説明

断熱カートリッジ

【解決手段】本発明は、断熱材充填部7を完全に閉じ込んだ本質的に閉じた板金筺体5を具備し、媒体圧力下で、例えばパイプケーシングの断熱部の如き、蒸気発生器の装置の外側部材の一部をなす断熱カートリッジ2に関し、本発明の断熱カートリッジ2においては、断熱材充填部7はシリケートエアロゲルを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、完全に断熱材料充填物を閉じ込んだ本質的に閉じた板金ハウジングを具備する、媒体圧力下で例えばパイプケーシング断熱部材としての蒸気発生器装置の外側部材(jacket)の一部をなす断熱カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
このような断熱カートリッジは、蒸気発生器のパイプラインの断熱にしばしば用いられる。
【0003】
公知の断熱カートリッジは板金カートリッジであって、これらはハーフシェルの形状を有して、石綿、グラスファイバーウール、若しくは類似の断熱材を充填させている。これらは例えばドイツ特許出願公報 第29 23 094号公報に記載される。パイプラインの冷却断熱と熱断熱においては、気候条件や機械的な損傷に対して断熱材を守るための外側部材と共に断熱材を提供することが慣習的に行われている。断熱の外側部材は、しばしば例えば亜鉛板金と共に断熱材をシート状にすることで構成される。例えば、原子力発電所の冷却巡回路などの応用例においては、完全に断熱材料を閉じ込んだ閉じた断熱カートリッジの使用が適当であることが証明されている。特に、断熱カートリッジの板金筺体は断熱材への機械的な損傷に対して十分な保護を行い得ることを意図している。しかしながら、原子力発電所の冷却媒体の損失を伴う事故においては、金属カートリッジが壊れ、その中に含まれていた断熱材料も散逸してしまう。例えば、冷却ラインからの漏れた墳流が断熱カートリッジを損壊し破壊してしまうような状況も起こり得る。上述のタイプの断熱カートリッジは、例えば径が約800mmまでで媒体温度が約300度において内部圧力が160barのラインに配設されている。このようなラインの漏れた墳流が比較的に強い機械的は力を断熱カートリッジに導入することは容易に想像できることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、理論的には断熱カートリッジの板金筺体は損傷し、断熱材は冷却媒体の漏れた噴流によって飛び出すことになり得る。洗い出された断熱材は反応器の排水だまりに配設されるポンプの吸入スクリーンを詰まらせ、その事故を制御することを困難とさせる結果をもたらし得る。
【0005】
スクリーンの手段によって、繊維状の断熱材を保持し或いは維持することに基本的な問題があることは明らかである。研究室の試験では、繊維状の材料は、比較的に微細な網目のスクリーンで保持することは容易ではなく、他方、その累積の間にスクリーンに亘って高い圧力損失が生ずる。これはスクリーンの欠陥につながる。
【0006】
本発明が基礎とする目的はそれ故この点において最初に述べたタイプの断熱カートリッジを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が基礎とする目的は、断熱材充填部を完全に閉じ込んだ本質的に閉じた板金筺体を具備し、媒体圧力下で、例えばパイプケーシングの断熱部の如き、蒸気発生器の装置の外側部材の一部をなす断熱カートリッジであって、前記断熱材充填部はエアロゲルを有することによって区別される断熱カートリッジの手段によって達成される。エアロゲル(若しくはアエロゲル)は、高度に多孔質な固体であって95%までの容積は孔によって構成されるものを意味すると一般的に且つ本発明の文脈において理解されるべきである。断熱カートリッジのための充填材料としてこの材料を使用することは、例えば、断熱カートリッジから現れる材料がその物理的な特性によって水循環回路からより簡単に排除できるという利点を有する。
【0008】
好ましくは、提供される断熱材料は無機のエアロゲルであり、該エアロゲルは濡れない構成で、浮くことができ、不燃性である。その断熱材充填部がシリケートエアロゲルを有する断熱カートリッジは特に効果ありであることが証明されている。このようなシリケートエアロゲルは、例えば90%よりも大きな多孔質性で約20nmの孔径を有していても良い。該材料の密度は90から100kg/mとすることができる。熱伝導率は、例えば摂氏25度で約0.018W/mKとすることができる。このような材料は約600乃至800m/gの内部表面積を有することができる。それ故、当該材料は上述の目的のために断熱材として極めて安定である。
