説明

断熱材の廃材の処理方法

【課題】粉塵の発生を効果的に防止できる断熱材の廃材の処理方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る廃材の処理方法は、多孔質材料又は繊維質材料から構成される断熱材を粉砕して得られた、前記断熱材の廃材を準備する工程10と、前記廃材を湿潤化液が浸透可能な容器に収容する工程20と、前記容器の外から、前記容器内の前記廃材に前記湿潤化液を浸透させる湿潤化工程30と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材の廃材の処理方法に関し、特に、廃材からの粉塵発生の防止に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質材料又は繊維質材料から構成される断熱材は、当該断熱材の老朽化等の理由により、そのまま又は破砕され、廃材として回収され、処理される。このような廃材は、例えば、特許文献1に記載されているように、圧縮により、その体積を減じられて、処理される。
【0003】
また、近年、このような断熱材の廃材は、建築材料等の新たな構造物の原料として再利用することが求められている。この場合、廃材は、施工されていた場所から、他の場所に輸送され、保管されることになる。
【0004】
しかしながら、多孔質材料又は繊維質材料から構成された断熱材の廃材は、比重が非常に小さく、粉塵が飛散しやすい。このため、従来、例えば、堆積した廃材に水をかけることにより、当該廃材を湿潤化し、粉塵の飛散を防止することが行われていた。
【特許文献1】特開平2−144183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、廃材の堆積物に水をかける方法においては、例えば、水に濡れた一部の廃材が瞬時に流動性を獲得することにより、当該堆積物が崩れてくるといった問題があった。
【0006】
また、例えば、いったん堆積物に水をかけても、その後、当該堆積物の表面が再び乾燥するため、繰り返し水をかける作業を行う必要があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、粉塵の発生を効果的に防止できる断熱材の廃材の処理方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る廃材の処理方法は、多孔質材料又は繊維質材料から構成される断熱材を粉砕して得られた、前記断熱材の廃材を準備する工程と、前記廃材を湿潤化液が浸透可能な容器に収容する工程と、前記容器の外から、前記容器内の前記廃材に前記湿潤化液を浸透させる湿潤化工程と、を含むことを特徴とする。本発明によれば、粉塵の発生を効果的に防止できる断熱材の廃材の処理方法を提供することができる。
【0009】
また、前記湿潤化工程において、前記容器を、前記湿潤化液中に浸漬することにより、前記容器内の前記廃材に前記湿潤化液を浸透させることとしてもよい。こうすれば、粉塵の発生をより効果的に防止できる。また、前記容器は、織布又は不織布から形成された袋であることとしてもよい。こうすれば、粉塵の発生を効果的に防止しつつ、廃材を処理する上での作業性を向上させることができる。また、前記湿潤化工程において前記湿潤化液が浸透した前記廃材を、前記容器に収容された状態で輸送する工程をさらに含むこととしてもよい。こうすれば、粉塵の発生を効果的に防止しつつ、廃材を簡便に輸送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る廃材の処理方法(以下、「本方法」という。)に含まれる主な工程を示すフロー図である。図1に示すように、本方法は、準備工程10と、収容工程20と、湿潤化工程30と、輸送工程40と、を含む。
【0011】
準備工程10においては、本方法において処理の対象となる廃材を準備する。この廃材は、多孔質材料又は繊維質材料から構成される断熱材を粉砕することにより得られるものであれば特に限られない。
【0012】
多孔質材料から構成される断熱材としては、例えば、ケイ酸カルシウムから形成された多孔質保温材を挙げることができる。繊維質材料から構成される断熱材としては、例えば、ロックウール又はガラスウールから形成された繊維質保温材を挙げることができる。
