説明

断熱シート

【課題】断熱性、透明性に優れ、ハンドリングの容易な透明断熱シートを提供すること。
【解決手段】平均空孔径が10nm以上、70nm以下、空孔率が90〜99%の多孔性骨格を有する断熱シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノレベルの空孔を有する多孔性骨格の構造体をからなる断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅や、オフィス用ビル等の建物において、冷暖房に係るエネルギーの出入りの大部分はガラス窓やガラス扉を介するものである。建物の室内と外気との間におけるエネルギーの移動を低減するために、例えば二重窓や複層ガラスが利用されているが、断熱効果が不十分であり、また真空断熱窓は、性能は高いものの、長期間真空を維持するのが困難である。
【0003】
また、既存のガラス窓等をそのまま利用し、断熱化を図る方法として、例えば、ガラス面に空隙構造を有する断熱フィルムを貼付して断熱性を向上する方法が提案されているが、空隙構造に含まれる空孔径が可視光の波長と比較して大きいため、採光は可能であるが、窓としての透視性の機能が著しく損なわれるという欠点があった(特許文献1)。
【0004】
また、樹脂シート中に発泡により微細な気泡を形成した断熱シートが提案されているが、空孔率が小さく樹脂からの伝導伝熱が抑制できない為、断熱性や透明性が不十分なものであった(特許文献2)。
【0005】
一方、断熱性、光透過性に優れた透明断熱材料として、極めて低密度なシリカの乾燥ゲル体であるシリカエアロゲルが検討されているが、その低密度と脆性に起因して機械的強度が極めて小さく、可撓性がないためにシート化が実現していない。
【0006】
機械的強度を向上させる試みとして、シリカエアロゲルの骨格にポリマーを含浸させて機械的強度とハンドリング性を向上させる手段が検討されているが(非特許文献1)、この場合、機械的強度の向上は見られるものの、構造体の透明度が失われ、また密度が増大しているため、熱伝導率も大幅に増大していると考えられ、透明性、断熱性に優れ、且つハンドリングの容易な透明断熱シートが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−205236号公報
【特許文献2】特開2004−66638号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ナノレターズ(Nano Letters),2000年,第2巻,957頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、断熱性、透明性に優れ、ハンドリングの容易な透明断熱シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.平均空孔径が10nm以上、70nm以下、空孔率が90〜99%の多孔性骨格を有することを特徴とする断熱シート。
【0012】
2.前記多孔性骨格の空孔率が96〜99%であることを特徴とする前記1に記載の断熱シート。
【0013】
3.前記多孔性骨格が、有機材料、あるいは下記1)〜3)の材料の中から選ばれた、少なくとも2種の材料からなる多孔性骨格であることを特徴とする前記1または2に記載の断熱シート。
【0014】
1)有機材料、2)無機材料、3)有機・無機ハイブリッド材料
4.前記多孔性骨格が平均繊維径1nm以上10nm以下の繊維状の三次元網目構造を含むことを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の断熱シート。
【0015】
5.前記多孔性骨格が数平均厚さ2nm以上、10nm以下、数平均内径10nm以上、70nm以下の殻を有する中空粒子を含むことを特徴とする、前記1〜4のいずれか1項に記載の断熱シート。
【0016】
6.前記多孔性骨格が有機・無機ハイブリッドシリカ中空粒子を含むことを特徴とする、前記1〜5のいずれか1項に記載の断熱シート。
【0017】
7.前記多孔性骨格が有機・無機ハイブリッドシリカ網目構造体と有機・無機ハイブリッドシリカ中空粒子を含むことを特徴とする、前記1〜5のいずれか1項に記載の断熱シート。
【0018】
8.前記多孔性骨格が有機・無機ハイブリッドシリカ網目構造体とシリカ中空粒子を含むことを特徴とする、前記1〜5のいずれか1項に記載の断熱シート。
【0019】
9.前記多孔性骨格がシリカ網目構造体と有機・無機ハイブリッドシリカ中空粒子を含むことを特徴とする、前記1〜5のいずれか1項に記載の断熱シート。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高い断熱性能と光透過性を両立させることができ、これを貼付したガラス窓やガラス扉は透明性を維持しつつ断熱性を大きく向上することができ、また、機械的強度が付与され、シート化、ハンドリングが容易な断熱シートが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本発明は、平均空孔径が10nm以上70nm以下の空孔を有し、かつ空孔率が90〜99体積%である多孔性骨格の構造体から形成されることを特徴とする透明性断熱シートに関するものである。
【0023】
以下、本発明をさらに詳しく説明するが、以下の実施態様に限定されるものではない。
【0024】
(断熱シートの構成)
本発明の断熱シートは、基材上に平均空孔径が10nm以上70nm以下の空孔を有し、かつ空孔率が90〜99体積%である多孔性骨格を有することを特徴とする断熱シートである。
【0025】
前記多孔性骨格は、多くの微小な空孔および該空孔を囲む材料からなり、断熱性を有する断熱層を形成する。
【0026】
前記多孔性骨格は、前記空孔を形成する一つの構造単位(以下、セル構造)が連結した構成となり、前記空孔の平均空孔径が70nm以下である。この構成により、断熱層が低密度となるため熱伝導が極めて小さく、空孔が空気成分の気体の平均自由行程(70nm)を下回るメソ孔となるため、対流伝熱も小さくなり、また、多孔性骨格からなる構造体の伝導伝熱が小さくなることで、高い断熱性を発現することができる。
【0027】
また、前記空孔の平均空孔径が10nm以上であるため、熱伝導率が低く強度の高い前記多孔性骨格からなる構造体を安定して製造することが出来る。
【0028】
平均空孔径は、空気による熱伝導を抑制する為に70nm以下であり、好ましくは50nm以下、更に好ましくは30nm以下である。
【0029】
また、多孔性骨格からなる構造体の伝導伝熱を小さくする為に、空孔率は90%以上であり、好ましくは96%以上である。また、空孔率が99%以下であれば、構造体の強度が高く、シート形状を維持することが容易である。
【0030】
