説明

断熱容器

【課題】真空断熱材の信頼性を向上させ、生産性を高めることのできる断熱容器。
【解決手段】容器と、少なくとも一つが真空断熱部材であって、互いに協働して上記容器の実質的に全ての外表面を覆う複数の断熱部材とを備えた断熱容器において、上記真空断熱部材が、芯材およびこの芯材を真空内に封止する真空外皮を有する真空断熱要素と、上記真空断熱要素に組み合わされた断熱要素と、上記真空断熱要素および上記断熱要素を共に覆う外皮とを備えていることを特徴とする断熱容器である。
【効果】真空断熱材の信頼性および生産性を高めることが実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は断熱容器に関するものである。この発明で断熱容器とは、真空断熱材により断熱されて温熱および冷熱機器に使用するのに適した容器あるいは管を含む包囲体を意味する。
【背景技術】
【0002】
従来、低コストでより効率的に漏洩熱量を抑制して実用性の高い貯湯タンクを提供するために、容器と外装ケースとの間に配設する断熱材が少なくとも真空断熱材とシート状断熱材とからなり、前記容器の側面と前記外装ケースの側面とが近接して空間間隔の狭い部位には、少なくとも真空断熱材を配置し、空間間隔の広い部位にはシート状断熱材のみを使用する貯湯タンクが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−226965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこのような従来の貯湯タンクにおいては、真空断熱材と通常の板状の非真空断熱材とが別個の部材であって、タンクに真空断熱材を取り付けた後で非真空断熱材を取り付けるため、板状断熱材の取り付け作業中に既に取り付けてある真空断熱材の外皮材を破損させる可能性が高かった。また、断熱以外の装置製造ライン工程ならびに装置メンテナンス作業など一旦真空断熱材が配設された後に外皮材が破損した場合には、一旦取り付けた真空断熱材を交換しなければならなかった。さらに、真空断熱材と非真空断熱材とをそれぞれ個別に複数使用することから、取り付け時の部品点数が多く、取り付け作業も繁雑であった。この結果、真空断熱を適用する場合には、生産性が悪くなるなどの問題があった。
【0005】
従ってこの発明の目的は、真空断熱材の信頼性を向上させ、生産性が高く、断熱性能の優れた断熱容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の断熱容器は、容器と、少なくとも一つが真空断熱部材であって、互いに協働して上記容器の実質的に全ての外表面を覆う複数の断熱部材とを備えた断熱容器において、上記真空断熱部材が、芯材およびこの芯材を真空内に封止する真空外皮を有する真空断熱要素と、上記真空断熱要素に組み合わされた断熱要素と、上記真空断熱要素および上記断熱要素を共に覆う外皮とを備えていることを特徴とする断熱容器である。
【発明の効果】
【0007】
この発明の断熱容器においては、真空断熱要素と他の非真空あるいは真空度の低い真空断熱要素とを組合せて全体を外皮で被って真空断熱部材を構成するので、真空断熱要素が内皮と外皮とで保護され、真空断熱が破壊されにくく、組立作業時の部品点数削減が図れ、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による断熱容器を示す概略斜視図である。
【図2】図1の線A−Aに沿った断熱容器の概略水平断面図である。
【図3】図1の断熱容器の容器壁の側壁を覆う真空断熱部材を示す概略斜視図である。
【図4】図1の断熱容器の容器壁の端壁を覆う断熱部材の概略斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態2の断熱容器を示す概略水平断面図である。
【図6】この発明の実施の形態3の断熱容器を示す概略水平断面図である。
【図7】この発明の実施の形態4の断熱容器を示す概略水平断面図である。
【図8】この発明の実施の形態5の断熱容器を示す概略水平断面図である。
【図9】この発明の実施の形態6の断熱容器を示す概略水平断面図である。
