説明

断熱性に優れた硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法

【課題】断熱性に優れた硬質ポリウレタンフォームおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】熱膨張性微粒子が2以上の隣接したセル間に位置して、単位セルの内部または外部に露出されるように形成される、硬質ポリウレタンフォームである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法に関し、より詳細には、断熱性を向上させた硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリウレタンフォームの熱伝導率(λ)は、次のように表される。
λ=λ+λ+λ
λ:ポリマーマトリックスの熱伝導率
λ:セル内の気体の熱伝導率
λ:熱輻射を通じた熱伝導率
上記λ、即ち、気体の熱伝導率は、ポリウレタンフォームのセル内に存在する発泡剤ガス成分の熱伝導率のことであり、ポリウレタンの全熱伝導率100%のうち60〜70%程度を占める。既存のフッ素系化合物発泡剤の場合、地球温暖化指数(GWP、Global Warming Potential)及びオゾン破壊指数(ODP、Ozone Depletion Potential)が高く、環境問題によって発泡剤としての使用が制限されており、代案として炭化水素系のペンタン類が用いられている。しかしながら、シクロペンタンを発泡剤として用いる場合、ガスの熱伝導率(0.012kcal/m.h.℃)がフッ素系ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)を用いた場合のガスの熱伝導率(0.0094kcal/m.h.℃)より高く、セルの大きさも大きいため、断熱性能が低下するという問題がある。
【0003】
上記λ、即ち、固体の熱伝導率は、ポリウレタン樹脂自体の熱伝導率のことであり、ポリウレタンの全熱伝導率100%のうち10〜20%程度を占める。
【0004】
上記λ、即ち、輻射の熱伝導率は、ポリウレタンフォームのセルに対する輻射の熱伝導率のことであり、ポリウレタンの全熱伝導率100%のうち20〜30%程度を占める。セルの大きさが小さくなるにつれて上記熱伝導率が減少する。
【0005】
λにおいては、環境規制によって炭化水素系のシクロペンタンを用いることによって熱伝導率の改善が難しく、λにおいては、ウレタンフォーム自体を代替しないことには熱伝導率の改善は難しい。一方、λにおいて、輻射の熱伝導率を減少させなければならないが、これはウレタンフォームのセルの大きさを減らすことによって可能である。
【0006】
特許文献1には、硬質ウレタンフォームの製造方法に関し、過フッ素化アルケン(perfluorinated alkene)類の核剤を添加してポリウレタンのセルの大きさを調節することによって、硬質ポリウレタンフォームの断熱度を向上させることが開示されている。特許文献2及び特許文献3には、断熱性フォームに用いる熱膨張性微粒子が開示されている。フォームの発泡剤としてハロゲン化炭化水素の使用は環境に有害であるため、非ハロゲン化炭化水素が使用されることが好ましい。しかしながら、シクロペンタン等の炭化水素を用いる場合は、火災の危険があり、火災に対する安全性のために多くのコストが必要とされる。特許文献2、3では、炭化水素が含まれた熱膨張性微粒子を用いることによって火災安全及び発泡剤保管による脅威要素を制御しようとしている。しかしながら、この特許の場合、発火の可能性の高い発泡剤を熱膨張性微粒子に代替する目的で熱伝導率の改善の効果は確認されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許出願第2004−34455号明細書
【特許文献2】米国特許第7230036号明細書
【特許文献3】PCT/US02/16620号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、引用文献1に記載の方法では、核剤を用いることによって熱伝導率の向上が可能であるが、環境に有害なフッ素系核剤によって環境問題に十分に対処することができないという問題がある。また、特許文献2、3に記載の方法では、発火の可能性の高い発泡剤を代替する目的で炭化水素が含まれた熱膨張性微粒子を用いているが、これによる熱伝導率の改善の効果は確認されていない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、断熱性に優れた硬質ポリウレタンフォームおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、熱膨張性微粒子が2以上の隣接したセル間に位置して、単位セルの内部または外部に露出されるように形成される、硬質ポリウレタンフォームを提供する。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、前記熱膨張性微粒子は、セル骨格のストラット(strut)、セル壁(cell wall)、またはセル頂点(cell vertex)を貫通するように形成される。
