説明

断熱塗膜の形成法

【課題】 断熱塗膜の遮熱効果を向上させる。
【解決手段】 断熱塗料を目的物に塗布する際に、あらかじめその下地にアルミニウム粉末を含有する塗料を塗布することにより、塗膜を二層の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、夏場の太陽光によるビルや工場などの温度上昇を低下させ、したがって空調負荷を低減させ、使用電力量を低減させる能力を持つ、表面塗装用の断熱塗料による塗膜形成法に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2004−204017号公報
【非特許文献1】カンザス・シティズ・スター(Kansas City's Star)1995.10.24、pA1〜A3 。
【非特許文献2】国立天文台編、「理科年表」丸善株式会社、1988年11月30日発行、p.477、p.480。
【非特許文献3】R.A.Nyquist&R.O.Kagel無機化合物の赤外スペクトル(Infrared Spectra of Inorganic Compounds)、Academic Press、1971、p.215。
【非特許文献4】W.H.ギート著「基礎伝熱工学」、横堀進、久我修訳、丸善株式会社、1960年7月20日発行、p.218。
【非特許文献5】児玉正雄ほか編集、「塗料と塗装」増補版、パワー社、1994年2月発行、p.31。
【非特許文献6】垰田博史著「光触媒の本」、日刊工業新聞社、2002年2月発行。
【非特許文献7】編集委員会編集「実用塗装・塗料用語辞典」、日本塗装技術協会、1976年12月発行、p.22〜23。
【非特許文献8】塗装技術協会編集「塗装技術ハンドブック」、日刊工業新聞社、1987年2月発行、p.118、p.958〜963。
【非特許文献9】「塗料原料便覧」第5版、日本塗料工業会、1987年4月発行、p.175〜176、p.180。
【非特許文献10】伊藤征司郎編集「顔料の事典」、朝倉書店、2000年9月発行、p.168〜173、p.232〜233。
【非特許文献11】色材協会編集「色材工学ハンドブック」、朝倉書店、1989年11月発行、p.307〜308。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、断熱材粉末、無機顔料粉末を含む断熱塗料を建物表面などに塗布して塗膜を形成する際に、塗膜の遮熱性能を更に向上させる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、断熱塗料を用いる際に、アルミニウム粉末を含むアルミニウムペイントをその下地に用いることにより、断熱塗膜の遮熱性能を更に向上させるものである。
【0005】
断熱塗料については、非特許文献1にその大きな効果が広言されているが、厚さ180ミクロンの断熱塗膜が厚さ150〜200mmのガラス繊維断熱材の断熱性能に匹敵する性能を持つことはありえない。
【0006】
なぜならガラス繊維断熱材の熱伝導率は0.05〜0.1W/m・Kであり、最良の断熱材である動かない空気のそれ(0.024W/m・K)の2〜4倍である(非特許文献2)。
【0007】
もし、厚さ0.2mmの断熱塗膜が厚さ200mmのガラス繊維断熱材に匹敵する性能を持つとすれば、その断熱塗膜の熱伝導率はガラス繊維断熱材の熱伝導率の1/1000の値を持たねばならない。
【0008】
非特許文献8のp.958が明言するように、「薄い有機塗膜に断熱性をもたせることは不可能で、現在までのところ、本当の意味の断熱塗料というものはない」のが実状であり、
【0009】
十分な断熱性を持たせるためには、吹き付け型断熱塗料を20〜40mmの厚さに吹き付ける必要がある、と述べている。
【0010】
しかし、非特許文献8のp.962では、更に「太陽熱防御塗料」の必要性を述べていて、従来このような目的にアルミニウム粉を主体としたシルバーペイントがよく使用されているが、アルミ粉は白色顔料より反射率が低く、しかも比較的短期間に酸化され著しく反射率が低下してしまう。したがって酸化チタンのような耐候性の良い白色顔料を大量に含んだ塗料を塗装する方が良い結果が得られる、とある。
【0011】
一方、非特許文献1が示す断熱塗料は、その性能に誇大宣伝の数値を含むとはいえ、非特許文献8の言う「白色顔料を大量に含んだ塗料」よりは、すぐれた断熱性能を有するものである。
【0012】