【図10】この発明の実施の形態7の断熱容器を示す概略水平断面図である。
【図11】図10の断熱容器を示す概略垂直断面図である。
【図12】この発明の断熱容器に使用できる断熱材の性能を示す表である。
【図13】この発明の実施の形態8の断熱容器を示す概略水平断面図である。
【図14】この発明の実施の形態9の断熱容器を示す概略水平断面図である。
【図15】この発明の実施の形態10の断熱容器を示す概略水平断面図である。
【図16】この発明の実施の形態11の断熱容器を示す概略水平断面図である。
【図17】図15の断熱容器を示す概略水平断面図である。
【図18】この発明の実施の形態12の断熱容器を示す概略水平断面図である。
【図19】この発明の実施の形態13の断熱容器を示す概略水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1〜4には、この発明を実施するための実施の形態1における断熱容器1を示す。断熱容器1は、温熱あるいは冷熱機器に使用するのに適した容器ならびに管を含む包囲体である。
【0011】
断熱容器1は、円筒形の容器2と、容器2の実質的に全ての外表面を互いに協働して覆う複数のパネル状の断熱部材3とを備えており、断熱部材3の少なくとも一つが真空断熱部材4で構成されている。図示の例では、容器2は円筒形胴部を形成する円筒形の側壁5と、胴部の上下を閉塞するドーム状の上下の端壁6とを備えていて、側壁5は4枚のパネル状の真空断熱部材4によって覆われており、端壁6はドーム状の非真空断熱部材7によって覆われている。すなわち、断熱容器1の複数の断熱部材3は、容器2の側壁5を覆う真空断熱部材4と、端壁6を覆う非真空断熱部材7とで構成されている。断熱部材3は粘着テープなどで互いに接合されるか、または外周より締め付け具などで縛られるかなどして設置されている。
【0012】
4枚の真空断熱部材4は、それぞれ同一の構造であって、芯材8およびこの芯材8を真空内に封止する真空外皮9を有する真空断熱要素10と、この真空断熱要素10に組み合わされた断熱要素11と、真空断熱要素10および断熱要素11を組み合わされた状態で共に覆う外皮12とを備えている。
【0013】
断熱要素11は、図示の例では、容器2の側壁5の1/4を覆うように側壁5に沿った形状に湾曲した板状の非真空断熱材13であって、例えばビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)断熱材である。この非真空断熱材13は、直径0.3〜2mm程度の球状ポリスチレン樹脂から適当な径の球を選択し、これに炭化水素系発泡剤を含有させて重合工程で発泡成形させるようにして作製することができる。
【0014】
断熱要素11すなわち非真空断熱材13の外側面の周方向中央部には軸方向に溝14が形成されていて、この溝14内に真空断熱要素10が埋め込まれている。図2に示されているように、真空断熱要素10は、長方形の平板状であって、外側の主面が断熱要素11の外側面と連続した面一となるように断熱要素11内に部分的に埋め込まれ、例えば外周部を粘着テープや締め付け具などによって接合されていて、容器2の側壁5の厚さ方向に見て、真空断熱要素10が断熱要素11の外側になるように連ねて配置されている。
【0015】
真空断熱要素10はそれぞれ、ガラス繊維シートの芯材8と、この芯材8を真空内に封止するフィルム状の真空外皮9とで構成されている。芯材8となる繊維シートの製造に当たっては、例えば水または硫酸にガラス繊維を分散させ、自動送り式抄紙機で抄紙してシート状に形成した後、乾燥工程を経てロール状に巻き取られたシートロールを作製する。次に、このシートロールからシートを引き出して必要なサイズに裁断して繊維シートとし、この繊維シートを複数枚重ねた芯材8を作製する。この後、芯材8を2枚もしくは1枚を折り返して作製した袋状の真空外皮9内に挿入し、真空外皮9で覆われた芯材8を真空チャンバ内に配置する。この後、真空チャンバ内を減圧することにより、真空外皮9で覆われた空間を減圧して空間を真空状態にする。この後、真空外皮9で覆われた空間が所定の圧力、例えば0.1〜3Pa程度の真空圧になっている状態で真空外皮9の残り開口部を密閉した後、真空チャンバ内の圧力を大気圧状態にまで戻す。これにより、真空断熱要素10が完成する。完成した真空断熱要素10の内部空間は真空状態に保持されている。また、必要に応じて真空外皮9で覆われた空間には、封止前に適当なガス吸着剤を挿入する。