【0012】
本発明の他の実施形態によれば、前記熱膨張性微粒子は、中空構造を有する。
【0013】
本発明の他の実施形態によれば、前記熱膨張性微粒子は、炭化水素類の発泡化合物を内部に含む高分子粒子が発泡して形成された中空構造の高分子材料を有する。
【0014】
本発明の他の実施形態によれば、前記熱膨張性微粒子の含量は、前記ウレタンフォームを形成するウレタン樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部である。
【0015】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記ウレタンフォームのセルは、発泡剤が発泡して形成されたものである。
【0016】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記発泡剤及び前記熱膨張性微粒子の質量比が1:0.2〜2(発泡剤:熱膨張性微粒子)である。
【0017】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記硬質ポリウレタンフォームのセルの平均直径(セルサイズ)は、100〜400μmである。
【0018】
好ましくは、前記熱膨張性微粒子の発泡前の体積平均粒径が5〜40μmのものを用いることができる。
【0019】
好ましくは、前記熱膨張性微粒子は、炭化水素類の発泡性化合物を含んだ高分子粒子であって、前記炭化水素類の発泡性化合物の沸点が−10〜50℃、高分子粒子のガラス転移温度(Tg)が40〜100℃のものを用いることができる。
【0020】
好ましくは、前記発泡剤として炭化水素類の発泡性化合物、塩化メチレン、ヘキサン、アセトン、水又はこれらの二つ以上の混合物を用いることができる。
【0021】
本発明のさらに他の実施形態によれば、上記の特徴を有する硬質ポリウレタンフォームを適用して冷蔵庫用の断熱材などの用途に有用に用いることができる。
【0022】
上記の課題を解決するために、本発明は、熱膨張性微粒子が分散されたポリオール混合物内に発泡剤を分散させ、当該発泡剤を含み熱膨張性微粒子が分散されたポリオール混合物をイソシアネートと反応させてウレタン反応熱によってウレタン樹脂が発泡して硬質ポリウレタンフォームを製造する方法であって、前記熱膨張性微粒子の含量は前記ポリオール100質量部に対して1〜25質量部であり、前記発泡剤と前記熱膨張性微粒子との混合質量比は1:0.2〜2であることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【0023】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記硬質ポリウレタンフォームの製造方法に用いられる熱膨張性微粒子は、発泡前の体積平均粒径が5〜40μmである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る硬質ポリウレタンフォームの模式図である。
【図2A】実施例2で製造された硬質ウレタンフォームの走査型電子顕微鏡写真である。
【図2B】実施例2で製造された硬質ウレタンフォームの走査型電子顕微鏡写真である。
【図2C】比較例1で製造された硬質ウレタンフォームの走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】熱膨張性微粒子の熱膨張特性(TMA)を図示したグラフである。
【図4】単位セルの構造を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0026】
本発明は、熱膨張性微粒子が2以上の隣接したセル間に位置して、単位セルの内部または外部に露出されるように形成される、硬質ポリウレタンフォームを提供する。
【0027】
