説明

文字練習システム、および電子ペン

【課題】リアルタイムに、かつ視覚的に電子ペンにより記入した文字と模範となる文字とを比較すること。
【解決手段】本発明は、電子ペンとサーバとを備えた文字練習システムであって、前記電子ペンは、文字の筆跡に対応する座標データを少なくとも検出する座標検出部と、前記座標検出部で検出した座標データを外部へ出力する通信部と、文字データを投影する投影部と、を備え、前記サーバは、前記電子ペンから出力された座標データから文字コードを生成する文字認識処理部と、前記文字認識処理部で生成された文字コードに対応し、前記電子ペンで描かれた文字の模範となる模範文字データを保持する記憶部と、前記模範文字データを前記電子ペンに出力する通信部と、を備え、前記電子ペンの投影部は、前記座標検出部が前記文字の筆跡に対応する座標データを検出した後に特定の座標データを検出すると、前記サーバの通信部から出力された前記模範文字データを投影する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペンで記入した文字の文字練習システム、および電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の手書き文字練習装置では、座標入力手段と一体となった表示手段により、手書き練習を行なう上で必要な情報をユーザに提供する。したがって、ユーザにとって不自然な視線の移動を伴うことなく手書き文字練習に集中させることが可能となり、練習効果を向上させることができる。また、特許文献2では、電子ペンで記載したデータをネットワーク上のサーバで処理している。さらに、特許文献3では、電子ペンで記載した文字をタップすることで、その文字を音声で読み上げる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−161785号公報
【特許文献2】特開2004−302608号公報
【特許文献3】特開2008−152528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来技術では、判断結果を伝える手段としては音声で読み上げること、又はサーバで判断を処理することができるが、リアルタイムで視覚的に伝える手段について考慮されていなかった。
【0005】
本発明の目的は、電子ペンに搭載した投影部により、リアルタイムに、かつ視覚的に電子ペンにより記入した文字と、模範となる文字とを比較することができる文字練習システム、及び電子ペンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電子ペンとサーバとを備えた文字練習システムであって、前記電子ペンは、文字の筆跡に対応する座標データを少なくとも検出する座標検出部と、前記座標検出部で検出した座標データを外部へ出力する通信部と、文字データを投影する投影部と、を備え、前記サーバは、前記電子ペンから出力された座標データから文字コードを生成する文字認識処理部と、前記文字認識処理部で生成された文字コードに対応し、前記電子ペンで描かれた文字の模範となる模範文字データを保持する記憶部と、前記模範文字データを前記電子ペンに出力する通信部と、を備え、前記電子ペンの投影部は、前記座標検出部が前記文字の筆跡に対応する座標データを検出した後に特定の座標データを検出すると、前記サーバの通信部から出力された前記模範文字データを投影する文字練習システムを提供する。
この構成により、リアルタイムに、かつ視覚的に電子ペンにより記入した文字と、模範となる文字とを比較することができる。
【0007】
上記文字練習システムでは、前記電子ペンの座標検出部は、前記電子ペンの投影部が前記模範文字データの投影を開始する前に、当該電子ペンで描かれる文字の書体を指定する第1の特定座標データを検出すると、前記サーバは、前記書体を有する模範文字データを前記通信部を介して前記電子ペンへ出力し、前記電子ペンの投影部は、前記座標検出部が前記文字の筆跡に対応する座標データを検出した後に前記特定の座標データを検出すると、前記サーバの通信部から出力された前記模範文字データを投影する。
この構成により、リアルタイムに、かつ視覚的に電子ペンにより記入した文字と、模範となる文字とをさまざまな書体の文字により比較でき、練習を行うことができる。
【0008】
上記文字練習システムでは、前記電子ペンの座標検出部は、前記電子ペンの投影部が前記模範文字データの投影を開始してから、当該電子ペンで描かれる文字を指定する第2の特定座標データを1又は複数回検出すると、前記電子ペンの投影部は、前記座標検出部が第2の特定座標データを検出した回数に応じた書き順までの前記模範文字データを投影する。
