断熱材の熱伝導率算出方法
【課題】断熱材の熱伝導率λを測定する場合、温度条件T1、T2や寸法・形状及び材質が変われば断熱材の外皮材4を通過する外皮材通過熱流qvが変化し、熱伝導率λが変化するため、その度に被測定断熱材Sの熱流qと温度条件T1、T2を計測し、熱伝導率λを算出する必要がある。
【解決手段】予め算出した基準断熱材S´の基準熱伝導率λbtと、被測定断熱材Sの局所ヒートリーク熱伝導率λhtとを足し合わせることで、所望する寸法・形状及び温度条件T1,T2の断熱材Sの熱伝導率λpi(iは1)を測定すること無しに断熱材Sの熱伝導率λを算出できる。
【解決手段】予め算出した基準断熱材S´の基準熱伝導率λbtと、被測定断熱材Sの局所ヒートリーク熱伝導率λhtとを足し合わせることで、所望する寸法・形状及び温度条件T1,T2の断熱材Sの熱伝導率λpi(iは1)を測定すること無しに断熱材Sの熱伝導率λを算出できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫用や住宅用、車載用として普及している外皮材で内部の高性能断熱材料を被った構成のもの、例えば真空断熱材の熱伝導率を算出する断熱材の熱伝導率算出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、断熱材の熱伝導率算出方法として、JIS1420,ISO8301等において詳細が規定されているが、特に真空断熱材のような芯材を外皮材で覆う形式の断熱材では、温度条件により断熱材の外皮材を通る外皮材通過熱流が変化するため熱伝導率の算出は困難であった。
【0003】
図16は、熱流の経路を示す断熱材Sの断面を示した図である。断熱材Sの下平面1から上平面2へ伝わる矢印で表す総和熱流3は、外皮材4の中を流れる外皮材通過熱流5と芯材6を通過する芯材通過熱流7とにほぼ2分されて流れている。通常、均一な物質の熱伝導率は、温度条件が多少変化してもほぼ一定であるが、上述したような外皮材4と芯材6とからなる断熱材Sの場合には、断熱材の上平面2と下平面1の温度条件が変化すれば、外皮材通過熱流5と芯材通過熱流7がそれぞれ変わるため、熱伝導率も変化する。
【0004】
そこで、従来このような断熱材Sの熱伝導率を算出する場合、外皮材4を通る外皮材通過熱流5と、断熱材Sの上平面2と下平面1とを貫く芯材通過熱流7とを別々に測定する装置を用いて算出していた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図17は、前記測定装置に関する説明図である。測定装置は、測定対象となる断熱材Sの上下に縦方向の熱流密度Fuh、Flhを測定するための2つの熱流計fu、flと、外皮材4を通る熱流密度Fuv、Flvを測定するための横方向に配置させた熱流計fuh、flhからなる。熱流計fuh、flhは、熱流計fu、flと密着して配置されている。断熱材Sの上平面2の温度T1と下平面1の温度T2との温度差を一定に保ち、かつ断熱材Sの周囲温度Taを、温度T1及び温度T2を用いて数1で表される平均温度に保ちながら測定する。
【0006】
【数1】
【0007】
上平面2と下平面1のそれぞれにおいて、断熱材Sの縦方向の熱流密度Fuh、Flhと横方向の熱流密度Fuv、Flvの2つの伝熱経路の合計した熱流密度Fut、Fltと定義すれば、Fut、Fltは数2で表される。
【0008】
【数2】
【0009】
本測定方法により、Fut、Fltを用いて断熱材Sの熱伝導率λa、縦方向の熱伝導率λv及び外皮材の熱伝導率λcは数3により求められる。
【0010】
【数3】
【特許文献1】特開平7−209222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来の方法では、断熱材の温度条件や寸法・形状及び材質が変われば断熱材の外皮材を通過する熱流が変化するために、その度に測定対象となる断熱材の熱流と温度を計測し、熱伝導率を算出しなければならないという課題を有していた。つまり、λa、λv、λcを分けて計測することはできるが、それらの関係が非常に複雑であるので、一部の条件が変わった時に、既知のλa、λv、λcから新しい条件に対応する値を求められないという課題を有していた。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、所望する寸法・形状及び温度条件の測定対象となる断熱材の熱伝導率を測定することなく、簡単かつ正確に算出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の熱伝導率算出方法は、断熱材Sの厚みと芯材の種類が同じである基準断熱材S´を予め用意し、その上面中心の芯材通過熱流qhを測定し基準熱伝導率λbtを算出するステップ(ステップAと呼ぶ)と、外皮材の一面から対面の測定点Gにおいて前記外皮材を介して伝わる局所ヒートリーク熱流q´を算出し、局所ヒートリーク熱伝導率λhtを算出するステップ(ステップBと呼ぶ)と、前記基準熱伝導率λbtと前記局所ヒートリーク熱伝導率λhtとを合算して、前記断熱材Sの測定点Gの熱伝導率λpi(iは1)を算出するステップ(ステップCと呼ぶ)からなることを特徴とする。さらに、前記ステップCを前記外皮材の測定面全体におけるn個の測定点で行うステップ(ステップDと呼ぶ)と、前記n個の測定点で算出された熱伝導率λPi(iは1からn)を総和した値を測定点数nで除した値から前記断熱材Sの熱伝導率λを算出するステップ(ステップEと呼ぶ)からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の断熱材の熱伝導率算出方法によれば、予め基準断熱材S´の基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtとを求めておけば、所望する断熱材Sの熱伝導率λpi(iは1)を測定することなしに簡単かつ正確に算出することができる。この熱伝送率λpi(iは1)を測定面全体におけるn個の測定点で算出し、その平均をとることによって断熱材Sの熱伝導率λを正確に算出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
なお、図16と図17と同じ構成については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における断熱材の熱伝導率算出方法のフローチャートである。図1において101は基準熱伝導率λbtの測定ステップ、102は局所ヒートリーク熱伝導率λhtの算出ステップ、103は基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtを用いて求められる断熱材の熱伝導率λpi(iは1、以降局所熱伝導率λPと呼ぶ)の算出ステップ、104は被測定断熱材の測定面全体に渡って局所熱伝導率λPを求め、平均を取ることで決定できる熱伝導率λの算出ステップである。
【0018】
具体的には、まず、基準断熱材S´を用いて基準熱伝導率λbtを算出する。基準断熱材S´は、所望する被測定断熱材の外皮材、芯材の物性及び厚みが同構成で、基準断熱材S´の中央部まで外皮材を介して熱流が伝わらない十分大きな長方形形状の断熱材である。基準熱伝導率λbtは、基準断熱材S´の中央部において熱流及び温度を測定し算出する。
【0019】
次に、局所ヒートリーク熱伝導率λhtを算出する。局所ヒートリーク熱伝導率λhtの算出方法は、被測定断熱材の局所熱伝導率λPを測定し、この局所熱伝導率λPと予め測定した基準熱伝導率λbtとの差として求める。
【0020】
基準熱伝導率λbtは主として芯材の材質により、局所ヒートリーク熱伝導率λhtは主として外皮材の材質により変化するので、厚みと形状が同一である被測定断熱材であれば、各種芯材や外皮材に対して基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtを予め求めておくことにより、各種芯材と外皮材との組み合わせで構成される被測定断熱材の局所熱伝導率λPを予め求めた基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtとの和より簡単かつ正確に算出することができる。この局所熱伝導率λPを被測定断熱材の測定面全体に渡って求め、平均を取ることによって被測定断熱材の熱伝導率λを定義することができる。
【0021】
断熱材の熱伝導率λの算出方法を説明する前に、図2を用いて本発明における断熱材の測定環境及び基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtについて説明する。
【0022】
図2は、芯材6を外皮材4で被った構成の被測定断熱材Sの断面図である。Pu、Plは被測定断熱材Sの上下の平面、Ex、Eyは平面Puを構成する辺、Lは被測定断熱材Sの厚さ、Gは平面Pu上の任意の測定点、Taは周囲温度であり、従来技術と同様に数1の通り測定点Gにおける上面温度T1と下面温度T2の平均値で表される。
【0023】
【数1】
【0024】
測定において上面温度T1及び下面温度T2に温度差ができれば、外皮材4を通過する外皮材通過熱流qvと芯材6を通過する縦方向の芯材通過熱流qhとが生じる。外皮材通過熱流qvは外皮材を伝わる一方、測定点Gの上面Puへ外皮材通過熱流qvの一部が外皮材ヒートリーク熱流qv´として伝わる。局所熱流qは縦方向に通過する外皮材ヒートリーク熱流qv´と芯材6を通過する縦方向の芯材通過熱流qhとの和となり数4として表される。
【0025】
【数4】
【0026】
また、基準熱伝導率λbtは芯材通過熱流qhのみの熱伝導率を表したものであり、局所ヒートリーク熱伝導率λhtは外皮材4を介して伝わる縦方向の外皮材ヒートリーク熱流qv´のみの熱伝導率を表したものであるため、測定点Gにおける温度T1、T2、検査面積ΔG及び被測定断熱材Sの厚さLを用いて数5で表される。
【0027】
【数5】
【0028】
この芯材通過熱流qhは芯材6の材質により変化する。一般に、芯材6は外皮材4に比べて局所熱伝導率λpが桁違いに小さいため、芯材通過熱流qhは任意の測定点Gでほぼ一定の値となる。一方、局所ヒートリーク熱伝導率λhtは、測定点Gのとる位置により外皮材通過熱流qvが異なるため一定値とはならない。以下に、本発明の断熱材の熱伝導率算出方法について述べるとともに作用を説明する。
【0029】
