説明

断熱性発泡物品及びその調製のための組成物

密度が5〜50g/lであり、a.平均粒子径(寸法)0.5〜100μmの粒子状コークス0.05〜25質量%を含む不透熱性材料で着色した発泡性ビニル芳香族ポリマーのビーズ/顆粒10〜90質量%、b.本質的に白色である発泡性ビニル芳香族ポリマーのビーズ/顆粒90〜10質量%を含む発泡性ビニル芳香族ポリマーの粒子組成物から得ることができる、断熱性発泡物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性発泡物品及びその調製のための組成物に関する。
より具体的には、本発明は、発泡性のビニル芳香族ポリマーにより調製される断熱性発泡物品及びその調製に適した発泡性/発泡粒子の組成物に関する。
さらに具体的には、本発明は、ビニル芳香族ポリマーから製造される発泡物品に関し、5〜50g/l、好ましくは10〜25g/lの密度を有し、熱伝導率25〜50mW/mK、好ましくは30〜45mW/mKで表される優れた断熱特性を有し、これはフィラーの入っていない現行の市販材料、例えばPolimeri Europa S.p.A.社のEXTIR A−5,000、から得られる同等の発泡物品と比較すると概して平均10%以上低い。この物品は日照曝露による変形に対して極めて安定であることが分かる。
本明細書に記載の全ての条件は、明記されていなくても、好ましいと考えられる条件である。
【背景技術】
【0002】
発泡性ビニル芳香族ポリマー及び、この中でも特に発泡性ポリスチレン(EPS)は、さまざまな応用分野に採用可能な発泡物品を製造するのに長く使用されている既知の生成物であり、その中でも最も重要な分野の一つが断熱分野である。
これらの発泡生成物は、密閉環境において、発泡性流体、例えばペンタン又はヘキサンのような脂肪族炭化水素を含浸させたポリマー顆粒を最初に膨張させ、次に金型内に入れた膨張した粒子を圧力及び温度の同時作用により成型することで得られる。粒子の膨張は、一般に、このポリマーのガラス転移温度(Tg)より若干高い温度に維持した蒸気又は別の気体によりもたらされる。
【0003】
発泡ポリスチレンの特定の応用分野は建築業界における断熱であり、一般に平坦なシートの形態で使用される。平坦な発泡ポリスチレンシートは、通常密度約25〜30g/lで使用され、これらの値においてポリマーの熱伝導率が最少となる。この下限値を下回ることは技術的に可能であったとしても、熱伝導率の著しい上昇を招いてそれがシートの厚さを厚くすることによって相殺されなければならないため、有利ではない。この欠点を克服するために、粉状のグラファイト、カーボンブラック又はアルミニウムのような不透熱性の材料をポリマーに充填することが提案されてきた。最終生成物(シート)の中に分散された不透熱性の材料は、実際放射性熱流と相互作用でき、その熱伝達を減少させることにより、それらを含有する発泡材料の断熱効果を上げることができる。このようにして、厚さ増加により相殺されなければならない断熱性低下のない、20g/lの低密度の断熱性物品を調製することができる。
特にグラファイト及び/又はカーボンブラックの不透熱性の材料を充填した、例えば発泡ポリスチレンから作られた断熱性物品の欠点は、日照曝露されると短時間であっても、構成している発泡粒子が崩壊する傾向があることから、変形する傾向があることである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ここで出願人は、まずEPSを不透熱性の材料を用いて改良し、比較的長期間日照曝露したままでも上記欠点がない、断熱性発泡物品を調製できることを発見した。
したがって、本発明の目的は、発泡性ビニル芳香族ポリマーの粒子組成物から得ることができる、密度が5〜50g/l、好ましくは10〜25g/lである断熱性発泡物品に関し、この組成物は以下、
a:粒子状コークス(平均粒子径(寸法)が0.5〜100μm、好ましくは2〜20μmであり、ASTM D−3037−89(BET)に従って測定した表面積が5〜50m2/g、好ましくは5〜20m2/g)を0.05〜25質量%、好ましくは0.5〜15質量%含む不透熱性材料で着色した発泡性ビニル芳香族ポリマーのビーズ/顆粒10〜90質量%、好ましくは20〜80%、
