説明

斜行型合板の製造方法

【課題】斜行合板を、設備費を少なくし且つ生産性良く製造する。
【解決手段】辺11a及び辺11bを有する合板11を、辺11aに対し傾斜した切断線11cで間隔Lをおいて順次切断して、帯状合板13a、13b、帯状合板13c、13d・・・を製造し、次いでこれら帯状合板の、2個の切断線11cを、異なる帯状合板同士で互いに同一直線上に位置する状態として、辺11aまたは辺11bで接合して接合合板15,17とし、次に接合合板15,17を切断線11cに直角に適宜間隔で切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜行型合板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数層の単板の少なくとも2層の単板が互いに繊維方向が直交した状態で接着され、平面形状が四角形で且つ各辺がなす角度が直角であって、前記少なくとも2層の単板の繊維方向が各辺と傾斜した状態となる斜行型合板が知られている。
【0003】
この斜行型合板は、例えば特許文献1に記載されているような方法で製造している。
即ち、最初にロータリーレースにより連続帯状に切削形成した単板を、繊維方向と直交する方向に一定間隔をおいた、繊維方向の第1の切断線で切断分割して、一次的な正方形或いは長方形の単板小片を複数形成する。
次いで多数の単板小片の、切断しなかった側辺同士を順次連接接合させることにより、帯状の接合単板を形成する。
次に接合単板を、その長手方向の側端である前記切断線に沿って一定間隔をおいた、前記切断線に傾斜する方向の第2の切断線で再度切断分割して、分割小片を複数形成する。
次に複数の分割小片の第1の切断線で形成された辺同士を、接近した状態で帯状に並べて、1層の単板群を形成し、これら1層の単板群を複数層であって、隣合う層同士では、繊維方向が互いに逆向きの30°〜60°の傾斜角で斜め方向に傾斜させ且つ互いに交差する状態に、重ね合わせて積層接着し、製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3729410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるにこのような方法を既存の合板製造工場で実施しようとすると、次のような問題があった。
即ち、前記1層の単板群を作成するための装置、及び1層の単板群を複数層前記のように重ね合せるための装置は、既存の合板製造工場には無く、新たな製造装置を必要とし、大きな設備費が必要であった。
また、単板小片、接合単板、分割小片と1枚づつ順次加工し前記1層の単板群を製造した後、前記のように重ね合わせて積層接着するため、斜行型合板を製造するために多くの時間を必要とし、生産性が悪かった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、少なくとも2層の単板は互いに繊維方向を交差させた状態として複数層の単板が接着剤を介して重ね合わされ接着されていて、平面形状が四角形で且つ各辺がなす角度が直角である四角形の合板を用いて、斜行合板を製造するものである。
【発明の効果】
【0007】
合板を製造するまでの設備としては既存の製造装置を使用することができ、新に必要な設備費が少なくてすむと共に、合板を1つの単位として即ち合板を構成している複数層の単板を一度に切断又は接合するため、単板の単位で切断又は接合する場合に比べて、生産性が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】合板の斜視図である。
【図2】第1実施例の平面説明図である。
【図3】合板を接合する際の、合板端部の加工形成方法及び加工形成した合 板端部の接合状態を示す側面説明図である。
【図4】合板を接合する際の、加工形成した合板端部の斜視図及び部分断面 図である。
【図5】第1実施例の平面説明図である。
【図6】第2実施例の平面説明図である。
【図7】第2実施例の平面説明図である。
【図8】第2実施例の平面説明図である。
【図9】第2実施例の平面説明図である。
【図10】第2実施例の平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
次に本発明の実施例を説明する。
最初に請求項1に記載の発明の実施例である第1実施例を説明する。
図1で、1は合板の斜視図である。
合板1は、互いに繊維方向を直交させた状態で5層の単板1a、1b、1c、1d、1eが接着剤により接着された5プライ合板である。
また合板1の表層の単板1aの繊維方向は、図1に矢印で示すように左下から右上に向かう方向となっている。
更には、合板1の相対する辺2a同士は平行、また同じく相対する辺2b同士は平行で、且つ辺2aと辺2bとがなす角度は直角である。
【0010】
このような複数の合板1を、図2(a)に示すように、各合板1の2個の辺2aを互いに同一直線上に位置し且つ互いの表裏面が各々同一面となり、更には厚さ方向で各単板が同じ位置に相対し繊維方向が平行となる状態として、辺2b同士で接合し、第1接合合板の一例である長い合板3を製造する。