セル構造を構成する多孔性骨格としては、例えば、発泡剤や超臨界二酸化炭素を用いた発泡成形により樹脂の連続相内に平均空孔径が70nm以下の空孔を形成させたものや、平均繊維径が10nm以下の繊維状の三次元網目構造を形成させたもの、あるいは平均厚さ10nm以下、平均内径70nm以下の殻を有する中空粒子から構成されるもの等が挙げられるが、これらの何れか一つ、あるいは複数種からなる骨格が好ましく、前記、三次元網目構造および中空粒子が含まれる骨格がより好ましい。
【0031】
本発明においては、多孔性骨格を構成する材料としては、有機材料(有機樹脂)、あるいは下記1)〜3)の材料から選ばれた2種の材料からなる多孔性骨格で形成されるものが好ましく、
1)有機材料、2)無機材料、3)有機・無機ハイブリッド材料
機械的強度を確保し、ハンドリング性のよいシートを得るためには、有機材料、あるいは有機・無機ハイブリッド材料が含まれる材料組成が好ましい。有機材料としては、例えばスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
無機材料としては、シリコーン樹脂等の樹脂材料や、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア等の金属酸化物等が用いられるがこれらに限定されるものではない。これらの中で、微細な空孔を形成する上で粒径や構造体のサイズの制御のし易さから、シリカが好ましく用いられる。また有機・無機ハイブリッドとは有機の基と無機成分が結合した化合物であり、例えば、前記樹脂にケイ酸メチルあるいはケイ酸エチル、またはそれらのオリゴマー等のシランカップリング剤等で無機成分を結合させたものや、有機基が結合したシランカップリング剤を縮合したもの、あるいはチタンやジルコニア等のアルコキシド等を有機基に結合させたもの等が用いられるが、これらに限定されるものではない。これらの中で、微細な空孔を形成する上で粒径や構造体のサイズの制御のし易さから、有機基が結合したシランカップリング剤を縮合した材料が好ましく用いられる。
【0033】
多孔性骨格を形成する際、骨格材料自体を有機−無機ハイブリッド化した材料を用いたり、有機成分からなる構造体と無機成分からなる構造体の構成単位を連結させた複合構造としても差し支えない。
【0034】
本発明の断熱シートは、前記断熱層をガラス、あるいは透明樹脂等の透明基材上に形成することが、機械的強度を確保してハンドリングが容易であると共に、断熱性能を大きく向上させた透明な断熱シートが得られることから好ましい。
【0035】
本発明は、透明基材と多孔性骨格の断熱層からなる構成が好ましく、例えば、
1.透明基材上に断熱層が形成された形態、
2.2枚の透明基材の間に断熱層がサンドイッチされた形態、
等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。また、これらの断熱層は透明基板両面に形成されたものであっても差し支えない。
【0036】
(三次元網目構造)
前記三次元網目構造とは、繊維状の物質が枝分かれして三次元の微細な網目状に広がった構造を言う。
【0037】
本発明の多孔性骨格を形成する三次元網目構造としては、平均繊維径が10nm以下の有機繊維を用いて繊維間架橋するなどして三次元網目構造を形成したものや、樹脂を適当な溶剤に溶解させた後に樹脂を繊維状に析出させて形成された構造体、あるいは金属アルコキシドやアルコキシシラン等のシランカップリング剤のゾルゲル反応を利用し、粒径10nm以下のナノ粒子(二次粒子)が連結した無機の繊維状網目構造体を形成したもの等が挙げられるが、平均繊維径が10nm以下の繊維状骨格が絡み合った三次元網目構造を形成し、且つ網目によって形成される空孔の平均空孔径が70nm以下の構造体が好ましく用いることができる。
【0038】
有機繊維を用いる場合は、天然セルロースを解繊処理して得られるセルロース繊維や、PMMAやポリカーボネートといった高分子の溶液、または溶融状態の高分子を電解紡糸して得られる有機繊維、あるいは特殊なノズルから溶融した高分子を押し出して海島構造の繊維を得た後、これを分割して形成される有機繊維等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。これらの中で、平均繊維径をより小さくでき、高い透明性が得られる点で、解繊処理したセルロース繊維を用いることが好ましい。
【0039】
セルロース繊維の解繊方法については特に限定されるものではなく、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、リファイナー、グラインダー、石臼などの物理的方法や、セルロース非晶領域の一級水酸基を酸化して化学的に解繊する方法を用いてもよい。具体例として、パルプ等のセルロース繊維を、水を入れた分散容器に0.1〜3質量%となるように投入し、これを高圧ホモジナイザーで解繊処理して、平均繊維径0.1〜10μm程度のミクロフィブリルに解繊されたセルロース繊維の水分散液を得る。さらにグラインダー等で繰り返し磨砕処理することで、平均繊維径(短軸径)が、2〜10nm程度のナノオーダーのセルロース繊維を得ることができる。また、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルラジカル(TEMPO)を触媒としてセルロース非晶領域の一級水酸基を酸化してカルボキシルを導入し、フィブリル相互の静電反発を利用して化学的に解繊することもできる。本発明の三次元網目構造を形成する繊維としては、表面修飾された繊維が好ましく用いられる。断熱材として用いる繊維からなるナノ多孔性骨格の構造体は、繊維の溶媒分散液を乾燥させることによって得られるが、溶媒が乾燥する際の界面張力によって繊維が凝集するおそれがある為、表面修飾により繊維表面に疎水基を導入することで繊維間の凝集力を抑制することができる。例えば、セルロース繊維を修飾する場合、水酸基を、酸、アルコール類、ハロゲン化試薬、酸無水物、イソシアナート類、シランカップリング剤等の修飾剤を用いて化学修飾させることが好ましい。
【0040】
金属アルコキシドのゾルゲル反応を利用する場合は、反応の制御のし易さから、金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いることが好ましい。
【0041】
シリカの三次元網目構造を形成する場合に用いられるアルコキシシランとしては、テトラアルコキシシランのモノマー又はオリゴマー(縮重合物)が好ましい。4官能のアルコキシシランだと比較的大きな平均粒径を有するコロイド状シリカ粒子のゾルを得るのに有利である。テトラアルコキシシランはSi(OR)により表される。Rは炭素数1〜5のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、又は炭素数1〜4のアシル基(アセチル等)が好ましい。テトラアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン等が挙げられる。中でもテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが好ましい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、テトラアルコキシシランに少量の3官能以下のアルコキシシランを配合しても良い。