b:本質的に白色である発泡性ビニル芳香族ポリマーのビーズ/顆粒(すなわち実質的に重合工程から取り出されたもの)90〜10質量%、好ましくは80〜20%、
を含む。
【0005】
本発明のもう一つの目的は、断熱性発泡物品の調製に使用するのに適切なビニル芳香族ポリマーのビーズ/顆粒の組成物に関し、この組成物は以下、
a:粒子状コークス(平均粒子径(寸法)が0.5〜100μm、好ましくは2〜20μmであり、ASTM D−3037−89(BET)に従って測定した表面積が5〜50m2/g、好ましくは5〜20m2/g)を0.05〜25質量%、好ましくは0.5〜15%含む不透熱性材料で着色した発泡性/発泡ビニル芳香族ポリマーのビーズ/顆粒10〜90質量%、好ましくは20〜80%、
b:本質的に白色である発泡性/発泡ビニル芳香族ポリマーのビーズ/顆粒90〜10質量%、好ましくは80〜20%、
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される用語「ビニル芳香族ポリマー」は、原則として、下記の一般式に相当する少なくとも一つのモノマーから得られる重合生成物(ポリマー及び/又はコポリマー)を意味する。
【化1】

ここでRは水素又はメチル基であり、nは0又は1から5の整数であり、及びYは塩素又は臭素のようなハロゲン又は1から4の炭素原子を有するアルキル又はアルコキシル基である。
【0007】
上記一般式で特定されるビニル芳香族モノマーの例として、スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ブチルスチレン、ジメチルスチレン、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−及びペンタ−クロロスチレン、ブロモスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレンなどが挙げられる。好ましくは、ビニル芳香族モノマーは、スチレン及びα−メチルスチレンである。
一般式(I)を有するビニル芳香族モノマーは単独又はその他の共重合性モノマーとの最高で50質量%までの混合物として使用することができる。共重合性モノマーの例は、α−メチルスチレン、(メタ)クリル酸、(メタ)クリル酸のC1−C4アルキルエステル(例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート)、(メタ)クリル酸のアミド及びニトリル(例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル)、ブタジエン、エチレン、ジビニルベンゼン、無水マレイン酸等である。好ましくは、共重合性モノマーは、α−メチルスチレン、アクリロニトリル及びメチルメタクリレートである。
【0008】
本明細書及び特許請求の範囲において使用の用語、ビニル芳香族ポリマーの「ビーズ/顆粒」は、原則として、本発明の目的である断熱性発泡物品の調製に使用するビニル芳香族ポリマーの発泡前及び後における形態学上の構造又は形態を意味する。
特に、用語「ビーズ」は、原則として、前に定義したビニル芳香族モノマー中に、不透熱性フィラー及び用いる可能性のある他の添加剤を溶解/分散し、次いでモノマー混合物を水へ懸濁して当業者に既知の全ての重合添加剤(中でも発泡剤)存在下で重合することを含む懸濁液の調製工程から、主に得られるビニル芳香族ポリマーの形態を意味する。このように得られる「ビーズ」は、発泡前及び後において実質的に球状である。
用語「顆粒」は、原則として、直接押出調製工程、すなわち、ビニル芳香族ポリマーの顆粒、発泡剤、及び例えば不透熱性フィラー(それ自体又はマスターバッチの形態として)のような添加剤の混合物を直接押出機に投入する工程、から主に得られるビニル芳香族ポリマーの形態を意味する。あるいは、そのポリマーは、重合を行う設備で既に溶融状態であり、続いて添加剤及び発泡剤が添加される。関連混合物が顆粒調製用のダイを通過する。後者は、特に発泡前において、形状因子SFで表現される実質的に回転楕円体の形態をしている。
SF=36・Π・V2/A3