【0009】
例えば、好適なシリケートエアロゲルとして使用されるものは、法人のキャボットコーポレーション(CABOT Corporation)により販売される、商業表記として"Nanogel(登録商標)"を有した材料である。
【0010】
本発明に従う断熱カートリッジの好適は変形例においては、断熱材充填部は顆粒化したエアロゲルを有し、好ましくは平均粒径が0乃至4mmであっても良い。このような顆粒化は、特に取扱上の利点を有する。板金カートリッジの対応する充填開口部に移動させることができる。この断熱カートリッジは最も高い可能な収納密度を以て充填することができる。
【0011】
代替的に、断熱材充填部は少なくともエアロゲル成形物を有している。このような成形品は好ましくは次元的に安定な板金筺体の形状に適合したものであることができる。断熱カートリッジの板金筺体は、例えば、オーステナイト鋼からなる。本発明による断熱カートリッジの特に好適な変形例では、エアロゲルが光を透過させないものとされる。応答して処理されるエアロゲルはこの目的のために使用される。この利点は、使用されるシーリング材の赤外線反射特性を増加させ、それ故に断熱作業を改善させる。
【0012】
この目的において、例えば、断熱材料充填部はグラファイト粉及び/又は金属酸化物粉を有していても良い。粉末は、例えば、エアロゲルの顆粒と同種の混合物としても良い。例えば、断熱材料充填部はエアロゲルと、グラファイト粉及び/又は金属酸化物粉を同質混合物として有し、グラファイト粉及び/又は金属酸化物粉の割合は1.5乃至4.5ma%とすることができる。
【0013】
好ましくは、本発明の断熱カートリッジは概ねC形状の断面を有し、固定手段と共に形成され、該固定手段によって当該断熱カートリッジは本質的に閉じたパイプケーシングを形成するように組み立てられる他の1つのものと相補的なデザインとされる。
【0014】
しかしながら、本発明の範囲では、断熱カートリッジは断熱すべき媒体搬送装置のいかなる所望の外形にも適用することができる。
【0015】
本発明は次の図面に描かれた例示的な実施形態によって以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の断熱カートリッジで覆われたパインラインの模式図である。
【図2】図1の矢視II−II線に沿った上面図である。
【図3】図2の矢視III―III線に沿った長手断面図である。
【図4】本発明の断熱カートリッジの他の実施形態の分解図である。
【図5】組み立てた状態の図5からの断熱カートリッジを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は圧力下の媒体を運ぶ高温パイプラインのパイプライン部1を示す。パイプライン部1は本発明の断熱カートリッジ2で覆われ、それぞれの場合断熱カートリッジ2はC形状の断面形状を有し、2つに相互に相補的な断熱カートリッジ2がそれぞれの場合に固着手段3と共に組み立てられて閉じた管状の断熱外側部材4を形成する。固着手段として考え得るものは、例えば、シャックル型の公知のトグル固着部材である。それぞれの断熱カートリッジ2は、鋲打ちされた若しくは溶接された板金筺体5からなり、好ましくは板状のオーステナイト鋼からなる。板金筺体5は全周と終端面6に亘って閉じられており、断熱材充填部7と共に配されている。図1乃至図3に示す断熱カートリッジ2の変形例においては。シリケートエアロゲルの顆粒の形状の断熱材充填部を有している。ここでは平均粒径が0乃至4mmであり、トリメチルシロキシ変性シリカゲルを主成分として有する。これは90%よりも大きな多孔質性で約20nmの孔径を有しており、該材料の密度は90から100kg/mであって、熱伝導率は、例えば摂氏25度で約0.018W/mKとされる。この比表面積は約600乃至800m/gの値とされる。当該エアロゲルは不燃性で濡れず且つ浮く性質を持つ。
【0018】
顆粒は断熱カートリッジの終端面に開口するオリフェス8から断熱カートリッジ内に導入される。オリフェス8はカバー9の手段により次いで閉じられる。カバー9は溶接され、螺子止めされ、或いは鋲打ちされる。
