断熱複合材並びにこの断熱複合材を含む断熱シート、マスターバッチ及びコーティング材
【課題】地球温暖化を促進する性質のある気体を含まず、リサイクルが容易であり、断熱性能に優れた断熱複合材、断熱シート、マスターバッチ及びコーティング材の提供
【解決手段】陽イオン交換能力および触媒機能を持つゼオライトをカオリン及びベーマイトと複合させた断熱複合材である。比表面積が180m2/gもある多孔質のゼオライトの(1)吸湿機能により、いろいろなものを吸着する機能を活かすことで有害物質の吸着や悪臭の除去を実現し、また、(2)陽イオン交換機能により、アンモニウムイオンの除去が可能にし、(3)触媒機能により、NOxの分解を行い、有害物質の無害化に貢献する。カオリンは、強い吸湿性により、ゼオライトの機能を促進する。ベーマイトは、ひび割れを防ぐ。
【解決手段】陽イオン交換能力および触媒機能を持つゼオライトをカオリン及びベーマイトと複合させた断熱複合材である。比表面積が180m2/gもある多孔質のゼオライトの(1)吸湿機能により、いろいろなものを吸着する機能を活かすことで有害物質の吸着や悪臭の除去を実現し、また、(2)陽イオン交換機能により、アンモニウムイオンの除去が可能にし、(3)触媒機能により、NOxの分解を行い、有害物質の無害化に貢献する。カオリンは、強い吸湿性により、ゼオライトの機能を促進する。ベーマイトは、ひび割れを防ぐ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱複合材に関し、特にマスターバッチ等として汎用の断熱素材として形成されたとき、被断熱物に断熱材を貼り付けたりして固着するのに適した形状に成型することが容易な断熱複合材並びにこの断熱複合材を含む断熱シート、マスターバッチ及びコーティング材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体物質の熱伝導性を低減することにより断熱性を高めた断熱材としては、炭化水素系の気体を気泡として封入した樹脂でなるもの(例えば、特許文献1に開示された複合発泡体)、或いは難燃剤を樹脂に混入したもの(例えば、特許文献2に開示された半硬質ポリウレタンフォーム)、更には素材を繊維状に形成し、繊維間に空気を包むことにより断熱性を向上するグラスウール等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−198933号公報
【特許文献2】特表2002−536480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の断熱材は、スチレン系樹脂組成物を炭素数3〜5の飽和炭化水素からなる発泡剤とともに押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体の表面に、常温で硬化するエポキシ系硬化樹脂を積層被覆してなる複合発泡体である。樹脂に封入される炭化水素系ガスは、大気に漏れたとき、大気のオゾン層を破壊し、地球温暖化を促進する性質を有する。そこで、特許文献1の断熱材には、地球温暖化を促進するという解決するべき課題がある。
【0005】
前記特許文献2の断熱材は、(a)ポリイソシアネートと(b)100〜10,000の平均分子量を有するポリオールを、(c)有効量の剥離するグラファイト、(d)発泡剤及び(e)所望の追加難燃剤の存在下において反応させることによる、5〜30kg/m2の全体密度を有する難燃性、連続気泡、半硬質のポリウレタンフォームである。この特許文献2の断熱材は、難燃剤を含むので、リサイクルが難しい。特許文献2の断熱材には、リサイクルに関し解決するべき課題がある。
【0006】
また、グラスウールは、断熱性能が低いので、例えば建造物の壁材に使用したとき、所要の断熱性能を得ようとすると、大量の材料を要するので、壁を厚くする必要があり、屋内空間を狭くするし、材料費、設置のための人件費、更には輸送費の増大を招くという解決するべき課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、地球温暖化を促進する性質のある気体を含まず、リサイクルが容易であり、断熱性能に優れた断熱複合材、断熱シート、マスターバッチ及びコーティング材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するため、本発明は、次のような特徴的な構成を採用している。
【0009】
(1)陽イオン交換能力および触媒機能を持つゼオライトをカオリン及びベーマイトと複合させた断熱複合材。
(2)前記ゼオライトは人工ゼオライトでなり、
前記人工ゼオライトの陽イオンが,
カルシウム、ナトリウム又は鉄でなるイオンのうちの1又は2以上の陽イオンで交換されている前記(1)に記載の断熱複合材。
(3)前記ゼオライトが40乃至60重量パーセント、前記カオリンが20乃至40重量パーセント、前記ベーマイトが40乃至60重量パーセントである前記(1)に記載の断熱複合材。
(4)前記(1)乃至(3)の何れかに記載の断熱複合材を不織布その他のシート材に層状に配設してなる断熱シート。
(5)前記(1)乃至(3)の何れかに記載の断熱複合材を含むマスターバッチ。
