説明

断線検出装置、断線検出方法

【課題】実動作を行わなくても、また、周囲にノイズ源が存在する状況であっても、無線タグリーダの試験を行うことができる断線検出装置を提供する。
【解決手段】枠型空中線を有する無線通信装置の断線検出装置であって、前記枠型空中線に接続されると共振回路を形成する第1の容量と、前記第1の容量とは容量値が異なる第2の容量と、前記第1または第2の容量を選択し前記枠型空中線に接続する選択部と、前記選択部によって選択して前記枠型空中線に前記第1または第2の容量を接続して前記無線通信装置の搬送波周波数の送信信号を印加し、受信回路に発生するそれぞれの電圧値を測定する測定部と、前記第1の容量を接続した場合の電圧値と前記第2の容量を接続した場合の電圧値との差に基づいて、前記枠型空中線と第1の容量とによって形成される回路に断線があるか否かを判定する断線検出部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠型空中線が設けられた無線通信装置の断線検出装置、断線検出方法処理に関する。
【背景技術】
【0002】
人が入りにくい領域にロボットを移動させ、その領域内においてロボットに各種作業を行わせることが行われている。例えば、人が入れない区域内に堤防を築いたり、舗装を行う工事がロボットによって行われている。このような工事では、地面に振動を与えたり、転圧を与える重機械として、振動コンパクタや振動ローラ車を用いて地面を締固めすることが行われている。この締固めを行う場合、締固め具合は、一定基準を満たす必要がある。このため、振動ローラ車による締固めを行う場合、この振動ローラ車を駆動させた状態で対象区域内を、締固め具合が基準を満たすように所定回数往復させることによって行われている。
ここで、振動ローラ車が往復した位置を把握するために、締固めする対象区域内の地中やコンクリートに予め無線タグを混入させておき、振動ローラ車に無線タグリーダを搭載し、締固めする際に、通過位置に埋設された無線タグを読み取る。これにより、無線タグから読み出された識別番号とその読み取り回数に基づいて、振動ローラ車が締固めを行った場所と締固め回数を把握し、所定の締め固めが行われたか否かを把握することが行われている。
【0003】
このような締固めを行う重機械が用いられる場合、振動ローラ車のみならず、振動コンパクタも併せて用いられる場合が多い。この振動コンパクタを駆動すると、強い振動が発生する。このため、振動コンパクタから発生した振動が、地面等を介して振動ローラ車に搭載された無線タグリーダ内の電気回路に伝達されることによって、電気回路に破損や断線等の故障が発生することがある。無線タグリーダが故障すると、無線タグと正常に通信を行うことができないので、締固めを行った場所や回数の把握を正確に行うことができなくなる。さらに、工事現場において振動が発生する重機械として、振動コンパクタのみならず、杭打ち機、さく岩機等もあり、また、振動そのものを発生させて各種工事を行う重機械以外に、ダンプカーやクレーン車、ミキサ車等が走行する際にも大きな振動が発生する。このような環境下において、無線タグリーダを正常に機能させることが望まれている。
このような電気回路上に不具合が発生しているか否かを試験するものが、例えば、以下に示す特許文献1、2に開示されている。
【0004】
特許文献1では、電気導体による回路網を組み立てた後の試験方法が開示されており、特に、抵抗試験と複素コンダクタンスの計測を組み合わせて行う方法が開示されている。
特許文献2では、カプセル内視鏡が例として記載された「無線型被検体内情報取得システム」が開示されている。ここでは特に、複数のアンテナを持つ受信機(体外に装着される)について受信電界強度を元に断線検知を行うことが開示されている。断線しているか否かの判断は、正しく通信できた場合における通信履歴を元に受信電界強度の平均値を算出して記憶しておき、この平均値よりも著しく低い測定結果が得られた場合に、断線が発生していると判断する方法がとられている。この特許文献2は、送信機(カプセル内視鏡)が送信状態にあり、それを受信できる状態にあることを前提とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−179798号公報
【特許文献2】特開2007−111265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1においては、測定対象の回路網を駆動させて試験を行うことが開示されている。工事現場においては、実際の作業を行っている途中に測定を行うのだけではなく、実動作が行われていない状況、すなわち、その日の工事を開始する前や工事が終了した後に試験を行うことも望まれている。すなわち、正しく機能することが確認できない状態において上記の締固め等を行ったとしても、無線タグと正しく通信を行うことができず、締固めが行われた位置やその回数を正しく把握できないという問題がある。