【0013】
これらの断熱材は、外部との熱の移動を抑制すべき構造体に施工される。すなわち、断熱材が保温材である場合には、当該保温材は、例えば、加熱された流体を輸送するための配管の外表面を覆うように設けられる。
【0014】
そして、断熱材の廃材は、当該断熱材を施工されている構造物から剥離して粉砕することにより得ることができる。すなわち、断熱材の廃材は、例えば、構造物から剥離された廃材を、粉砕機により粉砕したものとすることができる。
【0015】
なお、断熱材の廃材に含まれる各破片は、その比重が極めて小さい。このため、廃材を粉砕機により粉砕した後においても、各破片は、その内部に独立孔や繊維間の空隙が残った所定以上の大きさの破片となる。
【0016】
収容工程20においては、準備工程10で準備された廃材を、湿潤化液が浸透可能な容器に収容する。湿潤化液は、廃材に浸透することにより当該廃材を湿潤化して、当該廃材からの粉塵の発生を防止することのできる溶液であれば特に限られない。すなわち、湿潤化液の組成は、湿潤化すべき廃材の表面特性に応じて適宜決定することができる。
【0017】
例えば、表面が親水性の断熱材から得られた廃材を処理の対象とする場合には、湿潤化液として水を用いることができる。また、例えば、表面が撥水性の断熱材から得られた廃材を処理の対象とする場合には、湿潤化液として、界面活性剤を含有する水溶液を用いることができる。
【0018】
廃材を収容する容器は、当該廃材を漏らすことなく内部に保持でき、且つ湿潤化液が当該容器を構成する壁を通過して当該容器の外側から当該容器の内側まで浸透できるものであれば特に限られない。
【0019】
具体的に、この容器としては、例えば、廃材に含まれる断熱材の破片を通過させず、且つ湿潤化液が浸透可能な織布又は不織布から構成された、柔軟性のある袋を好ましく用いることができる。このような袋を用いることにより、廃材の回収、廃材への湿潤化液の浸透、廃材の輸送といった各工程における廃材の取り扱いが容易になり、作業性を向上させることができる。
【0020】
湿潤化工程30においては、収容工程20において廃材を入れた容器の外から、当該容器内の当該廃材に当該湿潤化液を浸透させる。すなわち、この湿潤化工程30においては、廃材を収容する容器の外表面を湿潤化液と接触させることにより、当該湿潤化液を当該容器内に浸透させ、さらには当該容器内の廃材に浸透させる。
【0021】
ここで、容器内に湿潤化液を浸透させる方法は特に限られない。具体的に、例えば、廃材を収容した容器を、湿潤化液中に浸漬する方法を用いることができる。
【0022】
すなわち、この場合、まず、廃材の入った容器を収容できる大きさ及び形状の水槽を準備する。さらに、この水槽中に、廃材の入った容器の全体を浸漬するために十分な量の湿潤化液を溜める。そして、廃材を収容した容器を、水槽内の湿潤化液中に浸漬する。
【0023】
この容器を、湿潤化液中で所定時間保持することによって、当該容器の外から中に当該湿潤化液を効率よく浸透させることができる。すなわち、この場合、湿潤化液中に保持された容器には、当該容器を囲む湿潤化液により所定の大きさの水圧がかかる。このため、容器外の湿潤液を、当該容器内に効率よく流入させることができる。そして、その結果、容器内の廃材に湿潤化液を十分に浸透させることができる。
【0024】
このように容器を湿潤化液中に浸漬する場合には、当該湿潤化液中の水圧を利用して、当該容器内に当該湿潤化液を効率よく浸透させ、当該容器内の廃材を効率よく湿潤化することができる。
【0025】
しかも、廃材は容器内に封じ込められている。このため、廃材を湿潤化する過程において、当該廃材から粉塵が発生することを効果的に防止することができる。
【0026】
また、湿潤化工程30において容器内に湿潤化液を浸透させる方法としては、例えば、廃材を収容した容器の外表面に、シャワー等により湿潤化液を浴びせる方法を用いることもできる。この場合においても、廃材からの粉塵の発生を効果的に防止しつつ、容器内の廃材を効果的に湿潤化することができる。
【0027】
輸送工程40においては、湿潤化工程30において湿潤化液が浸透した廃材を、容器に収容された状態で輸送する。すなわち、この輸送工程40においては、容器外から浸透した湿潤化液と、当該湿潤化液が浸透した廃材と、を収容する容器をそのまま輸送する。