前記熱膨張性微粒子は、セル骨格のストラット(strut)、セル壁(cell wall)、またはセル頂点(cell vertex)を貫通するように形成されることもできる。前記熱膨張性微粒子は、中空構造を有することができる。また、前記熱膨張性微粒子は、炭化水素類の発泡化合物を内部に含む高分子粒子が発泡して形成された中空構造の高分子材料を有しうる。
【0028】
前記熱膨張性微粒子は、一定の温度以上で粒子が発泡される物質であって、ポリオールやイソシアネート上に分散させることで、ポリウレタンフォームのセルの形成時に熱膨張性微粒子がセルの大きさの形成を抑制することによって、セルの大きさを調節することができるようにする。
【0029】
上記本発明に係る硬質ポリウレタンフォームは、熱膨張性微粒子がウレタンフォームのセルの間に挟まれて位置してウレタンフォームのセルの大きさを調節することによって、既存の硬質ポリウレタンフォームの構造と全く相違する構造を有する。つまり、本発明に係る硬質ポリウレタンフォームは、熱膨張性微粒子がウレタンフォームのセルの骨格に挟まれて形成され、発泡時に前記熱膨張性微粒子及びウレタンフォームの発泡剤が競争的に発泡されて形成されることによって、所望の大きさを有する硬質ポリウレタンフォームのセルが形成されるようにしたことである。図1は、本発明に係る硬質ポリウレタンフォームの模式図であって、上記のような構造を図示している。球形に示されているものは、発泡された熱膨張性微粒子を示す。
【0030】
図4は、一般の単位セルの構造を模式的に表した図である。図4に示すように、単位セルは、セル壁(cell wall)と、セル壁が当たる支点に支持台(ストラット(strut)(plateau border, edge))が形成され、前記支持台は単位セルの骨格を構成する。前記支持台が当たる支点を、セル頂点(cell vertex)と定義する。本発明の熱膨張性微粒子は、セル骨格の支持台(strut)、セル壁(cell wall)またはセル頂点(cell vertex)を貫通するように形成されうる。
【0031】
このように、前記熱膨張性微粒子は2以上のセル間に挟まれて位置して、ウレタンフォームのセルの大きさを調節する役割を担う。即ち、前記熱膨張性微粒子は、一定の温度の以上で発泡される物質であるが、ポリウレタンフォームの発泡時に前記熱膨張性微粒子とウレタンフォームの発泡剤が競争的に発泡されながら、前記熱膨張性微粒子がセルの大きさを抑制することにより、ウレタンフォームのセルの大きさを調節することができる。
【0032】
このように、本発明に係る硬質ポリウレタンフォームは、そのセルの大きさが調節され、輻射熱を通じた伝導率を低くしてフォーム自体の断熱性を高めることができる。また、従来は、硬質ポリウレタンフォームのセルの大きさを調節するために過フッ素化アルケン類の核剤を用いたが、これは環境規制対象物質に分類される。これに対して、本発明に係る硬質ポリウレタンフォームは、セルの大きさを調節するために、環境にやさしい素材である炭化水素系発泡剤を含む熱膨張性微粒子を用いることができ、環境規制対象物質を用いなくなるので、環境にやさしい。
【0033】
本発明に係る硬質ポリウレタンフォームは、後述する本発明に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法により製造することができる。
【0034】
好ましくは、熱膨張性微粒子の含量は、ウレタンフォームを形成するウレタン樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部である。好ましくは、発泡剤:熱膨張性微粒子の質量比は1:0.2〜2(発泡剤:熱膨張性微粒子)である。ここで、ウレタンフォームを形成するウレタン樹脂の質量は、発泡前の質量を基準とし、前記ウレタン樹脂の質量は、ポリオール混合物とイソシアネートとの合計量である。前記ポリオール混合物の量は、ポリオール、触媒、分散剤、水、発泡剤を含む量である。
【0035】
熱膨張性微粒子の含量が、ウレタンフォームを形成するウレタン樹脂100質量部に対して0.5質量部未満である場合、効果的に発泡ウレタンのセルの大きさが調節できないことがあり、10質量部を超過する場合、密度増加による固体熱伝導率の増加によって断熱度の改善効果が落ちる場合がある。
【0036】
好ましくは、前記発泡剤と前記熱膨張性微粒子との質量比が1:0.2〜2(発泡剤:熱膨張性微粒子)である。発泡剤の含量を上記範囲に調節することで、熱膨張性微粒子の発泡に必要な熱をさらに吸収することができ、熱膨張性微粒子の発泡性を向上させることができる。発泡剤の含量が上記の範囲よりも少ない場合、ウレタンフォームの発泡性が落ちる場合があり、上記の範囲を超過して発泡剤が過量に含まれる場合、過量の発泡剤によってウレタン反応熱の吸収量が多くなって熱膨張性微粒子の発泡性の問題が生じる場合がある。