この断熱塗料は説明によれば、白色の無機顔料や造膜成分の外に、無機断熱材成分を含有するものであり、しかもこの無機断熱材成分はアメリカのNASAがスペースシャトルの表面被覆用に開発したシリカに基づくものであると言われている。
【0013】
他方、非特許文献7(p23)、非特許文献8(p.118)、非特許文献10(p.232)、非特許文献11(p.308)には、アルミニウム粉末を含むアルミニウムペイントの性能について記述があり、「太陽光などの熱線をよく反射し、その内容物の温度上昇を防止する」、「光の反射、熱線の反射などの特性があり、被塗物内部の温度上昇を防止する」、「赤外、紫外線などの各光線の反射率が高く、構造物の保温、保冷効果が得られる」、「アルミニウムは紫外線や赤外線を含めて光をほとんど反射するので、内容物の保温や断熱性に優れた塗膜を得ることができる」とある。
【0014】
現実にはアルミニウムペイントは、多くのプラントの配管などの塗装に用いられているとはいえ、断熱塗料よりも優れた性能を有するかどうか、疑問の余地がある。
【0015】
なぜなら、非特許文献7には、「温度上昇を防止するので貯水タンクなどの塗装に用いられる」に続いて、「またよく熱を発散するので暖房用ラジエータなどの外面に塗装する」と書かれている。
【0016】
すなわち、熱の侵入を防止する遮熱性能と、熱をよく発散する輻射性能とは、矛盾するものであり、両立することはありえないと考えられる。
【0017】
熱が入りにくい塗膜は、熱が出ていきにくい性能を併せ持つはずである。
【0018】
工場のトタン屋根の塗装などには、アルミニウムペイントよりも断熱塗料の方がよく用いられている。これは、断熱塗料の性能が普通の白色塗料やアルミニウムペイントよりも優れていることを示すものである。
【0019】
特許文献1には、断熱塗膜を厚さ3mm程度に形成した後、その表面に無機白色顔料を含む塗料を数十ミクロンの厚さで形成することが述べられている。
【0020】
発明者らの問題意識は、従来の断熱塗膜の遮熱性能をどのような工夫により、大幅に向上させることができるか、にある。
【発明の効果】
【0021】
アルミニウム粉末を含有する安価な塗料を下地に用いることにより、その上に形成した断熱塗膜の遮熱性能を更に大きく向上させることができる。
【0022】
塗膜の遮熱性能の向上は、建物への侵入熱量を大幅に削減し、冷房負荷の大きな削減をもたらすので、使用電力量の大幅な削減につながり、炭酸ガス発生量の削減とみなすことができる。
【0023】
二層構造による断熱塗膜の形成は、それほどコスト上昇をもたらさず、コストアップに対して得られる費用対効果は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
「比較例1」
【0025】
まず、塗膜の性能評価をするために、縦80、横100、高さ100mmの厚紙箱を作り、その五面に厚さ5mmの発泡スチロール板を張り、その上面に評価試
料板を取り付け、テープで密封した。
【0026】
この断熱箱に白熱ランプ(100W)を100mm離して直射させ、その時の箱内の温度上昇を箱内に設置した水銀温度計とストップウオッチで測定した。
【0027】
水銀温度計は、評価試料の4cm下の中央部に設置し、水銀だめの部分に薄い黒色塗料をぬり、黒球温度計に近いものとした。
【0028】
比較例試料として、No.1:黒色処理鉄板(厚さ230ミクロン)に耐火断熱レンガ(B−1)の粉末を10wt%混ぜた白色エナメルを塗布、乾燥し、塗布量約1.4gとしたもの(塗膜約75ミクロン厚さ)、No.2:同
上の黒色処理鉄板にアルミニウム粉末を10wt%混ぜた白色エナメルを塗布、乾燥し、塗布量約1.4gとしたもの、No.3:No.1の試料の上に、更にNo.2に用いたアルミニウム粉末入り塗料を塗布、乾燥したもの(塗布量約3g)、No.4:No.2の試料の上にNo.1に用いた断熱レンガ粉末入り塗料を塗布、乾燥したもの(塗布量約3.4g)、No.5:No.1の黒色処理鉄板の上に、No.1に用いた塗料とNo.2に用いた塗料とを1:1に混合して塗布、乾燥したもの(塗布量3.5g)を用意した。
【0029】
表1には、実験結果を示した。
[表1] 比較試験結果
試料 温度上昇速度 最高温度(摂氏度)
No.1 0.064 37.3
No.2 0.079 36.3
No.3 0.081 35.3
No.4 0.062 34.4
No.5 0.075 37.3
【0030】