接合する際の、合板1の辺2b付近の加工形成方法としては、例えば次のようなものがある。
図3(a)に示すように、接合する2枚の合板1の各辺2b付近を、丸鋸により削り取り、スカーフカット面と呼ばれる合板1の表裏面に対して傾斜した面2cを、互いに平行となる状態に形成する。
次いで、前記傾斜した面2cに一方に接着剤を塗付して、図3(b)に示すように重ね合せ、該重ね合せた箇所を加熱して接着剤を硬化させ接合する。
また別の加工形成方法としては、さねはぎと呼ばれる以下に述べる接合方法がある。
これは予め図3(c)に示すように、接合する2枚の合板1の各辺2b付近を、カッターにより加工して、端面に互いに噛み合う形状となる凹部2d及び凸部2eを各々形成する。
次いでこれら凹部2d及び凸部2eの一方に、同様に接着剤を塗付して図3(d)に示すように噛み合せ、接合する方法がある。
【0011】
更に別の加工形成方法としては、同じく2枚の合板1の接合する両端部に、スロープトフィンガジョイントと呼ばれる形状の加工を行う。
これは前記スカーフカット面である傾斜した面2cに対し、更に、図4に示すように、面2cの傾斜した方向X−Xに平行で且つ合板1の表面から裏面に至るV字状の溝2fを、傾斜した方向と直交する方向に連続して多数形成するものである。
このような形成により、図4において一点鎖線Z−Zで矢印方向を見た部分断面は、図4の円の中に示すようになり、溝2fは、底2gと頂点2hとを結ぶ線として表れる。
このように形成した2枚の合板1の一方を反転し、次いで両合板1の前記加工した端部同士を、各合板1の頂点2hで構成される凸部が、底2gで構成される凹部に噛み合って合致するように、接着剤を介して重ね合わせ、同様に接合するのである。
【0012】
次に前記のように接合した長い合板3を、図2の(b)に示すように、長い合板3の、辺2aで構成される長い辺3aに対し角度θ=45度で、第1の辺の一例となる辺を形成するための切断線3bで、且つ長い合板3の長手方向に一定間隔で丸鋸(図示せず)により切断し、複数の平行四辺形の合板5を製造する。
次いで図5の(a)に示すように、複数の平行四辺形の合板5を、その切断線3bを互いに揃えた状態で、辺3a同士において順次接合し、第2接合合板の一例である縦横接合合板7とする。
この接合においても、辺3a付近を前記の各種加工形成方法を用いて、同様に接合する。
縦横接合合板7において、構成する単板の繊維方向は、矢印X―XまたはY−Yで示す方向となっている。
【0013】
このようにして製造された縦横接合合板7を、図5の(b)に示すように、切断線3bに沿って一定間隔で且つ切断線3bに直角な方向の切断線7aで順次切断し、斜行合板9を製造する。
この斜行合板9において、構成する単板の繊維方向は、同様に矢印X―XまたはY−Yで示す方向となっているが、これら繊維方向は、その2辺となる3b及び7aに対し、角度θ=45度となって傾斜している。
以上のように第1実施例の製造方法では、既存の設備で製造される合板を用いて斜行合板を製造することができるので、斜行合板製造用としての新たな設備投資する額が少なくてすむと共に、合板を1つの単位として切断又は接合するため、生産性が良くなる。
【実施例2】
【0014】
次に第2実施例を説明する。
第2実施例は、一辺の長さLが比較的短い斜行合板を製造するものである。
用いる合板11は、第1実施例と同様に5プライ合板であるが、図6(a)に示すように、最外層の単板の繊維方向が、合板11の2辺の短い辺11a及び長い辺11bの、短い辺11aと平行となっている合板を用いる。
このような合板11を、短い辺11aに対し角度θ=45度で、第2の辺の一例となる辺を形成するための一点鎖線で示す切断線11cにより等間隔Lで、同じく丸鋸により切断し、複数の帯状合板を製造する。
その結果、得られた各帯状合板は、図6(b)に示すように、台形の帯状合板13a、13bや平行四辺形の帯状合板13c、13d、・・・となる。
【0015】
次いでこれら各帯状合板において、台形の帯状合板13a、13bは、図7(a)に示すように、帯状合板13a及び帯状合板13bを各々矢印方向に回転させる。
次いで、両帯状合板13a及び13bの2個の切断線11cが互いに同一直線上に位置し且つ両帯状合板13a及び13bの表裏面が互いに同一面となる状態として、辺11aと辺11b同士を前記示した方法で接合し、第3接合合板の一例となる接合合板15を製造する。
また平行四辺形の帯状合板13c、13d・・・は、図7(b)に示すように、両帯状合板13c及び13dの切断線11c及び表裏面を前記と同様の状態にして辺11b同士を接合し、同じく第3接合合板の一例となる接合合板17とする。
【0016】
次いで図8(a)に示すように、接合合板15を、切断線11cに対し直角な切断線15aで、切断線11cに沿って一定間隔で順次切断し、斜行合板19を製造する。
また図8(b)に示すように、接合合板17は、同じく切断線11cに対し直角な切断線17aで、切断線11cに沿って一定間隔で順次切断し、斜行合板19を製造する。
これら斜行合板19において、構成する単板の繊維方向は、図8(a)、(b)に示すように同様に矢印X―XまたはY−Yで示す方向となっているが、これら繊維方向は、その2辺となる切断線11c及び切断線15a、または切断線11c及び切断線17aに対し、角度θ=45度となって傾斜している。