また、特許文献2においては、正しく通信できた場合における通信履歴を元にした平均値と、測定値とを比較するようにしているが、実際の工事現場においては、上述したような様々な重機械が複数台存在し、これらがノイズ源となる場合がある。また、工事現場には磁性体を含む地盤が存在し、電波に影響を及ぼす場合もある。従って、正常に通信を行うことができたとしても、これらノイズ源の影響や磁性体の影響を受けると、受信電界強度の測定値が必ずしも理想的な値が得られるとは限らない。そうすると、特許文献2のシステムを上述のような工事現場に適用したとしても、正しい試験を行うことができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、種々の場面においても無線タグリーダの試験を行うことができる断線検出装置、断線検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、枠型空中線を有する無線通信装置の断線検出装置であって、前記枠型空中線に接続されると共振回路を形成する第1の容量と、前記第1の容量とは容量値が異なる第2の容量と、前記第1または第2の容量を選択し前記枠型空中線に接続する選択部と、前記選択部によって選択して前記枠型空中線に前記第1または第2の容量を接続して前記無線通信装置の搬送波周波数の送信信号を印加し、受信回路に発生するそれぞれの電圧値を測定する測定部と、前記第1の容量を接続した場合の電圧値と前記第2の容量を接続した場合の電圧値との差に基づいて、前記枠型空中線と第1の容量とによって形成される回路に断線があるか否かを判定する断線検出部と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述の断線検出装置において、前記断線検出部は、前記第1の容量を接続した場合の電圧値と前記第2の容量を接続した場合の電圧値との比に基づいて、前記枠型空中線と第1の容量とによって形成される回路に断線があるか否かを判定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、枠型空中線を有する無線通信装置の断線検出装置であって、前記枠型空中線に接続され共振回路を形成する容量と、前記無線通信装置が通信相手からの応答がない状態において前記枠型空中線を介して受信回路によって受信を行った際に前記枠型空中線に発生する電圧値よりも低い値の電圧値である基準電圧値を記憶する記憶部と、受信回路によって電波の受信を行った際に前記枠型空中線に発生する電圧値を測定する測定部と、前記記憶部に記憶された基準電圧値と前記測定部によって測定された電圧値とを比較し、前記測定された電圧値が前記基準電圧以下である場合に、前記枠型空中線の断線を検出する断線検出部と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上述の断線検出装置において、前記基準値は、前記測定部によって複数の測定結果を得て、その標準偏差に応じて定められることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上述の断線検出装置において、前記枠型空中線に接続されると共振回路を形成する第1の容量と、
前記第1の容量とは容量が異なる第2の容量と、前記第1または第2の容量を選択し前記枠型空中線に接続する選択部と、前記選択部によって選択して前記枠型空中線に前記第1または第2の容量を接続して前記無線通信装置の搬送波周波数の送信信号を印加し、受信回路に発生するそれぞれの電圧値を測定する測定部とを有し、前記断線検出部は、前記電圧値が前記基準電圧以下である場合に、さらに、前記第1の容量を接続した場合の電圧値と前記第2の容量を接続した場合の電圧値との差に基づいて、前記枠型空中線と第1の容量とによって形成される回路に断線があるか否かを判定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、枠型空中線を有する無線通信装置の断線検出装置であって、前記枠型空中線に接続されると共振回路を形成する第1の容量と、前記第1の容量とは容量が異なる第2の容量と、前記第1または第2の容量を選択し前記枠型空中線に接続する選択部と、前記選択部によって選択して前記枠型空中線に前記第1または第2の容量を接続して前記無線通信装置の搬送波周波数の送信信号を印加し、受信回路に発生するそれぞれの電圧値を測定する第1の測定部と、前記第1の容量を接続した場合の電圧値と前記第2の容量を接続した場合の電圧値との差に基づいて、前記枠型空中線と第1の容量とによって形成される回路に断線があるか否かを判定する第1の断線検出部と、前記選択部によって選択して前記枠型空中線に前記第1の容量を接続し前記無線通信装置が通信相手からの応答がない状態において受信回路によって受信を行った際に前記枠