この構成により、単なる文字の比較だけでなく、書き順の確認までを行うことができる。
【0009】
上記文字練習システムでは、前記電子ペンは、さらに第3の特定座標上での自転を検出して、その回転角度を前記投影部に出力する回転角検出部を備え、前記電子ペンの投影部は、前記模範文字データの投影を開始してから、前記電子ペンの回転検出部が検出した当該電子ペンの回転角度に応じた書き順までの前記模範文字データを投影する。
この構成により、単なる文字の比較だけでなく、書き順の確認までを行うことができる。
【0010】
上記文字練習システムでは、前記電子ペンの座標検出部は、前記電子ペンの投影部が前記模範文字データの投影を開始してから、当該電子ペンで描かれる文字を指定する第4の特定座標データを所定時間継続して検出すると、前記電子ペンの投影部は、前記座標検出部が第4の特定座標データを継続して検出した所定時間に応じた書き順までの前記模範文字データを投影する。
この構成により、単なる文字の比較だけでなく、書き順の確認までを行うことができる。
【0011】
また、本発明は、サーバから取得した文字データを用いて文字の練習を行うための電子ペンであって、前記文字の筆跡に対応する座標データを少なくとも検出する座標検出部と、前記文字の模範となる模範文字データをサーバから取得する通信部と、前記通信部を介して前記サーバから取得した模範文字データを投影する投影部と、を備え、前記投影部は、前記座標検出部が前記文字の筆跡に対応する座標データを検出した後に特定の座標データを検出すると、前記サーバから取得した模範文字データを投影する。
この構成により、電子ペン側の構成を最小限に留め、サーバー側で内容の拡張を行うことができるとともに、リアルタイムに、かつ視覚的に電子ペンにより記入した文字と、模範となる文字とを比較することができる。
【0012】
上記電子ペンでは、前記座標検出部は、前記投影部が前記模範文字データの投影を開始する前に、前記文字の書体を指定する第1の特定座標データを検出すると、前記通信部は、前記書体の模範文字データを前記サーバから取得し、前記投影部は、前記サーバから取得した模範文字データを投影する。
この構成により、電子ペン側での記憶容量を小さくし、サーバー側で文字の追加などの拡張を行うことができるとともに、リアルタイムに、かつ視覚的に電子ペンにより記入した文字と、模範となる文字とを比較することができる。
【0013】
上記電子ペンでは、前記座標検出部は、前記投影部が前記模範文字データの投影を開始してから、前記文字を指定する第2の特定座標データを1又は複数回検出すると、前記投影部は、前記座標検出部が第2の特定座標データを検出した回数に応じた書き順までの前記模範文字データを投影する。
この構成により、単なる文字の比較だけでなく、書き順の確認までを行うことができる。
【0014】
上記電子ペンは、さらに、第3の特定座標上での自転を検出して、その回転角度を前記投影部に出力する回転角検出部を備え、前記投影部は、前記模範文字データの投影を開始してから、前記電子ペンの回転検出部が検出した当該電子ペンの回転角度に応じた書き順までの前記模範文字データを投影する。
この構成により、単なる文字の比較だけでなく、書き順の確認までを行うことができる。
【0015】
上記電子ペンでは、前記座標検出部は、前記投影部が前記模範文字データの投影を開始してから、当該電子ペンで描かれる文字を指定する第4の特定座標データを所定時間継続して検出すると、前記投影部は、前記座標検出部が第4の特定座標データを継続して検出した所定時間に応じた書き順までの前記模範文字データを投影する。
この構成により、単なる文字の比較だけでなく、書き順の確認までを行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る文字練習システム、及び電子ペンによれば、リアルタイムに、かつ視覚的に電子ペンにより記入した文字と、模範となる文字とを比較することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る文字練習システムの構成を示す図
【図2】本実施の形態に係る文字練習システムのブロック図
【図3】電子ペン習字用用紙20の構成を示す図
【図4】電子ペン10Aの構成を示すブロック図
【図5】電子ペン10Aの動作例を示す図
【図6】本実施の形態に係る文字練習システムのシーケンス例(1)
【図7】本実施の形態に係る文字練習システムのシーケンス例(2)