【0042】
有機・無機ハイブリッドの三次元網目構造の無機成分がシリカの場合、シリコン原子にアルコキシ基と有機基が結合した化合物のアルコキシ基を加水分解して、重合させることにより作製することが出来る。
【0043】
前記シリコン原子にアルコキシ基と有機基が結合した好ましい化合物としては、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のアルキル基が1つ結合したトリアルコキシシラン、およびジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等のアルキル基が2つ結合したジアルコキシシランが挙げられるが、アルキル基が1つ結合したトリアルコキシシランが特に好ましい。
【0044】
本発明において、三次元網目構造体を形成する繊維状骨格の平均繊維径は、断熱性、透明性を確保し、且つシート強度を保つ上で、平均繊維径は1nm以上7nm以下が好ましく、1nm以上、5nm以下がより好ましい。10nm以下であれば断熱性や透明性に優れ、1nm以上であれば、構造体の強度が高い。
【0045】
前記ゾルゲル反応を利用した場合の平均繊維径は、金属アルコキシドの濃度、反応温度により調節できる。
【0046】
(中空粒子)
本発明の多孔性骨格を好ましく形成することができる中空粒子としては、平均厚さが10nm以下の殻からなり、殻の平均内径が70nm以下の中空構造となる構造体であれば制限無く使用することが好ましい。前記多孔性骨格を形成するには、中空構造の内径や構造体の殻の厚さを制御し易いことから中空粒子を用いることが好ましい。用いられる中空粒子としては、所定の粒径の無機ナノ粒子のテンプレート(中空の型となる物質)を分散させた金属アルコキシドやシランカップリング剤といったゾルゲル溶液や反応性の樹脂モノマー溶液を用いてテンプレート表面に金属酸化物などの無機材料、樹脂などの有機材料または有機・無機ハイブリッド材料を被覆した後、内部のテンプレートを溶解させて中空化させる等の方法で得ることができる。中空粒子の内径は、テンプレートの粒径により調整できる。中空粒子の殻の厚さは前記金属アルコキシドやシランカップリング剤といったゾルゲル溶液や反応性の樹脂モノマーの添加量により調整できる。
【0047】
中空粒子としては、殻が全て閉塞されたものだけではなく、一部が開放された構造のものでも差し支えない。また、殻に用いられる材料としては、シリカ、金属酸化物、有機樹脂材料等の制限無く使用することができるが、シートの機械的強度を確保する上で、シリカ、あるいは有機修飾シリカが好ましい。シリカ、あるいは有機修飾シリカからなる殻を形成する反応原料としてはシランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0048】
中空粒子の数平均内径は、70nm以下であれば断熱性、透明性を確保することができる。更に断熱性、透明性を向上する為に、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。
【0049】
また、前記殻の数平均厚さは1nm以上、7nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上、5nm以下である。殻の厚さが10nmを超えるとシート透明性が低下し、1nmより小さくなると、粒子の機械的強度が低下してシート形状の維持が困難となる恐れがある。
【0050】
(平均空孔径)
前記多孔性骨格の平均空孔径は小角X線散乱により測定される。該多孔性骨格が三次元網目構造体からなる場合でも、前記中空粒子を含有する場合でも、同様に平均空孔径は小角X線散乱により求められる。
【0051】
前記多孔性骨格は平均空孔径が10nm以上70nm以下の空孔を有する。平均空孔径を70nm以下とすることで、空孔が空気成分の気体の平均自由行程(70nm)を下回るメソ孔となるため、対流伝熱も小さくなり、また、構造体の伝導伝熱が小さくなることで、高い断熱性を発現することができる。また、三次元網目構造を形成可能な繊維径、中空粒子の殻の厚さ、および十分な空孔率を確保する必要から、平均空孔径は10nm以上となる。平均空孔径は、好ましくは50nm以下、更に好ましくは30nm以下である。
【0052】
平均空孔径を調整する方法としては、骨格を形成する材料の濃度を調整する方法が挙げられる。濃度が低いと平均空孔径が大きくなり、濃度が高いと平均空孔径が小さくなる。
【0053】
(空孔率)
空孔率は、断熱層の体積に占める空隙の体積の割合であり、下記の式により求められる。
【0054】
空孔率=((C−B)/C)×100(%)
ここで、Bは断熱層の密度(質量/体積)であり、Cは断熱層を構成する材料(網目構造の繊維や中空粒子の殻)の質量平均の密度(質量/体積)である。
【0055】
例えば、断熱層が中空粒子と網目構造を有し、中空粒子の殻と網目構造の繊維の材料が異なる場合、殻の密度をxとし、繊維の密度をyとし、断熱層全体の材料に対する殻の材料の質量比がz、断熱層全体の材料に対する繊維の材料の質量比が(1−z)とすると、質量平均の密度はxz+y(1−z)である。
【0056】
断熱シートが基材を有する場合、基材と断熱層からなる断熱シートの体積と質量を測定し、断熱層を剥離した基材の体積と質量を測定しそれぞれ差し引くことにより、断熱層の体積と質量が求められ、断熱層の密度Bが求められる。
【0057】
なお、材料の密度Cは文献等により知ることが出来る。
【0058】
空孔率の調整は、材料の濃度を調整することで行われる。
【0059】
例えば、超臨界状態の炭酸ガスを樹脂に含浸させ、樹脂の連続相内に空孔を形成させる場合、室温まで冷却する時間が長いほど空孔率が大きくなる。シランカップリング剤による三次元網目構造と中空粒子が含まれる多孔性骨格の場合、中空粒子の殻の厚さ、粒径、中空粒子の濃度、シランカップリング剤の濃度により空孔率が調整される。
【0060】
(安定剤)
本発明の断熱シートが有機繊維による三次元網目構造を有する場合は、有機繊維製造時にフェノール系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤の中から選ばれた一種以上の安定剤を追加して添加してもよい。これら安定剤を適宜選択し、添加することで、断熱層の劣化、あるいは使用環境における断熱層の耐熱性、耐光性等の物性変動を高度に抑制することができる。
【0061】
好ましいフェノール系安定剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等の特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン[即ち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)等のアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物;等が挙げられる。