(6)前記(1)乃至(3)の何れかに記載の断熱複合材を含むコーティング材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の断熱複合材によれば、地球温暖化を促進する性質のある気体を含まず、リサイクルが容易であり、断熱性能に優れた断熱複合材並びにこの断熱複合材を含む断熱シート、マスターバッチ及びコーティング材を提供することができる。これら本発明になる断熱複合材、断熱シート、マスターバッチ及びコーティング材は、優れた断熱効果、遮熱効果、保温効果、防音効果、結露防止効果及び有害物質浄化効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態である断熱複合材を概念的に示す断面図
【図2】本発明の他の実施形態である断熱シートの効果を測定するために、鋼板製の恒温室の上側外壁にその断熱シート又は不織布を貼り付けた場合と、何も貼り付けない場合とでその上側外壁の表面温度がどのように相違するかを試験する試験装置を示す概念図
【図3(A)】図2の装置による試験において、恒温室の上側外壁に断熱シートも不織布も貼らない状態で測定した上側外壁の表面温度の時間変化をグラフで示す図
【図3(B)】図2の装置による試験において、恒温室の上側外壁に断熱シートも不織布も貼らない状態で測定した上側外壁の表面温度の時間変化データを示す図
【図3(C)】断熱シートも不織布も貼らない恒温室の上側外壁を示す図
【図4(A)】図2の装置による試験において、恒温室の上側外壁に不織布を貼った状態で測定した上側外壁の表面温度の時間変化をグラフで示す図
【図4(B)】図2の装置による試験において、恒温室の上側外壁に不織布を貼った状態で測定した上側外壁の表面温度の時間変化データを示す図
【図4(C)】不織布を貼った恒温室の上側外壁を示す図
【図5(A)】図2の装置による試験において、恒温室の上側外壁に本発明の一実施形態の断熱シートを貼った状態で測定した上側外壁の表面温度の時間変化をグラフで示す図
【図5(B)】図2の装置による試験において、恒温室の上側外壁に本発明の一実施形態の断熱シートを貼った状態で測定した上側外壁の表面温度の時間変化データを示す図
【図5(C)】本発明の一実施形態の断熱シートを貼った恒温室の上側外壁を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1に断面図で概念的に示す本発明の一実施形態の断熱複合材は、ゼオライト、カオリン及びバーマイトでなる。
【0013】
ゼオライトの機能について、フリー百科事典ウィキベディアには、次の1−3項のような記述がある。
(1)イオン交換能:ゼオライトは二酸化ケイ素からなる骨格を基本とし、一部のケイ素がアルミニウムに置き換わることによって結晶格子全体が負に帯電している。そのため微細孔内にナトリウムなどのカチオンを含み、電荷のバランスを取っている。粉末状にしたゼオライトを別の種類のカチオンを含んだ水溶液中にいれると、細孔内と水溶液中でイオン交換が起こる。この交換反応は可逆的であり、時間がたつと平衡状態となる。
この性質のためゼオライトは水質改良剤として用いられる。例えば、水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンをゼオライト中のナトリウムイオンと置きかえることで水の硬度を下げることができるので、衣類用の洗剤などに含まれている(「水軟化剤」等と記載されている)。また微細孔内に植物の生育に必要なカチオンを保持するため、陽イオン交換容量を増す土壌改良剤としても用いられる。
(2)触媒としての機能
ゼオライトはその細孔内に選択的に分子を取り込み、反応させることができるため、触媒として多方面に利用されている。例えばZSM-5という合成ゼオライトを用いることでメタノールからガソリンを合成することに成功している。また、ディーゼル排気中に含まれるNOxを分解・除去するための触媒としても期待されている。
(3)吸着能
ゼオライトは微細孔内に水分子を吸着し、また放出することができるため、有機溶媒の脱水や湿度調節に用いられる。また水分子のほかにホルムアルデヒドなどの気体分子を吸着するとされるため、消臭や、シックハウス症候群を防止する目的にも期待されている。
【0014】
また、社団法人日本海洋開発建設協会(海洋協)のホームページには、人口ゼオライトに関し、製造方法および用途が、次のように説明されている。
人工ゼオライトの製造:人工ゼオライトは石炭灰と水酸化ナトリウム溶液を混合してアルカリ水熱合成をすると合成される。
人工ゼオライトの用途:
人工ゼオライトには「吸湿機能」「陽イオン交換機能」「触媒機能」があり、これらの機能を活かした用途がある。
(1)吸湿機能
いろいろなものを吸着する機能を活かすことで有害物質の吸着や悪臭の除去を実現する。
(2)陽イオン交換機能
人工ゼオライトは天然ゼオライトの約2〜3倍の高い陽イオン交換機能を有しており、この機能を活かして酸性を中和する土壌改良や汚水・排水中のアンモニウムイオンの除去が可能になる。
(3)触媒機能
触媒機能を活かしてNOxの分解を行い、有害物質の無害化に貢献する。
【0015】
カオリンについて、上記ウィキベディアには、「カオリナイト(カオリン石、Al2Si2O5(OH)4)、ディク石、ナクル石の総称、またはそれらからなる粘土(鉱石)のこと。高陵土ともいう。」と解説されている。また、そのカオリナイトについて、そのウィキベディアには、「化学組成はAl2Si2O5(OH)4。ろう石の中に含まれる。触った感じはぬるぬるしている。高熱に耐える磁器や、クレーなどの材料にされる。この成分が多いほど高温に耐える磁器の材料となる。吸水性が高いので舌に乗せると吸い付く性質があり、特有の匂いを発する。」と説明されている。