熱伝導率を求めたい被測定断熱材Sの周囲温度Taと上下平面温度T1、T2が決まれば、まず、基準熱伝導率λbtの測定ステップ101を行う。詳細に説明するために図3を用いて説明する。図3は、基準熱伝導率λbtの測定ステップ101の流れを示したフローチャートである。基準熱伝導率λbtを測定する流れとして、局所熱伝導率λpの測定点の設定ステップ301を行った後、基準断熱材の局所熱伝導率λpの測定ステップ302を行い、最後に、基準熱伝導率λbtの判定ステップ303により基準熱伝導率λbtを求める。
【0030】
図4は、基準熱伝導率λbtの測定方法に関する説明図である。図3に示した局所熱伝導率λpの測定点の設定ステップ301を行うために用いる基準断熱材S´の芯材6、外皮材4の物性及び厚さLは、所望する被測定断熱材Sと芯材6、外皮材4の物性及び厚さLが同じとなるものを用いる。基準熱伝導率λbtは外皮材ヒートリーク熱流qv´の影響がない局所熱伝導率λpを測定する必要があるため、基準断熱材S´の形状は、向かい合う辺同士の距離ができるだけ離れている形状を用いる。特に、基準断熱材S´の寸法として長辺と短辺との長さが一致する150mm×150mm以上の正方形形状が好ましい。また基準断熱材S´は、上面を構成する辺の長さが厚みの6倍以上であることが好ましい。
【0031】
まず図3に示した局所熱伝導率λpの測定点の設定ステップ301を行う。図4の基準断熱材S´の上下平面Pu´、Pl´上に、上平面Pu´を構成する辺Ex´、Ey´と平行となる複数の線EL´を、間隔ΔE´で等間隔となるよう格子状に描く。この時、1本の線EL´は基準断熱材S´の中心点を通るようにひく。格子状にひかれた線EL´のそれぞれの交点を測定点G´とし、特に上平面Pu´の中心点をC、中心点Cに隣接する測定点をC´とする。ここで間隔ΔE´は10mm程度とすることが好ましい。
【0032】
次に図3に示した基準断熱材S´の局所熱伝導率λpの測定ステップ302を行う。図4の測定点G´、C及びC´における局所熱流q、温度T1、T2、測定点G´における検査面積ΔG´及び断熱材厚さLを夫々求め、数6のように測定点G´、C及びC´における局所熱伝導率λpを求める。
【0033】
【数6】
【0034】
最後に、図3に示した局所熱伝導率λpの測定ステップ302で求めた局所熱伝導率λpが基準熱伝導率λbtとなり得るかどうかの基準熱伝導率λbtの判定ステップ303を行う。基準熱伝導率λbtの判定は数6のように、図4の測定点Cにおける局所熱伝導率λpが、測定点Cに隣接する夫々の測定点C´の局所熱伝導率λpと同じとなるかどうかで行い、この条件を満たす局所熱伝導率λpを基準熱伝導率λbtとする。
【0035】
この判定方法の手続きとして、まず、測定点Cの局所熱伝導率λpが格子上に設定された測定点C´に隣接する夫々の測定点G´の局所熱伝導率λpと比べて最小となるかどうかを判定する。測定点Cの局所熱伝導率λpが最小となる場合は、測定点Cが辺Ex´またはEy´から等距離にあるため、辺Ex´、Ey´から回り込む外皮材通過熱流qvが上平面Pu´の中心点で最小となる場合と、辺Ex´、Ey´からの熱の回り込みがなく芯材通過熱流qhのみとなる場合がある。測定点Cの局所熱伝導率λpが最小とならない場合は、基準断熱材S´の形状や厚さLが不均一であるため、辺Ex´、Ey´から回り込む外皮材通過熱流qvの伝わりが不均一となる場合であり、この場合は、基準断熱材S´の形状や厚さを均一にする必要がある。
【0036】
次に、測定点Cの局所熱流qが芯材通過熱流qhのみとなるかどうかを判定する。判定方法として、測定点C、C´の局所熱伝導率λpがそれぞれ同じ値をとるかどうかを判定する。これは、辺Ex´、Ey´からの熱の回り込みがある場合は、隣接する測定点C´の局所熱伝導率λpが、測定点Cの局所熱伝導率λpよりも高くなるが、辺Ex´、Ey´からの熱の回り込みがない場合は、測定点C、C´における局所熱伝導率λpが芯材通過熱流qhの影響のみとなるため、測定点C、C´のいずれの場所でも局所熱伝導率λpがそれぞれ同じ値となるためである。測定点C、C´の局所熱伝導率λpがそれぞれ一致しない場合は、辺Ex´、Ey´からの熱の回り込みの影響をなくすため、測定に用いた基準断熱材S´よりも辺Ex´、辺Ey´の長さが各々長いものを用いる必要がある。これより基準熱伝導率λbtは上記の判定方法より決定する。 以上の工程をステップAと呼ぶ。
【0037】
基準熱伝導率λbtが決まれば、図1で示した局所ヒートリーク熱伝導率λhtの算出ステップ102を行う。図5は局所ヒートリーク熱伝導率λhtの算出に関する説明図である。平面Pu上の任意の測定点Gにおける芯材通過熱流qhは一般に、芯材6の局所熱伝導率λpが外皮材4に比べて小さいためほぼ一定の値となる。また、外皮材4の厚みは芯材6に比べて桁違いに薄いため、測定点Gにおける芯材通過熱流qhは、外皮材4においてほとんど拡散せずに縦方向へ流れる。そのため、外皮材4を介して伝わる縦方向の外皮材ヒートリーク熱流qv´は、局所熱流qから芯材通過熱流qhを差し引いた形となり、数7で表される。
【0038】
【数7】
【0039】
また、数5、数6より、外皮材ヒートリーク熱流qv´、局所熱流q及び芯材通過熱流qhは数8として表される。
【0040】
【数8】
【0041】
上記より得られた数8を数7に代入することにより数9が得られる。
【0042】
【数9】
【0043】
数9で得られた局所ヒートリーク熱伝導率λhtは、温度T1、T2の温度差が変化すると、それに合わせて変化する。温度T1、T2の温度差が変化する場合、局所ヒートリーク熱伝導率λhtを温度差の関数として取り扱うことで、所望する温度差における局所ヒートリーク熱伝導率λhtを算出することができる。つまり、所望する温度T1、T2の温度差をΔTCとし、予め算出しておいた温度差ΔTa、ΔTbにおける局所ヒートリーク熱伝導率をそれぞれλhta、λhtbとすると、この局所ヒートリーク熱伝導率λhta、λhtbを用いて、温度差ΔTCにおける局所ヒートリーク熱伝導率λhtcは数学的補間、例えば線形補間方法やラグランジュ補間方法により求めることができる。線形補間方法の一例を数10に示す。ここで、aは温度差による重み係数である。
【0044】
【数10】
【0045】
この時、温度差ΔTa、ΔTbの選択には、温度差ΔTcが温度差ΔTa、ΔTbの間に含まれるよう定めることが好ましい。このように局所ヒートリーク熱伝導率λhtを温度差の関数として取り扱うことで、所望する温度差における局所ヒートリーク熱伝導率λhtを、予め測定しておいた局所ヒートリーク熱伝導率λhtより測定することなしに算出することができる。 以上の工程をステップBと呼ぶ。
【0046】
次に図1に示した局所熱伝導率λpの算出ステップ103を行う。所望する測定点Gの局所熱伝導率λpは予め算出した局所ヒートリーク熱伝導率λhtと基準熱伝導率λbtとにより数9を変形した数11で与えられる。
【0047】
【数11】
【0048】
数11より局所熱伝導率λpは基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtとの足し合わせであることが解る。これは局所ヒートリーク熱伝導率λhtが主として外皮材4の外皮材ヒートリーク熱流qv´の影響を受け、基準熱伝導率λbtが主として芯材6の芯材通過熱流qhの影響を受けるためである。つまり、複数ある外皮材4の局所ヒートリーク熱伝導率λhtと、複数ある芯材6の基準熱伝導率λbtとを予め別々に測定しておけば、所望する外皮材4と芯材6の組み合わせにおける被測定断熱材Sの局所熱伝導率λpは、被測定断熱材Sの厚みと形状がそれぞれ同一であれば、局所ヒートリーク熱伝導率λhtと基準熱伝導率λbtの足し合わせを行うだけで、所望する組み合わせの局所熱伝導率を算出することができる。
【0049】
例えば、n個の芯材S1、S2・・・Si・・・Snと、m個の外皮材S1´、S2´・・・Sj´・・・Sm´の組み合わせ、つまりn×m個を測定する場合、前記従来の測定方法では、全ての被測定断熱材Sの組み合わせn×m回を測定する必要がある。一方、本発明の方法を用いれば、外皮材4に対応した局所ヒートリーク熱伝導率λhtをn回と、芯材6に対応した基準熱伝導率λbtをm回測定し、所望する被測定断熱材Sの外皮材4の基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtとを足し合わせることで、所望する局所熱伝導率λpが求められる。例えば、被測定断熱材Sを構成する芯材6と外皮材4との各組み合わせにおける局所熱伝導率λpは、それぞれの芯材S1、S2・・・Si・・・Snの基準熱伝導率λbt1、λbt2・・・λbti・・・λbtmと、各々の外皮材S1´、S2´・・・Sj´・・・Sm´の局所ヒートリーク熱伝導率をλht1、λht2・・・λhtj・・・λhtnとを用いて、種類iの心材7と、種類jの外皮材4との組み合わせにおける局所熱伝導率λpは数12で表される。
【0050】
【数12】
【0051】
以上の工程をステップCと呼ぶ。
【0052】
最後に、図1に示した熱伝導率λの算出ステップ104を行う。図6は、図1に示した熱伝導率λの算出ステップ104の説明図である。芯材6を外皮材4で被った形式の被測定断熱材Sの局所熱伝導率λpiは、測定面Pu上の測定点Giの測定位置により、夫々異なる値をとるため、被測定断熱材Sの熱伝導率λを求める場合、測定面Pu上に複数の測定点Giを配置し、この測定点Giにおける局所熱伝導率λpiを夫々測定し、測定した局所熱伝導率λpiの総和平均をとることで正確に熱伝導率λを求めることができる。ここで、測定点Gi及び局所熱伝導率λpiの下付き添え字iは、測定点番号を表す。
【0053】
熱伝導率λの算出方法4は、まず、被測定断熱材Sの測定面Pu上に、複数の測定線ELを格子状に間隔ΔEで等間隔にひき、夫々の格子状に測定点Giを配置する。この時、測定線ELが形成する格子形状は直交するようにとる。また、間隔ΔELは、断熱材の熱伝導率λが所望する誤差以内に収まるよう十分に小さくとる。被測定断熱材Sの測定面を構成する辺Ex、Eyに隣接する測定点Giと辺Ex、Eyとの距離はΔELとなるようにする。被測定断熱材Sの形状の角が直角ではない多角形で構成される場合は、端部からの距離ができるだけ間隔ΔELとなるようにとり、かつΔELの値を小さくすることで誤差を小さくする。特に、外皮材の材質がアルミニウムとポリエチレン等の樹脂材により形成されていて、被測定断熱材Sの大きさが数100mm程度の大きさであれば、間隔ΔELを10mm程度とすることが好ましい。次に、各測定点Giにおける全ての局所熱伝導率λpiを測定する。 以上の工程をステップDと呼ぶ。