【0016】
なお、繊維シートに含有される水分については、抄紙時の乾燥工程とは別に、真空引きする前などに繊維シートを加熱しながら水分を除去してもよい。また、真空外皮9で覆われた芯材8が真空チャンバ内で減圧された状態において、真空チャンバ内を加熱するような機構を設けて、繊維シート自体に熱収縮や熱分解などの熱負荷がからない温度で、かつ真空放電などを誘発しない圧力など、適切な条件を設定して繊維シートの水分を除去してもよい。
【0017】
また、真空外皮9は、例えばアルミラミネートシートで構成されており、その代表的なフィルム層は、ナイロン15μm+ポリエチレンテレフタレート12μm+アルミシート6μm+ポリエチレン50μmからなる。但し、これに限定されるものではない。なお図2においては、真空内皮9および非真空の外皮12の厚さは構造を理解しやすいように強調して描かれている。
【0018】
なお、本実施の形態においては、繊維の材料としてガラス繊維を用いたが、ポリエステル系やそれ以外の有機繊維、例えばポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの有機繊維を用いることもできる。また、無機繊維と有機繊維とを混在させても同様の効果が得られることは明らかであり、それぞれに適合した製造方法やコストの面から適宜繊維の材料を選択することが可能である。
【0019】
真空断熱要素10および断熱要素11を組み合わされた状態で共に覆う外皮12は、その材質が、例えば、ポリエステル(PE)シート、ポリエチレンテレフタレート(PETT)シート、ポリプロピレン(PP)シートなどである。図示の例では非真空用の外皮であるが、真空シールすることもできる。
【0020】
断熱容器1はさらに、容器2を格納する箱形ケースである外装15を備えていて、容器2と外装15との間に真空断熱部材4が配置されている。図に示す例では、容器2の側壁5の全周が真空断熱部材4によって覆われているが、容器2が外装15に対面との間の距離が特に小さい部分、すなわち真空断熱部材4の周方向の4箇所に真空断熱要素10が配置されている。
【0021】
このような構成の断熱容器1においては、真空断熱要素10と断熱要素11を一体化した組合せ断熱材としての真空断熱部材4を作製しておき、この真空断熱部材4を容器2に取り付けることができる。したがって、従来、断熱要素11に相当する断熱材を容器2に取り付け、その後に真空断熱材4を取り付けていた作業を、一体に組み立てられている組立体を一挙に容器2に取り付けることが可能である。したがって、組立工程における部品点数が半減して作業効率が向上する。また、真空断熱要素10の表面が取り付け作業時には外皮12によって覆われているので、真空断熱要素10の真空外皮9が保護され、ライン組立時の真空外皮9の損傷を防止することができる。なお、図では非真空の外皮12が、組合せられた真空断熱要素10および非真空の断熱要素11の組立体の表面全体を覆っているとして描かれ説明してあるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0022】
実施の形態2.
図5に示す断熱容器1においては、外装15は円筒形であり、8枚の真空断熱部材4が円筒形の容器2の側壁を覆うように配置されている。その他の構成は図1〜4に示すものと同様であるが、図5においては真空の真空外皮9および外皮12が一本の線で表されている。
【0023】
この断熱容器1においては、容器2の側壁を覆う真空断熱部材4が8枚になるものの、真空断熱部材4と外装15との間に余分なスペースがなくなることから、断熱容器1の設置面積を小さくコンパクトにすることができる。また、外装15の表面積が小さくなることから、外装15の材料が少なくなり、外気との伝熱面積が小さくなり、断熱性能を向上できる。
【0024】
実施の形態3.