【図8】本実施の形態に係る文字練習システムのシーケンス例(3)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る文字練習システムについて説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る文字練習システムの構成を示す図であり、図2は、本実施の形態に係る文字練習システムのブロック図である。図1に示す本実施の形態に係る文字練習システムは、電子ペン10と、電子ペン習字用用紙20と、サーバ装置50とを備える。
【0020】
(電子ペン10)
図2を参照して、電子ペン10の構成について説明する。電子ペン10は、座標検出部11と、通信部12と、投影部13とを備える。本実施の形態に係る文字練習システムのひとつの特徴は、電子ペン10が投影部13を備える点である。
【0021】
座標検出部11は、後述する電子ペン習字用用紙20(以下、用紙20と呼ぶ。)のドットパターン22から、記載エリア25に電子ペン10により記入された記載文字31の筆跡を座標データとして検出する。座標検出部11は、検出した座標データを通信部12へ出力する。座標検出部11の構成は、例えば、赤外線照射デバイスで用紙20上の電子ペン10のペン先を照らしつつ、カメラなどの撮像素子でドットパターン22を読み取る構成である。
【0022】
座標検出部11は、用紙20上の書体指定置き位置27a〜27cのいずれかの位置に電子ペン10の一部(赤外線を照射して撮像素子で受光する部分)が触れた時に、この書体指定置き位置27a〜27cのいずれかの座標データを検出し、その検出結果(座標データ)を通信部12へ出力する。
【0023】
座標検出部11は、記載文字31の筆跡を座標データとして検出する前に、用紙20上の電子ペン置き位置26に電子ペン10の一部(赤外線を照射して撮像素子で受光する部分)が触れた時に、電子ペン置き位置26の座標データを検出し、その検出結果(座標データ)を投影部13へ出力する。これは、用紙20上の電子ペン置き位置26に対応する記載エリア25に記入された記載文字31に対する投影文字33の投影開始のタイミングを決定する動作である。
【0024】
座標検出部11は、投影部13が投影文字33を投影した後に、用紙20上の同じ電子ペン置き位置26に電子ペン10の一部(赤外線を照射して撮像素子で受光する部分)が触れる度に、その検出回数と、電子ペン置き位置26の座標データとを投影部13へ出力する。これは、用紙20上の電子ペン置き位置26に対応する記載エリア25に記入された記載文字31に対する投影文字33の「書き順投影」開始のタイミング又は何画目までの「書き順投影」を行うかを決定する動作である。
【0025】
なお、上述した座標検出部11の構成は、一例である。座標検出部11の構成は、電子ペン10により記入された記載文字31の筆跡に沿ってドットパターンを読み取れる構成であればよい。また、記載文字31の書き始め位置、書き終わり位置は、例えば、圧力センサにより検出されたペン先の圧力に基づき判定することができる。
【0026】
通信部12は、座標検出部11から入力された座標データをサーバ装置50に出力する。ここで、座標検出部11から入力された座標データには、記載文字31の座標データ、この書体指定置き位置27a〜27cのいずれかの座標データが含まれる。
【0027】
通信部12は、記載エリア25において、座標検出部11から入力された座標データを逐次、サーバ装置50に出力する。なお、これに限らず、内蔵するメモリに記載文字31の全ての座標データが蓄積されるまで、座標データを保持し、記載文字の座標データ毎にサーバ装置50に出力してもよい。
【0028】
通信部12は、サーバ装置50から模範文字データを受信して、投影部13に出力する。通信部12は、サーバ装置50とデータ通信する際、無線、有線いずれでも良い。
【0029】
投影部13は、通信部12から入力された模範文字データに基づき、記載文字31の模範となる投影文字33を、記載文字31の近くの用紙20上に投影する。
【0030】
投影部13は、投影装置を有しており、この投影装置は、LEDや有機ELなどの自発光デバイスで構成される。そのため、投影部13は、記載文字31の模範となる投影文字33を記載文字31のインクの色と異なる色で用紙20上に投影することができる。また、投影部13は、電子ペン10に設けられたジャイロセンサなどの空間位置を検出する機能により、電子ペン10の傾きに応じて投影文字を最適化し、常に用紙20上では正しい文字が表示できるよう構成されている。
【0031】
投影部13は、座標検出部11が検出した電子ペン置き位置26の座標データが入力されると、投影文字33の投影を開始する。この投影文字33は、電子ペン10の一部(赤外線を照射して撮像素子で受光する部分)が触れた電子ペン置き位置26に対応する記載エリア25に記入された記載文字31の模範となる文字である。なお、投影部13が投影文字33を投影する場所は、用紙20上に限らない。用紙20上以外でも記載文字31と比較できる場所であれば良い。