【0037】
好ましくは、上記熱膨張性微粒子の発泡前の体積平均粒径は、5〜40μmである。
【0038】
本発明に係る硬質ポリウレタンフォームにおいて、好ましくは、セルの平均直径(セルサイズ)は、100〜400μmである。
【0039】
熱膨張性微粒子とは、炭化水素類の発泡性化合物を含む高分子粒子であって、一定の熱を受けると膨張する粒子である。前記炭化水素類の発泡性化合物の沸点及び外郭を形成する高分子材料のガラス転移温度(Tg)に応じて、膨張開始温度(発泡開始温度、Tstart)及び最大膨張温度(最大発泡温度、Tmax)などが決まる。また、炭化水素類の発泡性化合物の含量及び高分子物質のガス透過(gas barrier)性に応じて、最大膨張される変位(Dmax)を調節する。
【0040】
本発明の硬質ポリウレタンフォームにおいて、好ましい熱膨張性微粒子は、含まれる炭化水素類の発泡性化合物の沸点が−10〜50℃である。さらに、好ましくは、その外郭を形成する高分子粒子のガラス転移温度(Tg)が40〜100℃である。発泡性化合物の沸点または高分子粒子のガラス転移温度が上記範囲であれば、硬質ポリウレタンフォームの断熱性を向上させる効果が特に高い。
【0041】
好ましくは、本発明の硬質ポリウレタンフォームに用いることができる熱膨張性微粒子の発泡開始温度(Tstart)は50〜110℃であり、最大発泡温度(Tmax)は60〜140℃であり、より好ましくは70〜120℃であり、最大変位量(Dmax)は、好ましくは500μm以上であり、より好ましくは1000μm以上である。
【0042】
本発明の硬質ポリウレタンフォームに含まれる発泡剤としては、従来のポリウレタンフォームの製造に用いられるシクロペンタン以外にも常温程度の沸点を有する炭化水素類の発泡性化合物を広範囲に用いることができ、具体的には、n−ペンタン、iso−ペンタンなどが挙げられる。さらに、前記発泡剤として、塩化メチレン、ヘキサン、アセトン等のウレタン反応熱を利用する物理的な発泡剤を用いることができ、水がイソシアネートと反応してCOを生じさせる性質を利用する場合などの化学的な発泡剤も用いることができる。さらに、前記発泡剤の二つ以上の混合物を用いることもできる。
【0043】
本発明の硬質ポリウレタンフォームは、向上した断熱特性を有することから、冷蔵庫及び冷凍庫用の断熱材、建築用の断熱材、車両用の断熱材などの用途に有用に用いることができる。
【0044】
さらに、本発明は、熱膨張性微粒子が分散されたポリオール混合物内に発泡剤を分散させ、当該発泡剤を含み熱膨張性微粒子が分散されたポリオール混合物をイソシアネートと反応させてウレタン反応熱によってウレタン樹脂が発泡して硬質ポリウレタンフォームを製造する方法であって、前記熱膨張性微粒子の含量は前記ウレタン樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部であり、前記発泡剤と前記熱膨張性微粒子との混合質量比は1:0.2〜2(発泡剤:熱膨張性微粒子)であることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【0045】
前記ポリオール混合物には、少なくとも1種のポリオールが含まれうる。発泡剤を含み熱膨張性微粒子が分散されたポリオール混合物は、分散剤、触媒及び水をさらに含んでもよい。
【0046】
上記のポリオール、イソシアネートとしては、一般の硬質ウレタン発泡に用いられる材料を用いることができる。ポリオールについては、従来使われているポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、アミン系ポリオールなどが用いられうる。
【0047】
イソシアネートの例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(tolylene diisocyanates)、キシレンジイソシアネート(xylylene diisocyanates)、メタキシレンジイソシアネート(metaxylylene diisocyanates)、ヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート(lysine diisocyanates)、イソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanates)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート(dimer acid diisocyanates)などが挙げられる。