図6に示す断熱容器1においては、容器2の側壁が2枚のほぼC字形断面の真空断熱部材4によって覆われている。真空断熱部材4は、容器2の円筒形の側壁に沿って配置されて厚さが一定で断面形がC字形の断熱要素11と、断熱要素11の外周面に接合され、容器2の側壁の厚さ方向に見て断熱要素11の外側に配置されて厚さが一定で断面形がC字形の真空断熱要素10と、断熱要素11および真空断熱要素10を組み合わせた状態で包囲する外皮12とを備えている。その他の構成は先に説明したものと同様である。また、断熱要素11は、非真空断熱材13としている。
【0025】
この断熱容器においては、真空断熱部材4は2分割されているので部品点数が少なく、真空断熱部材4の間の繋ぎ目も少なくなることから、保温あるいは保冷等のための断熱性能の高い断熱容器が実現できる。また、断熱要素11の非真空断熱材13として、柔軟性がある例えばグラスウールを適用すると、真空断熱要素10の内側面と容器2の外表面のとの曲率差等によって生ずる隙間を吸収することが可能となる。したがって、より高性能な断熱性能を実現することができる。
【0026】
なお、この実施の形態における円筒形状の真空断熱要素10は、例えば、上述したように、先ず平板形状真空断熱材を作製し、その後、3軸式のロールベンダーにて所望の曲率を有する円筒形状となる様に曲げ加工を行なった。なお、真空チャンバ内で真空封止する前にあらかじめ円筒形状に成形しておいてもよい。
【0027】
実施の形態4.
図7に示す断熱容器1においては、容器2の側壁が2枚のほぼC字形断面の真空断熱部材4によって覆われていて、この点では図6に示す断熱容器1と同じであるが、真空断熱部材4の径方向内側に真空断熱要素10が設けられ、外側に断熱要素11が設けられている。すなわち、真空断熱部材4は、容器2の円筒形の側壁に沿って配置されて厚さが一定で断面形がC字形の真空断熱要素10と、真空断熱要素10の外周面に接合され、容器2の側壁の厚さ方向に見て真空断熱要素10の外側に配置されて厚さが一定で断面形がC字形の断熱要素11と、真空断熱要素10および断熱要素11を組み合わせた状態で包囲する外皮12とを備えている。その他の構成は先に説明したものと同様で、断熱要素11は、非真空断熱材13としている。
【0028】
図7に示す断熱容器1においては、図6の断熱容器1とほぼ同等の効果が得られる上に、真空断熱要素10の外周部を全て断熱要素11で被うように設置するので、製造時に一度容器2に配置した後は、真空断熱要素10が表面に出てこないことから、真空外皮9を破損させる危険性がより少なくなるという効果が得られる。
【0029】
実施の形態5.
図8に示す断熱容器1においては、容器2が直方体で側壁5が平坦な板状であり、外装15も直方体であるため、真空断熱部材4は矩形の平板状にしてある。容器2の側壁5の厚さ方向に見て内側に容器2に接して断熱要素11が設けられ、外側に真空断熱要素10が設けられている。また、断熱要素11は、非真空断熱材13としている。この場合、真空断熱要素10を円筒形状に加工する必要がないことから、芯材8および真空外皮9への曲げ負荷がない。つまり、真空外皮9の破損や芯材8の折れ曲がりが起こらないことから、信頼性の高い断熱構造が実現できる。なお、この実施例で、外装15の外壁および容器2のいずれか少なくとも一つの側壁5もしくは上蓋または下蓋(図示せず)を真空断熱部材4と共に開閉できるようにすることもできる。その他の構成は、先に説明した実施の形態と同様である。
【0030】
実施の形態6.