【0032】
このように、本実施の形態に係る文字練習システムでは、電子ペン10が搭載する投影部13により、電子ペン10により記入した記載文字31と、この模範となる投影文字33とをリアルタイムに、かつ視覚的に比較することができる。
【0033】
投影部13は、投影文字33を投影中に、用紙20上の同じ電子ペン置き位置26の座標データが所定の時間内に1又は複数回入力されると、投影文字33の投影を中断し、この投影文字33の正しい書き順で、1画ずつ投影する「書き順投影」を開始する。このとき、投影部13は、用紙20上の同じ電子ペン置き位置26の座標データの入力回数に応じて、何画までの正しい書き順を「書き順投影」で行うかを決定する。つまり、投影文字33を投影中に、用紙20上の同じ電子ペン置き位置26の座標データが所定の時間内に1回だけ入力されると、投影部13は、1画目までの正しい書き順を「書き順投影」で行う。また、用紙20上の同じ電子ペン置き位置26の座標データが所定の時間内に2回入力されると、投影部13は、2画目までの正しい書き順を「書き順投影」で行う。
【0034】
さらに、投影部13は、例えば、内蔵するタイマーにより、投影文字33の投影を開始してからの経過時間に応じて、この投影文字33の正しい書き順で、1画ずつ投影する「書き順投影」を開始することができる。つまり、投影部13は、投影文字33を開始してから、用紙20上の同じ電子ペン置き位置26の座標データが所定時間、座標検出部11で検出され続けると、この検出結果に基づき、投影部13は、1画目までの正しい書き順を「書き順投影」で行う。さらに継続して、用紙20上の同じ電子ペン置き位置26の座標データが所定時間、座標検出部11で検出され続けると、投影部13は、2画目までの正しい書き順を「書き順投影」で行う。
【0035】
投影部13は、単に投影文字33を投影する機能だけでなく、この投影文字33の正しい書き順で、1画ずつ又は所定の画数までを投影する「書き順投影」を実行する機能も有する。
【0036】
このように、本実施の形態に係る文字練習システムでは、電子ペン10が搭載する投影部13によって、電子ペン10により記入した記載文字31の正しい書き順を、この模範となる投影文字33によりリアルタイムに、かつ視覚的に学ぶことができる。
【0037】
さらに、投影部13は、座標検出部11から記載文字31の筆跡の座標データを取得しておき、この「書き順投影」で示す正しい書き順と違う書き順で記載文字31が記入されていた場合には、投影文字33で、異なった書き順で書かれた部分を異なる色で投影し、又は点滅させることができる。
【0038】
投影部13は、投影開始前に書体指定置き位置27a〜27cにより指定された書体で、記載文字31の模範文字データを投影する。つまり、(1)座標データが書体指定置き位置27aの座標データである場合には、投影部13は、“草書体”で投影文字33を投影する。同様に、投影部13は、(2)座標データが書体指定置き位置27bの座標データである場合には、“行書体”で投影文字33を投影し、(3)座標データが書体指定置き位置27cの座標データである場合には、“楷書体”で投影文字33を投影する。なお、投影開始前に書体指定置き位置27a〜27cにより指定されていない場合には、あらかじめ初期設定の書体で、記載文字31の模範文字データが投影される。
【0039】
このように、本実施の形態に係る文字練習システムでは、電子ペン10が搭載する投影部13により、複数の書体について、電子ペン10により記入した記載文字31と、この模範となる投影文字33とをリアルタイムに、かつ視覚的に比較することができる。
【0040】
(サーバ装置50)
図2を参照して、サーバ装置50の構成について説明する。サーバ装置50は、通信部51と、文字認識処理部52と、模範データ保持部53と、を備える。
【0041】
通信部51は、電子ペン10から座標データを受信し、この受信した座標データを文字認識処理部52へ出力する。ここで、電子ペン10から受信した座標データには、記載文字31の座標データ、書体指定置き位置27a〜27cのいずれかの座標データが含まれる。
【0042】
また、通信部51は、文字認識処理部52から入力された記載文字31の模範文字データを、電子ペン10へ送信する。
【0043】
文字認識処理部52は、文字認識処理を行う。文字認識処理部52は、内蔵する辞書データにより、通信部12から入力された座標データから、記載文字31のストローク情報を抽出し、記載文字31の文字コードに変換する。そして、文字認識処理部52は、記載文字31の文字コードから、模範データ保持部53から記載文字31の模範文字データを取得し、この記載文字31の模範文字データを通信部51へ出力する。
