【0078】
図5、図6のほかの図4、図7、図8、図9、図10のキーボードの状態は、実施例1の場合と同じである。
【0079】
なお、本実施例は、主にローマ字による日本語の入力を想定しており、英字の大文字の入力は、頻度が少ない。英字の大文字の入力は、実施例1に較べて、効率が落ちるが、図4のシフトキー(471)あるいはシフトキー(482)のShiftキーを使って入力できる。
【0080】
シフトキー(471)あるいはシフトキー(482)のShiftキーは、図16の従来のキーボードのシフトキー(1691)あるいはシフトキー(1703)と同じ動作を行う。シフトキー(1691)あるいはシフトキー(1703)は、小指を使って、操作される。
【0081】
一方、左親指シフトキー(475)あるいは右親指シフトキー(477)は、通常は、親指を使って操作される。小指は、親指に較べて力が弱く疲れやすい。さらに、親指シフトは、ほとんど定位置で操作するのに対し、小指は他の文字キーの操作にも使われるので、小指シフトは、指の負担も大きく、効率が低下する。
【実施例3】
【0082】
実施例3では、キーボードハードウェアとして、図1のキーボードハードウェアの代わりに、図15のキーボードハードウェアが使用される。
【0083】
図15のキーボードハードウェアでは、図1の切り替え数/記キー(116)、切り替え文字キー(136)、切り替え機能キー(156)のような切り替えキーや、シフトキー(171)、シフトキー(182)のShiftキーが、削減されている。
【0084】
これらの機能は、実施例1あるいは実施例2においても、図16の従来のキーボードとの互換性、親和性との関係で、設けられており、実施例3では、これらの機能を削除して、キー数の削減を図って、図15の左親指シフトキー(1575)や右親指シフトキー(1576)の動作で同等の機能を実現している。
【0085】
即ち、図1の切り替え数/記キー(116)、切り替え文字キー(136)、切り替え機能キー(156)の切り替え機能は、図15の左親指シフトキー(1575)や右親指シフトキー(1576)によるシフト状態の変更により、シフトキー(171)、シフトキー(182)のShiftキーのシフト動作は、左親指シフトキー(1575)や右親指シフトキー(1576)のシフト動作により、代替することができる。
【0086】
ただし、小指で主に操作していたシフト動作を主に親指で操作する必要があるなどの従来のキーボードと異なる操作性の違いがある。
このような操作性の違いよりもキー数の削減を重視したのが、実施例3である。

【0087】
以上の実施例において、キーボードハードウェアとして、図1の48キーのキーボードあるいは、図15の44キーのキーボードを使用したが、これらに限ることなく、図16のような通常の109キーの日本語キーボードを用いることができる。
【0088】
この場合は、数字や記号の入力に、左右の親指シフトキーを使用しないようにすることもできるし、タッチタイピングに好都合な場合は、使用することもできる。一般に、109キーでの数字や記号のタッチタイピングは、48キーでのタッチタイピングに較べて、容易ではない。
【0089】
なお、図1の48キーのキーボードは、各キーは、規則正しい格子状に配置されている。一方、通常の109キーのキーボードは、各キーは千鳥状に配置されている。キーマップは、規則正しい格子状で表示され、キーマップを見ながら操作するためには、各キーは、規則正しい格子状に配置されているほうが、望ましい。
【0090】
実施例においての左右のα、β、γの状態の定義を次のように変更することもできる。
左親指シフトキーを押下した状態を左シフトα状態とする。左親指シフトキーを打鍵し、左親指シフトキーを押した状態を左シフトβ状態とする。左親指シフトキーを2回連続打鍵し、左親指シフトキーを押した状態を左シフトγ状態とする。
【0091】
なお、左親指シフトキーを打鍵し、左親指シフトキーを押しながらでなく、他のキーを押した場合は、アンシフト状態でのキー入力がなされ、先の左親指シフトキーの打鍵は無効となる。このように、多段階の親指シフトの定義を変更しても全体としての機能と動作にそれほど大きな影響はない。
【0092】
実施例において、パソコンに標準インターフェースで接続されたキーボードについて、説明したが、接続機器は、パソコンでなく携帯機器などの一般の情報処理機器であってもよい。
【0093】