図9に示す断熱容器1においては、図8に示す断熱容器1と同様の構成であって、真空断熱部材4あるいは容器2の側壁5の厚さ方向に見て内側に容器2に接して真空断熱要素10が設けられ、外側に断熱要素11が設けられている点が相違している。この断熱容器1においても、図8に示すものと同様の効果が得られ、また真空断熱要素10が断熱要素11の内側にあるため、断熱要素11によって保護される。
【0031】
なお、この実施の形態では、断熱材の材質としてEPS断熱材を使用しているが、例えば発泡ウレタン断熱材、押出法ポリスチレンフォームなどでもよく、また無機系断熱材、例えばグラスウール断熱材やセラミックウール断熱材などを使用してもよい。
【0032】
実施の形態7.
図10および11に示す断熱容器1においては、円筒形の容器壁5がほぼC字形断面となるように軸方向に2分割された半円筒状の2枚の真空断熱部材16によって覆われており、容器2の端壁6もドーム状の第2の真空断熱部材17によって覆われており、容器2を囲む断熱部材3が、全て真空断熱のパネルで構成されている。
【0033】
容器2の側壁5は半円筒状の2枚の真空断熱部材16によって覆われており、それぞれの真空断熱部材16は、容器2の側壁5の1/4程度を覆う真空断熱要素10と、真空断熱要素10に周方向に延長された部材として組み合わされて、側壁5の残りの1/4程度を覆う断熱要素20と、これら互いに組み合わされた真空断熱要素10および断熱要素20の全体を真空封止する第2の真空外皮19とで構成されている。ここで、断熱要素20は第2の芯材18としている。真空断熱要素10は、芯材8と、芯材8を真空封止する真空外皮9とで構成されている。
【0034】
従って、真空断熱部材16は、真空断熱要素10に組み合わされた断熱要素20である第2の芯材18を備えていて、真空外皮19によって覆われて真空封止されている。真空断熱要素10に組合わされた第2の芯材18を囲む空間の真空度は、真空断熱要素10の真空度よりも低い第2の真空度にされている。また、真空断熱要素10と第2の芯材18とが容器2の側壁5に沿った円周方向に連ねて配置されている。また、第2の芯材18は、炭化水素系発泡剤によって発泡された発泡断熱材を使用することができる。
【0035】
容器2の端壁6は、上述の容器2の側壁5を覆う真空断熱部材16と異なり、ドーム状で、真空断熱部材16の真空外皮19内の第2の真空度と同じレベルの真空度の第2の真空断熱部材17によって覆われている。第2の真空断熱部材17は断熱要素24である第3の芯材21を第3の真空外皮22で覆われたものである。上述のように、第2の真空断熱部材17の第3の芯材21としても、炭化水素系発泡剤によって発泡された発泡断熱材を芯材とすることができる。
【0036】
上述の第2の芯材18は、例えばEPS断熱材であり、真空外皮19は、高密度ポリエチレンシートである。また第2の真空断熱部材17も、EPS断熱材であり、真空外皮22は、高密度ポリエチレンシートである。
【0037】
そこで、図12の表には、厚み10mmのEPS断熱材をPE包装材で圧力をパラメータとして封止条件を変化させた時の厚み変化率と熱伝導率の関係を調べた結果を示す。EPS断熱材を大気圧条件で0.035W/(m・K)であったEPS断熱材の熱伝導率が、絶対圧75kPaにまで低圧化させると、0.031W/(m・K)となり厚みの変化も殆ど見られなかった。一方、50kPa以下の低圧条件では、熱伝導率の減少率は少なくなるものの、厚みの低下が顕著にみられ、実質の断熱性能が悪くなることが分かった。さらに1kPaより低圧化するとむしろ熱伝導率も上昇してしまう傾向が見られた。これは芯材の厚みが薄くなることによって芯材の充填率が上昇し、芯材を通じた固体熱伝導が大きくなったためだと考えられる。これらの結果より、真空断熱要素10とEPS断熱材である第2の芯材18とが真空外皮19で覆われた第2の真空度の圧力は、絶対圧力で50kPaより大きい値にすることが望ましい。またさらに言うと、製造ラインでは、大掛かりな真空ポンプ等を用いて低圧化することは生産性が悪くなることから、第2の芯材18周囲の圧力は、絶対圧力75kPa程度にすることがより望ましい。