【0044】
文字認識処理部52は、記載文字31の座標データが入力される前に、書体指定置き位置27a〜27cのいずれかの座標データが入力された場合には、模範データ保持部53から、この書体指定置き位置27a〜27cのいずれかに対応する書体で記載文字31の模範文字データを取得する。なお、記載文字31の座標データが入力される前に、書体指定置き位置27a〜27cのいずれかの座標データが入力されない場合には、模範データ保持部53から、あらかじめ初期設定の書体として定めた書体を有する記載文字31の模範文字データを取得する。
【0045】
模範データ保持部53は、文字コードに対応する模範文字データを保持する。なお、模範文字データは、書体毎に用意されている。本実施の形態では、書体は“草書体”、“行書体”、“楷書体”の3種類であり、これらの書体毎に同一の文字の模範文字データが用意されている。なお、いずれの書体が記載文字31の模範文字データの書体として用いられるかは、書体指定置き位置27a〜27cによって指定される。なお、ここでは3種類を例にあげているが、これに限られるものではなく、他の書体であってももちろんよい。
【0046】
このように、本実施の形態に係る文字練習システムでは、サーバ装置50が文字認識処理を行うので、複数の文字書体に応じた文字データを電子ペン10側で記憶しておく必要がなく、電子ペン10を簡易な構造にすることができる。また、本実施の形態に係る文字練習システムでは、サーバ装置50が文字認識する文字種を記憶しているので、電子ペン10側で記憶媒体の交換する必要がない。
【0047】
(電子ペン習字用用紙20)
図3に電子ペン習字用用紙20の構成を模式的に示す。以下、電子ペン習字用用紙20を単に用紙20と呼ぶ。用紙20は、ドットパターン22が表面に形成された第1台紙21と、罫線などの図案23が形成された第2台紙24と、を備える。
【0048】
第1台紙21、第2台紙24は、通常の紙である。ドットパターン22は、カーボンを含んだ専用インキにより形成されている。図案23は、通常のインキなどにより形成されている。ドットパターン22と図案23とは、同時に形成してもよいし、いずれかを先に形成してもよい。ドットパターン22は第1台紙21の全面に形成されているが、これに限らず、台紙の一部に形成してもよい。
【0049】
用紙20は、記載エリア25と、電子ペン置き位置26と、書体指定エリア27とを有する。
【0050】
記載エリア25は、電子ペン10により1文字記入するためのエリアであり、このエリアは用紙20上に複数設けられている。図1、3では、記載文字31として、漢字の“風”がこのエリアに記入されている。記載エリア25は、電子ペン10による記述内容をそのまま情報として取り扱う領域である。
【0051】
記載文字31が、電子ペン10で記載エリア25に記入される場合には、電子ペン10の座標検出部11が、電子ペン10が用紙20上を移動した軌跡上のドットパターン22を座標データに変換する。つまり、記載文字31の筆跡に対応するドットパターン22が、電子ペン10の座標検出部11により座標データに変換される。
【0052】
電子ペン置き位置26は、1つの記載エリア25に対応して用紙20上に複数設けられている。電子ペン10の一部(赤外線を照射して撮像素子で受光する部分)が電子ペン置き位置26に触れると、投影文字33が電子ペン10の投影部13から記載文字31の近くの用紙20上に投影される。
【0053】
投影文字33は、この電子ペン置き位置26に対応する記載エリア25に記入された記載文字31の模範となる投影文字である。そのため、ユーザはこの模範となる投影文字33を目視して、記載文字31と比較することができる。
【0054】
書体指定エリア27は、模範となる投影文字33の書体を指定する用紙20上の領域である。また、書体指定エリア27は、サーバ装置50に対する処理命令を電子ペン10を利用して与えるための情報を取り扱うエリアである。書体は“草書体”、“行書体”、“楷書体”の3種類である。なお、ここでは3種類を例にあげているが、これに限られるものではなく、他の書体であってももちろんよい。
各書体に対応する書体指定置き位置27a〜27cが書体指定エリア27内に設けられている。書体指定置き位置27aは、“草書体”に対応する。同様に、書体指定置き位置27bが“行書体”、書体指定置き位置27cが“楷書体”にそれぞれ対応する。
【0055】