【0048】
触媒(ウレタン反応触媒)としては、ゲル化触媒、発泡触媒、遅延触媒など、ウレタン原料の反応性に基づいて最も効果的だと考えられるものを選択することが好ましい。一般に用いられる触媒としては、3次アミンまたは有機金属化合物が挙げられる。アミン触媒の例としては、モノアミン、ジアミン、トリアミン、環アミン、アルコールアミン、エーテルアミンなどがあり、最もよく用いられる有機金属化合物は有機錫化合物である。
【0049】
分散剤については、特に制限されず、一般にポリウレタンフォームの形成に用いられる分散剤を適用することができる。
【0050】
上記本発明に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法により、前述した構造的特徴を有する本発明に係る硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0051】
上記本発明に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法に用いられる熱膨張性微粒子の発泡前の体積平均粒径は、好ましくは、5〜40μmである。
【0052】
本発明の硬質ポリウレタンフォームにおいて、好ましくは、熱膨張性微粒子は、含まれた炭化水素類の発泡性化合物の沸点が−10〜50℃である。さらに、好ましくは、その外郭を形成する高分子粒子のガラス転移温度(Tg)が40〜100℃である。
【0053】
好ましくは、上記本発明の硬質ポリウレタンフォームに用いることができる熱膨張性微粒子の発泡開始温度(Tstart)は50〜110℃であり、最大発泡温度(Tmax)は60〜120℃であり、最大変位量(Dmax)は500μm以上である。
【0054】
本発明の硬質ポリウレタンフォームに含まれる発泡剤としては、従来のポリウレタンフォームの製造に用いられるシクロペンタン以外にも常温程度の沸点を有する炭化水素類の発泡性化合物を広範囲に用いることができ、具体的には、n−ペンタン、iso−ペンタンなどであり得る。さらに、前記発泡剤として、塩化メチレン、ヘキサン、アセトン等のウレタン反応熱を利用する物理的な発泡剤を用いることができ、水がイソシアネートと反応してCOを生じさせる性質を利用する場合などの化学的な発泡剤も用いることができる。さらにまた、前記発泡剤の二つ以上の混合物を用いることができる。
【0055】
本発明は、上記本発明に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法によって製造された硬質ポリウレタンフォームを提供する。
【0056】
上記本発明に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法により製造された硬質ポリウレタンフォームは、好ましくは、セルの平均直径が100〜400μmである。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。ただし、下記実施例は、説明のためのものであり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
【0058】
<熱膨張性微粒子の調製>
製造例1
塩化ビニリデン(VDC)64g、アクリロニトリル(AN)64g、メチルアクリレート(MA)16g、メチルメタクリレート(MMA)16g、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(Dipentaerythritol hexaacrylate、DPEHA)0.3g、iso−ペンタン16g、n−ペンタン16g及びジ−2−エチルへキシルペルオキシジカーボネート(OPP)1.6gを混合して油性混合液を調製した。
【0059】
イオン交換水450g、塩化ナトリウム108g、コロイダルシリカ(Ludox−AM)36g、ポリビニルピロリジノン0.5g、亜硝酸ナトリウムの1%水溶液1.2gを添加して得られた混合物のpHを3.0に調整して水性分散液を調製した。
【0060】
このように調製した水性分散液と油性混合液とを混合した後、ホモミキサー(HOMOMIXER 2.5、Primix)を利用して5,000rpmの懸濁攪拌速度で分散させて懸濁液を製造した。この懸濁液を容量1lの加圧反応器に入れて窒素置換後、反応初期圧力を3kgf/cmにし、400rpmで攪拌しながら、60℃で20時間重合した。重合生成物を濾過、乾燥して熱膨張性微粒子を調製した。