温度上昇速度は、温度と時間を対数目盛りでグラフにプロットした時の直線部分(3〜10分の間)から求めた。
【0031】
最高温度は、実験で温度上昇が停止した30分後の温度である。
【0032】
試料No.1は温度上昇速度が小さいとはいえ、最も最高温度が高い。
【0033】
この事実から断熱塗料の単独塗膜では、それほど優れた性能を有しないことが明らかである。
【0034】
試料No.2はアルミニウムペイントとみなすことができるが、温度上昇速度が大きく、最高温度も低くない。
【0035】
この事実から、アルミニウムペイントの単独塗膜では、それほど優れた性能を有しないことが明らかである。
【0036】
非特許文献7、8、10、11が推奨するアルミニウムペイント単独の塗膜の優れた性能は、一般論的なものであって、厳密な比較に基づくものではない。
【0037】
最も低い最高温度を示す試料はNo.4であり、温度上昇速度も最も小さい。
【0038】
すなわち試料No.4は、アルミニウム粉末を含有する塗膜の直上に、断熱材粉末を含有する塗膜を形成したものである。
【0039】
これに反して、試料No.4とは逆の塗膜構成の試料No.3の性能が試料No.4よりも劣る原因については現時点ではよくわからないが、温度上昇速度の大きいことがその一因であると考えられる。
【0040】
また、断熱材粉末とアルミニウム粉末とを共存させた塗膜を持つ試料No.5の性能は芳しくないが、この理由についてはよくわからないとはいえ、やはり温度上昇速度が大きい。
【0041】
これらの実験結果より、塗膜の遮熱性能を向上させるためには、二層構造とすることが望ましく、その場合、最下層にアルミニウム粉末を含有する塗膜、その直上に断熱材粉末を含有する塗膜を形成する構成とすることが有効であることがわかる。
「比較例2」
【0042】
次に太陽光照射時の塗膜の表面温度測定結果について述べる。
【0043】
試料は表1に示したNo.3、No.4、No.5の外に、No.2'として黒色処理鉄板上に白エナメルを1.35g塗布後、No.2に用いたアルミニウム粉末を含む白エナメルを2.65g塗布したものを用意した。
【0044】
試料は地上1.5mの高さに二本の棒で作った水平台の上に水平に置き、塗膜面に太陽光を照射しながら、非接触表面温度計で、その表面および裏面(黒色処理鉄板)の温度を2時間にわたって10分ごとに測定した(八月末午後、晴天)。
【0045】
測定結果を表2に示した。
【0046】
[表2] 表面、裏面の平均温度(摂氏度)
試料 表面平均温度 裏面平均温度 温度差
No.2' 36.2+/−2.0 38.2+/−1.4 +2.0
No.3 36.1+/−1.7 38.1+/−1.4 +2.1
No.4 36.0+/−1.6 36.2+/−1.3 +0.23
No.5 37.1+/−1.8 39.2+/−1.7 +2.1
【0047】
先に表1で最も優れた性能を示した試料No.4は、表面温度の測定結果でも最も優れた性能を示すことがわかる。
【0048】
塗膜の表面温度からNo.4の優位性を認めるには無理があるとはいえ、裏面の表面温度はNo.4が最も低く、したがって表面と裏面の温度差が最も小さく、他の試料のそれらの約1/10である。
【0049】
この結果は、試料No.4が持つ優れた遮熱性能を実証するものである。
【0050】
試料を裏返しにして、黒色鉄板に太陽光を照射した場合においても、表面よりも裏面の温度の方が高くなる実験結果が得られた。
【0051】
この場合、裏面と表面の温度差(裏面−表面)は+6.6〜7.3摂氏度と大きかった。
【0052】
しかし、試料No.4の鉄板表面、および裏面の塗膜面の表面温度は最も低く、それぞれ28.3+/−1.1摂氏度、34.9+/−1.5摂氏度であった(同日)。
【0053】
参考までに、同日のガレージのトタン屋根の表面および裏面の表面温度は、それぞれ38.5摂氏度、39.5摂氏度であった。
【0054】
この比較実験結果から、断熱塗膜の性能評価をするには、塗膜の表面温度を測定するだけでは不十分であり、その裏側の温度あるいはそれに被覆された内部空間の温度を測定することが必要不可欠であると言える。
【0055】
この実験結果は、一般論的にまとめれば、太陽光の照射によって表面から入射したエネルギーは裏側に蓄えられると考えても矛盾はない。
【0056】
本発明による試料No.4は、そうした評価においても、優れた性能を発揮することが明らかである。
【0057】