電子ペン10の一部(赤外線を照射して撮像素子で受光する部分)がこの書体指定置き位置27a〜27cのいずれかに触れると、投影文字33がこの書体指定置き位置27a〜27cにより指定された書体で記載文字31の近くの用紙20上に投影される。そのため、ユーザは、複数の種類の書体について、この模範となる投影文字33を目視して、記載文字31と比較することができる。なお、書体指定エリア27は、用紙20上の任意の位置に形成できるが、記載エリア25、電子ペン置き位置26を除く、用紙20の周縁部に形成することが好ましい。
【0056】
なお、ドットパターン22、電子ペン置き位置26、書体指定エリア27を示す罫線枠、書体指定置き位置27a〜27c、記載エリア25を示す罫線枠、その他必要な情報の形成は、予め製版された印刷版をオフセット印刷機等の所謂印刷装置を用いて印刷形成するデバイスにより行なわれる。
【0057】
[電子ペン10の変形例]
本実施の形態に係る文字練習システムにおいて、電子ペン10の変形例である電子ペン10Aを電子ペン10の代わりに用いることができる。電子ペン10Aでは、電子ペン10の構成に加えて、内蔵する回転検出センサにより電子ペン10A自体の回転を検出する回転検出部14を備える。図4に電子ペン10Aの構成を示すブロック図を示す。図5に電子ペン10Aの動作例を示す。図4に示す電子ペン10Aは、座標検出部11と、通信部12と、投影部13Aと、回転検出部14と、を備える。以下、電子ペン10同じ構成には同じ参照符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
【0058】
回転検出部14は、内蔵する回転検出センサにより、図5に示す電子ペン10Aの長手方向に沿った軸X周りの回転を検出し、その回転角度を投影部13Aに出力する。
【0059】
投影部13Aは、回転検出部14から回転角度に応じて、上述した「書き順投影」の際に投影される投影文字33を構成する線又は曲線を、正しい書き順に従って1画ずつ投影する。
【0060】
つまり、図5に示すように、所定の回転角度を検出した時点で、投影部13Aは1画目を投影し、さらに所定の回転角度を検出した時点で2画目までを投影する。このように、所定の角度を検出する毎に、投影部13Aは1画ずつ投影していき、この動作を投影文字33を投影するまで継続する。このように、投影部13Aは、回転検出部14が検出する回転角度に応じて、この投影文字33の正しい書き順で、1画ずつ投影する「書き順投影」を実行することができる。なお、投影部13Aは上述した「書き順投影」を実行する機能以外にも、投影部13が有する機能も有する。
【0061】
図6〜8を参照して、本実施の形態に係る文字練習システムのシーケンス例(1)〜(3)を説明する。図6は、本実施の形態に係る文字練習システムのシーケンス例(1)である。
【0062】
ステップST601では、電子ペン10によって記載エリア25に記載文字31の描画を開始する。そして、ステップST603へ遷移する。
【0063】
ステップST603では、電子ペン10の座標検出部11が、用紙20のドットパターン22から、記載エリア25に記入された記載文字31の筆跡に対応する座標データを検出する。そして、記載文字31の筆跡に対応するすべての座標データの検出が終わるまで、ステップST604へ遷移し、検出が終わるとステップST611へ遷移する。
【0064】
ステップST604では、電子ペン10の通信部12は、座標検出部11から入力された座標データをサーバ装置50に出力する。そして、ステップST605へ遷移する。
【0065】
ステップST605では、サーバ装置50の文字認識処理部52が、電子ペン10から受信した座標データからストローク情報を抽出して、文字コードに変換する。そして、ステップST607へ遷移する。
【0066】
ステップST607では、サーバ装置50の文字認識処理部52が、変換した文字コードにより記載文字31を特定する。そして、ステップST609へ遷移する。
【0067】
ステップST609では、サーバ装置50の文字認識処理部52が、特定された記載文字31の模範文字データを模範データ保持部53から取得する。そして、ステップST614へ遷移する。
【0068】
ステップST611では、電子ペン10の座標検出部11は、記載文字31の筆跡に対応するすべての座標データの検出が終わると、文字描画が終了したか否かを判定し、文字描画終了した場合には(Yes)、ステップST613へ遷移し、文字描画終了していない場合には(No)、ステップST603へ遷移する。
【0069】
ステップST613では、投影部13が、座標検出部11から電子ペン置き位置26の座標データが入力されたか否かを判定する。これにより、電子ペン10が電子ペン置き位置26に置かれた否かが判定される。そして、電子ペン置き位置26の座標データが入力された場合には(Yes)、ステップST615へ遷移し、電子ペン置き位置26の座標データが入力されていない場合には(No)、ステップST613に戻る。