型空中線に発生する電圧値を測定する第2の測定部と、基準となる電圧値である基準電圧値を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された基準電圧値と前記第2の測定部によって測定された電圧値とを比較し、前記電圧値が前記基準電圧以下である場合に、前記枠型空中線の断線を検出する第2の断線検出部と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、枠型空中線を有する無線通信装置の断線検出方法であって、前記枠型空中線に接続されると共振回路を形成する第1の容量または、前記第1の容量とは容量値が異なる第2の容量のいずれかの容量を選択し前記枠型空中線に接続する選択過程、前記選択過程によって選択して前記枠型空中線に前記第1または第2の容量を接続して前記無線通信装置の搬送波周波数の送信信号を印加し、受信回路に発生するそれぞれの電圧値を測定する測定過程、前記第1の容量を接続した場合の電圧値と前記第2の容量を接続した場合の電圧値との差に基づいて、前記枠型空中線と第1の容量とによって形成される回路に断線があるか否かを判定する断線検出過程、とを実行することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、枠型空中線を有する無線通信装置の断線検出方法であって、受信回路によって電波の受信を行う際に、前記枠型空中線に容量が接続され共振回路が形成された枠型空中線に発生する電圧値を測定する測定過程と、前記無線通信装置が通信相手からの応答がない状態において前記枠型空中線を介して受信回路によって受信を行った際に前記枠型空中線に発生する電圧値よりも低い値の電圧値である基準電圧値を記憶する記憶部に記憶された当該基準電圧値と前記測定過程によって測定された電圧値とを比較し、前記測定された電圧値が前記基準電圧以下である場合に、前記枠型空中線の断線を検出する断線検出過程、とを有することを特徴とする。
【0016】
ここで、上述の本発明は、動作状態にない、すなわち実動作の状態にない装置の試験の方法であり、実動作中に断線検出を行うものではない。
また、本発明は、正常に通信が成立した場合の電圧値を基準値として用いるのではなく、何も行っていない時(通信相手が存在しない場合に受信を行った場合)に測定を行い、それを基準値として用いて断線を判断するものである。
【0017】
以上説明したように、この発明によれば、枠型空中線に対して共振回路を形成した場合の電圧値と共振回路を形成しない場合の電圧値とを測定し、これらの電圧値の相違に基づいて異常の有無を判定するようにしたので、実動作にない状態であっても、枠型空中線と無線機との接続状態に異常があるか否かを判定することができる。
【0018】
また、本発明によれば、枠型空中線が通信を行う対象となる通信相手から応答がない状態において枠型空中線に発生する電圧値よりも低い値の電圧値を基準電圧値として記憶しておき、枠型空中線に発生する電圧値を測定し、この測定値と基準電圧値とを比較するようにした。これにより、測定された電圧値が基準電圧値以下である場合には、枠型空中線と無線機との接続状態に異常があるものとして、実動作にない状態であっても把握することができる。また、周囲のノイズや磁性体の影響を受けたとしても、試験精度を維持しつつ試験を実施することができる。
【0019】
これにより、屋外における工事現場など、振動を受けたり、装置を頻繁に移動したり、安定的な枠型空中線の設置ができない場合であっても、無線通信装置の使用開始時、使用途中での枠型空中線(アンテナ)の脱落、断線等を検出して使用者に警告することが可能となった。
また、動作時だけでなく、出荷検査時の自己診断機能としても使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施形態による断線検出装置を適用した無線通信装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】枠型空中線20と第1の容量110第2の容量111との接続状態を説明する図である。
【図3】無線通信装置1が試験を行う動作を説明するフローチャートである。
【図4】基準電圧値を記憶部140に記憶する処理を説明するフローチャートである。
【図5】無線通信装置1が試験を行う動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態による断線検出装置について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態による断線検出装置を適用した無線通信装置の構成を示す概略ブロック図である。
無線通信装置1は、送受信機10と枠型空中線20とが接続されており、半二重トランシーバとして機能する。この無線通信装置1の通信対象は、複数の無線タグである。