【0054】
最後に測定した全ての局所熱伝導率λpiの平均をとるために、数13のように、局所熱伝導率λpiの総和を測定点数で割ることにより被測定断熱材λの熱伝導率を求める。ここで、測定点数をn個とする。
【0055】
【数13】
【0056】
以上の工程をステップEと呼ぶ。
【0057】
このように本発明の方法を用いることで、前記従来の測定方法ではn×m回の測定が必要であったが、本発明の方法ではn回の基準熱伝導率λbtの測定と、m回の局所ヒートリーク熱伝導率λhtの測定を行えば、それ以上の測定を行うことなしに全ての組み合わせにおける被測定断熱材Sの局所熱伝導率λpの算出が行える。また、被測定断熱材Sの平面 Pu上で複数の測定点Gにおける局所熱伝導率λpを測定し、測定値の平均をとることにより、被測定断熱材の熱伝導率λを正確に算出することができる。
【0058】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2における熱伝導率算出方法に関する構成を示した図である。熱伝導率λを算出する流れは上述の実施の形態1の通り、基準断熱材S´を用いて基準熱伝導率λbtの測定ステップ101を行い、また、1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出ステップ701及び1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)を用いた局所ヒートリーク熱伝導率λhtの算出ステップ702を行い、上述の実施の形態1と同様に、局所ヒートリーク熱伝導率λhtと基準熱伝導率λbtより局所熱伝導率λpの算出ステップ103を行い、最後に熱伝導率λの算出ステップ104を行う。ここで1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)のカッコ内dは、1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)が距離の関数として与えられるため、規準とする辺、例えば後述の説明に用いる図8に示した辺Ex´から測定点G´までの最短距離dを表している。実施の形態2と上述の実施の形態1との構成上の相違点は、1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出ステップ701を用いることで、凸多角形の被測定断熱材Sにおける任意の寸法・形状及び温度条件における局所熱伝導率λpを算出できる点である。
【0059】
具体的には、凸多角形の所望する寸法・形状の被測定断熱材の局所熱伝導率λpは、断熱材の一辺からのみの熱流の回り込みを表す1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)と基準熱伝導率λbtを用いて算出することができる。まず、局所熱伝導率λpを求める点と被測定断熱材の測定面を構成する各辺からの最短距離を求め、この距離に対応する1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)を算出する。次に、算出した1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の前記各辺についての総和を求め、その点の局所ヒートリーク熱伝導率λhtとする。この局所ヒートリーク熱伝導率λhtと基準熱伝導率λbtとから任意の点の局所熱伝導率λpを算出する。また、この局所熱伝導率λpを被測定断熱材の測定面全体に渡って求め、平均を取ることによって被測定断熱材の熱伝導率を定義することができる。
【0060】
実施の形態2の説明を行う前に、1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)について図8を用いて説明する。基準断熱材S´の測定平面Pu´上の測定点G´において、外皮材4を通過する外皮材通過熱流qvは、数14で表されるように基準断熱材S´の測定平面Pu´に対して垂直方向に伝わる外皮材ヒートリーク熱流qv´と外皮材4を伝わるx方向外皮材通過熱流qvx及びy方向外皮材通過熱流qvyとに分けられる。
【0061】
【数14】
【0062】
ここでx方向外皮材通過熱流qvxは辺Ex´と平行をなし、y方向外皮材通過熱流qvyは辺Ey´と平行をなす。そのため、x方向外皮材通過熱流qvxとy方向外皮材qvyのベクトルの向きは直交する。今、被測定断熱材Sの辺Ey´からの外皮材通過熱流qvの回りこみが無い場合を考える。外皮材通過熱流qvの回りこみが無い場合とは、辺Ey´から伝わる外皮材通過熱流qvが測定点G´へ伝わる経緯で、全て縦方向(芯材6を上下面を通過する方向)に流れ出た状態、つまり測定点G´が辺Ey´から十分に離れていることをいう。この時、外皮材通過熱流qvは辺Ex´から伝わるy方向外皮材通過熱流qvyのみとなり、x方向外皮材通過熱流qvxは零となる。そのため測定点G´における外皮材ヒートリーク熱流qv´は辺Ex´から測定点G´までの最短経路となる距離dに応じて変化する。このため1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)は辺Ex´から測定点G´までの最短距離dと外皮材ヒートリーク熱流qv´の変化量との関数として与えられる。
【0063】
ここから図7に従って、実施の形態2における本発明の断熱材の熱伝導率算出方法について述べるとともに作用を説明する。まず、基準熱伝導率λbtの測定ステップ101を行う。基準熱伝導率λbtの測定は、上述の実施の形態1と同じ方法により求めることができる。
【0064】
次に、1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出ステップ701を行う。図9は1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出ステップ701に関するフローチャートである。1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出を行う流れとして、まず、基準断熱材S´を用いて局所熱伝導率λpの測定点G´の設定ステップ901を行い、設定した複数ある測定点G´における1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)を算出するために、局所熱伝導率λpを測定できるかの判定ステップ902を行い、この判定で測定が可能であることが判れば、設定した測定点G´における局所熱伝導率λpの測定ステップ903を行い、最後に測定した局所熱伝導率λpから1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出ステップ904を行う。
【0065】
図10は、局所熱伝導率λpの測定点Gi´の設定ステップ901に関する説明図である。局所熱伝導率λpの測定は、長辺と短辺の長さに差があまりなく、向かい合う辺と辺同士が十分に距離のある長方形形状の基準断熱材S´を用いて行う。測定点Gi´の位置を決めるために、基準断熱材S´の中心を通り基準断熱材S´の測定面Pu´を構成する辺Ey´と平行となるように測定線EL´を1本ひく。少なくとも3点以上の測定点Gi´を測定線EL´上に基準断熱材S´の中心点G1´から間隔ΔE´y刻みで等間隔に配置する。ここでGi´の下文字iは、測定点番号を表し、中心点を基準に中心点をi=1、中心点から間隔ΔE´y離れた測定点番号をi=2、中心点から間隔(j−1)×ΔEy離れた測定点番号をi=jとする。
【0066】
測定点の位置が決定すれば、次に1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出のための局所熱伝導率λpの判定ステップ902を行う。この局所熱伝導率λpを測定する場合、局所熱伝導率λpもまた基準断熱材S´の1辺からのみ伝わる外皮材通過熱流qvを表す必要がある。また、説明のために、測定点Gi´における局所熱伝導率を特にλpiとしてあらわす。
【0067】
測定では、基準断熱材S´の1辺からのみの外皮材ヒートリーク熱流qv´の変化量を測定する必要があるため、基準断熱材S´を構成する他辺からの外皮材ヒートリーク熱流qv´の影響が入らないようにするため、基準とする1辺を基準断熱材S´を構成する辺のうち長辺を取る必要がある。ここでは、長方形形状の基準断熱材S´の長辺である1辺を辺Ex´として説明を行う。まず、辺Ex´以外からの外皮材通過熱流qvの影響が入らないよう、測定面Pu´を構成する辺Ex´、辺Ey´から等距離に位置する中心点G1´の局所熱伝導率λp1を測定する。次に、測定した中心点G1´の局所熱伝導率λp1が基準熱伝導率λbtと一致するかを判定し、中心点G1´において外皮材通過熱流qvの影響がないことを確認する。中心点G1´における局所熱伝導率λp1が基準熱伝導率λbtより高くなる場合は、基準断熱材S´の辺Ex´、Ey´からの熱流qvが中心点G1にまで伝わっていることを表している。この場合、基準断熱材S´の寸法をさらに大きく取る必要がある。
【0068】
一方、中心点G1´における局所熱伝導率λp1が基準熱伝導率λbtと一致すれば、中心点G1´上では、基準断熱材S´の辺Ex´、Ey´から伝わる外皮材通過熱流qvの影響が無いことがわかる。また、測定線EL´上に設けた測定点Gi´上でも、基準断熱材S´の辺Ey´から伝わる外皮材通過熱流qvが無く、辺Ex´から伝わる外皮材通過熱流qvのみとなるため、基準断熱材S´の1辺からのみ伝わる外皮材通過熱流qvの影響を表すことができる。特に、外皮材の材質がアルミニウムとポリエチレン等の樹脂材により形成されていれば、基準断熱材S´の大きさとして150mm×150mm程度以上の正方形形状とすることが好ましい。
【0069】
次に、局所熱伝導率λpの測定方法19として、測定線EL´上に配した全ての測定点Gi´における局所熱流q、温度T1i、T2i及び断熱材厚さLを求め、測定点Gi´における局所熱伝導率λpiを上述実施の形態1で用いた式3により算出する。最後に、求めた局所熱伝導率λpiと基準熱伝導率λbtとを用いて1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出方法20を行う。上述の実施の形態1のように、局所ヒートリーク熱伝導率λhtは測定点Gi´で測定される局所熱伝導率λpiから基準熱伝導率λbtを引いた値となるため、1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)についても同様に算出が行え、数15で表される。