【0070】
ステップST614では、サーバ装置50の通信部51が、文字認識処理部52から入力された記載文字31の模範文字データを電子ペン10へ送信する。そして、ステップST615へ遷移する。
【0071】
ステップST615では、電子ペン10の投影部13が、サーバ装置50から受信した記載文字31の模範文字データの投影を開始する。
【0072】
図7は、本実施の形態に係る文字練習システムのシーケンス例(2)である。図7に示すシーケンス例(2)が、図6に示すシーケンス例(1)と異なる点は、ステップST615で記載文字31の模範文字データの投影した後で、「書き順投影」を行う点である。そのため、図6と共通するステップには同じ番号を付記し、その説明を省略する。
【0073】
ステップST615で記載文字31の模範文字データの投影した後、ステップST717では、投影部13が、用紙20上の同じ電子ペン置き位置26に電子ペン10の一部(赤外線を照射して撮像素子で受光する部分)が触れて、その電子ペン置き位置26の座標データが座標検出部11から入力されるか否かにより、電子ペン置き位置26に電子ペン10を置いた回数を検出する。その電子ペン置き位置26の座標データが座標検出部11から入力されない場合には、ステップST717を繰り返し、その電子ペン置き位置26の座標データが座標検出部11から入力された場合には、ステップST719へ遷移する。
【0074】
ステップST719では、投影部13は、その電子ペン置き位置26の座標データが座標検出部11から入力された回数に応じて、記載文字31の模範文字データの何画目まで投影するかを決定して、この画数までの「書き順投影」を行う。
【0075】
図8は、本実施の形態に係る文字練習システムのシーケンス例(3)である。図8に示すシーケンス例(3)が、図6に示すシーケンス例(1)と異なる点は、ステップST601の前に、投影文字33の書体をあらかじめ指定する点である。そのため、図6と共通するステップには同じ番号を付記し、その説明を省略する。
【0076】
ステップST801では、用紙20上の書体指定エリア27に配置されている書体指定置き位置27a〜27cのいずれかを電子ペン10で触れて、投影文字33の書体を選択する。そしてステップST802へ遷移する。
【0077】
ステップST802では、電子ペン10の座標検出部11は、書体指定置き位置27a〜27cのいずれかの座標データを検出する。そして、ステップST803へ遷移する。
【0078】
ステップST803では、電子ペン10の通信部12は、座標検出部11から入力された座標データをサーバ装置50に出力する。
【0079】
ステップST804では、サーバ装置50の文字認識処理部52は、書体指定置き位置27a〜27cのいずれかの座標データが入力された場合には、模範データ保持部53から、この書体指定置き位置27a〜27cのいずれかに対応する書体で記載文字31の模範文字データを取得する。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る文字練習システム、電子ペンは、リアルタイムに、かつ視覚的に電子ペンにより記入した文字と模範となる文字とを比較することができるという効果を有し、文字練習装置等として有用である。
【符号の説明】
【0081】
10、10A 電子ペン
11 座標検出部
12 通信部
13、13A 投影部
14 回転検出部
20 電子ペン習字用用紙
25 記載エリア
26 電子ペン置き位置
27 書体指定エリア
27a、27b、27c 書体指定置き位置
50 サーバ装置
51 通信部
52 文字認識処理部
53 模範データ保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ペンとサーバとを備えた文字練習システムであって、
前記電子ペンは、
文字の筆跡に対応する座標データを少なくとも検出する座標検出部と、
前記座標検出部で検出した座標データを外部へ出力する通信部と、
文字データを投影する投影部と、を備え、
前記サーバは、
前記電子ペンから出力された座標データから文字コードを生成する文字認識処理部と、
前記文字認識処理部で生成された文字コードに対応し、前記電子ペンで描かれた文字の模範となる模範文字データを 保持する記憶部と、
前記模範文字データを前記電子ペンに出力する通信部と、を備え
前記電子ペンの投影部は、
前記座標検出部が前記文字の筆跡に対応する座標データを検出した後に特定の座標データを検出すると、前記サーバの通信部から出力された前記模範文字データを投影する、