送受信機10は、第1の容量110と、第2の容量111と、共振用容量選択器120と、送信回路130と、受信回路131と、記憶部140と、制御部150と、断線検出部160とを含んで構成される。
【0022】
第1の容量110は、枠型空中線20に接続されると共振回路を形成する。
第2の容量111は、第1の容量110とは異なる容量値であり、枠型空中線20に接続された場合、共振回路を形成しない容量値である。
共振用容量選択器120は、第1の容量110または第2の容量111のいずれかを選択し、枠型空中線20に接続する。
送信回路130は、予め定められた搬送波周波数の電波を枠型空中線20から送信する。
受信回路131は、枠型空中線20を介して電波を受信する。
記憶部140は、基準となる電圧値である基準電圧値を記憶する。この基準値は、測定部161によって複数の測定結果を得て、その標準偏差に応じて定められる。
【0023】
制御部150は、第1の試験モードで試験を行うか、第2の試験モードで試験を行うか、を切り替える。この切り替えは、第1の試験モードと第2の試験モードとを独立して試験を行うように行われてもよいし、第2の試験モードの途中で第1の試験モードに切り替えるように行われてもよい。
ここで、第1の試験モードとは、第1の容量110と第2の容量111を用いて枠型空中線20が正常に送受信機10に接続されているかを判定する試験を行うモードである。この第1の試験モードは、無線通信装置1が実動作を行わない場面(無線通信装置1を搭載された重機械が、アイドリング状態等、実際に転圧を加える作業を行っていない状態)において行う試験である。
第2の試験モードとは、受信回路131によって受信した際の信号強度に応じて枠型空中線20が正常に送受信機10に接続されているかを判定する試験を行うモードである。この第2の試験モードは、無線通信装置1が実動作を行っていない場面であっても、実動作を行っている場面であっても、行うことができる試験である。
ここで、枠型空中線20が正常に送受信機10に接続されているか否かとは、枠型空中線20に断線や接触不良等の不具合があるか否かを表す。
【0024】
断線検出部160は、測定部161を備える。
測定部161は、共振用容量選択器120によって選択して枠型空中線20に第1の容量110または第2の容量111を接続して、送受信機の搬送波周波数の送信信号を印加し、受信回路131に発生するそれぞれの電圧値(第1の容量110を接続した場合の電圧値と第2の容量111を接続した場合の電圧値)を測定する。
また、測定部161は、送受信機10が無線タグからの応答がない状態において受信回路131によって受信を行った際に枠型空中線20に発生する電圧値を測定する。ここで、無線タグからの応答がない状態とは、例えば、呼び出し対象として割り当てられていない無線タグのアドレスを呼び出しアドレスに設定して、送信回路130によって電波を送信し、その応答を受信回路131によって受信する場合である。例えば、バックグラウンドノイズを測定している状態である。
【0025】
ここで、上述の第1の容量110と第2の容量111とは、異なる容量値であり、枠型空中線20(インダクタンス)に対して異なる共振周波数を有する。これに同一の搬送波周波数を与えた場合、共振点が搬送波周波数に近い場合は、測定部161によって測定される受信回路131における信号振幅は大きくなるが、共振点が搬送波周波数から離れるにつれて、測定部161によって測定される信号振幅は小さな値となる。従って、受信回路131によって少なくとも共振周波数が異なる2点において振幅測定をし、その振幅の比を算出すれば、枠型空中線20が送受信機10に正常に接続されている場合には、具体値は回路構成により定まる大きな比が得られる。
これに対し、もし、枠型空中線20が断線していれば、共振回路そのものが正しく形成されないので、搬送波を加えても正常な共振現象が起こらないため、第1の容量110と第2の容量111とを切り替えて測定を行ったとしても、その測定値に差がほとんど生じない。この場合において振幅比を取ると、1に近い値となり、枠型空中線20が正常に接続されて共振回路が形成される場合と明らかにその比が異なることから、枠型空中線20に不具合が発生していることが把握できる。
【0026】
断線検出部160は、第1の容量110を接続した場合の電圧値と第2の容量111を接続した場合の電圧値との差に基づいて、枠型空中線20と第1の容量110とによって形成される回路に断線があるか否かを判定する。この判定は、第1の容量110を接続した場合の電圧値と第2の容量111を接続した場合の電圧値との比に基づいて、枠型空中線20と第1の容量110とによって形成される回路に断線があるか否かを判定することも可能である(第1の試験モード)。この第1の試験モードは、実動作が行われていない場合、すなわち、無線通信装置1が無線タグと通信を行わない場合において実施される。