【0061】
製造例2〜7
製造例1と同様の方法で、その組成及び懸濁工程の条件を下記表1に示すようにして、熱膨張性微粒子を調製した。なお、表1中、MANは無水マレイン酸を表し、EAは酢酸エチルを表す。
【0062】
【表1】

【0063】
上記製造例1〜7で調製された熱膨張性微粒子の粒度を分析して下記表2に示した。
【0064】
熱膨張性微粒子の分析方法:粒度分析
発泡前の粒径:レーザ回折方式の粒度分析器(LS 13320、Bekman coulter)で微粒子の体積平均粒径及び分布(粒径分散指数 C.V、coefficient of variation)を分析した。
【0065】
発泡後の粒径:Tmax温度で3分間オーブンに静置した後、発泡した粒子を光学顕微鏡(BX51、OLYPUS)で観察し、イメージ分析装置(TOMORO scopeeye 3.6、SARAM SOFT)を利用して発泡した微粒子の体積平均粒径を分析した。
【0066】
【表2】

【0067】
実施例1
硬質ウレタンフォームの製造は、ハンドミックス法で垂直モールド(250×250×50mm)で製造した。
【0068】
下記表3に示される混合比(質量部)に応じて、分散剤、触媒、水、ポリオールを先に混合した後、上記製造例1により製造された熱膨張性微粒子を添加して自転・公転型分散器(ARM−310、THINKY Corporation)を利用して分散させた。熱膨張性微粒子が分散された混合物に発泡剤を添加して、ポリオール混合物を調製した。
【0069】
熱膨張性微粒子が含まれたポリオール混合物にイソシアネートを一定の比率(ポリオール混合物:イソシアネート=100:118(質量比))で添加した後、ホモミキサー(Homo Disper 2.5、Primix)装置で5000rpmで5秒間混合した後、垂直モールドに注入して反応させた。
【0070】
【表3】

【0071】
実施例2〜11
前記実施例1と同様の方法で、下記表4及び5の組成比で硬質ウレタンフォームを製造した。表6中、ポリオール、分散剤、触媒、水、発泡剤、MDI(メチレンジフェニルジイソシアネート)の含量は質量部で表した値である。
【0072】
実施例1〜11に対してウレタンフォームのセルの大きさ、フォームの密度、熱伝導率(K−factor)及び独立気泡率を測定して表4及び5に示した。
【0073】
図2A及び図2Bは、実施例2で製造された硬質ウレタンフォームの走査型電子顕微鏡写真である。図2Bは、図2Aと同じ試料を高倍率で観察した画像である。比較のために、図2Cに、後述する比較例1で製造された硬質ウレタンフォームの走査型電子顕微鏡写真を示した。
【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

【0076】
比較例1〜6
上記実施例1と同様の方法で、下記表5の組成比で硬質ウレタンフォームを製造した。
【0077】
比較例1〜6に対してウレタンフォームのセルの大きさ、フォームの密度、熱伝導率(K−factor)及び独立気泡率を測定して表6に記載した。表6中、ポリオール、分散剤、触媒、水、発泡剤、MDIの含量は質量部で表した値である。
【0078】
【表6】

【0079】
上記実施例1〜11及び比較例1〜6の硬質ポリウレタンフォームの物性測定は、次のように行った。
【0080】
<熱伝導率、K−factor>
ハンドミックス法を利用して製造したウレタンフォームを200×200×25(mm)の規格で裁った後、熱伝導率分析器(HC−074、EKO)を用いて熱伝導率を分析した。熱伝導率の分析は、Heat flow形式であり、ASTM−C518に従って分析を行った。
【0081】
<セルサイズ>
走査型電子顕微鏡(S4800、Hitach)を用いてウレタンフォームを50倍で観察した後、イメージ分析装置(TOMORO scopeeye 3.6、SARAM SOFT)を利用してウレタンフォームのセルサイズを体積平均直径を求めて分析した。
【0082】
<フォームの密度>
フォームの密度は、フォームを2cm×2cm×2cmに切断し、この切断したフォームの質量を測定し、密度=質量/体積として計算した。この方法で10個のサンプルを測定し、平均値をフォームの密度の値として用いた。
【0083】
<独立気泡率>
独立気泡率は、ウレタンフォームのセルのうち、クローズドセルの百分率を表す。独立気泡率は、25×25×25の規格で裁ったフォームをUltrapycnomter 1000(Quantachrome)を利用して分析した。
【0084】
<熱膨張特性の分析>