【0062】
また、好ましいヒンダードアミン系安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルデカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート)、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド等が挙げられる。
【0063】
また、好ましいリン系安定剤としては、一般の樹脂工業で通常使用されるものであれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデンビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物等が挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が特に好ましい。
【0064】
また、好ましいイオウ系安定剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0065】
これらの安定剤の配合量は本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、有機繊維100質量部に対して通常0.01〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部である。
【0066】
(透明基材)
本発明で好ましく用いられる透明基材としては可撓性のあるガラス基板や樹脂製の基板が好適である。樹脂基材に用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体または共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
透明基材の厚みとしては、断熱シートとしてのハンドリングを考慮し、50〜1000μm、好ましくは70〜500μmである。
【0068】
(断熱シートの製造方法)
次に本発明の断熱シートの製造方法について説明する。
【0069】
本発明の断熱シートは、透明基板上に多孔性骨格からなる断熱材の層を形成して得られる。多孔性構造を形成する方法としては、平均空孔径が10nm以上70nm以下の空孔を有し、かつ空孔率が90〜99体積%である多孔性骨格が形成できれば特に制限されないが、例えば樹脂の発泡成形により得る方法、あるいは前記の繊維の分散液を塗工後、乾燥させて3次元構造体を得る方法、中空粒子の分散液を透明基板上に塗工するなどして多孔性骨格を形成する方法等が挙げられる。
【0070】
樹脂の発泡成形を用いる場合は、発泡剤を樹脂中に混合させ、発泡剤を熱分解させて気体を発生させたり、混合した分解性樹脂を電磁波、電子線、及びイオンビーム等の活性エネルギー線、或は熱、微生物、酵素、酸やアルカリなどによって分解させて、独立気泡を形成する化学的方法、炭酸ガス、窒素のような常温で気体である物質を、超臨界状態で、熱可塑性樹脂のガラス転移温度付近の高温で、かつ超臨界状態の高温という条件で熱可塑性樹脂に溶解させ、ついで冷却するとともに圧力を減少させることによって発泡させる物理的方法、樹脂に発泡核を含有させ、それをフィルム成形時、または成形後に、延伸等の配向処理を行うことで空孔を形成してシートを形成する方法等が挙げられる。
【0071】
発泡により得られる空孔径を70nm以下、空孔間の隔壁を10nm以下に制御し空孔率を90%以上とするには、発泡時の成形圧力を9Mpa以上として発泡気泡の空孔径を制御し、気泡の合一速度よりも早く樹脂を固化して気泡を固定させればよく、発泡剤を樹脂の溶融温度以上で溶解後、冷却温度、減圧速度を調整することで発泡で得られる空孔径をナノレベルに制御し、空孔率の高い構造体からなる断熱層を形成することができる。この際、空隙率を確保できる十分な発泡量を得るには超臨界流体と共に発泡剤を樹脂に溶解させて発泡させることが好ましい。
【0072】
用いられる発泡剤としては炭酸ガスなどの常温常圧で基体の物質を超臨界状態で用いることが出来るし、加熱により分解してガスを発生する化合物として、アゾジカルボン酸アミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゾスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等のヒドラジド化合物、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸水素アルカリ金属塩または炭酸アルカリ金属塩またはこれらの混合物等を挙げることができる。
【0073】
また、必要に応じてこれらの発泡剤とともに発泡助剤を使用してもよい。発泡助剤としては、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、サリチル酸、フタル酸、しゅう酸、クエン酸等の有機酸などが挙げられる。添加する発泡剤量は、発泡倍率として1.0〜20倍、好ましくは1.0〜18倍、より好ましくは1.1〜10倍となるように添加すればよい。
【0074】
ナノ繊維や中空粒子からなる多孔性骨格からなる構造体を形成するには、これらを適当な溶媒中に分散させた塗工液を調製し、透明基板上に分散液を塗工した後、溶媒を乾燥させて得られる。
【0075】
また、金属アルコキシドやシランカップリング剤を用いて三次元網目構造を形成する場合には、金属アルコキシドやシランカップリング剤の水系、あるいはアルコール−水混合系の溶液を基板上に塗工してゾルゲル反応を進行させて繊維状の構造体を形成した後、溶媒を乾燥することによって得られる。
【0076】
乾燥方法については特に限定されないが、乾燥に伴う界面張力に基づく繊維間の凝集を抑制するため、超臨界乾燥法を用いることが好ましい。超臨界乾燥を行う際に用いられる超臨界流体である溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ジクロロジフルオロメタン、二酸化炭素、水等の単独系又は2種以上の混合系を挙げることができる。
【0077】
超臨界乾燥を行う場合は、オートクレーブ中に溶媒置換を行った多孔性骨格形成用組成物の溶液を塗工したシートを入れ、その溶媒の臨界点以上の温度、圧力まで上昇させた後に溶媒を徐々に除き、最終的に常温常圧の状態に戻すことによって乾燥させればよい。
【0078】
本発明においては、断熱性、透明性と共に機械的強度を確保する上で、三次元網目構造と中空粒子の両成分を含む多孔性骨格からなる断熱層を形成する事が好ましく、これは、前記の三次元網目構造を形成し得る塗工液に中空粒子を添加した塗工液を塗布後、溶媒を乾燥して作製される。
【0079】