ここで、Vは複合発泡性粒子の体積、及びAはそれに対応する表面積であり、SFは0.60〜0.99、好ましくは0.70〜0.98である。
【0009】
本発明によると、断熱性発泡物品及びそれらの調製のための関連組成物は、粒子形態のコークスを含む不透熱性材料を含有する発泡性/発泡ビニル芳香族ポリマーのビーズ/顆粒を10〜90質量%含有することを特徴とする。
コークスは、0.5〜100μm、好ましくは2〜20μmの粉末粒径(MT50)及びASTM D−3037−89(BET)に従って測定される表面積が5〜50m2/g、好ましくは5〜20m2/gである、細かく分割された粉末として入手可能である。寸法(MT50)は、レーザー式粒度計によって測定され、より小さい直径を有する50質量%の粒子及びより大きい直径を有する50質量%の粒子に対応する直径である。
このコークスは有機物の熱分解によって生成され、炭化工程の際少なくとも部分的に液状又は液晶状態を経る。始めの有機物は、好ましくは石油、石炭又は亜炭がよい。
【0010】
本発明の目的である顆粒中の重合組成物の調製に用いるコークスは、より好ましくは、従来から重質残留留分として知られる、石油の分留から得られる高沸点炭化水素の留分の炭化生成物である。特に、コークスは重質残留留分のコーキングを根幹として得られ、この作業は高温で行われ、若干の軽質留分と固体(石油コークス)が再び生成される。このようにして得られた石油コークスを1,000〜1,600℃の温度範囲で焼成する(か焼コークス)。
芳香族成分が豊富な重質残留留分を使用する場合、コークスは1,800〜2,200℃で焼成後得られ、針状結晶構造を有する(ニードルコークス)。
【0011】
コークス、製造方法及び市販の様々なグレード(グリーンコークス、石炭由来のピッチコークス、ディレードコークス、フルードコークス、ニードルコークス、プレミアムコークス、か焼コークス、ショット、スポンジ等)の特性評価についてのさらに詳しい情報は、オンライン、goldbook.iupuac.orgのウェブサイト又はPure Appl. Chem., 1995, vol. 67, Nr. 3の473〜506頁の「固体炭素の記述のための推奨される学術用語(IUPAC Recommendations 1995)」にて入手可能である。
本発明によれば、ビニル芳香族ポリマーに添加されるコークスの不透熱性フィラーは、ポリマー(a)に対して計算量で最大で5質量%まで、例えば0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜4.5%のグラファイト及び/又はカーボンブラックをそれぞれ含むことができる。グラファイト(天然又は合成)は、平均粒子径(MT50)0.5〜50μm、表面積5〜50m2/gを有することができる。カーボンブラックは、平均粒子径10〜1,000nm、表面積5〜40m2/gを有することができる。
【0012】
本発明によれば、断熱性発泡物品及びその調製の為の関連組成物は、これらが本質的に白色である発泡性/発泡ビニル芳香族ポリマー(すなわち、それ自体)のビーズ又は顆粒を90〜10質量%を含む点で特徴付けられる。したがってこれは懸濁液又は塊状の重合過程から直接得られる生成物である。本発明の別の実施態様によれば、タイプ(b)のビニル芳香族ポリマーの発泡性/発泡ビーズ又は顆粒は、従来の添加剤に加えて、無機フィラー0.05〜25質量%、好ましくは0.5〜10%を含有することができる。この無機フィラーは、屈折率が1.6より大きく、「色指数」(Society of Dyers and Colourists発行の第三版、1982)において定義される白色度が22以下、好ましくは21から5の間であり、0.1〜50μmの粒子径(MT50)を有する、二酸化チタン、硫酸バリウム、シリコン、タルク、炭酸カルシウム等である。
【0013】