【0070】
【数15】
【0071】
以上の工程をステップFと呼ぶ。
【0072】
1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)は、最短距離dの関数として表されるため、例えば、数16のような最短距離dを用いた関数として与えることができる。
【0073】
【数16】
【0074】
ここで、dは距離を表し、A0、A1、A2、A3、・・・、Anはn次の多項式の係数である。
【0075】
また、温度T1i、T2iの温度差が変化する場合、上述の実施の形態1と同様に、1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)もまた変化する。所望する温度T1i、T2iの温度差をΔTCiとし、予め算出しておいた温度差ΔTai、ΔTbiにおける1次元局所ヒートリーク熱伝導率をそれぞれλht(d)a、λht(d)bとする。この局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)a、λht(d)bを用いて、温度差ΔTCiにおける局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)cは、例えば線形補間方法により数17で求められる。
【0076】
【数17】
【0077】
この時、温度差ΔTai、ΔTbiの選択には、温度差ΔTCiが温度差ΔTai、ΔTbiの間に含まれるよう定めることが好ましい。このように1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)を温度の関数として取り扱うことで、所望する温度差における1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)を、予め測定しておいた1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)より測定することなしに算出することができる。以上の工程をステップGと呼ぶ。
【0078】
次に、上述の方法で求めた1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)を用いた局所ヒートリーク熱伝導率算出ステップ702について説明する。図11は、1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)を用いた局所ヒートリーク熱伝導率λhtの算出に関するフローチャートである。局所ヒートリーク熱伝導率λhtの算出の流れとして、まず、被測定断熱材Sの測定点Gと被測定断熱材Sの各辺との最短距離dの算出ステップ111を行い、各辺の最短距離dにおける1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出ステップ112を行なう。このステップで算出した1次元局所ヒートリーク熱伝導率の和から局所ヒートリーク熱伝導率を算出するステップ113を行い、最後に、測定点Gにおける局所熱伝導率λpの算出ステップ114を行う。上記の1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)を用いた局所熱伝導率λpの算出に関する具体例について図12を用いて説明する。図12は、4辺から構成された被測定断熱材Sを用いた例である。まず、所望する測定点Gから辺E1,E2,E3、E4に対する最短距離d1,d2,d3,d4の算出を行う。次に、求めたそれぞれの最短距離d1,d2,d3,d4に対する1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d1)、 λht(d2)、 λht(d3)、λht(d4)を数15より算出する。最後に、求めた1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d1)、λht(d2)、λht(d3)、λht(d4)と、基準熱伝導率λbtとを足し合せることで局所熱伝導率λpの算出を行う。
【0079】
被測定断熱材Sがn角形の場合、被測定断熱材Sを構成する辺Em(n≧m)から測定点Gまでの最短距離dmで得られる1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(dm)と、基準熱伝導率λbtを用いて局所熱伝導率λpは数18で表される。
【0080】
【数18】
【0081】
以上の工程をステップHと呼ぶ。
【0082】
このように数18を用いることで、予め基準断熱材により基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtを求めておくことで、被測定断熱材Sの寸法・形状及び温度が変わる場合でも、所望する局所熱伝導率λpを測定することなく算出できるという効果が得られる。
【0083】
また、被測定断熱材の熱伝導率λは、上述の実施の形態1と同じ方法により、局所熱伝導率λpを被測定断熱材の測定面全体の平均をとることにより求めることができる。
【0084】
次に、本発明の方法を用いて得られた結果と実験により得られた結果について説明する。図13は、本発明の方法で用いた被測定断熱材Sの測定環境の説明図である。被測定断熱材Sにおいて、まず、格子状に複数の測定線ELを間隔ΔEで等間隔にひき、また、測定線ELが構成する格子の交点の1点は、被測定断熱材Sの中心を通るようにひく。ここで、測定した被測定断熱材Sの形状は、正方形、長方形の2種類で、厚さ2mmの心材7を外皮材4で被った構造の断熱材である。断熱材形状のそれぞれの寸法は、正方形が50mm×50mm、100mm×100mm、150mm×150mm、長方形が40mm×80mm、60mm×120mm、80mm×160mm、となる6種類の断熱材を測定し結果比較を行った。測定に際して間隔ΔELは10mm間隔とし、また、測定線ELが形成する格子形状は直交するような配置として測定を行う。
【0085】
測定点Gにおける局所熱伝導率λPは被測定断熱材の厚さL、測定点をG、測定点Gにおける検査面積をΔG、測定点Gにおける温度をT1、T2、温度をT1、T2の平均温度をとる周囲温度をTa、測定点Gにおける熱流をqとして、熱流qと温度T1、T2及び断熱材の厚さLを測定し数3より測定点Gにおける局所熱伝導率λpを測定する。また、本発明の方法についても、上述した実施の形態2の方法により局所熱伝導率λpを算出した後、数13を用いて、全ての測定点Gにおける局所熱伝導率λpの平均をとり熱伝導率λを算出する。
【0086】
図14、15は、実験により測定された熱伝導率λ及び本発明の方法により算出された熱伝導率λとの結果比較図である。図14は正方形、図15は長方形についてそれぞれ上述した方法により熱伝導率λを測定した結果であり、熱伝導率λは、夫々の結果において平均1%前後で良好に一致し、最大でも誤差約3%以内に収まることがわかる。
【0087】
本発明の方法により、予め基準断熱材S´により基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtを求めておくことで、被測定断熱材Sの寸法・形状及び温度が変わる場合でも、所望する局所熱伝導率λpを測定することなく算出でき、また、被測定断熱材の熱伝導率λは、この算出された局所熱伝導率λpを被測定断熱材の測定面全体の平均をとることにより、簡単かつ正確に算出できるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の断熱材の熱伝導率算出方法は、断熱材、特に外皮材と芯材とから構成された断熱材の熱伝導率を算出するのに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態1における断熱材の熱伝導率算出方法のフローチャート
【図2】本発明の実施の形態1における断熱材の熱伝導率算出方法の測定環境及び基準熱伝導率と局所ヒートリーク熱伝導率の説明図
【図3】基準熱伝導率λbtの測定ステップのフローチャート
【図4】基準熱伝導率λbtの測定ステップに関する説明図
【図5】局所ヒートリーク熱伝導率の算出に関する説明図
【図6】熱伝導率λの算出ステップの説明図
【図7】本発明の実施の形態2における断熱材の熱伝導率算出方法のフローチャート
【図8】1次元局所ヒートリーク熱伝導率の説明図
【図9】1次元局所ヒートリーク熱伝導率算出ステップのフローチャート
【図10】熱伝導率の測定点の設定に関する説明図
【図11】1次元局所ヒートリーク熱伝導率を用いた局所ヒートリーク熱伝導率算出ステップのフローチャート
【図12】局所熱伝導率算出に関する具体例を示した説明図
【図13】本発明の方法及び実験で用いた被測定断熱材の測定環境の説明図
【図14】実験と本発明の方法により得られた正方形形状の熱伝導率結果の比較図
【図15】実験と本発明の方法により得られた長方形形状の熱伝導率結果の比較図
【図16】断熱材の芯材と外皮材を伝わる熱流経路を示した図
【図17】従来の測定方法及び測定装置に関する説明図
【符号の説明】
【0090】
S 被測定断熱材
4 外皮材
6 芯材
101 基準熱伝導率λbtの測定ステップ
102 局所ヒートリーク熱伝導率λhtの算出ステップ
103 局所熱伝導率λpの算出ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫用や住宅用、車載用として普及している外皮材で内部の高性能断熱材料を被った構成のもの、例えば真空断熱材の熱伝導率を算出する断熱材の熱伝導率算出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、断熱材の熱伝導率算出方法として、JIS1420,ISO8301等において詳細が規定されているが、特に真空断熱材のような芯材を外皮材で覆う形式の断熱材では、温度条件により断熱材の外皮材を通る外皮材通過熱流が変化するため熱伝導率の算出は困難であった。
【0003】
図16は、熱流の経路を示す断熱材Sの断面を示した図である。断熱材Sの下平面1から上平面2へ伝わる矢印で表す総和熱流3は、外皮材4の中を流れる外皮材通過熱流5と芯材6を通過する芯材通過熱流7とにほぼ2分されて流れている。通常、均一な物質の熱伝導率は、温度条件が多少変化してもほぼ一定であるが、上述したような外皮材4と芯材6とからなる断熱材Sの場合には、断熱材の上平面2と下平面1の温度条件が変化すれば、外皮材通過熱流5と芯材通過熱流7がそれぞれ変わるため、熱伝導率も変化する。