【0016】
ベーマイトは、ボーキサイト中に含まれる天然鉱物で、Al, O, Hの三種類の元素からなり、規則的な構造を有し、アルミニウム原子ひとつに対して6つの酸素原子を配位している無色の粉末である。
【0017】
図1に模式的に示す断熱複合材におけるゼオライトは、人工ゼオライトでなる。その人工ゼオライでは、陽イオンが、カルシウム、ナトリウム又は鉄でなるイオンのうちの1又は2以上の陽イオンで交換されている。人工ゼオライトは、石炭灰を主原料として中部電力株式会社で製造され、シーキュラス(登録商標)なる名称でから販売されている。シーキュラスは、脱臭剤、調湿建材、有害物質吸着材、土壌改良剤、法面緑化促進剤、酸性雨対策剤、ダイオキシン・Nox分解剤等として利用可能である。また、シーキュラスは、ゼオライトの陽イオン交換機能を生かして、水中の鉛などの重金属を吸着する水質浄化の用途にも活用されている。
【0018】
図1の断熱複合材では、ゼオライト:40乃至60重量パーセント、カオリン:20乃至40重量パーセント、ベーマイト:40乃至60重量パーセントであるゼオライトは、平均粒径が5〜80μm、比表面積が180m2/g以上である。ベーマイトは、1〜5μmである。図1の断熱複合材でなるマスターバッチを水系ポリウレタンのバインダーに溶かし、ゼオライト、カオリン及びベーマイトをそのバインダーに分散させてなる液状体を不織布に塗布してなる断熱シートの断熱性能につき、図2−図5を参照して後ほど説明するが、その断熱性能を測定する試験の試料とした断熱シートの製造に用いたマスターバッチでは、ゼオライト:40重量パーセント、カオリン:20重量パーセント、ベーマイト:40重量パーセントであった。
【0019】
図1の実施の形態の断熱複合材は、マスターバッチ(masterbatch)の形態で、汎用の断熱素材として製造されたものである。マスターバッチの状態のまま断熱の目的に使用されることはなく、断熱材として使用するときは、断熱材の用途に応じてシート状のもの(即ち断熱シート)やコーティング材等に変えられる。コーティング材は、粘性のある流動体の状態である。マスターバッチの形態で製造することにより、互いに比重の異なるゼオライト、カオリン及びバーマイトが一定の成分比で保持され、この状態で容易に保存できる。被断熱物(例えば、自動車、冷蔵庫)に貼り付けたりして固着するのに適した形状の断熱材(例えば、断熱シート)、などを製造する際には、水系又は溶剤系のバインダーにマスターバッチを溶かし、所定の形状に成形することにより、所定の成分比の断熱材が容易に製造できる。水系又は溶剤系のバインダーとしては、ポリウレタン系のものが、取り扱いの容易性と接着性の点で優れている。
【0020】
この図1のマスターバッチの形態の断熱複合材を基に作成した断熱材は、上記ゼオライト、カオリン及びベーマイトの性質により、優れた断熱性を示し、更に遮熱効果、保温効果、防音効果、結露防止効果、有害物質浄化効果等を奏する。特に、比表面積が極めて高い多孔質であるゼオライトによる作用と、カオリンの吸水性能との複合作用により、断熱性に加え、次のような特性が得られる。すなわち、本実施の形態の断熱複合材を基に作成した断熱シート等の断熱材は、熱伝導率が低く、断熱性能に優れ、その上、前記シーキュラスについて説明したように、脱臭、調湿、有害物質吸着等の機能を備える。そこで、本断熱シート等を断熱材として用いれば、空気中の有害なホルマリン等の有害有機物の吸着・分解をして、空気を浄化する機能を有し、ダイオキシン・Noxをも分解することが可能である。なお、ゼオライトとカオリンとでなる断熱複合材は、ひび割れし易いが、ベーマイトを加えることにより、ひび割れし難くすることができる。
【0021】
図1の実施の形態として示すマスターバッチの形態の断熱複合材を用いれば、例えば、壁紙等の内装材、冷蔵庫、冷凍庫、保冷庫、保温用機器、モータ等の熱を発する機械、看板等に用いるカッティングシート、テント生地に適した断熱材が製造できる。マスターバッチの形態に代えて、コーティング材の形態で製造し、保存することにより、これ等の用途に利用することも可能である。
【0022】
図2は、前述のように、本発明の実施形態である断熱シートの効果を測定するために、鋼板製の恒温室の上側外壁にその断熱シート又は不織布を貼り付けた場合と、何も貼り付けない場合とでその上側外壁の表面温度がどのように相違するかを試験する試験装置を示す概念図である。
【0023】
図2において、恒温室2は、直方体形をなす密閉体であり、壁材が1mm厚の鋼板でなる。ホットプレート機1は、ホットプレート11及び台12でなる。内部温度センサ3は、恒温室2の右側外壁を貫通して挿入された温度計である。内部温度センサ3と恒温室2の右側外壁とは密着してあり、両者の間に間隙はない。恒温室2の上側外壁は、平面形状が150mm×150mmの正方形をなし、鋼板4でなっている。試験対象の断熱シート又は不織布は、鋼板4上に貼り付けられる。表面温度センサ5は、鋼板4に直接に、又は試験対象の断熱シート若しくは不織布に接触して設けられ、恒温室2の上部側表面の温度を計測する。恒温室2の内部温度は、ホットプレート11に供給する電流を制御することにより、電源投入後に任意の設定温度に達すると、以後は設定温度に安定に保持される。
【0024】