また、キーボードと情報処理機器は、外部接続されるのでなく、電子辞書などのように、キーボードと情報処理機器が一体的に構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の文字入力キーボードを備えた電子機器は、パソコンや携帯情報端末や電子辞書等のデジタル情報機器に文字や記号等の文字データを入力する装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態で使用するキーボードを文字状態に切替えたときのキー配置図
【図2】本発明の実施の形態で使用するキーボードを数字/記号状態に切替えたときのキー配置図
【図3】本発明の実施の形態で使用するキーボードを機能状態に切替えたときのキー配置図
【図4】キーボードのアンシフト状態でのキー配置図
【図5】キーボードの左シフトα状態でのキー配置図
【図6】キーボードの右シフトα状態でのキー配置図
【図7】キーボードの左シフトβ状態でのキー配置図
【図8】キーボードの右シフトβ状態でのキー配置図
【図9】キーボードの左シフトγ状態でのキー配置図
【図10】キーボードの右シフトγ状態でのキー配置図
【図11】キーマップの表示例1
【図12】キーマップの表示例2
【図13】キーボードの左シフトによる省打鍵文字列の例
【図14】キーボードの右シフトによる省打鍵文字列の例
【図15】キー数が44のキーボードの模式図
【図16】パソコンで標準的に使用される従来のキーボードの模式図
【符号の説明】
【0096】
116 切り替え数/記キー
136 切り替え文字キー
156 切り替え機能キー
171 シフトキー
175 無変換キー
177 変換キー
182 シフトキー
431 データキーa
432 データキーs
439 データキーk
471 シフトキー
475 左親指シフトキー
477 右親指シフトキー
482 シフトキー
537 データキーH
618 データキー数字7
631 データキーA
639 データキー数字5
658 データキー数字1
677 右親指シフトキー
751 データキー?
911 データキー¥^1
1011 データキー¥=1
1136 キーマップ枠H
1211 キーマップ枠省打機
1339 データキーKY
1431 データキーANN
1575 左親指シフトキー
1576 右親指シフトキー
1691 シフトキー
1703 シフトキー
1714 無変換キー
1718 変換キー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを入力するためのキーボードにおいて、データキーとシフトキーが備えられ、シフトキーを押しながら、データキーを打鍵して入力する状態を第1のシフト状態とし、シフトキーを押して、なにもデータキーを入力しないで、シフトキーを離し、続いて、なにもデータを入力しないで、シフトキーを離し、続いて、シフトキーを押しながら、データキーを打鍵して入力する状態を第2のシフト状態とし、それぞれのシフト状態で、データキーを打鍵して文字入力を行なうことを特徴とする文字入力キーボードを備えた電子機器。
【請求項2】
データを入力するためのキーボードにおいて、データキーとシフトキーが備えられ、シフトキーを押しながら、データキーを打鍵して入力する状態を第1のシフト状態とし、あるいは、シフトキーを押して、なにもデータキーを入力しないで、シフトキーを離したあとの直後のデータキーの打鍵は、第1のシフト状態として、入力され、続いて、シフト状態は解除される。シフトキーを押して、なにもデータキーを入力しないで、シフトキーを離し、シフトキーを押しながら、データキーを打鍵して入力する状態を第2のシフト状態とし、あるいは、シフトキーを押してなにもデータを入力しないで、シフトキーを離し、さらに、シフトキーを押して、なにもデータキーを入力しないで、シフトキーを離したあとの直後のデータキーの打鍵は、第2のシフト状態として、入力され、続いて、シフト状態は解除される。
以上の第1のシフト状態あるいは、第2のシフト状態で、データキーを打鍵して文字入力を行なうことを特徴とする文字入力キーボードを備えた電子機器。
【請求項3】