また、断線検出部160は、記憶部140に記憶された基準電圧値と測定部161によって測定された電圧値とを比較し、電圧値が基準電圧以下である場合に、枠型空中線20の断線を検出する(第2の試験モード)。この第2の試験モードは、実動作が行われていない場合や実動作がおこなわれている場合のいずれであっても、実施することができる。
また、断線検出部160は、電圧値が基準電圧以下である場合に、さらに、第1の容量110を接続した場合の電圧値と第2の容量111を接続した場合の電圧値との差に基づいて、枠型空中線20と第1の容量110とによって形成される回路に断線があるか否かを判定する(第1および第2の試験モード)。
【0027】
図2は、枠型空中線20と第1の容量110第2の容量111との接続状態を説明する図である。
第1の容量110とスイッチSW1が直列に接続され、第1の容量110とスイッチSW1とに対し、枠型空中線20が並列に接続されている。また、第2の容量111とスイッチSW2が直列に接続され、第2の容量111とスイッチSW2とに対し、枠型空中線20が並列に接続されている。
スイッチSW1とスイッチSW2は、それぞれ、共振用容量選択器120からの指示に従って、いずれか一方がONになることにより、枠型空中線20に対し、第1の容量110または第2の容量111のいずれか一方が並列に接続され、共振回路を形成する。測定部161は、この共振回路の両端の電圧Vaを測定する。
ここで、枠型空中線20は、例えば、振動ローラ車等の重機械の車外に取り付けられ、送受信機10は、車内に取り付けられ、これらの間が導線等によって接続されている。
【0028】
以下、上述の構成における無線通信装置1の動作を説明する。
図3は、無線通信装置1が試験を行う動作を説明するフローチャートである。ここでは、まず第1の試験モードを行う。
すなわち、制御部150は、共振用容量選択器120に対し、第1の容量110を接続するように指示する。共振用容量選択器120は、この指示に従い、スイッチSW1をON、スイッチSW2をOFFにし、枠型空中線20に対して第1の容量110を接続する(ステップS10)。
第1の容量110が接続されると、制御部150は、送信回路130によって、搬送波周波数の電波を出力し、その後、受信回路131によって電波を受信する。このとき、断線検出部160の測定部161は、受信回路131が電波を受信した際の電圧Va(共振回路の両端の電圧)を測定し、第1の測定結果として一時記憶する(ステップS20)。
第1の測定結果が得られると、制御部150は、第1の容量110から第2の容量111に切り替えるように共振用容量選択器120に指示する。この指示に応じて、共振容量選択器120は、スイッチSW1をOFF、スイッチSW2をONにし、枠型空中線20と第2の容量111を接続する(ステップS30)。
【0029】
第2の容量111が枠型空中線20に接続されると、制御部150は、送信回路130によって、搬送波周波数の電波を出力し、受信回路131によって電波を受信する。このとき、断線検出部160の測定部161は、受信回路131が電波を受信した際の電圧Va(共振回路の両端の電圧)を測定し、第2の測定結果として一時記憶する(ステップS40)。
【0030】
第2の測定結果が得られると、制御部150は、断線検出部160に断線検出判定の指示をする。断線検出部160は、制御部150からの指示に基づいて、第1の測定結果と第2の測定結果との比を算出し(ステップS50)、この比が所定の値以上であるか否かを判断する(ステップS60)。この比が所定の値以上である場合、断線検出部160は、正常であると判断し(ステップS70)、所定の値に満たない場合、枠型空中線20に異常が発生している可能性があると判断する。制御部150は、枠型空中線20に異常が発生している可能性があると判断された場合、第2の試験モードに切り替える(ステップS80)。
【0031】
次に、第2の試験モードについて説明する。
ここでは、第2の試験モードを実施する場合、基準電圧値を算出し記憶部140に記憶する処理を予め行っておく。
図4は、基準電圧値を記憶部140に記憶する処理を説明するフローチャートである。
制御部150は、第1の容量110を枠型空中線20に接続するように共振用容量選択器120に指示する。この指示を受け、共振用容量選択器120は、スイッチSW1をONにし、スイッチSW2をOFFにし、第1の容量110を枠型空中線20に接続する。制御部150は、送信回路130の動作を停止させて送信を行わない状態にし(ステップS110)、測定部161に測定を行うように指示する。測定部161は、この指示に従い、枠型空中線20と第1の容量110とによって形成される共振回路の両端の電圧Vaを測定する(ステップS120)。測定部161は、この測定を一定時間毎に繰り返して行ってそれぞれの測定結果を一時記憶し、測定回数が所定の数に達したかを判定する(ステップS130)。
【0032】