以上のように、従来の無機顔料成分、断熱材粉末、造膜成分などを含む断熱塗料を用いて断熱塗膜を建物などの表面に形成する際に、太陽光反射能力を持つアルミニウム粉末を含有する塗料を用いて最下層の塗膜を形成し、その直上に断熱塗膜を形成することにより、従来の断熱塗料だけによる塗膜よりもすぐれた遮熱性能を示す断熱塗膜の得られることがわかった。
【0058】
このような性能の断熱塗膜を形成するに当たっては、アルミニウム粉末以外の成分に関しては、後に説明するように、特別に材料の種類を選択あるいは限定する必要はない。
【0059】
アルミニウム粉末に関しても、リーフィングタイプあるいはノンリーフィングタイプ(非特許文献7ほか)のどちらかに限定する必要はなく、両者の混合物使用が望ましい。
【0060】
なお、アルミニウム粉末を含有する塗料に関して言えば、その塗膜がいくらか微少気泡を含有することは、総合的な断熱・遮熱性能の向上から言って望ましいことである。
【0061】
そのためには、使用前の塗料の撹はん時に生じる微少気泡を塗料内に保持できる気泡坦持物質粒子の共存が望ましい。
【0062】
好適な気泡坦持物質粒子は、各種沈降性炭酸カルシウム(非特許文献10、p.168〜173)、各種沈降性炭酸マグネシウム(非特許文献9、p.180)、水酸化アルミニウム(非特許文献10、p.180)の微少粉末(粒子直径0.1ミクロン以下)である。
【0063】
これら微少粉末の添加量は、使用直前の液体状態塗料に対して、0.03〜0.3wt%が好ましい。
【0064】
添加量が0.03wt%より少ないと気泡坦持効果が少なく、また0.3wt%より多すぎると、塗装作業がしづらくなる。
【0065】
これらの炭酸塩や水酸化物は赤外線をよく吸収するので、塗装後の塗膜の乾燥時間を短縮できる。
【0066】
水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムは、空気中の炭酸ガスと反応し不安定であるので、用いることができない。
【0067】
白色無機顔料に関しては、従来の白色無機顔料のどれを含有するものも用いることができる。
【0068】
しかし一般的には、最も隠蔽力と安定性にすぐれるルチル型酸化チタンが広く用いられている。
【0069】
一方酸化チタンには、アナタース型という別の結晶形を持つ物質も存在する。
【0070】
従来、この結晶形の酸化チタンは、塗料に用いた時に、白亜化が著しく実用化が懸念されてきた(非特許文献5)。
【0071】
しかし最近、この白亜化の原因がアナタース型酸化チタンの持つすぐれた光触媒作用によることが解明され、用い方を工夫すると、環境浄化触媒として使えることが明らかとなった。
【0072】
また、その触媒能力を調整する技術も開発されている(非特許文献6)。
【0073】
こうした光触媒機能を利用すると、塗膜の汚れが非常に長期間にわたって防止される。
【0074】
したがって、今回の塗膜構成に用いる塗料にこのアナタース型酸化チタンを一部加えることは、すぐれた遮熱性能を得る上で、なんら妨げとなるものではない。
【0075】
断熱材粉末についても、特別な物質を指定する必要はない。
【0076】
なぜなら、断熱材の性能は先に述べたように、熱伝導率のみで決まるため、低い熱伝導率を持つ固体物質なら、どんな物質でも粉末にして用いることができる。
【0077】
1000度以下で用いられる耐火断熱レンガの粉末は気泡をたくさん含み、産業廃棄物であるので、安価に用いることができる。
【0078】
造膜成分に関しても同様に、特定物質を指定する必要は無い。
【0079】
無機系であれば、適当な低融点ガラスを用いると、500度程度まで、使用に耐える塗膜を作ることができる。
【0080】
有機物系では、対候性にすぐれるアクリル樹脂系、ウレタン樹脂系をはじめ、ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、アルキド樹脂系、アミノアルキド樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系などである。
【0081】
耐熱性を要求される場合には、シリコン樹脂系を用いると、250度程度まで使用することができる。
【0082】
分散媒体に関しては、水をはじめとして、有機物系分散媒体や溶剤も用いることができる。
【0083】
しかし、環境問題を考慮すると、水系塗料の方が実用的にすぐれている。
【0084】