【0004】
そこで、従来このような断熱材Sの熱伝導率を算出する場合、外皮材4を通る外皮材通過熱流5と、断熱材Sの上平面2と下平面1とを貫く芯材通過熱流7とを別々に測定する装置を用いて算出していた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図17は、前記測定装置に関する説明図である。測定装置は、測定対象となる断熱材Sの上下に縦方向の熱流密度Fuh、Flhを測定するための2つの熱流計fu、flと、外皮材4を通る熱流密度Fuv、Flvを測定するための横方向に配置させた熱流計fuh、flhからなる。熱流計fuh、flhは、熱流計fu、flと密着して配置されている。断熱材Sの上平面2の温度T1と下平面1の温度T2との温度差を一定に保ち、かつ断熱材Sの周囲温度Taを、温度T1及び温度T2を用いて数1で表される平均温度に保ちながら測定する。
【0006】
【数1】
【0007】
上平面2と下平面1のそれぞれにおいて、断熱材Sの縦方向の熱流密度Fuh、Flhと横方向の熱流密度Fuv、Flvの2つの伝熱経路の合計した熱流密度Fut、Fltと定義すれば、Fut、Fltは数2で表される。
【0008】
【数2】
【0009】
本測定方法により、Fut、Fltを用いて断熱材Sの熱伝導率λa、縦方向の熱伝導率λv及び外皮材の熱伝導率λcは数3により求められる。
【0010】
【数3】
【特許文献1】特開平7−209222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来の方法では、断熱材の温度条件や寸法・形状及び材質が変われば断熱材の外皮材を通過する熱流が変化するために、その度に測定対象となる断熱材の熱流と温度を計測し、熱伝導率を算出しなければならないという課題を有していた。つまり、λa、λv、λcを分けて計測することはできるが、それらの関係が非常に複雑であるので、一部の条件が変わった時に、既知のλa、λv、λcから新しい条件に対応する値を求められないという課題を有していた。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、所望する寸法・形状及び温度条件の測定対象となる断熱材の熱伝導率を測定することなく、簡単かつ正確に算出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の熱伝導率算出方法は、断熱材Sの厚みと芯材の種類が同じである基準断熱材S´を予め用意し、その上面中心の芯材通過熱流qhを測定し基準熱伝導率λbtを算出するステップ(ステップAと呼ぶ)と、外皮材の一面から対面の測定点Gにおいて前記外皮材を介して伝わる局所ヒートリーク熱流q´を算出し、局所ヒートリーク熱伝導率λhtを算出するステップ(ステップBと呼ぶ)と、前記基準熱伝導率λbtと前記局所ヒートリーク熱伝導率λhtとを合算して、前記断熱材Sの測定点Gの熱伝導率λpi(iは1)を算出するステップ(ステップCと呼ぶ)からなることを特徴とする。さらに、前記ステップCを前記外皮材の測定面全体におけるn個の測定点で行うステップ(ステップDと呼ぶ)と、前記n個の測定点で算出された熱伝導率λPi(iは1からn)を総和した値を測定点数nで除した値から前記断熱材Sの熱伝導率λを算出するステップ(ステップEと呼ぶ)からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の断熱材の熱伝導率算出方法によれば、予め基準断熱材S´の基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtとを求めておけば、所望する断熱材Sの熱伝導率λpi(iは1)を測定することなしに簡単かつ正確に算出することができる。この熱伝送率λpi(iは1)を測定面全体におけるn個の測定点で算出し、その平均をとることによって断熱材Sの熱伝導率λを正確に算出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
なお、図16と図17と同じ構成については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における断熱材の熱伝導率算出方法のフローチャートである。図1において101は基準熱伝導率λbtの測定ステップ、102は局所ヒートリーク熱伝導率λhtの算出ステップ、103は基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtを用いて求められる断熱材の熱伝導率λpi(iは1、以降局所熱伝導率λPと呼ぶ)の算出ステップ、104は被測定断熱材の測定面全体に渡って局所熱伝導率λPを求め、平均を取ることで決定できる熱伝導率λの算出ステップである。
【0018】
具体的には、まず、基準断熱材S´を用いて基準熱伝導率λbtを算出する。基準断熱材S´は、所望する被測定断熱材の外皮材、芯材の物性及び厚みが同構成で、基準断熱材S´の中央部まで外皮材を介して熱流が伝わらない十分大きな長方形形状の断熱材である。基準熱伝導率λbtは、基準断熱材S´の中央部において熱流及び温度を測定し算出する。
【0019】
次に、局所ヒートリーク熱伝導率λhtを算出する。局所ヒートリーク熱伝導率λhtの算出方法は、被測定断熱材の局所熱伝導率λPを測定し、この局所熱伝導率λPと予め測定した基準熱伝導率λbtとの差として求める。
【0020】
基準熱伝導率λbtは主として芯材の材質により、局所ヒートリーク熱伝導率λhtは主として外皮材の材質により変化するので、厚みと形状が同一である被測定断熱材であれば、各種芯材や外皮材に対して基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtを予め求めておくことにより、各種芯材と外皮材との組み合わせで構成される被測定断熱材の局所熱伝導率λPを予め求めた基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtとの和より簡単かつ正確に算出することができる。この局所熱伝導率λPを被測定断熱材の測定面全体に渡って求め、平均を取ることによって被測定断熱材の熱伝導率λを定義することができる。
【0021】
断熱材の熱伝導率λの算出方法を説明する前に、図2を用いて本発明における断熱材の測定環境及び基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtについて説明する。
【0022】
図2は、芯材6を外皮材4で被った構成の被測定断熱材Sの断面図である。Pu、Plは被測定断熱材Sの上下の平面、Ex、Eyは平面Puを構成する辺、Lは被測定断熱材Sの厚さ、Gは平面Pu上の任意の測定点、Taは周囲温度であり、従来技術と同様に数1の通り測定点Gにおける上面温度T1と下面温度T2の平均値で表される。
【0023】
【数1】
【0024】
測定において上面温度T1及び下面温度T2に温度差ができれば、外皮材4を通過する外皮材通過熱流qvと芯材6を通過する縦方向の芯材通過熱流qhとが生じる。外皮材通過熱流qvは外皮材を伝わる一方、測定点Gの上面Puへ外皮材通過熱流qvの一部が外皮材ヒートリーク熱流qv´として伝わる。局所熱流qは縦方向に通過する外皮材ヒートリーク熱流qv´と芯材6を通過する縦方向の芯材通過熱流qhとの和となり数4として表される。
【0025】
【数4】
【0026】
また、基準熱伝導率λbtは芯材通過熱流qhのみの熱伝導率を表したものであり、局所ヒートリーク熱伝導率λhtは外皮材4を介して伝わる縦方向の外皮材ヒートリーク熱流qv´のみの熱伝導率を表したものであるため、測定点Gにおける温度T1、T2、検査面積ΔG及び被測定断熱材Sの厚さLを用いて数5で表される。
【0027】
【数5】
【0028】
この芯材通過熱流qhは芯材6の材質により変化する。一般に、芯材6は外皮材4に比べて局所熱伝導率λpが桁違いに小さいため、芯材通過熱流qhは任意の測定点Gでほぼ一定の値となる。一方、局所ヒートリーク熱伝導率λhtは、測定点Gのとる位置により外皮材通過熱流qvが異なるため一定値とはならない。以下に、本発明の断熱材の熱伝導率算出方法について述べるとともに作用を説明する。
【0029】
熱伝導率を求めたい被測定断熱材Sの周囲温度Taと上下平面温度T1、T2が決まれば、まず、基準熱伝導率λbtの測定ステップ101を行う。詳細に説明するために図3を用いて説明する。図3は、基準熱伝導率λbtの測定ステップ101の流れを示したフローチャートである。基準熱伝導率λbtを測定する流れとして、局所熱伝導率λpの測定点の設定ステップ301を行った後、基準断熱材の局所熱伝導率λpの測定ステップ302を行い、最後に、基準熱伝導率λbtの判定ステップ303により基準熱伝導率λbtを求める。
【0030】
図4は、基準熱伝導率λbtの測定方法に関する説明図である。図3に示した局所熱伝導率λpの測定点の設定ステップ301を行うために用いる基準断熱材S´の芯材6、外皮材4の物性及び厚さLは、所望する被測定断熱材Sと芯材6、外皮材4の物性及び厚さLが同じとなるものを用いる。基準熱伝導率λbtは外皮材ヒートリーク熱流qv´の影響がない局所熱伝導率λpを測定する必要があるため、基準断熱材S´の形状は、向かい合う辺同士の距離ができるだけ離れている形状を用いる。特に、基準断熱材S´の寸法として長辺と短辺との長さが一致する150mm×150mm以上の正方形形状が好ましい。また基準断熱材S´は、上面を構成する辺の長さが厚みの6倍以上であることが好ましい。
【0031】
まず図3に示した局所熱伝導率λpの測定点の設定ステップ301を行う。図4の基準断熱材S´の上下平面Pu´、Pl´上に、上平面Pu´を構成する辺Ex´、Ey´と平行となる複数の線EL´を、間隔ΔE´で等間隔となるよう格子状に描く。この時、1本の線EL´は基準断熱材S´の中心点を通るようにひく。格子状にひかれた線EL´のそれぞれの交点を測定点G´とし、特に上平面Pu´の中心点をC、中心点Cに隣接する測定点をC´とする。ここで間隔ΔE´は10mm程度とすることが好ましい。
【0032】
次に図3に示した基準断熱材S´の局所熱伝導率λpの測定ステップ302を行う。図4の測定点G´、C及びC´における局所熱流q、温度T1、T2、測定点G´における検査面積ΔG´及び断熱材厚さLを夫々求め、数6のように測定点G´、C及びC´における局所熱伝導率λpを求める。
【0033】
【数6】
【0034】
最後に、図3に示した局所熱伝導率λpの測定ステップ302で求めた局所熱伝導率λpが基準熱伝導率λbtとなり得るかどうかの基準熱伝導率λbtの判定ステップ303を行う。基準熱伝導率λbtの判定は数6のように、図4の測定点Cにおける局所熱伝導率λpが、測定点Cに隣接する夫々の測定点C´の局所熱伝導率λpと同じとなるかどうかで行い、この条件を満たす局所熱伝導率λpを基準熱伝導率λbtとする。
【0035】
この判定方法の手続きとして、まず、測定点Cの局所熱伝導率λpが格子上に設定された測定点C´に隣接する夫々の測定点G´の局所熱伝導率λpと比べて最小となるかどうかを判定する。測定点Cの局所熱伝導率λpが最小となる場合は、測定点Cが辺Ex´またはEy´から等距離にあるため、辺Ex´、Ey´から回り込む外皮材通過熱流qvが上平面Pu´の中心点で最小となる場合と、辺Ex´、Ey´からの熱の回り込みがなく芯材通過熱流qhのみとなる場合がある。測定点Cの局所熱伝導率λpが最小とならない場合は、基準断熱材S´の形状や厚さLが不均一であるため、辺Ex´、Ey´から回り込む外皮材通過熱流qvの伝わりが不均一となる場合であり、この場合は、基準断熱材S´の形状や厚さを均一にする必要がある。
【0036】
次に、測定点Cの局所熱流qが芯材通過熱流qhのみとなるかどうかを判定する。判定方法として、測定点C、C´の局所熱伝導率λpがそれぞれ同じ値をとるかどうかを判定する。これは、辺Ex´、Ey´からの熱の回り込みがある場合は、隣接する測定点C´の局所熱伝導率λpが、測定点Cの局所熱伝導率λpよりも高くなるが、辺Ex´、Ey´からの熱の回り込みがない場合は、測定点C、C´における局所熱伝導率λpが芯材通過熱流qhの影響のみとなるため、測定点C、C´のいずれの場所でも局所熱伝導率λpがそれぞれ同じ値となるためである。測定点C、C´の局所熱伝導率λpがそれぞれ一致しない場合は、辺Ex´、Ey´からの熱の回り込みの影響をなくすため、測定に用いた基準断熱材S´よりも辺Ex´、辺Ey´の長さが各々長いものを用いる必要がある。これより基準熱伝導率λbtは上記の判定方法より決定する。 以上の工程をステップAと呼ぶ。
【0037】
基準熱伝導率λbtが決まれば、図1で示した局所ヒートリーク熱伝導率λhtの算出ステップ102を行う。図5は局所ヒートリーク熱伝導率λhtの算出に関する説明図である。平面Pu上の任意の測定点Gにおける芯材通過熱流qhは一般に、芯材6の局所熱伝導率λpが外皮材4に比べて小さいためほぼ一定の値となる。また、外皮材4の厚みは芯材6に比べて桁違いに薄いため、測定点Gにおける芯材通過熱流qhは、外皮材4においてほとんど拡散せずに縦方向へ流れる。そのため、外皮材4を介して伝わる縦方向の外皮材ヒートリーク熱流qv´は、局所熱流qから芯材通過熱流qhを差し引いた形となり、数7で表される。
【0038】
【数7】
【0039】
また、数5、数6より、外皮材ヒートリーク熱流qv´、局所熱流q及び芯材通過熱流qhは数8として表される。
【0040】
【数8】
【0041】
上記より得られた数8を数7に代入することにより数9が得られる。
【0042】
【数9】
【0043】
数9で得られた局所ヒートリーク熱伝導率λhtは、温度T1、T2の温度差が変化すると、それに合わせて変化する。温度T1、T2の温度差が変化する場合、局所ヒートリーク熱伝導率λhtを温度差の関数として取り扱うことで、所望する温度差における局所ヒートリーク熱伝導率λhtを算出することができる。つまり、所望する温度T1、T2の温度差をΔTCとし、予め算出しておいた温度差ΔTa、ΔTbにおける局所ヒートリーク熱伝導率をそれぞれλhta、λhtbとすると、この局所ヒートリーク熱伝導率λhta、λhtbを用いて、温度差ΔTCにおける局所ヒートリーク熱伝導率λhtcは数学的補間、例えば線形補間方法やラグランジュ補間方法により求めることができる。線形補間方法の一例を数10に示す。ここで、aは温度差による重み係数である。
【0044】
【数10】
【0045】
この時、温度差ΔTa、ΔTbの選択には、温度差ΔTcが温度差ΔTa、ΔTbの間に含まれるよう定めることが好ましい。このように局所ヒートリーク熱伝導率λhtを温度差の関数として取り扱うことで、所望する温度差における局所ヒートリーク熱伝導率λhtを、予め測定しておいた局所ヒートリーク熱伝導率λhtより測定することなしに算出することができる。 以上の工程をステップBと呼ぶ。
【0046】
次に図1に示した局所熱伝導率λpの算出ステップ103を行う。所望する測定点Gの局所熱伝導率λpは予め算出した局所ヒートリーク熱伝導率λhtと基準熱伝導率λbtとにより数9を変形した数11で与えられる。
【0047】
【数11】
【0048】
数11より局所熱伝導率λpは基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtとの足し合わせであることが解る。これは局所ヒートリーク熱伝導率λhtが主として外皮材4の外皮材ヒートリーク熱流qv´の影響を受け、基準熱伝導率λbtが主として芯材6の芯材通過熱流qhの影響を受けるためである。つまり、複数ある外皮材4の局所ヒートリーク熱伝導率λhtと、複数ある芯材6の基準熱伝導率λbtとを予め別々に測定しておけば、所望する外皮材4と芯材6の組み合わせにおける被測定断熱材Sの局所熱伝導率λpは、被測定断熱材Sの厚みと形状がそれぞれ同一であれば、局所ヒートリーク熱伝導率λhtと基準熱伝導率λbtの足し合わせを行うだけで、所望する組み合わせの局所熱伝導率を算出することができる。
【0049】
例えば、n個の芯材S1、S2・・・Si・・・Snと、m個の外皮材S1´、S2´・・・Sj´・・・Sm´の組み合わせ、つまりn×m個を測定する場合、前記従来の測定方法では、全ての被測定断熱材Sの組み合わせn×m回を測定する必要がある。一方、本発明の方法を用いれば、外皮材4に対応した局所ヒートリーク熱伝導率λhtをn回と、芯材6に対応した基準熱伝導率λbtをm回測定し、所望する被測定断熱材Sの外皮材4の基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtとを足し合わせることで、所望する局所熱伝導率λpが求められる。例えば、被測定断熱材Sを構成する芯材6と外皮材4との各組み合わせにおける局所熱伝導率λpは、それぞれの芯材S1、S2・・・Si・・・Snの基準熱伝導率λbt1、λbt2・・・λbti・・・λbtmと、各々の外皮材S1´、S2´・・・Sj´・・・Sm´の局所ヒートリーク熱伝導率をλht1、λht2・・・λhtj・・・λhtnとを用いて、種類iの心材7と、種類jの外皮材4との組み合わせにおける局所熱伝導率λpは数12で表される。
【0050】
【数12】
【0051】
以上の工程をステップCと呼ぶ。
【0052】
最後に、図1に示した熱伝導率λの算出ステップ104を行う。図6は、図1に示した熱伝導率λの算出ステップ104の説明図である。芯材6を外皮材4で被った形式の被測定断熱材Sの局所熱伝導率λpiは、測定面Pu上の測定点Giの測定位置により、夫々異なる値をとるため、被測定断熱材Sの熱伝導率λを求める場合、測定面Pu上に複数の測定点Giを配置し、この測定点Giにおける局所熱伝導率λpiを夫々測定し、測定した局所熱伝導率λpiの総和平均をとることで正確に熱伝導率λを求めることができる。ここで、測定点Gi及び局所熱伝導率λpiの下付き添え字iは、測定点番号を表す。
【0053】
熱伝導率λの算出方法4は、まず、被測定断熱材Sの測定面Pu上に、複数の測定線ELを格子状に間隔ΔEで等間隔にひき、夫々の格子状に測定点Giを配置する。この時、測定線ELが形成する格子形状は直交するようにとる。また、間隔ΔELは、断熱材の熱伝導率λが所望する誤差以内に収まるよう十分に小さくとる。被測定断熱材Sの測定面を構成する辺Ex、Eyに隣接する測定点Giと辺Ex、Eyとの距離はΔELとなるようにする。被測定断熱材Sの形状の角が直角ではない多角形で構成される場合は、端部からの距離ができるだけ間隔ΔELとなるようにとり、かつΔELの値を小さくすることで誤差を小さくする。特に、外皮材の材質がアルミニウムとポリエチレン等の樹脂材により形成されていて、被測定断熱材Sの大きさが数100mm程度の大きさであれば、間隔ΔELを10mm程度とすることが好ましい。次に、各測定点Giにおける全ての局所熱伝導率λpiを測定する。 以上の工程をステップDと呼ぶ。
【0054】
最後に測定した全ての局所熱伝導率λpiの平均をとるために、数13のように、局所熱伝導率λpiの総和を測定点数で割ることにより被測定断熱材λの熱伝導率を求める。ここで、測定点数をn個とする。
【0055】
【数13】
【0056】
以上の工程をステップEと呼ぶ。
【0057】
このように本発明の方法を用いることで、前記従来の測定方法ではn×m回の測定が必要であったが、本発明の方法ではn回の基準熱伝導率λbtの測定と、m回の局所ヒートリーク熱伝導率λhtの測定を行えば、それ以上の測定を行うことなしに全ての組み合わせにおける被測定断熱材Sの局所熱伝導率λpの算出が行える。また、被測定断熱材Sの平面 Pu上で複数の測定点Gにおける局所熱伝導率λpを測定し、測定値の平均をとることにより、被測定断熱材の熱伝導率λを正確に算出することができる。
【0058】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2における熱伝導率算出方法に関する構成を示した図である。熱伝導率λを算出する流れは上述の実施の形態1の通り、基準断熱材S´を用いて基準熱伝導率λbtの測定ステップ101を行い、また、1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出ステップ701及び1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)を用いた局所ヒートリーク熱伝導率λhtの算出ステップ702を行い、上述の実施の形態1と同様に、局所ヒートリーク熱伝導率λhtと基準熱伝導率λbtより局所熱伝導率λpの算出ステップ103を行い、最後に熱伝導率λの算出ステップ104を行う。ここで1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)のカッコ内dは、1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)が距離の関数として与えられるため、規準とする辺、例えば後述の説明に用いる図8に示した辺Ex´から測定点G´までの最短距離dを表している。実施の形態2と上述の実施の形態1との構成上の相違点は、1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出ステップ701を用いることで、凸多角形の被測定断熱材Sにおける任意の寸法・形状及び温度条件における局所熱伝導率λpを算出できる点である。
【0059】
具体的には、凸多角形の所望する寸法・形状の被測定断熱材の局所熱伝導率λpは、断熱材の一辺からのみの熱流の回り込みを表す1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)と基準熱伝導率λbtを用いて算出することができる。まず、局所熱伝導率λpを求める点と被測定断熱材の測定面を構成する各辺からの最短距離を求め、この距離に対応する1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)を算出する。次に、算出した1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の前記各辺についての総和を求め、その点の局所ヒートリーク熱伝導率λhtとする。この局所ヒートリーク熱伝導率λhtと基準熱伝導率λbtとから任意の点の局所熱伝導率λpを算出する。また、この局所熱伝導率λpを被測定断熱材の測定面全体に渡って求め、平均を取ることによって被測定断熱材の熱伝導率を定義することができる。
【0060】
実施の形態2の説明を行う前に、1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)について図8を用いて説明する。基準断熱材S´の測定平面Pu´上の測定点G´において、外皮材4を通過する外皮材通過熱流qvは、数14で表されるように基準断熱材S´の測定平面Pu´に対して垂直方向に伝わる外皮材ヒートリーク熱流qv´と外皮材4を伝わるx方向外皮材通過熱流qvx及びy方向外皮材通過熱流qvyとに分けられる。
【0061】
【数14】
【0062】
ここでx方向外皮材通過熱流qvxは辺Ex´と平行をなし、y方向外皮材通過熱流qvyは辺Ey´と平行をなす。そのため、x方向外皮材通過熱流qvxとy方向外皮材qvyのベクトルの向きは直交する。今、被測定断熱材Sの辺Ey´からの外皮材通過熱流qvの回りこみが無い場合を考える。外皮材通過熱流qvの回りこみが無い場合とは、辺Ey´から伝わる外皮材通過熱流qvが測定点G´へ伝わる経緯で、全て縦方向(芯材6を上下面を通過する方向)に流れ出た状態、つまり測定点G´が辺Ey´から十分に離れていることをいう。この時、外皮材通過熱流qvは辺Ex´から伝わるy方向外皮材通過熱流qvyのみとなり、x方向外皮材通過熱流qvxは零となる。そのため測定点G´における外皮材ヒートリーク熱流qv´は辺Ex´から測定点G´までの最短経路となる距離dに応じて変化する。このため1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)は辺Ex´から測定点G´までの最短距離dと外皮材ヒートリーク熱流qv´の変化量との関数として与えられる。
【0063】
ここから図7に従って、実施の形態2における本発明の断熱材の熱伝導率算出方法について述べるとともに作用を説明する。まず、基準熱伝導率λbtの測定ステップ101を行う。基準熱伝導率λbtの測定は、上述の実施の形態1と同じ方法により求めることができる。
【0064】
次に、1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出ステップ701を行う。図9は1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出ステップ701に関するフローチャートである。1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出を行う流れとして、まず、基準断熱材S´を用いて局所熱伝導率λpの測定点G´の設定ステップ901を行い、設定した複数ある測定点G´における1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)を算出するために、局所熱伝導率λpを測定できるかの判定ステップ902を行い、この判定で測定が可能であることが判れば、設定した測定点G´における局所熱伝導率λpの測定ステップ903を行い、最後に測定した局所熱伝導率λpから1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出ステップ904を行う。
【0065】
図10は、局所熱伝導率λpの測定点Gi´の設定ステップ901に関する説明図である。局所熱伝導率λpの測定は、長辺と短辺の長さに差があまりなく、向かい合う辺と辺同士が十分に距離のある長方形形状の基準断熱材S´を用いて行う。測定点Gi´の位置を決めるために、基準断熱材S´の中心を通り基準断熱材S´の測定面Pu´を構成する辺Ey´と平行となるように測定線EL´を1本ひく。少なくとも3点以上の測定点Gi´を測定線EL´上に基準断熱材S´の中心点G1´から間隔ΔE´y刻みで等間隔に配置する。ここでGi´の下文字iは、測定点番号を表し、中心点を基準に中心点をi=1、中心点から間隔ΔE´y離れた測定点番号をi=2、中心点から間隔(j−1)×ΔEy離れた測定点番号をi=jとする。
【0066】
測定点の位置が決定すれば、次に1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出のための局所熱伝導率λpの判定ステップ902を行う。この局所熱伝導率λpを測定する場合、局所熱伝導率λpもまた基準断熱材S´の1辺からのみ伝わる外皮材通過熱流qvを表す必要がある。また、説明のために、測定点Gi´における局所熱伝導率を特にλpiとしてあらわす。
【0067】
測定では、基準断熱材S´の1辺からのみの外皮材ヒートリーク熱流qv´の変化量を測定する必要があるため、基準断熱材S´を構成する他辺からの外皮材ヒートリーク熱流qv´の影響が入らないようにするため、基準とする1辺を基準断熱材S´を構成する辺のうち長辺を取る必要がある。ここでは、長方形形状の基準断熱材S´の長辺である1辺を辺Ex´として説明を行う。まず、辺Ex´以外からの外皮材通過熱流qvの影響が入らないよう、測定面Pu´を構成する辺Ex´、辺Ey´から等距離に位置する中心点G1´の局所熱伝導率λp1を測定する。次に、測定した中心点G1´の局所熱伝導率λp1が基準熱伝導率λbtと一致するかを判定し、中心点G1´において外皮材通過熱流qvの影響がないことを確認する。中心点G1´における局所熱伝導率λp1が基準熱伝導率λbtより高くなる場合は、基準断熱材S´の辺Ex´、Ey´からの熱流qvが中心点G1にまで伝わっていることを表している。この場合、基準断熱材S´の寸法をさらに大きく取る必要がある。
【0068】
一方、中心点G1´における局所熱伝導率λp1が基準熱伝導率λbtと一致すれば、中心点G1´上では、基準断熱材S´の辺Ex´、Ey´から伝わる外皮材通過熱流qvの影響が無いことがわかる。また、測定線EL´上に設けた測定点Gi´上でも、基準断熱材S´の辺Ey´から伝わる外皮材通過熱流qvが無く、辺Ex´から伝わる外皮材通過熱流qvのみとなるため、基準断熱材S´の1辺からのみ伝わる外皮材通過熱流qvの影響を表すことができる。特に、外皮材の材質がアルミニウムとポリエチレン等の樹脂材により形成されていれば、基準断熱材S´の大きさとして150mm×150mm程度以上の正方形形状とすることが好ましい。
【0069】
次に、局所熱伝導率λpの測定方法19として、測定線EL´上に配した全ての測定点Gi´における局所熱流q、温度T1i、T2i及び断熱材厚さLを求め、測定点Gi´における局所熱伝導率λpiを上述実施の形態1で用いた式3により算出する。最後に、求めた局所熱伝導率λpiと基準熱伝導率λbtとを用いて1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出方法20を行う。上述の実施の形態1のように、局所ヒートリーク熱伝導率λhtは測定点Gi´で測定される局所熱伝導率λpiから基準熱伝導率λbtを引いた値となるため、1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)についても同様に算出が行え、数15で表される。
【0070】
【数15】
【0071】
以上の工程をステップFと呼ぶ。
【0072】
1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)は、最短距離dの関数として表されるため、例えば、数16のような最短距離dを用いた関数として与えることができる。
【0073】
【数16】
【0074】
ここで、dは距離を表し、A0、A1、A2、A3、・・・、Anはn次の多項式の係数である。
【0075】
また、温度T1i、T2iの温度差が変化する場合、上述の実施の形態1と同様に、1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)もまた変化する。所望する温度T1i、T2iの温度差をΔTCiとし、予め算出しておいた温度差ΔTai、ΔTbiにおける1次元局所ヒートリーク熱伝導率をそれぞれλht(d)a、λht(d)bとする。この局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)a、λht(d)bを用いて、温度差ΔTCiにおける局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)cは、例えば線形補間方法により数17で求められる。
【0076】
【数17】
【0077】
この時、温度差ΔTai、ΔTbiの選択には、温度差ΔTCiが温度差ΔTai、ΔTbiの間に含まれるよう定めることが好ましい。このように1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)を温度の関数として取り扱うことで、所望する温度差における1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)を、予め測定しておいた1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)より測定することなしに算出することができる。以上の工程をステップGと呼ぶ。