試験対象の断熱シートは、図1に示したマスターバッチの形態の断熱複合材を水系又は溶剤系のバインダーに溶かし、0.28mm厚の不織布の表面側および裏面側にそれぞれ0.20mm厚の断熱材として、塗布により固着したものである。その断熱材の塗布面積は150mm×150mmであり、この150mm×150mmの面積における断熱材の塗布量は約3gである。従って、1m2当たりの断熱材の塗布量は130gである。
【0025】
図2の試験装置で行う試験の試料とした断熱シートは、図1の断熱複合材でなるマスターバッチを水系ポリウレタンのバインダーに溶かし、ゼオライト、カオリン及びベーマイトをそのバインダーに分散させて液状体し、その液状体を不織布に塗布してなる。その断熱性能を測定する試験の試料とした断熱シートの製造に用いたマスターバッチでは、ゼオライト、カオリン及びベーマイトの成分比は、前述のとおり、ゼオライト:40重量パーセント、カオリン:20重量パーセント、ベーマイト:40重量パーセントであった。その水系のバインダーはポリウレタン系のものであった。ゼオライト、カオリン及びベーマイトをそのバインダーに分散させてなる液状体を、不織布に塗布し、バインダーの水分を揮発させたものを断熱シートとして、恒温室の上側外壁の表面に貼り付けるのであるが、そのようにバインダーの水分を揮発させた後の状態では、バインダー、ゼオライト、カオリン及びベーマイトの成分比は、バインダー:39.40重量パーセント、ゼオライト:24.24重量パーセント、カオリン:12.12重量パーセント、ベーマイト:24.24重量パーセントであった。
【0026】
図3は、図2の装置による試験において、恒温室2の上側外壁に断熱シートも不織布も貼らない場合の試験結果を示す図(図3(A),(B))及び断熱シートも不織布も貼らない恒温室の上側外壁を示す図(図3(C))である。本試験では、恒温室2の内部温度Tinを100℃に保持した。
【0027】
このように、断熱シートも不織布も貼らず、鋼板がそのまま露出している恒温室2の上側外壁の表面温度Toutは、図3(A)及び(B)に示されているように、ほぼ80℃に達する。
【0028】
図4は、図2の装置による試験において、恒温室の上側外壁に不織布を貼った場合の試験結果を示す図(図4(A),(B))及び不織布を貼った恒温室の上側外壁を示す図(図4(C))である。本試験でも、恒温室2の内部温度Tinを100℃に保持した。
【0029】
このように、不織布を貼った恒温室2の上側外壁の表面温度Toutは、図4(A)及び(B)に示されているように、約76℃に達する。
【0030】
図5は、図2の装置による試験において、恒温室の上側外壁に本発明の一実施形態の断熱シートを貼った場合の試験結果を示す図(図5(A),(B))及び断熱シートを貼った恒温室の上側外壁を示す図(図5(C))である。本試験でも、恒温室2の内部温度Tinを100℃に保持した。
【0031】
このように、断熱シートを貼った恒温室2の上側外壁の表面温度Toutは、図5(A)及び(B)に示されているように、約62℃であった。
【0032】
恒温室の上側外壁に鋼板がそのまま露出している図3の場合と、恒温室の上側外壁に本発明の実施形態の断熱シートを貼った図5の場合とを比べると、断熱シートは、上側外壁の表面温度Toutを約18℃低減する効果がある。また、恒温室の上側外壁に不織布を貼った図4の場合と、恒温室の上側外壁に本発明の実施形態の断熱シートを貼った図5の場合とを比べると、断熱シートは、上側外壁の表面温度Toutを約14℃低減する効果がある。このように、図2の試験装置による試験により、本発明の実施形態の断熱シートは、極めて優れた断熱効果を奏することが分かった。
【0033】
また、本発明の実施形態の断熱複合材及び断熱シートは、地球温暖化を促進する性質のある炭化水素等の気体を含まず、また難燃剤を含まないので、リサイクルが容易である。更に、本発明の実施形態の断熱複合材及び断熱シートは、優れた断熱効果に加えて、遮熱効果、保温効果、防音効果および結露防止効果を奏することは勿論でるとともに、含有するゼオライトとカオリンとの複合機能により、有害物質(ホルムアルデヒド等)浄化の優れた効果をも奏することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ホットプレート機
2 恒温室中空セラミックバルーン
3 内部温度センサ
4 鋼板
5 表面温度センサ
11 ホットプレート
12 台
P1 表面温度センサの計測部
P2 内部温度センサの計測部
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱複合材に関し、特にマスターバッチ等として汎用の断熱素材として形成されたとき、被断熱物に断熱材を貼り付けたりして固着するのに適した形状に成型することが容易な断熱複合材並びにこの断熱複合材を含む断熱シート、マスターバッチ及びコーティング材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体物質の熱伝導性を低減することにより断熱性を高めた断熱材としては、炭化水素系の気体を気泡として封入した樹脂でなるもの(例えば、特許文献1に開示された複合発泡体)、或いは難燃剤を樹脂に混入したもの(例えば、特許文献2に開示された半硬質ポリウレタンフォーム)、更には素材を繊維状に形成し、繊維間に空気を包むことにより断熱性を向上するグラスウール等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−198933号公報