【0038】
ここで、図10および11に示す真空断熱部材16は、例えばEPS断熱材である第2の芯材18と真空断熱要素10とを、あらかじめ3辺を封止したPEを材料とした真空外皮19となる袋に挿入し、掃除機と同等性能のブロワで吸引しながら、最後の開口部一辺をヒートシーラで挟み込んで熱融着させて製作した。なお,第2の真空断熱部材17も同様に、第3の芯材21を真空外皮22となる袋に入れて吸引しながら熱融着により封止して製造する。
【0039】
また、真空断熱要素10は、内圧と外部の圧力差(組成単位で見るとガスの分圧差)によって、長期的には真空外皮9のシール部分からガスの浸入があるが、ガス吸着剤によって化学吸着もしくは物理吸着させて浸入ガスを除去することで真空度を維持させる。この実施の形態においては、真空断熱要素10の外周は、さらに第2の真空外皮19によって囲繞され低圧保持されていることから、真空断熱要素10の内外圧力差が小さくなる。したがって、吸着剤の負荷が低減でき、真空断熱要素10の長期信頼性という面からも優位になる。また、EPS断熱材の製造方法で、発泡剤として炭化系水素(例えばブタンやペンタン)で発泡させることを示したが、これを炭酸ガスで発泡させてもよい。この場合、発泡直後に芯材である断熱材中に炭酸ガスを封じ込めることが望ましい。炭酸ガスは空気と比較して熱伝導率が約30%低いことから、断熱材の熱伝導率をさらに数%低減できる。さらに、第2の真空度を有する空間が断熱材の内部が炭酸ガス雰囲気になっているので、空気と比較して真空断熱要素10を封止する真空外皮9のシール性が良いという効果も得られる。なお、第2の真空断熱部材17についても同様である。
【0040】
なお、以上のように図10〜12に示した実施の形態7の断熱容器は、真空断熱要素10に、共通の第2の真空外皮19で真空封止されて第1の真空度よりも低い真空度にされた断熱要素20である第2の芯材18を組み合わせた真空断熱部材16を備えたものであるが、これと同様に、図1〜9に示した実施の形態における真空断熱部材4においても、真空断熱要素10に組み合わされた断熱要素11を第2の芯材18とすることもできる。この場合にも、製造工程の簡略化ならびに組立時の真空断熱要素10の破損防止が図れると共に、図10で説明したことと同様、断熱性能の向上も図ることができる。ここで、図2や図5に示した断熱要素11に第2の芯材18として柔軟性に富んだグラスウールなどを適用すると、低圧化によって断熱構造が維持できなくなり、第2の芯材18の空隙率が低下するために断熱性能が低下することもあり、必ずしも好ましくない。但し、図6や図8のように容器2と真空断熱部材4との密着性を向上させるためには有効となる。
【0041】
実施の形態8.
図13に示す断熱容器1においては、円筒形状の容器2の側壁5を被覆する断熱部材の一部が非真空断熱部材23であり、それ以外は、真空断熱要素10と断熱要素20である第2の芯材18とが真空外皮19で被覆された真空断熱部材16である。容器2の上下の端壁6は図4に示す非真空断熱部材7と同様の非真空断熱部材で覆ってある。
【0042】
温熱・冷熱機器、つまり貯湯タンク、アイスシャーベットや氷蓄熱などの貯蔵タンク、冷蔵庫・冷凍庫などに適用される容器2は、接続される配管やサーミスタなどの計測線取出しなどが側面または上下部に必要となる場合がある(図示せず)。これらの部分に複雑な形状に加工しやすい非真空の断熱材で構成された非真空断熱部材23を設けることによって、容器2およびその近傍にある突起物を避けて断熱材を配置することが容易にできる。したがって、高い組立作業性および断熱性能を維持しつつ、現実的な容器2の断熱施工が実現できる。
【0043】
実施の形態9.