一般的に従来材料と一緒に使用される安定化剤、核剤、難燃システム、帯電防止剤、離型剤等の慣用添加剤を、発泡性/発泡ビニル芳香族ポリマー(a)及び/又は(b)のビーズ/顆粒に添加することができる。特に、ビーズ/顆粒は、ポリマー(a)及び/又は(b)に対して0.1〜8%の自己消火性臭素化添加剤(少なくとも30質量%の臭素を含有する)及び、ポリマー(a)及び/又は(b)に対して0.05〜2質量%の少なくとも一つのC-C又はO−Oの不安定結合を含有する相乗剤を含む難燃システムを含むことができる。臭素化添加剤の例として、ヘキサブロモシクロドデカン、ペンタブロモモノクロロシクロヘキサン、ペンタブロモフェニルアリルエーテル、ビス−テトラブロモビスフェノールAアリルエーテル(後者は市場においてChemtura社の「chemtura BE51」として知られている)のような臭素化脂肪族化合物、臭素化脂環式化合物、臭素化芳香族化合物が挙げられる。使用できる相乗剤としては、過酸化ジクミル、クメンヒドロペルオキシド、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルブタン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキシノナンが挙げられる。
全ての添加剤、特に難燃システムは、ビーズ/顆粒(a)のポリマーにのみ又はビーズ/顆粒(b)のポリマーにのみ添加することができる。
【0014】
最後に、発泡性ビニル芳香族ポリマー(a)及び(b)のビーズ又は顆粒は、本発明によれば、1〜10質量%の発泡添加剤を含み、当該添加剤は当業者によく知られた技術により、懸濁液又は連続塊状である調製工程中のポリマー・マトリックスの中へ加えられる。この発泡剤は、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン又はこれらの混合物のような3から6の炭素原子を含む脂肪族又は脂環式の炭化水素化合物、ジクロロジフルオロメタン、1,2,2−トリフルオロエタン、1,1,2−トリフルオロエタンのような1から3の炭素原子を含む脂肪族炭化水素のハロゲン化誘導体、二酸化炭素、水及びエタノールから選択される。
【0015】
本発明の目的である断熱性発泡物品は、10〜90質量%、好ましくは20〜80%の焼結発泡粒子(a)及び90〜10質量%、好ましくは80〜20%の焼結発泡粒子(b)を含む。これらの物品は、密度が5〜50g/l、好ましくは10〜25g/lであり、熱伝導率25〜50mW/mK、好ましくは30〜45mW/mKで表される優れた断熱性能(フィラーの入っていない現行の市販材料、例えばPolimeri Europa S.p.A.社のEXTIR A−5000、から得られる同等の発泡物品と比較すると概して平均10%以上低い)によって特徴付けられる。
この特性により、断熱性物品は、大幅に材料を節約して調製することができ、例えばシートは、従来のフィラーの入っていないポリマーによって製造されたシートよりも厚さを薄く調製でき、結果として空間及び生成物の節約をしながら調製することができる。
【0016】
本発明の発泡物品の調製に使用するタイプ(a)及びタイプ(b)両方の発泡性ビーズ/顆粒は、ビニル芳香族ポリマー及び/又はコポリマーからなり、それらの平均分子量Mwは50,000〜300,000、好ましくは70,000〜220,000である。ビーズは、例えばJournal of Macromolecular Science, Review in Macromolecular Chemistry and Physics C31(263)215−299(1991)において知られる、水性懸濁液における重合工程を利用することによって調製することができる。もう一つの方法として、顆粒は、押出し又は連続塊状の工程で調製することができ、国際特許出願WO03/53651に示される方法がある。
重合の最後において、懸濁液、押出又は連続塊状いずれにおいても、実質的に球状の発泡性ポリマーのビーズ/顆粒が得られ、平均直径0.2〜2mm、好ましくは1〜1.5mmであり、中に不透熱性フィラー、ポリマー(a)、及び用いる可能性のある無機フィラー、ポリマー(b)が均等に分散している。
以下にいくつかの例示的かつ非限定的な実施例を、本発明のよりよい理解と具体化のために示す。
【実施例】
【0017】
比較例1
