説明

断熱紙容器

【課題】紙と樹脂からなる断熱容器であって、内容物の匂いの移行や外部臭気や湿気の内容物への移行がなく、内容物の密封性や耐油性に優れ、材料コストの低廉化と製造工程の簡略化や短縮が可能な容器を提供する。
【解決手段】側壁部を構成するシート材が少なくとも最内層から順にシーラント層、接着層、非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂層、紙層、断熱層からなり、底部を構成するシート材が少なくとも最内層から順にシーラント層、接着層、非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂層、紙層からなる断熱紙容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席麺、スープやシチュー等の乾燥状態の即席食品を密封包装するカップ状の容器であり、飲食時に熱湯を注いでも湯の熱が外側に伝わり難い断熱構造を有する紙製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
図9に示すようナ形状の包装容器が即席食品を密封包装するために、カップ状の容器の開口部を蓋材でシールしたものが広く用いられている。即席麺のような食品を食する際には、熱湯が注がれたカップ状の容器を手で掴む必要があり、このような用途の容器には、断熱性が要求される。
【0003】
そのため、断熱紙容器を構成する材質には、例えばポリスチレン(PS)の発泡体が用いられ、厚さは約1.0〜2mm程度であり、95℃の熱湯を容器に注いでも、側壁最外面における温度は60℃程度となるように断熱性は非常に優れている。しかし、PSは耐熱性が低いため、電子レンジで加熱調理するような用途には適さない。更には、断熱紙容器全体における樹脂比率が高いため、ゴミの量が多くなり、さらに焼却処分する際には高熱を発して燃焼するため焼却炉を損傷しやすいことが知られており、環境への負荷の点からも容器として好ましいとは言えず、容器の構成の見直しが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4140081号公報
【特許文献2】特開2003−200980号公報
【特許文献3】特開2004−231197号公報
【特許文献4】特許第3596681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、液体を保持できるように容器側壁部の内面をポリエチレン(PE)でコーティングした紙層を内側とし、波状の中芯を中間に形成して外側に紙層を積層したシート材からなる断熱性を有する紙容器、この紙層を内側とし空隙を形成するように紙層を積層し空隙に占める空気を断熱層とした断熱性を有する二重紙容器(特許文献1)、この紙層を内側とし容器外面に発泡層が形成されるようにこの紙層の外側に低融点の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン樹脂を積層し、容器組立後に加熱により発泡させ発泡層を形成し断熱層とした断熱性を有する発泡紙容器(特許文献2、3、4)等のカップ状の容器が提案されている。
【0006】
しかし、このような紙容器は、空気や水蒸気等の気体を遮断する性質(以下「ガスバリア性」という)に乏しく、密封包装後においても、側壁や底部を介して内容物の風味が外部に放出され、風味を損なってしまう問題や外部からの臭気(例えば防虫剤や芳香剤などの匂いや香り成分を外部に発散させる物質との接触や容器の保管場所に発生する匂いなど、食品とは相容れない匂いや香り)が紙容器の内部に移行し、内容物の風味の変質を招き、食品としての価値を著しく低下させる問題を生じていた。
【0007】
そこで、これらの問題を改善するためにガスバリア性を有する基材(以下「ガスバリア層」という)を接着剤で紙層に積層しガスバリア性を保持させる方法がある。ガスバリア層には、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)やナイロン(Ny)、エチレン―ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)などのガスバリア性を有する合成樹脂フィルム、アルミニウム箔などの金属箔、アルミニウムなどの金属や酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどの金属酸化物を蒸着層としポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルムに積層したものがある。これらはガスバリア性を有するため、酸素、水蒸気や臭気等を高いレベルで遮断することは可能であるが、内容物の風味の外部への放出による風味の劣化や外部からの匂い(臭気)の容器内部への移行による内容物の風味の変質などの要求される能力に比べて過剰な能力であり、容器の材料のコスト増や工程の増加による製造コスト増、生産性の低下などのコストの面での問題を有している。さらにこのように作製した紙容器では、接着剤中の成分や基材中の低分子量成分(溶剤等)が気化し臭気を発生するという問題も有している。
【0008】
そこで、本発明は、紙と樹脂からなる断熱容器であって、内容物の匂いの移行や外部臭気や湿気の内容物への移行がなく、内容物の密封性や耐油性に優れ、材料コストの低廉化と製造工程の簡略化や短縮が可能な容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、側壁部と底部とを有する断熱紙容器であって、側壁部を構成するシート材が少なくとも最内層から順にシーラント層、接着層、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、紙層、断熱層からなることを特徴とする断熱紙容器である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、断熱層が発泡した熱可塑性樹脂層からなることを特徴とする断熱紙容器である。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、側壁部と底部とを有する断熱紙容器であって、側壁部を構成するシート材が少なくとも最内層から順にシーラント層、接着層、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、紙層からなる内筒と、内筒の外周面に上方及び下方に開口した外筒とを上部及び/又は下部で接着し、内筒と外筒の間に空隙を形成してなることを特徴とする断熱紙容器である。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、側壁部と底部とを有する断熱紙容器であって、前記側壁部を構成するシート材が少なくとも最内層から順にシーラント層、接着層、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、紙層からなる内筒と、上下方向に凹凸の断面波形層を有する外筒とからなることを特徴とする断熱紙容器である。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、側壁部と底部とを有する断熱紙容器であって、側壁部を構成するシート材が少なくとも最内層から順にシーラント層、接着層、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、紙層からなる内筒と、内筒の外周面に上方及び下方に開口した外筒とを、内筒又は外筒のいずれか一方の周囲に凸条を形成し、凸条を介して内筒と外筒を接着してなることを特徴とする断熱紙容器である。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の断熱紙容器において、底部を構成するシート材が少なくとも最内層から順にシーラント層、接着層、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、紙層からなることを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6に記載の断熱紙容器において、ポリエチレンテレフタレート樹脂層は、二塩基酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバンシン酸から選択される成分と、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオールから選択される成分とを、それぞれ1つ又は複数を組み合わせて重合した樹脂からなることを特徴とする。
【0016】
さらに請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7に記載の断熱紙容器において、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の断熱紙容器によれば、紙及び樹脂を積層したシート材からなる断熱紙容器において、容器内の内容物の匂いの外部への移行や外部臭気の内容物への移行のない移り香防止機能を有するとともに、内容物の密封性や耐油性に優れ、製造工程の簡略化や短縮を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る断熱紙容器の断面図である。
【図2】図1に示す断熱紙容器の層構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る断熱紙容器の部分断面図である。
【図4】図3に示す断熱紙容器の層構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る断熱紙容器の断面図である。
【図6】図5に示す断熱紙容器の層構成を示す断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る断熱紙容器の部分断面図である。
【図8】図7に示す断熱紙容器の層構成を示す断面図である。
【図9】断熱紙容器の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る断熱紙容器の断面図である。
【0020】
断熱紙容器1は、紙と樹脂を積層したシート材から構成され、側壁部7及び底部8により、上方に開口部と下方に内容物を収納する収納部が形成されている。断熱紙容器1は、開口部から内容物(図示せず)を収納部に充填した後、開口部を蓋材9で封止して用いられる。蓋材9は、少なくとも側壁部7及び底部8と同等の機能を有することが必要であり、匂いの外部への移行や外部臭気の内容物への移行を生じなければよい。
【0021】
図2は、図1に示す断熱紙容器1のシート材の層構成を示す断面図であり、より特定的には、(a)は、図1のA部分(側壁部)の層構成を示す図であり、(b)は、図1のB部分(底部)の層構成を示す図である。
【0022】
図2(a)に示すように、側壁部7は、最外面(図2(a)の左側)から順に、発泡した樹脂からなる発泡層3と、紙層2と、ポリエチレンテレフタレート(PET)層4と、接着層5と、容器成型時のシーラント層6とからなる。
最外面の発泡層3には必要に応じて、発泡前の積層したポリエチレン(PE)層に印刷を行い、絵柄や文字などの表示情報を設けることができる。
【0023】
紙層2は、例えば秤量150〜400g/cmの紙からなり、板紙、コートボール、ボール紙、マニラボール、カップ原紙、カード紙などが使用できる。発泡層3は、例えばポリエチレン樹脂であり、紙層2の表側に積層される。積層する方法には、樹脂を熱溶融して基材に塗布する押出しコーティング法、あるいはフィルムになったものを貼り合わせるラミネート法などがあるが、発泡を安定して発現するには、押出しコーティング法が好ましい。なお、紙層の表面はポリエチレン樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂を積層する際の密着性を考慮し、コロナ放電処理またはオゾン処理を行うとよい。
【0024】
発泡層3となる表面のポリエチレン樹脂層の厚さは、通常15〜100μmの範囲が好ましいが、特に限定はされない。ただし、厚すぎても、薄すぎても発泡しにくくなる場合があるため、発泡層3を形成するためには樹脂の特性に合わせた適切な範囲を選定することは必要である。
【0025】
そこで発泡層3となるポリエチレン樹脂層として、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂が挙げられ、その熱的特性は、樹脂のメルトフローレイト(MFR)がJIS K7210の方法で測定して1〜15の範囲にあり、かつ、融点がJIS K7121の方法で測定して90℃〜130℃の範囲にあることが望ましい。
【0026】
低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂のMFRが低いと気泡の保持が困難になり発泡層を形成しがたく、MFRが15より高いと押出し難くなるだけではなく、容器内の内容物の味覚が悪くなったりする。好ましくは4〜8の範囲である。
【0027】
また、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂の融点は発泡層形成と内容物保護性から決まるが、発泡時の温度、すなわち原紙に含有される水分が一気に水蒸気に変化する温度である100℃以下で軟化することが必要であり、そのため融点の下限は90℃が適当である。
【0028】
低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂の押出し条件としては、特に制約はなく、通常の押出し条件である押出し温度がダイス直下で280℃〜360℃程度、ニップ圧は通常設定条件の70%〜120%程度でよい。
【0029】
移り香防止機能としてのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4は、本発明の効果を発揮するには、非晶性(非晶質)であることが望ましく、ポリエチレンテレフタレート樹脂層としては、二塩基酸成分として、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバンシン酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、およびこれらの構造異性体、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸またはその誘導体、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類、グリコール酸などのオキシ酸またはその誘導体から選択される成分と、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールのような脂環式グリコールやさらにはビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物誘導体から選択される成分とから、それぞれ1つ又は複数を選択し組み合わせて、二塩基酸成分とグリコール成分とのエステル交換反応またはエステル化反応を行い、次いで溶融重縮合反応により得ることができる。
本発明におけるポリエチレンテレフタレート樹脂は、二塩基酸成分とグリコール成分の組み合わせでガラス転移温度Tgが約―20〜80℃の非晶性共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂がとくに適しており、さらには通常の室温における移り香防止には、ガラス転移温度Tgが約0〜20℃の樹脂が好ましい。
【0030】
このようにして得られたポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4は、厚さ10〜30μmで形成することが好ましい。
【0031】
シーラント層6は、容器成形時に他層との接着性や容器内の内容物や熱湯が接するため、耐熱性、耐油性を考慮することが望ましく、例えばポリエチレン樹脂であり、好ましくは低密度ポリエチレン樹脂が挙げられる。厚さ20〜50μmで形成することが好ましい。
また、ポリエチレン樹脂には、発泡層3のポリエチレン樹脂を発泡させる時に一緒に発泡しないこと、耐熱性及び密着性に優れることを考慮して、エポキシ化植物油含有のポリエチレン樹脂を用いるとよい。
【0032】
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層51とシーラント層52との間には両層を密着させるための接着層5があり、例えば無水マレイン酸などの酸無水物をグラフト化したポリオレフィンがあり、好ましくは無水マレイン酸変性ポリエチレンがあり、厚さ3〜15μmで形成することが好ましい。
【0033】
図2(b)に示すように、底部8は、最外面(図2(b)の下面)から順に、紙層2と、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4と、側壁部7とのシーラントとなるポリエチレン(PE)樹脂からなるシーラント層6とを有する。紙層2は、例えば秤量150〜400g/cmの紙からなる。なお、底部8は、発泡層3を備えない以外は、側壁部7と同じ層構成であっても構わない。
【0034】
断熱紙容器1を作製するには、まず、側壁部7及び底部8を構成するシートを作製する。側壁部7を構成するシートを作製するには、例えば、紙層2の一方の面に後の発泡層3となるポリエチレン樹脂を溶融押出しラミネートにより積層し、紙層2の他方の面にポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4、接着剤層5とシーラント層7をインラインにて溶融押出しラミネートにより積層する。
【0035】
底部8を構成するシートを作製するには、例えば、紙層2面にポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4、接着剤層5とシーラント層7を3層共押出しにて製膜・ラミネートし積層する。この時、紙層2の積層面にはコロナ放電処理やオゾン処理を行うことで、紙層2とポリエチレン樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂との接着性を更に向上させることができる。
【0036】
次に、作製したシート材を金型で打ち抜き加工することにより、側壁部7を形成する扇状ブランクスと底部8を形成する円形状ブランクスを作製する。そして、カップ成形機を用いて、各ブランクスから逆円錐台形の断熱紙容器1を成形する。側壁部7は、扇状ブランクスを筒状にまるめて端部を重ね合わせて形成するため、シート材の端面10が容器の表面に露出している。最後に成形した断熱紙容器1を加熱炉(オーブン)等で120℃程度加熱して、外側のポリエチレン樹脂層を溶融させた状態で紙層2内部の水分を蒸発させることにより、ポリエチレン樹脂が発泡し発泡層3を形成する。なお、断熱紙容器1の形状は円筒形状でもよく、その場合のブランクスは矩形状となる。
【0037】
断熱紙容器1の側壁部7及び底部8に移り香防止機能としてのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4を形成することにより、移り香防止機能が付与されるため、食品を入れる容器として利用する場合、容器内の内容物の匂いの外部への移行や外部臭気や湿気の内容物への移行が効果的に抑制できる。また、側壁部7外面には、発泡層3が設けられることにより、断熱効果が付与され、断熱紙容器1の外側に容器内部の熱が伝わり難くなるため、例えば即席麺などが入った容器内に熱湯が注がれた断熱紙容器1を手で掴むことが容易となる。さらに断熱紙容器1は、アルミニウム箔を含まず、紙及び樹脂から構成されている。そのため、省資源化や分別廃棄の容易性において優れている。
【0038】
図3に示す断熱紙容器11は、第2の実施形態であり、上記の図1及び図2に記載の断熱紙容器1とは断熱層の形状が相違するが、移り香防止機能としてのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4を形成する点では同じである。
図4は、図3に示す断熱紙容器11のシート材の層構成を示す部分断面図であり、(a)は、図3のA部分(側壁部)の層構成を示す図であり、(b)は、図3のB部分(底部)の層構成を示す図である。
【0039】
断熱紙容器11の側壁部17の構造は最内層から順にシーラント層6、接着層5、ポリエチレンテレフタレート樹脂層4、紙層2を積層した内筒12と、内筒12の外周面に上方及び下方に開口した外筒13とを重ね合せ、内筒12と外筒13との上部及び下部で接着、或いは上部又は下部のいずれかで接着し、内筒12と外筒13の間に空隙14を形成した二重容器である。
なお、底部18は、上記の底部8と同じである。
【0040】
外筒13は、紙単体(内筒13とヒートシールにより接着固定する時にはポリエチレン樹脂などのヒートシール性フィルムを被覆するなどして用いることができる)でよく、板紙、コートボール、ボール紙、マニラボール、カップ原紙、カード紙などが使用できる。その外面には必要に応じて、文字や図柄などの印刷(図示しない)や保護層(図示しない)を設けることができる。
【0041】
側壁部17の内筒12は、その上端の開口縁にシートを外向きに巻き込んだ外向カール部15を形成し、外筒13は、その上端縁に内向カール部16が形成され、内向カール部16が内筒12の外向カール部15の下部に位置するように接着し、外筒13の下端縁は内筒12の下側外面と密着させてなり、必要に応じて接着させることも可能である。接着方法は接着剤を用いる方法、また内筒12や外筒13にヒートシール性フィルムを被覆しヒートシールにより接着固定する方法など従来公知の手段を用いることができる。
【0042】
また外筒13の構造は、図示しないが上記以外にも外筒13の紙層2の下端縁を内側に折り曲げた折曲部、外筒13の紙層2の下端縁を内側にV字状に折り曲げたV字状折曲部、外筒13の紙層2の下端縁を内側に2段に折り曲げた2段折曲部、外筒13の紙層2の下端縁を内側に2重に折り曲げた2重折曲部、外筒13の紙層2の下端縁に内向きにカールさせた内向カール部などと様々な構造とすることができ、その内筒12の外面との接着も内筒12の上下方向の長さとほぼ同じ長さか、それより短い長さとすることができる。いずれの構造であっても、内筒12と外筒13の間に空隙14が形成されればよい。
【0043】
また、内筒12の上端の開口縁を外向き偏平カール部(図示しない)とすることも可能であり、偏平状とすることにより、開口部を覆って蓋材9を取り付ける際の熱接着性を良くすることができる効果を奏する。
これらの内筒12と外筒13の密着構造を自由に選択し、組み合わせることができる。
【0044】
図5に示す断熱紙容器21は、第3の実施形態であり、上記の図1及び図2に記載の断熱紙容器1とは断熱層の形状が相違するが、移り香防止機能としてのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4を形成する点では同じである。
図6は、図5に示す断熱紙容器21のシート材の層構成を示す断面図であり、より特定的には、(a)は、図5のA部分(側壁部)の層構成を示す図であり、(b)は、図5のB部分(底部)の層構成を示す図であり、(c)は、A部分(側壁部)の断面波形層を有するシート材25の波形構造を示す図である。
【0045】
断熱紙容器21の側壁部27の構造は最内層から順にシーラント層6、接着層5、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4、紙層2を積層した内筒22と、内筒22の外周面に上方及び下方に開口した上下方向に凹凸の断面波形層を有するシート材25からなる外筒23とを重ね合せ、内筒22と外筒23との接触部分で接着し、内筒22と外筒23の間の波形に沿って上下方向に形成された空隙24を形成した断熱紙容器である。
なお、底部28は、上記の底部8と同じである。
【0046】
この外筒23を構成する断面波形層を有するシート材25は、紙をダンボールにおける中芯のように波形に成形した紙材26の片面の波形の各頂部と紙材29の裏面を、接着剤を介して貼り合わせたシート材(片ダンボール形状)であり、波形に成形した紙26のもう片面の各頂部を内筒22と接着することにより、内筒22と外筒23が接着され、断熱紙容器21が形成される。
また、断面波形層を有するシート材25は、波形に成形した紙の両面の各頂部をそれぞれ紙の裏面と接着剤を介して貼り合わせたシート材(図示しない)を外筒23としてもよい。
なお、底部38は、上記の底部8と同じである。
【0047】
図7に示す断熱紙容器21は、第4の実施形態を表し、図7の左半分は外筒33から見た外観と、外筒33の内側の内筒32の状態を表し、また右半分は断面を表す部分断面図となっている。上記の図1及び図2に記載の断熱紙容器1とは断熱層の形状が相違するが、移り香防止機能としてのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4を形成する点では同じである。
図8は、図7に示す断熱紙容器31のシート材の層構成を示す断面図であり、より特定的には、(a)は、図7のA部分(側壁部)の層構成を示す図であり、(b)は、図7のB部分(底部)の層構成を示す図である。
【0048】
断熱紙容器31の側壁部37の構造は、内筒32の外周面に、上方及び下方に開口した紙材36からなる外筒33を、内筒32又は外筒33のいずれか一方の周囲に凸条35を形成し、この凸条35の頂部を介して内筒32と外筒33が接着され、内筒32と外筒33の間に形成された空隙34を有する断熱紙容器31が形成される。
なお、底部38は、上記の底部8と同じである。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を具体的に実施した実施例について説明する。実施例1〜5及び比較例1は、図1に示した積層構造を有するシート材を用いて作製した断熱紙容器1であり、それぞれ、移り香防止機能としてのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4の構成が異なっている。
【0050】
そこで、各実施例と比較例で得られたポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を用いて、紙層2の一方面にコロナ放電処理を行い、ついで発泡層となるポリエチレン樹脂を溶融押出により積層し、紙層2の他方面に、コロナ放電処理を行いつつ溶融押出したポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4、接着層5として無水マレイン酸変性ポリエチレン、シーラント層6となるポリエチレン樹脂を積層した側壁部用のシート材を作製し、さらに紙層2面にポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4、接着剤層5とシーラント層7を3層共押出しにて製膜・ラミネートし積層した底部8のシート材を作製し、この側壁部7及び底部8の各シート材を金型で打ち抜き加工し、側壁部7を形成する扇状ブランクスと底部8を形成する円形状ブランクスを作製し、カップ成形機を用いて、各ブランクスから逆円錐台形の断熱紙容器を成形する。そして、成形した断熱紙容器を加熱炉(オーブン)等で120℃程度加熱し、外側のポリエチレン樹脂層を発泡させ発泡層3を形成し断熱紙容器1を作製する。
【0051】
[移香性]
この断熱紙容器1に内容物としてパラジクロロベンゼン、ナフタレンをそれぞれ入れて、開口部を、ガスバリア性を有するアルミ箔層を含むヒートシール可能な積層シートからなる蓋材9で蓋い、ヒートシールし密封した。これらの容器をアルミ箔入りパウチ袋に入れた後、40℃湿度90%の環境下にて10日間保存し、開封後のパウチ袋に移行したパラジクロロベンゼン、ナフタレンの臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
官能評価は実際に匂いを嗅ぎ、臭気の有無を判断し、「◎:臭気無し、○:わずかに臭気有り、×:臭気有り」により評価した。
【0052】
以下、表1の順に、各実施例及び比較例の特徴と評価結果を説明する。
【0053】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4の構成材料の二塩基酸成分にテレフタル酸とアジピン酸、グリコール成分にエチレングリコールとジエチレングリコールを組み合わせて、二塩基酸成分とグリコール成分とのエステル交換反応またはエステル化反応を行い、次いで溶融重縮合反応により非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を得た。
この樹脂では、パラジクロロベンゼンの極めてわずかに臭気が感じられたが、気になるほどの臭気ではなかった。ナフタレンの臭気を感じることはなかった。
【0054】
(実施例2)
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4の構成材料の二塩基酸成分にテレフタル酸とイソフタル酸、グリコール成分にエチレングリコールとネオペンチルグリコールを組み合わせて、エステル交換反応またはエステル化反応を行い、次いで溶融重縮合反応により非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を得た。
この樹脂では、パラジクロロベンゼン、ナフタレンのいずれも臭気を感じることはなかった。
【0055】
(実施例3)
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4の構成材料の二塩基酸成分にテレフタル酸、グリコール成分にエチレングリコールとジエチレングリコールとネオペンチルグリコールを組み合わせて、エステル交換反応またはエステル化反応を行い、次いで溶融重縮合反応により非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を得た。
この樹脂では、パラジクロロベンゼン、ナフタレンのいずれも臭気を感じることはなかった。
【0056】
(実施例4)
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4の構成材料の二塩基酸成分にテレフタル酸とイソフタル酸とセバシン酸、グリコール成分にエチレングリコールとネオペンチルグリコールを組み合わせて、エステル交換反応またはエステル化反応を行い、次いで溶融重縮合反応により非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を得た。
この樹脂では、パラジクロロベンゼン、ナフタレンのいずれも臭気を感じることはなかった。
【0057】
(実施例5)
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4の構成材料の二塩基酸成分にイソフタル酸とアジピン酸、グリコール成分にエチレングリコールと1,6−ヘキサンジオールを組み合わせて、エステル交換反応またはエステル化反応を行い、次いで溶融重縮合反応により非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を得た。
この樹脂では、パラジクロロベンゼンの極めてわずかに臭気が感じられたが、気になるほどの臭気ではなかった。ナフタレンの臭気を感じることはなかった。
【0058】
(比較例)
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層4の代わりにポリエチレン樹脂とした。
この樹脂ではパラジクロロベンゼン、ナフタレンのいずれも強い臭気が感じられ、移り香防止効果がないことが確認された。
【0059】
【表1】

【0060】
本発明の断熱紙容器によれば、容器内の内容物の匂いの外部への移行や外部臭気の内容物への移行のない移り香防止機能を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、即席麺、スープ粉末等の即席食品を密閉包装するための、断熱紙容器に用いることができる。
【符号の説明】
【0062】
1、11、21、31 断熱紙容器
2 紙層
3 発泡層
4 ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂層
5 接着層
6 シーラント層
7、17、27,37 側壁部
8、18、28、38 底部
9 蓋
10 端面
12、22、32 内筒
13、23、33 外筒
14、24、34 空隙
15 外向カール部
16 内向カール部
25 断面波形層を有するシート材
26 波形に成形した紙材
29 紙材
35 凸条
36 紙材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁部と底部とを有する断熱紙容器であって、前記側壁部を構成するシート材が少なくとも最内層から順にシーラント層、接着層、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、紙層、断熱層からなることを特徴とする断熱紙容器。
【請求項2】
前記断熱層が発泡した熱可塑性樹脂層からなることを特徴とする請求項1に記載の断熱紙容器。
【請求項3】
側壁部と底部とを有する断熱紙容器であって、前記側壁部を構成するシート材が少なくとも最内層から順にシーラント層、接着層、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、紙層からなる内筒と、該内筒の外周面に上方及び下方に開口した外筒とを上部及び/又は下部で接着し、前記内筒と前記外筒の間に空隙を形成してなることを特徴とする断熱紙容器。
【請求項4】
側壁部と底部とを有する断熱紙容器であって、前記側壁部を構成するシート材が少なくとも最内層から順にシーラント層、接着層、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、紙層からなる内筒と、上下方向に凹凸の断面波形層を有する外筒とからなることを特徴とする断熱紙容器。
【請求項5】
側壁部と底部とを有する断熱紙容器であって、前記側壁部を構成するシート材が少なくとも最内層から順にシーラント層、接着層、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、紙層からなる内筒と、該内筒の外周面に上方及び下方に開口した外筒とを、前記内筒又は前記外筒のいずれか一方の周囲に凸条を形成し、該凸条を介して前記内筒と前記外筒を接着してなることを特徴とする断熱紙容器。
【請求項6】
前記底部を構成するシート材が少なくとも最内層から順にシーラント層、接着層、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、紙層からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の断熱紙容器。
【請求項7】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、二塩基酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、およびこれらの構造異性体、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸またはその誘導体、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類、グリコール酸などのオキシ酸またはその誘導体から選択される成分と、グリコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールのような脂環式グリコールやさらにはビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物誘導体から選択される成分とから、それぞれ1つ又は複数を選択し組み合わせて重合した樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の断熱紙容器。
【請求項8】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の断熱紙容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−116399(P2011−116399A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274279(P2009−274279)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】