図14に示す断熱容器1においては、外装15が直方体であり、容器2の円筒側面の約1/4を被覆する断熱材の一部に非真空断熱部材23を設け、それ以外は、予め円筒側面の約3/4を被覆する円筒形状にした真空断熱要素10と、この真空断熱要素10に同心に組み合わされ、円筒形状の断熱要素20を第2の芯材18として真空外皮19で覆って第2の真空度とした真空断熱部材16によって囲繞したものである。また、容器2の上部と下部の端壁を被覆する断熱材は、実施の形態7と同様に、一部もしくは全部を第2の真空断熱部材17で覆うようにしてある。その他の構成は図13に示すものと同様である。
【0044】
この場合、図13と同等の効果が得られると共に、周方向は真空断熱部材16と非真空断熱部材23との2分割になっているので部品点数が削減できる。また、断熱部材の繋ぎ目も少なくなることから、保温性能の高い断熱が実現できる。また、真空断熱要素10の外周部の全面を第2の芯材18によって被うように設置してあるので、製造時に一度容器2に配置した後は、真空断熱要素10が表面に出てこないことから、真空断熱要素10の真空が破れて破損する危険性が少なくなる。
【0045】
実施の形態10.
図15に示す断熱容器においては、図14の断熱容器に対して真空断熱部材16の真空断熱要素10と第2の芯材18との径方向の配置が内外に逆転したものである。その他の構成は図14のものと同様である。この結果、図13と同等の効果および部品点数削減による組立作業性の向上効果が得られるのみならず、断熱要素20である第2の芯材18として、柔軟性があるグラスウール等を適用すると、真空断熱部材16の内側面と容器2の外表面のとの曲率差等によって生ずる隙間を吸収することが可能となり、より高い保温性能を実現できる。
【0046】
実施の形態11.
図16および17に示す断熱容器1においては、円筒形の容器2の周方向のほぼ3/4を覆うほぼC字形の円筒形状の真空断熱部材16と、残りの約1/4を覆う非真空断熱部材23とを備えている。真空断熱部材16は、容器2の周方向の大部分に亘って延びて、容器2に直接接するように配置された断面がほぼC字形の真空断熱要素10と、真空断熱要素10の周方向両端部に組み合わされて結合され、容器2の軸方向に延びた2本の角柱状の断熱要素20である第2の芯材18と、真空断熱要素10と断熱要素20を共に被覆し、第2の真空度にする第2の真空外皮19とを備えている。容器2の上部と下部の端壁6は、図4に示すものと同様の非真空断熱部材7によって覆われているが、図11に示すような第2の真空断熱部材17を用いても良い。この断熱容器1においては、断熱要素20である第2の芯材18の材料を少なくすることができるため、より低コストで断熱することができる。
【0047】
実施の形態12.
図18に示す断熱容器1においては、外装15が6角柱形状にされていて、円筒形の容器2およびその周囲の真空断熱要素10に近接して配置されている。その他の構成は図16および17に示すものと同様である。この断熱容器1の場合、外装15内の余分な空間をなくすことで、設置面積を小さくできるとともに、外装15の壁面積が小さくなることから、材料コストを下げることができる。
【0048】
実施の形態13.