密閉撹拌容器へ、水150質量部、ピロリン酸ナトリウム0.2部、スチレン100部、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート0.25部、過安息香酸tert−ブチル0.25部及びCalcinted Coke 4357(Asbury Graphite Mills Inc.社(米国)により販売され、約5μmの粒子径MT50%、約20m2/gのBETを有する)6部から成る混合物を入れる。EBCD(ヘキサブロモシクロドデカン)1%及びDCP(過酸化ジクミル)0.3%をその後この混合物中へ加える。混合物を撹拌しながら90℃まで加熱する。
90℃で2時間撹拌後、10%ポリビニルピロリドン溶液4部を加える。この混合物を、さらに2時間にわたって依然として撹拌しながら100℃まで加熱し、n-ペンタン及びi-ペンタンの70/30の混合物7部を加え、混合物全体をさらに4時間にわたって125℃まで加熱した後、冷却してバッチを取り出す。
【0018】
続いてこのように生成された発泡性ポリマーの顆粒を回収し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドと縮合させた脂肪アルコールから成る非イオン性界面活性剤(Huntsman社より商品名Empilan2638で販売)0.05%を含有する脱塩水で洗浄する。次にこの顆粒に、グリセリンベースのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの縮合物である非イオン界面活性剤(ダウ社よりVoranol CP4755で販売)0.02%を添加して温風流で乾燥し、続いて篩にかけて1〜1.5mmの直径の顆粒群を分離する。
この顆粒群は全体の40%を占め、30%は0.5〜1mmの顆粒群、15%は0.2〜0.5mmの顆粒群、及び15%が1.5〜3mmの粗い顆粒群であると判明した。
【0019】
次にモノステアリン酸グリセリル0.2%及びステアリン酸亜鉛0.1%を1〜1.5mmの顆粒群に添加する。
生成物を、100℃の蒸気で予備発泡させ、1日かけてエージングし、ブロック(寸法1040×1030×550mmを有する)の成型に使用する。
次にブロックを切断して平坦なシートを準備し、これについて熱伝導率を測定する。70℃の炉内での滞留5日間後に測定した熱伝導率は31.0mW/mKであったのに対し、対照としての従来品(EXTIR A−5000)で作製した同じ密度(17g/l)を有するシートの熱伝導率は40mW/mKであった。
数枚の平坦なシート(寸法1040×1030×40mm)を8月に2日間マントゥアにて日照曝露した。表面温度は90℃に達し、シート変形(寸法960×980×40mm)を引き起こした。テストサンプルは規定DIN 4102に準拠した燃焼試験用のシートから採取した。このテストサンプルは当該試験に合格した。
【0020】
比較例2
ポリスチレンN1782(Polimeri Europa社により製造)68部、エチレンビスステアラミド2部、Calcinated Coke4357(比較例1で使用)30部を、二軸押出機の中で混合する。押し出された生成物を下記に説明する本発明の発泡性組成物を製造する際のマスターバッチとして使用する。
エチルベンゼン80部、スチレン699.6部、α−メチルスチレン50.2部及びジビニルベンゼン0.2部を撹拌反応器に投入する。
上述したマスターバッチ170部をこの反応器へ加え、溶解する(合計1000部)。反応は125℃で平均滞留時間2時間行う。出口におけるこの液体組成物を、第二反応器に投入し、反応を135℃、平均滞留時間2時間で完了させる。
得られた転化率72%である組成物(以下「組成物(A)」という)を、240℃に加熱し、続いて溶媒や残存モノマーを取り除くため脱臓装置に入れる。この結果得られた重合組成物は、ガラス遷移温度104℃、メルトフローインデックス(MFI200℃、5kg)8g/10分、分子量Mw200,000g/mol及びMw/Mn比2.8によって特性付けられ、ここでMwは重量平均分子量及びMnは数平均分子量である。
【0021】
脱臓装置から取り出した組成物(A)を熱交換器へ入れ、温度を170℃まで下げる。