所定の回数に達していない場合、測定部161は、所定の回数に達するまで繰り返して測定を行い(ステップS120)、所定の回数に達した場合、各測定結果を元に、標準偏差を求め、標準偏差から3σの値を算出する(ステップS140)。3σの値が算出されると、制御部150は、各測定値の平均値を算出し、この平均値から3σの値を引いた結果を基準電圧値として記憶部140に記憶する(ステップS150)。
この上述した基準電圧値の算出及び記憶は、第2の試験モードを行う場合に、1度のみ行ってもよいし、定期的(1日1度等)に行っても良い。
また、この図4ステップS110において、送信回路130の動作を停止させて送信を行わない状態にし、測定を行うようにしたが、バックグラウンドノイズを測定することができれば、送信回路130の動作を停止する以外の方法によって測定するようにしてもよい。例えば、アドレス(識別番号)が割り当てが行われていない無線タグのアドレスを呼び出す送信を送信回路130が行うように制御部150が制御するようにし、これに対する電波を受信するようにしてもよい。この割り当てが行われていないアドレスとは、無線通信装置1が読み取りを行う領域内に埋設されていない無線タグの識別番号であり、このアドレスに対する呼び出しをおこなっても、その返答がないことが予め解っているアドレスである。例えば、無線タグを製造する時点で、無線タグに記憶する識別番号として使われていない識別番号である。このように、相手先の不在が担保できる相手先アドレスで送信を行ってから受信動作に入ることで、実際に通信相手から送信されている状態をバックグラウンドノイズと誤判定しないようにすることができる。
【0033】
制御部150は、基準電圧値が記憶された後、第2の試験モードに従って試験を行う。
図5は、無線通信装置1が試験を行う動作を説明するフローチャートである。
制御部150は、第1の容量110を枠型空中線20に接続させるように共振用容量選択器120に指示する。共振用容量選択器120は、スイッチSW1をONにし、スイッチSW2をOFFにし、第1の容量110を枠型空中線20に接続する。この接続がなされると、制御部150は、送信回路130に対し、割り当てが行われている無線タグのアドレスの呼び出しを指示する。送信回路130は、この指示に従って、割り当てが行われているアドレスを呼び出すように送信を行う(ステップS200)。この割り当てが行われているアドレスとは、無線通信装置1が読み取りを行う領域内に埋設されている可能性がある無線タグの識別番号であり、このアドレスに対する呼び出しを行うと、その無線通信装置1の通信領域内に対象の無線タグがあると、その応答を受信回路にて受信することができるアドレスである。なお、この割り当てが行われているアドレスとは、工事現場において既に埋設されているアドレスであってもよいし、今後埋設される可能性があるものであってもよい。例えば、無線タグを製造する時点で、無線タグに記憶する識別番号として使われている識別番号であればよく、試験を行う現場に実際に埋設されていないものであってもよい。
【0034】
この呼び出しの送信が行われると、受信回路131は、電波の受信を行う(ステップS210)。測定部161は、枠型空中線20と第1の容量110とによって形成される共振回路の両端の電圧Vaを測定することにより、受信回路131が受信した信号の強度を測定する(ステップS220)。
【0035】
断線検出部160は、測定部161によって測定が行われると、この測定結果と記憶部140に記憶された基準電圧値との比較を行う(ステップS230)。断線検出部160は、測定結果が基準電圧値以上である場合には(ステップS240−YES)、枠型空中線20が正常であると判定し(ステップS250)、測定結果が基準電圧値未満である場合には(ステップS240−NO)、測定部161による測定が所定回数に達したかを判定する(ステップS260−NO)。所定の回数に達していなければ、ステップS200に移行し、再度測定を行い、基準電圧値との比較を行う。測定結果が基準電圧値未満であることが所定の回数に達した場合には(ステップS260−YES)、制御部150は、第1の試験モードで試験を引き続き行う(ステップS270)。制御部150は、第1の試験モードを実行し、その結果、枠型空中線20に異常がある旨の結果が得られた場合には、警報を行う(ステップS290)。
一方、制御部150は、第1の試験モードを実行した結果、枠型空中線20が正常であるとの結果が得られた場合には、図4に示す基準電圧値の設定を再度行う(ステップS300)。
【0036】