断熱層の厚さは、必要とされる断熱性や透明性等を考慮して適宜選択されるが、例えば、窓ガラス用透明断熱シートとして用いる場合には、10μm〜5mmが好適である。10μm未満では断熱性が不十分となり、5mmより厚くなるとハンドリングが悪くなり、窓への貼り付け作業が困難となる恐れがある。
【0080】
(断熱層の物性測定方法)
以下、断熱層の物性測定方法について記す。
【0081】
(1)数平均繊維径
繊維の平均繊維径の測定は、得られた有機繊維について透過型電子顕微鏡、H−1700FA型(日立製作所社製)を用いて10000倍の倍率で観察した後、得られた画像について無作為に繊維を100本選び、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて一本毎の繊維径を解析し、それらの単純な数平均値を求める。
【0082】
(2)中空粒子の殻の数平均厚さと数平均内径
中空粒子について、(1)と同様の操作にて観察を行う。先ず、無作為に中空粒子を100個選び、画像処理ソフトにて粒子一個につき10箇所の殻の厚さを解析して数平均値を求め、更に、選択した全粒子の数平均値を算出して中空粒子の殻の数平均厚さを求める。
【0083】
透過型電子顕微鏡、H−1700FA型を用いて、100個の中空粒子の数平均外径を求め、これより殻の数平均厚さの2倍を差し引いて、数平均内径を求める。
【0084】
(3)平均空孔径
透明断熱シートの空孔径は、小角X線散乱の測定により行う。測定値は10点の平均値を用いる。
【0085】
小角X線散乱の測定装置及び測定条件等は以下のとおりである。
【0086】
装置:RIGAKU製小角X線散乱装置(RU−200B)
測定条件:λ(CuKα)=0.154nm、45kV、70mA
解析方法:上記測定機器を用いて、小角領域(2θ<10°)で測定を行い、散乱光プロファイルから、断熱層中の平均空孔径(nm)を算出する。
【0087】
(4)空孔率
断熱層の空孔率Aは、断熱層の体積と質量から得られる密度Bと断熱層を構成する材料自体の密度Cから算出する。
【0088】
A=((C−B)/C)×100(%)
(断熱シートの評価方法)
以下に、断熱シートの評価方法について記す。
【0089】
(1)光透過率
紫外可視分光光度計(日本分光V−570)にて光透過率を測定し、JIS R 3106に基づいて光透過率を求める。
【0090】
(2)熱伝導率
熱線プローブ式熱伝導率測定装置(京都電子製QTM−500)を用い測定を行う。
【0091】
(3)曲げ特性
製造例にて得られたシートについて、シートの中央を支点に、断熱層を外側にしてシートの内側が120度の角度をなすように、曲率半径10mmで折り曲げ、断熱層の割れ発生の有無を目視で確認することにより評価する。
【実施例】
【0092】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0093】
(製造例1)
ポリスチレンを単軸スクリュー型の張臨界押出機に導入した。超臨界含浸用押出機に、常温で気体である物質の供給口から、温度200℃、圧力90MPaの超臨界状態の炭酸ガスを導入し、15分かけてポリスチレンに炭酸ガスを含浸させ、含浸組成物を得た。これを、含浸組成物の排出口から、単軸スクリューを有する発泡体形成用押出機の含浸組成物の導入口を通して該発泡体形成用押出機に導入し、その排出口からダイを経て発泡後の厚さが200μmとなるようにシートとして押出した後、3時間掛けて室温まで冷却するとともに圧力を常圧まで減少させて発泡体を作製した。発泡体と、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートのシートを貼合して透明断熱シート101を得た。
【0094】
(製造例2)
製造例1において、炭酸ガスを含浸させたポリスチレンを発泡体形成押出機から押出す際、冷却時間を2時間30分とした他は同様の操作にて透明断熱シート102を得た。
【0095】
(製造例3)
製造例1において、炭酸ガスを含浸させたポリスチレンを発泡体形成押出機から押出す際、冷却時間を30分とした他は同様の操作にて透明断熱シート201を得た。
【0096】
(製造例4)
針葉樹から得られた亜硫酸漂白パルプを純水に0.1質量%となるように添加した懸濁液を、石臼式粉砕機(ピュアファインミルKMG1−10;栗田機械製作所社製)を用いて回転するディスク間を中央から外に向かって通過させる磨砕処理(回転数:1500回転/分)を50回(50パス)行いセルロース繊維を解繊後、これを濾過、純水で洗浄してセルロース繊維の水分散液を得た。次に、無水酢酸/ピリジン(モル比1/1)溶液500質量部に、前記セルロース繊維が10質量部となるように添加して分散させ、室温で3時間攪拌した。次に分散した繊維を濾過し、500質量部の水で3回水洗した後、200質量部のエタノールで2回洗浄した。さらに、500質量部の水で2回水洗を行った後、70℃にて乾燥させ、表面修飾したセルロース繊維を得た。次に、繊維成分が1質量%となるようにセルロース繊維を純水中に添加した後、ホモジナイザー(三和機械社製)を用いて1min処理して繊維分散液を調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて繊維分散液を乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、セルロース繊維の三次元網目構造の多孔性骨格からなる断熱層を形成し、断熱シート103を得た。
【0097】
(製造例5)
製造例4において、繊維分散液を塗工後の乾燥操作を超臨界乾燥法から凍結乾燥法に変えた他は同様の操作にて断熱シート202を得た。
【0098】
(製造例6)
平均粒径50nmの炭酸カルシウムを用いて調製した10質量%炭酸カルシウム水分散液170質量部に、28質量%のアンモニア水8質量部を加え10分撹拌し、テトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)19質量部を加え、室温で1時間撹拌を行った。その後60℃に昇温し、3時間撹拌を行い、室温まで冷却しシリカ被覆炭酸カルシウム分散液を得た。
【0099】
得られたシリカ被覆炭酸カルシウム分散液200質量部にメタノールを190質量部を添加し、10質量%の硝酸水溶液を180質量部を加え、炭酸カルシウムの溶出を行った。次に、蒸留水200質量部を加え、限外ろ過膜を用いて200質量部の水溶液を排出させた。この操作を3回繰り返してテトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)から形成された殻で、数平均厚さが3nm、数平均内径が50nmの有機無機ハイブリッドシリカ中空粒子を得た。次に、テトラエトキシシラン1.5質量部とメタノール70質量部とを混合した後、アンモニア水溶液(3N)3質量部を加えて室温で15時間撹拌しテトラエトキシシランのゾル(固形分2質量%)を調製した後、これに前記中空粒子を17体積%となるように添加して中空粒子含有ゾルを調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、シリカ網目構造と有機無機ハイブリッドシリカ中空粒子から形成された多孔性骨格からなる断熱層を形成し断熱シート104を得た。