【特許文献2】特表2002−536480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の断熱材は、スチレン系樹脂組成物を炭素数3〜5の飽和炭化水素からなる発泡剤とともに押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体の表面に、常温で硬化するエポキシ系硬化樹脂を積層被覆してなる複合発泡体である。樹脂に封入される炭化水素系ガスは、大気に漏れたとき、大気のオゾン層を破壊し、地球温暖化を促進する性質を有する。そこで、特許文献1の断熱材には、地球温暖化を促進するという解決するべき課題がある。
【0005】
前記特許文献2の断熱材は、(a)ポリイソシアネートと(b)100〜10,000の平均分子量を有するポリオールを、(c)有効量の剥離するグラファイト、(d)発泡剤及び(e)所望の追加難燃剤の存在下において反応させることによる、5〜30kg/m2の全体密度を有する難燃性、連続気泡、半硬質のポリウレタンフォームである。この特許文献2の断熱材は、難燃剤を含むので、リサイクルが難しい。特許文献2の断熱材には、リサイクルに関し解決するべき課題がある。
【0006】
また、グラスウールは、断熱性能が低いので、例えば建造物の壁材に使用したとき、所要の断熱性能を得ようとすると、大量の材料を要するので、壁を厚くする必要があり、屋内空間を狭くするし、材料費、設置のための人件費、更には輸送費の増大を招くという解決するべき課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、地球温暖化を促進する性質のある気体を含まず、リサイクルが容易であり、断熱性能に優れた断熱複合材、断熱シート、マスターバッチ及びコーティング材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するため、本発明は、次のような特徴的な構成を採用している。
【0009】
(1)陽イオン交換能力および触媒機能を持つゼオライトをカオリン及びベーマイトと複合させた断熱複合材。
(2)前記ゼオライトは人工ゼオライトでなり、
前記人工ゼオライトの陽イオンが,
カルシウム、ナトリウム又は鉄でなるイオンのうちの1又は2以上の陽イオンで交換されている前記(1)に記載の断熱複合材。
(3)前記ゼオライトが40乃至60重量パーセント、前記カオリンが20乃至40重量パーセント、前記ベーマイトが40乃至60重量パーセントである前記(1)に記載の断熱複合材。
(4)前記(1)乃至(3)の何れかに記載の断熱複合材を不織布その他のシート材に層状に配設してなる断熱シート。
(5)前記(1)乃至(3)の何れかに記載の断熱複合材を含むマスターバッチ。
(6)前記(1)乃至(3)の何れかに記載の断熱複合材を含むコーティング材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の断熱複合材によれば、地球温暖化を促進する性質のある気体を含まず、リサイクルが容易であり、断熱性能に優れた断熱複合材並びにこの断熱複合材を含む断熱シート、マスターバッチ及びコーティング材を提供することができる。これら本発明になる断熱複合材、断熱シート、マスターバッチ及びコーティング材は、優れた断熱効果、遮熱効果、保温効果、防音効果、結露防止効果及び有害物質浄化効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態である断熱複合材を概念的に示す断面図
【図2】本発明の他の実施形態である断熱シートの効果を測定するために、鋼板製の恒温室の上側外壁にその断熱シート又は不織布を貼り付けた場合と、何も貼り付けない場合とでその上側外壁の表面温度がどのように相違するかを試験する試験装置を示す概念図
【図3(A)】図2の装置による試験において、恒温室の上側外壁に断熱シートも不織布も貼らない状態で測定した上側外壁の表面温度の時間変化をグラフで示す図
【図3(B)】図2の装置による試験において、恒温室の上側外壁に断熱シートも不織布も貼らない状態で測定した上側外壁の表面温度の時間変化データを示す図
【図3(C)】断熱シートも不織布も貼らない恒温室の上側外壁を示す図
【図4(A)】図2の装置による試験において、恒温室の上側外壁に不織布を貼った状態で測定した上側外壁の表面温度の時間変化をグラフで示す図
【図4(B)】図2の装置による試験において、恒温室の上側外壁に不織布を貼った状態で測定した上側外壁の表面温度の時間変化データを示す図
【図4(C)】不織布を貼った恒温室の上側外壁を示す図
【図5(A)】図2の装置による試験において、恒温室の上側外壁に本発明の一実施形態の断熱シートを貼った状態で測定した上側外壁の表面温度の時間変化をグラフで示す図
【図5(B)】図2の装置による試験において、恒温室の上側外壁に本発明の一実施形態の断熱シートを貼った状態で測定した上側外壁の表面温度の時間変化データを示す図
【図5(C)】本発明の一実施形態の断熱シートを貼った恒温室の上側外壁を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1に断面図で概念的に示す本発明の一実施形態の断熱複合材は、ゼオライト、カオリン及びバーマイトでなる。
【0013】
ゼオライトの機能について、フリー百科事典ウィキベディアには、次の1−3項のような記述がある。