以上説明した実施形態において、枠型空中線20を搬送波周波数で共振させることができる第1の容量110を接続し、送信回路130を停止した状態(存在しないアドレスを呼び出すことによって)で受信回路131により枠型空中線20に発生する信号振幅(電圧)を測定するようにした。これにより、バックグラウンドノイズを測定することができる。そして、このバックグラウンドノイズは、周囲の環境(周囲にある重機械までの距離や、工事現場における岩盤に含まれる物質の磁性体からの影響)変動するので、一定時間の測定により複数回の測定を行い、その分散を求め、信号振幅の小さい側の3σの値を計算し、この値と平均値とから基準電圧値を算出して記憶する。
【0037】
相手の送受信機が存在しない場合(送信回路を停止、あるいは存在しないアドレスを呼び出す場合)に通信を行おうとすると、当然、バックグラウンドノイズが受信される。しかし、この信号強度は、バックグラウンドノイズであるが、上述の基準電圧値である基準電圧値の値を非常に高い確率で上回り、基準電圧値の値を下回る確率は低い。従って、このような基準電圧値の値を下回る確率が低い測定結果が、ある所定の回数(例えば10回)続くような場合には、「断線」の可能性が極めて高いものとして判断することができる。
【0038】
一方、実際に無線タグと送受信動作を行うことができ、実際に埋設された無線タグのアドレスを呼び出してその返答となる電波を受信できた場合には、当然に、バックグラウンドノイズを上回る信号強度の信号が観測される。例えば、図5ステップS250において、基準電圧値の値よりも測定値が大きい値が得られるので、枠型空中線20が無線通信装置1に正常に接続されていることが試験結果として得られる。
【0039】
なお、以上説明した実施形態において、図5ステップS270に示すように所定回数に達した場合に、「動作中断線」であることを判定してもよいが、ステップS270に示すように、この状態が生じた時点で、再度第1の試験モードを実行することにより、枠型空中線20が回路上で断線していることを高い精度で判定することができる。
もし、第1の試験モードを再度行った際に、断線でないと判定されれば、バックグラウンドノイズが低下したものと考えられるので、再びバックグラウンドノイズ測定を行い、基準電圧値をより低い値に書き換えて、動作を再開することも可能である。
【0040】
また、上述した実施形態において、記憶部140に記憶される基準電圧値としては、ホワイトノイズを測定した際の3σの値と平均値とを用いる場合を説明したが、無線通信装置1が通信相手からの応答がない状態において枠型空中線20を介して受信回路131によって受信を行った際に枠型空中線20に発生する電圧値よりも低い値の電圧値であればよい。これにより、通常のホワイトノイズに対応する電圧値が得られていれば、枠型空中線20が送受信機10に正しく接続されていることが把握でき、通常のホワイトノイズに対応する電圧よりも小さな電圧値が測定された場合には、枠型空中線20が送受信機10に正しく接続されていないものとして把握することができる。
【0041】
また、図1における無線通信装置1の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより無線通信装置1における第1の試験モードや第2の試験モードである各試験を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0042】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0043】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 無線通信装置
10 送受信機
20 枠型空中線
110 第1の容量
111 第2の容量
120 共振用容量選択器
130 送信回路
131 受信回路
140 記憶部
150 制御部
160 断線検出部
161 測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠型空中線を有する無線通信装置の断線検出装置であって、
前記枠型空中線に接続されると共振回路を形成する第1の容量と、
前記第1の容量とは容量値が異なる第2の容量と、
前記第1または第2の容量を選択し前記枠型空中線に接続する選択部と、
前記選択部によって選択して前記枠型空中線に前記第1または第2の容量を接続して前記無線通信装置の搬送波周波数の送信信号を印加し、受信回路に発生するそれぞれの電圧値を測定する測定部と、
前記第1の容量を接続した場合の電圧値と前記第2の容量を接続した場合の電圧値との差に基づいて、前記枠型空中線と第1の容量とによって形成される回路に断線があるか否かを判定する断線検出部と、
を有することを特徴とする断線検出装置。
【請求項2】
前記断線検出部は、前記第1の容量を接続した場合の電圧値と前記第2の容量を接続した場合の電圧値との比に基づいて、前記枠型空中線と第1の容量とによって形成される回路に断線があるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1記載の断線検出装置。
【請求項3】
枠型空中線を有する無線通信装置の断線検出装置であって、