【0100】
(製造例7)
製造例6に記載の方法に準じて、平均厚さが3nmのテトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)から形成された殻で、数平均厚さが3nm、数平均内径が50nmの有機無機ハイブリッドシリカ中空粒子を得た。次にテトラエトキシシランのゾル(固形分2質量%)を調製した後、これに前記中空粒子を15体積%となるように添加して中空粒子含有ゾルを調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、シリカ網目構造と有機無機ハイブリッドシリカ中空粒子から形成された多孔性骨格からなる断熱層を形成し断熱シート105を得た。
【0101】
(製造例8)
製造例6に記載の方法に準じて、テトラエトキシシランから形成された殻で、数平均厚さが3nm、数平均内径が50nmのシリカ中空粒子を得た。次に、テトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)のゾル(固形分2質量%)を調製した後、これに前記中空粒子を17体積%となるように添加して中空粒子含有ゾルを調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔性骨格からなる断熱層を形成し断熱シート106を得た。
【0102】
(製造例9)
製造例6に記載の方法に準じて、テトラエトキシシランから形成された殻で、数平均厚さが3nm、数平均内径が50nmのシリカ中空粒子を得た。次に、テトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)のゾル(固形分2質量%)を調製した後、これに前記中空粒子を15体積%となるように添加して中空粒子含有ゾルを調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔性骨格からなる断熱層を形成し断熱シート107を得た。
【0103】
(製造例10)
製造例6の操作に準じて、数平均厚さが3nmのシリカからなる殻で、数平均内径が50nmのとなる中空粒子を得、これをテトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)からなる固形分2質量%ゾルに添加すること以外は同様の操作にて、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート108を得た。
【0104】
(製造例11)
製造例6の操作に準じて、数平均厚さが2nmのシリカからなる殻で、数平均内径が30nmのとなる中空粒子を得、これをテトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)からなる固形分2質量%ゾルに添加すること以外は同様の操作にて、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート109を得た。
【0105】
(製造例12)
製造例6の操作に準じて、数平均厚さが2nmのシリカからなる殻で、数平均内径が30nmのとなる中空粒子を得、これをテトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)からなる固形分3質量%のゾルに添加すること以外は同様の操作にて、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート110を得た。
【0106】
(製造例13)
製造例6に記載の方法に準じて、テトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)から形成された殻で、数平均厚さが2nm、数平均内径が30nmの有機無機ハイブリッドシリカ中空粒子を得た。次に、テトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)からなるゾル(固形分2質量%)を調製した後、これに前記中空粒子を15体積%となるように添加して中空粒子含有ゾルを調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造と有機無機ハイブリッドシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート111を得た。
【0107】
(製造例14)
製造例6に記載の方法に準じて、テトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)から形成された殻で、数平均厚さが2nm、数平均内径が30nmの有機無機ハイブリッドシリカ中空粒子を得た。これに、製造例3において得られたセルロース繊維を水に1質量%となるように添加し、前記中空粒子を3体積%となるように添加して中空粒子含有ゾルを調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、セルロース網目構造と有機無機ハイブリッドシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート112を得た。
【0108】
(製造例15)
製造例6に記載の方法に準じて、テトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)から形成された殻で、数平均厚さが5nm、数平均空孔径が80nmの有機無機ハイブリッドシリカ中空粒子を得た。次に、テトラエトキシシランのゾル(固形分2質量%)を調製した後、これに前記中空粒子を15体積%となるように添加して中空粒子含有ゾルを調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、シリカ網目構造と有機無機ハイブリッドシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート203を得た。
【0109】
(製造例16)
製造例6に記載の方法に準じてテトラエトキシシランのゾル(固形分2質量%)を調製した後、これに、製造例3において得られたセルロース繊維を1質量%となるように添加してセルロース繊維含有ゾルを調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、シリカ網目構造とセルロース繊維から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成した断熱シート113を得た。
【0110】
(製造例17)