図19に示す断熱容器1においては、図16および17に示す断熱容器1と比較して相違する構成は、真空断熱部材16が、C字形の真空断熱要素10の両端部の断熱要素11である第2の芯材18のさらに周方向外側に、第2の真空断熱部材17を備えていることである。第2の真空断熱部材17は、断熱要素24である第3の芯材21を第3の真空外皮22によって封止したもので、真空断熱部材4に周囲を粘着テープで固定したり、外周部から締め付け具などによって縛られて設置されている。
【0049】
真空断熱要素10、特に真空断熱要素10の芯材8を真空封止するための真空外皮9は、繰り返し曲げ荷重に弱いことから、製造過程などでの曲げ伸ばし動作は極力少ない方が好ましい。この断熱容器1によれば、真空断熱要素10を円筒形の容器2に合わせて設置する時に、一度成型された円筒形部分を撓ませて開口部を大きく開くことなく、図16に示すものよりも真空断熱部材16の容器周囲面積比率を大きくすることができることから、より断熱材の高性能化が図れる。
【0050】
以上に図示して説明した断熱容器の構成は単なる例であって様々な変形が可能であり、またそれぞれの具体例の特徴を全てあるいは選択的に組み合わせて用いることもできる。
また、実施例で示した断熱容器1は、貯湯タンク、冷水タンク、調理容器、冷蔵室あるいは冷凍室ならびにそれらと共に用いられる断熱された配管などであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明は断熱容器に利用できるものである。
【符号の説明】
【0052】
1 断熱容器、2 容器、3 断熱部材、4 真空断熱部材、5 側壁、6 端壁、7 非真空断熱部材、8 芯材、9 真空外皮、10 真空断熱要素、11 断熱要素、12 外皮、13 非真空断熱材、14 溝、15 外装、16 真空断熱部材、17 第2の真空断熱部材、18 第2の芯材、19 第2の真空外皮、20 断熱材、21 断熱材、22 第3の真空外皮、23 非真空断熱部材、24 断熱要素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、少なくとも一つが真空断熱部材であって、互いに協働して上記容器の実質的に全ての外表面を覆う複数の断熱部材とを備えた断熱容器において、
上記真空断熱部材が、
芯材およびこの芯材を真空内に封止する真空外皮を有する真空断熱要素と、
上記真空断熱要素に組み合わされた断熱要素と、
上記真空断熱要素および上記断熱要素を共に覆う外皮とを備えていることを特徴とする断熱容器。
【請求項2】
上記複数の断熱部材が、非真空断熱部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の断熱容器。
【請求項3】
上記複数の断熱部材が、全て真空断熱部材であることを特徴とする請求項1に記載の断熱容器。
【請求項4】
上記真空断熱部材の上記断熱要素が、上記真空断熱要素に組み合わされた第2の芯材を備え、上記外皮が第2の真空外皮であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の断熱容器。
【請求項5】
上記断熱容器が上記容器を格納する外装を備え、上記容器と上記外装との間の距離が短い部分に上記真空断熱部材が配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の断熱容器。
【請求項6】
上記真空断熱部材の上記真空断熱要素が、上記断熱要素内に少なくとも部分的に埋め込まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の断熱容器。
【請求項7】
上記真空断熱部材を除く上記断熱部材のうちの少なくとも一部が、上記真空断熱部材の真空度よりも低い第2の真空度の真空断熱部材であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の断熱容器。
【請求項8】
上記真空断熱要素と上記断熱要素とが上記容器の容器壁の厚さ方向に連ねて配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の断熱容器。
【請求項9】
上記真空断熱要素と上記断熱要素とが上記容器の容器壁に沿った方向に連ねて配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の断熱容器。
【請求項10】
上記断熱要素が、炭酸ガスによって発泡された発泡断熱材を芯材とした真空断熱要素であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の断熱容器。
【請求項11】
上記容器が貯湯タンクであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の断熱容器。
【請求項12】
上記容器が冷水タンクであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の断熱容器。
【請求項13】
上記容器が調理容器であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の断熱容器。
【請求項14】
上記容器が冷蔵室あるいは冷凍室であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の断熱容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−102622(P2011−102622A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258130(P2009−258130)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】