データを入力するためのキーボードにおいて、データキーとシフトキーが備えられ、シフトキーを押しながら、データキーを打鍵して入力する状態を第1のシフト状態とし、シフトキーを押して、なにもデータキーを入力しないで、シフトキーを離し、続いて、なにもデータを入力しないで、シフトキーを離し、続いて、シフトキーを押しながら、データキーを打鍵して入力する状態を第2のシフト状態とし、シフトキーを押して、なにもデータキーを入力しないで、シフトキーを離し、続いて、シフトキーを押して、なにもデータを入力しないで、シフトキーを離し、続いて、シフトキーを押しながら、データキーを打鍵して入力する状態を第3のシフト状態としそれぞれのシフト状態で、データキーを打鍵して文字入力を行なうことを特徴とする文字入力キーボードを備えた電子機器。
【請求項4】
データを入力するためのキーボードにおいて、データキーとシフトキーが備えられ、シフトキーを押しながら、データキーを打鍵して入力する状態を第1のシフト状態とし、あるいは、シフトキーを押して、なにもデータキーを入力しないで、シフトキーを離したあとの直後のデータキーの打鍵は、第1のシフト状態として、入力され、続いて、シフト状態は解除される。シフトキーを押して、なにもデータキーを入力しないで、シフトキーを離し、シフトキーを押しながら、データキーを打鍵して入力する状態を第2のシフト状態とし、あるいは、シフトキーを押してなにもデータを入力しないで、シフトキーを離し、さらに、シフトキーを押して、なにもデータキーを入力しないで、シフトキーを離したあとの直後のデータキーの打鍵は、第2のシフト状態として、入力され、続いて、シフト状態は解除される。
シフトキーを押して、なにもデータキーを入力しないで、シフトキーを離し、シフトキーを押して、なにもデータキーを入力しないで、シフトキーを離し、さらに、シフトキーを押して、なにもデータキーを入力しないで、シフトキーを離し、シフトキーを押しながら、データキーを打鍵して入力する状態を第3のシフト状態とし、あるいは、シフトキーを押してなにもデータを入力しないで、シフトキーを離し、さらに、シフトキーを押して、なにもデータキーを入力しないで、シフトキーを離し、さらに、シフトキーを押して、なにもデータキーを入力しないで、シフトキーを離したあとの直後のデータキーの打鍵は、第3のシフト状態として、入力され、続いて、シフト状態は解除される。
以上の第1シフト状態あるいは、第2のシフト状態あるいは第3のシフト状態で、データキーを打鍵して文字入力を行なうことを特徴とする文字入力キーボードを備えた電子機器。
【請求項5】
請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3あるいは請求項4において、複数のシフトキーを有することを特徴とする文字入力キーボードを備えた電子機器。
【請求項6】
請求項5において、左と右の2個の親指シフトキーを有することを特徴とする文字入力キーボードを備えた電子機器。
【請求項7】
請求項6において、データキーは、アルファベット26文字であり、左の親指シフトキーのシフト状態で、右半分に配置されたアルファベットの大文字を入力し、右の親指シフトのシフト状態で、左半分に配置されたアルファベットの大文字を入力することを特徴とする文字入力キーボードを備えた電子機器。
【請求項8】
請求項6において、データキーは、アルファベット26文字であり、左右の親指シフトキーのシフト状態で、数字、記号、機能を入力することを特徴とする文字入力キーボードを備えた電子機器。
【請求項9】
請求項6において、データキーは、アルファベット26文字であり、左右の親指シフトキーのシフト状態で、文字列の省打鍵機能を入力することを特徴とする文字入力キーボードを備えた電子機器。
【請求項10】
請求項6において、データキーは、アルファベット26文字であり、左右の親指シフトキーのシフト状態で、辞書機能と組み合わせた文字列の省打鍵機能を入力することを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項6において、電子機器の表示画面にキーマップ表示を行なうことを特徴とする文字入力キーボードを備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−123114(P2008−123114A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304359(P2006−304359)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(596178235)ウィズウイン株式会社 (9)
【Fターム(参考)】