分析装置TMA Q−400(Thermomechanical Analyzer、TA Instrument)を利用して分析した。熱膨張性微粒子を直径6.7mm、深さ4.5mmのアルミニウムファンに1.0mg入れて直径6.5mm、深さ4.0mmのアルミニウムファンで覆った後、試料サンプルを用意した。TMA Expansion Probe法を利用して、Probeが0.05Nの力を加えた状態で、常温〜200℃まで5℃/minの昇温速度で加熱し、Probeの垂直方向の変位量を分析した。
【0085】
膨張開始温度(Tstart):Probeの変位が始まる温度
最大膨張温度(Tmax):Probeの変位が最大の時の温度
最大変位量(Dmax):Probeの変位が最大の時の変位量(μm)
図3は、製造例1〜7の熱膨張性微粒子を、上記のように分析して得られた熱膨張性微粒子の熱膨張特性(TMA)を示したグラフである。
【0086】
<発泡された熱膨張性微粒子の効果>
図2A及び図2Bに示すように、実施例2で作製された硬質ポリウレタンフォームでは、発泡された熱膨張性微粒子が、2以上のセルに挟まれて、セルの内部または外部に露出するように形成される。これによって、セルの大きさが抑制されるため、断熱性の高いポリウレタンフォームが得られうる。実施例1、3〜11についても同様の構造が観察された。一方、図2Cに示すように、比較例1で製造されたポリウレタンフォームは発泡された熱膨張性微粒子を含まないため、セルのサイズが大きくなってしまう。比較例2〜6の場合も、図2Aおよび図2Bのような構造は得られなかった。
【0087】
<発泡温度による効果>
発泡温度が高くなるにつれて熱膨張性微粒子が吸収する熱の量が多くなって発泡性が高くなってセルサイズの減少効果が大きくなってK−factor値に優れていた(実施例1〜3)。
【0088】
熱膨張性微粒子が含まれない場合、発泡温度が高くなるにつれて発泡剤の圧力が高くなってセルが不均一構造となって断熱性が低下した(比較例1〜3)。
【0089】
<熱膨張性微粒子の粒径(実施例2、4〜5、比較例5)>
熱膨張性微粒子の粒径(発泡前)が適正な大きさ(10〜40μm)内に存在する場合(製造例1〜4)、熱膨張性微粒子がウレタンフォーム内に均一に分布してセルの形成を均一に形成してK−factorの減少効果はある(実施例2、4〜5)が、適正な大きさ(10〜40μm)より大きい場合(製造例7)、セルの構造が不均一化によってK−factorが上昇した(比較例5)。
【0090】
<熱膨張性微粒子の組成(実施例2、6)>
熱膨張性微粒子のモノマーの組成が異なっても、熱膨張性特性が同様(製造例1、4であれば、ウレタンフォームに作用されるセルサイズの減少効果も類似であった。
【0091】
<熱膨張性微粒子の発泡温度(実施例7、比較例4)>
熱膨張性微粒子の発泡開始温度(Tstart)及び最大発泡温度(Tmax)が低い場合(製造例5)、相対的に低い温度(80℃)のモールド温度(発泡温度)でも十分に微粒子が発泡されて、K−factor値に優れていた(実施例7)。
【0092】
発泡開始温度(Tstart)が90℃以上、最大発泡温度(Tmax)が140℃以上の熱膨張性微粒子(製造例6)の場合、80℃のモールド温度(発泡温度)で十分に発泡されないことによって、熱膨張性微粒子の導入によるK−factorの改善効果がみられなかった(比較例4)。
【0093】
<熱膨張性微粒子の含量(実施例8〜9、比較例6)>
熱膨張性微粒子の含量に応じて示される最適の区間があり(熱膨張性微粒子含量:ウレタン樹脂に対して0.5〜10質量%)、その含量以上の場合、固体の熱伝導率が増加して断熱度の改善効果がみられなかった。
【0094】
<発泡剤の含量(実施例1、7、10〜11)>
発泡剤含量の調節時、熱膨張性微粒子の発泡に必要な熱をさらに吸収することができて熱膨張性微粒子の発泡性が高くなり、セルサイズの抑制がさらによくなされることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張性微粒子が2以上の隣接したセル間に位置して、単位セルの内部または外部に露出されるように形成される、硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記熱膨張性微粒子は、セル骨格のストラット(strut)、セル壁(cell wall)、またはセル頂点(cell vertex)を貫通するように形成される、請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記熱膨張性微粒子は、中空構造を有する、請求項1または2に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