【0019】
図4、5は本発明の断熱カートリッジ2の更なる例示的な実施形態を示す。断熱材充填部7は成形物10として形成されており、この形状は次元的に安定な板金筺体5の形状に適合したものである、
【0020】
成形物10は板金筺体5内に嵌合して挿入され、その終端面6は対応して形成されたカバー9により閉じられる。
【0021】
顆粒若しくは成形物10の形状のエアロゲルは、赤外線反射特性、即ち、着色の手段により熱放射に関する断熱特性が改善されたものとなる。たとえば、成形物10をグラファイト粉及び/又は金属酸化物粉で塗すことが考えられる。顆粒をグラファイト粉及び/又は金属酸化物粉と混ぜることもでき、グラファイト粉及び/又は金属酸化物粉の割合は混合物中で1乃至4ma%とされる。
【符号の説明】
【0022】
1 パイプライン部
2 断熱カートリッジ
3 固着手段
4 断熱外側部材
5 板金筺体
6 終端面
7 断熱材充填部
8 オリフェス
9 カバー
10 成形物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材充填部を完全に閉じ込んだ本質的に閉じた板金筺体を具備し、媒体圧力下で、例えばパイプケーシングの断熱部の如き、蒸気発生器の装置の外側部材の一部をなす断熱カートリッジであって、
前記断熱材充填部はエアロゲルを有することを特徴とする断熱カートリッジ。
【請求項2】
請求項1記載の断熱カートリッジであって、前記断熱材充填部は無機エアロゲルを有することを特徴とする断熱カートリッジ。
【請求項3】
請求項1記載の断熱カートリッジであって、前記断熱材充填部はシリケートエアロゲルを有することを特徴とする断熱カートリッジ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか記載の断熱カートリッジであって、前記断熱材充填部は顆粒化したエアロゲルを有し、好ましくは平均粒径が0乃至4mmであることを特徴とする断熱カートリッジ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか記載の断熱カートリッジであって、前記断熱材充填部は少なくとも1つのエアロゲル成形物を有することを特徴とする断熱カートリッジ。
【請求項6】
請求項5記載の断熱カートリッジであって、前記成形物は好ましくは次元的に安定な板金筺体の形状に適合したものであることを特徴とする断熱カートリッジ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか記載の断熱カートリッジであって、前記エアロゲルは増大した赤外線反射特性を有することを特徴とする断熱カートリッジ。
【請求項8】
請求項7記載の断熱カートリッジであって、前記断熱材充填部はグラファイト粉及び/又は金属酸化物粉を有することを特徴とする断熱カートリッジ。
【請求項9】
請求項7若しくは請求項8記載の断熱カートリッジであって、前記断熱材充填部は、エアロゲルと、グラファイト粉及び/又は金属酸化物粉を同質混合物として有し、グラファイト粉及び/又は金属酸化物粉の割合は1.5乃至4.5ma%であることを特徴とする断熱カートリッジ。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか記載の断熱カートリッジであって、該カートリッジは概ねC形状の断面を有し、固定手段と共に形成され、該固定手段によって当該断熱カートリッジは本質的に閉じたパイプケーシングを形成するように組み立てられる他の1つのものと相補的なデザインとされることを特徴とする断熱カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−508353(P2012−508353A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535035(P2011−535035)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007772
【国際公開番号】WO2010/054752
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(511112283)アールダブルイー パワー アクチエンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】