製造例6に記載の方法に準じて、テトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)から形成された殻で、数平均厚さが12nm、数平均内径が50nmの有機無機ハイブリッドシリカ中空粒子を得た。次に、テトラエトキシシランのゾル(固形分2質量%)を調製した後、これに前記中空粒子を15体積%となるように添加して中空粒子含有ゾルを調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、シリカ網目構造と有機無機ハイブリッドシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート204を得た。
【0111】
(製造例18)
製造例6において、中空粒子として数平均厚さが2nmのシリカからなる殻で、数平均内径が30nmのとなる中空粒子を得、この中空粒子を14体積%となるようにテトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)からなる固形分3質量%のゾルに添加し、ポリエチレンテレフタレートシート上に塗工後の乾燥を凍結乾燥で行うこと以外は同様の操作にて有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し、断熱シート205を得た。
【0112】
(製造例19)
製造例6の操作に準じて、数平均厚さが2nmのシリカからなる殻で、数平均内径が30nmのとなる中空粒子を得、この中空粒子を13体積%となるようにテトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)からなる固形分4質量%のゾルに添加すること以外は同様の操作にて、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート206を得た。
【0113】
(製造例20)
製造例6の操作に準じて、数平均厚さが2nmのシリカからなる殻で、数平均内径が30nmのとなる中空粒子を得、この中空粒子を12体積%となるようにテトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)からなる固形分3質量%のゾルに添加すること以外は同様の操作にて、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート207を得た。
【0114】
(製造例21)
製造例6の操作に準じて、数平均厚さが2nmのシリカからなる殻で、数平均内径が30nmのとなる中空粒子を得、この中空粒子を10体積%となるようにテトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)からなる固形分2質量%のゾルに添加すること以外は同様の操作にて、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート208を得た。
【0115】
(製造例22)
製造例6において、テトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)のゾルの濃度を固形分1質量%とすること以外は同様の操作にて、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート209を得た。
【0116】
(製造例23)
製造例6に記載の方法に準じてテトラエトキシシランのゾル(固形分5質量%)を調製した後、中空粒子を加えずに厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、シリカ網目構造が形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート210を得た。
【0117】
(製造例24)
製造例6に記載の方法に準じて、テトラエトキシシランから形成された殻で、数平均厚さが2nm、数平均内径が30nmのシリカ中空粒子を得た。次に、テトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)からなるゾル(固形分3.5質量%)を調製した後、これに前記中空粒子を17体積%となるように添加して中空粒子含有ゾルを調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート114を得た。
【0118】
(製造例25)
製造例6に記載の方法に準じて、テトラエトキシシランから形成された殻で、数平均厚さが2nm、数平均内径が30nmのシリカ中空粒子を得た。次に、テトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)からなるゾル(固形分2質量%)を調製した後、これに前記中空粒子を13体積%となるように添加して中空粒子含有ゾルを調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート115を得た。
【0119】
(製造例26)
製造例6に記載の方法に準じて、テトラエトキシシランから形成された殻で、数平均厚さが2nm、数平均内径が30nmのシリカ中空粒子を得た。次に、テトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)からなるゾル(固形分3質量%)を調製した後、これに前記中空粒子を19体積%となるように添加して中空粒子含有ゾルを調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート116を得た。
【0120】
(製造例27)
製造例6に記載の方法に準じて、テトラエトキシシランから形成された殻で、数平均厚さが2nm、数平均内径が30nmのシリカ中空粒子を得た。次に、テトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)からなるゾル(固形分2質量%)を調製した後、これに前記中空粒子を16体積%となるように添加して中空粒子含有ゾルを調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート117を得た。
【0121】
(製造例28)
製造例6に記載の方法に準じて、テトラエトキシシランから形成された殻で、数平均厚さが2nm、数平均内径が30nmのシリカ中空粒子を得た。次に、テトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)からなるゾル(固形分3.7質量%)を調製した後、これに前記中空粒子を18体積%となるように添加して中空粒子含有ゾルを調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート211を得た。
【0122】
(製造例29)
製造例6に記載の方法に準じて、テトラエトキシシランから形成された殻で、数平均厚さが2nm、数平均内径が30nmのシリカ中空粒子を得た。次に、テトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)からなるゾル(固形分1.5質量%)を調製した後、これに前記中空粒子を12体積%となるように添加して中空粒子含有ゾルを調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート212を得た。
【0123】
(製造例30)
製造例6に記載の方法に準じて、テトラエトキシシランから形成された殻で、数平均厚さが2nm、数平均内径が30nmのシリカ中空粒子を得た。次に、テトラエトキシシラン:メチルトリエトキシシラン=1:1(質量比)からなるゾル(固形分3質量%)を調製した後、これに前記中空粒子を19.5体積%となるように添加して中空粒子含有ゾルを調製した。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、有機無機ハイブリッドシリカ網目構造とシリカ中空粒子から形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート213を得た。
【0124】
(製造例31)
製造例6に記載の方法に準じてテトラエトキシシランのゾル(固形分4.5質量%)を調製した後、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート上に、ワイヤーバーコーターを用いて前記ゾルを乾燥膜厚で200μmの厚さとなるように塗工した後、超臨界乾燥法にて水分を乾燥させ、シリカ網目構造が形成された多孔体骨格からなる断熱層を形成し断熱シート118を得た。
【0125】
(断熱層の物性測定方法)
以下、上記にて作製した断熱シートの断熱層の物性測定方法について記す。
【0126】
(1)数平均繊維径
繊維の平均繊維径の測定は、得られた有機繊維について透過型電子顕微鏡、H−1700FA型(日立製作所社製)を用いて10000倍の倍率で観察した後、得られた画像について無作為に繊維を100本選び、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて一本毎の繊維径を解析し、それらの単純な数平均値を求めた。
【0127】
(2)中空粒子の殻の数平均厚さと数平均内径
得られた中空粒子について、(1)と同様の操作にて観察を行った。先ず、無作為に中空粒子を100個選び、画像処理ソフトにて粒子一個につき10箇所の外郭の厚さを解析して数平均値を求め、更に、選択した全粒子の数平均値を算出して中空粒子外郭の平均厚さを求めた。
【0128】
透過型電子顕微鏡、H−1700FA型を用いて、中空粒子の数平均外径を求め、これより殻の数平均厚さの2倍を差し引いて、数平均内径を求めた。
【0129】
(3)平均空孔径
透明断熱シートの空孔径は、小角X線散乱の測定により行った。測定値は10点の平均値を用いた。
【0130】
小角X線散乱の測定装置及び測定条件等は以下のとおりである。
【0131】
装置:RIGAKU製小角X線散乱装置(RU−200B)
測定条件:λ(CuKα)=0.154nm、45kV、70mA
解析方法:上記測定機器を用いて、小角領域(2θ<10°)で測定を行い、散乱光プロファイルから、断熱層中の平均空孔径(nm)を算出した。
【0132】
(4)空孔率
断熱層の空孔率Aは、断熱層の体積と質量から得られる密度Bと断熱層を構成する材料自体の密度Cから算出した。
【0133】
A=((C−B)/C)×100(%)
(断熱シートの評価方法)
以下に、上記にて作製した断熱シートの評価方法について記す。
【0134】
(1)光透過率
紫外可視分光光度計(日本分光V−570)にて光透過率を測定し、JIS R 3106に基づいて光透過率を求めた。
【0135】
(2)熱伝導率
熱線プローブ式熱伝導率測定装置(京都電子製QTM−500)を用い測定を行った。
【0136】
(3)曲げ特性
製造例にて得られたシートについて、シートの中央を支点に、断熱層を外側にしてシートの内側が120度の角度をなすように、曲率半径10mmで折り曲げ、断熱層の割れ発生の有無を目視で確認し、下記の基準に基づいて曲げ特性を評価した。
【0137】
○: 折り曲げ部に割れの発生なし
△: 折り曲げ部に一部割れの発生あり
×: 折り曲げ部全体に割れの発生あり
以上の結果を表1に示す。
【0138】
【表1】

【0139】
表1の物性評価結果から明らかなように、本発明に係わる断熱シート101〜118は、機械的強度(曲げ特性)に優れ、シートとしてのハンドリング性を確保していると共に高い断熱性、透明性を有していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均空孔径が10nm以上、70nm以下、空孔率が90〜99%の多孔性骨格を有することを特徴とする断熱シート。
【請求項2】
前記多孔性骨格の空孔率が96〜99%であることを特徴とする請求項1に記載の断熱シート。
【請求項3】
前記多孔性骨格が、有機材料、あるいは下記1)〜3)の材料の中から選ばれた、少なくとも2種の材料からなる多孔性骨格であることを特徴とする請求項1または2に記載の断熱シート。
1)有機材料、2)無機材料、3)有機・無機ハイブリッド材料
【請求項4】
前記多孔性骨格が平均繊維径1nm以上10nm以下の繊維状の三次元網目構造を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の断熱シート。
【請求項5】
前記多孔性骨格が数平均厚さ2nm以上、10nm以下、数平均内径10nm以上、70nm以下の殻を有する中空粒子を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の断熱シート。
【請求項6】
前記多孔性骨格が有機・無機ハイブリッドシリカ中空粒子を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の断熱シート。
【請求項7】
前記多孔性骨格が有機・無機ハイブリッドシリカ網目構造体と有機・無機ハイブリッドシリカ中空粒子を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の断熱シート。
【請求項8】
前記多孔性骨格が有機・無機ハイブリッドシリカ網目構造体とシリカ中空粒子を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の断熱シート。
【請求項9】
前記多孔性骨格がシリカ網目構造体と有機・無機ハイブリッドシリカ中空粒子を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の断熱シート。

【公開番号】特開2012−62341(P2012−62341A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205374(P2010−205374)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】