ポリスチレンN2982(Polimeri Europa社により製造)126部、BR−E 5300(安定化ヘキサブロモシクロドデカン、Chemtura社により販売)20.9部及びPerkadox 30(商標)(2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、Akzo Nobel社より販売)3.1部、合計150部(添加剤)を第二の二軸押出機に投入する。ギアポンプでこの溶融添加剤の供給圧を260barg(ゲージ圧バール)まで上昇させる。その後n−ペンタン(75%)及びイソペンタン(25%)の混合物47部を加圧して添加剤の供給部へ注入する。混合は静的ミキサを使用して約190℃で完了させる。このようにして得られた組成物を以下「組成物(B)」とする。
【0022】
組成物(B)を、熱交換器を通した組成物(A)850部に加える。これらの材料を静置混合部材によって計測平均滞留時間7分間混合する。次にこの組成物をダイに入れて直径0.5mmの多数の穴より押し出し、直ちに水の噴流によって冷却し、一連の回転刃により切断する(米国特許7,320,585に記載の方法による)。
造粒装置内の圧力は5barg(ゲージ圧バール)であり、平均直径1.2mmを有する顆粒が得られるようにせん断速度を選択する。水は冷却噴霧液として用い、窒素をキャリアガスとして用いる。
こうして得られた顆粒を遠心分離式乾燥機にて乾燥した後、比較例1と同様のコーティング剤を用いて被覆する。
【0023】
顆粒の発泡及び成型は比較例1で述べたものと同様に行った。密度16g/lにおける熱伝導率は31mW/mKであることが判明した。
数枚の平坦なシート(寸法1040×1030×40mm)を8月に2日間マントゥアにて日照曝露した。表面温度は92℃に達し、シート変形(寸法940×960×40mm)を引き起こした。テストサンプルは規定DIN 4102に準拠した燃焼試験用のシートから採取した。このテストサンプルは当該試験に合格した。
【0024】
比較例3
コークスを加えずに比較例1を繰り返す。この基剤を用いて調製したブロックを平坦なシートに切断し、これについて熱伝導率を測定した。70℃の炉内での滞留5日間後に測定した熱伝導率は、密度15g/lにおいて41mW/mKであった。
数枚の平坦なシート(寸法1040×1030×40mm)を8月に2日間マントゥアにて日照曝露した。表面温度は35℃に達し、シートの変形はなかった(寸法は変化がないままで1040×1030×40mmであった)。
【0025】
実施例1
比較例1に従い調製した発泡ポリスチレンビーズ(コークス6%)50質量%と比較例3に従い調製した発泡ポリスチレンビーズ50質量%を混合することにより、シートを調製する。
70℃の炉内での滞留5日間後に測定した熱伝導率は、密度16g/lにおいて35mW/mKであった。数枚の平坦なシート(寸法1040×1030×40mm)を8月に2日間マントゥアにて日照曝露した。表面温度は40℃に達し、シートの変形はなかった(寸法は変化がないままで1040×1030×40mmであった)。
【0026】
実施例2
比較例1に従い調製した発泡ビーズを70質量%使用することにより実施例1を繰り返した。70℃の炉内での滞留5日間後に測定した熱伝導率は、密度16g/lにおいて33mW/mKであった。数枚の平坦なシート(寸法1040×1030×40mm)を8月に2日間マントゥアにて日照曝露した。表面温度は45℃に達し、シートの顕著な変形はなかった(寸法は変化がないままで1038×1029×40mmであった)。
【0027】
実施例3
比較例3に従い調製した発泡ビーズ30質量%と比較例2に従い調製した発泡ビーズ70質量%を混合することにより実施例2を繰り返した。70℃の炉内での滞留5日間後に測定した熱伝導率は、密度16g/lにおいて32.5mW/mKであった。数枚の平坦なシート(寸法1040×1030×40mm)を8月に2日間マントゥアにて日照曝露した。表面温度は50℃に達し、シートの顕著な変形はなかった(寸法は変化がないままで1037×1028×40mmであった)。テストサンプルは規定DIN 4102に準拠した燃焼試験用のシートから採取した。このテストサンプルは当該試験に合格した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性発泡物品であって、密度が5〜50g/lであり、以下、