以上のように第2実施例の製造方法においても第1実施例と同様に、設備費が安価ですむと共に、生産性が良くなる。
【0017】
次に変更例を説明する。
1.第1実施例において用いた合板1は、図1で示した外層の単板1a、1eの繊維方向が合板1の長手方向と一致したものを用いたが、第2実施例で用いた合板11、即ち図6で示した前記両単板1a、1eの繊維方向が、合板11の長手方向と直交方向とした状態とした合板を用いて、前記第1実施例の方法で斜行合板を製造しても良い。
【0018】
2.第2実施例において、図6で述べた帯状合板13a、13b、13c・・を図7に示したように、切断線11cに対し傾斜した辺11aまたは11bで接合した。
しかし、以下のように製造しても良い。
即ち図9(a)及び(b)に示すように、これら帯状合板13a、13b、13c・・を各々最大面積の長方形となるように、切断線11cに対し直角な、第3の辺の一例となる切断線21で切断し、矩形の合板23a、23b、23c、23d・・を製造する。
次いでこれら矩形の合板23a、23b、23c、23d・・・を、図10(a)及び(b)に示すように、切断線21同士において、前記示した方法で接合し、接合合板25、27とする。
次に接合合板25、27を、前記図8に示した場合と同様に、切断線11cに対し直角な切断線で、切断線11cに沿って一定間隔で順次切断することにより、斜行合板が得られる。
【0019】
3.前記切断する際の角度θは、30〜60度程度が好ましい。
【符号の説明】
【0020】
1・・・合板
2a、2b・・・辺
3・・・長い合板
3b・・・切断線
9・・・斜行合板
11c・・・切断線
13a、13b、13c、13d・・・帯状合板
19・・・斜行合板
23a、23b、23c、23d・・矩形の合板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を含む、斜行型合板の製造方法。
少なくとも2層の単板は互いに繊維方向を交差させた状態として複数層の単板が接着剤を介して重ね合わされ接着されていて、平面形状が、四角形で且つ各辺がなす角度が直角である四角形の複数の合板を、各合板の平行な2個の辺が互いに同一直線上に位置し且つ各合板の表裏面が互いに同一面となり更には各合板の前記少なくとも2層の単板が厚さ方向で同じ位置に相対し繊維方向が平行となる状態として、前記平行な2個の辺と直角な辺同士で接合して第1接合合板を製造する工程、
前記第1接合合板を、前記平行な2個の辺に沿って任意間隔で且つ前記平行な2個の辺に対し傾斜した方向へ切断することで、新に形成された第1の辺を有する平行四辺形の合板を複数製造する工程、
前記複数の平行四辺形の合板を、各平行四辺形の合板の前記2個の第1の辺が互いに同一直線上に位置する状態として、前記平行な2個の辺のいずれか一方の辺同士で接合し、第2接合合板を製造する工程、
第2接合合板を、前記第1の辺に沿って任意間隔で且つ前記第1の辺に直角な方向に切断する工程。
【請求項2】
次の工程を含む、斜行型合板の製造方法。
少なくとも2層の単板は互いに繊維方向を交差させた状態として複数層の単板が接着剤を介して重ね合わされ接着されていて、平面形状が、相対する2辺が平行で且つ各辺がなす角度が直角である四角形の合板を、一つの辺に沿って所定間隔の複数個所で且つ該一つの辺に対し傾斜した同じ方向へ切断することで、新に形成された2個の第2の辺を有する帯状合板を複数製造する帯状合板製造工程、
前記複数の前記帯状合板を、各帯状合板の前記2個の第2の辺が互いに同一直線上に位置し且つ各帯状合板の表裏面が互いに同一面となり更には各合板の前記少なくとも2層の単板が厚さ方向で同じ位置に相対し繊維方向が平行となる状態として、前記第2の辺以外の辺同士で接合し、第3接合合板を製造する工程、
第3接合合板を、前記第2の辺に沿って任意間隔で且つ前記第2の辺に直角な方向に切断する工程。
【請求項3】
次の工程を含む、斜行型合板の製造方法。
少なくとも2層の単板は互いに繊維方向を交差させた状態として複数層の単板が接着剤を介して重ね合わされ接着されていて、平面形状が、相対する2辺が平行で且つ各辺がなす角度が直角である四角形の合板を、一つの辺に沿って所定間隔の複数個所で且つ該一つの辺に対し傾斜した同じ方向へ切断することで、新に形成された2個の第2の辺を有する帯状合板を複数製造する帯状合板製造工程、
前記各帯状合板を、前記第2の辺に沿って任意間隔で且つ前記第2の辺に対し直角な方向へ切断することで、新に形成された第3の辺を有する矩形の合板を複数製造する矩形合板製造工程、
前記複数の矩形の合板を、各矩形の合板の前記2個の第2の辺が互いに同一直線上に位置し且つ各矩形の合板の表裏面が互いに同一面となり更には各合板の前記少なくとも2層の単板が厚さ方向で同じ位置に相対し繊維方向が平行となる状態として、前記第3の辺同士で接合し、第4接合合板を製造する工程、
第4接合合板を、前記第2の辺に沿って任意間隔で且つ前記第2の辺に直角な方向に切断する工程。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate