説明

断熱紙容器

【課題】紙及び樹脂からなる断熱性の断熱紙容器であって、臭気の発生がなく、内容物の密閉性や耐油性に優れ、かつ、バリア層と紙層との接着性が良好な断熱容器を提供する。
【解決手段】断熱紙容器の側壁部6は、最外面(図2(a)の左側)から順に、発泡した樹脂からなる発泡断熱層3と、紙層2と、ポリエチレン層51と、ガスバリア性を有する樹脂からなるバリア層4と、蓋材8とのシーラントとなるポリエチレン層52とを有する。断熱紙容器の底部7は、最外面(図2(b)の下面)から順に、紙層2と、ポリエチレン層51と、バリア層4と、側壁部6とのシーラントとなるポリエチレン層52とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席麺、スープ粉末等の即席食品を密閉包装するために用いられる断熱紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
即席麺等の食品を密封包装するために、カップ容器を蓋材でシールしたものが広く用いられている。即席麺のような食品を食する際には、熱湯が注がれたカップ容器を手で掴む必要がある。従って、このようなカップ容器には、断熱性が要求される。
【0003】
そのため、カップ容器を構成する材質には、例えばポリスチレンの発泡体が用いられている。しかし、ポリスチレンは耐熱性が低いため、電子レンジで加熱調理するような用途には適さない。更には、カップ容器全体における樹脂比率が高いため、環境への負荷の点からも好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−200980号公報
【特許文献2】特開2004−231197号公報
【特許文献3】特許第3596681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、液体を保持できるように内面をポリエチレンでコーティングした紙製のカップ容器が用いられる場合がある。この場合、紙層の内部に空気層や波状の中芯を設けることや、容器外面に発泡させたポリエチレンを設けることでカップ容器に断熱性を持たせている。
【0006】
しかし、このようなカップ容器は、空気や水蒸気等の気体を遮断する性質(以下「ガスバリア性」という)に乏しく、密封包装後においても、内容物の風味が外部に放出され、風味を損なってしまう。更に、外部からの湿気や臭気がカップ容器内部に移行し、粉末状の内容物が凝集したり、内容物の風味の変質を招いたりする可能性がある。
【0007】
そこで、これらの不具合を改善するためにガスバリア性を有する基材(以下「バリア層」という)を接着剤を介して、紙層に積層する方法が用いられることがある。しかし、このようにして作製した断熱紙容器では、接着剤中の成分や、基材中の低分子量成分(溶剤等)が気化し、臭気を発生するという問題がある。
【0008】
それ故に、本発明では、紙及び樹脂からなる断熱紙容器であって、臭気の発生がなく、内容物の密封性や耐油性に優れ、かつ、バリア層と紙層との接着性が良好な断熱紙容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、側壁部と底部とを有する断熱紙容器であって、側壁部を構成する積層体が少なくとも最外層層から順に、発泡断熱層と、紙層と、第1のポリエチレン層と、バリア層と、シーラント層となる第2のポリエチレン層とからなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、紙及び樹脂の積層体からなる断熱紙容器に対して、臭気の発生防止効果、内容物の密封性、耐油性およびバリア層と紙層との良好な接着性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る断熱紙容器の断面図
【図2】図1に示す断熱紙容器の層構成を示す断面図
【図3】他の変形例に係る断熱紙容器の層構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る断熱紙容器の断面図である。
【0013】
断熱紙容器1は、紙と樹脂の積層体から構成され、側壁部6及び底部7を有する。断熱紙容器1は、内部に内容物(図示せず)が充填された後、開口部を蓋材8で封止されて用いられる。
【0014】
図2は、図1に示す断熱紙容器の層構成を示す断面図であり、より特定的には、(a)は、図1のA部分(側壁部)の層構成を示す図であり、(b)は、図1のB部分(底部)の層構成を示す図である。
【0015】
図2(a)に示すように、側壁部6は、最外面(図2(a)の左側)から順に、発泡した樹脂からなる発泡断熱層3と、紙層2と、ポリエチレン層51と、バリア層4と、カップ成型時のシーラントとなるポリエチレン層52とを有する。紙層2は、例えば秤量150〜400g/cm2の紙よりなる。発泡断熱層3は、例えばポリエチレンよりなる。バリア層4は、ガスバリア性を有する樹脂からなる。
【0016】
ポリエチレン層51は、厚み5〜30μmで形成することが好ましい。ポリエチレン層52は、厚み20〜50μmで形成することが好ましい。また、ポリエチレン層51の密度は、耐熱性、紙層2やバリア層4との密着性、耐油性を考慮すると、0.925〜0.940g/cm3であることが好ましい。
【0017】
バリア層4には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、延伸ナイロン(ONY)樹脂、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)樹脂、或いは、金属又は金属酸化物からなる蒸着層を形成したポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂又は延伸ナイロン(ONY)樹脂又は合成高分子ポリビニルアルコール(PVOH)樹脂、或いは、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)をコートしたポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂又は延伸ナイロン(ONY)樹脂又は延伸ポリプロピレン(OPP)樹脂、或いは、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂、合成高分子ポリビニルアルコール(PVOH)樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)系樹脂のいずれかを利用できる。特に、バリア層4が金属又は金属酸化物からなる蒸着層を形成したPETフィルム等からなる場合、優れたガスバリア性を発揮することができる。蒸着層は、アルミニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等からなる。また、水蒸気に対するバリア性が要求される場合は、延伸ナイロン樹脂も適している。バリア層4の材質は、用途に応じて適宜選択することができる。
【0018】
図2(b)に示すように、底部7は、最外面(図2(b)の下面)から順に、紙層2と、ポリエチレン層51と、バリア層4と、側壁部6とのシーラントとなるポリエチレン層52とを有する。紙層2は、例えば秤量150〜400g/cm2の紙よりなる。尚、底部7は、発泡断熱層3を備えていないが、側壁部6と同じ層構成であっても構わない。
【0019】
断熱紙容器1を作製するには、まず、側壁部6及び底部7を構成するシートを作製する。側壁部6用のシートを作製するには、例えば、バリア層4となるガスバリアフィルムの一方面に、ポリエチレン層52となるポリエチレンを溶融押出により厚み20〜50μmで積層し、他方面に厚み5〜30μmで溶融押出したポリエチレン(後のポリエチレン層51)を介して紙層2を積層し、紙層2の上に後の発泡断熱層3となるポリエチレンを積層する。底部7用のシートを作製するには、例えば、バリア層4となるガスバリアフィルムの一方面に、ポリエチレン層52となるポリエチレンを溶融押出により厚み20〜50μmで積層し、他方面に厚み5〜30μmで溶融押出したポリエチレン(後のポリエチレン層51)を介して紙層2を積層する。この時、紙層2及びバリア層4の貼着面の各々にコロナ放電処理やオゾン処理を行うことで、紙層2とバリア層4との接着性を更に向上させることができる。次に、作製したシートを金型で打ち抜き加工することにより、側壁部6を形成する扇状ブランクス及び底部7を形成する円形状ブランクスを作製する。そして、カップ成形機を用いて、各ブランクスから断熱紙容器を成形する。最後に成形した断熱紙容器を加熱炉等で加熱して、外側のポリエチレン層を溶融させた状態で紙層2内部の水分を蒸発させることで、ポリエチレンを発泡させて発泡断熱層3を形成する。
【0020】
断熱紙容器1の側壁部6の外面には、発泡断熱層3が設けられることにより、断熱効果が付与される。これにより、例えば熱湯が注がれた断熱紙容器1を手で掴むことが容易となる。また、断熱紙容器1の内面に形成されるバリア層4により、蓋材8で封止された後の断熱紙容器1は、空気や水蒸気等の気体に対するガスバリア機能が付与される。これによって、密封された内容物の風味が損なわれることや、外部の臭気や湿気が内容物に移ることが効果的に抑制される。更に、断熱紙容器1は、アルミニウム箔を含まず、紙及び樹脂から構成されている。そのため、省資源化や分別廃棄の容易性において優れている。
【0021】
また、紙層2とバリア層4とは、接着剤を用いずに、ポリエチレン層51を介して積層されているため、接着剤の低分子成分に起因する臭気の発生を避けることが出来る。また、ポリエチレン層51の密度を適切な値(0.925〜0.940g/cm3)にすることで、発泡断熱層3の発泡時に、ポリエチレン層51が発泡や剥離を引き起こすことなく、発泡後においても紙層2とバリア層4との接着強度を保つことができる。更には、油分を含む食品を断熱紙容器1に入れた場合においても、油分が断熱紙容器1の表面にしみ出すことがない。
【0022】
また、図1に示すように、側壁部6は、扇状ブランクスを筒状にまるめて部分的に重ね合わせて形成されるため、シートの端面9が断熱紙容器1の内側に露出している。本実施形態では、紙層2とバリア層4とをポリエチレン層51を介して接着し、接着剤を使用していない。したがって、本実施形態に係る断熱紙容器1には、使用時に接着剤の溶出がないという利点がある。
【0023】
(他の変形例)
図3は、他の変形例に係る断熱紙容器の層構成を示す断面図であり、図3(a)は、図1に示したA部分に対応し、図3(b)は、図1に示したB部分に対応する。
【0024】
図3に示した断熱紙容器は、側壁部及び底部において、ポリエチレン層52とバリア層4との間に、更にポリエチレン層53を備えている。このポリエチレン層53は、ポリエチレン層52とバリア層4との接着性を確保するためのものである。バリア層ポリエチレン層53の密度は、ポリエチレン層51と同様に、耐熱性、密着性及び耐油性を考慮すると、0.925以上0.940g/cm3以下であることが好ましい。ポリエチレン層51及び53の密度が0.940g/cm3を超えると、ポリエチレン層51及び53の耐油性が低下してしまう。逆に、密度が0.925g/cm3未満になると、発泡断熱層3の発泡時に紙層3から発生する水蒸気がポリエチレン層51に侵入してポリエチレン層51が発泡してしまい、紙層2とバリア層4とが剥離したり、バリア層4に水分が移行することで、バリア層4を形成する樹脂の低分子量物質の溶出が発生するため好ましくない。ポリエチレン層51及び53は、上記した物性の他に、要求される耐熱性を確保するために、例えば、エポキシ化植物油、綿実油、桐油、ひまし油、やし油、サフラワー油のいずれかを含有しても良い。
【0025】
尚、上記の実施形態では、底部は紙層/ポリエチレン層/バリア層/ポリエチレン層または紙層/ポリエチレン層/バリア層/ポリエチレン層/ポリエチレン層からなる構成を採用しているが、内容物を密封できるものであれば特に限定されない。例えば上記構成から紙層を省略しても良い。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を具体的に実施した実施例について説明する。実施例1〜8及び比較例1〜8は、図3に示した積層構造を有するシート材を用いて作製した断熱紙容器であり、それぞれ、バリア層の材質及びポリエチレンの密度のみが異なっている。
【0027】
側壁部用のシートは、バリア層4の一方面に、コロナ放電処理を行いつつポリエチレン層53及びポリエチレン層52となるポリエチレンを溶融押出により積層し、バリア層4の他方面に、コロナ放電処理を行いつつ溶融押出したポリエチレン層51となるポリエチレンを介して紙層2を積層し、紙層2の上に後の発泡断熱層3となるポリエチレンを積層し、更に、発泡断熱層3となるポリエチレンの上にコロナ放電処理した後に印刷を施すことによって作製した。ポリエチレン層51及び53には、発泡断熱層3のポリエチレンを発泡する時に一緒に発泡しないこと、耐熱性及び密着性に優れることを考慮して、エポキシ化植物油含有のポリエチレンを用いた。
【0028】
底部用のシートは、バリア層4の一方面に、コロナ放電処理を行いつつポリエチレン層53及びポリエチレン層52となるポリエチレンを溶融押出により積層し、バリア層4の他方面に、コロナ放電処理を行いつつポリエチレン層51となる溶融押出ポリエチレンを介して紙層2を積層することによって作製した。ポリエチレン層51及び53には、密着性を考慮して、エポキシ化植物油含有のポリエチレンを用いた。
【0029】
以下、表1の上から下へと順に、各比較例及び各実施例の特徴を説明する。
【0030】
(比較例1)
側壁部及び底部のバリア層4にはポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。また、ポリエチレン層51及び53には、樹脂密度が0.941g/cm3のものを用いた。
【0031】
(実施例1)
側壁部及び底部のバリア層4にはポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。また、ポリエチレン層51及び53には、樹脂密度が0.935g/cm3のものを用いた。
【0032】
(実施例2)
側壁部及び底部のバリア層4にはポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。また、ポリエチレン層51及び53には、樹脂密度が0.928g/cm3のものを用いた。
【0033】
(比較例2)
側壁部及び底部のバリア層4にはポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。また、ポリエチレン層51及び53には、樹脂密度が0.918g/cm3のものを用いた。
【0034】
(比較例3)
側壁部及び底部のバリア層4には延伸ナイロンフィルムを用いた。また、ポリエチレン層51及び53には、樹脂密度が0.941g/cm3のものを用いた。
【0035】
(実施例3)
側壁部及び底部のバリア層4には延伸ナイロンフィルムを用いた。また、ポリエチレン層51及び53には、樹脂密度が0.935g/cm3のものを用いた。
【0036】
(実施例4)
側壁部及び底部のバリア層4には延伸ナイロンフィルムを用いた。また、ポリエチレン層51及び53には、樹脂密度が0.928g/cm3のものを用いた。
【0037】
(比較例4)
側壁部及び底部のバリア層4には延伸ナイロンフィルムを用いた。また、ポリエチレン層51及び53には、樹脂密度が0.918g/cm3のものを用いた。
【0038】
(比較例5)
側壁部及び底部のバリア層4には延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。また、ポリエチレン層51及び53には、樹脂密度が0.941g/cm3のものを用いた。
【0039】
(実施例5)
側壁部及び底部のバリア層4には延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。また、ポリエチレン層51及び53には、樹脂密度が0.935g/cm3のものを用いた。
【0040】
(実施例6)
側壁部及び底部のバリア層4には延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。また、ポリエチレン層51及び53には、樹脂密度が0.928g/cm3のものを用いた。
【0041】
(比較例6)
側壁部及び底部のバリア層4には延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。また、ポリエチレン層51及び53には、樹脂密度が0.918g/cm3のものを用いた。
【0042】
(比較例7)
側壁部及び底部のバリア層4にはアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。また、ポリエチレン層51及び53には、樹脂密度が0.941g/cm3のものを用いた。
【0043】
(実施例7)
側壁部及び底部のバリア層4にはアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。また、ポリエチレン層51及び53には、樹脂密度が0.935g/cm3のものを用いた。
【0044】
(実施例8)
側壁部及び底部のバリア層4にはアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。また、ポリエチレン層51及び53には、樹脂密度が0.928g/cm3のものを用いた。
【0045】
(比較例8)
側壁部及び底部のバリア層にはアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。また、ポリエチレン層51及び53には、樹脂密度が0.918g/cm3のものを用いた。
【0046】
断熱性紙容器1の作成方法は次の通りである。まず、作製したシート材を金型で打ち抜き加工することにより、側壁部6を形成する扇状ブランクスと底部7を形成する円形状ブランクスを作製する。そして、カップ成形機を用いて、各ブランクスから逆円錐台系の断熱紙容器1を成形する。成形した断熱紙容器1を加熱炉(オーブン)等で120℃程度で加熱して、外側のポリエチレン樹脂層を溶融させた状態で紙層2内部の水分を蒸発させることにより、ポリエチレン樹脂が発泡し発泡断熱層3を形成する。なお、断熱紙容器1の形状は円筒形状でも良く、その場合のブランクスは矩形状となる。
【0047】
実施例1〜8及び比較例1〜8に係るシート材を用いて作製した断熱紙容器1を用いて、以下の評価試験を実施した。表1は評価試験の結果をまとめたものである。尚、実施例7及び8、比較例7及び8では、アルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方面にアルミナを蒸着したもの)の表裏を逆にした2種類の断熱紙容器、すなわち、ポリエチレンテレフタレート面を紙層に接着させた断熱紙容器と、アルミナ蒸着面を紙層に接着させた断熱紙容器とを作製した。
【0048】
[接着強度]
バリア層と、紙層との接着強度を、「○:接着強度が50g/15mm以上である、×:接着強度が50g/15mm未満である」により評価した。尚、試験方法はJIS K 6854に準拠したものである。
【0049】
[発泡性]
断熱紙容器を加熱炉にて、所定の温度で加熱した際に、発泡断熱層のポリエチレンが発泡するか否かについて目視観察し、「○:発泡した、×:発泡しなかった」により評価した。
【0050】
[耐油性]
断熱紙容器の内部に油分を含有する食品を入れ、断熱紙容器の外側への浸透による油のしみ出しの発生を目視観察し、「○:発生しなかった、×:発生した」により評価した。
【0051】
[防湿性]
断熱紙容器に、塩化カルシウムを入れ、アルミ箔層を含む積層シートからなる蓋材をヒートシールして密封した。その後、40℃湿度90%の環境下にて10日間放置し、その後の断熱紙容器の重量変化量を測定し、「◎:変化なし、○:ほぼ変化無し、△:わずかに変化有り、×:変化有り」により評価した。
【0052】
[移香性]
断熱紙容器に、パラジクロロベンゼンまたはナフタレンを入れ、防湿性試験で用いたものと同様の蓋材をヒートシールして密封した。その後、断熱紙容器周囲を、アルミ箔層を含む積層シートからなるパウチで包装し、40℃の環境下にて10日間放置した。その後、断熱紙容器内部からパウチ内部に移行した臭気を、実際に匂いを嗅いで、「◎:匂いなし、○:ほぼ匂い無し、△:若干匂い有り、×:匂い有り」により評価した。尚、バリア層にアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートを用いたものは、紙層側にアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートのポリエチレンテレフタレート面を向けて積層した断熱紙容器を用いた結果である。
【0053】
【表1】

【0054】
接着強度及び耐油性については、バリア層4の種類に応じて若干の差異があるが、いずれのバリア層4を用いた場合においても、ポリエチレン層51及び53の樹脂密度が0.935g/cm3以下であれば問題の無い結果が得られた。一方、発泡性については、ポリエチレン層51及び53の樹脂密度が0.925g/cm3以上であれば、バリア層4が設けられている場合でも、発泡断熱層3となるポリエチレンが問題なく発泡できることがわかった。従って、接着強度、耐熱性及び発泡性を考慮すると、ポリエチレン層51及び53の樹脂密度が、0.925〜0.935g/cm3であれば良いことがわかった。
【0055】
また、接着強度・発泡性・耐油性の全てを兼ね備えた実施例1〜8(ポリエチレン層51及び53の樹脂密度が0.928または0.935g/cm3)では、断熱紙容器が十分な防湿性を発揮することが確認された。特に、延伸ポリプロピレンフィルムまたはアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートを用いると高い効果が得られることがわかった。更に、実施例1〜8では、断熱紙容器内外での臭気の移動を抑制することができた。特に、アルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートを用いた実施例7及び8は、湿気や臭気の強い物質の透過を効果的に抑制できた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、即席麺、スープ粉末等の即席食品を密閉包装するための、断熱紙容器に用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 断熱紙容器
2 紙層
3 発泡断熱層
4 バリア層
51、52、53 ポリエチレン層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁部と底部とを有する断熱紙容器であって、
前記側壁部を構成する積層体が少なくとも最外層から順に、発泡断熱層と、紙層と、第1のポリエチレン層と、バリア層と、シーラント層となる第2のポリエチレン層とからなる、断熱紙容器。
【請求項2】
前記底部を構成する積層体が少なくとも最外層から順に、紙層と、第1のポリエチレン層と、バリア層としてポリエチレンテレフタレート樹脂層と、シーラント層となる第2のポリエチレン層とからなる、請求項1に記載の断熱紙容器。
【請求項3】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂層と前記第2のポリエチレン層との間に第3のポリエチレン層を設けてなることを特徴とする、請求項1または2に記載の断熱紙容器。
【請求項4】
前記第1のポリエチレン層及び第3のポリエチレン層の密度が0.925g/cm3以上、かつ0.940g/cm3以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の断熱紙容器。
【請求項5】
前記第1のポリエチレン層及び第3のポリエチレン層は、エポキシ化植物油を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の断熱紙容器。
【請求項6】
前記発泡断熱層は、ポリエチレン樹脂層を前記紙層に含有される水分の加熱蒸発により発泡させて形成されることを特徴とする、請求項1に記載の断熱紙容器。
【請求項7】
前記バリア層が、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、延伸ナイロン(ONY)樹脂、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)樹脂、或いは、金属又は金属酸化物からなる蒸着層を形成したポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂又は延伸ナイロン(ONY)樹脂又は合成高分子ポリビニルアルコール(PVOH)樹脂、或いは、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)をコートしたポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂又は延伸ナイロン(ONY)樹脂又は延伸ポリプロピレン(OPP)樹脂、或いは、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂、合成高分子ポリビニルアルコール(PVOH)樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)系樹脂のいずれかであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の断熱紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−126560(P2011−126560A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285212(P2009−285212)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】