(1)イオン交換能:ゼオライトは二酸化ケイ素からなる骨格を基本とし、一部のケイ素がアルミニウムに置き換わることによって結晶格子全体が負に帯電している。そのため微細孔内にナトリウムなどのカチオンを含み、電荷のバランスを取っている。粉末状にしたゼオライトを別の種類のカチオンを含んだ水溶液中にいれると、細孔内と水溶液中でイオン交換が起こる。この交換反応は可逆的であり、時間がたつと平衡状態となる。
この性質のためゼオライトは水質改良剤として用いられる。例えば、水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンをゼオライト中のナトリウムイオンと置きかえることで水の硬度を下げることができるので、衣類用の洗剤などに含まれている(「水軟化剤」等と記載されている)。また微細孔内に植物の生育に必要なカチオンを保持するため、陽イオン交換容量を増す土壌改良剤としても用いられる。
(2)触媒としての機能
ゼオライトはその細孔内に選択的に分子を取り込み、反応させることができるため、触媒として多方面に利用されている。例えばZSM-5という合成ゼオライトを用いることでメタノールからガソリンを合成することに成功している。また、ディーゼル排気中に含まれるNOxを分解・除去するための触媒としても期待されている。
(3)吸着能
ゼオライトは微細孔内に水分子を吸着し、また放出することができるため、有機溶媒の脱水や湿度調節に用いられる。また水分子のほかにホルムアルデヒドなどの気体分子を吸着するとされるため、消臭や、シックハウス症候群を防止する目的にも期待されている。
【0014】
また、社団法人日本海洋開発建設協会(海洋協)のホームページには、人口ゼオライトに関し、製造方法および用途が、次のように説明されている。
人工ゼオライトの製造:人工ゼオライトは石炭灰と水酸化ナトリウム溶液を混合してアルカリ水熱合成をすると合成される。
人工ゼオライトの用途:
人工ゼオライトには「吸湿機能」「陽イオン交換機能」「触媒機能」があり、これらの機能を活かした用途がある。
(1)吸湿機能
いろいろなものを吸着する機能を活かすことで有害物質の吸着や悪臭の除去を実現する。
(2)陽イオン交換機能
人工ゼオライトは天然ゼオライトの約2〜3倍の高い陽イオン交換機能を有しており、この機能を活かして酸性を中和する土壌改良や汚水・排水中のアンモニウムイオンの除去が可能になる。
(3)触媒機能
触媒機能を活かしてNOxの分解を行い、有害物質の無害化に貢献する。
【0015】
カオリンについて、上記ウィキベディアには、「カオリナイト(カオリン石、Al2Si2O5(OH)4)、ディク石、ナクル石の総称、またはそれらからなる粘土(鉱石)のこと。高陵土ともいう。」と解説されている。また、そのカオリナイトについて、そのウィキベディアには、「化学組成はAl2Si2O5(OH)4。ろう石の中に含まれる。触った感じはぬるぬるしている。高熱に耐える磁器や、クレーなどの材料にされる。この成分が多いほど高温に耐える磁器の材料となる。吸水性が高いので舌に乗せると吸い付く性質があり、特有の匂いを発する。」と説明されている。
【0016】
ベーマイトは、ボーキサイト中に含まれる天然鉱物で、Al, O, Hの三種類の元素からなり、規則的な構造を有し、アルミニウム原子ひとつに対して6つの酸素原子を配位している無色の粉末である。
【0017】
図1に模式的に示す断熱複合材におけるゼオライトは、人工ゼオライトでなる。その人工ゼオライでは、陽イオンが、カルシウム、ナトリウム又は鉄でなるイオンのうちの1又は2以上の陽イオンで交換されている。人工ゼオライトは、石炭灰を主原料として中部電力株式会社で製造され、シーキュラス(登録商標)なる名称でから販売されている。シーキュラスは、脱臭剤、調湿建材、有害物質吸着材、土壌改良剤、法面緑化促進剤、酸性雨対策剤、ダイオキシン・Nox分解剤等として利用可能である。また、シーキュラスは、ゼオライトの陽イオン交換機能を生かして、水中の鉛などの重金属を吸着する水質浄化の用途にも活用されている。
【0018】
図1の断熱複合材では、ゼオライト:40乃至60重量パーセント、カオリン:20乃至40重量パーセント、ベーマイト:40乃至60重量パーセントであるゼオライトは、平均粒径が5〜80μm、比表面積が180m2/g以上である。ベーマイトは、1〜5μmである。図1の断熱複合材でなるマスターバッチを水系ポリウレタンのバインダーに溶かし、ゼオライト、カオリン及びベーマイトをそのバインダーに分散させてなる液状体を不織布に塗布してなる断熱シートの断熱性能につき、図2−図5を参照して後ほど説明するが、その断熱性能を測定する試験の試料とした断熱シートの製造に用いたマスターバッチでは、ゼオライト:40重量パーセント、カオリン:20重量パーセント、ベーマイト:40重量パーセントであった。
【0019】
図1の実施の形態の断熱複合材は、マスターバッチ(masterbatch)の形態で、汎用の断熱素材として製造されたものである。マスターバッチの状態のまま断熱の目的に使用されることはなく、断熱材として使用するときは、断熱材の用途に応じてシート状のもの(即ち断熱シート)やコーティング材等に変えられる。コーティング材は、粘性のある流動体の状態である。マスターバッチの形態で製造することにより、互いに比重の異なるゼオライト、カオリン及びバーマイトが一定の成分比で保持され、この状態で容易に保存できる。被断熱物(例えば、自動車、冷蔵庫)に貼り付けたりして固着するのに適した形状の断熱材(例えば、断熱シート)、などを製造する際には、水系又は溶剤系のバインダーにマスターバッチを溶かし、所定の形状に成形することにより、所定の成分比の断熱材が容易に製造できる。水系又は溶剤系のバインダーとしては、ポリウレタン系のものが、取り扱いの容易性と接着性の点で優れている。