水系の場合、造膜成分を溶解しないタイプ、すなわちエマルジョン系やディスパージョン系の塗料が主流となる。
【0085】
もちろん、造膜成分を水溶性とするタイプの開発も可能である。
【0086】
基本的には、ユーザーが各種市販品の中から、使いやすいものを選択するのが望ましい。
【0087】
本発明は、その基本構造として最下層にアルミニウム粉末を含有する塗膜、その直上に断熱材粉末を含有する塗膜を形成することを特徴とするが、かならずしも二層構造に限定されるものではない。
【0088】
使用場所により、着色を目的とした塗膜を更にその上に塗布することも不都合ではない。
【0089】
光触媒作用を持つ塗膜をその上に薄く塗布することも可能である。
【0090】
ビルや工場の夏の冷房負荷あるいは冬の暖房負荷を低減させることは、直ちに電力使用量の削減につながる。
【0091】
特に、夏場の冷房は電力使用量が多大であるので、冷房負荷の低減はその効果が大きい。
【0092】
昨今は、電力使用量の低減が、炭酸ガス発生量の緊急削減として取り上げられている。
【0093】
したがって、あまりコストをかけずに済む塗料の塗布による断熱塗膜の形成は冷房負荷の低減に対しては最も好ましい方式の一つである。
【0094】
たとえば、こうした断熱塗膜の形成により、建物への侵入熱量が塗膜の無い従来の建物の場合に比べていくら減少するかを、室内壁の表面温度や室内温度を比較することにより見積もることができる。
【0095】
電力換算すると、電力1kWは2250kcalの熱量に相当する。
【0096】
建物への侵入熱量の差分を電力換算すれば、削減できた使用電力料金を算出することができる。
【0097】
建物の面積あるいは負荷が大きいほど、断熱塗膜による削減できる電力量も大きくなる。
【0098】
個別例については、それぞれの具体的数値を用いて計算するしかないが、使用電力量が数十パーセント低下することもまれではない。
【実施例1】
【0099】
塗料用アルミニウム粉末(JISK5906)の1種(微粉)のリーフィングタイプとノンリーフィングタイプを1:1に混合した粉末を10wt%含有する油性ペイントに粒子径0.1ミクロン以下の沈降性炭酸カルシウム粉末を0.1wt%加え、よく撹はんした後、厚さ200ミクロンの塗膜をコンクリート製の建物表面に形成し、十分に乾燥させた後、水性の断熱塗料(クールサーム)を用いて、その直上に厚さ2mmの塗膜を形成させることにより、夏場の大幅な冷房負荷の低減に成功し、すぐれた省エネルギー効果を得た。
【実施例2】
【0100】
実施例1の塗膜の上に、更に触媒能力を調整されたアナタース型酸化チタンを含有する光触媒作用を持つペイントを厚さ30ミクロン塗布することにより、長期にわたって汚れを生じない断熱塗膜を得た。省エネルギー効果は、実施例1のものと同等であった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
各種建造物の外壁や屋根への塗装。
【0102】
各種プラント装置類や配管類の外面塗装。
【0103】
屋外設置用の各種冷暖房機器外箱の外面塗装。
【0104】
自動車のエンジンルームの内面塗装。
【0105】
断熱・遮熱を必要とする各種場所への塗装。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材成分を含有する断熱塗料を建物や屋根などに塗布して塗膜を形成する際に、アルミニウム粉末を含有する塗料の塗膜をその最下層に形成することを特徴とする断熱塗膜形成法。
【請求項2】
アルミニウム粉末を含有する最下層塗膜の直上に、断熱材成分を含有する断熱塗料を用いて断熱層塗膜を形成することを特徴とする特許請求範囲第一項記載の断熱塗膜形成法。
【請求項3】
アルミニウム粉末を含有する塗料が液体状態で、沈降性炭酸カルシウムあるいは沈降性炭酸マグネシウムあるいは水酸化アルミニウム粉末あるいはそれらの任意の混合割合の混合粉末を0.03〜0.3wt%含有することを特徴とする特許請求範囲第一項ないし第二項記載の断熱塗膜形成法。

【公開番号】特開2007−98248(P2007−98248A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290202(P2005−290202)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(501222459)
【Fターム(参考)】