【0028】
具体的に、例えば、湿潤化工程30において、廃材が収容された容器を、湿潤化液中に浸漬した場合には、まず、当該湿潤化液中に浸漬された容器を、当該湿潤化液から引き上げて、引き上げられた当該容器を輸送する。
【0029】
ここで、輸送に先立って、湿潤化液から引き上げられた容器に保持されている湿潤化液のうち、余分な湿潤化液を除去する水切り処理を行うこともできる。この水切り処理は、例えば、フォークリフトやクレーンを用いて、水槽内の湿潤化液から容器を引き上げるとともに、引き上げられた当該容器を、所定時間、空中に吊り下げたまま維持することにより行うことができる。
【0030】
ここで、本方法においては、上述のとおり、輸送する容器は、廃材と、当該廃材に浸透した所定量の湿潤液と、を一体的に収容している。したがって、例えば、容器に収容されている廃材のうち、外気に近い、当該容器の表面付近にある一部の廃材から水分が蒸発したとしても、当該容器の深部に保持されている湿潤化液が当該表面付近に順次浸透してくる。
【0031】
すなわち、この容器は、湿潤化液を蓄えて、その内部から外表面付近に必要に応じて湿潤化液を供給するリザーバ−の役割を果たすことができる。このため、容器を輸送し、又は保管している間、当該容器に収容された廃材の乾燥を効果的に防止して、当該廃材の湿潤化状態を効果的に維持することができる。したがって、本方法によれば、廃材を輸送及び保管する過程において、当該廃材からの粉塵の発生を極めて効果的に防止することができる。
【0032】
このように、本方法によれば、断熱材の廃材の湿潤化、輸送、及び保管といった、当該廃材を処理する一連の工程において、当該廃材からの粉塵の発生を効果的に防止することができる。
【0033】
次に、本方法の具体的な実施例について説明する。
【0034】
[実施例]
本実施例においては、撥水性の多孔質保温材の廃材を処理の対象とした。すなわち、図2に示すように、工場の配管等に施工されていた多孔質保温材を剥離し、さらに粉砕機で粉砕することにより、当該多孔質保温材の廃材Wの堆積物を得た。
【0035】
ここで、この多孔質保温材は、ケイ酸カルシウムのゾノライト結晶から形成されたものであった。このため、得られた廃材Wに含まれる各破片の内部には、当該ゾノライト結晶の中空部分に由来する微小な孔が多数残されていた。
【0036】
そこで、図3に示すように、粉砕後の廃材Wを、一対のローラR1,R2を備えた圧縮ローラにより圧縮して、当該廃材Wに含まれる破片に亀裂を形成した。すなわち、図3に示す矢印の指す方向に回転する一対のローラR1,R2の間に、ベルトコンベアCによって廃材Wを少しずつ導入し、各破片に亀裂を形成できる圧力で当該廃材Wを順次圧縮し、圧縮された廃材Wの堆積物を得た。
【0037】
この圧縮によって、廃材Wに含まれる破片のうち大部分には、その外表面から、内部に形成されている孔まで延びる亀裂を形成することができた。こうして得られた、圧縮後の廃材Wの乾燥状態における重量は、168kgであった。
【0038】
次に、図4に示すように、この廃材Wを、透水性の織布から形成された袋であるフレキシブルコンテナバッグ(以下、「フレキシブルバッグB」という。)に収容した。このフレキシブルバッグBの容積は1mであった。また、フレキシブルバッグBに収容された廃材Wの体積は約0.56mであった。
【0039】
さらに、本実施例においては、図5に示すように、廃材Wを収容したフレキシブルバッグBを、水槽T内の湿潤化液L中に浸漬した。この水槽Tは、幅が1.9m、奥行きが1.15m、高さが1.2mの直方体形状であった。湿潤化液Lは、界面活性剤と水とを混合して調製し、水槽T内に貯留された体積は約1.1mであった。また、図5に示すように、フレキシブルバッグBの全体を湿潤化液L中に浸漬するために、当該フレキシブルバッグBの上に、浮力に対抗する約1000kgの重りMを載せた。
【0040】
さらに、図5に示すように、フレキシブルバッグB内に、ホースHの先端を挿入した。そして、ポンプ(不図示)を用いて、このホースHから、フレキシブルバッグB内の廃材W中に、湿潤化液を吐出した。このホースHからの湿潤化液の吐出は、約60L/分の流量で30分間行った。
【0041】