【0020】
この図1のマスターバッチの形態の断熱複合材を基に作成した断熱材は、上記ゼオライト、カオリン及びベーマイトの性質により、優れた断熱性を示し、更に遮熱効果、保温効果、防音効果、結露防止効果、有害物質浄化効果等を奏する。特に、比表面積が極めて高い多孔質であるゼオライトによる作用と、カオリンの吸水性能との複合作用により、断熱性に加え、次のような特性が得られる。すなわち、本実施の形態の断熱複合材を基に作成した断熱シート等の断熱材は、熱伝導率が低く、断熱性能に優れ、その上、前記シーキュラスについて説明したように、脱臭、調湿、有害物質吸着等の機能を備える。そこで、本断熱シート等を断熱材として用いれば、空気中の有害なホルマリン等の有害有機物の吸着・分解をして、空気を浄化する機能を有し、ダイオキシン・Noxをも分解することが可能である。なお、ゼオライトとカオリンとでなる断熱複合材は、ひび割れし易いが、ベーマイトを加えることにより、ひび割れし難くすることができる。
【0021】
図1の実施の形態として示すマスターバッチの形態の断熱複合材を用いれば、例えば、壁紙等の内装材、冷蔵庫、冷凍庫、保冷庫、保温用機器、モータ等の熱を発する機械、看板等に用いるカッティングシート、テント生地に適した断熱材が製造できる。マスターバッチの形態に代えて、コーティング材の形態で製造し、保存することにより、これ等の用途に利用することも可能である。
【0022】
図2は、前述のように、本発明の実施形態である断熱シートの効果を測定するために、鋼板製の恒温室の上側外壁にその断熱シート又は不織布を貼り付けた場合と、何も貼り付けない場合とでその上側外壁の表面温度がどのように相違するかを試験する試験装置を示す概念図である。
【0023】
図2において、恒温室2は、直方体形をなす密閉体であり、壁材が1mm厚の鋼板でなる。ホットプレート機1は、ホットプレート11及び台12でなる。内部温度センサ3は、恒温室2の右側外壁を貫通して挿入された温度計である。内部温度センサ3と恒温室2の右側外壁とは密着してあり、両者の間に間隙はない。恒温室2の上側外壁は、平面形状が150mm×150mmの正方形をなし、鋼板4でなっている。試験対象の断熱シート又は不織布は、鋼板4上に貼り付けられる。表面温度センサ5は、鋼板4に直接に、又は試験対象の断熱シート若しくは不織布に接触して設けられ、恒温室2の上部側表面の温度を計測する。恒温室2の内部温度は、ホットプレート11に供給する電流を制御することにより、電源投入後に任意の設定温度に達すると、以後は設定温度に安定に保持される。
【0024】
試験対象の断熱シートは、図1に示したマスターバッチの形態の断熱複合材を水系又は溶剤系のバインダーに溶かし、0.28mm厚の不織布の表面側および裏面側にそれぞれ0.20mm厚の断熱材として、塗布により固着したものである。その断熱材の塗布面積は150mm×150mmであり、この150mm×150mmの面積における断熱材の塗布量は約3gである。従って、1m2当たりの断熱材の塗布量は130gである。
【0025】
図2の試験装置で行う試験の試料とした断熱シートは、図1の断熱複合材でなるマスターバッチを水系ポリウレタンのバインダーに溶かし、ゼオライト、カオリン及びベーマイトをそのバインダーに分散させて液状体し、その液状体を不織布に塗布してなる。その断熱性能を測定する試験の試料とした断熱シートの製造に用いたマスターバッチでは、ゼオライト、カオリン及びベーマイトの成分比は、前述のとおり、ゼオライト:40重量パーセント、カオリン:20重量パーセント、ベーマイト:40重量パーセントであった。その水系のバインダーはポリウレタン系のものであった。ゼオライト、カオリン及びベーマイトをそのバインダーに分散させてなる液状体を、不織布に塗布し、バインダーの水分を揮発させたものを断熱シートとして、恒温室の上側外壁の表面に貼り付けるのであるが、そのようにバインダーの水分を揮発させた後の状態では、バインダー、ゼオライト、カオリン及びベーマイトの成分比は、バインダー:39.40重量パーセント、ゼオライト:24.24重量パーセント、カオリン:12.12重量パーセント、ベーマイト:24.24重量パーセントであった。
【0026】
図3は、図2の装置による試験において、恒温室2の上側外壁に断熱シートも不織布も貼らない場合の試験結果を示す図(図3(A),(B))及び断熱シートも不織布も貼らない恒温室の上側外壁を示す図(図3(C))である。本試験では、恒温室2の内部温度Tinを100℃に保持した。
【0027】
このように、断熱シートも不織布も貼らず、鋼板がそのまま露出している恒温室2の上側外壁の表面温度Toutは、図3(A)及び(B)に示されているように、ほぼ80℃に達する。
【0028】
図4は、図2の装置による試験において、恒温室の上側外壁に不織布を貼った場合の試験結果を示す図(図4(A),(B))及び不織布を貼った恒温室の上側外壁を示す図(図4(C))である。本試験でも、恒温室2の内部温度Tinを100℃に保持した。
【0029】
このように、不織布を貼った恒温室2の上側外壁の表面温度Toutは、図4(A)及び(B)に示されているように、約76℃に達する。
【0030】