前記枠型空中線に接続され共振回路を形成する容量と、
前記無線通信装置が通信相手からの応答がない状態において前記枠型空中線を介して受信回路によって受信を行った際に前記枠型空中線に発生する電圧値よりも低い値の電圧値である基準電圧値を記憶する記憶部と、
受信回路によって電波の受信を行った際に前記枠型空中線に発生する電圧値を測定する測定部と、
前記記憶部に記憶された基準電圧値と前記測定部によって測定された電圧値とを比較し、前記測定された電圧値が前記基準電圧以下である場合に、前記枠型空中線の断線を検出する断線検出部と、
を有することを特徴とする断線検出装置。
【請求項4】
前記基準値は、前記測定部によって複数の測定結果を得て、その標準偏差に応じて定められることを特徴とする請求項4記載の断線検出装置。
【請求項5】
前記枠型空中線に接続されると共振回路を形成する第1の容量と、
前記第1の容量とは容量が異なる第2の容量と、
前記第1または第2の容量を選択し前記枠型空中線に接続する選択部と、
前記選択部によって選択して前記枠型空中線に前記第1または第2の容量を接続して前記無線通信装置の搬送波周波数の送信信号を印加し、受信回路に発生するそれぞれの電圧値を測定する測定部とを有し、
前記断線検出部は、
前記電圧値が前記基準電圧以下である場合に、さらに、前記第1の容量を接続した場合の電圧値と前記第2の容量を接続した場合の電圧値との差に基づいて、前記枠型空中線と第1の容量とによって形成される回路に断線があるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項3または4記載の断線検出装置。
【請求項6】
枠型空中線を有する無線通信装置の断線検出装置であって、
前記枠型空中線に接続されると共振回路を形成する第1の容量と、
前記第1の容量とは容量が異なる第2の容量と、
前記第1または第2の容量を選択し前記枠型空中線に接続する選択部と、
前記選択部によって選択して前記枠型空中線に前記第1または第2の容量を接続して前記無線通信装置の搬送波周波数の送信信号を印加し、受信回路に発生するそれぞれの電圧値を測定する第1の測定部と、
前記第1の容量を接続した場合の電圧値と前記第2の容量を接続した場合の電圧値との差に基づいて、前記枠型空中線と第1の容量とによって形成される回路に断線があるか否かを判定する第1の断線検出部と、
前記選択部によって選択して前記枠型空中線に前記第1の容量を接続し前記無線通信装置が通信相手からの応答がない状態において受信回路によって受信を行った際に前記枠型空中線に発生する電圧値を測定する第2の測定部と、
基準となる電圧値である基準電圧値を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された基準電圧値と前記第2の測定部によって測定された電圧値とを比較し、前記電圧値が前記基準電圧以下である場合に、前記枠型空中線の断線を検出する第2の断線検出部と、
を有することを特徴とする断線検出装置。
【請求項7】
枠型空中線を有する無線通信装置の断線検出方法であって、
前記枠型空中線に接続されると共振回路を形成する第1の容量または、前記第1の容量とは容量値が異なる第2の容量のいずれかの容量を選択し前記枠型空中線に接続する選択過程、
前記選択過程によって選択して前記枠型空中線に前記第1または第2の容量を接続して前記無線通信装置の搬送波周波数の送信信号を印加し、受信回路に発生するそれぞれの電圧値を測定する測定過程、
前記第1の容量を接続した場合の電圧値と前記第2の容量を接続した場合の電圧値との差に基づいて、前記枠型空中線と第1の容量とによって形成される回路に断線があるか否かを判定する断線検出過程、
とを実行することを特徴とする断線検出方法。
【請求項8】
枠型空中線を有する無線通信装置の断線検出方法であって、
受信回路によって電波の受信を行う際に、前記枠型空中線に容量が接続され共振回路が形成された枠型空中線に発生する電圧値を測定する測定過程と、
前記無線通信装置が通信相手からの応答がない状態において前記枠型空中線を介して受信回路によって受信を行った際に前記枠型空中線に発生する電圧値よりも低い値の電圧値である基準電圧値を記憶する記憶部に記憶された当該基準電圧値と前記測定過程によって測定された電圧値とを比較し、前記測定された電圧値が前記基準電圧以下である場合に、前記枠型空中線の断線を検出する断線検出過程、
とを有することを特徴とする断線検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−149890(P2011−149890A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12882(P2010−12882)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】