前記熱膨張性微粒子は、炭化水素類の発泡化合物を内部に含む高分子粒子が発泡して形成された中空構造の高分子材料を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
前記熱膨張性微粒子の含量は、前記ウレタンフォームを形成するウレタン樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
前記ウレタンフォームのセルは、発泡剤が発泡されて形成された、請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項7】
前記発泡剤及び前記熱膨張性微粒子の質量比が1:0.2〜2(発泡剤:熱膨張性微粒子)である、請求項6に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項8】
前記熱膨張性微粒子の発泡前の体積平均粒径が5〜40μmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項9】
前記ウレタンフォームのセルの平均直径が100〜400μmである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項10】
前記熱膨張性微粒子は、炭化水素類の発泡性化合物を含んだ高分子粒子であって、前記炭化水素類の発泡性化合物の沸点が−10〜50℃、高分子粒子のガラス転移温度(Tg)が40〜100℃である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項11】
前記発泡剤は、炭化水素類の発泡性化合物、塩化メチレン、ヘキサン、アセトン、水又はこれらの二つ以上の混合物である、請求項6〜10のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項12】
分散剤、触媒及び水が含まれたポリオール混合物内に熱膨張性微粒子を分散させ、
前記熱膨張性微粒子が分散されたポリオール混合物に発泡剤を添加してポリオール混合物を製造し、
前記熱膨張性微粒子及び発泡剤が含まれたポリオール混合物をイソシアネートと反応させてウレタン反応熱によって樹脂組成物を発泡させて硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記熱膨張性微粒子の含量は、前記ウレタン樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部であり、
前記発泡剤と前記熱膨張性微粒子との混合質量比が1:0.2〜2(発泡剤:熱膨張性微粒子)である、硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項13】
前記熱膨張性微粒子の発泡前の体積平均粒径が5〜40μmである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記熱膨張性微粒子は、炭化水素類の発泡性化合物を含んだ高分子粒子であって、前記炭化水素類の発泡性化合物の沸点が−10〜50℃、高分子粒子のガラス転移温度(Tg)が40〜100℃である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記発泡剤は、炭化水素類の発泡性化合物、塩化メチレン、ヘキサン、アセトン、水又はこれらの二つ以上の混合物である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法で製造された硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項17】
前記ウレタンフォームのセルの大きさの平均直径が100〜400μmである、請求項16に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォームを適用して製造された冷蔵庫用の断熱材。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−111621(P2011−111621A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259468(P2010−259468)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】