図5は、図2の装置による試験において、恒温室の上側外壁に本発明の一実施形態の断熱シートを貼った場合の試験結果を示す図(図5(A),(B))及び断熱シートを貼った恒温室の上側外壁を示す図(図5(C))である。本試験でも、恒温室2の内部温度Tinを100℃に保持した。
【0031】
このように、断熱シートを貼った恒温室2の上側外壁の表面温度Toutは、図5(A)及び(B)に示されているように、約62℃であった。
【0032】
恒温室の上側外壁に鋼板がそのまま露出している図3の場合と、恒温室の上側外壁に本発明の実施形態の断熱シートを貼った図5の場合とを比べると、断熱シートは、上側外壁の表面温度Toutを約18℃低減する効果がある。また、恒温室の上側外壁に不織布を貼った図4の場合と、恒温室の上側外壁に本発明の実施形態の断熱シートを貼った図5の場合とを比べると、断熱シートは、上側外壁の表面温度Toutを約14℃低減する効果がある。このように、図2の試験装置による試験により、本発明の実施形態の断熱シートは、極めて優れた断熱効果を奏することが分かった。
【0033】
また、本発明の実施形態の断熱複合材及び断熱シートは、地球温暖化を促進する性質のある炭化水素等の気体を含まず、また難燃剤を含まないので、リサイクルが容易である。更に、本発明の実施形態の断熱複合材及び断熱シートは、優れた断熱効果に加えて、遮熱効果、保温効果、防音効果および結露防止効果を奏することは勿論でるとともに、含有するゼオライトとカオリンとの複合機能により、有害物質(ホルムアルデヒド等)浄化の優れた効果をも奏することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ホットプレート機
2 恒温室中空セラミックバルーン
3 内部温度センサ
4 鋼板
5 表面温度センサ
11 ホットプレート
12 台
P1 表面温度センサの計測部
P2 内部温度センサの計測部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン交換能力および触媒機能を持つゼオライトをカオリン及びベーマイトと複合させた断熱複合材。
【請求項2】
前記ゼオライトは人工ゼオライトでなり、
前記人工ゼオライトの陽イオンが,
カルシウム、ナトリウム又は鉄でなるイオンのうちの1又は2以上の陽イオンで交換されている請求項1に記載の断熱複合材。
【請求項3】
前記ゼオライトが40乃至60重量パーセント、前記カオリンが20乃至40重量パーセント、前記ベーマイトが40乃至60重量パーセントである請求項1に記載の断熱複合材。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の断熱複合材を不織布その他のシート材に層状に配設してなる断熱シート。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れかに記載の断熱複合材を含むマスターバッチ。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れかに記載の断熱複合材を含むコーティング材。
【請求項1】
陽イオン交換能力および触媒機能を持つゼオライトをカオリン及びベーマイトと複合させた断熱複合材。
【請求項2】
前記ゼオライトは人工ゼオライトでなり、
前記人工ゼオライトの陽イオンが,
カルシウム、ナトリウム又は鉄でなるイオンのうちの1又は2以上の陽イオンで交換されている請求項1に記載の断熱複合材。
【請求項3】
前記ゼオライトが40乃至60重量パーセント、前記カオリンが20乃至40重量パーセント、前記ベーマイトが40乃至60重量パーセントである請求項1に記載の断熱複合材。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の断熱複合材を不織布その他のシート材に層状に配設してなる断熱シート。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れかに記載の断熱複合材を含むマスターバッチ。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れかに記載の断熱複合材を含むコーティング材。
【図1】
【図2】
【図3(B)】
【図4(B)】
【図5(B)】
【図3(A)】
【図3(C)】
【図4(A)】
【図4(C)】
【図5(A)】
【図5(C)】
【図2】
【図3(B)】
【図4(B)】
【図5(B)】
【図3(A)】
【図3(C)】
【図4(A)】
【図4(C)】
【図5(A)】
【図5(C)】
【公開番号】特開2011−153698(P2011−153698A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17133(P2010−17133)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(508213687)株式会社エフ・アイ・ティ (3)
【出願人】(504424270)有限会社環境科学研究所 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(508213687)株式会社エフ・アイ・ティ (3)
【出願人】(504424270)有限会社環境科学研究所 (6)
【Fターム(参考)】
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