このように、本実施例においては、フレキシブルバッグB内の廃材Wに対して、当該フレキシブルバッグBの外部からは湿潤化液Lによる水圧をかけ、当該フレキシブルバッグBの内部においては、ホースHから吐出される湿潤化液による水圧をかけた。
【0042】
さらに、ホースHからの湿潤化液の吐出を終了した後も、図6に示すように、廃材Wが封じ込められたフレキシブルバッグBを、水槽T内の湿潤化液L中に浸漬した状態で維持した。
【0043】
そして、フレキシブルバッグBを湿潤化液L中に24時間浸漬した後、フォークリフト(不図示)によって、図7に示すように、当該フレキシブルバッグBを当該湿潤化液L中から引き上げた。
【0044】
さらに、引き上げられたフレキシブルバッグBを、そのままフォークリフトにより吊り上げた状態で3時間放置することにより、当該フレキシブルバッグBから余分な湿潤化液を滴下させ除去した。この水切り後の、廃材W及び湿潤化液を収容したフレキシブルバッグBの重量は、330kgであった。
【0045】
すなわち、フレキシブルバッグB内の廃材Wに、十分な量の湿潤化液を浸透させることができた。この結果、フレキシブルバッグBからの粉塵の発生を極めて効果的に抑制することができた。
【0046】
また、上述のとおり、フレキシブルバッグBの内部には、廃材Wに加えて、大量の湿潤化液を保持できていた。このため、フレキシブルバッグBを輸送し、さらに保管する間、当該フレキシブルバッグB内の廃材Wの乾燥を効果的に防止することができた。すなわち、フレキシブルバッグB内において、廃材Wを湿潤状態で長時間維持することができた。
【0047】
このように、本実施例においては、撥水性の廃材Wを確実に湿潤化することができ、しかも、当該廃材Wを輸送及び保管する過程において、当該廃材Wからの粉塵の発生を効果的に防止することができた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態に係る廃材の処理方法に含まれる主な工程を示すフロー図である。
【図2】本実施形態に係る廃材の処理方法において、処理の対象となる廃材の堆積物を模式的に示す説明図である。
【図3】本実施形態に係る廃材の処理方法において、廃材を圧縮する処理を模式的に示す説明図である。
【図4】本実施形態に係る廃材の処理方法において、廃材を収容したフレキシブルバッグを模式的に示す説明図である。
【図5】本実施形態に係る廃材の処理方法において、廃材を収容したフレキシブルバッグを湿潤化液中に浸漬する処理の一例を模式的に示す説明図である。
【図6】本実施形態に係る廃材の処理方法において、廃材を収容したフレキシブルバッグを湿潤化液中に浸漬する処理の他の例を模式的に示す説明図である。
【図7】本実施形態に係る廃材の処理方法において、湿潤化液中に浸漬した後に引き上げられた、廃材を収容したフレキシブルバッグを模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
10 準備工程、20 圧縮工程、30 湿潤化工程、40 輸送工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料又は繊維質材料から構成される断熱材を粉砕して得られた、前記断熱材の廃材を準備する工程と、
前記廃材を湿潤化液が浸透可能な容器に収容する工程と、
前記容器の外から、前記容器内の前記廃材に前記湿潤化液を浸透させる湿潤化工程と、
を含む
ことを特徴とする廃材の処理方法。
【請求項2】
前記湿潤化工程において、前記容器を、前記湿潤化液中に浸漬することにより、前記容器内の前記廃材に前記湿潤化液を浸透させる
ことを特徴とする請求項1に記載された廃材の処理方法。
【請求項3】
前記容器は、織布又は不織布から形成された袋である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載された廃材の処理方法。
【請求項4】
前記湿潤化工程において前記湿潤化液が浸透した前記廃材を、前記容器に収容された状態で輸送する工程をさらに含む
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載された廃材の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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