【0078】
次に、上述の方法で求めた1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)を用いた局所ヒートリーク熱伝導率算出ステップ702について説明する。図11は、1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)を用いた局所ヒートリーク熱伝導率λhtの算出に関するフローチャートである。局所ヒートリーク熱伝導率λhtの算出の流れとして、まず、被測定断熱材Sの測定点Gと被測定断熱材Sの各辺との最短距離dの算出ステップ111を行い、各辺の最短距離dにおける1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)の算出ステップ112を行なう。このステップで算出した1次元局所ヒートリーク熱伝導率の和から局所ヒートリーク熱伝導率を算出するステップ113を行い、最後に、測定点Gにおける局所熱伝導率λpの算出ステップ114を行う。上記の1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d)を用いた局所熱伝導率λpの算出に関する具体例について図12を用いて説明する。図12は、4辺から構成された被測定断熱材Sを用いた例である。まず、所望する測定点Gから辺E1,E2,E3、E4に対する最短距離d1,d2,d3,d4の算出を行う。次に、求めたそれぞれの最短距離d1,d2,d3,d4に対する1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d1)、 λht(d2)、 λht(d3)、λht(d4)を数15より算出する。最後に、求めた1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(d1)、λht(d2)、λht(d3)、λht(d4)と、基準熱伝導率λbtとを足し合せることで局所熱伝導率λpの算出を行う。
【0079】
被測定断熱材Sがn角形の場合、被測定断熱材Sを構成する辺Em(n≧m)から測定点Gまでの最短距離dmで得られる1次元局所ヒートリーク熱伝導率λht(dm)と、基準熱伝導率λbtを用いて局所熱伝導率λpは数18で表される。
【0080】
【数18】
【0081】
以上の工程をステップHと呼ぶ。
【0082】
このように数18を用いることで、予め基準断熱材により基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtを求めておくことで、被測定断熱材Sの寸法・形状及び温度が変わる場合でも、所望する局所熱伝導率λpを測定することなく算出できるという効果が得られる。
【0083】
また、被測定断熱材の熱伝導率λは、上述の実施の形態1と同じ方法により、局所熱伝導率λpを被測定断熱材の測定面全体の平均をとることにより求めることができる。
【0084】
次に、本発明の方法を用いて得られた結果と実験により得られた結果について説明する。図13は、本発明の方法で用いた被測定断熱材Sの測定環境の説明図である。被測定断熱材Sにおいて、まず、格子状に複数の測定線ELを間隔ΔEで等間隔にひき、また、測定線ELが構成する格子の交点の1点は、被測定断熱材Sの中心を通るようにひく。ここで、測定した被測定断熱材Sの形状は、正方形、長方形の2種類で、厚さ2mmの心材7を外皮材4で被った構造の断熱材である。断熱材形状のそれぞれの寸法は、正方形が50mm×50mm、100mm×100mm、150mm×150mm、長方形が40mm×80mm、60mm×120mm、80mm×160mm、となる6種類の断熱材を測定し結果比較を行った。測定に際して間隔ΔELは10mm間隔とし、また、測定線ELが形成する格子形状は直交するような配置として測定を行う。
【0085】
測定点Gにおける局所熱伝導率λPは被測定断熱材の厚さL、測定点をG、測定点Gにおける検査面積をΔG、測定点Gにおける温度をT1、T2、温度をT1、T2の平均温度をとる周囲温度をTa、測定点Gにおける熱流をqとして、熱流qと温度T1、T2及び断熱材の厚さLを測定し数3より測定点Gにおける局所熱伝導率λpを測定する。また、本発明の方法についても、上述した実施の形態2の方法により局所熱伝導率λpを算出した後、数13を用いて、全ての測定点Gにおける局所熱伝導率λpの平均をとり熱伝導率λを算出する。
【0086】
図14、15は、実験により測定された熱伝導率λ及び本発明の方法により算出された熱伝導率λとの結果比較図である。図14は正方形、図15は長方形についてそれぞれ上述した方法により熱伝導率λを測定した結果であり、熱伝導率λは、夫々の結果において平均1%前後で良好に一致し、最大でも誤差約3%以内に収まることがわかる。
【0087】
本発明の方法により、予め基準断熱材S´により基準熱伝導率λbtと局所ヒートリーク熱伝導率λhtを求めておくことで、被測定断熱材Sの寸法・形状及び温度が変わる場合でも、所望する局所熱伝導率λpを測定することなく算出でき、また、被測定断熱材の熱伝導率λは、この算出された局所熱伝導率λpを被測定断熱材の測定面全体の平均をとることにより、簡単かつ正確に算出できるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の断熱材の熱伝導率算出方法は、断熱材、特に外皮材と芯材とから構成された断熱材の熱伝導率を算出するのに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態1における断熱材の熱伝導率算出方法のフローチャート
【図2】本発明の実施の形態1における断熱材の熱伝導率算出方法の測定環境及び基準熱伝導率と局所ヒートリーク熱伝導率の説明図
【図3】基準熱伝導率λbtの測定ステップのフローチャート
【図4】基準熱伝導率λbtの測定ステップに関する説明図
【図5】局所ヒートリーク熱伝導率の算出に関する説明図
【図6】熱伝導率λの算出ステップの説明図
【図7】本発明の実施の形態2における断熱材の熱伝導率算出方法のフローチャート
【図8】1次元局所ヒートリーク熱伝導率の説明図
【図9】1次元局所ヒートリーク熱伝導率算出ステップのフローチャート
【図10】熱伝導率の測定点の設定に関する説明図
【図11】1次元局所ヒートリーク熱伝導率を用いた局所ヒートリーク熱伝導率算出ステップのフローチャート
【図12】局所熱伝導率算出に関する具体例を示した説明図
【図13】本発明の方法及び実験で用いた被測定断熱材の測定環境の説明図
【図14】実験と本発明の方法により得られた正方形形状の熱伝導率結果の比較図
【図15】実験と本発明の方法により得られた長方形形状の熱伝導率結果の比較図
【図16】断熱材の芯材と外皮材を伝わる熱流経路を示した図
【図17】従来の測定方法及び測定装置に関する説明図
【符号の説明】
【0090】
S 被測定断熱材
4 外皮材
6 芯材
101 基準熱伝導率λbtの測定ステップ
102 局所ヒートリーク熱伝導率λhtの算出ステップ
103 局所熱伝導率λpの算出ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材が外皮材に包まれ、厚みが均一である断熱材Sの熱伝導率算出方法であって、
断熱材Sの厚みと芯材の種類が同じである基準断熱材S´を予め用意し、その上面中心の芯材通過熱流qhを測定し基準熱伝導率λbtを算出するステップ(ステップAと呼ぶ)と、
前記外皮材の一面から対面の測定点Gにおいて前記外皮材を介して伝わる局所ヒートリーク熱流q´を算出し、局所ヒートリーク熱伝導率λhtを算出するステップ(ステップBと呼ぶ)と、
前記基準熱伝導率λbtと前記局所ヒートリーク熱伝導率λhtとを合算して、前記断熱材Sの測定点Gの熱伝導率λpi(iは1)を算出するステップ(ステップCと呼ぶ)からなることを特徴とする断熱材の熱伝導率算出方法。
【請求項2】
さらに、前記ステップCを前記外皮材の測定面全体におけるn個の測定点で行うステップ(ステップDと呼ぶ)と、
前記n個の測定点で算出された熱伝導率λPi(iは1からn)を総和した値を測定点数nで除した値から前記断熱材Sの熱伝導率λを算出するステップ(ステップEと呼ぶ)
からなることを特徴とする請求項1に記載の断熱材の熱伝導率算出方法。
【請求項3】
前記基準断熱材S´は、上面を構成する辺の長さが厚みの6倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の断熱材の熱伝導率算出方法。
【請求項1】
芯材が外皮材に包まれ、厚みが均一である断熱材Sの熱伝導率算出方法であって、
断熱材Sの厚みと芯材の種類が同じである基準断熱材S´を予め用意し、その上面中心の芯材通過熱流qhを測定し基準熱伝導率λbtを算出するステップ(ステップAと呼ぶ)と、
前記外皮材の一面から対面の測定点Gにおいて前記外皮材を介して伝わる局所ヒートリーク熱流q´を算出し、局所ヒートリーク熱伝導率λhtを算出するステップ(ステップBと呼ぶ)と、
前記基準熱伝導率λbtと前記局所ヒートリーク熱伝導率λhtとを合算して、前記断熱材Sの測定点Gの熱伝導率λpi(iは1)を算出するステップ(ステップCと呼ぶ)からなることを特徴とする断熱材の熱伝導率算出方法。
【請求項2】
さらに、前記ステップCを前記外皮材の測定面全体におけるn個の測定点で行うステップ(ステップDと呼ぶ)と、
前記n個の測定点で算出された熱伝導率λPi(iは1からn)を総和した値を測定点数nで除した値から前記断熱材Sの熱伝導率λを算出するステップ(ステップEと呼ぶ)
からなることを特徴とする請求項1に記載の断熱材の熱伝導率算出方法。
【請求項3】
前記基準断熱材S´は、上面を構成する辺の長さが厚みの6倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の断熱材の熱伝導率算出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−248272(P2007−248272A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72317(P2006−72317)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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