ことを特徴とする文字練習システム。
【請求項2】
請求項1に記載の文字練習システムであって、
前記記憶部は、
前記模範文字データを書体毎に保持し、
前記電子ペンの座標検出部は、
前記電子ペンの投影部が前記模範文字データの投影を開始する前に、当該電子ペンで描かれる文字の書体を指定する第1の特定座標データを検出すると、
前記サーバは、
前記書体を有する模範文字データを前記通信部を介して前記電子ペンへ出力し、
前記電子ペンの投影部は、
前記座標検出部が前記文字の筆跡に対応する座標データを検出した後に前記特定の座標データを検出すると、前記サーバの通信部から出力された前記模範文字データを投影する、
ことを特徴とする文字練習システム。
【請求項3】
請求項1に記載の文字練習システムであって、
前記電子ペンの座標検出部は、
前記電子ペンの投影部が前記模範文字データの投影を開始してから、当該電子ペンで描かれる文字を指定する第2の特定座標データを1又は複数回検出すると、
前記電子ペンの投影部は、
前記座標検出部が第2の特定座標データを検出した回数に応じた書き順までの前記模範文字データを投影する、
ことを特徴とする文字練習システム。
【請求項4】
請求項1に記載の文字練習システムであって、
前記電子ペンは、さらに
第3の特定座標上での自転を検出して、その回転角度を前記投影部に出力する回転角検出部を備え、
前記電子ペンの投影部は、
前記模範文字データの投影を開始してから、前記電子ペンの回転検出部が検出した当該電子ペンの回転角度に応じた書き順までの前記模範文字データを投影する、
ことを特徴とする文字練習システム。
【請求項5】
請求項1に記載の文字練習システムであって、
前記電子ペンの座標検出部は、
前記電子ペンの投影部が前記模範文字データの投影を開始してから、当該電子ペンで描かれる文字を指定する第4の特定座標データを所定時間継続して検出すると、
前記電子ペンの投影部は、
前記座標検出部が第4の特定座標データを継続して検出した所定時間に応じた書き順までの前記模範文字データを投影する、
ことを特徴とする文字練習システム。
【請求項6】
サーバから取得した文字データを用いて文字の練習を行うための電子ペンであって、
前記文字の筆跡に対応する座標データを少なくとも検出する座標検出部と、
前記文字の模範となる模範文字データをサーバから取得する通信部と、
前記通信部を介して前記サーバから取得した模範文字データを投影する投影部と、を備え、
前記投影部は、
前記座標検出部が前記文字の筆跡に対応する座標データを検出した後に特定の座標データを検出すると、
前記サーバから取得した模範文字データを投影する、
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項7】
前記座標検出部は、
前記投影部が前記模範文字データの投影を開始する前に、前記文字の書体を指定する第1の特定座標データを検出すると、
前記通信部は、
前記書体の模範文字データを前記サーバから取得し、
前記投影部は、
前記サーバから取得した模範文字データを投影する、
ことを特徴する請求項6に記載の電子ペン。
【請求項8】
前記座標検出部は、
前記投影部が前記模範文字データの投影を開始してから、前記文字を指定する第2の特定座標データを1又は複数回検出すると、
前記投影部は、
前記座標検出部が第2の特定座標データを検出した回数に応じた書き順までの前記模範文字データを投影する、
ことを特徴とする請求項6に記載の電子ペン。
【請求項9】
さらに、
第3の特定座標上での自転を検出して、その回転角度を前記投影部に出力する回転角検出部を備え、
前記投影部は、
前記模範文字データの投影を開始してから、前記電子ペンの回転検出部が検出した当該電子ペンの回転角度に応じた書き順までの前記模範文字データを投影する、
ことを特徴とする請求項6に記載の電子ペン。
【請求項10】
前記座標検出部は、
前記投影部が前記模範文字データの投影を開始してから、当該電子ペンで描かれる文字を指定する第4の特定座標データを所定時間継続して検出すると、
前記投影部は、
前記座標検出部が第4の特定座標データを継続して検出した所定時間に応じた書き順までの前記模範文字データを投影する、
ことを特徴とする請求項6に記載の電子ペン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−198302(P2012−198302A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60991(P2011−60991)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】