a:平均粒子径(寸法)0.5〜100μm及びASTM D-3037−89(BET)に従って測定される表面積5〜50m2/gである粒子状コークス0.05〜25質量%を含む不透熱性材料で着色した発泡性ビニル芳香族ポリマーのビーズ/顆粒10〜90質量%、
b:本質的に白色である発泡性ビニル芳香族ポリマーのビーズ/顆粒90〜10質量%、
を含む発泡性ビニル芳香族ポリマーの粒子組成物から得ることができる物品。
【請求項2】
前記本質的に白色である顆粒(b)が、白色度が22より低く、及び粒子径が0.1〜50μmである性質を持つ無機フィラー0.05〜25質量%を含有する、請求項1に記載の発泡物品。
【請求項3】
少なくとも30質量%の臭素を含有する臭素化自己消化性添加剤を前記ポリマー(a)及び/又は(b)に対して0.1〜8質量%及び少なくとも一つのC-C又はO-Oの弱い結合を含有する相乗剤を前記ポリマー(a)及び/又は(b)に対して0.02〜2質量%含む難燃システムを含む、請求項1又は2に記載の発泡物品。
【請求項4】
断熱性発泡物品の調製に使用するのに適切なビニル芳香族ポリマーのビーズ/顆粒の組成物であって、以下、
a:平均粒子径(寸法)0.5〜100μm及びASTM D-3037−89(BET)に従って測定される表面積5〜50m2/gである粒子状コークス0.05〜25質量%を含む不透熱性材料で着色した発泡性/発泡ビニル芳香族ポリマーのビーズ/顆粒10〜90質量%、
b:本質的に白色である発泡性/発泡ビニル芳香族ポリマーのビーズ/顆粒90〜10質量%、
を含む組成物。
【請求項5】
前記本質的に白色であるビーズ/顆粒(b)が、白色度が22より低く、及び粒子径(寸法)が0.1〜50μmである性質を持つ無機フィラー0.05〜25質量%を含有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも30質量%の臭素を含有する臭素化自己消化性添加剤を前記ポリマー(a)及び/又は(b)に対して0.1〜8質量%及び少なくとも一つのC-C又はO-Oの弱い結合を含有する相乗剤を前記ポリマー(a)及び/又は(b)に対して0.02〜2質量%含む難燃システムを含む、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
タイプ(a)及び(b)両方の前記発泡性ビーズ/顆粒が、平均分子量Mw50,000〜300,000を有するビニル芳香族ポリマー及び/又はコポリマーから成る、請求項4〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記発泡性ビーズ/顆粒が、実質的に平均直径0.2〜2mmの球状であり、その内部に不透熱性フィラー、ポリマー(a)及び用いる可能性のある無機フィラー、ポリマー(b)が均一に分散されている、請求項4〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
ビーズ/顆粒(a)の前記発泡性ポリマー及びビーズ/顆粒(b)の前記発泡性ポリマーが懸濁液、押出成型又は塊状で調製される、請求項1〜8のいずれかに記載の物品及び組成物。
【請求項10】
ビーズ/顆粒(a)の前記発泡性ポリマーのみが前記難燃システムを含有する、請求項1〜9のいずれかに記載の物品及び組成物。
【請求項11】
ビーズ/顆粒(b)の前記発泡性ポリマーのみが前記難燃システムを含有する、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。

【公表番号】特表2012−532978(P2012−532978A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520114(P2012−520114)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001630
【国際公開番号】WO2011/007228
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(508128303)ベルサリス、ソシエタ、ペル、アチオニ (24)
【氏名又は名称原語表記】VERSALIS S.P.A.
【Fターム(参考)】